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「Catch up Premier League」~Match week 27~ 2023.3.11-3.12

目次

ボーンマス【20位】×リバプール【5位】

今度は逃げ切り成功したボーンマス

 前節、マンチェスター・ユナイテッドを7点とド派手に撃破したリバプール。4位争いとサンチャゴ・ベルナベウ遠征に勢いをつけるためにもボーンマスを下しておきたいところである。

立ち上がりはバタバタとした展開に。試合が落ち着くようになるとボーンマスはいつも通りのスタンスに。アンカーを受け渡しながらのミドルプレスでリバプールの攻撃を受け止める姿勢を取る。

 リバプールはひとまずサイドにボールを付けていくことで打開を図る。しかしながら、ボーンマスのブロックに対してズレを作れている感じはしない。エリオットは右サイドで起点になろうと流れるが、あまりポイントを作れている感じはせず。ボーンマスはマンツーで相手についていくところと、受け渡すところが明確でリバプールはその隙間でフリーになる選手を作ることが出来なかった。

 左サイドではガクポとヌニェスのレーンチェンジが攻撃のメインの手段になっていた。だが、バイチェティッチが浮いているところを見ると、あまり関係性が整理されていないようにも見える。サラーとの1on1を受け入れてくれる右サイドの方がまだ有望な状態だった。

 かといってヌニェスを生かそうとするダイレクトな展開に舵を切ると、ボーンマスはカウンターで応戦。直線的ながらも高確率で敵陣に迫ることができる精度の高いカウンターはアーセナル戦に続き健在。ワッタラ、ソランケ、ビリングを軸にして少ない機会を確実にシュートにつなげていく。

 さらに、アーセナルと異なりリバプールはハイプレスを行うエネルギーはなさそうな様子。ボールを持とうと思えば持てるという状況を作ることが出来たボーンマスはストレスを保持で軽減することもできた。

 そして、この状況で先制点を挙げたのはボーンマスの方だった。大仕事をしたのはワッタラ。右サイドでファン・ダイクを引きちぎることに成功すると、折り返しを受けたビリングが貴重な先制点をゲット。ワンチャンスを生かして前に出る。ボーンマスは先制点以降も前線はカウンターの起点として戦うことが出来ていたし、後方はサラーの居るサイドを徐々に手厚くしながら守ることが出来ていた。

 後半、リバプールはジョッタ投入による4-2-3-1にシフト。ガクポはほぼ中盤仕事をこなすようになった。ファビーニョはより右に流れる頻度を上げて、右サイドの攻略を軸とする流れに乗っかる形に。前半よりは押し込めているリバプールはセットプレーでもあわやという場面を作り出しており、同点となるのは時間の問題だった。

 その勢いに乗るチームをベンチから3枚替えという形で背中を押したクロップ。投入されたミルナーのオーバーラップからリバプールがPKを獲得する。だが、これをサラーがまさかの失敗。同点の絶好のチャンスを逃してしまう。

 赦しを貰ったボーンマスはここから再び専制守備でゴールをクローズ。前節7得点のリバプールの攻撃陣にもPK失敗以降はもうガソリンが残っておらず、ボーンマスは先週と異なり今度は逃げ切り成功。リバプールはCL出場権獲得に一歩後退となる大きな一敗を喫してしまった。

ひとこと

 ユナイテッドに7点の後、ボーンマスに負けるのだからプレミアは怖い。

試合結果

2023.3.11
プレミアリーグ 第27節
ボーンマス 1-0 リバプール
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:28′ ビリング
主審:ジョン・ブルックス

リーズ【17位】×ブライトン【7位】

青天の霹靂である同点劇

 前節は攻守に中途半端な振る舞いを見せてしまったリーズ。チェルシーの未勝利記録を止めてしまった次の試合は難敵のブライトンと相対することとなる。

 ラターとアーロンソンの2トップから今節はバンフォードとアーロンソンにメンバーを入れ替えて来たリーズ。往年のリーズのプレスを牽引していたバンフォードがトップに入ったこともあり、前節に比べればリーズはプレッシングにメリハリがあった。

 リーズのプレスといえば、絶え間なく相手にプレッシャーをかけ続けるスタンスがメインだが、この日のリーズは比較的我慢が効いていた。2トップの優先事項は中盤のカイセドとグロスを封殺すること。ロカ、アダムスの中盤のコンビと連携しながらブライトンの中盤を機能させないことに力点を置いていた。

