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「Catch up Premier League」~Match week 20~ 2023.1.13-1.15

目次

アストンビラ【11位】×リーズ【14位】

近づけない境界線

 現在のプレミアリーグのテーブルを眺めてみると、残留争いのボーダーになりそうなのは12位と13位の間かなという感じ。5ポイントのギャップがあるこの境界線が残留争いに巻き込まれているか否かを分けている印象だ。

 この境界線の少し上にいるのがアストンビラ。戦績は安定こそしないが、要所できっちり勝っているためポイントは順調に重ねている。逆に直近の成績の低迷でこの境界線に届いていないのが今節の相手であるリーズ。直近の4試合で未勝利とブレーキがかかっている印象だ。

 両チームとも先発では配置を微妙に変更。ラムジーをSHに入れたビラはベイリーとブエンディアの中央とサイドを入れ替える。リーズはアーロンソンを中央に置き、右サイドにハリソンを入れる形で2列目をアレンジした。

 試合は早々に動く。セットプレーからのロングカウンターを決めたのは右に配置変更されたベイリー。カットインからのシュートというレバークーゼン時代を彷彿とさせるようなシュートを決めて先制。前節のウルブス戦でマッチウィナーとなれなかった雪辱を早々に晴らして見せる。

 先制はされたもののリーズの戦い方は悪くなかった。前節であまり見られなかったプレッシングの力強さも復活しているし、ボールを奪った後のカウンター移行もスムーズ。中盤でボールを奪い、カウンターからニョントを軸にサイドから攻勢をかける形は効いていた。

 ビラは非保持においてはマンツー気味に追い回す形ではあったが、特に中盤を捕まえきれない場面が目立つように。アダムスとロカを抑えきれない状況により、押し込まれる展開に追いやられてしまう。

 一方のビラの前進はロングボールでの競り合いを軸としたもの。先制したからということもあるかもしれないが、相手を引き込みつつ早めに前に蹴るスタイルを採用。この形のせいであまり保持が安定しなかった上に、かなり体のぶつかり合いが多くなってしまう。展開の影響を受けたのはビラ。ディーニュ、ワトキンスと続々と負傷者が出てしまい、前半から2回の交代を使う羽目になってしまう。

 不安定な保持と中盤でのボールハントで優位に立ったリーズは得点を目指してゴールを脅かすが、体を投げ出すビラのDF陣とゴールマウスに君臨するマルティネスが立ちはだかりネットを揺らすことができない。劣勢の中、ビラはなんとかリーズの攻撃を凌ぎ切った。

 後半、ビラは左右に大きな展開を使いながらポゼッションを行い、試合の流れをより落ち着かせようとする。しかし、ボールコントロールの不安定さからリーズのプレスに捕まり出す場面が徐々に増えていくと、流れは前半と同じような展開に収束していく。ミングスのミスが決定的なピンチを招くなど、後半も不安定さが目につく。余談だけど、このシーンのミングスのように、この試合はやたらと足を滑らせる選手が多かったように思う。特にビラの選手は。

 リーズは前半同様にチャンスを迎える展開になったが、ここでも立ちはだかるのはマルティネス。コースを狙ったニョントの決定機を阻止するなど、後半も充実した仕事ぶりでリードを死守する。

 すると、カウンターからビラは反撃に。1点目と同じように右の大外でボールを持ったベイリーからインサイドに抜け出したブエンディアにラストパス。これを沈めて劣勢の中で追加点を得ることに成功する。

 リーズは交代選手を軸に攻撃の活性化を狙うが、なんとか83分にバンフォードが奪った1点止まり。リーズが追いつくことはできないまま試合は終了し、今節も境界線に近づくことができなかった。

ひとこと

 前節のウェストハム戦もそうだが、リーズは内容の充実を結果に繋げられない展開が続いている。強豪が続いているわけではないので、もう少し勝ち点を積み重ねておきたいところだが。

試合結果

2023.1.13
プレミアリーグ 第20節
アストンビラ 2-1 リーズ
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:3′ ベイリー, 64′ ブエンディア
LEE:83′ バンフォード
主審:マイケル・オリバー

マンチェスター・ユナイテッド【4位】×マンチェスター・シティ【2位】

相手が出てきた瞬間をひっくり返す精度の勝負

 ユナイテッドが勝てばシティとの勝ち点差は1。ユナイテッドにとっては優勝争いに参加できるかどうか?シティにとってはアーセナルにこれ以上離されたくないという思いを抱えての熱いシチュエーションでのマンチェスター・ダービーとなった。

 ボール保持の主導権はあっさりとシティで決着。ユナイテッドはバックラインにはハイプレスを仕掛けずにシティの保持を受け入れる立ち上がりとなった。まず、述べておきたいのはシティの保持における振る舞いである。ここ数試合はメンバーに関わらず3-2型のビルドでロドリの隣に選手を置く形が多かったが、この試合ではあまりアンカーのそばに人が常駐することはなく、特にSBのポジションはワイドに取ることが多かった。

 そのため、ユナイテッドはエリクセンとマルシャルでアンカーを受け渡しながら対応する形に。注目されるのはサイドの守備である。この試合のユナイテッドのプレスのスイッチを握っていたのはWG。WGが開く立ち位置をとるシティのCBにプレスをかけるところからハイプレスが起動する。

 その際に本来のマーカーであるシティのSBは空く。リスクを取るチームであればSBが縦にスライドするのが基本線だろうが、ユナイテッドは後方での同数を受け入れたくないのかスライドはしなかった。ユナイテッドのWGの後方に出てくるのはCH。フレッジとカゼミーロの役目である。

