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「2つの自信と大枠の潮流」~2023.4.5 Jリーグ YBCルヴァンカップ グループステージ 第3節 川崎フロンターレ×浦和レッズ ハイライトレビュー

目次

右サイド攻略とプレス回避に手応えあり

 浦和の序盤のプレッシングはリンセンと安居でバックラインのCBに圧力をかけつつ、CHが高い位置まで出ていきアンカーを捕まえるスタイル。4-4-2ではあるけども、トップがアンカーを受け渡しながら守るのではなく、CBとアンカーの3枚にプレッシャーをかけてくるスタンスだった。

 ご存知の通り、今季の川崎は時間を奪ってくるようなプレッシングをしてくるチームにはあまり強くはない。しかしながら、この試合では浦和のハイプレスへの対応は非常に良くできていたように思う。山根はインサイドに絞るアクションはなく、基本的にはSBはアウトサイドに立つ。車屋と高井の両CBは上福元を挟むように常時PA幅くらいには横の距離をとっていた。

 この結果、川崎のビルドアップは最終ラインには人があまり、2トップは横幅をコンパクトには守れない。シミッチを釣り出すことができた中盤には数的に優位が発生し、SBを噛ませることで中盤がフリーでボールを受ける状況が発生する。車屋、上福元あたりは寄せられてもほぼ気にせずプレーができていたのが印象的。高井は立ち上がりこそ、ややパスの速度が出ないなど緊張しているように見えたが、時間が経過するごとに適応。安心して見られるようになった。

 こういうプレッシングで優位を取れるという確信が取れる試合では小塚の良さが際立つ。散らしながらピッチを広く使う意識はきっちりとサイドでの崩しの起点を作ることに関してはかなり効いていたように思う。けども、今季のコンセプトでいえばもっとビシバシ縦に刺しましょう!なのかもしれないけども。

 アタッキングサードで機能していたのは右サイド。大外をとる永長はボールの収まりどころ兼一枚剥がすというジョーカー枠として非常によく効いていた。2人寄せられてもあまり手を焼く様子もなかったし、1on1であれば大体は完勝であった。

 小塚とシミッチは2CHっぽく振る舞っていたのでこの2人のうちの片方が後方支援、永長が大外、そして山根と脇坂がハーフスペースの表と裏をつく形で陣取りながら右サイドから浦和の穴を開けていく。欲をいえば、永長はインサイドへのカットインのプレーを好んでいたので大外から追い越す形のオーバーラップは見せてもよかった。抜け出しはハーフスペースに終始していたが、外から裏をとる形であれば、膨らむ形からマイナスの折り返しを余裕を持ってできるはず。抜け出すレーンを変える工夫は欲しい。

 トップ下の脇坂が右に流れた分、左サイドは佐々木と瀬川の2人が切り離されており、こちらのサイドの崩しは機能していたとは言い難い。ただ、基本的にはアタッキングサードでの崩しとプレッシングの撃退の両面でそれなりにできたことは良かったと言えるだろう。

 最後の仕上げのところは脇坂と山根のクオリティに不満がある。脇坂は31分のフィニッシュ精度、山根は33分のカウンターにおける選択が絶望的だった。

 浦和のボール保持に対しては自陣からの安易な縦パスは中央で潰すことで徹底されていた。この辺りは車屋、高井、シミッチあたりでのコンセンサスが取れていたように思う。だが、サイドに釣られた時のCBの対応にはやや難があった。浦和は前半途中から左サイドで永長の背後を選手が変わるがわるとることで、山根を引き出しつつ背後の高井を狙い撃ちしていた。

 浦和の右サイドの裏抜けは車屋が出ていっては潰しきれずにフリーズするという悪い癖が散見。DFライン全体が横にスライドして、なんとかカバーするシーンが時折見られた。車屋は前に出ていくプレーは得意なのだが、横に揺さぶられるようなプレーはあまり得意ではない。川崎のCBを務めるなら要改善事項だろう。

 川崎は前半はハイプレス時にサイドに囲い込むアクションはとてもうまくいっていたが、浦和は後半になるとボール保持で横幅を使う頻度を上げて川崎のプレスを引き出しつつ、中盤にパスを刺すスペース作ってから前進するようになる。

 とはいえ、浦和は敵陣からのプレスを諦めておらず、川崎がそれをいなすことができるという力関係も変わっていなかったので、川崎には十分に押し返す機会が与えられることになる。ただし、右サイドの攻撃にシミッチが参加する場合はひっくり返されると中盤の底に小塚が残る形になる。こうした際には浦和のカウンターに川崎のバックラインが十分脅威にさらされる部分があった。リンセンが抜け出したカウンターは川崎の被カウンターの仕組みの脆弱性を示している。

 瀬古の登場以降は縦にパスを刺す頻度が増加する。個人の意識の問題もあるが、この時間帯は両軍とも守備が間延びしており、ライン間のスペースが空いていたという事情も見逃すことができない。

 終盤は両SBを大外に置き、インサイドに人を置きながらシュートを浴びせる川崎。だが、この日は押し込みながらも決め手を作ることができず。

 試合はそのまま終了。スコアレスドローで混戦のグループから抜け出す勝ち点3を両軍ともに積むことができなかった。

ひとこと

 ビルドアップでのプレス回避とアタッキングサードのサイド攻撃はよかったように思う。この2つは自信として持ち帰っても良い出来だった。だが、今年のチャレンジの範疇である自軍側に人を引きつけたことを利用し、縦に刺して素早く攻撃を完結させるように意識はあまりなく、どちらかといえばきっちりとサイドに人数を掛けながら崩しの手段を探るようなこれまでの川崎に近い形である。個人的には前進できる手段を見つける方が今季の路線に乗るよりも全然重要である。

 縦への鋭さを出せるマルシーニョ不在で舵を切った可能性やメンバーが入れ替わって故のスタイル変化という可能性もある。ともかく、この試合における川崎は大枠としてこれまでとは違う潮流に見えたので、リーグではどのようなプランを遂行するのかを観察していきたい。あと、リーグの浦和戦は全然別物になると思います。

試合結果

2023.4.5
ルヴァンカップ グループステージ 第3節
川崎フロンターレ 0-0 浦和レッズ
等々力陸上競技場
主審:川俣秀

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