チェルシー【10位】×フラム【7位】
新生チェルシーに立ちはだかるフラムのバック4
リーグ戦では不振を極めるが、冬の移籍市場で大暴れ。間違いなくピッチ外での欧州サッカーの主役は今チェルシーと言っていいだろう。対する相手は敵地で不覚をとったフラム。後半戦のリスタートには絶好の相手だろう。
どちらのチームも守備側は4-2-3-1がベースでアンカーを受け渡しながら守る形。よって、そこまで前からのプレッシャーが強い形でのスタートとはならなかった。まずは、保持側がこの状況にどのようにトライするかが問われる立ち上がりとなった。
チェルシーの保持はエンソをアンカー的に置く4-3-3がベースとなっていた。いつも言っているのだけど、一般的にアンカーは1人で前を向くべきポジションではない。この日のように受け渡しでマークがズレるのならば尚更である。
前半のチェルシーは周りがアンカーを助ける挙動が比較的できていた。チアゴ・シウバはロングボールを蹴り、バディアシルは持ち上がりからの配球で存在感を発揮。そうなれば、フラムはCBを完全に放っておくのは難しい。IHのマウントとギャラガーが降りてボールを受けるのも、エンソがフリーで受けるための手助けになっていた。
アタッキングサードにおいては右サイドが主役。全てが順調に運んでいれば今日ロンドンにはいないはずのツィエクを軸に、ギャラガーとジェームズが絡んでいく形。ただし、ジェームズはまだコンディション的に途上と言えるだろう。
ツィエクを起用する際はファーへのクロスは鉄板だが、ムドリクの抜け出しと噛み合わせるアイデアは面白かった。逆にいうと、ムドリクはそれ以外の形ではなかなか攻撃に絡めなかった。特にスピードがある割にはカウンター時に前を走れていないのは、彼の持ち味を考えると大きな減点ポイントになる。ネックになっているのはポジトラの強度の部分か、守備で下がり過ぎてしまう部分かあるいは両方か。いずれにしても今後解決していく必要があるだろう。
チェルシーのカウンターはリンク役となるマウントがスムーズさを欠き、フィニッシャー役となるハフェルツは精度が足りず、十分に相手に脅威を当てる形を連発できたとは言い難い。フラムは中盤のプレスバックが早く、ここで引っかかってしまうケースが多いのと、抜けてもマウントのところで詰まってしまう感があり、なかなかいい形が作れなかった。単発で決定機はあったが、物足りなさが先に来るのは確かだろう。
フラムのバックラインはチェルシーのカウンターの選択肢をきっちりと潰すことができていた。チェルシーはまだカウンターから複数の選択肢を突きつけるような形を作れていないので、一択となる選択肢をフラムがわかってても止められないところに作るか、相手のミス待ちかのどちらかになる。となると決定機の量産は難しい。
フラムの保持もバックラインからのボールの持ち運びでうまく相手を外すことができていた。急ぎ過ぎてしまうと、中央でエンソを軸とした網に引っかかってしまうが、サイドからキャリーできれば押し下げることができる。チェルシーとは異なり、ターゲットマンがいるフラムは大外からのクロスでOK。とはいえ、チェルシーも両CBを軸にクロスを堅実に跳ね返すことができていた。
チャンスの少ない前半が終わり、後半も堅実な展開は続く。フラムはミドルブロックからボールを引っ掛けてカウンターを発動するが、チェルシーもプレスの強度を上げながら対応していく。
チェルシーはHTに投入したマドゥエケが左サイドに登場。これに伴いククレジャはインサイドに絞りながら大外で1on1を作ることを優先するポジションをとる。大外の1on1であれば、現状ムドリクよりもマドゥエケということなのだろう。
ククレジャがインサイドに絞るアイデアは個人的には悪くなかったと思う。中央をプロテクトする形はカウンターの予防策になるし、2列目が降りて受けることを好む選手が多いフラムに対しては割と効果は高い。
フラムもきっちり中央を固めるチェルシーに対抗して、サイドから裏を取り直すなどカウンター時の工夫は十分。カウンターはチェルシーよりもスムーズさはあったし、プレスに出ていく余力も十分。フラムは後半も正面からチェルシーと向かい合うことができた。
更なるチェルシーの交代が攻撃を活性させたかどうかは怪しい。カウンターの先導役になっていたフォファナはともかく、スターリングの投入によるサイド攻撃のバランス再構築にはやや手を焼いたように見える。前半は司令塔的に振る舞っていたエンソも2トップ色の強い前線の構成や前への意識が高まるギャラガー(これはこれで効いていた)の助けを得られなくなり、なかなか保持で存在感を発揮できなくなる。
試合はスコアレスドローで終了。押し下げた先の解決策が見えなかったチェルシー。大型補強明けの一戦を勝利で飾ることはできなかった。
ひとこと
チェルシーに注目が集まる試合だろうが、フラムがタフな相手だったのは見逃せない。特にバック4の出来はスーパーでチェルシーのチャンスの芽を早い段階で積んでいた。チェルシーは兆しはあるが時間は必要。整理と構築を両方やらなければいけないポッターは重労働である。出場停止明けのジョアン・フェリックスには十分に見せ場を与えるチャンスは出てきそうだ。
試合結果
2023.2.3
プレミアリーグ 第22節
チェルシー 0-0 フラム
スタンフォード・ブリッジ
主審:スチュアート・アットウェル
エバートン【19位】×アーセナル【1位】
グディソン・パークが燃え上がる昼下がり
レビューはこちら。
残留請負人としてエバートンが命運を託したのはショーン・ダイチ。無骨な英国人監督が初陣で迎えるのは首位のアーセナルである。
ダイチは4-5-1を採用し、アーセナルに立ち向かう。彼らのコンセプトとして挙げられるのは中盤の運動量を生かしたバックラインのプロテクトだろう。特にアーセナルのストロングポイントであるサイドにおいてはSBとSHできっちりとダブルチームを形成する。それだけであれば、仮に抜かれた際には一気にチャンスになるため、ハーフスペースに同サイドのIHを置くことで予防策を講じるといった形である。
