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「3回目のオファーから本気出すから」〜アーセナル 個人レビュー2022-23 MF&FW編

第2弾!前編はこっち!

前編

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MF

トーマス・パーティ

無双状態の前半戦とムラが目立つ後半戦

 シーズン前にはファンをやきもきさせるような事態にも陥ったが、無事に開幕からスタメン出場。相変わらずアンカーとしての能力は一級品。少ないモーションから縦横に長いキックを展開できるスキルは随一。速度と精度の両面を備えた展開力はジョルジーニョのそれとは異なる凄みを感じさせるものだった。

 守備においては前線のジェズス、ウーデゴールが誘導した先に待ち構えて壁のように立ちはだかってボールを奪い取る。柔軟に上下左右の動きをこなして守備で最終ライン手前の防波堤になるという意味では、現陣容では間違いなくナンバーワンだろう。

 惜しむらくはやはり試合ごとのムラが大きいところだろうか。例えばウェストハム戦でのプレッシングを食らってのボールロストはそれ以降の悪い流れを決定づけるもの。枠外のミドルシュートはため息をつきたくなるくらい明後日の方に飛んでいくなど、ダメな日にはとことんダメで自らのミスから流れを手放すことも少なくはない。

 特に春先以降の出来はシーズン序盤と比べると寂しいものがある。ラマダンの影響が実際どこまであるかはわからないが、毎年同じようなスケジュールで調子を落とすのだとすれば、1月に開催されるAFCONと合わせて来季は後半まるまるが頼りに出来ないことになってしまう。これでは計算はしにくい。

 現在の年齢や残りの契約年数を踏まえて考えると、この夏にアーセナル側の売却がやぶさかではない理由はなんとなくわかる。実力には疑いの余地はないが、強いチームを目指すのであれば、むしろシーズン後半に調子は上げてほしい。

 仮にこの課題を克服できれば、我々にとってはナンバーワンのアンカーであることは間違いない。個人的に見たいのはサウジや欧州でほかのユニフォームを着るトーマスではなく、アーセナルでCLを戦うトーマスなのだ。

マルティン・ウーデゴール

規格外の活躍と幅広い仕事量でピッチ内外で貢献

 まさしく、今季は規格外の活躍だったといえるだろう。間違いなく彼にとっては飛躍のシーズンとなった。

 シーズン序盤から最終節までトップ下の地位を一年間ハイパフォーマンスで駆け抜けて見せた。特筆すべきはダイレクトにゴールに絡むスキルだろう。

 特に今季向上したのはクロスに対してゴールに入り込んでいく動き。サイドの攻めが生命線で高さがないとなれば、クロスの入り込みでギャップを作るのは必須。特に左サイドからのボールに合わせる動きは非常に優れており、フィニッシャーとして開花したのは大きい。

 もちろん、チャンスメーカーとしても優秀なのは相変わらず。ビルドアップの手助けのためにギャップで受けるアクションや、ペナルティエリア付近での繊細なタッチなど文字通り組み立てからフィニッシュまであらゆる局面にかかわりながらアーセナルの攻撃を牽引した。

 非保持においても献身的なプレスバックと高い位置までのチェイシングを両立できるのは素晴らしい。攻撃でこれだけ幅広いタスクを担いながら守備でも高負荷のタスクを処理できるというのはそれだけで価値がある。

 ピッチの内外でもポジティブな声掛けでチームを牽引。苦しい時でもファンに前を向いてくれる発信ができるのは非常に良いポイントである。

 強いて言えば超ビッグマッチにおいて一段階上の働きができればいうことはない。試合を決める凄みを見せつけることができれば、プレミアでもトップオブトップのアタッカーとして君臨することができるだろう。

エミール・スミス・ロウ

本領発揮できずに苦しみ、来季は勝負のシーズンに

 充実の21-22シーズンを過ごしたアーセナルの多くの若手の中で唯一流れに乗り遅れてしまった人。33試合に出場した昨シーズンに比べるとわずか1/10に出場時間が激減してしまったのは衝撃的と形容してもいいだろう。シーズン前半戦を棒に振ってしまった影響は計り知れず。コンディションが戻らないまま1年が過ぎてしまった印象である。