 CHにとっては高い負荷のタスクではあるが、ユナイテッドの陣容とシティの前線にハーランドがいることを踏まえれば、ここでリスクを取るのは理解ができる。広い範囲を守る前提だからこそ、エリクセンをCHから1列前に上げてフレッジとカゼミーロを並べたのかもしれない。

 だが、ユナイテッドはこのスペースのカバーが間に合わない時がある。その際にはシティのSBがフリーで前に持ち上がれるし、遅れて出てくるユナイテッドのCHの背後のスペース(=上の図の緑部分)が空くことになる。

 そこにパスを刺すことができればシティの攻撃は加速できる。ハーランドが降りて受ける意識がいつもより高かったことやベルナルドが低い位置でボールを受ける動きもユナイテッドのCHの守備の基準に迷いを与えるためだろう。シティの狙いはユナイテッドのMFの背後のスペース。そのために相手を動かすことはできていた。

 だが、要所でのパスの精度が定まらないこの日のシティ。つまらないミスが出れば、一気にユナイテッドがカウンターでひっくり返す。ユナイテッドのプレスはハイプレスではないが、中盤での蓋を間に合わせることが前提の仕組みになっている。よって、基本的にはミドルカウンターがユナイテッドの狙いということになるだろう。

 ボールを奪ってから1本目のパスの精度でネガトラからシティの急所であるアンカー周辺かサイドの裏を中心に縦に長いパスを出していく。ライン間のエリクセンや後方のブルーノからラッシュフォードがチャンスを得た場面は何回かあったが、シティのDFのナイスカバーでこのピンチを回避する。

 要はこの試合は『相手が勝負を仕掛けたタイミングでひっくり返せるか』が両チーム共通のテーマ。シティはユナイテッドがプレスに来たタイミングで背後にパスを刺したいし、ユナイテッドはシティがボールを失った瞬間にパスを刺したい。パスを刺す精度はユナイテッドの方が上だが、背後をつく頻度はシティの方が上という前半だった。

 ハーフタイムで動いたのはユナイテッド。準備するアントニーの姿に誰もが前半で負傷したラッシュフォードの交代を思い浮かべただろうが、交代したのはマルシャル。アントニーをトップに置く形で後半のユナイテッドはスタートする。

 イメージとしては左に残したラッシュフォードは守備免除。エリクセンが同サイドを埋める形でカバーして、その分アントニーが下がって守備をする左右非対称の形に。しかし、これは少し無理があったように思う。サイドの守備は完全に後手に回っていたし、ウォーカーがインサイドとアウトサイドを使いわけながら簡単にラッシュフォードの背後からボールを運べるように。

 安定して運ぶポイントを見つけたシティはボール保持でのプレーエリアが明らかにユナイテッド陣内寄りに。右サイドを軸にあとはエリア内で守備を破壊するフェーズに突入した。ヴァランは奮闘していたが、60分にユナイテッドは決壊。右サイドのカバーにフレッジとカゼミーロを動員してもデ・ブライネにクロスを許してしまうと、これをエリア内に飛び込んだグリーリッシュが決めた。

 ユナイテッドは失点を機に前プレに移行する。どちらにしろラッシュフォードの戻っての守備は期待できないので、前を向いてのプレスというリスクを取る勇気を得ることができたのは失点に伴うユナイテッドのわずかな幸運と言えるだろう。それ以上にユナイテッドにとって助かったのはシティの保持がピリッとしないこと。ラッシュフォードがCFに移ったことで、CBは安定してボールを持てるようにはなったが、アタッキングサードでのつまらないミスからユナイテッドに反撃の余地を残してしまう。

 シティからすればブルーノが決めた1失点目のジャッジには文句はつくだろうが、2失点目のような形でゴールを決められるような試合運びをしてしまった自分たちの振る舞いにも課題はあったとも言える。ユナイテッドはカウンターに全精力を傾けたラッシュフォードの意地と左サイドを切り拓く役割をこなしたガルナチョが殊勲の働きだった。

 おそらく物議を醸すであろうジャッジにより終盤は小競り合いが増えたのはやや残念ではあった。レベルの高いマンチェスター・ダービーを制したのはユナイテッド。オールド・トラフォードで前半戦のリベンジに成功し、さらなる上位進出を狙える勝利を手にした。

ひとこと

 前半の局面勝負は非常にヒリヒリするものだった。ややモヤモヤする部分もあるが、相手が前に出た時にひっくり返す精度!という前半の部分に掲げたこの試合のテーマを愚直にこなしたユナイテッドに勝利が転がり込んだということになるだろうか。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
マンチェスター・ユナイテッド – マンチェスター・シティ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:78′ フェルナンデス, 82′ ラッシュフォード
Man City:60′ グリーリッシュ
主審:スチュアート・アットウェル

ウォルバーハンプトン【19位】×ウェストハム【17位】

出足抜群のSBがウェストハムのラッシュをひっくり返す

 マンチェスター、ロンドンでそれぞれ熱い上位対決が行われている今節。だが、注目は上位だけではない。今節は残留をかけた熱い直接対決もある節である。モリニューで行われるのはロペテギ就任以降不思議な試合運びが目立っているウルブスと年末年始の連戦で全く浮上の兆しが見えなかったウェストハムである。

