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「そこに魔法はなくとも」~2023.7.12 天皇杯 3回戦 川崎フロンターレ×水戸ホーリーホック レビュー

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目次

レビュー

各所が見られる精度不足と収穫

 どちらのチームもリーグ戦からは大幅にターンオーバー。普段は出番が限られているメンバーを中心にスターターを構築した。

 川崎は4-3-3、水戸は4-4-2でのスタート。立ち上がりは水戸の強気な姿勢が目についた展開だった。4-4-2ではあるが、ゾーン的な形ではなくとにかく相手に付いていくスタンスが積極的。特に中盤の4枚はボールサイドへの圧縮が激しく、川崎のポゼッションを同サイドに閉じ込める意識は高かった。

 川崎は狭いサイドから逆サイドに逃す形を画策していくが、水戸のスライドに苦戦。中盤でロストをする機会もしばしばで、この辺りは水戸のカウンターに備えなければいけない場面もあった。さすがだったのはCFスタートの瀬川。素早いプレスバックで水戸のカウンターチャンスを即座に潰したのは地味ながらもいい働きだった。水戸はボールを持った時にはサイドの裏をガンガン狙って行ったが、川崎のバックラインの裏をかける気配はあまりなさそうだった。

 川崎の攻めは大外の幅を名願と松長根に任せる左右アシンメトリーな形。インサイドでは遠野、瀬川、宮代が狭い距離での崩しを狙っていく。立ち上がりの攻め筋になっていたのは左の大外に立つ名願。彼の周辺を佐々木が内外に幅広く動くことでサポートし、クロスを上げる形を狙っていく。時折、縦関係を変えるなどポゼッションの工夫も見えたのはよかった点である。

 10分もすれば川崎のポゼッションで試合は安定。水戸の前線と中盤は無理に動くことはしなくなる。よって、川崎が自在に攻めることができる形に。川崎は後方のビルドアップで相手を積極的に動かすところから。2トップの脇に佐々木と大南が顔を出し、中央の選手を引き出してはアンカーの橘田をフリーにする。特に左の佐々木は逆サイドへの対角パスという形で広いサイドへの展開も見せて、水戸のブロック守備の裏をかくことができていた。

 だが、押し込む守備になると課題が目に見えてくるようになる川崎。右の大外で時間を受けた松長根はコントロールやラストパスが乱れて攻撃のアクセントにはなることができず。仕組み的にはだいぶ時間をもらえる立場だったので、もう少し精度を要求したい日だった。

 左サイドの名願と佐々木も時間の経過とともに存在感は低下。名願は途中から対面の成瀬にだいぶプレーのパターンを読まれていた。前半終盤の速攻のプレー選択は数的優位で時間もたっぷりあったことを踏まえれば反省しかない結果と言えるだろう。佐々木は悪くない部分もあったが、やや低い位置でドリブルで横断する結果、ボールと共に敵の守備のスライドを促してしまい、サイドチェンジ後の時間を浪費してしまう傾向があった。

 中央の狭いコンビネーションでの崩しは相互理解と狭いところを崩す技術不足が目立ち、シュートに辿り着くのが精一杯。プレッシャーの少ない相手であれば、瀬川が背負ったプレーでレパートリーを見せたのは収穫だが、相手を一枚上回っての崩しを見せて欲しいところであった。

 攻撃面で物足りない部分があっただけに先制点は大きかった。田辺のパスミスを掻っ攫ったところから攻め上がった瀬古が自ら決めてゴール。PA内に入っての得点関与という課題に対して1つの答えを見せることができたのは紛れもなく収穫である。

 水戸は攻め手に苦しむ45分となった。ロングボール、サイドの裏抜けという少ない手数での前進はほぼ川崎のバックラインに無効化されてしまう。川崎はSBがクロス対応やプレスの判断が怪しかったこともあり、ちょくちょく背後を取られたり、ファーサイドで相手をフリーにしたりなど隙を見せる場面もあったが、限られた機会を活かす精度はなかなか見せることができなかった。

