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「Catch up Premier League」~Match week 33~ 2023.4.25-4.27

目次

ウォルバーハンプトン【14位】×クリスタル・パレス【12位】

したたかなセットプレーでさらに安全地帯に

 立ち上がりはサイドからのせめぎ合いでスタート。そうした中であっという間に先制点をとったのウルブス。サイドから押し込んでセットプレーを活かして、オウンゴールを誘発して3分で試合を動かす。

 パレスがウルブスのバックラインにボールを持たせることを許容するスタンスだったため、ウルブスは得点をきっかけにさらに保持での支配を強めていく。バックラインが幅をとりながら左右のサイドに振り分けながら敵陣に入り込んでいくスタンスはもはやお馴染みと言っていいだろう。

 パレスもボール保持から相手を動かしていこうと思案はしていた。しかしながらウルブスはスライドが間に合っており、パレスの狙ったような穴がなかなかあくこことがない。ミドルゾーンに網を張ったウルブスから中盤でのボールロストからカウンターを食らうなど苦しい状況に追い込まれるパレスだった。押し込んだ後どうする?という部分も少しふわふわしており、ボールを前に進めたら進めてPAに迫る手段が浮かばずに苦労していた様子だった。

 インサイドに入り込む動きはなかなか作れずに苦戦するパレス。ポストの落としを受けたロコンガが迎えた決定機は貴重なチャンスだったと言えるだろう。だが、これを活かせなかったパレスはリードを許す状態が続く。IHは高い位置からプレスに移行するが、ウルブスは難なくこれを活かし、サイドから有効になるクロスを引き続き入れる形でパレスを丸め込んでいた。

 後半、プレーが不安定だったアンデルセンを下げてパレスは反撃に出る。右サイドからWGが勝負するという前半はあまり作れないシチュエーションを作ることができた分、後半はいいフィーリングだったように思う。ウルブスはこれに対して少ない手数のカウンターで返り討ちを狙っていく。

 パレスにもカウンターの機会が訪れることはあったが、こちらのカウンターにはスピード感がない。ザハの不在の影響が近頃少しずつちらつきつつあるパレスであった。

 パレスは中盤を4-2-3-1に移行してアタッカーの枚数を増やす。前線のポイントが増えたことで、左サイドからのカウンターが少しずつ滑らかになっていく。

 一方のウルブスはトラオレを投入してロングカウンターに特化した攻撃を仕掛けられる状況を作る。それぞれがそれぞれのカラーを出した交代策で試合は終盤戦を迎える。

 終盤戦にはもうプレスに行くことを完全にやめたウルブスは徹底的に自陣に引きこもる。あとはひたすらゴールを磨けて試合を進めていくパレスだったが、後半追加タイムに落とし穴。やらかしてしまったジョンストンが自分のミスからPK献上。これをネベスが沈めてウルブスが勝利を確定させた。

ひとこと

 終わってみれば2つのセットプレーでウルブスの完勝。パレスは4-3-3の状況での縦への推進力が出てこない状況が続いているのが気になる。

試合結果

2023.4.25
プレミアリーグ 第33節
ウォルバーハンプトン 2-0 クリスタル・パレス
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:3‘ アンデルセン(OG), 90+4’(PK) ネベス
主審:ロベルト・ジョーンズ

アストンビラ【6位】×フラム【9位】

非保持での制御は収穫

 抜群のパフォーマンスで上位を薙ぎ倒して言った連勝街道はブレントフォードの本拠地でひと段落。ここから再度連勝を重ねていき、ビラとしては上位の取りこぼしに期待したいところである。

 フラムは非常に慎重な入りだったと言えるだろう。アストンビラのバックラインにボールを持たせるのを許容。前線は中盤をケアすることを優先し、CBへのプレスはあまり行わない方針だった。

