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「Catch up Premier League」~ウォルバーハンプトン編~ 2023-24 season

 ウォルバーハンプトン、23-24シーズンの歩み。

目次

第1節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

愚直なハーフスペースアタックが身を結んだ理由

 オープニングウィークのトリを飾るのはマンチェスター・ユナイテッド。テン・ハーグ2期目の上積みを見せられるかどうか?というテーマの23-24シーズンがスタートする。そんな彼らが開幕戦で迎えるのは同じく継続路線を迎える「はずだった」ウルブス。主力の入れ替えに加えてまさかの開幕直前の監督交代と動きが激しいオフになっている。下馬評は怪しい部分もあるが果たして。

 試合はユナイテッドのボール保持からスタート。ウルブスの4-4-2ベースの守備は非常によくこの保持に食らいついていたと言えるだろう。ユナイテッドはCBが列を上げることで基準点をずらしにかかるが、時間を前に送るアクションがあまり効いておらず、ウルブスの素早いリトリートによって無効化されていた印象。

 WGには1on1でボールが入る場面も多かったが、対峙したSBによって封じられていた。特にガルナチョと対面したセメドの出来は素晴らしく、前半はほぼ完封したといっていいだろう。サイドにつけても単騎でも連携でも解決策が見えない状況なので、裏に蹴っておけ!という形でユナイテッドはボールを失っていき、前線はフラストレーションが溜まる展開になる。

 ウルブスは保持でも健闘。低い位置まで守備をこなしたSHがキープするクーニャから落としを受けて加速。攻撃を牽引する。低い位置まで降りてのリトリート、そしてインサイドにカットインしつつスペースのある中央をカウンター気味に進むSHはまさしく昨年のオニールのボーンマスの役割に近いものがある。

 クーニャと両SHは縦に速い攻撃から存在感を見せる。惜しいシュートは角度のないところからのものであり、決定機とまではいけないが、よりゴールに近づいたのはポゼッション率とは裏腹にウルブスだった前半となった。

 後半もペースを握ったのはウルブス。WGのキレがいい攻撃からスタートする。ヌネスのキャリーから、ワイドの駆け引きで膨らんだサラビアがフリーになると、決定機を迎えたのはクーニャだったが、難しい体制からのシュートはポスト。今日のウルブスの攻撃のキレを象徴するような攻撃だったが、ゴールを掴むことができない。

 対するユナイテッドは停滞感が拭えない。大きな展開からの大外を起点とするハーフスペースアタックをひたすら行っていたが、なかなか打開ができず。思うに「必ず抜けた選手を使う」というのがウルブスの対応にがっちりハマってしまった感がある。CHがハーフスペースの裏をケアする形をしていたウルブスに対して、手前を使うことができればもう少し展開は楽になっただろう。

 実際、先制点の場面は出口こそハーフスペースアタックだが、大外から一度手前のブルーノにマイナスのパスを戻している。これにレミナが釣られてしまい、ハーフスペースに飛び込んだワン=ビサカがフリーになった。ひたすら続けたハーフスペースアタックが結果を出したのは確かだが、うまくいったのには理由がある。

 後半も猛威を振るったウルブスの強度だが、展開とは裏腹にビハインド。ウルブスはすでに投入されたヒチャンに加えて、カライジッチやシルバなど前線の選手を続々と投入していく。ラッシュフォードを下げてマクトミネイを入れたテン・ハーグの采配も押し込まれる展開を助長。終盤はウルブスがひたすら左右からクロスを上げる。

 ポイントになったのはミドルに体を投げ出し続けたMFとオナナの出来。撤退に追い込まれながらもなんとかクリーンシートに抑えられたのは彼らの献身性の賜物だろう。

 大苦戦といっていいホーム開幕戦を制したユナイテッド。ウルブスは前評判を覆す会心の出来だったが、内容の手応えを勝ち点に繋げることができなかった。

ひとこと

 最後のオナナのバンザイアタックで死ぬほど笑ってしまった。

試合結果

2023.8.14
プレミアリーグ 第1節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 ウォルバーハンプトン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:76′ ヴァラン
主審:サイモン・フーパー

第2節 ブライトン戦(H)

ミラーでわかる上手感

 共にベースのフォーメーションは4-4-2。ミラーの組み合わせでがっぷり四つにかみ合う試合となった。

 高い位置からプレスに出ていく意識も似通っている両チーム。高い位置から互いの保持を阻害しに行く。

 異なっていたのは前進の精度。やはりこの部分は明らかにブライトンの方が一枚上手。前節はユナイテッドをばたつかせたウルブスのプレスをブライトンは引き込みつつも流れるようにいなして前進する。この辺りはCHを昨季デ・ゼルビの薫陶を受けているグロスとギルモアのコンビしたことは大きいといえるだろう。

 一方のウルブスも降りるヌネスから根性でプレス回避に行く。しかしながら、ブライトンの前線は二度追いが効く選手がズラリ。ヌネスのポストからポゼッションを安定させたいウルブスだったが、強烈なプレッシングを前に前進の安定感を欠く。

 アタッキングサードにおいても両チームのクオリティには差が。ブライトンの切り込み隊長は本日も三笘。先制点の場面は鮮烈なインパクト。エンシソを押しのけるようなドリブルで加速するとまるでゲームのように数人を追い越し、あっという間にゴールを手にする。

 プレスはいつまでも捕まる気配はなかったが、ボール保持の方は試合の経過と共にウルブスも少しずつ対抗できるように。ブライトンの二度追いもポゼッションでいなしつつ、前線ではクーニャが前節の好調を維持。推進力を生かしつつ、相棒のファビオ・シルバに決定機を届ける。だが、チャンスを決めることはできない。試合はブライトンのリードでハーフタイムを迎える。

 迎えた後半。試合は完全にブライトンにペースが流れることになる。後半にブライトンが主導権を握ったのは前線のオフザボール。ウェルベック、エンシソ、マーチの3人を軸に、広範囲を駆け回りながらロングボールを引き出し、ウルブスの守備陣を混乱に陥れる。

 特にオフザボールできっかけになっていたのはエンシソ。2点目は彼がいなくなったところにウェルベックが入ってくる動きからチャンスメイクに成功。最後は駆け上がってきたエストゥピニャンが三笘からのアシストで追加点を手にする。

 3点目も4点目も前線のオフザボールによってウルブスの守備陣をゆがめる形から。機動力的なミスマッチを存分にいかし、前の選手たちの関係性であっさりとウルブスを壊し切ってしまう。

 反撃に出たいウルブスはセットプレーからヒチャンが1点を返したり、クーニャやヌネスのキャリーから奮闘する。しかしながら、80分くらいから徐々にテンションが落ちてしまい最後はじり貧に。後半追加タイムには無駄なヌネスの退場も重なり最後は踏んだり蹴ったり感が溢れる結末に。

 内容的には悲観的になりすぎる必要のない感じがするウルブスだが、結果を見れば連敗。連勝スタートのブライトンとは対照的に今年も恒例のスロースターターぶりを発揮してしまった。

ひとこと

 クーニャが報われてほしい。

試合結果

2023.8.19
プレミアリーグ 第2節
ウォルバーハンプトン 1-4 ブライトン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:61‘ ヒチャン
BHA:15’ 三笘, 46‘ エストゥピニャン, 51’ 55‘ マーチ
主審:アンディ・マドレー

第3節 エバートン戦(A)

復活のカライジッチと決定力に泣くエバートン

 まだ第3節とはいえ、現段階で両チームは20位と19位。沼からいち早く抜け出すためにも勝利したい連敗対決である。

 積極策に出たのは前からプレスに出ていくエバートン。3センターの機動力を生かし、ドゥクレが切り込み隊長としてウルブスのバックラインにプレスに出ていく。

 結構この動きはウルブスには効いた様子。おそらくクーニャであれば収めることはできると思うのだが、そもそもクーニャにロングボールが届かないため起点を作ることができない。

 プレスを撃退したとしても、敵陣深い位置でのブロック攻略に苦心するウルブス。エバートンは縦にコンパクト、横幅目いっぱいに間延びという極端な選択肢を取って守っていた。ウルブスは出し手と受け手のタイミングが合わず、裏抜けをうまく活用できなかった感があるので割とこれも効いていた。ただし、サイドを万が一抉られてしまったらエリア内はスカスカだったけども。

 エバートンは攻撃に転じると裏に流れるように蹴るロングボールから一気に陣地回復に挑む。これにもウルブスはDFが対応に苦慮。なかなかスマートに跳ね返すことができず。それならば、ハイプレス!となるが、エバートンにひっくり返されて一転ピンチに陥る。

 ほぼ完ぺきにプランがハマったエバートンだが、計算外だったのはまたしても決定力。ダンジュマはモペイの悪いところが乗り移ったかのようなチャンスの外しっぷりでジョゼ・サとの1on1を決め切ることができず。明らかに前半に決定機があったのはエバートンの方だが、機会を得点に結びつけることができないままハーフタイムを迎えてしまう。

 後半は徐々にウルブスがボールを持つ時間が増えていくように。スピーディーなパス回しで相手を上回る場面も出てくるようになるが、なかなかチャンスを作り切れない。裏抜けの決定機からシルバが絶好のチャンスを迎える場面もあったが、ダンジュマ同様にこちらも決め切ることができず。

 スコアレスのまま試合が推移したのはFWが情けないからだけでなく、両軍のGKが多くのセービングを行ったことも大きい。どちらもムラはあるが、当たりだすと止まらないタイプであり、まさしくこの日はどちらも明確に当たりの日だったといえるだろう。

 70分過ぎからは両軍のGKがセーブ合戦を披露。ゴール前の試合が増えるオープンな展開において最後の砦として君臨する。

 スコアレスのまま推移した試合の決着をつけたのは途中交代のアタッカーだった。右サイドからのなんの変哲もないクロスを押し込んだのはカライジッチ。長期離脱明けで復活を期すシーズンにおいて、欲しかったゴールは貴重な決勝点に。エバートンはターコウスキとパターソンの受け渡しがうまくいかずあっさりとフリーにしてしまった。