 リーズの試合運びは前節に比べれば上質なものだったとは思うが、それでも明らかにブライトンの方が1枚も2枚も上手といえる展開だった。CHがボールを受けることができなくても前進できるのが今のブライトンの強みである。奥にいる2トップに縦パスを入れたり、サイドから裏を狙う三笘とマーチをダイレクトに狙ったりなど、カイセドとグロスなしでもビルドアップのルートは十分に確保できる。CHが幽閉されている分、マークが空いたCBが自由にアングルを調整する余裕があったのもこうした流れを支援した。

 さらにはブライトンはハイプレスでも優位に。ボールを敵陣に運んで以降は、往年のリーズ顔負けの前からのプレスで即時奪回に成功。中央への縦パスからの前進とハイプレスでリーズの反撃を許さなかったブライトンは完全に試合の主導権を握る。

 先制点もブライトンペースの流れに沿ったもの。右サイドからあっさりとマーチが抜け出すとファーサイドで待ち受けていた三笘の折り返しをマック=アリスターが押し込んでゴール。数字の上でもきっちりとリードを奪う。

 しかし、リーズはワンチャンスから同点に。右サイドのフェルトマンのコントロールミスを見逃さなかったリーズはそこから一気にカウンターを発動。「ワンチャンスを仕留める」という仕事が今季これまでなかなかできなかったバンフォードが貴重な働きを行う。

 同点後もやることは変わらないと淡々としていたブライトン。直後にも1点目と同じラインブレイクを左右入れ替えて三笘が行うなど、相変わらず試合の主導権はブライトンにあった。

 ハーフタイムを挟んでリーズはハイプレッシングからラッシュをかけていく。プレスでボールを奪った後はサイドに素早く展開し、クロスを上げる。後半の立ち上がりはこの形からブライトンを相手陣内に押し込んでいく。スティールの冷静な対応がなければ、失点していてもおかしくはない時間帯だった。

 しかし、10分もかからないうちにブライトンはリーズのプレスを落ち着かせることに成功。前半と同じようにまたしてもWGからチャンスを作っていくブライトン。試合を動かす2点目は左サイドの三笘がエイリングを置き去りにしたところから誘発されたオウンゴールだった。

 再びブライトンがワンサイドな展開を迎え、リードを奪うという前半の焼き直しのような流れ。ファーガソンと入れ替わって投入されたウェルベックには試合を決めるチャンスがあったくらいである。

 しかし、これをなんとかしのいだリーズは再びワンチャンスから同点。ニョントが左サイドからクイック気味に始めたCKからハリソンがオウンゴールの鬱憤を晴らすミドルで同点に。ブライトンはリスタートのシーンでボールが2つあったことに文句を付けたかったようだが判定は覆らず。

 前半と同じくブライトンが追いつかれてしまい、試合はオープンな展開に。リーズは途中交代でニョントが入った分、殴り合うことが出来ていたのが印象的だった。結局試合はタイスコアで終了。2回のビハインドに食らいつき続けたリーズがブライトンから勝ち点1をもぎ取った。

ひとこと

 試合を決めるチャンスも勝つ可能性も十分にあったブライトン。青天の霹靂感のある2失点は計算外だったはずだ。

試合結果

2023.3.11
プレミアリーグ 第27節
リーズ 2-2 ブライトン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:40′ バンフォード, 78′ ハリソン
BHA:33′ マック=アリスター, 61′ ハリソン(OG)
主審:ポール・ティアニー

エバートン【18位】×ブレントフォード【9位】

記録ストッパー再び


 立ち上がりからドッカンバッコンの応酬でスタート。いかにもエバートン×ブレントフォードらしい立ち上がりとなった試合は開始1分でエバートンが先制。ドゥクレとイウォビでセカンドボールを回収した流れでマクニールが先制ゴールを決める。

 いきなり先手を取られたブレントフォードは慎重にショートパスから前進を試みる。エバートンの出足はとてもよかったが、先制点のこともあってか大人しく陣形を下げるプランを敷いていたので、ブレントフォードは前進するだけであれば難しくはなかった。