 アタッキングサードで攻撃を加速させる役割とスコアリングの両面で働くことができるのが本来の持ち味。そのため4-2-3-1のトップ下が最適解といえるだろう。壁役ができるアタッカーと組ませることができれば、その能力を最大限に引き出すことができるだろう。

 その一方で低い位置でのビルドアップや相手を背負ってのプレーは得意ではない。低い位置をとってから高い位置で回復するのが遅くなってしまったり、あるいはポスト役では加速に寄与できなかったりなどでジャカの位置やジェズスの位置では試しにくいだろう。しかしながらウーデゴールの役割は攻守に幅広く、チームでトップクラスに運動量が求められる部分。復帰明けの選手にはさすがに厳しい。

 出番がありそうなのは不慣れなポジションで最適な場所には絶対的な存在が君臨する。リーグで優勝争いをしていたことや、カップ戦で早々に敗退してしまったことは誤算だっただろう。慣らしながら状態を上げるということはほぼできないままリーグ戦は終わってしまった。

 評価に関してはほぼフィットネスと切り離せない状態のように見えるので据え置きにする。狭いスペースを苦にしないまま攻撃をスピードアップできるスキルは今のチームにおいてもなお貴重なのだが、ほとんど本領は発揮できないままシーズンを終えてしまう。

 それでも早い段階でインタビューにて来季の決意やアーセナルへの思いを明らかにしていることはファンとしてはうれしい限り。しかしながら、来季はキャリアをかけた重要なシーズンになるだろう。

ジョルジーニョ

憎き敵から頼れる兄貴に

 冬の移籍市場で第一希望であるカイセドからシフトチェンジをして冬に獲得。アーセナル戦での退場疑惑や戦力外になりつつあるチェルシーでの待遇、何よりも年齢という部分で当初はかなり後ろ向きにとらえられていたジョルジーニョの獲得。

 しかしながら、加入して以降はあっという間にファンの心を掴んだといえるだろう。バックラインからのリズムをビルドアップのスキルは全くさび付いておらず。前線の選手の動き出しを見逃すことなく、前にボールを正確に通し続けていく姿は不安定な部分も目に付くトーマスとはまた異なるテイストのものだった。

 鋭くボールを刺すようにパスを届けるトーマスに比べると、やわらかで足元に置くようにパスが出されるジョルジーニョは次のプレーに流れるように推移しやすい。失ったら大きなリスクがあるときに精度の部分では圧倒的な信頼がおける。浮き球を活用したスルーパス等も活用し、状況にかかわらず正確にボールを届けることができる。

 押し込んだ時のジョーカーとして中盤を司る存在であり、マルティネスを実質打ち抜いたビラ戦では決勝ゴールにつながるミドルでファンの心を完全につかんで見せた。

 物理的なスピードの遅さからはどうしても逃げられないが、チームを引っ張る様子を見せているのは非常にありがたい。特にビルドアップにおいては師範代といえる存在であり、多くの選手のベンチマークになっている。

 自身の活躍はもちろんのことピッチ内外の頼りになる兄貴分としてチームを育てる手助けをしてほしい選手である。

ファビオ・ヴィエイラ

精度の鬼として居場所を見つけたい

 昨夏のステルス移籍。アシストを軸としたポルトガルの若き俊英としてアーセナルに加入した。

 しかしながら、なかなか状況は味方しなかったシーズンとは言えるだろう。今夏の補強の中ではおそらく先物買いの位置づけ。来季以降、本格的な戦力になっていればという見立てでシーズンをスタートしたしたはずだ。

 だが、今季のアーセナルは蓋を開けてみれば終始優勝争い。こうしたチャレンジ枠を積極的に組み込めるほどの余裕はなく、なかなか起用する時間を稼ぐことができない。この辺りのめぐりあわせは本人が出場機会を得るという観点ではありがたくなかった。

 基本的には正確無比は左足でゴール前に決定機を供給するのが今のヴィエイラにもとめられる役割だろう。しかしながらスキルが命綱の中盤においては時折みられるノープレッシャー時のパスミスは致命的。キック精度が武器であるのであれば、こうしたつまらないミスはやめてほしい。