 よって、ボールを持つ時間が長くなったアストンビラ。バックラインは横に揺さぶりながらの駆け引きを行いながら縦にボールを入れていく隙を伺っていくスタートとなった。

 となると当然敵陣でのプレーが増えていくアストンビラ。その結果、チャンスが出てくるのはセットプレー。ミングスのゴールからアストンビラは先手を奪うことに成功する。

 先行されたフラムはさらにウィルソンが負傷してしまうなど苦境に陥ることに。裏抜け一発の可能性を探っている最中に前線が交代を強いられてしまうという状況はなかなかに苦しい。抜け出しはだいたいオフサイドか追いかけるビラの守備陣に潰されてしまうなどで無効に。地道に大外のSBから押し下げていくアクションをするなど健闘するフラムだが、なかなかゴールには迫れない状況が続いていく。

 リードしたことで試合をゆったりと進める意識が出たビラ。ボールを持つ時間自体はフラムに与える頻度は増えたが、ボールに持つ側に回ったときは時間を使いながら慎重に攻め立てる姿勢をさらに強めていく。持たない状況でも試合を十分にコントロールできていた。

 後半も前半と同じ流れ。打開の方策が見つからないフラムをアストンビラがボールを使わずに制御するという状態が続いていく。フラムとしては特にインサイドにボールを収める拠点がないところが難点。サイドにいい形で渡すことができず、お得意のクロスが刺さらない状況に改善は見られなかった。

 勢いが少しずつ出てきたのは3人交代。前線をフレッシュにすることでゴールを目指すフラム。82分のシーンはようやくフラムの攻撃が実ったかと思われたが、H.リードからの抜け出しはオフサイド。同点のチャンスをフイにしてしまった。

 終盤は流石に押し込まれすぎた感があったビラだったが、最後までフラムの攻撃を受け切って逃げ切りに成功。ブレントフォード戦で止まった連勝の歯車を再び動かすことに成功した。

ひとこと

 非保持でもコントロールできるようになったことでビラは少しずつチームとしての格が上がっている感じがする。

試合結果

2023.4.25
プレミアリーグ 第33節
アストンビラ 1-0 フラム
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:21‘ ミングス
主審:トーマス・ブラモール

リーズ【16位】×レスター【17位】

好調なアタッカー増員も追いつくところまで

 個人的な意見ではあるのだが、今季の残留争いは下の5チームに絞られたように思う。よって、この試合はその5チームの中の2チームが対峙する大事なシックスポインターである。

 試合は早い攻守の切り替えでスタート。この試合にかかるものの大きさを感じることができる強度でのスタートだった。

 その中でもやや主導権を握っていたかのように見えたのはレスター。ドリブラーを軸に攻め込みながらボールを動かし、リーズの守備にサイドから攻勢をかけていく。

 早いテンポにやや押し込まれていたリーズだが、流れに逆らうように先制点をゲット。WGtoWGでハリソン→ニョントのパスから攻撃を完結してみせた。ゴールを奪ったシニステラが前半のうちに負傷をしてしまったことを除けば完璧なゴールと言えるだろう。

 レスターからすると優位に進めていたのに!という展開だろう。セットプレーからティーレマンスのミドルはスーパーゴールに思えたが、スマレがボールを触っておりオフサイドで取り消されたというのもなかなかにしんどいところである。

 リーズの先制点以降はリーズが攻める時間帯が増えるように。レスターは非保持からのトランジッションのチャンスを活かす形に徐々にシフトする。両チームとも異なる形で攻撃色を増やしていくが、スコアは動かないまま試合はハーフタイムを迎える。

 後半になると、レスターはボール保持のカラーを強めながら押し込む形を作っていく。サイドでのトライアングルでの裏抜けなど、敵陣でのサイド攻略からリーズの守備ブロックを壊しにかかる。リーズは低い位置からのカウンターで反撃に出ていく構えである。

 それでも壊しきれなかったレスターはアタッカーを増員することで事態を好転させようとする。テテ、バーンズの両ワイドのアタッカーをダカ、ヴァーディに変えるというのは直線的な成分に傾倒してしまうリスクもあるが、前節のアタッカー陣の好調さを見れば彼らに賭けてみたくなる気持ちもよくわかる。