 敵陣でのブレントフォードのチャンスはほとんどセットプレーによるものだった。しかしながら、この日は得意のパターンであるセットプレーの様子がおかしい。キックがほとんど抜けていく形になっており、まともに味方の頭に当てることができないのである。

 トニーもいつもほどに元気はなかった。対面のターコウスキはとても元気で空中戦で無類の強さを誇るトニーを封殺。流れの中でチャンスを作らせない。

 むしろ、同じセットプレーからチャンスを作ることが出来ていたのはエバートンの方だ。トランジッションでグレイを前向きに走らせながら陣地回復に成功すると、敵陣でセットプレーの機会を得られるように。グレイと並走するドゥクレもカウンターの厚みを増している。獲得したセットプレーの中でもラヤがクロスをはじいたところからオナナが迎えた決定機は大チャンス。ターコウスキのファーで待ち構えるアーセナルファンにはおなじみの形からもチャンスは見られた。

 後半のエバートンはハイプレスでスタートするが、すぐに自陣で跳ね返しに専念。ブレントフォードがブロック崩しにチャレンジする45分となった。

 ブレントフォードのトレードマークといえるファーサイドのクロスが後半は徐々に増加。立て続けにブロックしたコールマンがいなければブレントフォードは同点に追いついていただろう。

 勢いづくブレントフォードだが、キックの精度に苦しむ傾向は後半も変わらず。機会は得られるが精度が足りないことでチャンスをことごとくフイにする。ようやくフィーリングが合った70分の決定機はピノックがミートできずにマクニールにゴールの手前でクリアされてしまうなど、この日のブレントフォードはどこか噛み合わない。

 結局試合はそのまま終了。虎の子の1点を守り切ったブレントフォードが逃げ切り勝利をおさめ、ブレントフォードの無敗記録をストップすることに成功した。

ひとこと

 ダイチのエバートンは好調チームをストップするキラーカードみたいになっている。

試合結果

2023.3.11
プレミアリーグ 第27節
エバートン 1-0 ブレントフォード
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:1′ マクニール
主審:サイモン・フーパー

レスター【15位】×チェルシー【10位】

骨が折れる守備ブロックで我慢する

 互いに5バック同士の組み合わせとなった一戦。立ち上がりは非常に慎重な姿勢だったと言えるだろう。5バックはバックラインへの張りつきが優先。チェルシーはワイドのCB→WBのところからボールをスムーズに運ぶことができていたし、レスターはチェルシーのインサイドのパスワークをカットすることでカウンターの機会を持つことができていた。順調に前に進むことができていても、やはりパスワークのスピードが落ちてしまうところがチェルシーにはある。

 立ち上がりのセットプレーでのチャンスは明暗が分かれた。クリバリの折り返しをダイナミックに沈めたチルウェルは「明」で、マディソンの絶好のFKをヘディングで枠外に飛ばしたアマーティが「暗」であることは言うまでもないだろう。

 レスターは失点以降はプレッシングを強めて勝負に出る。その分、マンツー気味になった負荷は後方に託される。チェルシーは中央の選手が降りて起点を作り、推進力のあるWBに展開して強気のプレスをひっくり返すことができたこともあり、おとなしく撤退してまずは構えるスタンスをとっていた。降りてからドリブルしつつ再加速できる足の長い縦パスを送れるのはチェルシーの前線の強みでもある。チルウェルやロフタス=チークとの相性はいい。

 レスターは保持から、チェルシーはカウンターからそれぞれチャンス構築ができている時間帯だったが、得点を決めたのはレスター。ダカのミドルで同点に追いつくことに成功する。以降も前半はレスターペース。右サイドの裏取りから得点後もラッシュを継続。チェルシーはケバのセービングに救われる場面もあった。

 だが、試合の流れと裏腹に前半終了間際に勝ち越しのゴールを決めたのはチェルシーだった。エンソのタッチダウンパスから抜け出したハフェルツが冷静にシュートを流し込むことに成功。ほぼ、前半のラストプレーで再びチェルシーが前に出ることに成功する。