 ボールを持ちながら試合を優位に進めたのはホームのウルブス。ネベスが降りながら後ろを重くする形で組み立てるというのはウルブスのいつもの形である。このウルブスのいつもの形へのウェストハムの対応がイマイチ。WGがフラフラと前に出て行きながらワイドのCBを捕まえるような捕まえないようなという中途半端な形になっていた。前プレへの意識はあるから前には出て行くが、どこに追い込んでどれだけ人数をかけるのかが見えてこず、簡単に前に進まれてしまうという直近のウェストハムの悪癖が反映されていたといえるだろう。

 ウルブスはSBからボールをつなぎながら前進。ウルブスのSBの面々はこの日かなり冴えていた。特によかったのはセメド。攻め上がりの勘所を抑えており、上がりがガンガン効いていた。セメドは何カ月に1回くらいめちゃめちゃ冴えている日があるのだけど、まさにこの日のセメドはそれにあたった日といえるだろう。

 中央では先発デビューとなったクーニャが安定したポストプレーを披露。なかなか安定しない9番のタスクを背負える可能性が垣間見えたパフォーマンスとなったといえるだろう。

 ミドルゾーンで相手を捕まえきれないウェストハムは押し込まれながらの苦しい戦いを強いられることに。セカンドを奪って、縦に素早く進んでクロスという形で何とかチャンスメイクをしたいところだが、トップのアントニオがサイドに流れながら起点になる動きを見せており、中にターゲットを置く状況を作るのに苦労する。

エリア内で反転する鋭い動きを見せられるからこそ、アントニオはインサイドにいてほしいところ。そのためにはサイドからボールを運ぶ必要がある。逆にアントニオをインサイドに置いた状態でクロスまで行くことができれば、ソーチェクも飛び込めるためエリア内の受け手は充実していた。

 ボールを運ぶ動きができるようになったのは右サイド。サイドに張るボーウェンを中心にクロスから攻勢をかけてくる。ボーウェンのポストをSBが受けて裏抜けから動きなおして前進。時間の経過とともに徐々に盛り返していく。

 主導権を取り戻した後のウェストハムもプレスは大人しかったが、後半頭はパケタが列をあげてCBにまでプレッシャーをかけるなど前半よりも積極的なアプローチで得点を狙いにいく。目論見通り、ウルブスはロストからピンチを迎えるなど、ウェストハムの序盤のラッシュは効いていた。

 しかし、先制点を決めたのは反撃となる一発を沈めたウルブスの方。ロングカウンターの起点になってきたのはセメド。これをヌネスが運び、ポデンスが仕留める形でウェストハムの勢いを見事にひっくり返して見せた。

 ウェストハムはここから左右のクロスで主導権を握りながら同点ゴールに向けてテンポを上げていく。押し込む状況を作れたにも関わらず、クロスのターゲットになりうるソーチェクを早い段階で下げてしまったのはモイーズの采配の解せない部分である。逆に左サイドをゴリゴリ切り拓いていったベンラーマの投入は理解できる。ジョーカーとしての働きは十分だったといえるだろう。

 ウルブス側もアイト=ヌーリの投入がちぐはぐだった。ロングカウンター要員として起用されることが多いアイト=ヌーリだが、この日は1列前のSHとして起用される形だった。自分は攻撃的なSBを1列前で起用することどうなんだろう!派閥なんだけど、この日のアイト=ヌーリはまさにそんな感じ。ポゼッション時の立ち位置がぐちゃぐちゃで攻撃をノッキングさせる要因になっていた。

 前にスペースがあるときは良いのだけど、そうでないときにサイド攻撃の主軸を担うのは難しいのだろう。ウルブスのアタッキングサードはやたらとガチャガチャしていた。それでもネベスやヒメネスがゴールに向かう機会はあったけども。

 スカマッカの投入で4-4-2にシフトチェンジしたウェストハムだっただが、最後まで人垣を組んだウルブスのバックラインにシュートを当て続けるだけになってしまう。結局試合はそのまま終了。勝利したウルブスは残留圏に浮上し、敗れたウェストハムが降格圏に足を突っ込む形となった。

ひとこと

 采配、ガチャガチャ過ぎる同士だなと思った。SBの好調とCFのレギュラーに答えが出そうなウルブスには少し光が差した一戦。残留争いのライバルからもぎ取った勝ち点3の価値は言わずもがなである。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
ウォルバーハンプトン 1-0 ウェストハム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:48‘ ポデンス
主審:シモン・フーパー

ノッティンガム・フォレスト【15位】×レスター【13位】

快勝を脅かす一点の曇り

 第6節以来の降格圏の脱出に成功。不振にあえぐ下位チームの中で断続的に勝ち点を積み上げているフォレストはボトムハーフの中では明らかに状態がいい部類に入るチームである。そんな彼らは今節はレスターと対戦。こちらは残留争いの例に漏れず、苦しい戦いを強いられている。

 今節のフォレストはトップ下に新加入のスカルパを起用。その前方にジョンソンとギブス=ホワイトというおなじみの2人を置く形でレスターと対峙する。

 基本的にはボール保持からショートパスで相手を広げていくのがフォレストのスタンス。レスターのプレス隊を前に引き出すことができたら、ライン間に縦パスを前線に刺すという形はいつものギブス=ホワイトの0トップの形と大きく変わりはない。むしろ、ギブス=ホワイトはあまり役割を変えた印象はなかったため、フォレストはライン間にスカルパと2枚を置いた形になっていた。