 そして、この交代策は的中。アタッカーの織りなすカウンターから同点ゴールをゲット。ヴァーディはついにゴールという形で結果を出す。

 その直後も全く同じ形でヴァーディを活用したカウンターが炸裂するもこれはオフサイド。リーズにとってはギリギリで救われた格好となった。

 リーズもセットプレーからのチャンスはあるが、基本的には終盤はレスターが猛攻を仕掛け続ける形。リーズとしてはこの猛攻を凌ぎ切って、なんとか勝ち点1を確保したという形だろう。

ひとこと

 シックスポインターはドロー。残留争いはまだまだどう転がるか終盤までわからない。

試合結果

2023.4.25
プレミアリーグ 第33節
リーズ 1-1 レスター
モリニュー・スタジアム
【得点者】
LEE:20’ シニステラ
LEI:80‘ ヴァーディ
主審:ポール・ティアニー

ノッティンガム・フォレスト【19位】×ブライトン【8位】

難敵相手にようやく止めた未勝利記録

 ある意味いつも通りの対決と言えるだろう。ブライトンがボールを持つ構図も、フォレストがインサイドを固める構図もどちらも今季これまでの振る舞いを見れば十分に予想できるものだ。

 ブライトンがエストゥピニャンをインサイドに絞らせる形で、CHに入ったマック=アリスターを1列前に押し上げるように振る舞っていた。こうしたアクションは中央を絞って守っているフォレストに対してあまり効果的だったとは言えないだろう。

 大外の三笘で勝負できるパスコースを作るという意味では効果的とも取れるが、今のブライトンの良さは中央と大外の両方を匂わせられるところだろう。相手がインサイドを固めるのであれば、外を使って相手のブロックを広げ、インサイドの目を復活させる方が彼ららしい気もする。

 それはそれとして大外の三笘は単騎でも十分に戦うことができていた。WBのウィリアムズはもちろん、CBのオーリエの両方も壊すことができる状況。外から抉ってインサイドのスペースを創出することができていた。エンシソが決定機を生かすことができれば三笘の効果は数字に具現化したはずだった。

 フォレストはボールを奪ったらサイドからカウンターで裏をとる直線的な攻撃に終始。これもここ数試合の彼らのトレンドである。それでもSBが高い位置をとっており、CBが機動力があるとは言えないブライトンにとってはこのアプローチはそれなりに効き目があるものだった。

 サイドから押し下げることに成功したフォレストは自陣PA内でバタバタしていたエストゥピニャンからPKを奪取し、先制点のチャンス。しかしながら、ジョンソンのPKはスティールにセーブされてゴールを奪うことはできず。試合はイーブンのまま進んでいく。

 ブライトンは前線の横のレーン交換から徐々にフォレストのインサイドをこじ開けられる兆しが見られるように。もう一段踏み込むことができてきたブライトンはついに先制点をゲット。右サイドの大外から進撃したマーチのミドルをエリア内のブオナノッテが合わせてゴール。

 このままブライトンがリードして試合は終わるかと思いきや、前半の終盤にフォレストは追いつくことに成功。左サイドで起点となっていたギブス=ホワイトから徐々に攻める機会を作っていくと、アウォニィのポストから左サイドを駆け上がったロディがオウンゴールを誘発。ハーフタイムを前に試合を振り出しに戻す。

 後半の頭、勝ちが欲しいフォレストは大外のWGへのケアを早めることでブライトンの攻撃を素早く閉じにいく。ブライトンは外を封じられたことで中央に固執しがちなパスワークが目立つように。フォレストが固めていた中央を広げるアクションなしに進んでいくので、いつものようなテンポが出てこない。

 よって、後半のブライトンのチャンスはむしろファストブレイクから。今度はアシストではなく三笘自身にも試合を動かすことができるチャンスがあったが、シュートは枠の外だった。

 そして、試合を動かすことに成功したのはフォレスト。珍しいカイセドのビルドアップミスからショートカウンターを発動すると、これを右サイドを攻め上がったダニーロが沈めてついにフォレストが前に出る。

