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「Catch up Premier League」~ウォルバーハンプトン編~ 2023-24 season

 ウォルバーハンプトン、23-24シーズンの歩み。

目次

第1節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

愚直なハーフスペースアタックが身を結んだ理由

 オープニングウィークのトリを飾るのはマンチェスター・ユナイテッド。テン・ハーグ2期目の上積みを見せられるかどうか?というテーマの23-24シーズンがスタートする。そんな彼らが開幕戦で迎えるのは同じく継続路線を迎える「はずだった」ウルブス。主力の入れ替えに加えてまさかの開幕直前の監督交代と動きが激しいオフになっている。下馬評は怪しい部分もあるが果たして。

 試合はユナイテッドのボール保持からスタート。ウルブスの4-4-2ベースの守備は非常によくこの保持に食らいついていたと言えるだろう。ユナイテッドはCBが列を上げることで基準点をずらしにかかるが、時間を前に送るアクションがあまり効いておらず、ウルブスの素早いリトリートによって無効化されていた印象。

 WGには1on1でボールが入る場面も多かったが、対峙したSBによって封じられていた。特にガルナチョと対面したセメドの出来は素晴らしく、前半はほぼ完封したといっていいだろう。サイドにつけても単騎でも連携でも解決策が見えない状況なので、裏に蹴っておけ!という形でユナイテッドはボールを失っていき、前線はフラストレーションが溜まる展開になる。

 ウルブスは保持でも健闘。低い位置まで守備をこなしたSHがキープするクーニャから落としを受けて加速。攻撃を牽引する。低い位置まで降りてのリトリート、そしてインサイドにカットインしつつスペースのある中央をカウンター気味に進むSHはまさしく昨年のオニールのボーンマスの役割に近いものがある。

 クーニャと両SHは縦に速い攻撃から存在感を見せる。惜しいシュートは角度のないところからのものであり、決定機とまではいけないが、よりゴールに近づいたのはポゼッション率とは裏腹にウルブスだった前半となった。

 後半もペースを握ったのはウルブス。WGのキレがいい攻撃からスタートする。ヌネスのキャリーから、ワイドの駆け引きで膨らんだサラビアがフリーになると、決定機を迎えたのはクーニャだったが、難しい体制からのシュートはポスト。今日のウルブスの攻撃のキレを象徴するような攻撃だったが、ゴールを掴むことができない。

 対するユナイテッドは停滞感が拭えない。大きな展開からの大外を起点とするハーフスペースアタックをひたすら行っていたが、なかなか打開ができず。思うに「必ず抜けた選手を使う」というのがウルブスの対応にがっちりハマってしまった感がある。CHがハーフスペースの裏をケアする形をしていたウルブスに対して、手前を使うことができればもう少し展開は楽になっただろう。

 実際、先制点の場面は出口こそハーフスペースアタックだが、大外から一度手前のブルーノにマイナスのパスを戻している。これにレミナが釣られてしまい、ハーフスペースに飛び込んだワン=ビサカがフリーになった。ひたすら続けたハーフスペースアタックが結果を出したのは確かだが、うまくいったのには理由がある。

 後半も猛威を振るったウルブスの強度だが、展開とは裏腹にビハインド。ウルブスはすでに投入されたヒチャンに加えて、カライジッチやシルバなど前線の選手を続々と投入していく。ラッシュフォードを下げてマクトミネイを入れたテン・ハーグの采配も押し込まれる展開を助長。終盤はウルブスがひたすら左右からクロスを上げる。

 ポイントになったのはミドルに体を投げ出し続けたMFとオナナの出来。撤退に追い込まれながらもなんとかクリーンシートに抑えられたのは彼らの献身性の賜物だろう。

 大苦戦といっていいホーム開幕戦を制したユナイテッド。ウルブスは前評判を覆す会心の出来だったが、内容の手応えを勝ち点に繋げることができなかった。

ひとこと

 最後のオナナのバンザイアタックで死ぬほど笑ってしまった。

試合結果

2023.8.14
プレミアリーグ 第1節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 ウォルバーハンプトン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:76′ ヴァラン
主審:サイモン・フーパー

第2節 ブライトン戦(H)

ミラーでわかる上手感

 共にベースのフォーメーションは4-4-2。ミラーの組み合わせでがっぷり四つにかみ合う試合となった。

 高い位置からプレスに出ていく意識も似通っている両チーム。高い位置から互いの保持を阻害しに行く。

 異なっていたのは前進の精度。やはりこの部分は明らかにブライトンの方が一枚上手。前節はユナイテッドをばたつかせたウルブスのプレスをブライトンは引き込みつつも流れるようにいなして前進する。この辺りはCHを昨季デ・ゼルビの薫陶を受けているグロスとギルモアのコンビしたことは大きいといえるだろう。

 一方のウルブスも降りるヌネスから根性でプレス回避に行く。しかしながら、ブライトンの前線は二度追いが効く選手がズラリ。ヌネスのポストからポゼッションを安定させたいウルブスだったが、強烈なプレッシングを前に前進の安定感を欠く。

 アタッキングサードにおいても両チームのクオリティには差が。ブライトンの切り込み隊長は本日も三笘。先制点の場面は鮮烈なインパクト。エンシソを押しのけるようなドリブルで加速するとまるでゲームのように数人を追い越し、あっという間にゴールを手にする。

 プレスはいつまでも捕まる気配はなかったが、ボール保持の方は試合の経過と共にウルブスも少しずつ対抗できるように。ブライトンの二度追いもポゼッションでいなしつつ、前線ではクーニャが前節の好調を維持。推進力を生かしつつ、相棒のファビオ・シルバに決定機を届ける。だが、チャンスを決めることはできない。試合はブライトンのリードでハーフタイムを迎える。

