リーズ【19位】×ニューカッスル【3位】
インパクトを上書きするヒーローは現れず
前節、シティに敗れながらもやたらと団結感のある雰囲気をエティハドに植え付けたビッグサムのリーズ。シティには結果が伴わなかった団結力がホームのニューカッスル戦では勝ち点に結びつくかどうか。注目が集まる一戦である。
立ち上がりはハイプレス+ロングボールで幕を開けたリーズの振る舞い。どうやらエティハドの勢いは継続しているようである。
しかしながらニューカッスルも十分に攻撃の準備はなされていた立ち上がり。イサクを軸に左サイドを動かしながら攻撃を行っていく。サイド攻撃はひとまず深さを取ってからマイナスのギマランイスを活用する形でニューカッスルはリズムを生み出していく。リーズはニューカッスルの振る舞いに対して、徐々に4-5-1のフラットな形にシフト。ハイプレスからミドルゾーンを維持したプレッシングに切り替えていく。
ニューカッスルの得意なパターンに徐々に持ち込めているようにも見えたが先制点を手にしたのはリーズ。左サイドのバンフォードのラインブレイクから、クロスに入ったロドリゴの大外を回るように走っていったエイリングがそのままゴールを押し込んで先制。大一番でリーズが前に出ることに成功する。
さらに勢いに乗るリーズは同じく左サイドの攻撃から追加点のチャンス。フィルポの侵入に対して完全に後からのチェックになってしまったジョエリントンがPKを献上してしまう。
しかしながら、このシュートをバンフォードが決めることが出来ず。すると、直後に右サイドに出張しながら裏抜けを試みたイサクがPKを獲得。これをウィルソンが決めてニューカッスルが同点に追いつく。
この一連で試合の流れは一気に変動。試合の主導権はニューカッスルに。ニューカッスルはPKにつながった右サイドの裏抜けの動きを繰り返すことが出来ていた一方で、リーズはちっとも前進ができない状態に。2つのPKが展開を大きく変えた前半となった。
後半は試合はだいぶフラットに戻った印象である。ボールを持つ機会はニューカッスルの方が多かったが、ファストブレイクに集中したリーズも十分に反撃の体制を整える。オープンで攻守の切り替えが早い見ごたえのある後半の序盤となったといえるだろう。
試合がオープンな状態になり、攻守の切り替えのスピードが上がっていくと、プレーテンポのチューニングが失敗してしまい、退場や警告を受ける選手が出てくるのはサッカーあるある。この試合ではフィルポがそのババを引きかけたが、なんとかOFRのレコメンドを回避。退場を免れた。
だが、この時間以降の主役は紛れもなくフィルポである。自分の後方に立つイサクがフリーになっていることに気づいていたのか、思いっきり手を伸ばしてのハンドという謎ムーブからPKを献上し、せっかく助けてもらったVARへの温情を台無しにしてしまうことに。
リーズにとっては苦しい展開に突入するかと思われたが、なんとかセットプレーから同点に。根性でシュートを打ち続けたご褒美としてクリステンセンのシュートがトリッピアーに跳ね返り、ゴールに吸い込まれていった。
ここからは一層試合はオープンに。アーロンソン、サン=マクシマン、そしてゴードンと交代選手も含めて誰がこの試合のヒーローになるのか。非常に目が離せない展開となっていた。
しかし、最終盤も展開を決定づけるキーパーソンになったのはフィルポ。抜け出した相手を張り倒してついに退場。PAのギリギリ手前でファウルを犯したことしか評価できないプレーでリーズは10人に。ほんで結局退場するんかい!!