 終盤もブライトンの攻めあぐねる状況は続いてしまい、後半追加タイム前にはPA内でハンドを犯してPK献上。これを決めてリードを2点に広げる。

 2点の得点差とブライトンの攻め手のない状況では10分を超える追加タイムも意味をなさず。フォレストは未勝利記録を難敵相手に止めることに成功した。

ひとこと

 未勝利記録がここで止まるというのは本当にプレミアリーグは魔境だなと思う。

試合結果

2023.4.26
プレミアリーグ 第33節
ノッティンガム・フォレスト 3-1 ブライトン
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:45+3′ グロス(OG), 69′ ダニーロ, 90+1′(PK) ギブス=ホワイト
BHA:38′ ブオナノッテ
主審:ジャレット・ジレット

チェルシー【11位】×ブレントフォード【10位】

苦境に立たされたまま幕を閉じた4月

 トップハーフとボトムハーフの境界線にいる2チームによるロンドンダービーである。両チームとも3バックのフォーメーションを採用。いずれも重心は低く、後ろに重たい5バック型の形で非常にもっさりとした立ち上がりとなった。

 両チームとも共通して守備は後ろに余る状況を作っているので、前線は簡単にフリーにはなれない。よって、どのように敵陣に侵入していくか?という設計の部分が重要になってくる。

 率直に言って、両チームともこの部分がうまくいっていたとは言い難かった。チェルシーは4バックにシフトする形でビルドアップを行っていく。チャロバーとシウバがGKの脇を挟むように立ち、フォファナはSBのロールを務める。

 基本的にはバックラインはブレントフォードの2トップの脇でボールを持つことができるが、これが中盤の助けになっていない。コバチッチやエンソはブロックの外でしかボールを持つことができず、全身の助けにならない。

 ようやくエリアに侵入できたのは13分。ギャラガーとのワンツーで抜け出したチルウェルがイェルゲンセンを出し抜くことができたシーンである。右の大外がアスピリクエタでいいのかも問題で、より押し上げることができていた右サイドも決め手不足を露呈した印象が強い。

 ブレントフォードのボール回しは外に循環する形が重心。いつものようにセットプレーで泥臭くチャンスを作っていくスタンスである。こちらも綺麗なエリアの侵入が成功したのは29分のオンエカの侵入まで待たなくてはいけなかった。

 指を咥えていてはいけないと思ったブレントフォードは徐々にプレッシングを強化。攻め込む機会を増やしていくと、セットプレーから先制。アスピリクエタのオウンゴールを誘発し、攻めきれない前半に貴重な先制点を奪い取る。

 追いかけるチェルシーは後半にシフトチェンジ。大外にスターリング、ムドリクの2人を置く形で大外からクロスの有効打を見つけることで追撃を狙っていく。

 ブレントフォードはきっちりと受けに入る役割を果たした。外ではデュエルを受け入れ、インサイドはきっちりと閉じるという優先度の付け方でチェルシーの攻撃を受け切る。

 外からの武器がはっきりした分、攻勢に出ることができたチェルシー。後方が押し上げることができていた右サイドから主導権を握りながら攻め込んでいく。

 だが、結果を出すことに成功したのはブレントフォード。カウンターから右に流れたムベウモから追加点をゲット。ワンチャンスからチェルシーをさらなる苦境に追い込む。

 そのままチェルシーは無得点で終了。チェルシーはこれで4月のリーグ戦は未勝利かつ、得点もブライトン戦の1得点だけという苦しい状況になった。

ひとこと

 ランパード、辛いね。

試合結果

2023.4.26
プレミアリーグ 第33節
チェルシー 0-2 ブレントフォード
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
BRE:37′ アスピリクエタ(OG), 78′ ムベウモ
主審:アンディ・マドレー

ウェストハム【13位】×リバプール【7位】

TAAの中央移動は花開きつつある

 なかなか上位陣が勝ち点を落とさず、CL出場権争いは厳しい旗色になっているリバプール。しかし、EL出場権を獲得するためにもまだ手を緩める意味合いはどこにもない。

 リバプールは最近お馴染みになっている3-2-5の形を採用。アレクサンダー=アーノルドをインサイドに置く形で組み立てを行っていく。ウェストハムは意外にも高い位置からのプレッシングで勝負に出た。リバプールのバックラインに引っ掛けさせるアクションをするなど、ウェストハムのプレスの手応えはそこまで悪いものではなかった。

