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「FIFA World Cup QATAR 2022 チーム別まとめ」~オーストラリア代表編~

目次

第1節 フランス戦

■最悪の立ち上がりからギアを踏み込み直して逆転勝利

 「優勝を目指す強豪国は序盤にピークを持ってこない」というのは定説になりつつある。その定説の存在を感じさせるのがこの日のフランスの立ち上がりだったと言えるだろう。規律的な緩さを感じ、立ち上がりは同日にサウジアラビアに敗れたアルゼンチン以上に心配になる展開だった。

 WGのムバッペとデンベレはプレッシングにおいて積極的に高い位置をとりにいくのだけど、背後のスペースをケアする選手が皆無。遅れてCHが出ていくか、あるいは遅れてSBが出ていくか。どちらにしても後方のユニットは4-3で守るケースが頻発するフランスは中盤の歪みが頻発。オーストラリアにそこにめちゃめちゃ付け入ることを許す立ち上がりだったと言えるだろう。

 さらにはWGとSBの1on1においてもオーストラリアは活路を見出すことができる展開に。特にパヴァールはオーストラリアにとって攻めることができていたポイントだった。だが、結果を出したのは逆サイドの突破。右サイドから侵入したオーストラリアがファーへのクロスを上げる。待ち受ける左サイドではパヴァールを出し抜いたグッドウィルがゴールを決める。

 フランスにとってはまさに踏んだり蹴ったりな失点。サイドを破られた原因はリュカが一連のプレーで怪我を負ってしまったから。非接触型の負傷で大怪我の公算が強そうな様子だったのは非常に心配だ。フランスにとっては先制点献上と負傷者発生という考えられうる限りの最悪のスタートを切ることとなってしまった。しばらくはなんでもないところでの非常に軽いミスが続き、端にも棒にもかからない展開が続くフランス。先制点と負傷者の動揺が見えた立ち上がりになった。

 しかしながら、悪い流れの時間も含めてフランスは攻撃の手を緩めることはなかった。サイドにおいてはオンザボール、オフザボールにかかわらず、ムバッペとデンベレがひたすらスピード勝負を挑んでおり、エリア内にボールを入れる迫力は十分に担保。オーストラリアのコンパクトな4-5-1に対して、勝負できるポイントがあったのは強みと言えるだろう。

 懸念であるボール運びも中盤に降りてくるグリーズマンの登場で懸念は解消。保持時においては実質フリーマンのように振る舞うグリーズマンはオーストラリアにとっては常に厄介な存在に。低い位置ではオーストラリアのプレス回避の急先鋒になっていたし、サイド攻撃では両翼を助ける+1として猛威を奮っていた。この日のフランスの攻撃の中心は間違いなく彼だったと言えるだろう。

 フランスはセットプレーの流れから同点。ラビオのゴールでセカンドチャンスをものにし、前半の内に追いついてみせる。オーストラリアからするとここだけでは絶対にやらせたくなかったはず。痛恨の失点と言えるだろう。

 オーストラリアの受難は続く。前半はポゼッションの起点となっていたフランスのWG背後のオーストラリアのSBが決定的なピンチを作り出してしまう。アトキンソンはトラップミスでラビオとムバッペに挟まれる状況を作られると、フランスはショートカウンターからジルーが勝ち越しゴールをゲット。立ち上がりは攻めの起点にできていたはずのポイントから失点につながってしまうのは辛いところである。

 以降のフランスは序盤に見られたような緩さは消え去るように。前線から無理にプレスに行くことはなく、WGはプレスバックを優先。SBが受ける背後のスペースを消すことでオーストラリアの前進のきっかけを取り去る。パヴァールのところは唯一不安が残るポイントではあったが、オーストラリアはそもそもそこまで辿り着く機会が限定的なので問題なしというところだろう。

 後半になっても試合の構図はほとんど変わらない。プレスラインを若干前に設定し、高い位置からのプレスを強化したようにも見えたが、試合の展開に大勢を与えることはなし。フランスは前半と同じ仕組みで問題なくポゼッションができていた。