 この日初めての枠内シュートをゴールに結びつけたウルブス。終盤に得た貴重な勝ち越しゴールで連敗ストップ。未勝利沼からの脱出に成功した。

ひとこと

 エバートンはそんなめっちゃいいわけではないが、これで無得点は気の毒。いくらなんでもアタッカーがシュートを外しすぎである。

試合結果

2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
エバートン 0-1 ウォルバーハンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
WOL:87′ カライジッチ
主審:クレイグ・ポーソン

第4節 クリスタル・パレス戦(A)

マテタの投入でオフェンス活性化に成功

 似た要素が多くあるチーム同士の一戦。ともにベースは4-4-2。バックラインにはそこまでプレスをかけず、後ろからボールを繋ぐアクションを不自由なくできる。CBはGKを挟むように立ち、バックラインは3枚で横幅を取っていく。ざっとここまでは同じと言えるだろう。

 より直線的なカラーを出しているのはウルブス。バックラインの3枚から2トップにダイレクトにボールを繋ぎ、クーニャとシルバが作り出した時間を中盤の押し上げに使いながら陣地回復をしていく。パレスの方は相対的に手薄なサイドからキャリーすることで、ショートパスから少しずつチャンスを作っていきたい形だ。

 先にペースを握ったのはパレス。サイドからエゼの仕掛けでジョアン・ゴメスにあわやPKという対応を強いる。VARのレビューまではいったが、結果的にはこれはPKには至らず。すると、この判定に火がついたのはパレスは猛然とプレスを回避。ジョゼ・サの地雷パスを咎めたレルマのボールカットから、アイェウが決定機を迎えるなど、エゼのPK以降はかなり勢いを持ってパレスが押し込む時間帯が続く。

 自陣からのパスワークで横に揺さぶるアクションもパレスは自在。ポゼッションからエドゥアールにボールをつけてアイェウの右サイドの裏抜けを促すなど、プレス起点以外でもチャンスを作ることができてきた。

 30分が過ぎると少しずつウルブスが押し返す。こちらは押し込んだ後のサイドでの勝負に目処が立つのが大きい。ネトという大駒を初めとして、大外での1on1からクロスを積極的に入れることでゴールに迫っていく。

 パレスはなかなか押し込まれると陣地回復をすることができないのは課題。アタッカーの個での陣地回復力が高くないのは今季のパレスの悩みで、ウルブス相手に反撃に出るのに一苦労している姿が目についた。

 後半、パレスはボール保持からペース回復を施行。ウルブスも自分のターンが回ってくれば、きっちりとボールをキープ。やばい進まれ方をしそうになったが互いにカード覚悟で止めるというフラットながら固い展開が続く。

 その状況を打破したのがパレス。左サイドのミッチェルのクロスはピンポイントでエドゥアールの元に。2人のCBに挟まれながらも見事にゴールを打ち抜き、試合を動かすことに成功する。

 しかし、すぐさまウルブスは反撃。セットプレーから交代直後のヒチャンがニアから仕留めてあっという間に同点に追いつく。これ以降は試合はなかなかに膠着。ジリジリとした後半頭のような展開が戻ってきた。

 終盤に試合を動かすきっかけになったのがマテタの投入。彼のポストがパレスの攻撃の活性化の決め手になった。マテタのポストを軸にエリアに侵入したのは前半に悔しい思いをしたエゼ。入れ替わるようにボックスに入ると、勝ち越しゴールを決める。

 ダメ押しゴールとなる3点目もマテタを起点とするところから。エゼに続いて侵入したのはエドゥアール。マテタというハブ役の投入で一気にアタッキングサードの攻撃の活性化に成功したパレスが終盤のブーストで2得点を重ねる。

 終了間際に1点を返したウルブスだったが及ばず。交代策でオフェンスの活性化に成功したパレスがウルブスを下して勝ち点3を手にした。 

ひとこと

 エゼ、報われてよかったな。

試合結果

2023.9.3
プレミアリーグ 第4節
クリスタル・パレス 3-2 ウォルバーハンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:56′ 84′ エドゥアール, 78′ エゼ
WOL:65′ ヒチャン, 90+6′ クーニャ
主審:ロベルト・ジョーンズ

第5節 リバプール戦(H)

ウルブス「らしい」勝ち点ロストの恩恵をリバプールが享受

 中断明けのランチタイムキックオフはモリニューから。今季1勝しかあげてないウルブスがエバートンに続きマージーサイド狩りを目指す一戦だ。

 ウルブスは4-5-1のフォーメーションを採用。中盤3枚を並べることでリバプールの中盤3枚の噛み合わせに対応しようという算段だろう。

 リバプールはこれに対して、ゴメスがインサイドに入ったり出たりを繰り返す役割を担う。しかしながら、アレクサンダー=アーノルドに比べるとフリーにした時の脅威さが違うので効果自体は微妙だったと言えるだろう。むしろ、インサイドでボールを受けられないリバプールが外にボールを循環させたところをウルブスがうまく追い込んでボールを狩るシーンが目立つ立ち上がりとなった。

 ウルブスはボールを持って押し込むと自信を持ってサイドでの崩しができそうな様子。サイドの守備に関してはリバプールは明らかに後手で、ボールホルダーを捕まえるのが遅れることで簡単にフリーでクロスを上げさせていた。

 そんな状況を突破力のあるネトが見逃すはずもなし。先制点はサイドに枚数が余っているにも関わらず、リバプールはネトに突破を許し、ヒチャンへのラストパスが刺さるとなった。

 先制した後しばらくすると、ウルブスは撤退気味に構える形にシフト。リバプールは定点攻撃をさせられることになる。ジョー・ゴメスがインサイドに入る形だと、マティプがサイドから運べるが、出口がサラー一択のため、ウルブスはパスの出所をケアする形で構えるのが余裕だった。

 よってリバプールの攻め手は単発の左サイドからの突破と右の大外のジョー・ゴメスのクロスに集約。インサイドに高さがなければチャンスメイクを量産できないメソッドであり、やや苦戦している印象。その間もウルブスはネトを軸に危険なロングカウンターを繰り出してリバプールファンに冷や汗をかかせていた。

 後半、リバプールは4-2-3-1に変更。右サイドは大外をゴメスに固定し、サラーはインサイドでジョッタとディアスのストライカー陣に加わる。大外の基準点を明確にしたことでウルブスは大外からあっさりとラインを下げるケースが増えた。左サイドのロバートソンのフリーランから押し下げてクロスを入れることができれば、サラーのインサイドに入る動きは正当化できる。

 そして中央にストライカーが増えたことでリバプールはコンビネーションからの中央打開が増えるように。サラー→ガクポの同点弾も中央の細かいパスワークからの抜け出しが起点。4バックを維持するウルブスはポイントが足りず、ストライカーの抜け出しを許すケースが増えてくる。

 同点弾を喰らったウルブスは陣地回復にも苦戦。ネト、クーニャがガス欠になり、交代で入ったシルバも1トップでは厳しさを感じるパフォーマンス。ドイルとトラオレを中盤に配置することで一瞬勢いを取り戻しかけはしたが、それを台無しにしてしまったのはジョゼ・サ。スーパーセーブと軽率さが同居するこのGKらしい焦ったリスタートで相手にボールをプレゼントすると、ロバートソンの決勝ゴールのきっかけを作ってしまった。

 前がかりになるウルブスだが、こうなるとスペースが大好物のリバプールのアタッカー陣が躍動。明け渡されたスペースからエリオットが決定的な3点目をゲットした。

 接戦をまたしても落としてしまったウルブス。ホームで逆転負けを喫し、連続マージーサイド狩りの達成はできなかった。

ひとこと

 いい内容についてこない勝ち点。ワンプレーで台無しにしてしまうところまで今季のウルブスらしいパフォーマンス。

試合結果

2023.9.16
プレミアリーグ 第5節
ウォルバーハンプトン 1-3 リバプール
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:7′ ヒチャン
LIV:55′ ガクポ, 85′ ロバートソン, 90+1′ ブエノ(OG)
主審:マイケル・オリバー

第6節 ルートン・タウン戦(A)

初勝利の大チャンスは初ポイントで手打ち

 今季ここまで唯一プレミアで獲得できていないルートン。エドワーズ監督は結果ではない内容面でも手ごたえがある様子ではあるが、そろそろ勝ち点は欲しいところである。

 前節のフラム戦ではやたらおとなしかった印象があるルートンだが、今節は立ち上がりかららしいキックアンドラッシュを披露する。展開が落ち着くとウルブス相手にボールを持つことができたルートン。1トップのクーニャをトップにおいて、プレス隊に人数をかけてこないウルブスに対して、バックラインからゆったりとボールを持っている。

 左右にボールを散らすというところではその役割が期待されるロコンガがあまりリズムに乗れていないのが気がかりではあるが、シンプルなロングボールを送るところからモリスのミドルがバーを叩くなど好調。右サイドにおいてはブラウンが空中戦での競り合いに勝利しているのも大きく、ルートンはロングボールから前進を狙っていく。

 一方のウルブスはボールを簡単に捨ててしまい、3トップに全くボールが入らない状況に。この辺りはルートンの守備も素晴らしく、特にバックラインの押し上げからロングボールを入れることを許さずに高い位置から攻撃を跳ね返すことができていた。

 ウルブスは数少ない押し込む機会でもWGで勝負ができず起点になることができない。まず前に運べない、そして運べても手ごたえがない。そうした状況に募らせたイライラを発散してしまったのはベルガルデ。全く必要のない無駄な一発退場で状況をさらに悪くさせてしまう。ルートンにとっては絶好の初勝利チャンスである。

 退場直後はバックラインがバタバタしていたウルブス。ハーフタイムを挟んで少し落ち着きを取り戻した様子。撤退守備で割り切ることで少なくとも守るほうは安定。ボールを持ってのあれこれはなかなかかみ合わない状況が続いてはいたが。

 しかし、ワンチャンスをモノにできるアタッカーがいるのがウルブスの恐ろしさ。横パスをひっかけたネトのワンマン速攻から先制ゴールを奪う。

 まさかの先手を奪われたルートン。しかしながら押し込みつつ停滞が生まれてしまい、なかなかゴールに迫れない。むしろ、セットプレーからあわやウルブスに追加点を奪われそうになるシーンすらあったくらいである。