正直、これだけならば今季見られている一般的なアーセナル対策の範疇といえるだろう。エバートンが異なったのは、ミドルゾーンよりもアーセナル陣内側にかけるプレッシャーである。アーセナルがマイナスのパスを出すようにきっちりとホルダーを捕まえ、実際にラインを下げるとそれに合わせて高い位置を取る。この連動が素晴らしかった。
エバートンの中盤のプレスへの意欲は元から高かったが、むやみやたらとプレスのスイッチを入れるので後方がついていくのがしんどくなってしまい、結果的にとても間延びした陣形が残るという難点があった。4-5-1でむやみやたらとアーセナルのバックラインにプレスをかけるのは自殺行為なので、この試合のようにきっちりとスイッチを入れるタイミングを見極めて、それに合わせて一気に動き出すという形はエバートンの良さを生かすことができる素晴らしい手段である。
実際にそれに応えた選手たちも素晴らしかった。縦に走り回ったドゥクレとオナナはもちろん、彼らに合わせて横幅をかなり広く守っていたゲイェもアンカーとしてのタスクをとてもスマートにこなしたといっていいだろう。加えて、最前線ではキャルバート=ルーウィンが体を張り続けてアーセナルのDFを苦しめる。最低でもデュエルで引き分けに持ち込み、アーセナルの得意な波状攻撃を食い止めることが出来たのは彼の空中戦での働きが大きかったからにほかならない。
セットプレーからの先制点も狙い通りだ。ファーに構えていたターコウスキがウーデゴールの上から叩き込んでの先制ゴール。これまで再三ファーのカバーに回っていたサリバをスクリーンでブロックしたドゥクレが好プレーである。
アーセナルは後半の頭にうまくエバートンを敵陣におびき寄せながらボールを動かすことが出来てはいたが、得点したことでエバートンに過度なプレッシングの意欲がなくなったこともあり、そうした駆け引きは60分を境に減少していった。
交代で入った選手のパフォーマンスは評価が分かれるところ。トロサールは奮闘はしていたが、アイソレーションよりはもう少し味方と近い距離でプレーした方が活きる選手だろう。あまりにも他の選手との距離が遠すぎてしまい、全部剥がしてゴールを決めろ!という無茶ぶりをされていた感がある。
ジョルジーニョはチェンジオブザペースができる司令塔としての可能性は見せることが出来たが、要所でのミスと事前からわかっていたフィルター役としての強度不足が物足りなくなる映った人もいるだろう。縦パスを受けた選手からの展開も含めて、こちらもトロサールと同じく、ゲームの流れを根本から変える存在にはなり切れなかった。
粘り切ることに成功したエバートン。ダイチは初陣で首位を撃破し、まずはグディソン・パークのファンに情熱を再点火した。
ひとこと
この試合ができるならば、エバートンの残留ははっきり言って楽勝である。ブロック守備の強度、プレスのタイミング、確固たる攻め手。この雰囲気をキープできるか、そしてセンターラインに負傷者が出ないかがとにかく気がかり。光は見えたので、後はどう転がっていくかだろう。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
エバートン 1-0 アーセナル
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:60′ ターコウスキ
主審:デビッド・クーテ
ブライトン【6位】×ボーンマス【18位】
ヒーローは今日も最後にやってくる
まず、目を引いたのはボーンマスのプランである。非保持ではトレンドマークの4-4-2ではなく、アンソニーがポジションを一列下げる5バック型の形を採用。保持においては4-4-2的なバランス感覚で動いていたように思えるが、非保持の動きが目を引いたので、上のスタメン表では3バックをベースとした表記としている。
このボーンマスの非保持において特徴的だったのは5レーンをきっちり抑える意識の高さである。とりわけ、大外レーンをとっていたランプティと三笘の2人をがっちりと早い段階で捕まえることができていることが、ブライトンの保持の進撃を防ぐための策の一環である。
高い位置から捕まえにいく前線のプレッシングの意識もこの後方の勇気ある押し上げを後押ししていた。GKからの繋ぎに対しても厳しく咎め、バックラインからもなかなか繋ぐことができない。
ただし、この動きにはリスクもある。仮にスピードのある大外レーンのブライトンの選手を逃してしまうと、致命的なダメージを負う可能性があることである。加速したランプティから抜け出したグロスが独走を決めるシーンなどはその代表格。ここはネトの勇気のある飛び出しで事なきを得た。
事なきを得たといえばブライトン側が仕掛けたプレスから発生した大ピンチである。ネトのミスからビックチャンスを迎えたウンダフがCB、GK、ポストに三度阻まれるシーンは往年のブライトン風情のある部分だった。
ただ、PA内の対応が危なっかしいのはブライトンも同じ。攻め込むのが早いボーンマスのサイドアタッカーに対して後手に回ることが多く、PA内ではPK的な意味でかなり怪しい守備対応に追われていた。
しかし、時間の経過とともにブライトンはだんだんと主導権を握っていく。ボーンマス側の大外へのWGのチェックは依然として厳しいままだったが、三笘やランプティが降りる動きをつけることで背後に走り込むスペースを作る。降りる動きと裏に走る動きをセットにすることでブライトンは敵陣に入り込むトライを行う。
さらに、ブライトンは相手を背負う選手の手前側にポストをレシーブする選手を置くことで前向きでプレーする選手を作る。レシーブした選手がポストした選手の裏抜けの動きに合わせる背後へのパスが出ればボーンマスのラインはブレイクできる。ジャブのような縦パスと効かせる縦パスを使い分ける形でブライトンは徐々にデゼルビらしく攻略を進めていく。