 ウェストハムはさらに自陣からのロングボールからチャンスを作って先制点を得る。左サイドに流れたアントニオとベンラーマで深さを作り、マイナス方向に入ったミドルを放ったパケタが先制点をウェストハムにもたらす。

 しかし、リバプールもすぐさま反撃。アレクサンダー=アーノルドのインサイドへの縦パスから起点をつくると、ライン間に入り込んだガクポが同点ゴールを仕留める。両チームともそれぞれの崩しの良さを作ったゴールシーンだった。

 ゴールシーン以降も両チームの攻撃の良さは出ていた。SBの裏をとるWGと中央でロングボールの起点となるアントニオを軸として長いボールを使うウェストハムも、押し込む機会を増やすことで後方のリベロ役と右サイドへの突撃からよりフィニッシュに近いところでの働きという二面性をアレクサンダー=アーノルドが見せたリバプールも、どちらも理想的な攻撃はできていたと言えるだろう。

 後半、いい流れを掴んだのはウェストハム。サイドを軸として早い攻撃を完結すると、先にネットを揺らすことに成功する。しかし、これはボーウェンがオフサイド。スコアはイーブンからは動かない。

 一方のリバプールはポゼッションに固執しすぎていたか中央に攻撃が偏る展開に。チアゴの投入でさらにその成分は高まっており、押し込むがなかなか結果を出せない焦ったい状況が続く。

 そうした悪い流れを変えたのがセットプレーだった。勝ち越しゴールを決めたのはマティプ。直前に大きな決定機を外した彼にはすぐにリカバリーのチャンスが訪れるという幸運が。これを見事に決めてこの日のヒーローに躍り出る。

 終盤、攻め込む機会を作ったウェストハムとしてはチアゴのハンドをとってもらえなかったことは文句をつけたくなったはず。レフェリーチェックの間はヒヤヒヤしたリバプールの面々だが、このハンドがお咎めなしになったことで無事に逃げ切り成功。上位追走の3ポイントをなんとか確保した。

ひとこと

 結果はヒヤヒヤだっただろうが、アレクサンダー=アーノルド型の3-2-5が徐々に形になりつつあることは好印象だ。

試合結果

2023.4.26
プレミアリーグ 第33節
ウェストハム 1-2 リバプール
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:12′ パケタ
LIV:18′ ガクポ, 67′ マティプ
主審:クリス・カバナフ

マンチェスター・シティ【2位】×アーセナル【1位】

勲章すらも泥だらけに

 レビューはこちら。

https://www.footballista.jp/special/158538

 首位攻防戦という舞台もさることながら、アーセナルからすればどれだけボールを持ちながらシティのプレスをかわせるか、あるいはどれだけハイプレスでシティのポゼッションを阻害できるかという現状の到達点を確かめるための一戦だった。

 しかしながら、この試金石的な要素は攻守どちらの局面においても不十分という結果になった。まず、シティの凄みを突きつけられたのはプレス回避の部分。エデルソン→ストーンズにボールを追い込むことができるのはグアルディオラのリアクションを見ても、アーセナル的には悪くなかった部分なのだろう。

 だが、ストーンズがロングパスでハーランドに正確にボールを届けることでここから脱出すると、落としを受けたデ・ブライネがあっさりとフィニッシュ。ラムズデールには確かにセーブのチャンスがあったシーンではあるが、これ以上に難しいセーブをこの後次々と止めることになるので、ここでラムズデールを責めたとてアーセナルに解決できることは少ないと言えるだろう。

 これ以降もシティはバックラインからのパス交換でアーセナルのプレスを外し続ける。左サイド側では降りるアクションをギュンドアンがこなすことでディアスとどちらにつけばいいのかの迷いをウーデゴールに与えており、こちらもサイドも確固たる前進のルートを見つけることができた。