苦しい展開に見舞われたリーズ。だが、ニューカッスルもフィルポのインパクトを上書きできるヒーローが表れないまま試合は終了。残留とCL出場権争いをかけた一戦は白熱したシーソーゲームの末に勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
勝ち点1は取れたのでフィルポに石を投げるのはやめてください。
試合結果
2023.5.13
プレミアリーグ 第36節
リーズ 2-2 ニューカッスル
エランド・ロード
【得点者】
LEE:7′ エイリング, 79′ クリステンセン
NEW:31′(PK) 69′(PK) ウィルソン
主審:サイモン・フーパー
サウサンプトン【20位】×フラム【10位】
望みをつなぎたい状況とは裏腹に
フォレストに敗れた段階で残留の可能性は風前の灯。サウサンプトンが37節に望みを繋ぐためには少なくとも勝利を掴む必要がある。
そうした崖っぷちな状況を強いられているサウサンプトンだが、フラムとの試合で実際に見られた展開はそうした追い込まれた状態とは異なるもの。バックラインには全くプレスに行かなかったため、ボール保持はフラムが延々と支配する。
主導権を握るレベルではなく、フラムからボールを取り上げることができず、自分たちの保持のターンを持って来れないくらいサウサンプトンはボールから見放されていた。特に初めの15分はこの流れが顕著。フラムの大きく開くバックラインが外循環でボールを持ちつつ、ハーフスペースの裏を狙っていく。
ベトナレク、リャンコはハーフスペースをなんとか防いではいたが、そこから侵入されている時点でなかなか陣地回復は苦しいものになる。サウサンプトンはそこからボールを持ち直す手段がなかったように思う。
前半はこの流れが延々と繰り返されるだけ。勝たなければいけないサウサンプトンだが、ボールの取り所だけ見れば相手がマンチェスター・シティなのかな?というくらい解決策が見えなかったことはファンにとっては頭が痛かっただろう。
これではいけないと感じたのかサウサンプトンは後半頭はボールを持っていくスタート。その甲斐があってか、後半早々にアルカラスが抜け出すアクションからネットを揺らしてみせる。しかしながらこれは僅かにオフサイド。サウサンプトンの千載一遇の先制点のチャンスはノーゴールになってしまう。
すると、この流れをひっくり返すようにフラムが先制点をゲット。前半から繰り返していたハーフスペースの突撃がついに実り、最後はインサイドで待ち構えていたヴィニシウスがゴールを仕留める。サウサンプトンからすればまさに天国から地獄と言える数分間だっただろう。
2点が必要になったサウサンプトンは保持のフェーズを増やしながらボールを動かして打開を狙う。しかしながらボールを持たれると終わる。取り返すことができない。
ボールを奪ったらフラムはウィリアンを預けどころとしてボールを握り直す。リードしたフラムは淡々と試合を進めていく。
そして、トドメを刺したのはミトロビッチ。サウサンプトンの降格を決定づけたのは長期の出場停止から復帰したエースの一撃。残り時間はあったが、この一発で試合は実質終了。サウサンプトンのプレミア生活は11年で幕を閉じることとなった。
ひとこと
結果もさることながら、アルカラスのゴール以外はなかなか意地を見せられなかったというのがそもそも辛い。
試合結果
2023.5.13
プレミアリーグ 第36節
サウサンプトン 0-2 フラム
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
FUL:48′ ヴィニシウス, 72′ ミトロビッチ
主審:トーマス・ブラモール
チェルシー【11位】×ノッティンガム・フォレスト【16位】
磐石な弱者の戦い方
エバートン、リーズと残留争いのライバルが続々と息を吹き返している現状はフォレストにとっては有り難くはない。自身もサウサンプトンとの叩き合いを制して大きな勝ち点3を手に入れたが、何もかかっていないチェルシーが相手であるならば、さらなる勝ち点を積みたいところである。
予想通り、試合はチェルシーがボールを持ちながらのスタート。いつものようにナローに守るフォレストの3トップに対して、彼らが開けているサイドからボールを運ぶことで深さをとる。
しかしながらここから進めないのが今日のチェルシー。前線への縦パスは受け手が相手に捕まってしまったままでボールを入れてもフリーで十分にコントロールすることができず。チェルシーはフォレストが許容している守備ブロックより深い位置には侵入を許されない状況である。
フォレストは自陣の低い位置からロングカウンターから反撃に打って出る。直線的な鋭さはあったわけではないが、この日のフォレストは十分に勝負が可能。右サイド側にはチルウェルとククレジャ不在で先発しているホールがいるし、逆サイド側もマドゥエケとチャロバーの連携が危うくトップが流れるアクションに対応できないでいた。