 試合は1-0。川崎のリードでハーフタイムを迎える。

成長と背中合わせの課題

 後半の立ち上がりにペースを握ったのは水戸。存在感があったのは前線でボールを収めることとサイドに流れることで起点となった唐山、そして右サイドでのフリーランが目立っていた杉浦。特に佐々木が杉浦の背後を取られることで川崎の左サイドは混乱気味。遠野もカバーできる位置にいるのだけども、自陣を埋める守備は不得手のよう。左サイドで空いた穴に蓋をすることができなかった。

 前半に得点で違いを見せた瀬古も簡単にプレスに出て行っては入れ替わられてしまう課題は健在。得点とともに守備での課題が改善しきれない部分を露呈してしまう。

 サイドに川崎の守備の気が行けば水戸は中央に攻め込むルートが見えるようになる。隙を見て中央に入り込んでいく井上がスピード感のあるプレーを少しずつ見せるようになると、川崎の守備は後手に回るように。

 ボールを持っても川崎のプレーの流れの悪さは変わらない。前線と中盤のオフザボールの動き出しは鈍く、勢いに乗ってプレスにくる水戸に気押される場面も。前半以上に前線の部分のクオリティには疑問符がつく展開に。水戸はカウンターも徐々に唐山に収まるようになったため、前半よリも少ない手数での攻撃の道筋が見えるようになった。

 中盤にシミッチ、後方に車屋と高井が登場してからは試合も徐々に落ち着いてはいたが、寺沼が前線に交代で入ってからは再び水戸が前に起点を作れるように。この辺りは大南を交代に伴って中央から動かしてしまった弊害が感じられた部分だ。

 川崎は前線で橘田からの縦パスを収めた宮代がゴールを奪うが、直後に寺沼が高井を完全に振り切って1on1を決めてすぐに1点差に戻す。

 川崎はシミッチと大南が挟んで縦パスを奪いきれなかったところがまずは1つ目のミス。この場面だけ見ればシミッチになんとかしてほしかったが、左も右もカバーに走っていたシミッチにここを摘んで指摘するのはとても気が引ける。フル出場だったとはいえ、終盤は橘田のフォローもほしかったところ。縦パスから存在感を見せたのはいいが、非保持でのダイナモ感が消えているのは気がかり。前からのだらっとしたプレスが続いていたのも動き続けるシミッチの負荷を増やしていたと言えるだろう。

 そして失点シーンで指摘しなければいけない2つ目は高井。いくら状況が悪いとはいえ、相手が外側にいるのだからいちかばちかに賭けてミスってしまうのは切ないところ。身体能力に強みがある寺沼相手とはいえ、ついていきながら外に追いやるようなデュエルを見せて欲しい。終盤のライン上クリアはファインプレーだが、平面での戦い方における凄みをもっと見たいところだ。

 終盤まで落ち着かない展開は続くことになるが、前線に入った山田が時間を稼ぎまくってなんとか試合は終了。苦戦しながらも川崎は敵地で勝ち点3を手にした。

ひとこと

 佐々木の対角パス、瀬古のゴールに繋がるPA内の侵入や、橘田の2点目の縦パスなど少しずついい兆候がないことはないが、確固たる存在としてリーグの序列を上げたか?と言われると難しい。後半の高井も含めていいところも悪いところも見えた90分と言えるだろう。

 リーグ戦で不甲斐ないパフォーマンスをするたびに控え選手の奮起が期待されるが、カップ戦のたびにチームが一気に良くなるような魔法はないのだなと痛感させられることの繰り返しである。だからこそ現実を前にもがく選手たちを後押ししたい気持ちになる。さぁ、次の週末はいよいよ日産。王者が相手のダービーである。

試合結果

試合結果
2023.7.12
天皇杯 3回戦
川崎フロンターレ 2-1 水戸ホーリーホック
ケーズデンキスタジアム水戸
【得点者】
川崎:25′ 瀬古樹, 80′ 宮代大聖
水戸:81′ 寺沼星文
主審:御厨貴文

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