 迎えた後半。試合は完全にブライトンにペースが流れることになる。後半にブライトンが主導権を握ったのは前線のオフザボール。ウェルベック、エンシソ、マーチの3人を軸に、広範囲を駆け回りながらロングボールを引き出し、ウルブスの守備陣を混乱に陥れる。

 特にオフザボールできっかけになっていたのはエンシソ。2点目は彼がいなくなったところにウェルベックが入ってくる動きからチャンスメイクに成功。最後は駆け上がってきたエストゥピニャンが三笘からのアシストで追加点を手にする。

 3点目も4点目も前線のオフザボールによってウルブスの守備陣をゆがめる形から。機動力的なミスマッチを存分にいかし、前の選手たちの関係性であっさりとウルブスを壊し切ってしまう。

 反撃に出たいウルブスはセットプレーからヒチャンが1点を返したり、クーニャやヌネスのキャリーから奮闘する。しかしながら、80分くらいから徐々にテンションが落ちてしまい最後はじり貧に。後半追加タイムには無駄なヌネスの退場も重なり最後は踏んだり蹴ったり感が溢れる結末に。

 内容的には悲観的になりすぎる必要のない感じがするウルブスだが、結果を見れば連敗。連勝スタートのブライトンとは対照的に今年も恒例のスロースターターぶりを発揮してしまった。

ひとこと

 クーニャが報われてほしい。

試合結果

2023.8.19
プレミアリーグ 第2節
ウォルバーハンプトン 1-4 ブライトン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:61‘ ヒチャン
BHA:15’ 三笘, 46‘ エストゥピニャン, 51’ 55‘ マーチ
主審:アンディ・マドレー

第3節 エバートン戦(A)

復活のカライジッチと決定力に泣くエバートン

 まだ第3節とはいえ、現段階で両チームは20位と19位。沼からいち早く抜け出すためにも勝利したい連敗対決である。

 積極策に出たのは前からプレスに出ていくエバートン。3センターの機動力を生かし、ドゥクレが切り込み隊長としてウルブスのバックラインにプレスに出ていく。

 結構この動きはウルブスには効いた様子。おそらくクーニャであれば収めることはできると思うのだが、そもそもクーニャにロングボールが届かないため起点を作ることができない。

 プレスを撃退したとしても、敵陣深い位置でのブロック攻略に苦心するウルブス。エバートンは縦にコンパクト、横幅目いっぱいに間延びという極端な選択肢を取って守っていた。ウルブスは出し手と受け手のタイミングが合わず、裏抜けをうまく活用できなかった感があるので割とこれも効いていた。ただし、サイドを万が一抉られてしまったらエリア内はスカスカだったけども。

 エバートンは攻撃に転じると裏に流れるように蹴るロングボールから一気に陣地回復に挑む。これにもウルブスはDFが対応に苦慮。なかなかスマートに跳ね返すことができず。それならば、ハイプレス!となるが、エバートンにひっくり返されて一転ピンチに陥る。

 ほぼ完ぺきにプランがハマったエバートンだが、計算外だったのはまたしても決定力。ダンジュマはモペイの悪いところが乗り移ったかのようなチャンスの外しっぷりでジョゼ・サとの1on1を決め切ることができず。明らかに前半に決定機があったのはエバートンの方だが、機会を得点に結びつけることができないままハーフタイムを迎えてしまう。

 後半は徐々にウルブスがボールを持つ時間が増えていくように。スピーディーなパス回しで相手を上回る場面も出てくるようになるが、なかなかチャンスを作り切れない。裏抜けの決定機からシルバが絶好のチャンスを迎える場面もあったが、ダンジュマ同様にこちらも決め切ることができず。

 スコアレスのまま試合が推移したのはFWが情けないからだけでなく、両軍のGKが多くのセービングを行ったことも大きい。どちらもムラはあるが、当たりだすと止まらないタイプであり、まさしくこの日はどちらも明確に当たりの日だったといえるだろう。

 70分過ぎからは両軍のGKがセーブ合戦を披露。ゴール前の試合が増えるオープンな展開において最後の砦として君臨する。

 スコアレスのまま推移した試合の決着をつけたのは途中交代のアタッカーだった。右サイドからのなんの変哲もないクロスを押し込んだのはカライジッチ。長期離脱明けで復活を期すシーズンにおいて、欲しかったゴールは貴重な決勝点に。エバートンはターコウスキとパターソンの受け渡しがうまくいかずあっさりとフリーにしてしまった。

 この日初めての枠内シュートをゴールに結びつけたウルブス。終盤に得た貴重な勝ち越しゴールで連敗ストップ。未勝利沼からの脱出に成功した。

ひとこと

 エバートンはそんなめっちゃいいわけではないが、これで無得点は気の毒。いくらなんでもアタッカーがシュートを外しすぎである。

試合結果

2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
エバートン 0-1 ウォルバーハンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
WOL:87′ カライジッチ
主審:クレイグ・ポーソン

第4節 クリスタル・パレス戦(A)

マテタの投入でオフェンス活性化に成功

 似た要素が多くあるチーム同士の一戦。ともにベースは4-4-2。バックラインにはそこまでプレスをかけず、後ろからボールを繋ぐアクションを不自由なくできる。CBはGKを挟むように立ち、バックラインは3枚で横幅を取っていく。ざっとここまでは同じと言えるだろう。

 より直線的なカラーを出しているのはウルブス。バックラインの3枚から2トップにダイレクトにボールを繋ぎ、クーニャとシルバが作り出した時間を中盤の押し上げに使いながら陣地回復をしていく。パレスの方は相対的に手薄なサイドからキャリーすることで、ショートパスから少しずつチャンスを作っていきたい形だ。