フォレストはこのサイドからあっさりと先制点をゲット。左サイドのクロスから決めたのはアウォニィ。見事なゴールでフォレストを押し上げる。チェルシーからすると、ふわりとした人を目掛けたクロスだっただけになんとか仕留めたかったところ。チアゴ・シウバとバディアシル、そして飛び出して触れなかったメンディにはそれぞれの反省がある形の失点となった。
以降も十分にフォレストはチャンスを作り出す。サイドからの突破の糸口を作るアクションとセットプレーでの空中戦強度。ボールを持たれながらもチャンスを作るというオーダーはほぼ完璧にこなした前半と言えるだろう。
チェルシーもチャンスがないわけではない。好調の右サイドはマドゥエケを基準にギャラガーが同サイドに抜け出すなど動きをつけられており、PA内にスペースを作るアクションはできている。
一方で左サイドには物足りなさが残る。スターリングはワローとの抜け出しの駆け引きは残念な形で終わってしまったし、フィニッシャーに近い動きを求められがちな左のSBに入ったホールもよどみないシュートまでの道筋を描けるわけではない。
前半終了間際のフェリックスの振る舞いを見ればわかるようにチェルシーにとってはフラストレーションが溜まる展開だっただろう。持たざる者の理想な試合運びを実現したフォレストがリードしてハーフタイムを迎える。
後半も試合は同じ構図でスタート。チェルシーがボールを持ちつつ、フォレストがそれを跳ね返す形。右サイドを軸にハーフスペースの裏を取る形で攻撃を続けていく。フォレストは時折バックラインに圧力をかけつつ、弱者としてこのゲームの主導権を狙いに行くことを忘れていなかった。
流れの綱引きの中で次に点を獲ったのはチェルシー。右サイドで大外に合わせてのチャネルランを披露したのはチャロバー。根性でマイナスの折り返しにつなぐとこれを仕留めたのはスターリング。狙った形が意外な組み合わせでようやく実り、チェルシーが同点に追いつく。
勢いに乗るスターリングはさらに追加点をゲット。左サイドからのカットインをそのまま沈めてチェルシーはついにリードを奪う。しかし、スターリングが2ゴールを奪うのであれば、先制点を奪ったアウォニィも負けてない。4分後にゴールを決めて試合を振り出しに戻す。
追いつかれたチェルシーは終盤までゴールを狙っていくが、最低限の1ポイント確保に舵を切ったフォレストを前に攻め切ることができず。試合は2-2のタイスコアで幕を下ろすこととなった。
ひとこと
フォレストは弱者の戦い方ができていただけに2失点目のスターリングに対してフェリペが簡単にすれ違ってしまったのはいただけない。
試合結果
2023.5.13
プレミアリーグ 第36節
チェルシー 2-2 ノッティンガム・フォレスト
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:51′ 58′ スターリング
NFO:13′ 62′ アウォニィ
主審:ポール・ティアニー
アストンビラ【8位】×トッテナム【6位】
欧州枠をめぐる直接対決はビラに軍配
欧州カップ戦の出場権を争っている両チームの直接対決。積極的に高い位置からプレッシングに出ていくスタンスを見せたのはアウェイのトッテナム。アストンビラのバックラインにプレスを積極的に仕掛けていく。
ただ、アストンビラのバックラインは問題なくトッテナムのプレッシングを回避していた。枚数を噛み合わせるわけではないトッテナムのプレスに対して、空いているスペースから前進することでビラは順調に攻撃を前に進めていく。
インサイドにはワトキンスという起点もある。リトリートしているトッテナムのバックスは中央を優先して閉じたように見えたが、十分に余裕を持って中央にパスをつけることができていた。
逆にトッテナムはカウンターで進撃。ロングカウンターをライン裏に素早く送り込むことで少ない手数でアストンビラのゴールを狙っていく。スピードに乗れた時の攻撃は悪くはなかったトッテナムだが、アストンビラが撤退してプレスに出てこないと、あっという間にショートパスからの組み立ては手詰まりになってしまう。
ただ、アストンビラのバックラインはボールホルダーにプレッシャーにいけない時でも極端にラインを上げるケースが多かった。よって、自陣からのボール保持においても一発で背後に送ることでチャンスメイクをできていた。
しかしながら、ビラは高い位置から徐々にプレッシャーをかけていくことで非保持でもペースを握っていく。そして、先制点はビラ。ワトキンスのポストからラムジーがボールを受けて逆サイドのベイリーまで。折り返しを再びラムジーが決めて先制する。