 アーセナルの保持のターンではホールディングがボールを持たされてしまい、それ以外の選手にマークが集中。前に持ち運べないホールディングのところだけを開けておき、パスの出しどころだけを塞ぐプランでアーセナルのパスワークにリズムを生み出さない。

 高い位置においてはサカをマークするアカンジだけでなく、グリーリッシュやギュンドアンをヘルプにつけることで完全にゲームから締め出す。これだけ厳しいマークに合った上に、後方からの支援も特にないとなれば、サカにできることがほとんどないのは仕方ないと言えるだろう。

 アーセナルからすれば、先制点を与えた時点でかなり情勢は厳しくなり、前半終了間際のセットプレーからもう1点を与えた時点で勝ち点を取る見込みはほぼなくなってしまった。後半頭はシティのプレスが緩んだ分、自陣からキャリーができるようにはなったが、ウーデゴールの細かいパスミスを見逃さなかったデ・ブライネから追加点を奪う。

 この3点目で試合のテンションは明らかに下がったと言えるだろう。ホールディングが決めたゴールはアーセナルが最後まで試合を投げなかった勲章になりうるものだったが、最終盤のハーランドのゴールで、その勲章も傷ものに。個人的にはこの1点はこの試合以降の両チームの勢いに影響しうるものだと思う。

 プレミア首位攻防戦はワンサイドゲームに。これで実力的にも勝ち点的にもシティが優勝争いの運転席に座ることとなった。

ひとこと

 全方位型のシティに対して、ワンスタイル型のアーセナルが戦える場所を見出せずに先制点からズルズルと飲み込まれた試合。せめて、アーセナルとしては先制点を与えるのを我慢したかったところだが、プレスに出ていくな!とも言えないので難しいところである。

試合結果

2023.4.26
プレミアリーグ 第33節
マンチェスター・シティ 4-1 アーセナル
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:7′ 54′ デ・ブライネ, 45+1′ ストーンズ, 90+5′ ハーランド
ARS:86′ ホールディング
主審:マイケル・オリバー

エバートン【18位】×ニューカッスル【3位】

現在地くっきりのワンサイドゲーム

 現在ボトム3に位置しているホームチームが迎えるのは、トップ3に鎮座しているニューカッスル。エバートンにとってはずっと肩を並べてプレミアを盛り上げていた同僚があっという間に手の届かないところにたどり着いてしまったという感覚かもしれない。

 試合はアウェイのニューカッスルが繋ぎながらスタート。エバートンは高い位置からプレッシングに出て行ってニューカッスルのボール保持を阻害するスタンスであった。キーマンになるのはトップ下のドゥクレ。彼がニューカッスルのボールを同サイドに閉じ込めるように追い込み、ボールを刈り取りに行く。

 ニューカッスルのプランはサイドの囲い込みを脱出するため、WGでSBをひきつけてIHがその背後を取る形で奥行きを作っていく。基本的にはバックラインからは対角のパスを使い、エバートンのサイドの誘導を脱出し背後を取る、もしくは斜め方向に入り込みながらエバートンの目の粗い中盤を縫うようなパスを入れることでプレスを交わしていく。

 ニューカッスルはボール保持の主導権を握ったまま先制。大きなサイドチェンジを受けた左サイドでジョエリントンがゴドフリーをかわし、放ったミドルの跳ね返りをウィルソンが押し込んでゴールを決める。ニューカッスルはボールを持ちながらゴール後も試合を支配。エバートン相手に試合の主導権を離さない。

 もっとも、エバートンも十分に反撃の形を作ることができてはいた。ボールを奪ったら素早い中央へのパスからトランジッション。イウォビの縦に鋭く進むドリブル、マクニールのぬるっと相手の間を抜けていくドリブルは少ない手数でエバートンがゴールに迫るための手段である。少ない手数でもきっちりゴールに迫っていき、その主役の一端がマクニールというのは紛れもなくダイチ・バーンリーの豪華版である。