 実質トドメとなる3点目は爆走し続けていたWGコンビから。デンベレのクロスはピンポイントでムバッペのもとに。デンベレ、ちゃんとすればちゃんとしてるなというのがこの試合の感想。前回大会でポグバをマンマークの兵隊として鍛え上げることができたことを見ても、スター選手をちゃんとさせられるかどうかがデシャンのフランスの成功の分かれ目なのかなと思う。デンベレがちゃんとし続けられるかはフランス成功の鍵を握っている可能性もあるのかなとほんのり思ったシーンだった。

 仕上げとなった4点目はジルー。ベンゼマに「ゴーカート」と揶揄されてはいるが、うまく行く時には常にジルーの影があるというのもまた近年のフランスの特徴でもあったりする。

 最悪の立ち上がりからリカバリーをしてみせたフランス。ギアを入れ替えて、エンジンを踏み込んでから完成度は段違い。オーストラリアを一気においていく試合運びで逆転勝利を呼び込んでみせた。

試合結果
2022.11.22
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第1節
フランス 4-1 オーストラリア
ルサイル・スタジアム
【得点者】
FRA:27′ ラビオ, 32′ 71′ ジルー, 68′ ムバッペ
AUS:9′ グッドウィン
主審:ヴィクター・ゴメス

第2節 チュニジア戦

■王道前進パターンで繋いだ突破の可能性

 初戦でフランスに逆転負けを喫したオーストラリア。チュニジアとの一戦は負ければ敗退が決まる背水の陣となる。オーストラリアが選んだフォーメーションは4-4-2。フランス戦の4-1-4-1から変更したプランでチュニジアに挑む。

 いずれのチームもバックラインにはプレッシングを積極的には行わなかったため、ボールを持つ側は能動的にボールを動かすことのハードルが低かった。より前進のルートが整理されていたのはオーストラリアの方。やり方としてはロングボール主体の前進である。2トップにボールを当ててCHがそれを拾う。拾ったCHがサイドにボールを展開すると、SHもしくはオーバーラップをしてきたSBがクロスを上げてCFがフィニッシュをするというとてもオーソドックスな形である。

 オーストラリアは主に左サイドをメインとしてボールの動かし方としては確立されていたが、チュニジアの守備ブロックは強固。サイドからのクロスはニアのCBに引っかかることが多くオーストラリアのCFにボールが届かず。クリティカルな攻撃にはならなかった。

 一方のチュニジアは3CBを軸にボールを動かしていく。3-2-5が基本だがビルドアップに関わらない側のCHが高い位置を取るパターンもある。主な形としては左のIHであるライドゥニが前に入ると、左シャドーのムサクニがトップ下にスライドする形で待ち構える。

 だが、チュニジアの前進はフィジカル的な劣位によってなかなかスムーズに実現しない。ロングボールの競り合いではオーストラリアが優位。チュニジアの前線はそもそも長いボールを収めることができない。トランジッションにおいても一本目のパスが刺さらず、なかなか前進に苦労するように。

 なかなかシュートに至らない中、結果を出したのは前進することができていたオーストラリアの方だった。バックラインのフィードからCFのデュークに当てると、落としをサイドに展開。このクロスを再びエリア内に飛び込んだデュークが決めてみせた。

 オーストラリアからするとこの試合ずっと狙っていたバックラインからのボールの動かし方で結果を出した形。チュニジアはスキリが審判と交錯したせいで中盤で相手をスローダウンさせられなかったのが痛かった。これまでのクロスと少し違ったのはチュニジアのDFラインが下がりながらの対応を余儀なくされてしまったこと。クロスがニアで引っかかって軌道が変わったこともオーストラリアにとっては幸運だったと言えるだろう。

 この得点以降はチュニジアが徐々にチャンスを作るようになる。中央だけでなく左右に流れながらボールを収めることができるジェバリに徐々にボールを預けることができるようになったチュニジア。CFが開けたスペースには左右からシャドーとWBが入り込みながらシュートを放つ。だが、いずれもゴールには結び付かず。最も惜しかったドレーガーのシュートはCBのサウターに阻まれてしまう。

