Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第8節
2023.4.15
川崎フロンターレ(13位/2勝2分3敗/勝ち点8/得点8/失点10)
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名古屋グランパス(2位/4勝2分1敗/勝ち点14/得点8/失点2)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近10試合で川崎の5勝、名古屋の2勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの戦績
直近10戦で川崎の8勝、名古屋の1勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
- 直近5試合の対戦で川崎は名古屋に無敗(W4,D1)
- 直近5試合中、3試合で名古屋は川崎に対して無得点。
- 等々力での対戦においては川崎が公式戦8試合負けなしで4連勝中。
- 直近4試合中3試合はクリーンシート。
- 直近8試合中5試合のホームの名古屋戦において川崎は3得点以上を記録している。
スカッド情報
- ジェジエウは左膝外側半月板損傷により長期離脱。
- 山村和也、大島僚太は新潟戦で負傷後4週間の離脱と診断。大島は完全合流済み。
- マルシーニョは左ハムストリングの肉離れで8週間の離脱。
- 小林悠は札幌戦で負傷交代。
- 田邉秀斗は前節のG大阪戦で負傷退場。
- 車屋紳太郎はG大阪戦の退場により1試合の出場停止。
- 石田凌太郎は左足関節前下脛腓靭帯損傷で離脱中。
- 重廣卓也は右大腿骨軟骨損傷で欠場。
- FC東京戦で負傷した和泉竜司は練習に復帰。
予想スタメン
Match facts
- 敗れれば今季初のリーグ戦連敗。
- 公式戦直近6試合中、5試合で無得点。
- ホームゲームでは今季の公式戦5試合で勝ちなし(D4,L1)
- 直近3試合は全てスコアレスドロー。
- 今季ここまで3人の退場者は鹿島と並びリーグ最多。
- 前節は鬼木体制初のリーグ戦枠内シュートなしを記録。
- 枠内シュートの本数はここまで21本。これより少ないのは鹿島(20)と鳥栖(15)だけ
- 公式戦7試合負けなし(W5,D2)
- 今季リーグ戦で勝ち点を獲った6試合中5試合はクリーンシートによるもの。
- アウェイでの公式戦は4連勝中。
- キャスパー・ユンカーは今季ここまで枠内シュート14本。リーグで最も多い。
- マテウス・カストロはここまでリーグ最多の29本のシュートを放っているが無得点。
- 川崎相手の直近3得点のうち、2得点は稲垣祥が決めたもの。
予習
第5節 FC東京戦
第6節 新潟戦
第7節 浦和戦
展望
迷いなく潰せるスタイルが躍進を支える
現状での順位は2位。長谷川健太政権2季目の今季、名古屋は順調な滑り出しを見せていると言っていいだろう。陣容としては補強にカラーが見えている。米本、和泉、野上。ユンカーを除けば、基本的には強度に振ったメンバーが顔を揃えている。
スタイルはこうした補強のカラーが反映されたものになっている。基本のフォーメーションは3-4-2-1。ユンカーを頂点に置き、シャドーに永井とマテウスの2枚を並べる形である。ユンカーは非保持においてはプレスに強度あるプレーを要求されておらず、中盤を消すようにCHやアンカーの位置でパスコースを消す役割をこなしている。
CB、GKにプレスをかけるのはシャドーの永井とマテウスの役割である。スイッチを入れた時の強度はさすがではあるが、ユンカーに負荷を強いることができない分、頻度で割を食っている。プレッシングを常時行なっているわけではない。
その分、後方の潰しはかなりはっきりしている。降りる選手に迷いなくついていき、弱いパスであればボールをきっちりと奪い取る。特に米本、稲垣の両CHは明らかにこの部分にフォーカスを当てた人選。ボールを高い位置から奪い取ってのショートカウンターにはかなり力を入れている。この部分はリーグ屈指と言っていい。
中盤付近までボールを運ばれてしまった際には、一気にリトリート。ブロック守備がセットされると固さはさすがであり、なかなかこじ開けることができない。失点の少なさは自陣に引いた時のブロック守備の練度によるところだろう。
攻撃においては今季は自陣からボールをつなぐことにもトライしている。特にWBにつけるアクションを意識的に活用しているように見える。ランゲラクから森下、内田といったWBにフィードを当てるという形は昨季まではあまり見られなかったような形に見える。
ボール保持においてははっきり言って引き出しは多くはない。GKからWBにボールを入れるチームは外を使うことでインサイドを広げる意識があったりする。だが、先述の通り名古屋のCHは米本と稲垣。プライオリティは別のところにあるとするのが自然だろう。
そのため、WBにボールが入ってからの攻撃は非常に直線的。裏に流れるWGとの2人のコンビネーションから相手を一気に振り切ることで縦に速い攻撃を完結させる。