 レスターの中盤のプレスの意識の高さはフォレストにうまく利用されていた感がある。広げられて、間を使われるというショートパスの崩しの理想のような形がとても効いていた。フォレストの前進の手助けをしていたのはIHの2人。彼らが入り込む列の高さを頻繁に変えることでフォレストは段が異なるパスを比較的楽につなぐことが出来ていた。

 一方のレスターは苦しんでいた。トップ下のスカルバはボールサイドのCHをケアし、同サイドにボールを閉じ込めることに長けている。狭いゾーンに押し込まれたレスターはなかなかショートパスの前進の活路を見出すことができない。

 そうなると高い位置で奪って、素早くヴァーディが最適解である。だが、ヴァーディには往年ほどの凄みはないし、奪いに行こうとすればフォレストに裏返される展開も見えてくる。3列目の並びがメンディとンディディというパサー不在の構成なのも辛い。ボールを奪う位置、頻度、そして奪った後のプレーのいずれにおいてもレスターは問題を抱えた形だった。

 押し込まれるレスターは徐々にオルブライトンが立ち位置を下げ出して5バック気味に。前進はバーンズが根性で受けて前に進む形にシフトしていくようになった。後半に迎えたカウンターの絶好機は彼ならば決めたかったところだろう。

 フォレストは後半にスカルパに代えてサリッジを投入。より相手の最終ラインにフィジカル的な負荷をかける形の采配で前線の質を変容させる。このサリッジのポストからフォレストは先制。フリーになったギブス=ホワイトからジョンソンの抜け出しにはファエスのラインアップとウォードの飛び出しが間に合わず。一度はオフサイド判定を受けたが、オンサイドに修正されてゴールが認定されることとなった。

 失点後、ボールを持ちながらやりくりするレスター。3枚替えで4-4-2にシフト。ティーレマンスも位置を下げつつ、左サイドはブラントで活性化を図る。だが、この日は後方の選手たちがピリッとしない。アマーティはあまりにも淡白な対応が多く、ピンチをピンチのままで相手ボールにする場面が目立つ。

 決定的な2点目の献上に噛んでしまったのはンディディ。ギブス=ホワイトを簡単に逃がしてしまい、ジョンソンの追加点の動線をがら空きにしてしまった。バックラインとその前の防波堤が機能しなければカウンターをしのぎながらの追撃は難しい。

 実質この2点目で勝負を決めたフォレストだが、試合終了まであと数分というところでヘンダーソンが負傷。チームを牽引した守護神の容態は気になるところ。快勝に一点の曇りが残る試合となってしまった。

ひとこと

 フォレストの方がシンプルに良くオーガナイズされたチームだと思った。レスターは個のスキルで上回るしかないけども、バックラインがアキレス腱となっており耐えきれるイメージがわかないのが苦しい。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
ノッティンガム・フォレスト 2-0 レスター
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:56‘ 85’ ジョンソン
主審:ポール・ティアニー

ブライトン【8位】×リバプール【7位】

勝ち筋すら与えない完勝

 前回の対戦ではトロサールがハットトリックで3点を奪いながらも勝ちきれなかったブライトン。そのトロサールは渦中の人になってしまった感があるが、ブライトンの勢いは好調。リバプール相手に今度こそ勝利を手にしたいと意気込みながらホームゲームに臨むはずだ。

 リバプールは初先発のガクポとサラーが2トップのような形でブライトンのバックラインにプレスで襲いかかる。中盤も前がかりにプレスにいき、おそらく同サイドに閉じ込めながら高い位置でボールを奪おうという方針なのだろう。しかしながら、このハイプレスは怪しさ満点。特にエストゥピニャンを誰が見るのかが不透明であり、アレクサンダー=アーノルドが前に出て行ったり、ヘンダーソンがカバーに入ったり、あるいは放置されたりなど対応がまちまち。

 ブライトンはこのサイドから安定してボールを運ぶことができたため、リバプールのプレスを苦にしなかった。同サイドの三笘の裏抜け、もしくは逆サイドのマーチまで運んでの1on1。エリアに迫る武器を使う下準備はバッチリであり、リバプールのゴールを序盤から再三脅かしていた。

 特に左サイドの三笘はアレクサンダー=アーノルドとの駆け引きに完勝。マティプにもカードを出させるなど、好調の持続を感じさせる大暴れぶりだった。

 リバプールの保持はとにかくロングカウンター狙い。エストゥピニャンの背後をサラーでつく形は狙い目ではあったが、ブライトンに深い位置まで押し込まれたこともあり、ロングカウンターの精度は安定しない。

 むしろ、リバプールは20分以降に急がずに中盤で前線が降りて起点を作る動きを見せてから保持が安定するようになった。マック=アリスター、カイセドなど前向きな守備の意識が強いブライトンの中盤の背後でボールを受けるポイントを作ることで、徐々に前進ができるようになってくる。

 しかし、30分以降は再びブライトンが主導権。両WGの裏抜けを中盤から積極的に活用することでリバプールを一気に押し下げる。受け手の三笘とマーチ、出し手のカイセドは見事。特にマーチは裏抜けからあわやPKのシーンを演出し、リバプールファンに冷や汗をかかせるが、これはオフサイドで取り消し。なんとかスコアレスのまま前半を終えることに成功する。

 だが、後半早々にリバプールはミスから失点。マティプのパスミスをマック=アリスターに掻っ攫われ、ブライトンのカウンターが発動。ボールを受けた三笘が蹴ったボールは逆サイドまで流れ、マーチがこれを押し込んで先制する。