以降もペースを握り続けたのはアストンビラ。パス交換からのライン間侵入でチャンスを続けていく。
ビラのリードで迎えた後半。試合はややテンポアップした印象を受けた。縦に速い攻撃を両チームが志向することで試合はオープンに。
序盤はボール保持に徹していたアストンビラも時間の経過とともにファストブレイクに移行。ポジトラからチャンスを作るように。
ハイプレスからビックチャンスを得たのはトッテナム。ケインが決定機を迎えるがこれを決めることでできず、反撃の狼煙を上げることができない。
そうこうしているうちにビラはルイスのゴールで2点目。さらに突き放してトッテナムを追い込む。
ビスマの投入で後方からのロングボールの性能を強化したトッテナムだが、AT突入直前のPKによる1点差に迫ることがでいっぱい。試合は下の順位のアストンビラがトッテナムとの勝ち点差を縮めることで試合を終えた。
ひとこと
局面の完成度で上回ったのはアストンビラ。勝利は妥当だろう。
試合結果
2023.5.13
プレミアリーグ 第36節
アストンビラ 2-1 トッテナム
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:8′ ラムジー, 72′ ルイス
TOT:90′(PK) ケイン
主審:ピーター・バンクス
マンチェスター・ユナイテッド【4位】×ウォルバーハンプトン【13位】
僅かな優位を積み重ねた90分
ここに来てリーグ戦は連敗とトーンダウンの様相のマンチェスター・ユナイテッド。猛追するリバプールを振り切ってのCL出場権確保には目先の勝ち点が欲しいところだが、今季何度もチームを救ってきたエースはいないという苦しい状況である。
ウルブスの非保持のアクションはユナイテッドにボールを受け渡すものだった。ウルブスの2トップのケアは中盤を優先。ウルブスのボールサイドのCFが時折ユナイテッドのCBにプレッシャーをかけにいきつつ、基本的には後方を気にするという立ち上がりだった。
ユナイテッドはボールを失った後のアクションが早かった。ロスト後に即座に取り返しに行く関係で、ウルブスの面々はやや保持に回ると慌てた形に。中央にボールを刺しては中盤のデュエル合戦を引き起こしていた。
このデュエル合戦はユナイテッドが優勢。ボールを回収しては二次攻撃に繋げていく。狙いとなったのはウルブスのDF-MF間。ウルブスの中盤を引き出してはインサイドに刺すパスを少しずつ増やしていく。
ウルブスの保持は時間の経過とともに安定感が出てきていつも通りのサイドへの展開は増えていく。しかしながら、サイドからのエリア内への崩しまではなかなか辿り着けず。特に左サイドの裏抜けに対するカゼミーロとヴァランの対応が盤石でウルブスはこのサイドに穴を開けることができなかった。
先制はユナイテッド。ライン間の縦パスを自由にさせまいと出てきたキルマンを振り切ることに成功したユナイテッドがブルーノで加速。サイドのアントニーに受け渡すと、最後は折り返しをマルシャル。エースに代わってCFで出場したマルシャルが貴重な先制弾をユナイテッドにもたらす。
その後もチャンスをコンスタントに作ったのはユナイテッド。得点の可能性があるチャンスが次から次へとユナイテッドの元に降りかかってくるという感じではなかったが、シュートにきっちりたどり着くユナイテッドとそれができないウルブスの間にはシュート本数の差という形でかなり違いが出てくるようになった。
迎えた後半も展開は同じ。前線の活発なフリーランを軸に、ウルブスのラインをかき乱すユナイテッドは順調にゴールの本数を積み重ねていく。その一方でウルブスはプレスのスイッチが入らず、奪った後も不安定な保持でなかなか前進に寄与できない。
トランジッションの出足も両チームに差が出る一方。ロングボールの跳ね返しからセカンドの回収、そしてカウンターまでが淀みなく流れるユナイテッドに対して、ウルブスは全体的にモタモタしている印象が拭えない。
交代選手が入るとユナイテッドの前線はさらに活性化。そして、試合を決める2点目を手にしたのはガルナチョ。復帰を祝うゴールを決めて勝利を確実なものにしたユナイテッド。連敗脱出に成功し、追っ手との差をキープすることに成功した。
ひとこと
だらっとちょっと優位を90分続けるのって結構難しいと思うので、ユナイテッドはよく集中を切らさずに戦ったなと思う。
試合結果
2023.5.13
プレミアリーグ 第36節
マンチェスター・ユナイテッド 2-0 ウォルバーハンプトン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:32′ マルシャル, 90+4′ ガルナチョ
主審:ジョン・ブルックス
クリスタル・パレス【12位】×ボーンマス【14位】
終始ペースを握った完勝の立役者は?