 先にペースを握ったのはパレス。サイドからエゼの仕掛けでジョアン・ゴメスにあわやPKという対応を強いる。VARのレビューまではいったが、結果的にはこれはPKには至らず。すると、この判定に火がついたのはパレスは猛然とプレスを回避。ジョゼ・サの地雷パスを咎めたレルマのボールカットから、アイェウが決定機を迎えるなど、エゼのPK以降はかなり勢いを持ってパレスが押し込む時間帯が続く。

 自陣からのパスワークで横に揺さぶるアクションもパレスは自在。ポゼッションからエドゥアールにボールをつけてアイェウの右サイドの裏抜けを促すなど、プレス起点以外でもチャンスを作ることができてきた。

 30分が過ぎると少しずつウルブスが押し返す。こちらは押し込んだ後のサイドでの勝負に目処が立つのが大きい。ネトという大駒を初めとして、大外での1on1からクロスを積極的に入れることでゴールに迫っていく。

 パレスはなかなか押し込まれると陣地回復をすることができないのは課題。アタッカーの個での陣地回復力が高くないのは今季のパレスの悩みで、ウルブス相手に反撃に出るのに一苦労している姿が目についた。

 後半、パレスはボール保持からペース回復を施行。ウルブスも自分のターンが回ってくれば、きっちりとボールをキープ。やばい進まれ方をしそうになったが互いにカード覚悟で止めるというフラットながら固い展開が続く。

 その状況を打破したのがパレス。左サイドのミッチェルのクロスはピンポイントでエドゥアールの元に。2人のCBに挟まれながらも見事にゴールを打ち抜き、試合を動かすことに成功する。

 しかし、すぐさまウルブスは反撃。セットプレーから交代直後のヒチャンがニアから仕留めてあっという間に同点に追いつく。これ以降は試合はなかなかに膠着。ジリジリとした後半頭のような展開が戻ってきた。

 終盤に試合を動かすきっかけになったのがマテタの投入。彼のポストがパレスの攻撃の活性化の決め手になった。マテタのポストを軸にエリアに侵入したのは前半に悔しい思いをしたエゼ。入れ替わるようにボックスに入ると、勝ち越しゴールを決める。

 ダメ押しゴールとなる3点目もマテタを起点とするところから。エゼに続いて侵入したのはエドゥアール。マテタというハブ役の投入で一気にアタッキングサードの攻撃の活性化に成功したパレスが終盤のブーストで2得点を重ねる。

 終了間際に1点を返したウルブスだったが及ばず。交代策でオフェンスの活性化に成功したパレスがウルブスを下して勝ち点3を手にした。 

ひとこと

 エゼ、報われてよかったな。

試合結果

2023.9.3
プレミアリーグ 第4節
クリスタル・パレス 3-2 ウォルバーハンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:56′ 84′ エドゥアール, 78′ エゼ
WOL:65′ ヒチャン, 90+6′ クーニャ
主審:ロベルト・ジョーンズ

第5節 リバプール戦(H)

ウルブス「らしい」勝ち点ロストの恩恵をリバプールが享受

 中断明けのランチタイムキックオフはモリニューから。今季1勝しかあげてないウルブスがエバートンに続きマージーサイド狩りを目指す一戦だ。

 ウルブスは4-5-1のフォーメーションを採用。中盤3枚を並べることでリバプールの中盤3枚の噛み合わせに対応しようという算段だろう。

 リバプールはこれに対して、ゴメスがインサイドに入ったり出たりを繰り返す役割を担う。しかしながら、アレクサンダー=アーノルドに比べるとフリーにした時の脅威さが違うので効果自体は微妙だったと言えるだろう。むしろ、インサイドでボールを受けられないリバプールが外にボールを循環させたところをウルブスがうまく追い込んでボールを狩るシーンが目立つ立ち上がりとなった。

 ウルブスはボールを持って押し込むと自信を持ってサイドでの崩しができそうな様子。サイドの守備に関してはリバプールは明らかに後手で、ボールホルダーを捕まえるのが遅れることで簡単にフリーでクロスを上げさせていた。

 そんな状況を突破力のあるネトが見逃すはずもなし。先制点はサイドに枚数が余っているにも関わらず、リバプールはネトに突破を許し、ヒチャンへのラストパスが刺さるとなった。

 先制した後しばらくすると、ウルブスは撤退気味に構える形にシフト。リバプールは定点攻撃をさせられることになる。ジョー・ゴメスがインサイドに入る形だと、マティプがサイドから運べるが、出口がサラー一択のため、ウルブスはパスの出所をケアする形で構えるのが余裕だった。

 よってリバプールの攻め手は単発の左サイドからの突破と右の大外のジョー・ゴメスのクロスに集約。インサイドに高さがなければチャンスメイクを量産できないメソッドであり、やや苦戦している印象。その間もウルブスはネトを軸に危険なロングカウンターを繰り出してリバプールファンに冷や汗をかかせていた。

 後半、リバプールは4-2-3-1に変更。右サイドは大外をゴメスに固定し、サラーはインサイドでジョッタとディアスのストライカー陣に加わる。大外の基準点を明確にしたことでウルブスは大外からあっさりとラインを下げるケースが増えた。左サイドのロバートソンのフリーランから押し下げてクロスを入れることができれば、サラーのインサイドに入る動きは正当化できる。

 そして中央にストライカーが増えたことでリバプールはコンビネーションからの中央打開が増えるように。サラー→ガクポの同点弾も中央の細かいパスワークからの抜け出しが起点。4バックを維持するウルブスはポイントが足りず、ストライカーの抜け出しを許すケースが増えてくる。