 勢いに乗るブライトンはさらに得点を重ねる。今度はライン間に降りるファーガソンが前を向いてマーチにラストパス。角度が厳しいところまで入り込んだマーチだが、ファーの厳しいコースを撃ち抜いて追加点をゲット。リバプールをさらに突き放してみせる。マティプは三笘の抜け出しが気になったせいで降りるファーガソンを捕まえられなかった。

 リバプールは右サイドを軸に深くまで切り込む機会を得るが、なかなかエリア内をこじ開けられず。サンチェスを中心とした守備陣の粘りに屈してしまう。リバプールの攻撃が終わると即時奪回でプレスを交わし、いちいち敵陣までボールを運ぶブライトンのアタッカー陣も頼もしい存在である。

 流れをさらに引き寄せたのはブライトンの交代選手。とりわけ、ウェルベックはファーガソンに負けじと存在感を放つ3点目をゲット。素晴らしい身のこなしとボールのコントロールで相手を剥がし、アリソンとの1on1を制して見せた。

 前半から好機が多かったのはブライトン。先制点が入ってからは完全に試合の主導権を手中に収め、リバプールに勝ち筋を与えない完勝で7位に浮上した。

ひとこと

 リバプールは厳しい。今日の陣容ではブライトンには何回やっても勝てないような苦しさを感じる。直線的な抜け出しが強引だった分、オフサイドに引っ掛かることも時たま見られた。ブライトンも裏抜けを多用していたが、大外でラインを見極めやすいWGがラインブレイクの主役だったため、裏抜けの割にオフサイドの少なさが非常に際立ったのが印象的だった。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
ブライトン 3-0 リバプール
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:46′ 53′ マーチ, 81′ ウェルベック
主審:ダレン・イングランド

エバートン【18位】×サウサンプトン【20位】

芸は身を助ける

 ウルブス×ウェストハムに続き、こちらも残留争いにおける注目カード。ボトム3に沈む両チームの直接対決である。オーナーとサポーターとの関係が悪化の一途をたどるエバートンと新監督が就任した後にも全くリーグ戦(カップ戦はやたらと絶好調である)での浮上の兆しがないサウサンプトンの一戦。共に順位にきっちり見合った苦しいチーム状況だ。

 いきなり試合はゴッドフリーが座り込むところからスタート。エバートンファンは肝を冷やしたことだろう。というか、しれっとスタメンにいるけどイウォビは先週1ヶ月くらいの離脱って言ってませんでしたっけ。

 どちらのチームも苦しい内容で試合は進んでいく。バックラインは数的優位を確保しているはずのサウサンプトンだが、3バックは詰められるとあっさり蹴りだしてしまうのは前節と同じ。サウサンプトンのトップであるアダムスは体を張れるタイプではあるが、無造作にバックラインから放たれるボールをビシバシ収めることができるほど体格的に恵まれているわけではない。

 後ろに枚数を揃えているのは守備面での色が強いかもしれないが、重心が低いからこそ攻撃に転じた時には全体を前に押し上げることができる前進手段が欲しいところである。右サイドから飛び出すウォード=プラウズのような奮闘をする選手はもう少し増えてほしい。

 ロングボールを収めるという意味ではその部分が長所であるキャルバート=ルーウィンがCFに起用されているエバートンの方が一枚上といえるだろう。ちなみにこの両チームの布陣の座組は似ていてCFタイプ(アダムス、キャルバート=ルーウィン)とSHと2トップの一角のハーフ&ハーフ(エドジー、グレイ)のコンビ。非保持においては5-4-1色が強くなるのも共通点である。

 中盤でのエバートンの保持に対して、やたらサウサンプトンがナーバスなタックルを繰り返していたのも印象的。セットプレーでの余計なピンチを与えてしまい、不要に攻めの機会を作られることもしばしばだった。オープンプレーではなかなかチャンスができない両チームだっただけに、セットプレーで機会を当ててしまうのは痛恨である。

 そして先制点は危惧していた通りにセットプレーから。エバートンのCKをオナナが押し込み、パワーに物を言わせる形でエバートンが先制する。セットプレー自体の守備も怖かったサウサンプトンは前半の内にあっさり決壊をしてしまう。

 ただ、前半の終盤あたりから徐々にエバートンの守備陣の跳ね返しの性能が怪しくなってくるように。サウサンプトンは後半の初手で同点に追いつく。起点となったのはウォーカー=ピータース。彼の縦パスを収めたアダムスが抜け出したウォード=プラウズに合わせて同点。前半に似たような抜け出しのチャンスをアダムスから貰いながらも決められなかったウォード=プラウズにとっては何とか同じ形で同点に追いついた形である。エバートンは3人のCBがあっさりと無効化されてしまうという切なさがあふれる失点となった。

 共に試合途中に4バックにシフトするなど、この得点以降は散発的に生まれる両チームのチャンスを何とか前線を増やす形で受けよう!という意識は見られた。だが、なかなか効果的で安定した前進から押し込むことができない。

 サウサンプトンは中盤のフィルターの薄さ、エバートンは無駄なファウルの多さが際立ってきた後半だったが、決め手になったのはセットプレー。名手・ウォード=プラウズに十分すぎるキックのきっかけをエバートンは与えてしまっていた。ウォード=プラウズのFKはもちろん名人芸の領域だが、これに対してやたらニアを空けてしまっていたピックフォードのポジションには疑問が残るところである。