 しかし、押し込んでいるルートンはハンドからPK獲得。押し込み続けることでもらえるボーナスのようなチャンスをモリスが決めてタイスコアに引き戻す。

 ここから一気に攻め切りたいルートンだが、先制点以降勢いが沈んでしまいなかなか攻め込むフェーズにいけない時間が続いてしまうように。一方のウルブスもお馴染みの前線のアタッカーの息切れで攻勢に出ることができない。

 だいぶ時間を消費してしまった終盤になんとかオグベネがネットを揺らすが、これはオフサイド。最終的に勝ち越しゴールをあげることができなかったルートン。それでもプレミアで初の勝ち点というクラブとして大きな一歩を踏み出すことに成功した。

ひとこと

 もったいないような、まずは1ポイント取れてよかったようなというルートンだった。

試合結果

2023.9.23
プレミアリーグ 第6節
ルートン・タウン 1-1 ウォルバーハンプトン
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:65’(PK) モリス
WOL:50‘ ネト
主審:ジョシュ・スミス

第7節 マンチェスター・シティ戦(H)

徹底されたブロック守備とロングカウンターで王者をストップ

 開幕から止まることない6連勝を記録。シティの連勝劇ストップに今節挑むのはウルブスである。

 ウルブスのスタンスは非常に明確だった。クーニャの守備の基準となっていたのはコバチッチ。左のWGであるドクにはセメドに加えて、ネトがダブルチームで対応する。ネトとヒチャンという2人のシャドーはWGとワイドのCBの両睨みを託されており、バックラインへのプレスとサイドのカバーの両立という非常に守備の負荷の高いタスクを託されていた。

 シティはヌネスを高い位置に上げる3-1-6的な形で組んでいく。前線ではアルバレスの左サイドの寄りの飛び出しが目立つなど、ドクのダブルチームを揺さぶる形で前線に仕掛けを施していたのが印象的だった。実際に彼ら2人が抜き出し切れればエリア内は押し下げられ、シティのチャンスになっていた。ドーソン、ジョゼ・サの対応が光ってウルブズはなんとか凌ぎ切る。

 しかしながら、やはりロドリの不在の影響は否めない。高い位置を取るウォーカーは迷子になっており、ボールを引き出せていないし、中盤ではコバチッチやフォーデンが相手につかまってしまいカウンターの餌食に合っていた。

 ポジトラになれば、守備では低い位置に下がりながらも攻撃では脱兎のごとく前線に出ていったネトが印象的な働き。対面するアケを振り切る実質的なワンマン速攻からディアスのオウンゴールを誘発することに成功した。

 それ以降は割とファウルがかさんだり、なぜかアイト=ヌーリが自陣から怪しい運び出しをしたりなど、いくつか気になる点はあったもののジョゼ・サとドーソンを軸とした守備でウルブスは踏ん張り続ける。まずはハーフタイムにリードを得たまま前半を終えることに成功した。

 後半も試合のペースは変わらず。よりライン間をウロチョロできるボブの投入で、シティは乱数を増やしながらのライン間攻略に挑んでいく。同点ゴールのきっかけになったのはそんなボブのファウル奪取から。アルバレスのFKでこれを直接仕留め、シティは後半に同点に追いつく。

 しかしながら、ボブを入れた分か、即時奪回の威力は弱まっている感があった後半のシティ。いつもは後半ガス欠気味のウルブスのアタッカー陣だが、この日の気合は段違い。右サイドの裏を取ったセメドからカウンターを発動すると、ヒチャンとクーニャでカウンターを完結。これで再びリードを手にする。

 押し込む時間が続くシティだが、ウルブスのSHとCHの左右のスライドの対応を上回れる攻撃を作り出すことができずに苦戦する。フィリップスがロドリだったら・・と思ってしまうシーンもちらほら。特に94分のミドルはロドリがいつもチームを救う一振りを見せたシチュエーションと酷似していた。

 執念の5-4-1守備とロングカウンターで殊勲の勝ち点3を手にしたウルブス。シティのストップに成功した今季初めてのチームという栄誉を手に入れた。

ひとこと

 ウルブスの2列目とドーソン、ジョゼ・サあたりはとても素晴らしい出来だった。これくらいやらないとシティはロドリ抜きでも倒せない。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
ウォルバーハンプトン 2-1 マンチェスター・シティ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:13‘ ディアス(OG), 66’ ヒチャン
Man City:58‘ アルバレス
主審:クレイグ・ポーソン

第8節 アストンビラ戦(H)

サイドに狙いを絞ったウルブスが健闘を見せる

 ウォルバーハンプトンは5バック。ビラは5バックのような陣容と見せかけてキャッシュがSHになるというたまに見かける4バック。どちらのチームも布陣としてはやや後ろに重めのフォーメーションを敷いてきた。

 バックラインへのプレッシングはお互いに緩め。CBがボールを落ち着いて持てる展開となる。やや優勢だったのはアストンビラだろうか。ナローに守るウルブスの3トップの外側からボールをキャリーし、大外から相手を押し下げていく。ボールを失った後は即時奪回。押し込み続ける圧力は十分なものではあった。

 しかしながら、ウルブス視点から見ると押し込まれているとはいえ、このプランの妥当性は一定あったようにも見えた。今季のアストンビラの持ち味はワトキンスのキープ力やディアビのスピーディな運びから生み出される縦の推進力にある。5-4-1でまずは中央を締め出すというプランはこのビラの持ち味を消すという意味ではそれなりに意義はあったと言えるだろう。

 ウルブスもまた保持に回ると2トップに対しての3バックの数的優位を活かしながらキャリーする。攻撃の中心になったのは右サイド。好調のネトを軸に攻撃を組み立てていく。ビラは守備的なSHを組んだということもあり、マッギンがリトリートしながらここを埋めにいく。こちらもまたサイドに守備的な用兵を行った意義が見えたと言えるだろう。

 それでもウルブスは30分付近からサイドの裏を使いながら押し下げに成功する。それまでは主導権を握られていたため、前半を総括するのであれば互角なのだろうが、普通にぶつかればビラが優勢だったことを踏まえると、勝負のポイントをサイドに絞ることで互角まで引き戻したウルブスのプランが効いていた前半だった。

 後半の頭はややバタバタなスタート。両チームとも前半よりもやや縦に早いオープンな展開となった。そうした中で先手をとったのはウルブス。右サイドのネトの仕掛けからパウ・トーレスをぶっちぎると、絶好調のヒチャンがゴールを決める。直前の負傷の治療で鼻に詰めていたティッシュを放り投げてのゴールパフォーマンスだった。

 しかし、やられっぱなしではないのが今のビラ。セットプレーからネトにしてやられたトーレスがリベンジに成功。2分も立たずにアストンビラは試合を振り出しに戻す。

 1点ずつを取り合ったことで試合の展開はフラットに。ブロックの打開はやや停滞感がある両者だったが、後半も元気なネトと彼を囮とした裏抜けを仕掛けるセメドが存在感を放つウルブスの右サイドが印象的なパフォーマンスを見せていた。ネトとヒチャンは有効打を打てる時間帯が明らかに伸びており、コンディションの良さを伺える。

 苦しむビラだったが、後半追加タイムに再びチャンスを得る。ワトキンスの決定機から流れをつかむと、レミナの退場で残りの時間はビラの攻め一色に。ザニオーロに加えて、ラストプレーでは再びワトキンスが決定機を得るがいずれもネットをゆらせず。ビラは試合を決めきれずドローでの決着となった。

ひとこと

 ワトキンスの決定力がアキレス腱になるのは結構珍しい。

試合結果

2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
ウォルバーハンプトン 1-1 アストンビラ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:53′ ヒチャン
AVL:55′ トーレス
主審:ロベルト・ジョーンズ

第9節 ボーンマス戦(A)

同点劇以降はホームチームに見せ場なし

 なんとか初勝利を挙げて未勝利組を脱出したいボーンマス。この試合では昨季の持ち味を思い出したかのようにパスワークから積極的にピッチを横断するような形を披露する。横断した先に待っているのはWG。出口となったタヴァニアの仕掛けからボーンマスはゴールに迫っていく。

 一方のウルブスも右サイドを軸に攻撃を設計。ドハーティの空中戦を軸としてサイドに起点を作り、ネトで勝負をかける。正直、そこまでサポートができている状態ではないのだが、今のネトにはやり切ってしまうクオリティがある。バックラインからシンプルにドハーティを狙えばそれなりにチャンスができる状態だったし、ここの空中戦に競り負けてしまうとボーンマスはズルズルとラインを下がってしまう状況だった。

 右サイドを軸としたWG勝負の様相を呈していたこの一戦。結果を出したのはボーンマス。右のハーフスペースを抜けたビリングから折り返したクロスをソランケが技ありのゴールで沈めてゴール。ニアに抜けるタヴァニアがいい囮となっており、チームでの崩しと個人技が組み合わさった素晴らしいゴールと言えるだろう。

 失点後もエンジンがかからないウルブス。ボーンマスは引き続き右サイドを軸とした崩しを徹底し主導権を握り続けた前半だった。

 しかし、後半はウルブスが反撃に打って出る。前半のウルブスの攻撃において右のサイドを使った攻撃以外に効いていたのは、ボールサイドと逆側のCHの背後を取る形。後半早々にウルブスはこのエリアを制圧したスピードアップ。あっさりとクーニャが仕留めて試合を振り出しに戻す。

 相手にペースが流れていき焦りが見えるボーンマス。あまりにも愚かなファン・ヒチャンへの頭突きをかましたクックが退場で10人になると、ここから勢いは完全にウルブス側に。

 後方の選手を削り、前線にはアタッカーを揃えるウルブス。撤退型の守備を組むボーンマスに対して、カライジッチのような高さのあるアタッカーを並べて得点を狙う。

 しかし、ウルブスが見つけた解決策は高さではない。自陣から始めたビルドアップをカライジッチがプレスで仕留める。ビリングからボールを奪うと、ファン・ヒチャンの連携で抜け出してなんとか88分に勝ち越しゴールをゲットする。