後半は行ったり来たりしながらのスタート。三笘とぜムラ、アンソニーという両チームの左サイドのアタッカーがいい意味で目立つ立ち上がりとなった。
オープンな展開ということで特に後方の守備に不安があったブライトンだが、カイセドの登場によってフィルター機能はいくらか強化される。高い位置から奪いにいくボーンマスの前半のスタンスは時間の経過とともに減退。ミドルゾーンからリトリート気味に構える形に変化。後半途中から4-4-2に形を変えて守る。
ただし、それでもロングカウンターの可能性は健在。トラオレを軸とした長い距離のカウンターはブライトンのバックラインに冷や汗をかかせるには十分だった。
だが、ヒーローはトラオレではなくまたしても三笘。86分にサイドに開く動きをつけた後にPKに入り込み、難しい体勢のヘッドを強引に押し込むことに成功。2週連続の終盤の決勝点でまたしてもチームを救った三笘。5バックに再度戻してブロックを組む意識を整えたボーンマスを打ち砕いてみせた。
ひとこと
またしてもヒーローになった三笘。後半になってのギアチェンジはお見事。いつだってヒーローは最後にやってくる。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
ブライトン 1-0 ボーンマス
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:86′ 三笘薫
主審:マイケル・オリバー
マンチェスター・ユナイテッド【4位】×クリスタル・パレス【12位】
自信と不安の両面が可視化される勝利
FA杯で負傷したエリクセンの残りのシーズンの欠場が発表され、マンチェスター・ユナイテッドの過密日程はより過酷さを極める状況になった。2月もミッドウィークも含めて空いているところはすべて埋まっており、ELのプレーオフを勝ちあがれば、3月の代表ウィークまでは延々と週に2試合の運用が続くことになる。
そのため、この試合の立ち上がりのクリスタル・パレスのように落ち着きなく攻め込んでくるチームはめんどくさいはず。すぐにボール保持で落ち着けることができたのは安心材料だったけども。
アンカー役であるカゼミーロを受け渡しながら、4-4-2型のプレスを仕掛けてくるパレスに対して、ユナイテッドは敵陣をどのように攻め込もうか思案していた。とりあえずサイドから突っつくか!と決めた一発目でPKを奪うことが出来たのは幸運。手を不用意に上げてしまった感のあるヒューズの行為は今のサッカーにおいては軽率と捉えられても仕方がない。
このPKをブルーノ・フェルナンデスが決めてユナイテッドは先制。この先制ゴールでユナイテッドはだいぶ落ち着きながら試合を進めることが出来た。
先制点以降もペースを握ったのはマンチェスター・ユナイテッドだった。サイドを起点にグイグイ押し込み、クリスタル・パレスにラインを下げさせる。コーナーキックはパレスの弱点の1つ。流れの中での決定機はなかなか生まれなくても、セットプレーを軸に追加点の匂いは十分に感じられる。ユナイテッドの日程を踏まえれば、こうした流れは非常にありがたい展開といえる。グアイタがビックセーブを繰り返していなければ、試合は早々に追加点が出ていた可能性もある。
一方のパレスはなかなか自陣から脱出することができない。プレッシングもなかなか自信をもってできる状況ではないし、頼みのロングカウンターもユナイテッドのバックラインの前を向かせる前に潰す対応で簡単に封殺。特にゴールに直結するセンターラインのプロテクトは強固で、クリティカルな動線でのカウンターはことごとく無効化されていた。オフサイドラインの駆け引きも含め、序盤の30分は完全にユナイテッドがペースを握っていた。
それでも30分を過ぎれば徐々にサイドから押し込む形を作れるように。だが、ゴールに向かうにはここから崩しの過程を踏まなければならない。となると、パレスにはなかなかブロックをこじ開ける武器が見当たらない状態が続いてしまう。
前半の終盤はユナイテッドのライン間が空き始め、徐々にパレスの2列目が呼吸ができるようになってくる。後半の頭はこの流れが強く、前半と同様に落ち着かない展開が続く。試合はややオープンな展開になったが、どちらのチームも守備側は良く耐え忍ぶことが出来たといえるだろう。
そうした中で次にスコアを動かすことが出来たのはユナイテッド。中央でのコンビネーションから左サイドのショーに見事なサイドチェンジ。交代で入ったガルナチョがこの連携に絡んでいるのも好印象である。最後は好調を維持するラッシュフォードが決めて2点のリードを確保する。
このまま安全運転で行けば、試合はユナイテッドの完勝で終わる公算が高かった。しかしながら、インプレー中の接触から両チームが入り乱れる大騒ぎに。騒ぎに紛れてヒューズにのど輪をかましていたカゼミーロが一発退場を食らい、ユナイテッドは10人での90分を強いられることとなった。
4-4-1で構えるユナイテッドに対して、この試合で初めて押せ押せムードとなるきっかけをつかんだクリスタル・パレス。早々にセットプレーから1点を返すと、右サイドに移動したオリーズを軸に同点を目指したクロス攻勢を仕掛ける。だが、もう1つ踏み込んだ攻撃が出来ず、決定的なチャンスを生み出すことができない。
ユナイテッドのアタッカー陣は頑張ったように思う。10人ながらも前線で時間を作り、パレスの攻撃の時間を少しでも削るように奮闘。少人数でもある程度前で時間を作れると判断したテン・ハーグはマグワイアとリンデロフのコンボを投入して、後ろを固める方策に出る。ちなみにザビッツァーもこのカオス気味の展開の中でデビューを果たす。こんなバタバタした初戦になるとは思わなかっただろう。
