Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第4節
2023.3.11
アルビレックス新潟(7位/1勝2分0敗/勝ち点5/得点6/失点5)
×
川崎フロンターレ(8位/1勝1分1敗/勝ち点4/得点4/失点4)
@デンカビックスワンスタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近10試合で新潟の3勝、川崎の6勝、引き分けが5つ。
新潟ホームでの戦績
直近10戦で新潟の5勝、川崎の3勝、引き分けが2つ。
Head-to-head
- 直近7試合の公式戦での対戦で川崎は新潟に無敗(W6,D1)
- 新潟は直近5試合の公式戦の川崎戦で得点を一度しか挙げていない。
- 直近4試合のビッグスワンでのゲームにおいて川崎は無敗(W3,D1)
- 新潟はビッグスワンでの川崎戦で354分無得点を継続中。
- しかし、それ以前の16試合において新潟はビッグスワンで川崎に一度しか負けていない(W14,D1)
スカッド情報
- 右膝前十字靭帯断裂の高木善朗は長期離脱中。
- 堀米悠斗は右ヒラメ筋の損傷で全治3週間の離脱。
- 右足関節の手術の影響で離脱中のレアンドロ・ダミアンはボールトレーニング開始。
- 左足の負傷で離脱中の小林悠はボール回しとシュート練習に参加。
- ジェジエウは左膝半月板損傷で長期離脱。
- 山村和也は出場停止から復帰。
- 永長鷹虎、高井幸大はU-20日本代表選出により3/9までウズベキスタンで代表活動。
- 車屋紳太郎は右ハムストリングの肉離れで6週間の離脱。
- 登里享平は左ヒラメ筋肉離れにより5週間の離脱。
予想スタメン
Match facts
- 今季ここまでリーグ戦3試合無敗。
- J1では2011年以来12年ぶりのこと。この年の4試合目はホームの神戸戦に勝利している。
- ビッグスワンでのリーグ戦は直近6試合無敗(W5,D1)。
- 今季ここまでのリーグ戦全試合で得点と失点を記録。
- リーグ戦ここまで6得点を挙げており、これを上回るのは神戸と湘南だけ。
- 枠内シュート率(枠内シュート/シュート総数)51.6%はリーグ最高の数字。
- 川崎は横浜FCに次いでリーグ2番目に低い22.7%。
- 今季ここまでリードを奪われた時間は合計で9分のみ。
- 今季ここまでのリーグ戦3試合で勝ち点4。
- 優勝を記録した4シーズンはいずれも少なくとも開幕3試合で勝ち点7を積んでいる。
- 直近10試合のリーグ戦でクリーンシートがなく、アウェイでは10試合連続で失点をしている。
- アウェイでの最後のクリーンシートは2022年5月の鳥栖戦。
- 3月のリーグ戦は直近12試合負けがない(W9,D3)。
- アウェイでのリーグ戦で最後に負けたのは2017年の味の素スタジアム。
- 今季のリーグ戦の得点は全て81分以降に生まれている。
- 今季のリーグ戦でリードを奪ったのは鹿島戦の2点目以降のみ。
- 90分の中では川崎がリードを奪った時間帯は存在しない。
- 大島僚太がリーグ戦開幕3試合全てに出場したのは2018年以降で2回目。
予習
第1節 C大阪戦
第2節 広島戦
第3節 札幌戦
展望
ショートパスにこだわる意義は
第3節に続き、川崎の対戦相手はまたしても勢いに乗っているチームである。なんというか巡り合わせの悪い日程だなと心から思う。
基本的にはJ2は守備範囲外(J2ドラフトを除く)なのだが、TLの有識者の意見を見る限り、新潟は昨シーズンのスタンスを踏襲する形で今シーズンに臨んでいるようだ。まず、彼らのスタイルで目につくのは低い位置からのポゼッションに対するこだわりだろう。CBが開き、バックラインが横幅をとり、ここに中盤やサイドの選手がボールを引き出すために低い位置に多くの選手を置く。
C大阪、広島、札幌とここまでの新潟の相手は比較的こうした保持のスタイルのチームに対して、容赦なく前から追いまわしてくるチームが多かった。しかしながら、新潟はこうした相手からのプレッシャーをものともしていない様子だった。狭いスペースに寄せられても降りて受けて細かいパス交換から脱出することができる。体感でいえば相手を動かす保持のスキルは前節の湘南よりも上。縦方向のパスを織り交ぜながら、相手の中盤を引き出して穴を空けるのも非常に得意である。
こうした強気のスタンスを維持できるのには理由がある。まずは最終ラインのプレス耐性への信頼だ。ビルドアップは2CB+2CHが変形しながら行うのが基本線である。かなりオーソドックスな枠組みといえるだろう。その中で異彩を放っているのは千葉である。追い込まれても安全にボールを逃がしたり、縦にボールを付けることができる千葉は新潟の中では貴重な存在。降りる動きをする前線はある程度狭いパスコースでもボールを付けてくれるバックラインの柱を信頼していることだろう。
ボールを運ぶときは相手のプレスラインを突破し、中盤を引き出すことができるドリブルも兼備。ゲームメイクは彼のさじ加減に拠るところが大きい。
CHの高も重要な存在ではあるが、札幌戦で千葉が負傷交代した以降はやたらと小島が前に蹴っ飛ばすシーンが多かったので、千葉がいるといないのとではプレスに対するそもそもの許容度が変わるのだろう。川崎戦で千葉がフィットするかはどちらのチームにとっても重要な要素である。