 いい入りではあったが相手にペースが流れて以降は勝ててないチームらしい脆さを見せたボーンマス。未勝利は今節も継続。オニールは自らを解任した古巣に勝利を挙げることとなった。 

ひとこと

 悪くないチームが結果に引っ張られる沼に少しずつボーンマスが引っ張られている感じがする。

試合結果

2023.10.21
プレミアリーグ 第9節
ボーンマス 1-2 ウォルバーハンプトン
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:17′ ソランケ
WOL:47′ クーニャ, 88′ カライジッチ
主審:ポール・ティアニー

第10節 ニューカッスル戦(H)

主導権が入れ替わる激戦は痛み分け

 上り調子のウルブス。前線のコンディションが整っており、終盤まで粘り強く戦うことができるように。CL帰りのニューカッスル戦は彼らの出来が本物かどうかという試金石になる一戦と言えるだろう。

 立ち上がりから良かったのはウルブスの方。好調のWGを軸に押し込んでいく。ファウルを得てのセットプレーもちらほらと。わずかではあるがニューカッスルに比べるといい入りだった。

 ニューカッスルはファストブレイク寄りの崩しに終始。ロングスタッフがミドルに辿り着いた場面などはその代表格と言えるだろう。もっとも、この形はウルブスも得点が期待できる。ニューカッスルのハイラインをひっくり返して左サイドを切り裂いていたアイト=ヌーリのプレーは、非常にアナーキーだが得点に迫る有効な手段として成立していた。

 試合はしばらくするとミドルゾーンで落ち着いて展開が繰り広げられるように。この辺りはゆったりとボールを持ちたいし、持たせたいしということだろう。体力的に厳しいニューカッスルは特にこの部分のマネジメントがシビアであった。

 ゆったりとした流れの中で先制ゴールを決めたのはニューカッスル。左サイドのゴードンからのクロスをジョゼ・サが処理しきれずに、最後はウィルソンが押し込みに成功。先に試合を動かすことになる。

 失点以降は少しずつ保持の時間を増やすウルブス。攻撃の機会がだんだんと出てくると同点に追いついたのはセットプレーから。ネトのキックをファーで合わせたのはレミナ。上からヘディングで叩き振り出しに戻す。

 しかし、そのゴール以降にペースを握ったのはニューカッスル。ファストブレイクからチャンスを作っていき押し込んでいく機会を作っていく。すると、ニューカッスルは前半追加タイムにPKをゲット。ファン・ヒチャンが試みたボールへのチャレンジははアクシデンタルな形でのファウルに結果的になってしまった。これをウィルソンが仕留めて同点に追いつく。

 後半、再びペースを握ったのはウルブス。ネトを軸として右サイドの攻撃からニューカッスルを攻め立てる。ただでさえストロングなこちらのサイドに対応するニューカッスルの選手はスピードに不安があるバーン。このミスマッチから攻め手を見つけていた。

 同点へのきっかけとなったのもその右サイド。セメドのカットインに合わせた裏抜けを見せたのはファン・ヒチャン。抜け出しからの切り返し、そして冷静なコースを狙ったフィニッシュはいかにも彼が今見せている好調さを感じさせるものだった。

 一気に畳み掛けたいウルブスだがここでネトが負傷交代。ヒチャンと同じく好調を続けていたエースを失ってしまい、推進力は損なわれてしまうことに。

 CLを戦ったニューカッスル、エースを失ったウルブス。終盤はやや共に苦しい展開に。降り頻る雨も両チームから体力を奪った印象で試合は徐々にアバウトな展開に収束。ドローからの次の一手を決められる選手はいなかった。

ひとこと

 好調だった選手の負傷は見たくない。

試合結果

2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-2 ニューカッスル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:36′ レミナ, 71′ ヒチャン
NEW:22′ 45+4′(PK) ウィルソン
主審:アンソニー・テイラー

第11節 シェフィールド・ユナイテッド戦(A)

沈黙の先に待っていた歓喜

 プレミアで唯一ここまで勝利がないブレイズ。そろそろ1勝が欲しいところ。ホームにウルブスを迎えての一戦に挑む。

 バックラインからボールを持ったのはウルブス。セメドの肩上げから少し3バック化する形でビルドアップを行っていく。セメドが片上げした右サイドからウルブスは進撃。このサイドのハーフスペースから奥を取る形から敵陣に攻め込んでいく。

 ミドルゾーンからの加速はさすが。ヒチャンの縦へのスピード感もなかなかだったし、中盤に降りてトリッキーなボールタッチを見せるカライジッチの存在もアクセントになっていた。

 一方のブレイズはなかなかボールを前に進める機会を掴むことができず。ウルブスの攻撃を高い位置から止めることができず、敵陣に近い位置から素早く攻撃に出ていくことができない。わずかな攻撃の機会においてはWBを使い、ウルブスのSBの外側から進撃。ウルブスもまたバックラインへのプレッシャーがタイトではなかったため、3バックがボールを前に運びながらウルブスのSHを引き出し、WBが高い位置でボールを受けるためのサポートをすることができていた。

 とはいえ、トータルの機会で見れば多く攻撃ができていたのはウルブス。ブレイズをねじ伏せて優勢に立つ時間は長かった。

 押し込まれるブレイズは同サイドを圧縮していくプレッシングからスタート。前半よりもアグレッシブなプレスでウルブスを高い位置から食い止めにいく。

 これにより、試合の展開はオープンに。前半はあまり敵陣に入る機会が多くなかったブレイズも後半は敵陣出ていけるようになっていく。

 ミドルゾーンでの加速で優位に立っている分、優勢かと思われたウルブス。だが、先行したのはブレイズ。スローインからのリスタートから一気にウルブスのバックラインの裏をとると、アーチャーが先制点をゲット。終盤に前に出ることに成功する。

 しかしながら、ウルブスも90分手前で同点に。ベルガルドのダイナミックなゴールがブラモール・レーンの観客を沈黙に陥れる。

 両チームにチャンスがあった終盤、すったもんだの末にファビオ・シルバがPKを与えてしまい、ブレイズに決勝点の絶好の機会を渡すことに。シルバは直前にフリーのヘッドを外した末に守備で取り返そうとした結果、事態を悪化させてしまうという踏んだり蹴ったりなパフォーマンスとなった。

 このゴールをノーウッドが仕留めると再び会場は爆発。11試合目にしてようやく観客に初勝利を届けることができたブレイズ。ブラモール・レーンは沈黙の先に待っていた歓声に包まれることとなった。

ひとこと

 ブレイズとファビオ・シルバの対比は勝負の光と影を感じざるを得ない。

試合結果

2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
シェフィールド・ユナイテッド 2-1 ウォルバーハンプトン
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:72’ アーチャー, 90+10’(PK) ノーウッド
WOL:89‘ ベルガルド
主審:ロベルト・ジョーンズ

第12節 トッテナム戦(H)

精度に欠ける重たい試合を動かすゲームチェンジャー

 ファン・デ・フェン、マディソンの年内離脱が決まり、ウドジェとロメロは出場停止。前節のロンドンダービーは4失点での今季初黒星ということよりも、4人の主力が戦列から離れることが決まったことの方が衝撃が大きかった。今季のスタメン基準で見ればDFラインは寂しさはあるが、この試合単体で見ればベン・デイビスの復帰とポロのフィットネステストの通過とよくメンバーが揃ったという方が先に来てしまいそうなスタメンである。

 ここから大事!という一戦において、先制点が3分にもたらされたことは幸運だった。クルゼフスキのタメ、追い越すポロが作り出す相手のバックラインのギャップ、そこにつけ込むジョンソンのスペースへのランという要素は離脱によって解体されなかった今季のスパーズのアタッキングサード攻略のエッセンスである。

 ウルブスは先制されても強気にプレスに出ていくことはせず、FW-MF間をコンパクトにすることでトッテナムの中盤をスムーズに前進を許さないことを優先。それならばと外循環で勝負するトッテナムだが、このフェーズでは流石に主力不在感が強い。スペースを配る&サイドにサポートに出るの両面でマディソンの不在は色濃く見えることとなる。左サイドのエメルソンとサールは細かくレーン交換を行っていたが、頑張っていた以上の効果が出ていたかは怪しい。

 トッテナムは前からのプレスの意識は弱くはなかったが、さすがにいつもほどの強気のスタンスは見られることはなかった。 そのため、ウルブスの保持は十分に機会を与えられることに。ウルブスの保持は前節と同じく4-4-2から右のSBのセメドがWB化することで変形する。

 ただ、精度はイマイチ。折り返しからセカンドボールが拾えれば波状攻撃ができるかもな・・・くらいの攻撃精度であり、この部分ではトッテナムに上回れた感がある。トランジッションからエメルソンの背後を狙うことができた前半の終盤はトッテナムの受け方がまずいシーンはあったが、ウルブスの精度の問題でチャンスの構築までには至らず。ただし、トッテナムもまた先制点以降はアタッキングサードの攻略に難があり、思ったような攻め方ができる状態ではなかった。

 迎えた後半は互いにハイプレスのカラーを強める立ち上がり。サイドから裏を取る形が両チームの攻撃の中で増えていき、試合は少しずつオープンな展開になっていた。

 しかしながら、アタッキングサードの精度という両チームの共通課題は後半も健在。ビハインドのウルブスは左のアイト=ヌーリからボックス内に迫る動きを増やしていくが、放送席の2人のぼやきが止まらないくらいにはパスが合わない場面が続く。

 交代選手が入ってもなおなかなか上積みが見えない展開の中で、試合を変えてみたのは80分過ぎに投入されたサラビアだった。2列目からのボックス内の飛び出しで91分に同点ゴールを生み出す。トッテナムはウルブスの左サイド側に流れたクーニャにダイアーが中途半端に釣り出されたところが傷に。このスペースにサラビアの侵入を許してしまった。

 そのサラビアは決勝点ではアシスト役に。レミナがもぎ取ったファウルからドイルが素早くリスタートし、サラビアのラストパスに飛び込んだのもまたしてもレミナ。後半追加タイムに奪った2得点で一気にモリニューのボルテージを上げたウルブス。試合の大半をリードで過ごしたトッテナムに勝ち点1つ持ち帰らせない結末を手繰り寄せた。