 後半、立ち上がりに強襲したのはチェルシー。セットプレーからフォファナが決定機を迎える形で反撃に出たいレスターに襲いかかる。

 ただ、後半のチェルシーは基本的には保持で粘る形を徹底。ワイドのCBにはある程度ボールを持たせつつ、後方では相手を逃さないようにきっちりと捕まえる。前半は裏抜けからラインを押し下げることができたレスターの右サイドも後半はギャップを作れずに苦しむこととなる。

 PA内での守備は今のチェルシーの持ち味である。サイドでのマッチアップが多少ズレてもクリバリがスライドして飛んでくる。ゴールマウスを守るケパの出来も万全。チェルシーは押し込んでからも攻略するのに骨が折れるチームである。

 これを受けてレスターは3枚替えで4バックへ移行。陣容を大きく攻撃に傾けて戦うように。4バックとの噛み合わせの落とし所が見つからなかったチェルシーは対応に戸惑い気味で後手に回ることに。デューズバリー=ホールのシュートタッチがよければ、この時間帯にレスターは同点に追いついていたことだろう。

 チェルシーも同じくすぐに選手交代で4バックに移行。サイドでの守備にきっちり枚数を割く形で手当をする。さらにはカウンターから脆弱になったレスターの守備ブロックへの攻撃も開始する。

 レスターはある程度はリスクを負うのは覚悟だろうが、アンカーのスマレの出来はあまりにも悪かった。パスはずれるわ、前から刈りたいIHにプレスで連動できないわで攻守でわかりやすい穴に。強引にチャレンジに行きすぎて退場になるファエスもファエスだが、スマレがあまりにも無関心であればそれ相応のツケが回ってくるのは当然だろう。

 10人への減少したレスターと3点目ともぎ取ったチェルシーは最終盤に試合は再び明暗がくっきり。チェルシーは連勝を飾り上位陣の追走に成功した。

ひとこと

 PA内を守らせたら今のチェルシーはプレミアでもなかなか上の方にくるチームだと思う。WBとフォファナが今の躍進を支えている感があるので、怪我での離脱は避けたいところだが。

試合結果

2023.3.11
プレミアリーグ 第27節
レスター 1-3 チェルシー
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:39′ ダカ
CHE:11′ チルウェル, 45+6′ ハフェルツ, 78′ コバチッチ
主審:アンドレ・マリナー

トッテナム【4位】×ノッティンガム・フォレスト【14位】

リシャルリソンが攻撃を牽引し4位確保に再始動

 CLでは敗退が決まりいよいよ今季の残りの目標は4位以内に絞られた感があるトッテナム。対戦相手となるフォレストは一刻も早く残留を確定させたいところである。

 立ち上がり、トッテナムは高い位置からプレッシングをかけにいく。相手の2CBに対してはリシャルリソンがスライドする形でプレッシャーをかけるなど、相手の陣形に合わせて変形してボールを取り返すスタンスだ。

 一方のフォレストはどこまで積極的にボールを取り返しに行こうか悩んでいる感じに見えた。トッテナムのバックラインに対して3トップはなかなか相手との距離感を掴めておらず、CBに圧力をかけに行こうかMFへのパスコースを消そうか悩ましい形になっていた。

 トッテナムは積極的に大きな展開で活用。シャドーを外し、CBとCHを使い分けながら前進。リシャルリソンがネットを揺らした場面はスキップのロングボールの抜け出しから。オフサイドにこそなったが、この日の序盤のトッテナムの前進の流れを踏襲したシーンと言えるだろう。

 15分もするとトッテナムのプレッシングは落ち着くように。フォレストもシェルビーが前を向いてパスを刺すなど、だんだんと攻撃の形が見えてくるように。バックラインからの前進でガッツリと組む時間帯となっていた。

 結果を出したのはトッテナム。リシャルリソンが右サイドを強引に切り裂いてきっかけを作り、ポロのクロスから最後はケイン。トッテナムは前半に先制点を得ることに成功。

 勢いに乗ったトッテナムはケインのポストからリシャルリソンが抜け出すと、ワローの対応が遅れてしまいPKを献上。さらにリードを広げることに成功する。

 迎えた後半、フォレストは2枚を交代して追撃を狙う。4-2-3-1にシフトして攻勢に出るというのはフォレストのお馴染みの形である。トッテナムはこれに対して受けに回ったことでフォレストは後半頭に相手を押し込むように。左右からクロスを上げてゴールを狙う。