何とか逃げ切りに成功したユナイテッド。エリクセンに続き、カゼミーロも失ってしまったのは痛いが、上位2チームが敗れた中で大きな意味を持つ勝ち点3となった。
ひとこと
ポゼッションが安定して、攻守無理なく運用出来て来たという自信とスカッドに襲い掛かる過密日程という不安の両面が見える昨今のユナイテッド。この試合ではそのどちらもくっきりと可視化された終わり方になったといえるだろう。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
マンチェスター・ユナイテッド 2-1 クリスタル・パレス
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:7‘(PK) ブルーノ・フェルナンデス, 62’ ラッシュフォード
CRY:76‘ シュラップ
主審:アンドレ・マリナー
ブレントフォード【8位】×サウサンプトン【20位】
前進の使い分けと手段の豊富さが勝負を分ける
結果的にブレントフォードの完勝に終わったこの試合を大きく分けたのは前進のスムーズさと前進の手段の豊富さの2点のように思う。その部分では明確にブレントフォードがサウサンプトンに優位を作っていたといえるだろう。
サウサンプトンはアンカーを受け渡すように守っており、ブレントフォードのバックラインは比較的ボールを持つ自由を許された立ち上がりとなった。そのため、ブレントフォードはバックラインの数的優位からIHの列落ちやSBを壁にしてのアンカーのノアゴールへの配球などでショートパスを使いながら前にボールを進めていく。
アンカーを解放してからのライン間を活用しての縦パスからの攻撃はブレントフォードにとっては手ごたえがあるもの。サウサンプトンにアンカーから目を離してしまった代償をきっちり払わせることが出来ていたといってもいいだろう。
一方のサウサンプトンもラビアのフィードという明確な武器を活用できており、攻撃のルートがないわけではなかった。ウォード=プラウズやエルユヌシの抜け出しなど、後方からのロングボールをチームとして生かそうという意志も十分に感じることが出来た。
ただ、前進がうまくいかない時にアバウトなボールを許容できないのがサウサンプトンの弱みである。ブレントフォードにはトニーやウィサへのロングボールからの前進という逃げ道があった。特にサウサンプトンのRSBのブリーはブレントフォードに長いボールのターゲットにされ、非常に競り合いに苦しんだ。サウサンプトンにはそうしたロングボールの逃げ道がない。かつ、前進のルートもややラビアに偏っている感じもする。
こうなると前進の頻度が両チーム違っていても不思議ではない。セットプレーからのベン・ミーの先制点、そして慌てて前プレスに出て来たサウサンプトンに対して、擬似カウンター気味に決めた追加点とブレントフォードが前半の内に立て続けにゴールを決めてリードを奪う。
困ったサウサンプトンはハーフタイム明けに前線を入れ替えて勝負。明らかにターゲットになるオヌアチュを前線に投入し、長いボールの収まりどころを作りに行く。ハイプレスも同時に起動させつつ、2失点分を取返すためのトライをしていく。
交代選手を前線に入れてアクセントにしようというアイデアは理解できるが、試合を明らかにサウサンプトンペースに持ってこれるほどドラスティックな交代にはならなかった。加えて、前半は司令塔として存在感を出していたラビアはロングボールの増加と共に試合から締め出され、むしろオープンな展開においての守備対応に苦しむこととなった。
ブレントフォードは落ち着いてサウサンプトンのロングボール攻勢を跳ね返すと、徐々にカウンターから主導権を取り戻すように。ここでもトニーがいる安心感は大きい。終盤には左サイドからのヘンリーのクロスから3点目を決めて試合は完全に決着。ホームでブレントフォードがサウサンプトン相手に完全勝利を挙げた。
ひとこと
ブレントフォードは盤石の勝利。相手の弱みを見つけて、きっちり漬け込んでみせた。サウサンプトンの新戦力も楽しみではあるが、脆弱性が際立つ分、良さより先に粗が見えてしまうのはやや残念である。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
ブレントフォード 3-0 サウサンプトン
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
BRE:41‘ ミー, 44’ ムベウモ, 80‘ イェンセン
主審:ダレン・ボンド
ウォルバーハンプトン【17位】×リバプール【9位】
バックラインに感じるちぐはぐさ
未だ年明けのリーグ戦では勝ちがなし。楽な相手がいなかったというエクスキューズはあるとはいえ、内容面の乏しさを踏まえれば、リバプールなのだから仕方ないの一言で片づけるには重たい試合が続いている。クロップへの風当たりも日に日に強くなるばかりだ。
監督交代を境に徐々に勢いが出てきているウルブスはリバプールに真っ向勝負を挑んできた。バックラインへのチェイシングは同サイドに限定して、狭いスペースからリバプールを脱出させない。特にスローインに対するプレッシングの厳しさは顕著。脱出ルートが見つからないまま始めたリバプールに対して、ウルブスはプレスをはめきってショートカウンターに移行する場面もあった。
バックラインに厳しくプレッシャーに行くというスタンスはリバプール側も同じものだった。だが、ウルブスのバックラインはリバプールよりも安定してこのプレッシャーをいなすことが出来ていた。CBが大きく開き、ライン間でGKやレミナがレシーバーとなり、ボールを動かしていく。低い位置を取るのがネベスではなく、レミナだったのは少々意外である。だが、ウルブスは長短のパスをうまく使い分けながらプレスを脱出することが出来ていたので特に問題はない。