春先には残留争いのレースに巻き込まれていた両チーム。だが、早々に残留沼を抜け出すことで気楽に終盤戦を過ごすことができている。
保持でスタートしたのはクリスタル・パレス。サイドからハーフスペースを積極的に狙っていく形でボーンマスの4-4-2のブロックを壊そうとする。
自陣からのパスも非常に安定。パス交換からアンカーのドゥクレが浮くようになりボールの出所を確保。穴が空いてから加速のフェーズがうまく、多くの攻撃の機会をきっちりとチャンスに繋げていく。
ボーンマスも自分たちの保持のターンが回ってくればゆったりとしたポゼッションにトライ。パレスはエゼ、ザハが出ていく高い位置を後方に下がるアイェウがカバーする形で守っていく。エゼはともかく、ザハに出ていく動きに対してはほとんどついていくアクションが出てこなかったことを踏まえると、おそらくある程度アドリブでプレスに出て行っていたのだろう。
しかしながら、前進する形が見つからないボーンマス。ワッタラの裏抜けやソランケのサイドに流れるアクションなどからキッカケを作ろうとする。だが、前進の頻度でチャンスを掴んだのはパレスの方。ザハが左サイドのターンから3人を剥がすとアイェウ経由で最後はエゼ。前半のうちに先制点を手にすることに成功する。
後半もリードしているパレスが押し込む流れからスタート。左右のアタッカーからのクロス、そしてヒューズのボレーという決定機を作り、前半と同じく彼らがペースを握っていることを示すかのような立ち上がりだった。
ボーンマスは自陣から脱出できない時間が続いてしまう苦しい後半に。終盤戦、ここにきてソランケにやや低調なパフォーマンスの日が増えてきたのは少し気になるところではある。
逆にここにきてパフォーマンスを上げている感じがするのはエゼ。ザハが交代でいなくなってもクリスタル・パレスの攻撃を牽引し続ける。追加点を決めたのもそのエゼ。文句なしのスーパーゴールでこの試合の行く末を決定づけてみせた。直前にボーンマスにセットプレーであわやという場面があったため、それを払拭するという意味でもこのゴールの意味合いは大きかったと言えるだろう。
2点のリードを得た後も試合をコントロールしたクリスタル・パレス。前後半通してワンサイドと言って良い出来での完勝で勝ち点3を積み上げた。
ひとこと
エゼ、素晴らしかったです。
試合結果
2023.5.13
プレミアリーグ 第36節
クリスタル・パレス 2-0 ボーンマス
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:39′ 58′ エゼ
主審:マイケル・サリスベリー
エバートン【17位】×マンチェスター・シティ【1位】
水に流せる貢献を果たしたギュンドアン
優勝へのマジックが徐々に減ってきているマンチェスター・シティ。レアル・マドリーとのCL準決勝の1st legを折り返して、今節乗り込むのは残留に向けてポイントを重ねるのに血気盛んなエバートン。今季はエティハドですでにシティから勝ち点をとっている上に、グディソン・パークでもアーセナルを倒すというアップセットを起こしている。ビッグマッチほど燃えるホームのファンはシティへの挑戦の気持ちが強いはずだ。
試合は想像通りの流れだったと言っていいだろう。シティがボールを持ち、エバートンが非保持で受ける。アカンジとラポルトのどちらがロドリの脇に立つのかという葛藤はあったが、いずれにしてもバックラインにエバートンがプレスを定常的にかけるシーンはなかった。
エバートンは立ち上がりこそドゥクレがロドリを気にしている様子を見せていたが、時間の経過とともに守備のバランスは変化。徐々にドゥクレは左のSHのような位置に収まり、同サイドのSHであるマクニールが一列落ちてバックラインを埋める形になっていた。
シティの攻撃は大外からのチャネルラン突撃が中心。ただし、デ・ブライネがいない分、大外→チャネルランのボールの動かし方はエバートンからすると簡単に読むことができていた。よって、序盤の大外からのハーフスペースの裏へのパスはほぼ封殺。右のマフレズはそれでも対面と緩急をつけて勝負ができていたが、左のフォーデンはほぼ完璧に押さえ込まれていた。