 しかし、得点を奪ったのはまたしてもトッテナム。強気に出てきたフォレストのプレスをひっくり返して自陣からの繋ぎで攻撃を完遂。ホイビュアの大きな展開で抜け出したリシャルリソンが折り返したボールをソンが決めて試合の大勢を決める。

 フォレストはクロス攻勢に出たいにも関わらず、ウッドが投入後5分で負傷交代をするなどあまり運もなかった。セットプレーからワローが1点を返すが反撃もここまで。むしろ、終盤に目立ったのは枠内シュートを防ぎ続ける両GKの奮闘。特にPKまで止めたフォスターはフォレストの攻勢を食い止める活躍だった。

 試合はトッテナムが3-1で勝利。切り替えた目標に前進する3ポイントを手にした。

ひとこと

 リシャルリソンが結果をコンスタントに出せるようになれば好材料。この試合の活躍が一過性かどうかは注目である。

試合結果

2023.3.11
プレミアリーグ 第27節
トッテナム 3-1 ノッティンガム・フォレスト
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:19′ 35′(PK) ケイン, 62′ ソン
NFO:81′ ワロー
主審:クレイグ・ポーソン

クリスタル・パレス【12位】×マンチェスター・シティ【2位】

ワンプレーで水泡に帰す90分

 クリスタル・パレスとマンチェスター・シティという対戦カードは大体期待される展開を裏切らない。クリスタル・パレスが低い位置まで下りて、マンチェスター・シティがそのブロックを破壊するチャレンジを行う。相場はこの流れと決まっている。

 もちろん、今回も例外ではない。2列目はとりあえず重心は後ろ。スペースをとにかく埋めることを優先し、ボールはいくらでも持ってくださいというスタンスである。

 よって、シティは誰かが無理をしなければ打開は難しい状況である。序盤はグリーリッシュが1枚しかついてこなかったことをいいことにゴリゴリと攻め込んでカットインシュートを決め込む。こうしたシュートを見て、パレスは低い位置にさらにブロックを固めるという流れが加速していく。

 それでもパレスはいつもに比べればまだオープンだったように思う。5分の右サイドのロコンガのスルーパスなどは普通に人数をかけた崩しに見えたし、攻め上がるところは攻め上がっていく。

 シティの基本のスタンスは後方の3-2ブロックの形成からの打開。ストーンズより外に広がるアカンジはもうお馴染みの光景である。アカンジは外に開きつつ中央に刺しこむトライをかましていたので、もう立派にシティのDFだなと思う。

 25分くらいからアケは徐々に攻め上がるように。後ろに人を残してなくてもOKという判断をさらにもう一歩踏み込む形でしたということだろう。シティはエリア内でシュートを打つことは出来ていたが、なかなか決めきることは出来ず。

 パレスは立ち上がりに見せたオープンさは徐々にしりすぼみに。アイェウがサイドに流れてシュラップが1列下がる形で実質5-4-1気味に相手の攻撃を受けることとなった。それでも中盤でのボールカットからのカウンターは死んでおらず。前半のパレスはよく健闘していたといっていいだろう。

 後半のシティはより一層仕掛けと打開を増やしていく形でスタートする。パレスは後半は一段プレスのラインさらに下がり、耐えながら持ちこたえる展開が増えていく。

 徐々にロングカウンターを打てる馬力が無くなってきたが、試合の終わりの時間も見えてきたパレス。だが、オリーズがエリア内で軽率なPKを献上。これまでの努力を無にしてしまうワンプレーでシティに絶好のチャンスを与えることに。

 これをハーランドが決めてシティは勝利。後半は押し込みながらも開けたチャンスがなかったシティがようやく巡ってきたチャンスを生かし、首位アーセナルの追走に成功した。

ひとこと

 引きこもり型のチームの90分をワンプレーが台無しにするというのはなかなか切ないものがある。

試合結果

2023.3.11
プレミアリーグ 第27節
クリスタル・パレス 0-1 マンチェスター・シティ
セルハースト・パーク
【得点者】
Man City:78′(PK) ハーランド
主審:ロベルト・ジョーンズ