この日のリバプールにはアタッキングサードで感じられる違和感があった。サイド攻撃をオーバーロード気味でやろうというのがこの日のコンセプトにあったのかもしれないが、やたらとそこにバックラインの選手が絡みたがる。アレクサンダー=アーノルドが高い位置を取るのは日常かもしれないが、マティプや逆サイドのロバートソンもやたらと絡みたがるのは不思議だった。
守備陣の攻撃参加は重要ではあるが、その分後方で残る選手の負荷が増える。特にこの日のリバプールのバックラインはやたらと中央に突っ込むような選択肢を取るので、そうした負荷を後方がもろに受けるケースがとても多かった。
ゴメスは後方に残ることが多かったが、そんなに危なくない場面でもやたらと持ち場を離れて出て行くことが多かった。基本的には安全第一を求めたいポジションなので、あまり良くないことだが、あえて彼を弁護するのならば、不安定な攻撃参加によってポジション感覚が乱されたであろうことには言及しておきたい。
そんなゴメスの深追いから、リバプールの失点はスタートする。出て行ったゴメスが戻り切らないまま、ロバートソンとマティプの間をファン・ヒチャンがかち割る形で、オウンゴールを誘発。ウルブスにとってやや幸運な場面はあったとはいえ、出て行ったゴメス、ゴメスが戻る前に出て行ったロバートソン、寄せ切れなかったマティプとこれだけツッコミどころがあれば、失点もやむなしだろう。
逆にウルブスのアタッカー陣は好調。得点を挙げたヒチャンだけでなく、ボールを抜群に収めることができるクーニャも効いている。ウルブスの追加点はセットプレーのボールをクーニャが収めたところから。最後に仕留めたのはドーソン。前半のうちにリードを広げる。
リバプールの保持はサイドのオーバーロードと即時奪回を含めた中央での突撃が多かったが、結局一番効いていたのはガクポやヌニェスのハーフスペースの突撃であることは否めない。なお、この試合ではガクポとヌニェスの位置が入れ替えられていたが、サイド起用時も最前線に裏抜けで突っこんでいけるヌニェスに比べると、ガクポの存在感はきっちり割引されていた感がある。
アーセナルとのELではワイドに張っているシーンもあったし、ガクポ自身にワイドな適性がないわけではないように思うが、リバプールは今季左サイドのアタッカーを生かせていない感があるので、なかなかそうした持ち味が出なかった。ガクポがここ数試合でライン間を浮遊するフィルミーノみたいな働きで強みを見せたというところもあり、リバプールファンの中でこのポジションの入れ替わりに否定的な声が出る理由もわからなくはない。
後半になると、アタッカーの抜け出しから作られる決定機はだいぶ増えたように思う。バックラインからの右への展開から、逆サイドに振り、左の大外からハーフスペースに抜けていく形がかなり見えるようになった。
前半に見られた唯一の手段から逆算して攻撃を構築できるようになったことでリバプールはかなり攻勢を強める。押し込む→エリア内侵入の部分が強化されたことにより、前がかりな布陣が得点に向けた圧力とリンクするようになってきた。
ウルブスはとにかくボックス内で粘っていたが、なかなかリバプールの圧力は強烈。ショートカウンターを1つでも仕留めれば、流れが大きく変わった可能性もある。このあたりは今の前線が決定力で仕事ができないという苦しい事情もある。
ウルブスは2点のリードを得たことで、いったん受ける形で守る後半の立ち上がりだった。だが、強烈な圧力を受けたため、傷が致命的になる前に再び前からのチェイシングを開始する。個人的には素晴らしい判断だったと思う。
試合がオープンになる中で次にスコアを動かしたのはまたしてもウルブス。高い位置でフリーズするゴメスとロストしたバイチェティッチのコンボでウルブスに大きなカウンターを許したリバプール。アダマ・トラオレからのラストパスをフリーで走り込んだネベスが決めて試合を決定づける。
最後までどちらもファイティングポーズを取り続けたことはよかったが、試合の結果はワンサイド。リバプールはなかなか光が見えず、欧州カップ戦争いからはまた一歩後退することとなってしまった。
ひとこと
復調気配とはいえ、降格圏に近いチームにここまで叩きのめされるのは少々応えるだろう。特に前半のバランスはクロップの深刻な血迷い方がピッチに出ているように思えてならない。もはや、欧州カップ戦へのルートはCL優勝が最短だろう。いきなりのラスボス相手なのは懸念ではあるが、なんとかここまでに復調しておきたいところだ。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
ウォルバーハンプトン 3-0 リバプール
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:5‘ マティプ(OG), 12’ ドーソン, 71‘ ネベス
主審:ポール・ティアニー
アストンビラ【11位】×レスター【14位】
ロジャーズが示した新たなバランス
なかなか結果が出ずに降格圏が近づいているレスター。アストンビラ戦に向けてロジャーズが選んだメンバーは非常に目新しいものだった。まず1つは明確に4-2-3-1型を採用したこと。これまでは4-1-4-1からデューズバリー=ホールがトップの守備に加わる4-4-2への変形でプレスを行っていたが、この試合では明確に前に残る2人が素直にプレスをかけていった。
また、いくつかのポジションで序列の変化が起きて居そうな予感もある。CHは方針転換の色が強いかもしれないが、RSH、LSB、CBに新戦力が組み込まれた興味深い。そして見逃せないのがCF。ヴァーディではなく先発はイヘアナチョである。
レスターのプランは4-4-2ブロックを構えつつ、機を見て後方が列を押し上げながらハイプレスを仕掛けることだった。これに対してはビラはショートパスを中心に打開を試みる。彼らは4-4-2から3-2-5気味に変形。左のSBのディーニュが大外を駆け上がり、SHのブエンディアはエリアに突撃していく。相棒にカマラが入ってからバランスが前よりのドウグラス・ルイスも積極的にエリアに入り込む動きを見せていた。