よって、得意な相手は裏へのスピード勝負にきっちりと乗ってくる相手である。逆にスペースを先回りして消してくるようなチームや、潰しが間に合ってしまうようなチームには保持での解決策を見つけることができない。息を入れてのボール保持は現状でのレパートリーにはない。
守備においての苦手分野は前方へのベクトルを外された時にある。基本的にはスピードに乗る前の決着には強いが、ドリブラーが前を向いてスピードに乗った時のカウンター対応には怪しさがある。特にバックラインにはこうした特徴が顕著と言えるだろう。
リーグにおいては控え選手の入れ替えにもそこまで積極的ではなく、やや属人性がつきまとう部分が多めのモデルも長いシーズンで見れば気になるところ。毛色に合わせて変化をつけるというのはそこまで長谷川監督の得意分野ではなく、チームが負傷や移籍で変わることを強いられた時にどのように振る舞えるかが上位争いを続けられるかどうかのポイントになりそうだ。
10人の時間帯が無駄にする機会
順位とかチームの勢いという部分を見ても現状では優位なのは名古屋だろう。個人的に気になるのはそうしたチームの現在地よりも名古屋のようなチームに対する川崎の相性があまりよくないように思えることである。
名古屋のボールハントは非常に迷いがないのが特徴になっている。スイッチを入れたら躊躇なく潰す。これが彼らの信条だ。この信条は今季の川崎の選手を下ろしてボールを引き出すというスタンスと非常に相性が悪い。降りる選手に対してはきっちりとついていきボールカットを狙う名古屋と安易な中央へのパスが止まらない川崎との比較で言えばバックラインからの中盤のパスから簡単にカウンターを受ける様子が浮かんでくる。
よって、川崎はこの降りてくる選手への圧力に対抗する必要がある。キーになるのは名古屋の前3枚のプレス隊への対応だ。先に述べたように名古屋の前線はユンカーに負荷をかけるのを避けるため、両CBとGKへのプレッシングを永井とマテウスに任せている。
イメージとしては後ろから時間を送ること。バックラインは横幅を取り、名古屋のシャドーに対して広い守備範囲を賄わせるためのアクションをしたい。GKを巻き込むビルドアップは必須。2トップを横に振って、逆サイドのCBからボールを運ぶアクションをしたい。
CBがサイドからボールを運べればマイナス方向のパスでユンカーが担当している中盤はフリーになっている公算が高まる。フリーで持ち運ぶ選手がいれば名古屋のプレッシングの矢印は鈍るだろう。逆にG大阪戦におけるソンリョンのミスパスや車屋の退場シーンにおけるパスのようなどこにボールをつけるかの予測が簡単で精度や速度があまりパスは名古屋の大好物である。
彼らに大好物を与えない状況を作るには後ろから時間を作って、相手の矢印に迷いを与えることが大事だ。そして、一歩遅れてプレスに出てきたら、そのプレスの矢印の根本を狙うように1つずつ前に進んでいく。
矢印を鈍らせる、そして根元を狙う。敵を背負った味方へのパスはダメということはない。むしろこうした相手には必須の要件。ただし、少ないタッチで落とすところを用意して脱出の準備をしておくことがセットになる。マーカーの圧力が少ないCBとユンカーがマーカーになるであろうアンカー役の選手には特にポジションの取り直しでフリーになることが求められる。無理であれば、下げてやり直す。無理なのにつける!は最悪である。
相手を引き出してから攻め込めば後方にスペースがある名古屋の苦手な状況を作ることができる。マルシーニョがいないのは痛い。左WGのスターターは悩ましいところだが、近頃はボールを受けたがる遠野よりも裏で駆け引きができる瀬川や宮代の方が好ましいように思える。
非保持に回った際にはサイドでのスピード勝負にあっさりと負けないことが大事である。やり直しの頻度は少なく、ポイントを増やす動きも苦手。よって、裏抜けする選手に対しては早めについていく、もしくはパスカットを狙うことでサイドを封殺したい。
リトリートが間に合えばそれなりに名古屋の怖さは落とすことができる。セットプレーではミスマッチが多そうなので、押し込まれる時間が長くなるのは避けたいが、カウンターからスピーディーにゴールに持ち込まれるのを回避するのが何よりも最優先なのは間違いない。カウンターの勢いを鈍らせることで名古屋の攻撃の脅威を半減させたい。当然、保持におけるボールの失い方も重要なポイントになる。
名古屋を倒すのに必要なことは縦にパスを刺すモデルを成立させるために必要なこと。今の川崎に必要なことである。はっきり言って先週までできなかったことがすぐできるとは思わない。それであるならば、トライをし続けることが重要である。
今季の川崎はやたら10人でのプレータイムが長い。自虐的に割り切って楽しむことは自分自身もよくあるが、楽しむ数的不利、そしてスクランブルな状態が長いことは目先のプレーにフォーカスすることの正当化につながる。その結果、とりあえず今をなんとか!みたいな後半を迎えることが非常に多い。能動的に勝ちに行くための手段ならまだしても、そうしなければいけない状況に追い込まれてしまうのであれば、今季のチャレンジの成果が出ないのは至極当然だ。まずは90分、相手を動かしながら崩すことができる環境を継続し、取り組み続けること。今の川崎にとってはそれが復調の第一歩だ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)