 ビハインドで後半を迎えたチュニジア。選手交代でシステムは4-3-3に変更する。ただ、ボール保持の陣形としてはアンカーのスキリが最終ラインに落ちて3バック化していたので3-2-5という全体的な陣形はあまり変わらなかった。

 その中で変わった点はボール保持において左サイドという明確なポイントができたことである。左シャドーのムサクニのところにサッシが入ることでチュニジアはこのサイドで安定してボールを持つことができるように。SBのアブディのオーバーラップの機会も増加し、このサイドからクロスで勝負することができていた。

 チュニジアは4バックになったことでオーストラリアの攻め手も増えた印象。サイドを変えることで逆サイドの大外はだいぶ使いやすくなり、サイドから鋭いクロスでチュニジアのゴールを脅かすことができていた。

 終盤はボールを持たれる機会が増えたオーストラリア。自陣の深い位置まで押し込まれる状況に苦しむが、徐々に全体の重心を後ろに下げてなんとか対処する。最後まで跳ね返しに徹して、チュニジアにゴールを許さなかったオーストラリア。あらゆる形でPA内に侵入したチュニジアを退け、グループステージ突破に望みを繋いだ。

試合結果
2022.11.26
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第2節
チュニジア 0-1 オーストラリア
アル・ジャヌーブ・スタジアム
【得点者】
AUS:23′ デューク
主審:ダニエル・シーベルト

第3節 デンマーク戦

■フィニッシャー不在のデンマークをロングカウンターで粉砕

 勝てば今大会アジア勢初めてのグループステージ突破を決めることができるオーストラリア。対するは堅実な試合運びが目立つ一方で勝ちきれない試合が続くデンマークである。

 保持においてショートパスでの明確な前進を用意することができたのはデンマークである。CBにプレスをかけることを放棄したオーストラリアに対して、アンデルセンは自由にゲームメイクが可能。インサイドへのパスとアウトサイドのパスを使い分けながら前進する。

 インサイドのパスはブライズワイトへの楔をターゲットにしたもの。目立っていたのはパートナーとしてオフザボールを駆け回っているイェンセン。楔の落としを裏抜けしながら受けてみせる。イェンセンはこの試合ではフリーランの鬼。右の大外にボールがある時はほぼ自動的にハーフスペースの裏抜けを行ってみせていた。

 中央の楔を意識したオーストラリアがインサイドに注意を向けるべく、陣形を横にコンパクトにすると、デンマークの狙い目は左サイドに向く。大外を抜けるメーレとリンドストラムの2人からインサイド攻略を狙っていく。

 デンマークはどちらのサイドの攻略もオーストラリアのラインコントロールを意識させながらのクロスであったことは興味深い。裏を返せばラインを動かさない高さ勝負のクロスではオーストラリアには勝ち目はないということ。大外に抜けられてしまうメーレはともかく、ハーフスペースを機械的に抜けるイェンセンに対しては徐々に対応が慣れてきたオーストラリアだった。

 配置で殴られているといえば殴られているオーストラリア。だが、プランをどこまで変えるかは難しいところ。後ろに重たい布陣に修正すれば、独力で陣地回復ができないオーストラリアはモロにカウンターに影響が出る。引き分けでOKという状況も裏のカード次第では変容することもある。

 何より、カウンターからの攻撃は割といけていた。その理由は空中戦での強さ。長いボールの主導権は常にオーストラリアが握っており、アバウトでも収めることができたのは大きい。カウンターには厚みのある状況を作るオーストラリアは比較的得点の可能性がある形になっていた。

 プレッシングにおいても高い位置に出ていけば、比較的デンマークのバックラインを困らせることができていたオーストラリア。オープンな状況を誘発した際に、割とオーストラリア側にペースが流れたのはなかなか興味深い事象だった。

 両チームとも選手交代を敢行したハーフタイム。グッドウィンに代わってバッカスを入れて、中盤のアーヴァインを外にポジションを写す。デンマークは右のSBを入れ替える形である。