試合は基本的にはビラの保持と跳ね返すレスターという構図で進んでいく。レスターの保持は縦に早いものが中心だったが、序盤のロングボールはカマラとビラのCB陣において跳ね返されており、お手軽な陣地回復は望めない状況だった。
よって、試合はレスターのハイプレスに対するビラのプレス回避の結果によって大勢が決まることとなる。ビラの先制点はティーレマンスが出て行ったところをビラが同サイドからの脱出に成功し、ガラガラになったバイタルから放たれたブエンディアのミドルがきっかけになっていた。
一方ですぐにレスターはプレスに出て行く際の成功例も示すことになる。無論、同点ゴールのシーンの話である。1列前に顏を出したデューズバリー=ホールのボール奪取にカマラが捕まり、そのままショートカウンターが発動。最後はマディソンが仕留めてあっという間に同点に追いつく。この試合の構図は試合終了まで保持で崩すアストンビラと、プレスからのカウンターを発動させるレスターの関係性で進んでいった。
レスターがこの日見せたバランスはなかなかに興味深かった。中盤より前にフィルター役といえる、対人守備の強みがある選手はいないのに、ボール保持で時間を作ることはできない。そして、撤退守備での我慢も特に得意なわけではなさそうで、オーソドックスなアストンビラの3-2-5変形には完全に後手を踏んでいる。
攻撃はとにかく愚直に走り回っており、前線は裏抜けに特化しているといっていいだろう。レスターの2点目はその賜物である。アシストとなるクロスもとにかくスペースに放たれていた。そして、極端にカウンターに注力しているけども、そこにヴァーディはいない。目立っていたのはボール奪取後に瞬間的にスルーパスを刺しまくるマシンになっていたティーレマンスと、軽いドリブルでカウンターの旗手となっていたテテの2人だった。
先述通り、レスターのブロック守備はアストンビラの3-2-5型の変形に特に対応できていた感じはしなかったため、ビラも押し込むことができれば、2点目のようにご褒美をもらうことができる。だが、この日のビラのボール保持はやたらと不安定だった。特に怪しかったのがCHやCBのパスの判断である。
中央に簡単にパスを刺そうとしたり、あるいはボールを悠々と持とうとするとあっという間にレスターの列を上げたプレスに飲み込まれてしまう。カマラはまさに厄日といっても良く、3失点目でのシーンでも自らのボールロストからレスターにゴールを許してしまうことになる。
ビラのビルドアップはサイドをきっちり迂回すれば特に問題なく前進ができるように見えた。かつ、押し込むことができればレスターの守備陣には崩れるような兆しも見えてくる。それだけにこの日のビラのバックラインとCHの配球は悪い意味で目につく。後半開始直後のコンサの強引なパスは前半から引き続きレスターにショートカウンターの契機を与えてしまう流れが継続することを示していたかのようだった。
互いにスタンスを変えない中で試合終盤に攻撃が実ったのはレスター。裏抜けへの対応をミスったビラが処理きれなかったこぼれ球をプラートが拾いダメ押しゴール。裏抜けだけは実直にというこの日のレスターの前線の信条を体現したゴールだった。
ビラは2点差を付けられはしたものの、敵陣に入り込めればゴールが見えてくるという手ごたえがあったのだろう。SBを両方交代しつつ、サイドからボールを運ぶ機会を増やしたのもレスターのこの日の不具合をきちんとついている感があった。
しかし、最終的には2点のリードは縮まらずに終了。アウェイのレスターがビラ・パークの攻略に成功した。
ひとこと
革新的な新戦術の発明というわけではないけども、この日レスターが見せたプランはロジャーズが発見した新しいバランスという感じがして興味深かった。苦手な局面の多さや、嵩むであろう失点を考えれば劇的な上昇となるかは微妙なところだが、この試合でうまくいったことで後半戦のベースラインになってもおかしくはないなと思った。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
アストンビラ 2-4 レスター
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:9‘ ワトキンス, 32’ サウター(OG)
LEI:12‘ マディソン, 41’ イヘアナチョ, 45+2‘ テテ, 79’ プラート
主審:ダレン・イングランド
ニューカッスル【3位】×ウェストハム【16位】
いい意味で今年らしくない
非常にバタバタした立ち上がりだったと言えるだろう。開始直後に接触で痛がっていたはずのウィロックが1分も経たない間にネットを揺らしていきなりニューカッスルが先行。かと思いきやこれがオフサイドで取り消される。
際どいオフサイドをリプレイで検証していると、いつの間にか画面が切り替わり、抜け出したウィルソンが1on1を沈めて正真正銘の先制点が入る。ロングボールの跳ね返しから、ウェストハムのCBの間をかち割ったラストパスから抜け出すことができたようである。ガチャっとした立ち上がりながらニューカッスルが会心のスタートを決めることに成功した。
だが、ウェストハムはこの落ち着かない展開の恩恵を享受していたように見える。バックラインからのロングボールから左サイドを中心に縦に速い攻撃でニューカッスルの固い守備を破りにかかる。
トップのアントニオがこうした形で存在感を見せるのは実に久しぶり。開始直後の失点は想定外だろうが、その後のロングカウンターを軸とした形は従来のらしいウェストハムのパフォーマンスだったと言えるだろう。試合後にライスが「ここ数年のウェストハムのようだった」とコメントしていたが、見ている側の自分も同じ印象を持った。
