Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第13節
2023.5.12
FC東京(11位/4勝3分5敗/勝ち点15/得点14/失点17)
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川崎フロンターレ(4位/5勝3分4敗/勝ち点18/得点15/失点14)
@国立競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年間でFC東京の2勝、川崎の8勝、引き分けが1つ。
FC東京ホームでの戦績
直近10戦でFC東京の2勝、川崎の8勝。
Head-to-head
- 川崎はFC東京戦5連勝中。
- 当該カードにおける最長連勝記録を更新中。
- FC東京の最後のリーグでの川崎戦勝利は2018年5月の等々力でのゲーム。以降9試合勝ちがない。
- 味スタでの公式戦での多摩川クラシコは川崎の6連勝中。
- 直近11回の公式戦での味スタクラシコで川崎は7試合で3得点以上を記録している。
スカッド情報
- 松木玖生、熊田直紀はU-20W杯招集により欠場。
- 中村帆高は右アキレス腱断裂により長期離脱。
- 東慶悟は1試合の出場停止から復帰。
- ジェジエウは左膝外側半月板損傷により長期離脱。
- レアンドロ・ダミアン、瀬川祐輔は共にベンチ外が続く。
- 田邉秀斗は左膝側副靭帯損傷で長期離脱。
- チャナティップ・ソングラシンは清水戦で負傷交代。
- 高井幸大、永長鷹虎はU-20W杯招集により欠場。
予想スタメン
Match facts
- 今季初のリーグ戦連敗を記録。
- 直近5試合のリーグ戦のうち、3試合はシュートが5本以下。
- ただし、3試合のうち2試合には勝利している。
- 公式戦において75分以降の得点がなく、この時間帯に全体の41%の失点を喫している。
- ここまでの今季の公式戦において逆転負けも逆転勝ちもないチーム。
- 仲川輝人は公式戦4得点でチームトップスコアラー。直近のリーグ戦3試合で2得点を記録。
- 昨年の川崎戦でも得点を挙げている。
- ディエゴ・オリベイラが今季のリーグ戦で記録した3得点は全てホームゲームで昇格組相手に挙げたもの。
- 勝てば昨年11月以来のリーグ戦4連勝。
- この時の4連勝目はFC東京戦。
- リーグ戦2試合連続クリーンシート。3試合連続になれば2022年5月の5試合連続以来のこと。
- 6位は今季における最高順位。
- アウェイでのリーグ戦は今季得失点が18でホーム(11)の1.6倍を記録。
- 脇坂泰斗は直近4試合のリーグ戦で3点に関与(2G,1A)
- いずれも先制点に絡んでいる。
- ジョアン・シミッチは先発した今季の公式戦9試合で負けなし。うち6試合ではクリーンシートを記録しており複数失点がない。
予習
第10節 新潟戦
第11節 福岡戦
第12節 札幌戦
展望
無理な注文を成立させるアタッカー陣
いつもの味の素スタジアムの舞台と異なる国立競技場で行われるFC東京ホーム開催の多摩川クラシコ。先にジンクス的な話を処理しておくと、このカードはスタジアムにおける傾向がはっきりしているカード。外弁慶で大量得点になりやすいという味スタクラシコにおける伝統がこの試合で国立でも続くのかどうかは非常に気になるところ。川崎優勢で大量得点になりやすいという傾向は川崎ファンとしては継続して欲しいところだが。
国立でのローカルダービーという華々しい舞台装置とは裏腹にFC東京は苦戦が続いている状況だ。現状ではボトムハームに沈んでいるという成績もさることながら、アルベルへの圧力が強まっているのはサッカーの内容面だろう。バックラインからのキャリーはうまくいっているとは言い難く、昨シーズンの積み残しされた課題となった自陣からのボール運びのトライは今季もなかなか実を結んでいないといった状況である。
バックラインは大きく幅をとるように広がりながらCBの間にCHがサポートに入るために、ラインを降りながら組み立てていく形が多い。ビルドアップ関与の優先度はSBよりもCHの方が高く、SBは大外レーンで高い位置をとる狙いが見える。特にバングーナガンデはこの役割を担うことが多い。インサイドに集めた人でビルドアップを行い、大外の高い位置をとるSBにはアタッキングサードで攻撃に絡んで欲しいというのがFC東京の青写真だろう。
だが、この設計図をうまく実現できていないのが今のFC東京の悩みだ。CBが広がりきれずにCHが降りてくるアクションをしてしまうため、サイドが思ったように押し上がらない。降りてくるアクションを優先するため、中盤は縦パスのレシーバーがおらずボール循環は外回りになりやすい。
よって、まずはSBが思ったよりも高い位置で攻撃に参加できていないという不具合が生じる。この動きを見て中盤中央の選手たちはサイドに流れながらボールホルダーをサポートする。安部や松木はサイドにサポートに流れてボールを受け取るアクションが見られる。
