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「270分を完全制圧」~2023.4.18 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter-final 2nd leg ナポリ×ミラン マッチレビュー~

1st leg

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ジルーとミランを救ったレオン

 CL、そしてリーグ戦の2回の対戦はいずれもミランが完封で勝利。今季のカンピオナートの成績でいえば、この3連戦の最終戦をこんなにミランが完璧な形で迎えると想像した人は少数だったはずである。ミランにとってはこのナポリのスタジアムはリーグ戦で完全制圧が済んでいる場所。1stレグでのリードという物質的な優位以外にもどこか落ち着いて試合に入れるスタジアムだったといえるだろう。

 立ち上がり、ボールを持ったのはミラン。ナポリのプレッシングの出方を確かめるように後方でボールを回す。ナポリはジエリンスキを1列前に押し出す形の4-4-2への変形をしながら前への圧力を高めてミランの最終ラインにプレスをかける。

 ミランは無理をせずにボールをきっちりと捨てて前線にロングボールを狙う。過度にボール保持にこだわらず、長いボールからの前進もそこまで明確なストロングにはなっていなかった。どちらかといえば安全にボールを捨てることを前提に設計されていた感もある。低い位置からは無理にひっかけるようなパスワークを狙いに行かず、ナポリの組み立てのスタート地点をひたすら後方にするように振る舞っていたように見えた。

 しかしながら、ミランはナポリに対して高い位置からボールを奪いに行くわけではなかった。よって、ひとたびナポリがボールを持つことができれば、ゆったりとしたポゼッションが実現可能である。ミランのプライオリティはあくまで中盤のケア。余っているナポリの最終ラインは少し時間を持て余しているようだった。

 こういう場面において非常に効くのはバックラインからのキム・ミンジェの持ち上がりだろう。だが、この日はその彼は出場停止。攻守に大きな穴が空いていることを感じさせる立ち上がりだった。

 ナポリの前進はスマートというよりはゴリゴリとした圧力を前面に押し出したもの。地道に進んでセットプレーのチャンスを得て、ミランを敵陣に押し込める形が多かった。攻撃のパターンはブロック外からのミドル、クロス、そしてクワラツヘリアのドリブルなどなかなか中に入り込めないものばかり。

 15分になるとクワラツヘリアにボールを渡せる機会が増えてきたナポリだったが、ミランはクワラツヘリアにSBとSHの2枚で対応する形をキープ。何とか間に合わせる形で踏ん張っている。

 すると、機会が限られていたロングカウンターからトランジッションでの脱出に成功。ディアス、ベナセルで中盤からスイッチを押すと、ボールを引き取ったレオンが再加速。PA内に侵入したところでルイがレオンを倒してPKを献上する。

 ナポリを突き放す絶好のチャンスだったが、このPKをジルーが失敗。大きなチャンスを逃すことになる。ジルーは直後もミランのハイプレスから決定機を迎えるが、これはメレトの自作自演気味(ピンチは彼が強引に中央につけたパスからだった)のファインセーブで先行を許さない。

 ジルーが立て続けにチャンスを逃すと、再びペースは保持で主導権を握っていたナポリの下に。押し込まれるミランとチャンスを決められなかったジルー。この2つをまとめて救ったのはレオンだった。低い位置からのドリブルで何人ものナポリの守備者を剥がすと、最後はインサイドに待ち受けるジルーに沈めるだけのラストパスを披露。二度の大チャンスを逃したジルーに三度目の正直を与え、ミランにリードをもたらす。まさに救世主というべき働きだった。

 これで2点が必要になったナポリ。ワンランク圧を高めてプレッシングを行っていく。それでもミラン相手にブロックの外から殴らされている感は否めず。ロングカウンターを軸にミランが反撃を狙う構図は変わらなかった。

 この日のナポリの攻撃がイマイチだったのはやや個々のアタッカーが力任せに打開しようとする場面が目立ったことと、その部分で最も力を発揮できるクワラツヘリアにミランが徹底的にマークを敷いていたことが理由として挙げられる。特に後者はディアス→メシアスの継投でダブルチーム体制を強化。ラインを上下動して揺さぶる術を封じることで、インサイドの守備ブロックが無理なくクロスを跳ね返すことができる構図が出来ていた。

 それでもオシムヘンの根性とディ・ロレンツォの右サイドをえぐる工夫でハンドを誘発しPKを獲得。しかしながら、この日のPKはナポリ側にも微笑まず。メニャンの素晴らしいシュートストップにクワラツヘリアのPKは阻まれてしまった。

 最後の最後まで粘り続けたナポリは終了間際にオシムヘンのゴールでなんとか1点を返すがこれが精いっぱい。2試合合計スコアは1-2でミランの勝ち抜けが決定。リーグ戦も含めた270分の決着はミランの完全勝利で幕を下ろした。

ひとこと

 ナポリの敗因はリーグ戦でもやや淡白さが見られる機会は増えていたので勤続疲労+オシムヘンの不在と取ることもできるし、やや試合運びに力任せ感が出ていたことも気になる。クワラツヘリアのマークが厚いことを利用するくらいの柔軟さは今季の彼らなら見せられても良かった気もする。逆に言えばブロックの上から殴る力強さが十分なナポリをミランがきっちりと抑えたともいえるが。

試合結果

2023.4.18
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 2nd leg
ナポリ 1-1 ミラン
スタディオ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナ
【得点者】
NAP:90+3’ オシムヘン
MIL:43′ ジルー
主審:シモン・マルチニャク

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