ニューカッスルは試合を落ち着かせようとしてもウェストハムはこれに徹底的に抵抗。より、調子がいいチームがリードしている状況を制御しようとしていたが、ウェストハムはそれを許さなかった。カラバオカップの一発退場でここから3試合欠場のギマランイスがいなかった影響もあるだろう。
なんとかV字のポゼッションでウェストハムのプレスを回避したり、裏に抜けるウィルソンの動きで時間を確保はできていたが、追加点を見せる動きや相手を後手に回らせるプレーは限定的だったと言えるだろう。
非常にエネルギッシュなウェストハムはセットプレーから同点に。再三チャンスを作っていたセットプレーからついに同点のゴールを決めてみせる。同点ゴールを決めて以降もウェストハムはスタンスを変えずに食らいついていく。アップテンポ、カオス。ニューカッスルの手のひらの外で試合を進めたいと言うのがウェストハムのスタンスだった。
後半も構図は同じ。ニューカッスルはポゼッションを安定させながら左右のクロスを軸に勝ち越しのゴールを狙う。ウィルソンが裏に抜ける形を作っているのも、前半と同じ流れである。対するウェストハムも高い位置からのメリハリの聞いたチェイシングが非常に効いており、この試合の前半で見られたバランスで試合は進んでいく。
このバランスを壊したのはニューカッスルの方だった。ウェストハムの攻撃終わりに素早いロングカウンターから決定機を徐々に作り出すようになっていく。撤退守備に対しての効果的な武器になったのは新加入のゴードン。途中交代でサン=マクシマンに代わって左サイドに入ると、ボールのキャリーとラストパスの両面で攻撃を活性化。ギマランイスの不在でやや単調になりがちだったニューカッスルのアタッキングサードの攻撃を手助けする。
ウェストハムは流石に終盤は息切れがあった。ニューカッスルの攻撃が終わったタイミングでも長い攻撃を繰り出すことができず。無理の効くアントニオからイングスにFWが代わった影響も無視はしにくいだろう。
それでも追加点は許さずにタイスコアをキープしたウェストハム。いい意味で今年らしくないソリッドな90分でセント・ジェームズ・パークで勝ち点を得ることに成功した。
ひとこと
モイーズは手応えを感じた90分になったはず。メンバーの層よりもコミット具合が問題であり、この日のパフォーマンスであれば、どこが相手でも勝ち点を狙えるだろう。ニューカッスルはギマランイスの不在の影響でテンポを落ち着かせられなかったのであれば、引き続き難しい舵取りになるだろう。なんとか解決策を見出したいが。
試合結果
2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
ニューカッスル 1-1 ウェストハム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:3′ ウィルソン
WHU:32′ パケタ
主審:ピーター・バンクス
ノッティンガム・フォレスト【13位】×リーズ【15位】
安全な最小得点差
片方が残留からは安全な距離を保っていて、片方は危機感がある状況。W杯明けの再開直後の段階では前者がリーズ、後者がフォレストのはずだった。しかしながら、今は立場が逆転。連勝で一気に順位を上げたフォレストとは対照的にリーズは未勝利が続き、気づけば降格圏がすぐそこまで来ている。
立ち上がりのリーズの勢いにはそうした危機感が溢れていたと言ってもいいだろう。ハイテンポで試合を支配し、フォレストを力で押し切る。力こそパワーという感じの健気な猪突猛進ぶりはゴール前に迫る過程では少しやり過ぎ感も垣間見える。あまりにも大雑把すぎて崩しから得点を奪う!というよりもただただ真っ直ぐにゴールに向かう!というニュアンスが強すぎるようにも見えた。
フォレストはそんなリーズの勢いに気圧され気味な序盤戦となった。雰囲気に飲まれてしまい、なかなか前進できないフォレストだったが、貴重な前進の機会を活かすと、FKから先制。ジョンソンがミドルから放った見事なシュートで押され気味の試合のスコアを先に動かすことに成功する。
得点直後は試合を落ち着かせることに成功したフォレストだが、徐々にリーズはペースを取り戻す。勢いも大事だが、やはりロジカルに前進が欲しいところ。ロカがギブス=ホワイトから入れ替わって前を向いたシーンのように、どこから中盤より後ろでズレを作りたいところではある。
アタッキングサードではニョントが攻撃の出口として奮闘するが、ややシュートが正直すぎる嫌いがあるのが玉に瑕。百戦錬磨のケイラー・ナバスを慌てさせるにはもう少しきっちり対面の選手を抜いてコースを作る必要があるだろう。リーズは前半のうちに追いつくことができず、試合はビハインドでハーフタイムを迎える。
後半も前半の焼き直しのような立ち上がりでリーズがボールを持ちながらガンガン攻めていく。迎え撃つフォレストはソフト面とハード面の両方で改善を図る。ソフト面というのは交代選手である。ニョントの対面であるRSB、ダニーロの対応にやや不安があるフォレストはそれぞれオーリエとコルバックを投入。いぶし銀の2人の活躍により、フォレストはそれなりにフィルター能力が強化される。フォーメーションは4-2-3-1に変更。サイドもバランスよくカバーできるプランに方針を変えた。
リーズは前節で指摘した問題点が改善する様子がない。アタッカーは常に単騎で勝負。それぞれが個人個人で戦い方を決めている節がある。ニョントの突破はある程度脅威だが、シュートコースは限定されるため、フォレストを打開する武器になっていない。自分で前を向き、自分で抜ききり、自分でフィニッシュする。1人1人がそこに向かって戦っている感があり、なかなか連携面を生かした決定機を迎えることができない。