 縦パスを通すスキルを軸に考えるのであれば、やはり押し込んだ時のジョーカーとして使いたいが、これだけシンプルなパスミスがあると優先度が下がってしまうのはしかたないだろう。その中でもオープンな状況でなんとかスキルを見せる存在になれたのは救いであった。

 正確性、および強度の持続性の部分は共にスケールアップが欲しいところ。まずはあと一点ほしいところで投入される選手になること。一振りで状況を変える精度の鬼になれれば自然と序列も上がるだろう。

モハメド・エルネニー

悔いなく来季を過ごせるように

 重要なところでワンポイント起用をすればできることをきっちりとやってくれる仕事人。しかしながら、秋口に2か月まるっと負傷したのに加えて、年明けからはシーズン全休の大けが。アーセナルを加入して以降最も少ない試合出場数とプレータイムになってしまった。

 それでもアーセナルは1年の契約延長を提示。23-24はAFCONがある中で大けがの選手にオファーを出すことには何よりもこのままエルネニーと別れるわけにはいかないという思いを感じさせる。来季は悔いなくシーズンを過ごしてほしいところ。

グラニト・ジャカ

据え置きのままのスケールアップ

 

 今季のMVPがウーデゴールであるのであれば、MIPはジャカが選ばれるのが妥当だろう。22-23のアーセナルの陣容の中で最も大きくプレースタイルの変化が見られたのがジャカだった。

 重たく、機動力もなく、ゴールに直結できないというこれまでの印象を覆し、流動的にポジションを変えながら左サイドの高い位置に出ていって躍進。PA内に突撃してゴールを奪うタスクでプレミアキャリアハイの7得点を奪う。

 ペナ角付近から左足を振ることで殺傷力のあるクロスやシュートを放つこともしばしば。高い位置での攻撃では輝くことができないという下馬評を完全に払しょくして見せた。

 こうしたモデルチェンジは従来のプレースタイルに悪い意味で影響を与えることもあり得るだろうが、ジャカの場合は非保持における重要なタスクをこなしながらスケールアップを果たした印象だ。同サイドでのジンチェンコのカバーもほぼ完ぺきにこなしており、押し込まれた時には一流の守備的MFとして活躍した。

 熱くなりやすいメンタル面もキャリアを重ねたからか、あるいはチームの成績が安定したからか制御可能に。食ってかかることはあっても、退場や不要な警告をもらう頻度は非常に少なくなった。アンフィールドでの一件は個人的にはむしろ食ってかかってくれた方が好みである。

 メンタル面でも成績面でもキャリアで最も充実したシーズンになったのは間違いない。退団が迫っているという事実は受け入れたくはないが、なかなかうまくいかなかった功労者との別れがきれいに収まりそうなのはいいことである。ウルブスを下したラストゲームはアーセナルに長年貢献を果たした選手の最後の1ページとしてとてもふさわしいものだった。

アルベール・サンビ・ロコンガ

持ち味まで失われてしまうとなると・・・

 ヴィエイラと同じくチームが想定外の速さで進歩を遂げた故にはじきだされてしまった感がある選手といえるだろう。現状では優勝を争うチームの控えの1番手としては心もとない。トーマス不在時にはアンカー役としてチャンスをもらいながらも攻守になかなかいいパフォーマンスを見せることができないまま、苦しいシーズンを過ごした。

 消えがちという指摘されがちだった欠点は、サリーのようにわざわざ動いて受けに行ってまでフリーになる必要があるのか?というところで自分は気にする必要はないと思ったが、あまりにも現れるアクションが少ないのは指摘せざるを得ないだろう。

 それ以上に、ボールをフリーで持った時の輝きが失われてしまったのも気がかり。以前はフリーで前さえ向ければ軽いタッチから左右の大外に自在に配球をしていたのだが、プレッシャーを受けながらプレーしているからか、本来の持ち味である配球力はすっかりと鳴りを潜めるように。