 それ以外の変更点としてはエリクセンがポジションを下げて2センターのような形でビルドアップを行っていたこと。そして、オーストラリアが再びプレスのスタート位置を自陣の深い位置に下げたことである。よって、後半もデンマークがボールを持ちながら右サイドを軸に攻略していく形だった。

 他会場の経過の関係で、後半早々に得点の必要性が出てきたオーストラリア。その注文を素早くクリアしてみせる。ロングカウンターから裏に独走したのはレッキー。完全に抜け出しきれないでDFを1人交わす必要があったシーンだったが、一度内側に進路をとることで外のコースを開けたドリブルの選択に加えて、股抜きでファーを狙ったシュートも見事。運ぶ過程からフィニッシュまで非常に優れたロングカウンターの完結と言っていいだろう。

 これで突破には2点が必要となったデンマーク。交代枠を早々と5枚使い切り反撃を狙う。右サイドの突破は選手交代後も問題なくできていたことと、エリア内に高さでオーストラリアのDF陣と張ることができるコーネリウスを入れることで反撃に出る。

 だが、これは押し切るための手段として考えるとどこまで効果的だったかは怪しいところ。フィニッシュをこなせる人材不足は大会を通しての課題で、この試合でもデンマークはその部分を解消することができなかった。

 最後は5バックにシフトし、ゲームクローズに走ったオーストラリア。デンマークから最後まで決定機を取り上げることに成功し、逃げ切りを達成。フランスに敗れた後の2連勝で逆転でのグループステージ突破を決めた。

試合結果
2022.11.30
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第3節
オーストラリア 1-0 デンマーク
アル・ジャヌーブ・スタジアム
【得点者】
AUS:60′ レッキー
主審:ムスタファ・ゴーバル

Round 16 アルゼンチン戦

■メキシコ戦の再現を果たしたメッシ

 サウジアラビアに敗れて無敗記録が止まるという屈辱的なスタートから、尻上がりでグループステージでのパフォーマンスを上げてここまでやってきたアルゼンチン。決勝トーナメント初戦の相手はサウジアラビアと同じくアジア勢であるオーストラリアである。

 オーストラリアのプランはまずは高い位置からプレッシングをかけていくことだった。おそらく、これは保持における陣地回復が見込みにくい相手ゆえの賭けだろう。ボールを持つ時間が長くしながら敵陣深い位置で運ぶのは難しい。であるならば、プレッシングでプレーエリアをなるべく自陣から遠ざけたいと考えたのではないか。

 ただし、アルゼンチンの4-3-3をベースとする保持のフォーメーションに対して、オーストラリアの4-4-2という形はそこまで相性の良いものではない。さらにアルゼンチンはアンカーのエンゾ・フェルナンデスを最終ラインに下ろすことで3バック化。これでオーストラリアは敵陣でボールを奪い取る目はほとんどなくなったと言って良いだろう。

 オーストラリアはこれを見て潔く撤退。4-4-2でブロックを構えていく。構えられたブロックに対して膠着しやすいというのが前半のアルゼンチンの難点。メッシをはじめとして足元に要求し続ける選手たちではオーストラリアの守備ブロックを動かすことは難しい。前線ではアルバレスが活発な動きをしているが孤軍奮闘感が否めない。

 敵陣深い位置でボールを奪い取ることはできなかったオーストラリアだが、メッシがプレス隊の先頭にいるアルゼンチンには前線からのハイプレスは不可能。オーストラリアのバックラインにはボールを持つ余裕があった。

 ここまでのオーストラリアは長いボールを主体とした組み立てがメイン。CFにボールを当てる、セカンドボールを拾う、サイドに展開する、クロスを上げるのステップを踏むというほとんど一本槍で完遂することでここまで上がってきたチームである。

 しかし、この試合ではショートパスを使いながら自陣から繋いでいくプランを選択。ボール保持の時間を増やし、アルゼンチンから保持の時間をとりあげよう!という方向性は理解できなくもない。だが、前に進めるタイミングにおいては前に進まないとバチが当たるように思う。

 アルゼンチンのプレスは時折、メッシを追い越して中盤やWGの選手が前にプレッシングに出てくることがある。後方の選手たちがそれに連動してスライドしながらスペースを埋めたり、周りの選手で追い込みながらプレッシングに行くことはなかったので、おそらくこれはそれぞれの選手のアドリブなのだろう。