ひとこと

 試合自体がどちらもチャンスができない非常に重い展開だったので、カライジッチ投入による2FW化とか、サラビアというジョーカーの投入でウルブスがうまく試合を動かしたなという感じ。トッテナム側はポステコグルーが今季どのように歩んできたかを考えれば、このベンチメンバーで試合を動かせないのは仕方ないという感想が先に来る。

試合結果

2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
ウォルバーハンプトン 2-1 トッテナム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:90+1′ サラビア, 90+7′ レミナ
TOT:3′ ジョンソン
主審:ティム・ロビンソン

第13節 フラム戦(A)

PK狂想曲となった一戦をフラムが制する

 マンデーナイトの一戦はズルズルと順位が下がっていきまずい雰囲気が出ているフラムがトッテナムを撃破したウルブスを迎え撃つカード。フラムにとってはじりじりとした停滞感を打ち破りたいはずである。

 立ち上がりからボールを持ったのはホームのフラム。右サイドを軸にサイドの奥を取るアクションからウルブスのゴールに迫っていく。開始直後のペレイラの裏抜けなどはかなりクリティカルにゴールに迫っていたといえるだろう。

 ウルブスはこれに対してカウンターで応戦。自陣深い位置からのロングカウンターで前線のアタッカーを生かす構えだ。ボールを持ちながら打開策を探るフラムとカウンターから活路を見出すウルブスの関係性である。

 この構図から抜け出す形で先制したのはフラム。左サイドの大外に立ち位置を取るウィリアンを軸として前線に飛び出したロビンソンが折り返したボールをイウォビが仕留めてゴール。幸先よく先行する。

 先制したことによりプレスを強めるウルブス。しかし、フラムは保持からこのプレスをいなす。順調に軌道に乗ったかと思えたが、敵陣でのプレーが単調になりがちなのが難点。愚直なハーフスペースの裏抜けは5バックのウルブスに先読みされるようになり、少しずつ停滞感が出てくる。

 保持では左右に揺さぶっていくウルブスによってフラムのプレスが動かされる展開に。同点ゴールは流れるようなポゼッションから。ウィリアンのプレスをすんでのところでかわしたブエノから、右サイドを起点に前進。最後はファーのクーニャが仕留めて同点とする。

 このゴールで勢いに乗ったウルブスはハイプレスを開始。敵陣でのハイプレスが機能し、フラムはビルドアップで苦しみ自陣から出ていけないようになる。

 この流れは後半も継続。ボールを持ちながら押し込まれるフラムはウルブスに対して苦戦を強いられる。しかしながら、スコアは逆に動く。自陣でのボール保持でまごついたウルブスはセメドがケアニーを倒してPK献上。フラムがリードを奪う。

 これでフラムが勢いに乗るかと思われた矢先に今度はリームがカライジッチを倒してフラムがPKを献上。流れとは逆の方にPKがあたえられるケースが続いていく。

 そしてこの試合の決着もまたPKによるもの。フラムが獲得したこの最後のPKは議論を呼ぶものだろう。映像を見る限り接触があったかはグレー。OFRでの判定も納得感があるとは言い難い映像が主だった。

 やや玉虫色の決着となったが後半のPK狂騒曲的な展開を制したのはフラム。何はともあれ久々の勝利を手にすることができた。

ひとこと

 後半だけで3つのPKは結構珍しい。

試合結果

2023.11.27
プレミアリーグ 第13節
フラム 3-2 ウォルバーハンプトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:7‘ イウォビ, 59’(PK) 90+4‘(PK) ウィリアン
WOL:22‘ クーニャ, 75’(PK) ヒチャン
主審:マイケル・サリスベリー

第14節 アーセナル戦(A)

23-24の先行逃げ切りスタイル

 レビューはこちら。

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 CLではノックアウトラウンド進出を決めたアーセナル。休む間もなくリーグでは中2日でホームにウルブスを迎えての一戦となる。

 中盤に出場停止の選手が目立つウルブスは5-3-2というありったけの中盤を起用するフォーメーションを採用。ブレントフォードと同じく、IHに過負荷を強いる形で攻め立てていく。

 ウルブスはブレントフォードと比べて強気でプレスに来ていた。アーセナルはその中盤の強気のプレスをいなすように右サイドから先制点をゲット。サイドに引き寄せられてがら空きになったハーフスペースから冨安がサカにアシストを決めてアーセナルが先制する。

 その後も流れるような動きで追加点を奪うアーセナル。今季ここまでは15分までにリーグ戦のゴールがなかったアーセナルだが、この日は15分までに2ゴールを挙げてリードを広げる。

 その後も両WGの突破、ジェズスのポスト、そして頻発されるハーフスペース付近の抜け出しからアーセナルはウルブスを攻め立てる。

 防戦一方だったウルブスだが、30分から徐々にクーニャのポストやドーソンやドイルの大きな展開から盛り返すことができるようになる。それでもバックラインに対してなかなかギャップを作ることができないウルブス。むしろ、カウンターから一撃でゴールを脅かせるアーセナルの方がなおも得点の可能性が濃い前半だったといえるだろう。

 迎えた後半もアーセナルは保持からウルブスのプレスを退けていく。しかしながら、前線の飛び出しは前半よりも控えめ。2点のリードを踏まえると、より少人数で崩し切ることを意識したスタンスだったのだろう。

 その分、ウルブスは後半に余裕をもって守ることができていた。5バックはアーセナルのWGを防ぎながらカットインを阻害。直線的なカウンターを除けば前半よりもアーセナルの攻撃をまともに受ける機会は減っていた。

 攻めきれずに苦戦していたウルブスだが、後半追加タイム前に自陣の深いところでドリブルをしたジンチェンコを咎めて追撃弾をゲット。クーニャのゴールで1点差に迫る。

 しかしながら最後は試合を落ち着かせてクローズしたアーセナル。今季初のリーグ戦3連勝で首位をキープした。

ひとこと

 昨季の先行逃げ切り型に受けるときの堅さをプラスした感のある手堅いアーセナルだった。

試合結果

2023.12.2
プレミアリーグ 第14節
アーセナル 2-1 ウォルバーハンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:6′ サカ, 13′ ウーデゴール
WOL:86` クーニャ
主審:ピーター・バンクス

第15節 バーンリー戦(H)

明暗を分けた前半終了間際の決定機

  ボールを持つ側となったのはホームのウルブス。3バックでゆったりとボールを持つスタート。バーンリーはウルブスのバックラインには特にチェックをかけてはいなかったが、中盤がかなり厳しめに当たってきていたので、時にはレミナが最終ラインに落ちる形も珍しくはなかった。

  バーンリーのタイトなマークがある中央を避けつつサイドと裏からボールを運んでいくウルブス。サイドからのクロスに対してアタッカーを3枚用意する形でクロスを完結させるフィニッシュを狙いバーンリーを攻め立てていく。

  機会は少ないがバーンリーがボールを持つ側になればこちらもゆったり。後ろは3枚でのビルドアップになっていたが、SBのヴィチーニョが特にインサイドに絞らず右サイドで高い位置を取る。

 ビルドアップにおける前後の人数バランスは今日も良好。3バックのワイドからボールを運び、横断しながらコレオショにボールを預けてアタッキングサードに侵入していく。

  そんなバーンリーの誤算となったのはボール保持における絶対的な出口であるコレオショが負傷で交代してしまったこと。出口を失ってしまい、バーンリーは苦しい展開を強いられる。

 苦しむバーンリーに前半終了間際に決定的なチャンスが。ハイプレスからボールをひっかけることに成功するが、シュートを決めることができず、絶好の得点の機会を逃してしまう。

 すると、その直後にウルブスにも同じような形で決定的なチャンスが。こちらはファン・ヒチャンが容赦なく沈めて、ウルブスが先行。ハーフタイム前に明暗が分かれる展開となった。

 バーンリーはボール保持に傾倒する形で後半を進める。ウルブスはリードをしたこともあり、このスタンスを受け止める構え。カウンターからファウル奪取で着実にバーンリーのリズムを狂わせていく。

 敵陣まで入れる状態を作ることができているバーンリーだが、やはりコレオショ不在の停滞感はぬぐえずアタッキングサードでの迫力不足でなかなか肝心のゴールまでの道筋が見えてこない。

 少しずつ保持の時間を長くしていくウルブス。ロスト後に前からのプレスも仕掛けるようになり、バーンリーに押し込まれる時間も少しずつ取り上げていくことで試合をフラットな展開に戻していく。

 最後まで落ち着いて試合をコントロールしきったウルブス。前半終了間際の先制点を盾に逃げ切り、順当に勝ち点3を持ち帰ることとなった。

ひとこと

 決定的なチャンスを作ることに平等だったこの試合の神様。生かしたのはウルブスの方だった。

試合結果

2023.12.5
プレミアリーグ 第15節
ウォルバーハンプトン 1-0 バーンリー
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:42‘ ファン・ヒチャン
主審:ジャレット・ジレット

第16節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)

終盤は無理をしない痛み分けに

 共に3-4-3を採用してきた両チームの一戦。パッと見た感じでは相手にマンツーでプレスをかけやすいミラーフォーメーションでの座組になっているが、どちらのチームもバックラインには強引にプレスにはいかず。ボールを持つ側がゆったりと攻略する展開になった。 

 しかしながら、前線の選手がボールを受ける際にはマークは両チームともタイト。前にボールを簡単には差し込めない状況を保持側がどうするか解決策を探る展開となった。

 ボールを持つ機会が多かったウルブスはなかなか苦戦を強いられている中で、カウンターに注力したフォレストが先制。まごついたウルブスの左サイドのポゼッションにクヤテがちょっかいをかけることに成功し、右のネコ・ウィリアムスに展開。彼からのクロスをトフォロが仕留めて先行する。

 以降はややラインを下げて受ける構えを見せたウルブス。保持の機会が増えたウルブスはよりブロック攻略の様相が強くなる。

 ウルブスは右サイドの面々の位置を変えるローテーションが攻めの生命線。WGのサラビアにクーニャのサイドチェンジとレミナの攻めあがりがアクセントになっていた。

 同点ゴールもその形から。クーニャとサラビアのレーン交換からフリーの状況を作り出し、試合を振り出しに戻す。

 同点ゴール以降は試合の展開は変わらず。保持はウルブス、カウンターのフォレストという展開が続く。エランガのスピードを生かしたロングカウンターを狙っていきたいフォレストだが、アタッキングサードでのシャープさはチーム全体に足りず、フォレストの方がやや攻め手がなく苦しい状況が続くこととなった。