 もともと、守備では軽さが出るタイプのため、前を向いてフリーでボールを持てるようになった時の良さが出なくなった時点でかなり厳しくなってしまった感がある。守備においてはレンタル先でのパレスでは良化が見られたようにも思えるが、そもそもローラインのコンパクトなブロックを形成しているパレスにおいてはアーセナルよりもカバーすべき範囲が狭くなったというだけの話のように思う。

 そのパレスでも監督交代を機に出場機会は激減。自身を呼び寄せたヴィエラがいなくなってからは完全にプレータイムを失ってしまった。

 一昔前のアーセナルであれば覚醒待ちのための時間を与えることができたであろう素材型。だが、今のアーセナルやプレミアはそうした「遊び」を作ることは難しい。国内外でプレーする場所を探すオフになるだろう。

イーサン・ヌワネリ

プレミアリーグ最年少デビューの神童

 今季の出場はブレントフォード戦での1分だけ。わずか15歳の若さでプレミア史上最年少でのデビューを飾り、同じ試合でデビューしたマルキーニョスのデビューをめっちゃ薄めた。トップチームの試合しか見ないので詳細は分からないが、期待度の高さは国内外のアカウントからうかがえる。残留してくれますように。

FW

ブカヨ・サカ

ファラオの領域に踏み入れる次元を視野に

 38試合すべてのプレミアリーグでプレー。昨シーズンに続き、2年連続リーグ戦全試合出場を達成しつつ、昨季よりも200分ほどプレータイムを上乗せすることができた。

 キャリアハイの14得点は数字的な記録だけでなく、独力でこじ開けるゴールの質の高さにも舌を巻く。サカだから決められたというゴールが格段に増えており、まさしくアーセナルの顔になりつつある。

 周りとの連携も向上した1年だったが、今季は独力で対抗できる相手が増えた印象。特に歯が立たなかったロバートソンにも真っ向から渡り合えるようになったのは非常に成長を感じる。

 EUROで辛酸をなめたPKも成功率は徐々に向上。ウェストハム戦では失敗してしまったが、アルテタも試合後に述べたように間違いなく信頼を置くことができるPKキッカーとなった。末っ子として守られるべき存在から徐々に責任を負う存在になってきており、自分のことでもないのにとても誇らしい気持ちになる。

 稼働率、スタッツともに基本的には文句のつけようがなく、契約延長で忠誠を誓ったのは頼もしい限りである。あえて注文を付けるとしたらプレータイムが増えた時のパフォーマンスの低下だろうか。

 確かに全試合出場しているがアーセナル絡みのだけで言えば3700分台。4000分まではたどり着いていない。丈夫さが備わっているからこそ、ぜひともサラーの領域は目指してほしいところ。つまり、毎年4000分かつ公式戦合計で30ゴールを担保できる存在。究極的に目指したいのはここだろう。

 22-23のアーセナルはどこからでも得点が取れることが強みだった一方で、リーグ戦20得点を記録するような確固たる得点源がないことも事実。昨年の水準を維持したまま、サカがその中心としてスコアリングを続けられれば、その時こそアーセナルはメジャータイトルに大幅に近づくときになる。

ガブリエル・ジェズス

ハイプレス、ハイテンポの礎作りに大いに貢献

 シティからの加入した昨シーズン新加入選手の目玉といえる存在。開幕から新生アーセナルのハイテンポなスタイルを牽引。高い位置からのプレッシングと狭いスペースを苦にしないパスワークを武器にひたすら攻め続けるサッカーの旗頭として君臨した。個人的には補強するFWの要件はプレスのリーダーになれる人なので、非常にこの補強はうれしいものだった。

 確かにゴールゲッターとしては物足りなさが残るだろう。パスワークと異なり、素直でモーションの大きいフィニッシュに向かう動きは相手のDFやGKにセービングの余地を与えてしまう。やや力みがちなところも大事なシュートチャンスを逃してしまう要因の1つになる。

 それでも、ハイプレスと細かいパスワークを軸としたアーセナルの今季のスタイルはジェズスなしには完成しなかったことだけはいえる。シティにはジェズスはもう不要なのかもしれないが、昨夏のアーセナルにとってジェズスは必要だったし、明らかにチームを一段上に引き上げてくれる働きを見せてくれた。