失点後もエバートンはちまちまとファウル奪取と放り込みで対抗。失点シーンではファウルを犯してしまったゴードンも保持面ではいいアクセントになっていた。だが、試合はサウサンプトンが逆転勝利。連敗を止めるウォード=プラウズの2ゴールでエバートンを同じ勝ち点まで引きずり込むことに成功した。

ひとこと

 芸は身を助けるというがこの日のウォード=プラウズの一撃はまさにこれに当たるだろう。互いに安定しない試合運びの決め手になる武器であった。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
エバートン 1-2 サウサンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:39‘ オナナ
SOU:46’ 78‘ ウォード=プラウズ
主審:ジョン・ブルックス

ブレントフォード【9位】×ボーンマス【16位】

ジャンプアップは阻まれる

 24時からの試合を受けて14位から20位までの勝ち点差はわずかに2。ボーンマスにとっては勝てば14位まで一気にジャンプアップするボーナスステージである。

 しかしながら、ブレントフォードのホームスタジアムは難所。強豪でも苦しむスタジアムであり、ボーンマスも苦戦は必至。リバプール、チェルシーなど近い順位のチームが不振に苦しんでいるブレントフォードにとっては1つでも上の順位に行くためのモチベーションも十分ある状況である。

 ボーンマスは立ち上がりから積極的にロングボールを活用。前半戦は比較的ボールを回しながら相手を引きつけつつ、機を見てロングボールに移行する形ではあったが、直近のボーンマスはとっとと前に蹴り飛ばしてしまう。ブレントフォードの守備陣は落ち着いてこれに対応。バックラインからの跳ね返しと、中盤でのセカンドボール回収でボールを奪い返す。ボーンマスはクックが積極的に高い位置をとることで起点を作ろうとするがブレントフォードのバックラインを前に不発してしまう。

 ボールを奪い返したブレントフォードは左右のサイドからクロスを上げる形。WBはいないが、4-3-3のシステムを活用しアタッカーを外で使うことできっちりとラインを下げながらクロスを上げていく。ブロックに入り込む形を作るのはなかなかできないが、ブロックの外からボコボコ殴ることで得点を狙っていく。

 膠着したチャンスの少ない試合ではあったが、ゴール付近に迫れていたブレントフォードに先制のチャンスが転がってくるのは妥当だろうか。トニーの抜け出しに対して、腕を絡めたセネシがファウルを奪われてブレントフォードにPKのチャンスが与えられる。ブレントフォードはこれを沈めて先制する。

 後半、ボーンマスは序盤にサイドから裏を取る形で前進する。こういう形で計画的に前進を増やしていきたいボーンマス。サイドからクロスを放り込み、徐々にブレントフォードのゴールに近づいてくる。ブレントフォードもなんとか食い下がっていたが、後半半ばあたりで段々と失点の危険性が上がってきたと言えるだろう。

 しかし、得点を奪ったのは押し込まれていたブレントフォード。トニーのポストに合わせてダシルバが裏に抜け出すと、最後にこれを決めたのはイェンセン。決定的な2点目を決めてボーンマスを突き放す。

 この2点目で勝負を決めたブレントフォード。ボーンマスの戦意を完全にへし折り、ホームできっちり勝利を挙げることに成功した。

ひとこと

 ジリジリした試合ではあったが、個人能力の差でPKをもぎ取ったトニーはさすが。押し込む段階まで行ったボーンマスには決め手になるFWがいなかった。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
ブレントフォード 2-0 ボーンマス
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:39′(PK) トニー, 75′ イェンセン
主審:ジャレット・ジレット

チェルシー【10位】×クリスタル・パレス【12位】

新たな武器になる可能性を示したCBコンビ

 ピッチの中では不振から抜け出せず、ついに順位は二桁に。しかし、ピッチの外では絶好調。移籍市場では主役の座は譲らないのが今のチェルシーである。前節はジョアン・フェリックスがデビュー、今節はムドリクのお披露目と話題には事欠かない。対戦相手のパレスはトッテナム、チェルシー、ユナイテッドと厳しい日程の真っ最中。敵地とはいえポイントはとっていきたいところだろう。

 この日のチェルシーのフォーメーションは4-2-3-1に近い形。ただし、左右は非対称。左のSBのホールが高い位置を取り、大外レーンを担当。SHのマウントはインサイドに入りながらファジーに動き回る役割を担う。右の大外はツィエクが担当し、こちらはSHが幅をとる。ここはチャロバーとホールという2人のSBのキャラクターの違いを考慮しての非対称性だろう。

 左サイドはこちらもデビュー戦となったバディアシルが配球で存在感を発揮。大外のホールをシンプルに使う形で進撃をする。右サイドは中盤のギャラガーが降りる形でボールを引き取っていく。ギャラガーの降りる動きに対面のシュラップがついていくかは迷いどころ。背後をマウントやハフェルツが狙っているため、ついていけば背後を使われるリスクもある。その分、ギャラガーは自由を享受することとなる。

 右サイドに人数をかける崩しを作ったチェルシーは同サイドのハーフスペースを起点としたクロスと逆サイドのホールへのサイドチェンジを織り交ぜながら押し込む。パレスがセットプレーに不安があるということを踏まえると押し込み続ける状況はチェルシーにとっては十分おいしい。序盤はチェルシーがゴールに迫る展開だった。