 よって、オーストラリアにとっては目の前の選手にパスをつけることさえできれば中盤が前を向いてボールを持つことができる場面がたまに訪れる。ムーイが前を向く形を作れれば、オーストラリアは前進を見込める機会と言えるだろう。しかしながら、オーストラリアはこうしたシーンで前に進むことを選択しない。バックラインにボールを戻してしまい、進むことができる局面を台無しにしてしまう。

 組み立てる能力のあるCHが前を向き、スペースがある状態でバックパスを選択してしまう。アルゼンチンの守備ブロックを保持で動かす形を持っているチームではないオーストラリアは自ら攻めのチャンスを手放してしまう。いくらポゼッションを大事にしても、前に進める機会がそこにあったのならば前にボールを進めるべきだ。

 どちらも前にボールを進めることができず、ジリジリした展開が続く。まるでアルゼンチン×メキシコの焼き直しを見ているような前半だなと思っていた。すると一瞬の隙をついて先制したのはアルゼンチン。わずかにできた中央のスペースで前を向いたメッシがゴール隅にシュートを丁寧に流し込む。停滞した局面がメキシコ戦と一緒なら、試合を動かすのがメッシのゴールというのも一緒。グループステージの再現を果たしてみせた。

 リードを奪われてしまい困ってしまったオーストラリア。後半は高い位置からプレッシングのトライに行く。これに対するアルゼンチンの対応は早かった。5分でリスクを察知すると、リサンドロ・マルティネスをバックラインに入れて3バックにシフト。数的優位で4-4-2プレスへの対策を素早く打ち出してみせた。

 それでもオタメンディがやらかしかけるなど、安定しないアルゼンチンのポゼッション。これはいける!となったオーストラリアだが、ここにまさかの落とし穴が待っている。それは自陣側のポゼッションのミス。デ・パウル、アルバレスのチェイシングに面食らったオーストラリアはライアンまでバックパスを送るが、これをライアンがコントロールしきれず、奪われたボールは無人のゴールに収まってしまう。

 ライアンにフォーカスが当たりがちなプレーになるだろうが、実質バックパスを戻したロールズにもライアンと同様か、それ以上の問題があると言っていい。自分が前に蹴り出すしかないボールを同じ状況、同じリスクでGKに渡すプレーに何か意味があるとは思えない。ライアンのコントロールもギリギリであり、大きく蹴り出す余裕が彼にあったかは怪しいところである。

 2点リードとなったアルゼンチン。ここから試合は凪のリズムで進む。このままアルゼンチンが試合を殺して終わるのかな?と思っていたが、オーストラリアが突如反撃に移行。主役となったのは左のSBであるベヒッチ。オーバーラップからの豪快な攻撃参加から溢れたボールをグッドウィンがシュート。これが跳ね返り、ゴールにすっぽりと収まることに。

 1点差となり追いつくことが現実的になったアルゼンチン。追撃弾と同じようにベヒッチが攻撃参加で存在感を出していく。交代で入ったフルスティッチ、クオルなどの選手たちも勢いを持って攻撃に出ていくように。

 しかしながらアルゼンチンは老獪だった。時折、きっちりファウルを奪い切ることで相手に流れが行き切ることを防ぐと、カウンターからメッシを軸にチャンスを創出。ラウタロ・マルティネスが好調であれば、とどめの一撃は早い時間に決まっていてもおかしくなかった。

 最後はクオルに同点のチャンスが訪れたアルゼンチンだったが、これはエミリアーノ・マルティネスがセーブ。紙一重のところまで健闘したオーストラリアだったが、最後のところでアルゼンチンに手が届かず逃げ切りを許すこととなった。

あとがき

 全体的な内容は上がってきたとはいえ、リードを奪う前の段階でエンジンをかけることができないのは依然としてアルゼンチンの課題として残っている印象だ。得点を取る部分は狭い攻め筋を撃ち抜いていくことになっている。