よって、シティのチャンスはセットプレーとミドルシュートに集約。前者はエリア内のエバートンの跳ね返しが安定していたし、後者はサイドへの対応をある程度マニュアル化できている状態だったので、中央でマークが思いっきりズレるケースが少なく、ミドルシュートのコースが制限されている状態を作り出していた。
エバートンにとってはロングカウンターのフィーリングが良かったのも序盤戦のいい手応えに繋がっていた。キャルバート=ルーウィンは相変わらず収まるし、最低限ファウルは持ってくることができる。ワイドのドリブラーも自陣からの長い距離のキャリーはあまり苦にしていない様子だった。
それでもシティはロドリを中心に中央のスペースを封鎖。エバートンにカウンターの手数をかけさせることでミスが出やすい構造にしていたのはさすが。ということで、エバートンがシュートに持っていける決定機もまたセットプレーだった。
大外→チャネルランの攻撃が停滞していたシティが得点を得るのに必要なのは何かしらのバグだ。ざっと考えられるバグは4つ。大外からのぶっ壊し、ミドル、あるいはペナ角付近のサポート、もしくは3列目からのエリア内侵入といったところだろう。出ているメンバーの中で1つ目が期待できるのはマフレズ、それ以外はロドリに期待したいところだろう。
ギュンドアンのスーパーゴールが生まれたシーンもロドリのPA内の侵入が助けになっている。マークを分散したことでギュンドアンにはコントロールする隙が生まれることとなった。
勢いに乗るシティは間髪入れずに追加点。この試合で機能不全だった左サイドをパターソンを吹っ飛ばしたことでズレを作って大外から自由に抉るという解決策に辿り着くのはいかにも今季のシティらしい。ターコウスキが挟み損ねたハーランドがミナを跳躍力で圧倒して2点目を手にする。
ハーフタイムを挟み、エバートンは4-4-2に移行。ハイプレス!とまではいかないが、ミドルゾーンで4-4-2を維持することにプライオリティを置き、ボールを奪い返しに行く意思を見せる。
しかしながら、今季のシティはこういうスタイルの方が相対するのは自信がある。早々にミドルゾーンで加速したフォーデンがファウルを奪うと、ギュンドアンがこのFKを決めて後半頭のエバートンの反撃の目を摘む。
これで試合は実質終了だったと言えるだろう。この得点以降はエバートンがボールを持ちながら攻める場面は増えたが、何かが変わったといえば、シティのプライオリティが省エネに移行したことくらい。交代で入ったオナナは元気にチャネルランを繰り返していたが、試合を何か動かせる類のものではなかった。
試合は3-0をキープしたまま終了。シティが余裕を持った試合運びで優勝に残り2勝のところに手をかけた。
ひとこと
正直、シティの前半の不具合は選手交代なしでは改善は難しいように思えたので前半で押し切ったのは意外。グアルディオラは先週のギュンドアンの失態を水に流してお釣りが来る感謝を述べたいくらいだろう。
試合結果
2023.5.14
プレミアリーグ 第36節
エバートン 0-3 マンチェスター・シティ
グディソン・パーク
【得点者】
Man City:37′ 51′ ギュンドアン, 39′ ハーランド
主審:アンソニー・テイラー
ブレントフォード【9位】×ウェストハム【15位】
逆転のカンファレンスリーグ出場を目指して
トップハーフの座を固めてわずかながら欧州カップ戦の出場枠の残り1席の権利が見えてきたブレントフォード。カンファレンスリーグに出場できる可能性が彼らには残されている。今節の対戦相手は残留をほぼ手中に収め、今季のプライオリティをそのカンファレンスリーグに移しつつあるウェストハムである。
序盤から両チームのスタンスは対照的。ブレントフォードがローライン気味に構える4-5-1を敷いている一方で、ウェストハムは比較的高い位置から追いかけていく立ち上がり。ブレントフォードの大きく開くCBとGKのところからのボール保持を積極的に阻害していく。