マンチェスター・ユナイテッド【3位】×サウサンプトン【20位】

アップテンポでババを引いたのは

 試合は非常にハイテンポなスタート。どちらのチームも積極的にパスを縦に入れていくスタンスを維持していた。

 ユナイテッドは前線のメンバー構成はいつもとやや変化があった。ベグホルストの下に2人の攻撃的なMFが並ぶ形はあまり見慣れないものである。おそらくはベグホルストのポストを活かす形で攻撃を構築したいと考えたのだろう。カゼミーロの負担は大きそうではあるが、最下位のサウサンプトン相手ならばテストする価値があると思ったのかもしれない。

 ベグホルストはポストはうまいが、味方が上がる時間を作るようなキープをすることは難しい。後方の選手たちもひたすら縦にボールを差し込みまくっていたので、試合のテンポはどんどん早くなっていく。ユナイテッドのメンバーにおいて唯一止まることができるのはアントニー。彼がボールを持つと、ようやく味方を追い越す動きで緩急が出るように。

 一方のサウサンプトンは縦にパスを差し込みながら前進の機会を探る。ユナイテッドは非保持においては攻撃的な4-1-4-1の弊害を受けており、ラビアを主体として縦にパスを入れるスペースを開けてしまっていた。

 サイドにおいては左サイドが見どころあり。スレマナを軸として危険なクロスを上げていくことで、ユナイテッドの守備陣形を脅かしていた。

 早いテンポの試合にはファウルがつきものではあるが、この試合でババを引いたのはカゼミーロ。深すぎるタックルで今季2回目の一発退場。ここから4試合は彼が不在で戦わなくてはいけなくなる。ここから先の前半はユナイテッドは審判と戦っていたかのような時間。常にテイラーに詰め寄り、カードやPKのアピールを繰り返すことに。テン・ハーグはブルーノがアンカーのように振る舞っているのをはじめは様子見していたが、前半終了間際にマクトミネイを入れることでバランスを取る決断をすることになる。

 後半、サウサンプトンはボール保持の時間を増やし、ユナイテッドは4-4-1のブロック守備を軸に耐える時間を増やしていく。サウサンプトンはCH+CBで組み立てを行い、高い位置からのボール奪取で完全に保持型チームの振る舞いである。

 後半早々に右サイドを抉ったサウサンプトンはチャンスを迎える。マクトミネイに当たったボールはあわやオウンゴールという流れではあったが、ここはワン=ビサカがチームをギリギリで救いことなきを得る。

 ユナイテッドは10人ながらも保持で巻き返そうとするが、11人のサウサンプトンの圧力を前になかなかチャンスを作ることができない。結局はドローを維持するのが精一杯。勝ち点3を取り逃がした!と感じたのは10人のユナイテッドも11人のサウサンプトンも同じ感想かもしれない。

ひとこと

 カゼミーロ、これで今季はサスペンションで8試合は欠場が決定。中盤の要を失うユナイテッドはまたしても厳しい舵取りを迫られることになる。

試合結果

2023.3.12
プレミアリーグ 第27節
マンチェスター・ユナイテッド 0-0 サウサンプトン
オールド・トラフォード
主審:アンソニー・テイラー

ウェストハム【16位】×アストンビラ【11位】

後半は攻め手を見つけたハマーズだが・・・

 ともにエンジ色と水色を1stユニフォームとする両チームの対戦。イングスはどちらのユニフォームを着ているのかよくわからない。バーンリーにもいたのでエンジ色3兄弟完全制覇である。

 4-1-4-1で臨んだウェストハムはそこまで積極的にプレッシングにはいかず。アストンビラのバックラインにボールを持たせる選択を行う。その分、インサイドは非常に強固。中盤での縦パスは阻害し、インサイドで受けたがるアストンビラの2列目には自由を許すことはなかった。

 一方で、外側の守備には脆さが見えたウェストハム。アストンビラの左サイドはこのウェストハムの守備の習性をよく理解していたと言えるだろう。外に開くミングスや左サイドに落ちてくるルイスなどでボーウェンを釣ると、その背後に走り込んだモレノにボールを渡す。モレノは左サイドからドリブルでキャリー。この流れでアストンビラはかなり自由に相手を押し下げることができていた。

 先制点もこの形から。左サイドで自由になったモレノからのクロスをワトキンスが沈めてビラが先制。正直、まぁそうなるだろうなという感想を抱いてしまうくらいにはビラは左サイドから押し込むことができていた。