 後半もボールを持つのはホームのウルブス。フォレストはロングボールを放って以降のプレッシングをセットで組むことでボールを奪いに行くが、ウルブスのポゼッションにいなされてしまい不発に終わる。

 ウルブスが押し込む流れが瞬間的に変わったのは70分過ぎ。ネコ→トフォロという先制点と同じ流れから2点目未遂のシーンが生まれる。ウルブスはこの時間帯はフォレストに付き合うような直線的な動きが多かった。フィジカル面を問われるようになるとムリージョはここ数試合で厳しさが露呈している印象がある。

 それでもエランガのロングカウンターを見せつつ勝負に出るフォレスト。80分以降は再びウルブスがボールを持つ流れになった。しかしながら、特に両チームには強引に点を取りに行く姿勢は見られず。終盤はあまり得点の機会が多くないまま、試合はタイスコアの痛み分けで幕を閉じた。

ひとこと

 アウォニイがいないフォレストにはこれが限界だったかもしれないが、ウルブスの終盤戦にはもう少しクオリティは欲しかった感じがする。

試合結果

2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
ウォルバーハンプトン 1-1 ノッティンガム・フォレスト
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:32‘ クーニャ
NFO:14‘ トフォロ
主審:サム・バロット

第17節 ウェストハム戦(A)

珍しいハイプレスで初手を奪っての完勝

 共にバックラインには落ち着いてボールを持たせるイメージのある両チーム。だが、この試合ではウェストハムがウルブスのバックラインに強気でプレスに出ていく立ち上がりとなった。

 ボールを高い位置で奪うと、左右のクロスから勝負をかけていくウェストハム。ウルブスは保持でも非保持でもリズムをつかむことができず。高い位置からのプレスのきっかけもなく、アタッキングサードでの仕掛けも単調。ウェストハムに対して後手を踏むスタートで苦戦する。

 ウェストハムが一枚上手だったのは保持とハイプレスの局面だけではない。この日の先制点はウルブスのセットプレー由来のロングカウンター。パケタのプレス回避から発動したクドゥスのカウンターは非常に美しいもの。華麗に先制点をもぎ取って見せる。

 先制されたことでボールを持つ機会が増えるウルブス。しかしながら保持での単調なリズムは後半も変わらず。ボールを持つ時間は増えていくがなかなか打開のきっかけを見つけることができない。

 強引な縦への仕掛けはむしろウェストハムのカウンターチャンス。彼らの追加点はウルブスの縦パスをズマがカットしたところから。パケタ→クドゥスという流れは先制点と全く一緒。スムーズなカウンターからウェストハムは前半のうちにリードを広げる。

 その後も強引に突っ込んでは威力の高いカウンターの反撃からピンチを迎えるウルブス。前半はウェストハムに面白いように手玉に取られ続けたままハーフタイムに突入する。

 後半は前半よりもプレッシングが落ち着いた内容に終始。保持側が攻略を促される内容になっていく。展開としては一方的にウルブスがボールを持っていた前半の終盤に比べて、両チームがフラットにボールを持つ機会を得ることとなった。

 そのため、ウルブスは前半とは異なる縦に速い攻撃からのチャンスメイクも見られるように。左サイドで裏を取ったベルガルドから逆サイドのセメドまできっちり繋ぎきってのカウンターは見事。もっとも、最後にシュートを放ったサラビアはオフサイドだったのだけども。

 押し込み続ける流れが続いたところでまたしても牙をむいたのはウェストハムのカウンター。ボールを奪ったところからスムーズに縦につけるとゴールを決めたのはボーウェン。試合を完全に決める一撃を仕留めたウェストハムは後半もウルブスに反撃の余地を与えず。序盤から試合を完全に制圧しての勝利となった。

ひとこと

 初手のプレスからずっと展開を決めていたのはウェストハムだった。

試合結果

2023.12.17
プレミアリーグ 第17節
ウェストハム 3-0 ウォルバーハンプトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:23‘ 32’ クドゥス, 74‘ ボーウェン
主審:クリス・カバナフ

第18節 チェルシー戦(H)

攻守が噛み合わないチェルシーがモリニューで沈黙

 連敗を最下位相手にようやく止めてここから上位追走を再開したいチェルシー。ミッドウィークには土壇場のゴールからのPK戦でニューカッスルを下してカラバオカップ準決勝進出を決めるなどちらほら明るい話題も見られるようになってきた。今節はモリニューに乗り込んでの一戦である。

 ウルブスはまずはチェルシーにゆったりとボールを持たせるスタンス。チェルシーはCBが広い位置をとりながらビルドアップを行っていく。グストを片上げする3バック化がチェルシーのビルドアップの基本布陣。残りの3枚のDFと2枚のCHを活用しながらのボール回しを行う。

 ウルブスはWBが出ていきながらサイドの蓋は素早く閉じていくスタンス。このWBの強気なスタンスによりチェルシーはなかなか押し下げることができず。

 前半も中盤になるとチェルシーはラインの入れ替えを頻発するように。チェルシーから見て右サイドのウルブスのWBの裏にスターリングを走らせるなど、少しアクセントになるようなランも増えてきた。

 そのスターリングは32分に決定機。バックパスをかっさらった後に3対1の局面を迎えたが、やや淡白なシュートという選択肢を選び取ってあっさりとジョゼ・サにボールを渡してしまった。

 このプレー以降、35分過ぎから少しずつボールを動かしながらゴールに迫っていくウルブス。チェルシーのラインの間と裏を意識しつつボックス内の侵入の頻度を増やしていく。

 後半はウルブスはさらに強気のプレスを行っていく。チェルシーのバックラインはこの強気のプレスにかなりナイーブな反応を見せる。バタバタとしたバックスの対応もあり、試合はなんとなくオープンな展開に。

 すると、セットプレーからウルブスが先制。レミナがゴールを叩き込み、ウルブスが一気に流れに乗る。以降もミスがやたらと出るチェルシーのバックスにウルブスがプレスでつっつきながらの展開が続くことに。

 しかし、ウルブスもドーソンの負傷によりプレスに出るかに迷いが出るように。以降はどちらでもない時間がしばらく流れていく。

 反撃の機会を掴むことができないチェルシーに対して、ウルブスは左サイドの裏抜けから追加点をゲット。ブエノの抜け出しからドハーティが追加点を奪い、試合を完全に決める。バディアシルがボールをあっさりと置いていってしまうあたりもこの試合のチェルシーの流れの悪さを感じる。

 後半の追加タイムにはエンクンクが初ゴールをゲット。この試合でのチェルシーの数少ない良かったポイントである。攻守が噛み合わないチェルシーはウルブス相手に力無い敗戦。連勝はならず今季のリーグ戦8敗目を喫することとなった。

ひとこと

 後半のチェルシーのバックスのバタバタ具合はなんだろう。

試合結果

2023.12.24
プレミアリーグ 第18節
ウォルバーハンプトン 2-1 チェルシー
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:51′ レミナ, 90+3′ ドハーティ
CHE:90+6′ エンクンク
主審:デビッド・クート

第19節 ブレントフォード戦(A)

コリンズに訪れた悪夢

 試合はゆったりと保持側が持つ展開でスタート。バックラインの3枚でボールを順調に回していたウルブスの方が保持の時間は長かっただろうか。しかしながら出口はアバウトに前線に蹴る形であり、あまり効果的な前進は見られなかった。一方のブレントフォードはボールを持ったら結構ルイス-ポッターに預けるシーンが目立っていた。

 ウルブスは前線の動きだしが徐々に活性化。ヒチャンやサラビアといった選手たちがハーフスペースに突撃することで、相手のバックラインを押し下げる。

 セットプレーから先制したのはウルブス。レミナのヘッドで先行する。ブレントフォードはこの失点に連鎖するような形でミスを重ねてしまう。リスタートをコリンズがプレゼントパスしてしまい、ヒチャンがこれを仕留めて2プレーで2点のリードを手にすることに。

 ブレントフォードもこの流れに乗る形でウィサが抜け出しから追撃弾。直後にジャネルトも決定機を迎えるなど、得点の可能性がハレーションしている時間帯だった。

 どちらのチームも前線の裏抜けが攻撃のベースになっていた。ブレントフォードはウィサ、ウルブスはヒチャンとサラビアの両サイドから仕掛けを見せていく。

 そうした中で見られたのはまたしてもミス。コリンズの雑な縦パスに加えてピノックの押し上げが遅れてしまったことであっという間にウルブスに裏を取られてしまい、ブレントフォードは前半にさらに失点を重ねる。

 ブレントフォードは後半、巻き返しを図るべくバックパスを狙い撃ちする形から右のハーフスペースに侵入。この流れから後半戦はブレントフォードが押し込む展開を飲み込んでいく。

 ウルブスは押し下げられる展開が続きながらもブレントフォードの攻撃をきっちり受け切ることに成功。ブレントフォードは左右からの押し下げてのクロスとセットプレーを織り交ぜた形のチャンスメイクでウルブスのゴールに迫ろうとするが、ネットを揺らせるようなクリティカルな展開を見出すことができない状況が続く。

 すると、またしてもミスで失点に絡んでしまったのがコリンズ。この日2回目のプレゼントパスでまたしても古巣ウルブスに決定機の贈り物をしてしまう。これを仕留めてウルブスは4点目を決める。

 コリンズをはじめとしてミスに呪われる形で失点を重ねてしまったブレントフォード。要塞なはずのホームで大量失点となり、ウルブスに勝ち点を献上することとなった。

ひとこと

 コリンズ、この日のことはとっとと忘れよう。

試合結果

2023.12.27
プレミアリーグ 第19節
ブレントフォード 1-4 ウォルバーハンプトン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:16‘ ウィサ
WOL:13‘ レミナ, 14’ 28‘ ヒチャン, 79’ ベルガルド
主審:アンディ・マドレー