 だが、ゴールを奪えばメッシを軸にパフォーマンスが鰻登りになるのがアルゼンチンの特徴。カウンターはほぼノーミスでシュートまで辿り着くことができるし、プレスにも勢いが出る。実質覚醒スイッチと化している1点目をなんとか決めることができるかが先のラウンドの課題になる。

 最後は健闘したオーストラリアだったが、多くの時間の過ごし方には不満が残る内容となった。日本からすると冨安が問題提起した翌日にオーストラリアがこうなったというのはいかにも示唆的である。

 オーストラリアの代表がどういう方向性で強化しているのかは知る由はないが、時折ボールを持ちたいという意欲を感じるのは事実。そして、この試合においてはそうした部分を大事にするプランが裏目になったと言えるだろう。勢いを取り戻したのはベヒッチのドリブルというダイレクトでグループステージを突破したオーストラリアの志向に近いプレーである。

 試合を落ち着かせたい!は理解できるが、ムーイが前に進めるチャンスがあるのならば、それを逃すことをしてはいけない。試合のリズムを掴めるチャンスがあるならば、躊躇すべきではないのだ。讃えられるべき健闘の終盤だけでなく、大半の時間の過ごし方が突きつける課題にもオーストラリアがきちんと目を向けること必要があるのは明らかだ。

試合結果
2022.12.3
FIFA World Cup QATAR 2022
Round 16
アルゼンチン 2-1 オーストラリア
アフマド・ビン=アリー・スタジアム
【得点者】
ARG:35′ メッシ, 57′ アルバレス
AUS:77′ フェルナンデス(OG)
主審:シモン・マルチニャク

総括

■一本槍での大健闘とアルゼンチン戦の違和感

 グループステージを突破したチームの中では個人的には最も大きなサプライズだ。初戦のフランス相手にはボコボコにされながらも、デンマークとチュニジアとの2位争いを直接対決で下し、フランスに次ぐ2位でグループステージを突破したリバウンドメンタリティで逆転でのノックアウトラウンド進出を決めた。

 ロギッチ、ボイルは不在で、フルスティッチとメイビルはベンチからと特に中盤より前のメンバーのアジア最終予選からの入れ替えは激しかったため、その分やりくりは苦しくなっていたかと思われたが、グッドウィンなど起用された2列目は淡々とその仕事をこなしながら自らの価値を示した。

 長いキックでCFに当てる→セカンドボールを拾う→サイドに展開する→クロスという王道パターンが攻撃の要。オーストラリアの試合を見ていればこのパターンの存在には秒で気づくことができるので、相手からすると対策は打ちやすいチームである。

 だが、このパターンはわかっていても止めづらい。デンマークとチュニジアの両軍は対策が打てなかったというよりはむしろわかっていても止められなかった!の類のチームだと思う。特にチュニジアは制空権を握られたことで非常に苦しい戦いになってしまった。

 GSで敗れてしまったカタールとは逆で設計図は単純でもその強固さで勝負する。それが今大会のオーストラリアだった。バレていても強度で通用すれば世界とも互角に組めることを証明して見せた。

 それだけにアルゼンチン戦の彼らの振る舞いは少々残念だった。つなぐ志向が強く、前がかりなアルゼンチンに対して、なかなか高いラインの裏を狙うことが出来なかった。こうした静かな姿勢のままアルゼンチンの攻勢を受け入れてしまった案感あった。ボールを持てた状況だったなど情状酌量の余地はあるが、ボールを奪ったらスローダウンしてしまうのは彼らの良さを消してしまう部分が大きい。

 最後は1点差になり「大健闘」というラベルを張られてはいたが、その健闘の終盤戦に至るまでの試合運びにはやや不満が残るところである。彼らの抱える懸念はアルゼンチンに冷や汗をかかせた部分とは別の切り口で語る必要がありそうだ。

Pick up player:ミッチェル・デューク
今季J2でプレーしたプレイヤーがワールドカップでアルゼンチンと対峙するというのはそれだけで夢がある。グループステージではノックアウトラウンドの決め手になるゴールも決めており、オーストラリアを勝たせる働きをして見せた。

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