 ビラの非保持のスタンスもウェストハムと少し似ており、バックラインには強固なプレスをかけるわけではなかった。ウェストハムと少し違ったのはビラはサイドに対しても早い段階で圧縮をかけて自由を与えないこと。つまり、モレノが攻め上がるようなスペースはなかったということである。

 よってウェストハムのボール運びは非常に泥臭いものになった。スペースがない中でドリブラーがゴリゴリと陣地を回復。セットプレーから地道にチャンスを積んでいく形で挽回を狙う。

 ウェストハムの攻撃が実ったのはCKからの流れだった。シュートを押し込みきれなかったパケタが跳ね返りを追いかけ回したところをベイリーが倒してウェストハムはPKをゲット。これをベンラーマが決めてウェストハムは同点に追いつく。試合は振り出しに戻った状態でハーフタイムを迎える。

 後半、いい立ち上がりの入りをしたのはウェストハム。いきなりサイドに流れたパケタのクロスからベンラーマが決定機を迎えるなどマルティネスを脅かしてみせる。エリア内に入り込むタスクを担ったベンラーマは後半多くのシュートチャンスを迎えることとなる。

 保持においてはシンプルなクロスを入れる形と大外からラインの裏に抜ける選手へのボールを入れる形を使い分けながら前進。前半よりも明白に押し込む機会は増えることになった。

 プレッシングも4-1-4-1から4-4-2のシンプルな形に変更。よりバックラインに積極的にプレスをかけるように。ただ、こちらに関してはビラはそこまで苦にしている印象はなく、ボールを持てば前進をしつつウェストハムをズルズルと後退させることができていた。

 終盤になるとより勝ち点3が必要なウェストハムの必死さが際立つように。コルネの抜け出しはオフサイドになったが、ナチュラルにラインを上げがちなエメリのチームの裏をかく形としては悪くはなかった。

 だが、ウェストハムの攻勢も実らず試合はドローで決着。互いに得点は前半の1点のみで勝ち点1を分け合う結果となった。

ひとこと

 ウェストハムは終盤に気迫を感じたのは良かったが、攻め上がるモレノに関しては前触れがあっただけに早めに危険な芽を摘んでおきたかったなと思った。

試合結果

2023.3.12
プレミアリーグ 第27節
ウェストハム 1-1 アストンビラ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:26′(PK) ベンラーマ
AVL:17′ ワトキンス
主審:クリス・カバナフ

フラム【7位】×アーセナル【1位】

難所を完全攻略

 レビューはこちら。

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 ヨーロッパリーグから中2日。アーセナルはクレイブン・コテージでのアウェイの連戦に臨むこととなった。

 厳しい日程とは裏腹にアーセナルのパフォーマンスは好調そのものだった。フラムは立ち上がりに高い位置からプレスをかけてきたが、アーセナルは3-2ブロックを形成してこれを完全撃退。

 やや後方に重すぎるかな?とも思ったのだが、これもアーセナル側のプランだろう。きっちり後方を3枚揃えてバックラインにアウトナンバーを作ることで、1stプレスラインを確実に超える。フラムのプレス隊の誘導がないことにより、アーセナルはミドルゾーン攻略に多くの選択肢を得ることができていた。トーマスは位置を下げていても代わりに左サイドからガブリエウが縦にパスを刺すことができれば問題がない。

 3-2-5型の陣形は前方での人数不足が指摘されるが、これも早々に解決の兆しを見せたアーセナル。16分にオフサイドながらもジャカの助太刀を受けたマルティネッリがエリアに侵入してネットを揺らすことに成功する。左サイドに流れることを好むトロサールもサイドの人数不足緩和の助けになっていた。

 オフサイドでゴールを取り消されてもアーセナルは止まらない。セットプレーでマガリャンイスがゴールを奪って見せると、1点目に続き2点目もトロサールがお膳立て。左サイドからマルティネッリのゴールをアシストする。

 そして前半終了間際の3点目もトロサールのアシストである。サイドをえぐることでマイナスのスペースを導出し、ウーデゴールのゴールを生み出す。プレミア史上初のアウェイでの前半3アシストという偉業を達成したトロサールのおかげでアーセナルは前半45分で完全に試合を決めることに成功する。