もう1つ、降りてでもつなぐ意識が強い理由はつないだ先にある強力な武器に対する信頼度である。ボールをつないだ先に待っているのは前を向くことができた2列目である。
この「前を向くことができた2列目」が伊藤であれば、あとは新潟の攻撃は完成待ちとなる。前に選手が1,2人いて伊藤がボールを持つことができれば、攻撃を完結させることができるラストパスを持っている。自分はJリーグを全試合見ているわけではないので、あくまで見た試合の中ではフリーでボールを持ったところから攻撃を完結させる信頼度はリーグで彼が一番のように思う。
よって、前線で後方からのパスを背負って受けるのはCFもしくはWGであり、その1,2手先で伊藤が前を向く形を作るのが望ましい。
伊藤は札幌戦の1点目のようにミドルで自らフィニッシュまで持って行く力がある選手ではあるが、周りを生かすことでよりその真価を発揮する選手である。よって、周りのアタッカーの好調ぶりも朗報だ。
すでに名は知られているであろう三戸は面を作るドリブルがうまく、DFの前でボールを受けてから横にドリブルしながら前を向き、そこからフィニッシュやラストパスに持って行く力強さがある。自分はアーセナルファンなのだけど、サカとかはこういうドリブルを割と得意としている印象である。
逆サイドは太田が多くの得点に関与している。オフザボールの動きの良さからフリーになるのに加えて、ボールを受けた後のプレー選択も秀逸。視野の広さとプレー選択の的確さが際立つ。トップの鈴木はポストという地道な仕事をこなしつつ、自らもフィニッシャーとして機能。CFのもう1つの選択肢である谷口もすでに開幕戦でゴールを決めている。ダニーロ・ゴメスやグスタボ・ネスタウといった選手たちのフィットを前にすでに攻撃陣は充実している。伊藤+1,2人で完結できる前線の機能性の高さも人数をかけてでも正確にボールを前に届ける意義の1つになる。
守備に関しては攻撃に比べるとマイルドだ。4-4-2だが深追いはせず、ミドルゾーン主体のブロックを組むことが多い。CBに強度はあまりなく、自陣に追い込まれるような展開はあまり得意としていない。ミドルゾーンを保ちつつ、無理なプレスに行かないことで脆さを際立たせることはしないというのが新潟のスタンスである。
ピッチとプランの乖離を小さくしたい
よって、新潟に勝てるかどうかのポイントは非常にシンプルだ。敵陣でのプレータイムを増やせば増やすほど勝率は上がるだろう。きっちり押し込むことが勝利の近道だ。新潟は前線までがローラインに押し込まれると、そこから脱出の道を模索するのにかなりの時間がかかる。よって、ひたすら耐える時間が続く。ここまで高パフォーマンスを見せながら全試合で失点しているのはこうした受けに回る時間が少なからず存在するからである。
バックラインの局面的なセクションでいえば、千葉がいるかいないかは大きな要素になる。保持においては最重要人物といってもいいが、非保持においては相手チームの狙い目になる。どうしてもスピード不足が顕著であり、相手の裏抜けについていけないシーンはしばしば。札幌戦では小柏と金子のタンデムにひたすら千葉と渡邊の間のハーフスペースを抜けられ続けた。
もちろん、デンが代わりに出場すればこうした局面に対する対応は向上するだろう。その反面、新潟のアイデンティティは削がれることになる。特徴を考えればより保持の強みを前面に出せる千葉を起用したいのではないか。
先に挙げたCB-SB間のハーフスペースの裏抜けは川崎が従来得意としていたことであり、今季なかなかできなくなったことであり、増やしていくべき形でもある。深い位置をとり、マイナスのスペースにクロスを折り返す形の意義は清水のチャナティップのゴールで証明済みだ。
現状、この形が少ないのはおそらく3-2型のビルドアップの併用がうまくいっていないのだろう。後方に人を増やした3-2を作る形を行う上で当然起こりうる懸念の1つであり、こうした機能不全が起こることはなにも不思議なことではないように思う。
ただ押し込むことが出来た局面においては後方の3-2型を維持することにこだわっていないので、人数をかけてのサイドの崩しに流れ込むことができる可能性はある。湘南や鹿島に比べれば新潟は明らかに前向きのプレスのベクトルは強くない。きっちりとボールと人を前に運び、少しでも自分たちの時間を増やしたい。
非保持は苦戦が予想されるだろう。中盤を引き出すためのパスワークに新潟は自信を持っているし、清水戦ではその形からやられている。レギュラー組は強度面では清水戦のメンバーよりも信頼は出来るので、強度で押し切ることを狙いつつも、プレスのメリハリを利かせながら無理だと思ったら潔くスペースを埋める形にシフトしたい。
ハイプレスへの対応もそうだが、今季の川崎は立ち上がりのプラント実情とのギャップが比較的大きいように見える。90分で見れば選手も監督もそれなりに最適解にたどり着いているように見えるが、ピッチの中での修正の速度の遅さと初手のギャップの大きさが非常に気になる。早い時間での失点はこの2つの合わせ技といえるだろう。
1つ目のプランで実態と乖離しないこと、そして最適なバランスを導出するスピードを早くすること。新しいことは技術と伴った判断が肝であると思うので、回数を重ねるごとにギャップを小さく、そして導出スピードを速くすることを意識していきたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)