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「先送りされた勝負所」~2022.12.9 FIFA World Cup 2022 Quarter-Final クロアチア×ブラジル マッチレビュー~

■大会のトレンドに沿った前半の流れ

 優勝大本命であるブラジルが日本を下したクロアチアと戦う試合から準々決勝はスタート。グループ後半側の両チームはかなり日程がきつい状況だが、ここまでくると大幅にスタメンを入れ替えることはなし。どちらのチームも多くのメンバーをRound16からキープしたまま臨む。

 Round16で韓国を電光石火で下したブラジル。だが、試合の内容を見てみると韓国にけしかけられる形でのペースアップというのが実情だろう。韓国が4-4-2で前線がプレスに来たからこそ、それをかわす流れでゴールに早い時間からゴールに迫ることができていた。

 クロアチアは韓国に比べればそうしたプレスの意識が特別高いわけではない。よって、ブラジルは韓国戦と異なり急ぐことはなし。バックラインから繋ぎながらチャンスを伺っていく。唯一、プレスの意識が明確に変わったように思えたのはモドリッチ。中盤から出ていくプレスのスイッチ役として奮闘。カゼミーロのマンマークをやりながら時には穴を感じさせずにバックラインにまでプレスをかけにいくバイタリティは恐ろしい。

 自陣に押し込まれた後のクロアチアの守り方は日本戦で三笘が出てきた後のイメージと似ていただろうか。ヴィニシウスに合わせるように全体がブラジルの狭いスペース側に圧縮をかけるように左サイドにスライドしながらスペースを消していく。ヴィニシウスにはパシャリッチがマークし、斜め後方に抜かれた時の際にモドリッチが待機しているという二段構えでヴィニシウスに挑む。

 日本はこうしたクロアチアのプレスに対して、狭いスペースの圧縮で発生する中央のスペースまで展開することができずに苦しんでいたが、ブラジルは狭いスペースは狭いスペースのままで攻略していた印象。ヴィニシウスやネイマールがスペースに突っ込みながらそのまま打開するという反ポジショナル的な発想で開拓に挑む。リシャルリソンまで絡めたポストからの抜け出しでブラジルがないはずのチャンスをいつの間にか作り出している。そんな流れのブラジルのチャンスメイクだった。

 一方のクロアチアはバックラインからゆったりと保持の機会を確保。ブラジルがきっちりとハメ切るプレスを仕掛けてきたわけではないので、クロアチアはのんびりと中盤を外しながら前進する。

 ブラジルの守備で気になったのはフラフラと前に出ていく2列目のプレス。後方がろくについてきていないのに不用意に前向きのプレスを仕掛ける姿勢はクロアチアにとって美味しい以外の何者でもない。モドリッチ、ブロゾビッチ、コバチッチの3枚はブラジルのプレッシングのスピード感に十分対応しながら自陣からボールを脱出させていた。

 トランジッションにおいて好調さが光ったのは右サイドのユラノビッチ。対面のダニーロの裏を取る形で攻め上がりを行っていた。右サイドからの攻撃のアクセントとして機能していたと言っていいだろう。

 クロアチアはボールを持てばプレスを回避できるが、ゴールに向かうまでには至る感じはしなかった。インサイドでは制空権が握れるわけではなく、ブラジルは余裕を持って跳ね返すことができる。ブラジルにとっては難しい状況。チャンスは作れていないわけではないし、クロアチアがゴールに迫る様子もない。別に急いで改善をする必要もない。

 ゴールには迫れていないが、ボールを持てていてブラジルの攻撃の時間を減らすことができるという状況はクロアチアにとっても悪くはない。悪くはない状況であれば、リスクを冒さない!というのはこの大会におけるトレンドである。どちらのチームも悪くないこの状況を受け入れながら時計が進むのを受け止める。そんな前半の45分だったと言えるだろう。

 後半の頭、仕掛けたのはブラジル。畳み掛けるようにゴールに迫り、クロアチアに冷や汗をかかせる。しかしながら、クロアチアはCBの両雄が強力。体を投げ出しつつ、広い範囲をカバーできるグバルディオルは特に厄介で、彼をどかすことができなければブラジルはチャンスを作ることができない。

 それを超えたとしても待っているのはGKのリヴァコビッチ。日本戦ではPKストッパーとして活躍したリヴァコビッチだが、ブラジル戦では流れの中でも存在感を発揮。抜け出したブラジルの選手に対して、シュートコースを消しながら飛び出し、ことごとくチャンスを防いでいた。