 しかし、パレスも徐々に反撃を開始。チェルシーのライン間でのパスワークが乱れたり、パスコースが読みやすい時は受け手に厳しいプレッシャーをかけることでボールを奪い取りカウンターを発動。右のハーフスペースのオリーズとザハを軸に手早い攻撃を打ち込んでいく。前半途中からオリーズがトップ下から右のWGに移動したことを踏まえると、ホールの背後も狙い目と感じたのかもしれない。

 いくつかあったパレスの決定機を封じるのに貢献したのはケパ。勇気ある飛び出しでバタバタしていたボックス内の対応を見事にカバーしてみせた。このパレスの攻撃を凌ぐと、再びチェルシーはペースを握る。右サイドの攻略は同サイドを攻め切ることでさらに奥行きを増した印象。右のハーフスペースの裏抜けを活用することでパレスの守備陣系を抉るように攻め込むことで再びチャンスを得る。躍動していたのはギャラガー。ポストの落としを受けての攻め上がりや、ハーフスペースの裏抜けなどは好調時のパフォーマンスを彷彿とさせるものである。

 押し込むことでセットプレーのチャンスも再びついてきたチェルシー。こちらもグアイタがセーブでチームを救う。両守護神のファインセーブにより、試合は前半をスコアレスで折り返す。

 迎えた後半は比較的均衡した状況に。ボールを持つのはチェルシーだが、パレスも問題なく攻撃を跳ね返すことができる。前半の終盤のようにラインの上げ下げまでチェルシーに支配されることはなく、無理のない受け方ができていた。パレスはカウンターから好機を狙うが、バディアシルがきっちりカウンターの芽を摘む。彼にとっては攻守に上々なデビュー戦になったはずである。

 どちらも得点の糸口が見えない状況を動かしたのはセットプレー。ショートコーナーからハフェルツが合わせて先制ゴールを叩き込むことに成功する。

 反撃に出たいパレスは積極的にプレッシングに出ていくが、ことごとく軽微なファウルを取られてしまいカウンターに繋げることができない。それでもなんとか終盤は押し込むことに成功したパレス。だが、放り込みに備えたチェルシーの強固な5バックが決定機を許さない。

 結局、セットプレーからの1点を守り切ることに成功したチェルシー。1月15日にしてようやく2023年初勝利を挙げることができた。

ひとこと

 バディアシルとチアゴ・シウバのバックラインは強力。最後の塹壕戦への耐久力も含めて強力な武器になる可能性を示唆した。ケパも含めてこの試合のバックラインは強固と言えるだろう。しかし、保持における無駄なロストの多さは気がかり。特にオーバメヤンと後半のギャラガーのロストは不要なピンチを招くことにつながっている。この辺りは新戦力のうちの誰かに新たなアクセントになってもらうことを期待したいところだろう。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
チェルシー 1-0 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:64′ ハフェルツ
主審:ピーター・バンクス

ニューカッスル【3位】×フラム【6位】

珍しいハウの采配に応えた2トップ

 堅実に少ない失点で勝ち点を積み重ねて徐々に順位を上げていくニューカッスル。敗れたのは未だに後半追加タイムで失点したリバプール戦だけ。1敗で間もなくハーフシーズンの折り返しに差し掛かろうとしている。今節の対戦相手はフラム。こちらも昇格組ながら実直に勝ち点を積んできたチーム。前節、チェルシーを破った勢いをそのままに上位チームを下したいところである。

 どちらのチームも中盤中央のプロテクトの意識は高い。よって、中央からの前進は両チームにとってなかなか難しいミッションである。バックラインへのプレスはそこまで強烈ではないので、CBはボールを持つ形は落ち着いて作れる両チーム。中盤のキツイプレッシャーに突っ込んでいくスタンスは取らないので、試合はじりじりとした展開になった。

 より前進に苦しんだのはフラム。彼らの前進は前線の降りる動きからスタートするのだけど、中盤には前線の降りるスペースがない。サイドに張りながら起点を作る選手はおらず、味方をフリーにしながら進むことができない。ウィリアンはいつものように中盤のフリースペースを探しに自由に動きまくった結果、なかなか出口が見当たらないという困難な状況に陥っていた。

よって、PAにクロスを上げるというフラムの得点パターンを楽にやれない状況が続く。ニューカッスルは中央でも高さの優位が取れない相手なので、ミトロビッチへのロングボールも有効打にならない。

 手詰まりになるフラムに比べるとニューカッスルの保持には可能性が見えた。中央が堅く、サイドを迂回しなければ行けない状況はフラムと同じだが、この状況を解決するための手段があった。

 ニューカッスルにとって大きかったのは1枚剥がせる場所を比較的作りやすかったこと。この日のフラムのメンバーの中で狙い目になっていたのはクルザワ。ここでズレを作れたため、ニューカッスルはより奥に入り込むサイドの攻略が出来ていた。

 フラムの中盤のプレスの意識が前向きなことも大きかった。サイドの深い位置のカバーまで中盤の手が回らないことが多く、抜け出しで最終ラインに穴を空ければ、連鎖的にフリーの選手ができる状態を作り上げることに成功。フラムに比べて、明らかにオープンな形でゴール前までボールを運ぶことが出来ていた。ギマランイスの負傷は今後を見据えれば暗雲になるが、これだけ押し込める日ならば、左にサン=マクシマンを置くというプランはこれはこれでアリといえるだろう。

 徐々にラインを上げて敵陣深くまで侵入する機会を増やすニューカッスル。後半はフラムも右サイドにハリソン・リードが抜け出す形を作ったりなどのチャンスメイクは出来てはいたが、全体で見れば明らかにニューカッスルに押し込まれる時間が増えていた。