 同点弾を喰らったウルブスは陣地回復にも苦戦。ネト、クーニャがガス欠になり、交代で入ったシルバも1トップでは厳しさを感じるパフォーマンス。ドイルとトラオレを中盤に配置することで一瞬勢いを取り戻しかけはしたが、それを台無しにしてしまったのはジョゼ・サ。スーパーセーブと軽率さが同居するこのGKらしい焦ったリスタートで相手にボールをプレゼントすると、ロバートソンの決勝ゴールのきっかけを作ってしまった。

 前がかりになるウルブスだが、こうなるとスペースが大好物のリバプールのアタッカー陣が躍動。明け渡されたスペースからエリオットが決定的な3点目をゲットした。

 接戦をまたしても落としてしまったウルブス。ホームで逆転負けを喫し、連続マージーサイド狩りの達成はできなかった。

ひとこと

 いい内容についてこない勝ち点。ワンプレーで台無しにしてしまうところまで今季のウルブスらしいパフォーマンス。

試合結果

2023.9.16
プレミアリーグ 第5節
ウォルバーハンプトン 1-3 リバプール
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:7′ ヒチャン
LIV:55′ ガクポ, 85′ ロバートソン, 90+1′ ブエノ(OG)
主審:マイケル・オリバー

第6節 ルートン・タウン戦(A)

初勝利の大チャンスは初ポイントで手打ち

 今季ここまで唯一プレミアで獲得できていないルートン。エドワーズ監督は結果ではない内容面でも手ごたえがある様子ではあるが、そろそろ勝ち点は欲しいところである。

 前節のフラム戦ではやたらおとなしかった印象があるルートンだが、今節は立ち上がりかららしいキックアンドラッシュを披露する。展開が落ち着くとウルブス相手にボールを持つことができたルートン。1トップのクーニャをトップにおいて、プレス隊に人数をかけてこないウルブスに対して、バックラインからゆったりとボールを持っている。

 左右にボールを散らすというところではその役割が期待されるロコンガがあまりリズムに乗れていないのが気がかりではあるが、シンプルなロングボールを送るところからモリスのミドルがバーを叩くなど好調。右サイドにおいてはブラウンが空中戦での競り合いに勝利しているのも大きく、ルートンはロングボールから前進を狙っていく。

 一方のウルブスはボールを簡単に捨ててしまい、3トップに全くボールが入らない状況に。この辺りはルートンの守備も素晴らしく、特にバックラインの押し上げからロングボールを入れることを許さずに高い位置から攻撃を跳ね返すことができていた。

 ウルブスは数少ない押し込む機会でもWGで勝負ができず起点になることができない。まず前に運べない、そして運べても手ごたえがない。そうした状況に募らせたイライラを発散してしまったのはベルガルデ。全く必要のない無駄な一発退場で状況をさらに悪くさせてしまう。ルートンにとっては絶好の初勝利チャンスである。

 退場直後はバックラインがバタバタしていたウルブス。ハーフタイムを挟んで少し落ち着きを取り戻した様子。撤退守備で割り切ることで少なくとも守るほうは安定。ボールを持ってのあれこれはなかなかかみ合わない状況が続いてはいたが。

 しかし、ワンチャンスをモノにできるアタッカーがいるのがウルブスの恐ろしさ。横パスをひっかけたネトのワンマン速攻から先制ゴールを奪う。

 まさかの先手を奪われたルートン。しかしながら押し込みつつ停滞が生まれてしまい、なかなかゴールに迫れない。むしろ、セットプレーからあわやウルブスに追加点を奪われそうになるシーンすらあったくらいである。

 しかし、押し込んでいるルートンはハンドからPK獲得。押し込み続けることでもらえるボーナスのようなチャンスをモリスが決めてタイスコアに引き戻す。

 ここから一気に攻め切りたいルートンだが、先制点以降勢いが沈んでしまいなかなか攻め込むフェーズにいけない時間が続いてしまうように。一方のウルブスもお馴染みの前線のアタッカーの息切れで攻勢に出ることができない。

 だいぶ時間を消費してしまった終盤になんとかオグベネがネットを揺らすが、これはオフサイド。最終的に勝ち越しゴールをあげることができなかったルートン。それでもプレミアで初の勝ち点というクラブとして大きな一歩を踏み出すことに成功した。

ひとこと

 もったいないような、まずは1ポイント取れてよかったようなというルートンだった。

試合結果

2023.9.23
プレミアリーグ 第6節
ルートン・タウン 1-1 ウォルバーハンプトン
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:65’(PK) モリス
WOL:50‘ ネト
主審:ジョシュ・スミス

第7節 マンチェスター・シティ戦(H)

徹底されたブロック守備とロングカウンターで王者をストップ

 開幕から止まることない6連勝を記録。シティの連勝劇ストップに今節挑むのはウルブスである。

 ウルブスのスタンスは非常に明確だった。クーニャの守備の基準となっていたのはコバチッチ。左のWGであるドクにはセメドに加えて、ネトがダブルチームで対応する。ネトとヒチャンという2人のシャドーはWGとワイドのCBの両睨みを託されており、バックラインへのプレスとサイドのカバーの両立という非常に守備の負荷の高いタスクを託されていた。

 シティはヌネスを高い位置に上げる3-1-6的な形で組んでいく。前線ではアルバレスの左サイドの寄りの飛び出しが目立つなど、ドクのダブルチームを揺さぶる形で前線に仕掛けを施していたのが印象的だった。実際に彼ら2人が抜き出し切れればエリア内は押し下げられ、シティのチャンスになっていた。ドーソン、ジョゼ・サの対応が光ってウルブズはなんとか凌ぎ切る。

 しかしながら、やはりロドリの不在の影響は否めない。高い位置を取るウォーカーは迷子になっており、ボールを引き出せていないし、中盤ではコバチッチやフォーデンが相手につかまってしまいカウンターの餌食に合っていた。