ブレントフォードは高い位置からのウェストハムのプレスを余裕を持って回避。強いプレスにも屈せず、広い距離を取り続けたため、大きく横に振るアクションにウェストハムがついていけなくなる。
ウェストハムのボール保持はなかなか活路が見出せない。ブロックの外でボールを持つ選手ばかりで、肝心のブロックの中に侵入できるアクションがなかなかない。キッカケを掴めない中で強引にインサイドに繋いだボールからショートカウンターを発動させたブレントフォード。ムベウモが仕上げを担当し、先制ゴールを奪う。
1失点目を喫したことでハイプレスを行っていきたいウェストハム。だが、ボールを取れる手応えがなかったのか、失点の少し前から徐々にプレスの出足は鈍っていくことに。失点をトリガーに再び敵陣で追いかけ回すアクションを行うことはできなかった。
押し込むとサイドラインからのロングスローという擬似セットプレーを行うことができるブレントフォード。追加点はそのロングスローから。ウィサのゴールで前半のうちにリードをさらに広げる。
2点のリードを得たブレントフォードだが、後半はさらに強気にウェストハムを高い位置のプレスから攻め立てる。押し込んでのワンサイドゲームを作りながら、セットプレーで更なる得点を狙いにいく。
前から出てきてくれた分、ウェストハムにはカウンターのチャンスが出てくる。ブレントフォードの背後のランができるよう、前線の選手をリフレッシュしながらカウンターの機会を伺っていく。
その前線ではベンラーマのクロスからイングスがネットを揺らすことに成功する。しかしながら、直前にシュートを放ったムバマがハンドを犯しており、これは取り消し。ゴールを掴むことはできなかった。
テンポアップしてハイプレスも再開したウェストハムだが、ペースを引き寄せることはできず。試合は残り時間も着実に過ごしたブレントフォードが逃げ切りに成功。欧州カップ戦に望みをつなぐ1勝を手にした。
ひとこと
手堅いショートカウンターから先制点を奪い、したたかにセットプレーから追加点を重ねる。トニー不在でも地力のある試合運びを見せたブレントフォード。その姿はさしづめ数年前のウェストハムのようだった。
試合結果
2023.5.14
プレミアリーグ 第36節
ブレントフォード 2-0 ウェストハム
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:20′ ムベウモ, 43′ ウィサ
主審:マイケル・オリバー
アーセナル【2位】×ブライトン【7位】
エミレーツの絶望を引き換えに欧州の望みを繋ぐ
レビューはこちら。
直前の試合でシティはグディソン・パークの攻略に成功。アーセナルとしてはまたしても勝ち点差を離されて迎える一戦となった。
試合は立ち上がりからハイプレスを基調とする一戦。アーセナルは高い位置からパスコースを誘導するプレスをジェズスとウーデゴールがかけていくことで中盤のボール奪取を引き起こす。コルウィルを中心に次々とパスをひっかけ続けたブライトンだったが、アーセナルのショートカウンターが淡白だったことと、自陣への戻りの早さから失点は何とか回避する。
アーセナルは自陣からのビルドアップでも主導権を握る。ブライトンのオールコートマンツーを自陣からのショートパスを軸に外していく。欲を言えば、コルウィルが前に出て来たシーンを活用してダンクに広いスペースを守らせるようなロングボールを増やしたかったところ。前線のアジリティで勝負しなかった分、アーセナルのチャンスは控えめなものが多かった。ボールを持つ持たないにかかわらず優勢だったアーセナルだったが、決定的なチャンスを作れないままハーフタイムを迎える。
ブライトンは右サイドでスタートした三笘を前半の終盤に左サイドに動かす決断を下す。後半はこれによって復活した三笘&エストゥピニャンのコンビから反撃を開始する。50分過ぎには三笘をエストゥピニャンが追い越すというブライトンの左サイドの鉄板の形からエンシソのゴールを演出。先制点を奪う。