 だからこそ、ボビー・リードが奪い取ったPKは千載一遇のチャンスだったといえるだろう。だが、この決定機をミトロビッチがまさかの軸足に当ててしまうという大チョンボ。信じられない形で台無しにしてしまう。

 これを見たエディ・ハウはイサクを投入し4-4-2にシフトチェンジ。珍しくフォーメーションを変えてまで攻撃的なスタンスを打ち出して見せた。フラムもペレイラに代えてアダラバイオを入れるなどPKの失敗以降は完全に防戦の構えである。

 エディ・ハウの采配が実ったのは89分。エリア内におけるウィルソンの根性の折り返しをイサクが沈めて決勝点をゲット。イサクの投入と2トップへの変化という交代策もたらした1点といえるだろう。

 復活弾は上位維持に大きく貢献する決勝点。期待のストライカーは復帰戦で大きな仕事を果たして見せた。

あとがき

 撤退シフトを敷きながらもクルザワのいるサイドはニューカッスルのクロスの温床になっていた。フラムとしてはロビンソンの不在がミトロビッチの大失態と並ぶくらい悔やまれる。いやでもあのキックと並ぶというのは言い過ぎかな。。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
ニューカッスル 1-0 フラム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:89‘ イサク
主審:ロベルト・ジョーンズ

トッテナム【5位】×アーセナル【1位】

前後半で異なる強さを見せて首位固めに成功

 レビューはこちら。

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 首位で快走するアーセナルをノースロンドンダービーでは3連勝中のホームで迎え撃つトッテナム。アーセナルは勝てば9年ぶりのダブルを達成できる上、マンチェスターダービーに敗れたシティとの勝ち点差は今季最大の8まで広がることになる。

 ボールをつなごうという意識でスタートしたのは両チームとも同じといえるだろう。ショートパスを主体で相手を引き込みながら前進。もっと言えば、フリーマンを作ることまではたどり着くことが出来ていた。

 プレス耐性があまりないトッテナムはアーセナルのハイプレスに前線を下ろしながらなんとか対抗して見せた。トリガーになっていたのはソンの降りる動き。これで低い位置にフリーマンを作る。その代わりに前線にかけあがっていくのはセセニョンだ。前線が引くことを意識している中で裏を取りながら奥行きを作ることを任される。

 狙いは見えたが、トッテナムがアーセナルのハイラインの背後を突くことができる機会は限定的だった。フリーでボールを受けたソンから前にボールを送る段階でトッテナムはまごついてしまい、アーセナルはリトリートの4-4-2を組みなおすための時間が簡単に与えられる。ケインの反転からの攻撃の加速は片手で数えられるくらいしか成功せず。このあたりはアーセナルのバックラインの迎撃が素晴らしかったといえるだろう。

 アーセナルは保持でフリーマンを作り、加速しゴールに向かうまでの設計図がはっきりしていたし、なによりそれを実現する力があった。左サイドはジンチェンコを中心に流動性を増しながら相手の中盤を引き出しての前進が出来ていたし、右サイドではアタッキングサードにおける侵入のための手段を常に複数作ることが出来ていた。

 得点のきっかけになったのはトーマス→サカの2本のパス。1本目はサカのシュート性のクロスが跳ね返り、ロリスが処理できないという幸運があったが、2本目はトッテナムがトーマスを取りどころにしようと人数をかけた瞬間をひっくり返した形。ラインを引っ張るエンケティアのランの恩恵を受けてバイタル付近でフリーになったウーデゴールが見事なミドルを打ち抜いて見せた。

 前進とプレスという2つの局面がうまくいかなかったトッテナムは後半に反撃。後方も連動したハイプレスでアーセナルを自陣に押し込むと、右サイドを中心に波状攻撃。復帰戦となったクルゼフスキを軸に背後に侵入しながらアーセナルのゴールを脅かす。アーセナルのバックラインが徐々にケインに強く当たれなくなっていったこともあり、トッテナムは自由にサイドにボールを送りこめる状況が増えていった。

 苦しい状況を支えたのがラムズデール。きわどいコースのファインセーブと甘いコースをキャッチングで処理する正確さの両輪でチームのピンチを断ち切ることに成功する。前線ではマルティネッリ、エンケティアのコンビがファウル奪取とボールキープで泥臭く時間稼ぎ。トッテナムの攻勢を少しずつ削っていく。

 何とか耐え忍んだアーセナルはトッテナムのプレスが弱まるのに伴い反撃を再開。敵陣に押し込む機会を増やしていく。攻め込んで3点目は隙あらば狙いに行くが、きっちりと敵陣でボールをキープし、時間を使うことを優先している感じである。

 トッテナムは終盤に再びアタッカーの増員で攻め込む機会を得るが、DFを増員したアーセナルは落ち着いてこれに対応。攻め込み得点を奪う前半と受け止めて抵抗する後半と前後半で異なる強さを見せたアーセナルが敵地制圧。宿敵相手のダブルと首位固めに成功した。

ひとこと

 似たアプローチをした両チームだが、できる部分の差がきっちり見えた格好。ハイプレスに対する抵抗、プレスを外した後のスピードアップ、そしてGKの3つのポイントはこの試合の勝敗を分ける部分だったといえるだろう。

試合結果

2023.1.15
プレミアリーグ 第20節
トッテナム 0-2 アーセナル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
ARS:14′ ロリス(OG), 36′ ウーデゴール
主審:クレイグ・ポーソン

今節のベストイレブン

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