バンフォードが下がってからはよりその傾向が顕著。クロスのターゲットマンがいなくなってからは許容できるアバウトさがさらに減り、リーズはより一層苦しい戦いを強いられる。
フォレストのカウンターも単発ではあったが、攻撃の匂いにきっちりと蓋をすることができているため、悪い試合運びとはいえないだろう。むしろ、大人にリードをきっちり守るフォレストの方が数段リーズよりも落ち着いて構えることができていた。
余裕を持って逃げ切りに成功したフォレスト。リーズのポゼッションを一蹴してさらに残留に向けた地位を固めた。
ひとこと
最小得点差なので何が起こるかわからないのがセオリーではあるのだが、そのセオリーを持ってしてもリーズの攻撃に得点の可能性を感じなかった。豊富な前線のタレントを単騎アタックで浪費しているのはとても勿体無い。
試合結果
2023.2.5
プレミアリーグ 第22節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 リーズ
ザ・シティ・スタジアム
【得点者】
NFO:14′ ジョンソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
トッテナム【5位】×マンチェスター・シティ【2位】
玉砕覚悟にならない予感
前回の対戦では2点のリードを溶かしてしまい、後半に大量失点での逆転劇を許してしまったトッテナム。熾烈を極める4位争いでこれ以上遅れないためにも、ホームできっちりシティにリベンジを果たしたいところである。
トッテナムのゲームプランで注目が集まるのはどこの時間にプレスを集中的に行うかである。90分間プレスをやるのは難しい彼らが試合の立ち上がりにどこまで前がかりに体力を使って相手を追い回すかは気になる部分だ。
結論から言うと、トッテナムは前半からシティのビルドアップに対してプレッシングをかけていった。当然気になるのは後半のペースダウン。玉砕覚悟での先行逃げ切りベースだとしたらかなりリスクがある。しかしながらこの日はボールを奪った後のポジトラが軒並み好調。今季なかなか鋭さを出すことができないソンすら、ドリブルでスムーズに敵陣にボールを運んでいたことから「もしかしたら90分持ってしまう?」と予感させる動きだった。
シティは左にリコ・ルイスを置く形をテストする。ルイスがインサイドに絞る3-2型の後方の構造は同じで、普段の形が左右対称になっていると考えていいだろう。IHの一角であるベルナルドはかなりビルドアップに関与する意識が高く、低い位置をうろうろしていた。
これまではルイスとロドリで引き寄せた背後のスペースをハーランドが使うトライをしていたシティだが、そこから先の攻撃を構築できないという難点があった。ベルナルドを中央に置くプランは中盤での数的優位をハーランドが降りる動きをなるべく減らした状況で前進を狙う格好だろう。
しかしながらこの日のシティはやたらインサイドを執拗に狙いすぎていた感がある。トッテナムの守備は2列目の横幅がナローに設定されているように中央を固める意識が高いものだった。そこに突っ込んでいくことで進んでボールロストを誘発していた感がある。
先に述べたようにこの日のトッテナムの3トップを軸としたカウンターは非常にキレが良く、シティのバックラインがカウンターを簡単に処理できるレベルではない。加えて、左サイドではグリーリッシュがエメルソンとレベルの高いマッチアップを見せており、大外に起点を望めない状況ではなかった。
相対的に試合をうまく運んでいたトッテナムが先制したのは14分。前回対戦でも見られたような高い位置からのプレスがハマり、最後はケインがプレミア通算200ゴール目を決めてみせた。シティはロドリが中央にまずいパスをつけてしまったのが痛恨だった。
リードで迎えた後半、トッテナムは引き続き高い位置からのプレスでシティを迎撃する。やはり、この日のトッテナムはフィジカルコンディションが良好。後半もクオリティを落とさずにプレッシングを行うことができていた。ポジトラへの前向きな姿勢はリードを得ても変わることはなし。ロリスすら長いキックでロングカウンター一発を狙うなど、常にシティ側のゴールを脅かす姿勢を見せていた。シティにとっては厄介極まりないことだろう。
シティは前半と同じ文脈で勝負をしていたのだが、なかなか打開のきっかけを掴むことができず。デ・ブライネの投入から4-2-3-1にシフトしてゴールを狙う。ベルナルドが位置を下げた分、シティはSBは大外でのプレーが要求される。しかし、ルイスは慣れない左サイドだったこと、ウォーカーはためを作れるマフレズがいなくなったしまったことからなかなか攻め上がりのタイミングを作ることができない。
最終的にはトッテナムは5-3-2に移行して自陣のゴールを固める。後ろに重心を傾けてなおホイビュアが高い位置からプレスに出ていくなどややギャップができやすい状況ができていたが、シティはこのギャップをつくことができず。終了間際にロメロを退場に追い込んだのがグリーリッシュというのはなかなかにこの試合を象徴している感がある。
最後までシティはネットを揺らすことができずトッテナムは逃げ切りに成功。エースのハーランドがシュート0に抑えられてしまったシティは首位アーセナルとの勝ち点を詰める絶好のチャンスを逃す格好になってしまった。
ひとこと
シティにとっては相性の悪いカードではあるが、相性以前にそもそも有効打を打てなかったことがこれまでのトッテナム戦とは異なる部分である。週末には前半戦で勝ち点を落としているビラ、そしてミッドウィークはアーセナルとの一戦。CL前に立て直しを図り、リーグで優位を取りたいところだが。
試合結果
2023.2.5
プレミアリーグ 第22節
トッテナム 1-0 マンチェスター・シティ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:15′ ケイン
主審:アンディ・マドレー