 ポジトラになれば、守備では低い位置に下がりながらも攻撃では脱兎のごとく前線に出ていったネトが印象的な働き。対面するアケを振り切る実質的なワンマン速攻からディアスのオウンゴールを誘発することに成功した。

 それ以降は割とファウルがかさんだり、なぜかアイト=ヌーリが自陣から怪しい運び出しをしたりなど、いくつか気になる点はあったもののジョゼ・サとドーソンを軸とした守備でウルブスは踏ん張り続ける。まずはハーフタイムにリードを得たまま前半を終えることに成功した。

 後半も試合のペースは変わらず。よりライン間をウロチョロできるボブの投入で、シティは乱数を増やしながらのライン間攻略に挑んでいく。同点ゴールのきっかけになったのはそんなボブのファウル奪取から。アルバレスのFKでこれを直接仕留め、シティは後半に同点に追いつく。

 しかしながら、ボブを入れた分か、即時奪回の威力は弱まっている感があった後半のシティ。いつもは後半ガス欠気味のウルブスのアタッカー陣だが、この日の気合は段違い。右サイドの裏を取ったセメドからカウンターを発動すると、ヒチャンとクーニャでカウンターを完結。これで再びリードを手にする。

 押し込む時間が続くシティだが、ウルブスのSHとCHの左右のスライドの対応を上回れる攻撃を作り出すことができずに苦戦する。フィリップスがロドリだったら・・と思ってしまうシーンもちらほら。特に94分のミドルはロドリがいつもチームを救う一振りを見せたシチュエーションと酷似していた。

 執念の5-4-1守備とロングカウンターで殊勲の勝ち点3を手にしたウルブス。シティのストップに成功した今季初めてのチームという栄誉を手に入れた。

ひとこと

 ウルブスの2列目とドーソン、ジョゼ・サあたりはとても素晴らしい出来だった。これくらいやらないとシティはロドリ抜きでも倒せない。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
ウォルバーハンプトン 2-1 マンチェスター・シティ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:13‘ ディアス(OG), 66’ ヒチャン
Man City:58‘ アルバレス
主審:クレイグ・ポーソン

第8節 アストンビラ戦(H)

サイドに狙いを絞ったウルブスが健闘を見せる

 ウォルバーハンプトンは5バック。ビラは5バックのような陣容と見せかけてキャッシュがSHになるというたまに見かける4バック。どちらのチームも布陣としてはやや後ろに重めのフォーメーションを敷いてきた。

 バックラインへのプレッシングはお互いに緩め。CBがボールを落ち着いて持てる展開となる。やや優勢だったのはアストンビラだろうか。ナローに守るウルブスの3トップの外側からボールをキャリーし、大外から相手を押し下げていく。ボールを失った後は即時奪回。押し込み続ける圧力は十分なものではあった。

 しかしながら、ウルブス視点から見ると押し込まれているとはいえ、このプランの妥当性は一定あったようにも見えた。今季のアストンビラの持ち味はワトキンスのキープ力やディアビのスピーディな運びから生み出される縦の推進力にある。5-4-1でまずは中央を締め出すというプランはこのビラの持ち味を消すという意味ではそれなりに意義はあったと言えるだろう。

 ウルブスもまた保持に回ると2トップに対しての3バックの数的優位を活かしながらキャリーする。攻撃の中心になったのは右サイド。好調のネトを軸に攻撃を組み立てていく。ビラは守備的なSHを組んだということもあり、マッギンがリトリートしながらここを埋めにいく。こちらもまたサイドに守備的な用兵を行った意義が見えたと言えるだろう。

 それでもウルブスは30分付近からサイドの裏を使いながら押し下げに成功する。それまでは主導権を握られていたため、前半を総括するのであれば互角なのだろうが、普通にぶつかればビラが優勢だったことを踏まえると、勝負のポイントをサイドに絞ることで互角まで引き戻したウルブスのプランが効いていた前半だった。

 後半の頭はややバタバタなスタート。両チームとも前半よりもやや縦に早いオープンな展開となった。そうした中で先手をとったのはウルブス。右サイドのネトの仕掛けからパウ・トーレスをぶっちぎると、絶好調のヒチャンがゴールを決める。直前の負傷の治療で鼻に詰めていたティッシュを放り投げてのゴールパフォーマンスだった。

 しかし、やられっぱなしではないのが今のビラ。セットプレーからネトにしてやられたトーレスがリベンジに成功。2分も立たずにアストンビラは試合を振り出しに戻す。

 1点ずつを取り合ったことで試合の展開はフラットに。ブロックの打開はやや停滞感がある両者だったが、後半も元気なネトと彼を囮とした裏抜けを仕掛けるセメドが存在感を放つウルブスの右サイドが印象的なパフォーマンスを見せていた。ネトとヒチャンは有効打を打てる時間帯が明らかに伸びており、コンディションの良さを伺える。

 苦しむビラだったが、後半追加タイムに再びチャンスを得る。ワトキンスの決定機から流れをつかむと、レミナの退場で残りの時間はビラの攻め一色に。ザニオーロに加えて、ラストプレーでは再びワトキンスが決定機を得るがいずれもネットをゆらせず。ビラは試合を決めきれずドローでの決着となった。

ひとこと

 ワトキンスの決定力がアキレス腱になるのは結構珍しい。

試合結果

2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
ウォルバーハンプトン 1-1 アストンビラ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:53′ ヒチャン
AVL:55′ トーレス
主審:ロベルト・ジョーンズ

第9節 ボーンマス戦(A)