 エバートンが惜しかったのはボールを奪い返すアクションから綺麗にボールを取りきれなかったこと。仕留めきれずにファウルになってしまい、プレーが止まってしまう。

 前半終了間際には自陣からのボールキャリーでエバートンにチャンス。キーンの持ち運びからライン間のマクニール、そして裏のキャルバート=ルーウィンまで見事に繋がったパスだった。だが、前半ATのこのプレーはオフサイド。ゴールが認められることはなかった。

 前半はエバートンなりの反撃を見せられてはいたが、後半はニューカッスルの猛烈な攻撃を受け続けることに。立ち上がりからドリブルでウィロックが決定機を生み出すとターコウスキがギリギリのセーブでゴールを防ぐなど、前半よりもワンランク厳しい対応に迫られている。

 サイドの深い位置から抉っていくことで主導権を握るニューカッスル。ジョエリントンとウィロックがいる左サイドは非常に凶悪。このサイドをこじ開けてニューカッスルは2点目を手にする。

 点差的には十分に安全圏に足を踏み入れたニューカッスルだが、74分にイサクが入ってからワンランクギアが上がるのはエバートンにとっては辛いところ。ニューカッスルはイサクの活躍などからさらに2点を決めてエバートンをオーバーキル。エバートンにとっては1点をやり返すところまでが精一杯だった。

ひとこと

 両チームの現在地をきっちりと示すゲームだった。ニューカッスルは実質CL出場権にあと一歩といったところだろう。

試合結果

2023.4.27
プレミアリーグ 第33節
エバートン 1-4 ニューカッスル
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:80′ マクニール
NEW:28′ 75′ ウィルソン, 72′ ジョエリントン, 81′ マーフィー
主審:アンドレ・マリナー

サウサンプトン【20位】×ボーンマス【15位】

右サイドの連携で取った先制点を5バックで守り切る

 どちらのチームもショートパスから地道にボールを動かしていく立ち上がり。より押し込む機会が多かったのはアウェイのサウサンプトンの方か。ともに4-4-2という噛み合わせのいいフォーメーション同士の対戦ではあったが、サウサンプトンは2CHの移動でこうした噛み合わせをずらしていた。

 勝負を仕掛けるのはインサイド。後方のこうした動きでボーンマスのプレス隊をつることができた場合、中盤にはスペースが空く。SHとCFの4枚は降りるアクションをすることでインサイドでボールを受けに動いている。

 アウトサイドにおいてはA.アームストロングがアクセントに。相手を背負いながらの反転からのドリブルで敵陣に進み込んでいく。ボーンマスはこれに対してナローな4バックと低い位置まで下がるSHで自陣をプロテクト。ボーンマスは押し込まれても決定的なピンチを迎えずに凌ぐ状況で踏ん張っていた。

 サウサンプトンは順当に手数をかけながら敵陣に入り込んでいくが、ボーンマスは対称的。彼らもまた自陣からのショートパスでボールを繋いでいくが、決め手になっていたのはサウサンプトンの高いラインを破るラインブレイクのアクションである。

 中央からパックリとサウサンプトンのバックラインを破り、ネットを揺らすシーンもあったがこれはオフサイド。サウサンプトンとしてはあまり狙ってとれたオフサイドとは言い難いシーン。なんとか救われた格好だ。

 後半、立ち上がりはサウサンプトンが攻め込むが、先制点に手がかかったのはボーンマス。右サイドのタヴァニアの粘りから密集で放たれたシュートはマッカーシーの右側を転がってゴールイン。貴重な先制点でボーンマスが前に出る。

 右サイドの攻撃はカットインするタヴァニアと外に流れるビリングの2つの攻撃で成り立っている感じ。得点以降もこの動きでサウサンプトンを苦しめる。

 終盤にようやく攻撃の機会を得たサウサンプトン。5バックへの移行とタヴァニアの負傷により推進力を失ったボーンマスと両サイドからのクロスで攻め立てる。

 右サイドからのクロスをアダムスが合わせたシーンは彼らの苦闘が実ったように思えた。だがこれは僅かにオフサイド。土壇場での同点ゴールは取り消されてしまうことに。

 この最後の一矢が届かなかったサウサンプトン。ボーンマスはサウサンプトンを下し、残留の地位がために成功した。

ひとこと

 均衡した試合をしたたかに押し切ったボーンマス。前向きな戦いとバックラインを固める戦い方の両刀は残留争いを戦う上の重要な武器である。

試合結果

2023.4.27
プレミアリーグ 第33節
サウサンプトン 0-1 ボーンマス
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
BOU:50′ タヴァニア
主審:ダレン・イングランド