 アルテタのアーセナルがきっちりと立ち返る場所を作ることに大いに貢献したことには議論の余地はない。W杯での負傷での復帰からすぐにトップフォームを取り戻してくれたのも心強かった。

 アーセナルが成長した今、ジェズスがさらにそのチーム力を一段上に引き上げられるかが彼にとっての大きなチャレンジになる。シティではその座に君臨できなかったチームを勝たせることができるストライカーになることができるか?自身がゴールゲッターに変身することができれば、アーセナルはさらに一段上のチームになるだろう。

ガブリエル・マルティネッリ

体を張っての陣地回復は唯一無二

 彼もまた今季大きくスケールアップを果たした選手といえるだろう。左の大外を主戦場として大暴れ。迫力のあるフィニッシュワークに加えて、大外から1枚はがすアクションから相手にズレを作ることでブロック守備に穴を開ける動きも。サカと並び、プレミアを代表するWGとして名を馳せた一年だった。

 最終盤には負傷してしまったり、あるいはサカやウーデゴールと比べれば個人の波はあるものの、その身体能力は折り紙付き。中でも陣地回復に関しては前線で最も大きな貢献を果たしたといっていいだろう。

 ロングボールを収めつつ、バランスを崩さずにキープして、対面の相手を抜き去る能力はアーセナルの中では別格。プレスに苦しんだ時の逃げ場として大いに機能していたといえるだろう。特にインサイドにカットインしつつ、逆サイドの大外を狙う動きはマークの集まりやすいサカにとっても大きな助けになっていた。

 自らにマークを集めつつ、味方を楽にできるのがマルティネッリの魅力。1on1でも勝率が高く、敵陣に押し込んでからも大いに貢献することができた。それでいて守備もさぼらない献身性も持ち合わせており、弱点の少ないタイプに分類することができる。

 左の大外を担当できる選手は少なく、アタッカーでは彼とネルソンくらいだろう。来季もフル稼働が期待される。シーズン終盤に追った怪我の治療に専念し、来季はさらなる飛躍の1年にしたいところだ。

エディ・エンケティア

『救世主』だけじゃないことを示したい

 21-22シーズンは終盤戦でチームの救世主となり、逆転で契約延長を勝ち取ることに成功したシーズン。契約更新で背番号も一新し、今季はさらなるスケールアップが見込まれるシーズンだったといえるだろう。

 1年間のプレーはもちろん悪くはなかったが、シーズン前に背負わされた期待と今季のプレーが見合っているかは微妙なところ。成長に関してはむしろやや頭打ち感を感じる1年となってしまった。

 もっとも、よかった部分がなかったわけではない。多くのアーセナルファンが頭を抱えたであろうジェズスの離脱のダメージを最小限に抑えることができたのは文字通りエンケティアの奮闘のおかげ。中でもユナイテッド戦の決勝ゴールはあまりにもセンセーショナル。まさしく14番にふさわしい活躍でエミレーツに歓喜の渦を生み出した。

 思えば、21-22はラカゼットとオーバメヤンが満足に稼働できなかった時に輝いていた。それを踏まえると生粋の救世主キャラなのかもしれない。

 その反面、ジェズスがいた時のパフォーマンスには難があったといえるだろう。2トップとしての機能は単なる1+1にとどまっており、2人を生かした連携というのはそこまで多くはなかった。

 交代選手で火力を投入できないというアーセナルが今季指摘された難点のど真ん中にいる1人であることは否定できず、途中交代からゲームチェンジャーとして流れを大きく変えることはできなかった。守備は運動量先行でファウルを冒してしまう癖の改善までもう一歩という形。いずれにしても現状ではジェズスにこれ!という明確に勝利ができる武器が見えてこない。

 おそらく、差別化を図るとしたらゴールゲッターとしてだろう。すなわち、必要なのは数字。出番の中でもゴールを奪うことにこだわり続け、ジェズスに対して優位な武器を見つけ出したいところである。