同点劇以降はホームチームに見せ場なし

 なんとか初勝利を挙げて未勝利組を脱出したいボーンマス。この試合では昨季の持ち味を思い出したかのようにパスワークから積極的にピッチを横断するような形を披露する。横断した先に待っているのはWG。出口となったタヴァニアの仕掛けからボーンマスはゴールに迫っていく。

 一方のウルブスも右サイドを軸に攻撃を設計。ドハーティの空中戦を軸としてサイドに起点を作り、ネトで勝負をかける。正直、そこまでサポートができている状態ではないのだが、今のネトにはやり切ってしまうクオリティがある。バックラインからシンプルにドハーティを狙えばそれなりにチャンスができる状態だったし、ここの空中戦に競り負けてしまうとボーンマスはズルズルとラインを下がってしまう状況だった。

 右サイドを軸としたWG勝負の様相を呈していたこの一戦。結果を出したのはボーンマス。右のハーフスペースを抜けたビリングから折り返したクロスをソランケが技ありのゴールで沈めてゴール。ニアに抜けるタヴァニアがいい囮となっており、チームでの崩しと個人技が組み合わさった素晴らしいゴールと言えるだろう。

 失点後もエンジンがかからないウルブス。ボーンマスは引き続き右サイドを軸とした崩しを徹底し主導権を握り続けた前半だった。

 しかし、後半はウルブスが反撃に打って出る。前半のウルブスの攻撃において右のサイドを使った攻撃以外に効いていたのは、ボールサイドと逆側のCHの背後を取る形。後半早々にウルブスはこのエリアを制圧したスピードアップ。あっさりとクーニャが仕留めて試合を振り出しに戻す。

 相手にペースが流れていき焦りが見えるボーンマス。あまりにも愚かなファン・ヒチャンへの頭突きをかましたクックが退場で10人になると、ここから勢いは完全にウルブス側に。

 後方の選手を削り、前線にはアタッカーを揃えるウルブス。撤退型の守備を組むボーンマスに対して、カライジッチのような高さのあるアタッカーを並べて得点を狙う。

 しかし、ウルブスが見つけた解決策は高さではない。自陣から始めたビルドアップをカライジッチがプレスで仕留める。ビリングからボールを奪うと、ファン・ヒチャンの連携で抜け出してなんとか88分に勝ち越しゴールをゲットする。

 いい入りではあったが相手にペースが流れて以降は勝ててないチームらしい脆さを見せたボーンマス。未勝利は今節も継続。オニールは自らを解任した古巣に勝利を挙げることとなった。 

ひとこと

 悪くないチームが結果に引っ張られる沼に少しずつボーンマスが引っ張られている感じがする。

試合結果

2023.10.21
プレミアリーグ 第9節
ボーンマス 1-2 ウォルバーハンプトン
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:17′ ソランケ
WOL:47′ クーニャ, 88′ カライジッチ
主審:ポール・ティアニー

第10節 ニューカッスル戦(H)

主導権が入れ替わる激戦は痛み分け

 上り調子のウルブス。前線のコンディションが整っており、終盤まで粘り強く戦うことができるように。CL帰りのニューカッスル戦は彼らの出来が本物かどうかという試金石になる一戦と言えるだろう。

 立ち上がりから良かったのはウルブスの方。好調のWGを軸に押し込んでいく。ファウルを得てのセットプレーもちらほらと。わずかではあるがニューカッスルに比べるといい入りだった。

 ニューカッスルはファストブレイク寄りの崩しに終始。ロングスタッフがミドルに辿り着いた場面などはその代表格と言えるだろう。もっとも、この形はウルブスも得点が期待できる。ニューカッスルのハイラインをひっくり返して左サイドを切り裂いていたアイト=ヌーリのプレーは、非常にアナーキーだが得点に迫る有効な手段として成立していた。

 試合はしばらくするとミドルゾーンで落ち着いて展開が繰り広げられるように。この辺りはゆったりとボールを持ちたいし、持たせたいしということだろう。体力的に厳しいニューカッスルは特にこの部分のマネジメントがシビアであった。

 ゆったりとした流れの中で先制ゴールを決めたのはニューカッスル。左サイドのゴードンからのクロスをジョゼ・サが処理しきれずに、最後はウィルソンが押し込みに成功。先に試合を動かすことになる。

 失点以降は少しずつ保持の時間を増やすウルブス。攻撃の機会がだんだんと出てくると同点に追いついたのはセットプレーから。ネトのキックをファーで合わせたのはレミナ。上からヘディングで叩き振り出しに戻す。

 しかし、そのゴール以降にペースを握ったのはニューカッスル。ファストブレイクからチャンスを作っていき押し込んでいく機会を作っていく。すると、ニューカッスルは前半追加タイムにPKをゲット。ファン・ヒチャンが試みたボールへのチャレンジははアクシデンタルな形でのファウルに結果的になってしまった。これをウィルソンが仕留めて同点に追いつく。

 後半、再びペースを握ったのはウルブス。ネトを軸として右サイドの攻撃からニューカッスルを攻め立てる。ただでさえストロングなこちらのサイドに対応するニューカッスルの選手はスピードに不安があるバーン。このミスマッチから攻め手を見つけていた。

 同点へのきっかけとなったのもその右サイド。セメドのカットインに合わせた裏抜けを見せたのはファン・ヒチャン。抜け出しからの切り返し、そして冷静なコースを狙ったフィニッシュはいかにも彼が今見せている好調さを感じさせるものだった。

 一気に畳み掛けたいウルブスだがここでネトが負傷交代。ヒチャンと同じく好調を続けていたエースを失ってしまい、推進力は損なわれてしまうことに。

 CLを戦ったニューカッスル、エースを失ったウルブス。終盤はやや共に苦しい展開に。降り頻る雨も両チームから体力を奪った印象で試合は徐々にアバウトな展開に収束。ドローからの次の一手を決められる選手はいなかった。