トッテナム【5位】×マンチェスター・ユナイテッド【4位】

腹を括ったトッテナムの猛攻も牙城を崩す3ポイントには届かず

 終盤戦の4位と5位の試合といえば当然CL出場権をかけた熾烈の戦いになるはずの構図である。しかしながら、今季においてはほぼ固まりつつあるユナイテッドのトップ4の座を5位のスパーズが切り崩すことができるかどうか?という構図になってしまっている。

 しかしながら、序盤から主導権を握ったのはマンチェスター・ユナイテッドだった。ユナイテッドはボールを持ちながらトッテナムの守備ブロックを攻略するトライを行っていく。

 トッテナムはシャドーがラインを下げながら内側を切るようなプレスを敢行。よって、ユナイテッドはボール保持とサイドのスペースを与えられたのと引き換えに、インサイドのスペースを消されることとなった。

 だが、ユナイテッドの先制点はそうしたトッテナムの誘導に逆らうもの。リンデロフからインサイドにボールを差し込み、ラッシュフォードから左に流したところをサンチョが沈めて先制点をゲット。トッテナムは入られたくないスペースにあっさりと侵入を許し、ゴールを献上してしまった。

 実際、ユナイテッドの保持はトッテナムの思惑とは裏腹にインサイドとアウトサイドをスムーズに使い分けるものだった。縦パスを引き出す2列目と前線、そして大外レーンに張って攻め上がるSB。外を伏線にインサイドの勝負パスを使うことでトッテナムの誘導を裏切りながら効果的に攻撃を続けていく。

 トッテナムは縦に速い攻撃が中心。右の大外のポロからソンの裏抜けを誘発する形か、カウンターの急先鋒として奮闘していたリシャルリソンに素早く縦パスを入れるかで、カウンターからチャンスを伺っていく。

 しかしながら、縦に速い攻撃でゴールまで漕ぎ着けたのはユナイテッド。自陣からのカウンターからブルーノ→ラッシュフォードの縦パスで一気にトッテナムの最終ラインを破って見せる。トッテナムはハイラインにおける脆さを露呈。今季継続して相手の攻撃を受けきれない苦手としている形である。

 後がなくなったトッテナムは後半の頭から猛攻を仕掛けていく。前からのプレッシングでオープンになることを許容。自分たちが苦手なハイラインで受けるリスクも負いながら、オープンなスタンスでユナイテッドのゴールに攻め込んでいく。

 そんなトッテナムのリスク上等のスタイルは早々に結実。ポロのスーパーミドルで1点差に迫っていく。

 この失点の直後、ユナイテッドはブルーノに特大の決定機。しかしながら、これをまさかの形でブルーノがふかしてしまう。これで流れは再びトッテナムに渡っていくことに。

 後半のトッテナムはかなり腹をくくっていた。攻撃を素早く繰り返しながら機会をとにかく生み出し続ける。ソン、ダイアーと決定機も多く、いつ同点に追いついてもおかしくない状況だった。79分についに決まった2点目は彼らの後半の猛攻からすればむしろ遅いくらいだろう。

 同点ゴールで攻め疲れてしまったか、トッテナムは同点ゴール以降は息切れを発生。トップ4の牙城を切り崩すために必要な3ポイントを手にすることができず、ユナイテッドに勝ち点1の持ち逃げを許してしまった。

ひとこと

 ユナイテッドの後半の失速は不可解だが、テンポを上げられた時に抑えられる仕組みがないのだろうなと思った。

試合結果

2023.4.27
プレミアリーグ 第33節
トッテナム 2-2 マンチェスター・ユナイテッド
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:56′ ポロ, 79′ ソン
Man Utd:7′ サンチョ, 44′ ラッシュフォード
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

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