 ブラジルはチャンスを作りながらもゴールを得ることができない。気がかりだったのは即時奪回に甘さが見られたこと。確かにクロアチアのプレス回避は圧巻ではあったが、それでも押し込んだチームにとっては即時奪回からの波状攻撃は非常に有効なチャンスを掴むきっかけになる。ブラジルの前線はそうしたセカンドチャンス創出のための汗をかく動きが少なかった。

 前線の選手交代によってブラジルの停滞はさらに強まった印象。大外でアイソレーションする役をヴィニシウスからロドリゴに代えたが、ユラノビッチに対して優位を取ることができない。逆サイドのアントニーもやや強引な攻め筋が目立った。狭いスペースに対してつっかけるという前半は力技でねじ伏せてきた部分が徐々にこの時間からマイナスに触れてきた。

 逆に動き回るWGに対してついてくるクロアチアの選手が空けたスペースにパケタなどが走り込むことができればチャンスになる。ブラジルはアントニーがボールを持った時よりも、彼を囮に使えた時の方がうまく攻撃が流れていた印象だ。

 ブラジルの攻撃さえ終われば、きっちりボールを持つことができたクロアチアもゴールが遠い。単発でのプレスからカウンターが発動できそうな形を作ってはいたが、直線的にゴールに迫る手段は皆無。それを理解していたかのように、端から急がすに落ち着かせながら押し込む流れになった。ロブレン、ブロゾビッチが流れながら保持のサポートをする右サイドは中でも安定感が光る。押し込んだ状態からロブレンがクロスを放り込む形は日本戦のリバイバルである。

 しかしながら、クロアチアは空中戦で勝機を見出せないという状況は変わってはおらず。得点が取れる香りはしないまま時間だけが過ぎていく。

 膠着気味になった延長戦で躍動したのはネイマール。中央をこじ開けるという狭いスペース狙いの前半に近いスタンスでクロアチアのブロックを破壊。強固な最終ラインを飛び越え、飛び出してきたリヴァコビッチもかわし、厳しいコースにボールを蹴り込み先制点を奪う。

 長い時間通してゴールに迫ることができなかった分、クロアチアの反撃の目はあまりないように見えた。モドリッチとペリシッチの2人が流れる左サイドにクロスを上げる機能を集約し、ひたすらエリア内にボールを入れていく。

 それでもなかなか打開できないクロアチアはクロスを上げる機能に特化した左サイドにオルシッチを投入。すると、このオルシッチが左サイドから抜け出す形からワンチャンスを決めたクロアチア。ペトコヴィッチのシュートはDFに跳ね返り、アリソンの手が届かない位置に吸い込まれていった。

 120分では決着がつかなかった試合はPK戦にもつれ込む。まるで試合前のような涼しい表情でPK戦に臨んでいたリヴァコビッチと中央に連続で蹴り込む強心臓ぶりを見せたキッカーの活躍により、クロアチアがPK戦を制し大本命のブラジルを止めてみせた。

あとがき

 勝負どころを先送りにしていたブラジルからするとしてやられた感があったはず。エンジンをかけるタイミングを見失いながら、だらっと時間を過ごしてしまいクロアチアに時計の針を進められてしまう場面が多かった。試合が進むにつれて集中力が増していったクロアチアの中盤より後ろに比べると、ややブラジルは淡白さが目立った。

 それでも、ネイマールにこじ開けられた時は「終わった」と思った人も多かったはず。ほとんどシュートが打てていない状況から、クロアチアに1点を奪うというミッションを強いるところまでは悪くはなかったがワンチャンスを沈められてしまった。

 エンジンをかけきれない理由としてはクロアチアのプレス耐性の強さが挙げられるだろう。軽い気持ちでクロアチアの保持を深追いすればダメージと消耗の盛り合わせとなってしまい、スカッドに疲労が溜まってしまう。そうしなくても良さそうな戦況ゆえに、勝負所を見送り続けた結果、いつの間にかPK戦に臨んでいたのは少し勿体無いように見えた。そういうところに持ち込むのがクロアチアのしぶとさなのかもしれないが。

試合結果
2022.12.9
FIFA World Cup QATAR 2022
Quarter-final
クロアチア 1-1(PK:4-2) ブラジル
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
CRO:117′ ペトコビッチ
BRA:105+1’ ネイマール
主審:マイケル・オリバー

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