レアンドロ・トロサール

アシスト性能の高い万能手

 ムドリクの移籍が頓挫したことで急遽ブライトンから獲得したベルギー人アタッカー。退団直前の素行に問題があったことや、若くはない年齢に関して獲得に疑問の声もあったが、タイトルレースを争っている状況では即戦力の安価なアタッカーの補強としては非常に優秀な人選だったといえるだろう。

 前線の3ポジションどこでもプレーできるのは大きな魅力の1つである。使われるポジションがどこであれ、基本的にはPA内付近に周遊させておくのがベター。例外としては右のハーフスペースの抜け出しで直接折り返せる位置に入り込んでのラストパスはゴールに直結する力がある。

 反対に左サイドの大外から相手を何枚も何枚も抜かなくてはいけないような馬力が必要とされる展開は苦手。物理的にゴールに近い状況であれば、細かいタッチの強引な突破をマイボールにし続ける力やこじ開けられるミドルのパンチ力もあるため、大きく貢献できるだろう。

 プレッシングもさぼらず献身的でエリア内の仕事では特に柔らかいボールタッチでワンランク上のフィニッシュ機会を提供することができる。アシスト13は立派なものだろう。プレースキックも含めてエリア内に迫るボールの上質さはチームでもトップクラスだ。

 柔軟性にはやや欠けるところがあり、特にチームが苦しくなると自らで打開しようと躍起になり、視野が狭くなるところがある。見込みが薄いミドルシュートやブロックに埋まるシュートを繰り返しているようであれば、ちょっとその日は怪しい兆候ということになる。こうしたメンタル的なムラを減らすことができれば、よりジョーカーとしての怖さは増すことになるだろう。

リース・ネルソン

スーパーゴールで勝ち取った契約延長

 契約最終年となったアタッカーは21-22のエンケティアと同じく、シーズン終盤の活躍で逆転での残留を勝ち取ることになりそうだ。

 緩急を使ってのドリブルと正確なクロス精度を併せ持つワイドアタッカー。相手をはがすアクションもレギュラー格の2人ほどではないが、十分にこなすことができており、貴重なインパクターとしてアーセナルのペース変更に貢献した。

 中でも圧巻だったのはボーンマス戦。その試合どころか今季の最も印象が強かったゴール大賞間違いなしである、後半追加タイムラストプレーに生まれたネルソンのゴールは逆転の勝ち点3を手にする大きな一撃。鋭い一撃の軌道は多くのアーセナルファンの脳裏にしっかりと焼き付いたことだろう。

 左右のサイドで得意とするプレーの方向は変わるが、いずれのサイドでも持ち味を発揮できるのは大きな武器である。最近では以前の課題だった自陣からのドリブルでのキャリーもみられるようにあり、徐々に攻撃で貢献できる局面も増えている。

 細かい怪我が多いのは難点。その点で計算しづらい部分はキャリアの障害になりうる。契約延長においての最大の懸念点はここだったはずだ。

 それでもフロントは彼の働きに信頼を置くことに決めたようだ。フリーエージェントになっているタイミングで、アーセナルは来シーズン頭から新たな契約を準備している。

 来季はまずはきっちりレギュラー争いに加わること。CLも含めれば順番は必ず回ってくるであろう。その時に実力を証明できる準備ができているかどうか。負傷の有無も含めて、大事な1年になるだろう。

マルキーニョス

積み重ねを継続するフェーズか

 ELを中心に右サイドの2番手として登場したブラジル人アタッカー。リーグ戦でのデビュー戦はより若いヌワネリに注目度を持っていかれたが、先にデビューを決めたELでは1ゴール、1アシストと上々のスタートダッシュを決めたといえるだろう。

 ELでのゴールのように逆サイドからのファーに詰める動きや大外での1on1からのアシストなど存在感はそれなりにはあった。だが、ELでは相手の強度に助けられている部分もしばしば。守備面では強みである前からのプレッシングにはついていききれない部分もあり、課題も見えたシーズンとなった。

 よって冬のレンタルは妥当だろう。ノリッジで何を学んできたのか、来季はアーセナルでプレーのチャンスが与えられるかはまだ不明だが、一段一段きっちりと上るようにキャリアを積み重ねていきたいところである。

終わり!

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