第20節 エバートン戦(H)

狙いを定めたプレスとブロックの併用が光るウルブス

 前節は奮闘しながらもグディソン・パークでシティに屈してしまったエバートン。勝ち点こそ持ち帰ることができなかったが、ある程度手ごたえはあったのだろう。ダイチはこの試合でも5バックの継続を選択した。

 前節同様にエバートンの5バックは積極的なプレスが持ち味。高い位置から相手を捕まえに行くプレスで主導権を奪いに行く。ウルブスはラインが高くなるエバートンのDFの背後を狙うイメージ。特にヒチャンの裏抜けを積極的に使う形でエバートンの前向きの矢印をへし折っていく。

 ボールを奪いきれないエバートンは自陣からの攻撃のスタートが増えることに。無理に出ていかず、ボックスを固めることを優先するウルブスの守備に対して、エバートンはなかなか攻め手を見出すことができない。ウルブズは完全に退却するのではなく、キャルバート=ルーウィンやオナナといった重要な選手に対しては前を向くことを許さない積極的なプレスを行うというさじ加減が非常に絶妙であった。

 地味ながらも主導権を握ったウルブスは25分に先制。セットプレーの流れからキルマンが仕留めて先制ゴールを手にすることに。

 以降もウルブスはブロック守備を軸にキーマンをきっちりとつぶすメリハリのある非保持でエバートンに主導権を渡さない。ようやくエバートンが作ったチャンスがオナナ→キャルバート=ルーウィンのチャンスだったことを踏まえると、ウルブスのターゲットの絞り込みはあらかた正しかったのだろう。このチャンスにおいても珍しくジョゼ・サが安定した背後のケアで潰し、事なきを得た。

後半もペースはウルブス。セメドのアクロバティックな角度からのシュートを皮切りに一方的に攻めていく。

 攻撃パターンはざっくりと2つ。横断するパスコースから逆サイドのWBのオーバーラップを促す形か、同サイドのシャドーがハーフスペースを抜ける形か。いずれも5バックであれば埋められるプレーな気もするのだが、エバートンは外切る守り方からあっさりとサイドに展開を許し、そのうえ簡単にマークを外してしまう。これでは5バックの意味はほとんどない。

 右サイドを突破するヒチャン→クーニャで追加点を奪うと、以降はウルブスの独壇場に。左右のハーフスペースを裏抜けからチャンスを量産し、エバートンに反撃のきっかけさえ与えない。

 3点目の攻め残ったドーソンに許したシーンはラインの統率が全くできておらず、多く揃ったエバートンのDF陣が無意味になってしまった場面だった。オフサイドで無効になったシーンも含めて、好き放題にネットを揺らしてエバートンを寄せ付けなかったウルブス。完勝で2023年最後のゲームを飾ることに成功した。

ひとこと

 エバートンはらしくない浮足立ったハイプレスだった。

試合結果

2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
ウォルバーハンプトン 3-0 エバートン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:25‘ キルマン, 53‘ クーニャ, 61‘ ドーソン
主審:トーマス・ブラモール

第21節 ブライトン戦(A)

縦パスから逃げずに押し込むブライトンだが

 ブライトンのフォーメーションは少しわかりにくかったが4-4-2がベースになるだろう。少しわかりにくかったのは中央に人が集まるような構造のためかもしれない。

 ウルブスが5-4-1で撤退した状態のためプレス隊は少ない。よってブライトンは後方をギルモア一人に任せて、グロスが少し前に出ていくことが多かった。

 ブライトンのプランとしては同サイドの攻めきり+クロスが軸。サイドチェンジは少なめでクロスを出すポイントと受けるポイントの2つに人をかけていくイメージである。

 ブライトンの攻撃に工夫があったのはサイドの浅い位置からインサイドに斜めのパスを差し込んでいたこと。中にスペースがあればすかさず縦につけていく形は流石のブライトンといったところだろう。

 ウルブスは撤退からのロングカウンターがベース。しかしながら、少し陣地回復は苦しい展開に。そのため、2CHがインサイドを閉じながら少しずつ高い位置から跳ね返す意識を持って対抗することとした。この辺りはスティールをはじめとしてインサイドに刺す意識が強いブライトンとの相性は良かったと思う。

 インサイドに差し込むフェーズで苦しんでいたブライトンだが、ブオナノッテやグロスといった面々がライン間に顔を出すことと自陣側にプレスを引き寄せる意識を見せて攻め込んでいく。押し込んでからのセットプレーも含めて展開としては明確にブライトンペース。ウルブスは単発で左サイドからカウンターで攻め返すが、なかなか決め手にかけており攻めあぐねる展開となってしまった。

 後半、早々に決定機を迎えたのはウルブス。右の大外からのファストブレイクという形でいきなりブライトンを脅かしていく。プレス隊も4-4-2ベースで勝負しており、ブライトンのバックラインに対してはかなり厳しい意識で勝負をかけていた。これで前半のようなワンサイドペースはいくばくか解消された。

 しかし、ブライトンは縦パスから逃げずに対抗。捕まってもサイドの裏に逃すことができるというワンタッチでのプレーでサイドにか立つことで無理なく前進。ボールをサイドから運んでいく。この時間帯はウルブスもカウンターからネトがサイドからボールを運ぶ場面があるなど、サイドから押し下げていく対決である。

 後半も時間が経つとブライトンが押し込みながら勝負を仕掛けていくように。ウルブスは右サイドのカウンターにフォーカス。スティールに危機一髪と言えるような飛び出しを誘発させるなど、縦に速い攻撃でブライトンのハイラインを揺さぶっていた。

 終盤は押し込むブライトンだが、決定打に欠いてしまいゴールを奪いきれず。優位に立った状況を活かし切ることができず、試合は痛み分けで幕を閉じた。

ひとこと

 縦パスを差し続けることで見えてくるものがある!という感じのブライトンだった。

試合結果

2024.1.22
プレミアリーグ 第21節
ブライトン 0-0 ウォルバーハンプトン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:クレイグ・ポーソン

第22節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

激流となった乱戦をメイヌーが救う

 開幕戦での裏の対戦ではオナナがカライジッチをぶん殴ったもののお咎めなしという裁定が下った因縁の一戦。モリニューでのリマッチは立ち上がりから一方的にユナイテッドが攻め続けるスタートとなった。

 カゼミーロのイエローというスタートこそ若干不穏ではあったが、ユナイテッドは5分に先制。右サイドからの斜めのパスの差し込みでホイルンドが深さをとり、ポストからラッシュフォードのミドルを演出する。

 この先制ゴールを受けてか、それともそもそものプランだったかはわからないが、ウルブスのプレッシングは積極的。しかしながら、ユナイテッドはこのプレスを苦にするどころか利用して前進。マイヌー、カゼミーロでウルブスのCHを釣り出すと広大に広がった中盤でブルーノがレシーバーとして機能。右サイドでトティ・ゴメスと駆け引きを続けるガルナチョと2人で縦パスの引き取り役に。

 チャンスメイクではガルナチョが圧巻だった。2点目のシーンに代表されるように、横断するパスから味方の上がる時間を作りつつ、ゴールに向かう動きを止めないチャンスメイクでユナイテッドの攻撃を円滑に流していく。ホイルンドのゴールは最後のところは少し運もあったが、追い越すショウを使った形はユナイテッドの鉄板のアタッキングサードの攻略パターンだ。

 ウルブスも押し込むことができれば全くチャンスがないわけではなさそう。バイタルなどユナイテッドの引いた守備はそこまでコンパクトではなかった。しかしながら、サイドからのハイクロスに終始してしまうなど、ユナイテッドとは逆に加速するポイントを見つけられないまま苦戦が続く。

 前半の終盤にはユナイテッドが3点目としてネットを揺らしたように見えたがオフサイドというシーンが立て続けに発生。ウルブスとしてはなんとか2点のビハインドでハーフタイムを迎えた格好である。

 後半、ウルブスはワイドなCBが出ていく形でプレスを強化。ユナイテッドがそれをひっくり返すところから試合が始まる。

 しかしながら、ウルブスもセットプレーから決定機。リサマルがなんとか食い止めるが、オナナの不用意な飛び出しからユナイテッドは大ピンチを迎えることに。

 互いに決定機の応酬が続くオープンな展開になったが得点の匂いがよりしていたのはウルブスの方。なんとかラッシュを耐え切ったようにも思えたが、少し落ち着きかけたところでカゼミーロがネトを倒してPKを献上。これで1点差に迫る。

 ここからゲームは不安定に。そのカゼミーロに代わり交代で入ったマクトミネイがセットプレーから得点を決めて試合は決着かに思われたが、同じくセットプレーからキルマンがゴールを決めて再び1点差に迫る。

 アントニーの不用意なロストから見られたこの日1番のウルブスのカウンターからネトがゴールを決めた時間はすでに後半のAT。同点に引き戻されたユナイテッドを救ったのはメイヌー。左サイドからのカットインからのコースを狙ったシュートでわずか数分後にやり返すことに成功。

 激流となった乱戦を制したのはユナイテッド。後半ATになっても終わらない得点の奪い合いを制し、3試合ぶりのリーグ戦勝利を手にした。

ひとこと

 リアタイ推奨。バタバタの後半は眠気が吹き飛ぶこと請け合いだった。

試合結果

2024.2.1
プレミアリーグ 第22節
ウォルバーハンプトン 3-4 マンチェスター・ユナイテッド
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:71′(PK) サラビア, 85′ キルマン, 90+5′ ネト
Man Utd:5‘ ラッシュフォード, 22’ ホイルンド, 75′ マクトミネイ,90+7′ メイヌー
主審:ジャレット・ジレット

第23節 チェルシー戦(A)

脆すぎるカウンター耐性でトップハーフ入れ替わり

 リバプールに4失点というハードな敗戦を喫してしまったチェルシー。本拠地でのウルブス戦で再起を図る。敗れればウルブスと入れ替わる形でボトムハーフに転じてしまう一戦だ。