そうなると、サイドで深い位置をとることはできても、そこからPA内に侵入するのに無理が出る。サイドから中央に導く役として機能してほしい中盤はビルドアップで後方に吸収されているか、サイドでボールホルダーのサポートをしているかのどちらかに奔走しているからだ。
じゃぁ、今のFC東京はこの状況をどうにもできないのか?と言われるとそういうわけでもない。ストライカーはこの無理な状況で攻撃を完結させることができる優秀な人材が揃っている。仲川やアダイウトンはスペースがある状況であれば外から中へのカットインで1人で攻撃を終わらせることができるし、新潟戦のディエゴ・オリベイラのゴールは手薄なサポートの中でゴールを奪うというFC東京のFWとしては100点の動きを見せている。
このようにエリアまでの足りない部分をアタッカーの力でなんとかする!というのが今のFC東京。時間とスペースを前に送り届けられなくとも、なんとかできるアタッカー陣がゴールをもぎ取ってくる。わずかなシュート数でも勝ち切っている試合が散見されるのは少ないチャンスを確実に得点に結びつけられる選手がいるからだ。
守備においては基本的にはきっちりとミドルゾーンで組む4-4-2がオーソドックスな形。ただし、タスク割の関係か、あるいは単に仲川を前に残したいのか、仲川をオリベイラと並ぶ2トップに据えて、大外の右の守備をトップ下の安部にカバーしてもらうという場面も散見される。
バックラインはそこまでスピード系のアタッカーへの対応はうまくなく、狭い幅を集中して守ることには長けている。よって、FC東京目線ではポジションが乱れている上にバックラインがスクランブル対応を強いられるビルドアップのミスでは避けたいところである。札幌戦の1失点目の失点などは保持におけるポジション移動とバックラインの無理の効かなさが合わさった今のFC東京の難点を示したシーンだったと言えるだろう。
大南には見せ場がある相手
川崎としては素直にFC東京の弱い部分を狙っていきたいところである。すなわち、バックラインのプレス耐性の低さを咎めるためのハイプレスは行いたい。そして、ポジションを移動することにより発生する脆弱性に漬け込んだカウンターからゴールを狙っていきたい。これが川崎が最も理想的な立ち上がりと言えるだろう。
川崎は高い位置からできれば外切りのプレスをかけて、インサイドにボールを誘導。瀬古やシミッチといったボールをダッシュできる選手たちの狙いを絞る手助けをしたいところである。ファストブレイクに繋ぐためにプレッシングの規律から入りスムーズな先制点まで辿り着きたい。
当然WGの背後を取られればピンチにはなるが、FC東京のビルドアップ隊の精度を踏まえると、この難点をつかれる可能性は比較的低い。近頃はこの外切りは封印されているが、今回は相手のことを踏まえるとトライする価値は十分にあると思う。
定点攻撃としては怪我からの復帰以降はややパフォーマンスが自信喪失気味のバングーナガンデのいる川崎の右サイド側を狙っていきたい。ただし、川崎には札幌の金子のように一人で右サイドを壊せる選手はいないのでハーフレーンとの連携は大事にしていきたいところ。ペナルティエリアの角やハーフスペースの裏抜けのランは積極的な活用が求められる。空いたスペースを見つける嗅覚に優れている脇坂には期待が掛かることにかかる。
FC東京としては守備のカバーにも奔走できる松木の不在も大きい。サイドの連携は川崎としては平時より分断しやすい状況になっているはずだ。
もっとも、U-20代表に選手を送り込んでいるのは川崎も一緒。バックラインを支えて牽引していた高井の不在という重荷がのしかかる。若くして今季の川崎のDFラインを引っ張る活躍を見せていた彼の不在で川崎は再びDFラインの組み合わせを再考する必要が出てくる。
代役の有力候補である大南の最も大きな懸念は高井に比べると対角パスでの組み立てをレパートリーに持っておらず、左右に動かしながらの配球力に欠けていることである。ここは家長の降りるアクションから逆サイドへの展開を行うなど味方のサポートから解決をしていきたいところだ。
左サイドのビルドアップは仲川周りをかき乱したい。トップ下の安部をサイドに釣り出しつつ中盤が変形する前に安部がいなくなった中盤を制圧したいところである。
大南は保持面では不安がつきまとうが、非保持においてはむしろ強みを見せられる相手になる。ディエゴ・オリベイラ、アダイウトンといったパンチのあるFC東京のアタッカー陣を完封することができれば、大きなアピールになるだろう。
カウンターはまずはホルダーをきっちり捕まえること。最短ルートで進ませずに攻撃を遅らせることができれば、FC東京が苦手なブロック守備攻略に持ち込むことができる。ここに追い込むことを意識したい。
チームの主軸にU-20代表選手を抱える両チームがこのタイミングでぶつかるのはなかなかの因果である。彼ら不在の脆さを露呈すれば敗戦に近づくし、そこをつくことができれば勝利に近づくことができる。若武者不在で多摩川クラシコを制することができるかどうかは、両チームにとってここから1ヶ月弱を乗り切れるかどうかの大きな試金石になるだろう。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)