 フラムは前進の手段が見つからなかったことが痛かった。ミトロビッチがサリバに負け続けている状況を踏まえれば、降りてきてボールを運ぶことができるウィリアンがいれば前進の手助けになったかもしれない。

 後半は時折フラムにボールを持たせつつも、カウンターからきっちりとアーセナルがゴールの脅威を見せていく。プレータイムが少ない選手や、調整が必要な選手へのプレータイム配分もかなり自由にできた。ジェズスが帰ってくることができたのはここから先のシーズン佳境において大きな手助けになる可能性がある。

 試合はアーセナルが3点のリードを守り切って勝利。EL後の難しい試合を完勝で乗り切ることに成功した。

ひとこと

 前半戦のブレントフォードのアウェイに続き、難所と思われるアウェイをあっさり克服。強さを見せつける完勝だった。

試合結果

2023.3.12
プレミアリーグ 第27節
フラム 0-3 アーセナル
クレイヴン・コテージ
【得点者】
ARS:21′ ガブリエウ, 26′ マルティネッリ, 45+2′ ウーデゴール
主審:デビッド・クーテ

ニューカッスル【6位】×ウォルバーハンプトン【13位】

変化で動く主導権

 リーグ戦ではここ5試合未勝利。中盤で離脱者が出るようになってから成績が右肩下がりになってきたニューカッスル。混沌としてきた4位争いを制するためにもそろそろ未勝利には歯止めをかけたいところ。対するは前節同じく4位争いを演じているトッテナムを打ち破っているウルブスである。

 ボールを持つことになったのはニューカッスル。ウルブスはバックラインにボールを持たれることを許容し、ミドルゾーンで構えながら守ることを選択。陣形をコンパクトに保つことを優先した格好だ。

 ニューカッスルはボールを持たされるという状況にうまく対応したように見えた。サイドでのトライアングルから抜け出す選手を作り敵陣に迫っていたし、外に広げるアクションを挟むことでファウルを獲得することもできていた。

 10分にはニューカッスルはハイプレスをスタート。ウルブスのバックラインはプレッシャーを受けてしまいうまく前進の機会を掴むことが出来ずに固まってしまう。

 時間の経過とともにウルブスはカウンターに移行する機会も出てくるように。段々と反撃の機運が高まってきたウルブスだが、ニューカッスルは保持での主導権を逃がさなかったため、流れはニューカッスルペースから動かなかった。26分にはイサクが先制点を挙げることに成功する。

 後半はウルブスがフォーメーションを変更したことで試合は前半とは異なる顔を見せる。フォーメーションはポデンスをトップ下気味に置く4-3-1-2でニューカッスルのバックラインに積極的にプレッシャーをかけていく。時にはGKにまでプレッシャーに行くくらいにはウルブスはグイグイしていた。前半と違うスタンスだったウルブスにニューカッスルはやや戸惑い気味になるという展開だった。

 4-3-1-2なので幅を取るのはSB。前半と比べて明らかに攻撃に傾倒するスタイルでウルブスはニューカッスルに反撃を仕掛けていく。勢いに乗るウルブスはプレスから同点。ファン・ヒチャンのゴールで追いつくことに成功する。

 ウルブスは選手交代のたびにフォーメーションをころころ変えており、ニューカッスルは対応に困惑気味だった。基本的にはこの試みは有効だったように思えたが、最後の5-4-1だけは勢いをしぼませてしまう形になっていたように思える。

 よって終盤に勢いを取り戻したニューカッスル。未勝利の長いトンネルに終止符を打ったのはアルミロン。大きな決勝ゴールでチームに久しぶりの勝利をもたらす一撃をお見舞い。長く苦しんだニューカッスルだが4位争いにもう一度名乗りをあげる大きな勝利を挙げた。

ひとこと

 後半はウルブスがだいぶ厄介に変身していたのだが、流れと関係なく変身を繰り返していたのが最後は裏目に出たように見えた。変化で主導権を握り、変化で主導権を手放していたように見えた。

試合結果

2023.3.12
プレミアリーグ 第27節
ニューカッスル 2-1 ウォルバーハンプトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:26′ イサク, 79′ アルミロン
WOL:70′ ヒチャン
主審:アンディ・マドレー

今節のベストイレブン

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