控え選手が前線に偏っていたこともあり、引き続きオープンな展開にせざるを得なかったブライトン。そういった展開において左サイドの三笘のボールを収める能力と、エストゥピニャンの自陣からの繰り返しのスプリントは非常に大きかったといえるだろう。中央のウェルベックとファーガソンの2トップの関係性も含め、ブライトンは前半ほどオープンな展開でアーセナルに後手を踏まなかった。
すると、ハイプレスから追加点をゲットしたのはブライトン。トロサールの安易なミスをグロスがひっかけて最後はウンダフ。試合を決定づける大仕事でエミレーツの観客を黙らせることに。
最後は走り回っていたエストゥピニャンがご褒美のゴールをゲット。アーセナルの優勝を絶望的なものにする勝利で欧州カップ戦争いの望みをつなぐことに成功したブライトンだった。
ひとこと
結局三笘だったなー。
試合結果
2023.5.14
プレミアリーグ 第36節
アーセナル 0-3 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
BHA:51′ エンシソ,86′ ウンダフ, 90+6′ エストゥピニャン
主審:アンディ・マドレー
レスター【18位】リバプール【5位】
先制点で波に乗るジョーンズ
順位的にも勢い的にも対照的な両チーム。ホームチームは熾烈な残留争いで降格圏に身を置いており、アウェイチームは連勝を重ねながら奇跡の逆転CL出場圏の獲得に迫っている。
ただ、序盤で見られた勢いは両チームともフラット。ここまでの流れとは関係なくボールが行き交うオープンなスタートで、両チームとも互角に組み合っていたと言えるだろう。
リバプールは3-2-5にしてからやたらとトランジションで相手を上回る試合が多く、この土俵は得意分野。レスターからすれば相手の土俵に飛び込んでいった格好になるかもしれないが、彼ら自身が得点を決めるためには早いテンポの方が都合がいいのだろう。マディソン→バーンズのパスなど一発でチャンスを作り出すことができていた。
リバプールは中央でのレイオフからフリーマンを作る形とセットプレー主体での戦いからチャンスを作っていく。高い位置まで押し込むことができれば、プレッシングからもチャンスはある。レスターのバックラインのプレス耐性は怪しく、プレッシャーをかければ簡単にボールを捨ててくれた。
どちらのチームにもチャンスはある展開だったが、先制したのはリバプール。アリソンからのフィードでハイラインを破ったディアス。右のSBのリカルド・ペレイラを内側に巻き取るように裏抜けすると、その外側から飛び込んできたジョーンズが先制点をゲットする。
このゴールで勢いに乗るジョーンズは数分後に追加点をゲット。細かいパス交換の出口からわざありのシュートを見せてあっという間に2点差に広げた。
失点以降は攻め手が見つからなかったレスター。追い込まれた後半は前方から覚悟を決めてハイプレスに出ていく。イヴェルセンはそうしたチームの勢いに絆されてしまったか、高いラインの裏対応に触れない状態で出てきてしまい、あわやという大ピンチを招いてしまっていた。
バーンズのミドルなど、レスターに反撃の手段がなかったわけではなかったが、リバプールのポゼッションの方がより安定していたのは事実だろう。旋回しながらフリーの選手を作る中盤のパスワークは少しずつ板についてきた感じがする。
そして決め手になったのはアレクサンダー=アーノルドの直接FK。中盤にスライドしてから得点に多く絡んでいるアレクサンダー=アーノルドが再びゴールを決めて、試合を決定づける。
立ち上がりは互角に組み合ったが、最後は地力の差が出た両チーム。リバプールが好調を継続し、上位追走に成功した。
ひとこと
2点目のジョーンズのゴールは細かいパス交換がトリガーになっていてとても良かった。
試合結果
2023.5.15
プレミアリーグ 第36節
レスター 0-3 リバプール
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LIV:33′ 36′ ジョーンズ, 71′ アレクサンダー=アーノルド
主審:クレイグ・ポーソン