ひとこと

 好調だった選手の負傷は見たくない。

試合結果

2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-2 ニューカッスル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:36′ レミナ, 71′ ヒチャン
NEW:22′ 45+4′(PK) ウィルソン
主審:アンソニー・テイラー

第11節 シェフィールド・ユナイテッド戦(A)

沈黙の先に待っていた歓喜

 プレミアで唯一ここまで勝利がないブレイズ。そろそろ1勝が欲しいところ。ホームにウルブスを迎えての一戦に挑む。

 バックラインからボールを持ったのはウルブス。セメドの肩上げから少し3バック化する形でビルドアップを行っていく。セメドが片上げした右サイドからウルブスは進撃。このサイドのハーフスペースから奥を取る形から敵陣に攻め込んでいく。

 ミドルゾーンからの加速はさすが。ヒチャンの縦へのスピード感もなかなかだったし、中盤に降りてトリッキーなボールタッチを見せるカライジッチの存在もアクセントになっていた。

 一方のブレイズはなかなかボールを前に進める機会を掴むことができず。ウルブスの攻撃を高い位置から止めることができず、敵陣に近い位置から素早く攻撃に出ていくことができない。わずかな攻撃の機会においてはWBを使い、ウルブスのSBの外側から進撃。ウルブスもまたバックラインへのプレッシャーがタイトではなかったため、3バックがボールを前に運びながらウルブスのSHを引き出し、WBが高い位置でボールを受けるためのサポートをすることができていた。

 とはいえ、トータルの機会で見れば多く攻撃ができていたのはウルブス。ブレイズをねじ伏せて優勢に立つ時間は長かった。

 押し込まれるブレイズは同サイドを圧縮していくプレッシングからスタート。前半よりもアグレッシブなプレスでウルブスを高い位置から食い止めにいく。

 これにより、試合の展開はオープンに。前半はあまり敵陣に入る機会が多くなかったブレイズも後半は敵陣出ていけるようになっていく。

 ミドルゾーンでの加速で優位に立っている分、優勢かと思われたウルブス。だが、先行したのはブレイズ。スローインからのリスタートから一気にウルブスのバックラインの裏をとると、アーチャーが先制点をゲット。終盤に前に出ることに成功する。

 しかしながら、ウルブスも90分手前で同点に。ベルガルドのダイナミックなゴールがブラモール・レーンの観客を沈黙に陥れる。

 両チームにチャンスがあった終盤、すったもんだの末にファビオ・シルバがPKを与えてしまい、ブレイズに決勝点の絶好の機会を渡すことに。シルバは直前にフリーのヘッドを外した末に守備で取り返そうとした結果、事態を悪化させてしまうという踏んだり蹴ったりなパフォーマンスとなった。

 このゴールをノーウッドが仕留めると再び会場は爆発。11試合目にしてようやく観客に初勝利を届けることができたブレイズ。ブラモール・レーンは沈黙の先に待っていた歓声に包まれることとなった。

ひとこと

 ブレイズとファビオ・シルバの対比は勝負の光と影を感じざるを得ない。

試合結果

2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
シェフィールド・ユナイテッド 2-1 ウォルバーハンプトン
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:72’ アーチャー, 90+10’(PK) ノーウッド
WOL:89‘ ベルガルド
主審:ロベルト・ジョーンズ

第12節 トッテナム戦(H)

精度に欠ける重たい試合を動かすゲームチェンジャー

 ファン・デ・フェン、マディソンの年内離脱が決まり、ウドジェとロメロは出場停止。前節のロンドンダービーは4失点での今季初黒星ということよりも、4人の主力が戦列から離れることが決まったことの方が衝撃が大きかった。今季のスタメン基準で見ればDFラインは寂しさはあるが、この試合単体で見ればベン・デイビスの復帰とポロのフィットネステストの通過とよくメンバーが揃ったという方が先に来てしまいそうなスタメンである。

 ここから大事!という一戦において、先制点が3分にもたらされたことは幸運だった。クルゼフスキのタメ、追い越すポロが作り出す相手のバックラインのギャップ、そこにつけ込むジョンソンのスペースへのランという要素は離脱によって解体されなかった今季のスパーズのアタッキングサード攻略のエッセンスである。

 ウルブスは先制されても強気にプレスに出ていくことはせず、FW-MF間をコンパクトにすることでトッテナムの中盤をスムーズに前進を許さないことを優先。それならばと外循環で勝負するトッテナムだが、このフェーズでは流石に主力不在感が強い。スペースを配る&サイドにサポートに出るの両面でマディソンの不在は色濃く見えることとなる。左サイドのエメルソンとサールは細かくレーン交換を行っていたが、頑張っていた以上の効果が出ていたかは怪しい。

 トッテナムは前からのプレスの意識は弱くはなかったが、さすがにいつもほどの強気のスタンスは見られることはなかった。 そのため、ウルブスの保持は十分に機会を与えられることに。ウルブスの保持は前節と同じく4-4-2から右のSBのセメドがWB化することで変形する。

 ただ、精度はイマイチ。折り返しからセカンドボールが拾えれば波状攻撃ができるかもな・・・くらいの攻撃精度であり、この部分ではトッテナムに上回れた感がある。トランジッションからエメルソンの背後を狙うことができた前半の終盤はトッテナムの受け方がまずいシーンはあったが、ウルブスの精度の問題でチャンスの構築までには至らず。ただし、トッテナムもまた先制点以降はアタッキングサードの攻略に難があり、思ったような攻め方ができる状態ではなかった。

