■アクセルを踏み、スピードに乗る
スウェーデンに敗れて首位通過に黄色信号。負けどころか引き分けも許されない状況のスペインであるが、正直言ってこの試合は彼らが冷や汗をかくような試合ではなかった。スペインの保持の局面が続くゲームであり、ジョージアは90分間それに耐え忍び続ける状況となった。
ジョージアの4-1-4-1の守備に対して、スペインはいつものようにサイドから崩しを狙っていく。サイドの崩しの基本的なイメージとしてはSB、IH、WGの3枚で4箇所のポジションを入れ替わりながら動く形。
1. ハーフスペースの手前
2. ハーフスペースの奥
3. 大外
4. 後方のサポート
この4箇所を入れ替わりながらポジションをとっていく。
ここを3人でローテするのが基本。思うに、人にたいして場所が1つ余っているのがミソなんだと思う。初めからそこに人がいれば、守備側もその位置をあらかじめ埋めればいい話だけど、そこに人が入ってくるのならばあらかじめ人をそこに置くのは難しい。
4-1-4-1のジョージアはIHをスペインのIHにマンマーク気味につけているが、マンマークについていればいい状況からスペインは保持で揺さぶりをかけてくる。例えば、運ぶCBは放っておいていいのかとか。あるいは降りてくるCFは受け取らなくていいのかとか。ジョージアのIHがマーカーを離してしまう誘惑はスペインによって数多く散りばめられている。そういう中でフリーになったスペインのIHがフリーランで躍動する。そんなパターンが多かった。
スペインとしてはジョージアのCBからIHとWGの間を斜めに割るパスが通ると一気に局面が進む。このパスとハーフスペースの裏抜けがコンボで発動するとジョージアのDFラインはどうしても崩れてしまう。
ポゼッション型のチームの課題としてやり直しに備えすぎるあまりに、PA内の迫力が薄まることが挙げられる。その部分でもこの日のスペインは万全だった。ハーフスペースの裏抜けというアクセルを踏むと、ボールサイドではない選手がきちんとそれに応えてエリア内に雪崩こむ。スコアラーになったソレールやガヤはその仕事を忠実にこなしていた。
3点目を取ったフェラン・トーレスは、動き出してからフィニッシュまでの一連の仕事をやり遂げる力がメキメキついている印象。クラブでの好調をうまく代表でも還元している。
あまり見せ場のなかったジョージアだったが、この試合で目立ったのは右のWGであるズリコ・ダヴィダシュヴィリ。ルビン・カザンにも所属歴がありロシアリーグを主戦場として活躍する20歳。後半は何回か彼の突破からチャンスを迎えるシーンも。前節のコソボ戦でも同ポジションのツィタイシュヴィリが躍動するなど、ジョージアは右WGにはいいタレントが揃っているようである。
ただし、試合をひっくり返すような力はなし。後半にもサラビアのゴールで4得点。最後はGKを入れ替える余裕まで見せたスペインが危なげなく大勝を飾った。
Pick up player:ホセ・ルイス・ガヤ(ESP)
オーバーラップで攻撃の加速を促したり、的確なエリア内の進出が光るパフォーマンス。攻撃のアクセルを踏むこと、走り出した攻撃に厚みを加えることのどちらもこなした。オフサイドで取り消されたもののネットを揺らしたシーンでは飛び込みのタイミングもバッチリ。相手のレベルもある話ではあるが、アルバに対抗する存在であることを示した。
試合結果
2021.9.5
カタールW杯欧州予選 第5節
スペイン 4-0 ジョージア
エスタディオ・ヌエボ・ヴィヴェーロ
【得点者】
ESP:14′ ガヤ, 25′ ソレール, 41′ トーレス, 63′ サラビア
主審:チアゴ・マルチンス