1st leg
我慢すればOK
前日のチェルシーと同じく1-0のビハインドというスコアでリターンレグを迎えたトッテナム。リーグ戦では少しずつ復調気配のミランはドルトムントほどの勢いはないが、嫌な相手であることに変わりはない。
どちらのフォーメーションも3-4-3。直近の試合を見る限り、相手に合わせてこうなったというよりはどちらも自分たちのチームの組みやすさを重視した結果ここに帰着した感がある。ミラーフォーメーションという割にはどちらのチームも前に出ていく気配はなかった。この辺りも対策感が薄く感じる理由である。
前から出て行かないだけなら問題はないミランだが、降りていく選手に対してどこまで捕まえにいくかの部分が共有されていないように見えた。ペリシッチへのポストからケインが抜け出したシーンなどはトッテナムがミランを出し抜きかけたシーンと言えるだろう。ケインの降りる動きに対しても必ずついていくわけではなかったので、降りる選手へのケアはシンプルに甘かったように見える。
だが、そうした甘さをトッテナムは生かせない。停滞感があるのは右サイド。エメルソンは顔を出せるが、プレー精度がもう一つで、クルゼフスキはスランプを脱することができておらず、フリーでボールを持っても怖くはない。かと言って逆サイドのソンもなかなかフィーリングを掴めないので、結局はエメルソンとケインのレーン交換が一番可能性がありそうという感じだった。
リードしているミランにとっては長いカウンターに専念しても悪くはない状況。トッテナムの保持をひっくり返す形でレオンにボールを持たせて加速し、テオが後方から追い越す形でそれを支援する。自陣の深い位置からでもこれを狙うことはできるし、結果的に前半はロメロとラングレに警告を出させることに成功した。
ミランの18分のデザインセットプレーを最後に試合は膠着状態を迎えたように見える。ミランはトッテナムの降りていく選手に縦パスを入れられたとしてもリトリートを優先するようになり、ボールを運ぶのを許容してでも自陣のブロックを固めることを重視していた。
トッテナムはこれに対してわかりやすく苦しんだ。ミランもその分、敵陣ゴールに迫る頻度は下がったが、トータルスコアでリードをしているのでそれはそれで問題ないということなのだろう。
後半の立ち上がりはややミランが攻め込む形になったが、すぐにトッテナムがボール保持。サイドからのクロスを入れることでミランを攻め立てる。
このまま試行回数を重ねたいトッテナムだったが、負傷交代っぽいペリシッチが下がったことでやや後方のポジションが乱れがちに。CHがやたら下がったり、エメルソンがインサイドに入ったりなど人はいるんだけど、だからどうなんだ!と言った状況が続くことになる。ミランは時間の経過とともにロングカウンター一発というスタンスを確立することで試合から色気を消すことに専念していたが、トッテナムのビルドアップの拙さが彼らにチャンスを与えることもあった。
64分のホイビュアのシュートから徐々に試合のテンションはヒートアップするかに思われたが、70分のリシャルリソンの投入で4-4-2に移行したところでまた役割がぐちゃぐちゃに。攻撃的な布陣を敷いた結果、前にボールが届かない状況が悪化するというのはいかにも最近のトッテナムが陥りそうな悪循環である。
ロメロの退場もいかにもという感じ。ミランはレオンとテオの左サイドで相手の戦力を削ぐことに成功し、トッテナムは10人に追い込まれる。これ以降のミランは敵陣に運ぶだけで即チャンスになる形になっていた。
これ以降のチャンスはほぼセットプレー。ケインはあわやという場面を迎えたが、ややコースが甘くメニャンにとっては落ち着いて対応できるボールとなった。その後の決定機をオリギが逃すのはご愛嬌である。
試合は0-0で終了。自分たちの持ち味を出すためにきっちり我慢を続けたミランが久しぶりにベスト16の壁を突破した。
ひとこと
出ている選手の出来は物足りないけど、交代で出てくる選手の出来を見ると納得感があるという悲しい輪廻はこの日も健在。レオンとテオという攻撃の要がきっちりしていたミランに比べると、トッテナムは保持でのすがりどころが脆かった感じがする。これで今季もタイトル獲得は無しだろう。来季もこの舞台に戻るための切符獲得に全力を注ぐことになる。
試合結果
2023.2.14
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
トッテナム 0-0 ミラン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
主審: クレマン・トゥルパン