 迎えた後半は互いにハイプレスのカラーを強める立ち上がり。サイドから裏を取る形が両チームの攻撃の中で増えていき、試合は少しずつオープンな展開になっていた。

 しかしながら、アタッキングサードの精度という両チームの共通課題は後半も健在。ビハインドのウルブスは左のアイト=ヌーリからボックス内に迫る動きを増やしていくが、放送席の2人のぼやきが止まらないくらいにはパスが合わない場面が続く。

 交代選手が入ってもなおなかなか上積みが見えない展開の中で、試合を変えてみたのは80分過ぎに投入されたサラビアだった。2列目からのボックス内の飛び出しで91分に同点ゴールを生み出す。トッテナムはウルブスの左サイド側に流れたクーニャにダイアーが中途半端に釣り出されたところが傷に。このスペースにサラビアの侵入を許してしまった。

 そのサラビアは決勝点ではアシスト役に。レミナがもぎ取ったファウルからドイルが素早くリスタートし、サラビアのラストパスに飛び込んだのもまたしてもレミナ。後半追加タイムに奪った2得点で一気にモリニューのボルテージを上げたウルブス。試合の大半をリードで過ごしたトッテナムに勝ち点1つ持ち帰らせない結末を手繰り寄せた。

ひとこと

 試合自体がどちらもチャンスができない非常に重い展開だったので、カライジッチ投入による2FW化とか、サラビアというジョーカーの投入でウルブスがうまく試合を動かしたなという感じ。トッテナム側はポステコグルーが今季どのように歩んできたかを考えれば、このベンチメンバーで試合を動かせないのは仕方ないという感想が先に来る。

試合結果

2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
ウォルバーハンプトン 2-1 トッテナム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:90+1′ サラビア, 90+7′ レミナ
TOT:3′ ジョンソン
主審:ティム・ロビンソン

第13節 フラム戦(A)

PK狂想曲となった一戦をフラムが制する

 マンデーナイトの一戦はズルズルと順位が下がっていきまずい雰囲気が出ているフラムがトッテナムを撃破したウルブスを迎え撃つカード。フラムにとってはじりじりとした停滞感を打ち破りたいはずである。

 立ち上がりからボールを持ったのはホームのフラム。右サイドを軸にサイドの奥を取るアクションからウルブスのゴールに迫っていく。開始直後のペレイラの裏抜けなどはかなりクリティカルにゴールに迫っていたといえるだろう。

 ウルブスはこれに対してカウンターで応戦。自陣深い位置からのロングカウンターで前線のアタッカーを生かす構えだ。ボールを持ちながら打開策を探るフラムとカウンターから活路を見出すウルブスの関係性である。

 この構図から抜け出す形で先制したのはフラム。左サイドの大外に立ち位置を取るウィリアンを軸として前線に飛び出したロビンソンが折り返したボールをイウォビが仕留めてゴール。幸先よく先行する。

 先制したことによりプレスを強めるウルブス。しかし、フラムは保持からこのプレスをいなす。順調に軌道に乗ったかと思えたが、敵陣でのプレーが単調になりがちなのが難点。愚直なハーフスペースの裏抜けは5バックのウルブスに先読みされるようになり、少しずつ停滞感が出てくる。

 保持では左右に揺さぶっていくウルブスによってフラムのプレスが動かされる展開に。同点ゴールは流れるようなポゼッションから。ウィリアンのプレスをすんでのところでかわしたブエノから、右サイドを起点に前進。最後はファーのクーニャが仕留めて同点とする。

 このゴールで勢いに乗ったウルブスはハイプレスを開始。敵陣でのハイプレスが機能し、フラムはビルドアップで苦しみ自陣から出ていけないようになる。

 この流れは後半も継続。ボールを持ちながら押し込まれるフラムはウルブスに対して苦戦を強いられる。しかしながら、スコアは逆に動く。自陣でのボール保持でまごついたウルブスはセメドがケアニーを倒してPK献上。フラムがリードを奪う。

 これでフラムが勢いに乗るかと思われた矢先に今度はリームがカライジッチを倒してフラムがPKを献上。流れとは逆の方にPKがあたえられるケースが続いていく。

 そしてこの試合の決着もまたPKによるもの。フラムが獲得したこの最後のPKは議論を呼ぶものだろう。映像を見る限り接触があったかはグレー。OFRでの判定も納得感があるとは言い難い映像が主だった。

 やや玉虫色の決着となったが後半のPK狂騒曲的な展開を制したのはフラム。何はともあれ久々の勝利を手にすることができた。

ひとこと

 後半だけで3つのPKは結構珍しい。

試合結果

2023.11.27
プレミアリーグ 第13節
フラム 3-2 ウォルバーハンプトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:7‘ イウォビ, 59’(PK) 90+4‘(PK) ウィリアン
WOL:22‘ クーニャ, 75’(PK) ヒチャン
主審:マイケル・サリスベリー

第14節 アーセナル戦(A)

第15節 バーンリー戦(H)

第16節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)

第17節 ウェストハム戦(A)

第18節 チェルシー戦(H)

第19節 ブレントフォード戦(A)

第20節 エバートン戦(H)

第21節 ブライトン戦(A)

第22節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

第23節 チェルシー戦(A)

第24節 ブレントフォード戦(H)

第25節 トッテナム戦(A)

第26節 シェフィールド・ユナイテッド戦(H)

第27節 ニューカッスル戦(A)

第28節 フラム戦(H)

第29節 ボーンマス戦(H)

第30節 アストンビラ戦(A)

第31節 バーンリー戦(A)

第32節 ウェストハム戦(H)

第33節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

第34節 アーセナル戦(H)

第35節 ルートン・タウン戦(H)

第36節 マンチェスター・シティ戦(A)

第37節 クリスタル・パレス戦(H)

第38節 リバプール戦(A)

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