 ボールを持つのはチェルシー。バックラインからボールを動かしつつ、ウルブスのナローな3センターの脇から前進を狙っていく。ウルブスの中盤の守備はそこまでコンパクトではなく、特にDF-MF間のスペースは空いてしまっている。したがって、チェルシーは中盤で段差を作りつつ、縦パスの出し入れでブロック内にフリーの選手を作って裏抜けを行う。序盤に迎えたエンクンクの決定機などはこれがハマった形である。

 ウルブスは逆にボールを奪ったら素早く縦にカウンターで出ていく。2CHのスライドとWBの迎撃から中盤よりも前からボールを刈り取る形からポジトラを狙っていく形である。

 ボールを持つチェルシー、カウンターを狙うウルブスの構図から先制したのはチェルシー。中盤3人のブロック内での段差の作り方は見事。フリーになったカイセドからパルマーにラストパスを送り、これを冷静に沈めて先行する。

 しかし、ウルブスはすぐに反撃。チルウェルからのパスを受けたカイセドを捕まえると、素早く縦に進み幸運なディレクションからボールはネットに吸い込まれていった。

 以降もボールを持ちながらチャンスを伺うチェルシー。だが、ギャラガー、パルマーといった面々がブロックの外に流れてしまいエンクンクが孤立。左サイドもスターリングが起点になることができず、攻め筋から逆算したポゼッションができず。

 そんなチェルシーを尻目にウルブスは勝ち越し。再三繰り返されていた右サイドの裏へのネトの抜け出しから折り返しに合わせたのアイト=ヌーリ。こちらも幸運な跳ね返りからゴールに吸い込まれてリードを奪ってハーフタイムを迎える。

 後半も基本的には前半と同じ流れを踏襲。チェルシーはギャップを作りながらの前進を画策し、右サイドからの横断でスターリングが決定機を迎えるがこれを決め切ることはできない。

 攻撃の強度は問題ないが、非保持では苦しい対応が続くチェルシー。バックスの強度不足は後半も顕著。クーニャのポストによって前向きに攻める機会を得たウルブスの前線に苦しめられることになる。

 右サイドの抜け出しからネトがチェルシーの守備陣を切り裂くとインサイドで待っていたクーニャがゴールをゲット。この場面のようにチルウェルの裏を取られるシーンもあったし、シウバの対応は怪しかったし、グストはクーニャに振り切られてPKを献上するなどウルブスはやりたい放題。クーニャはPKを仕留めてハットトリック達成だ。

 オープンなカウンターでのびのびとプレーを続けるウルブスを咎めることができなかったチェルシー。2試合連続の4失点で連敗。3連勝からボトムハーフに転じることとなった。

ひとこと

 あまりにもポチェッティーノの風当たりが強まりそうな負け方過ぎる。

試合結果

2024.2.4
プレミアリーグ 第23節
チェルシー 2-4 ウォルバーハンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:19‘ パルマー, 86′ チアゴ・シウバ
WOL:22′ 63′ 82′(PK) クーニャ, 43′ ディザジ(OG)
主審:ティム・ロビンソン

第24節 ブレントフォード戦(H)

頼れるエースと強固な守備ブロックで連敗ストップ

 トニーが帰ってきてようやくすがるものができたブレントフォード。この2試合は先制点を決めながらも、トッテナムやマンチェスター・シティといった力のあるチームに逆転負けを喫している。後方の状況を踏まえても、そろそろ勝利が欲しいところである。

 立ち上がりから仕掛けたのはブレントフォード。ウルブスのバックラインに対して、強豪仕様の3-5-2でのハイプレスを敢行。ウルブスは何とか陣地を押し返す手段を探す。立ち上がりはロングボールを軸にしていたが、ショートパスから2トップのプレスを外す手数をかけたアプローチの方が有効と感じていたようである。

 2トップを外すと降りるクーニャがボールの収めどころに。ここからファーサイドの大外に蹴るなど、中盤のボールの預けどころとして十分に時間の作れるクーニャは非常に頼りになる存在である。

 敵陣に追い込むことができたら、今度はウルブスがハイプレスを敢行。互いに陣地回復の手段をどのように使うかの一戦となっていた。ブレントフォードはシンプルなトニーへのロングボールから前線にボールを運ぶ。やはり頼れるのはトニーである。

 ウルブスは前進の手段の1つになっていた左サイドのクーニャの負傷が痛恨。自陣への戻りもブレントフォードは非常に速くコンパクトだっただけに、ボールを預けてスピードアップが期待できるクーニャの不在は痛い。

 そうした中で先制点を決めたのはブレントフォード。セットプレーからあっさりとゴールを奪うことに成功する。ジョゼ・サは落下点の目測を誤ったのか、キャッチの動きの手前で相手に触られてしまい、無人のゴールにシュートを叩き込まれてしまう。

 ビハインドとなったウルブスは3バックを維持したまま人選を攻撃的に変更。速攻でいけるときはネトに。そうでないときは右サイドを中心にクロスを上げるルートで戦っていく。

 ブレントフォードは前半よりも低い位置で構えながら強固なローブロック5-3-2を披露。堅い中央と高さのあるボックス内を前に、なかなかウルブスは得点を奪う糸口を見つけることができなかった。

 どうしたものかと迷いが出てきたウルブス。すると、その瞬間にジャネルトがフイにプレスのスイッチを入れて一気にショートカウンターに移行。そのままトニーのゴールを演出する。

 残りの時間は見事にブレントフォードに寝かされてしまったウルブス。頼れるエースの奮闘がようやく勝ち点に繋がったブレントフォードはついに連敗がストップした。

ひとこと

 トニーは偉大。プレー面は安定で信頼ができる。

試合結果

2024.2.10
プレミアリーグ 第24節
ウォルバーハンプトン 0-2 ブレントフォード
モリニュー・スタジアム
【得点者】
BRE:35‘ ノアゴール, 77’ トニー
主審:サイモン・フーパー

第25節 トッテナム戦(A)

SB不在のトッテナムがまたしても連勝の機会を逃す

 明確に調子を落としているわけではないものの、連勝がない分ブーストをかけている上位3チームからは置いていかれる形になっているトッテナム。ウルブスをホームに迎えて久しぶりの連勝を狙う一戦である。

 左右にボールを動かしながらスタートしたトッテナム。アタッキングサードへの侵入は特に問題はなく、序盤からウルブスのゴール前に迫っていく。しかしながら、仕上げの部分はもう一声。主力が欠場している両SBの押し下げ→フィニッシュというパターンがないため、シューターが捕まっている状態はいつもより多かった印象である。

 ビルドアップにおいてもエメルソンは頑張って絞ってはいるものの、効果的とはいえず。顔を出した後にどう動けばいいのかを非常に困惑しているのだろうなという振る舞いでポロの不在を感じさせていた。

 序盤はウルブスもオープンな展開を享受。中盤は甘くなる序盤の流れを利用し、アタッカーがスピードに乗ってフィニッシュまで向かうことができていた。

 試合が進むとトッテナムが一方的なボール保持に展開が移行。ウルブスは非保持で5-3-2で構える形で守備を組んで受け止める。我慢気味の展開になったが、セットプレーから先制したのはウルブス。ジョアン・ゴメスのゴールから先行する。

 定点攻撃になるとやや物足りなさを感じるトッテナム。ウルブスは跳ね返しつつ、スポットでカウンターからの反撃で存在感を示していた。トッテナムの保持の時間の増加は必ずしも優位性の増加にはつながっていなかった。

 それでも後半早々にトッテナムは同点ゴールをゲット。サイドから抉る形になったクルゼフスキが角度のないところからジョゼ・サを破って試合を振り出しに戻す。

 後半のトッテナムは一方的な押し込む展開に。ウルブスとしては前半のように跳ね返せる機会すらない立ち上がりになる。それでも56分のようにようやくカウンターからチャンスを作ると、その7分後にはネトの独走から一気に陣地回復を図ってマイナスの折り返しをジョアン・ゴメス。注文通りのロングカウンターからのゴールを確保し、一歩前に出る。

 なんとか打開したいトッテナムだが、ウルブスの5-3-2ブロックの前に打開策を見つけることができず。クロスの枚数は確保されているのだが、空中戦にフォーカスしたウルブスのDFに跳ね返される展開が続いてしまう。

 クルゼフスキ、マディソンの2トップ下作戦や、3バック化することで前線の枚数を増やすアプローチを施したトッテナム。しかしながら、最後までネットを揺らすことはできず。終了間際のデイビスの決定機も枠を捉えることができなかった。

 またしても連勝を逃したトッテナム。上位勢との勝ち点はまたしても開くこととなった。

ひとこと

 割と主力が戻ってきたトッテナムだが、唯一いなかったSBがめっちゃ浮き彫りになった。

試合結果

2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
トッテナム 1-2 ウォルバーハンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:46′ クルゼフスキ
WOL:42′ 63′ ジョアン・ゴメス
主審:アンソニー・テイラー

第26節 シェフィールド・ユナイテッド戦(H)

複雑なトライを見せたウルブス

 最下位のブレイズをホームに迎えたウルブスは非常に変わった試みをした。3-4-2-1にしてはいるが、フォーメーションはかなり変則的。後方は3バック+ジョアン・ゴメスの4枚が固定。CHの相棒であるレミナは序盤は右のハーフスペース、中盤以降は左のハーフスペースから前線に飛び出す役割。おそらく、ヒチャンよりも前線に飛び出す頻度は多かったように思う。

 右サイドはサラビアが降りるアクションでボールを引き取りつつ、こちらもセメドが前後関係を壊しながら前線に飛び出していく。この辺りの自由度は相当ウルブスに許されていたように思う。ジョアン・ゴメスの相棒になっていたのはアイト=ヌーリ。彼が絞る役で中盤の左ハーフスペース付近を浮遊。左の大外にはネトが立つ。

 想像ではあるが、欠場したクーニャが最近担っていたのは左のハーフスペースに降りる動き。大外に張るネトにより、解放されたアイト=ヌーリからのゲームメイクという新しい視点を与えたいのかもしれない。

 最も基本的には前があけば突撃する仕様になっていたウルブス。非保持のオールコートマンツーも含めて気合いは十分。シンプルではあるが十分強力な方針。ネトをはじめとした俊足たちが続々と加速してブレイズの守備網に襲いかかっていく。

 だが、ポジションチェンジと猪突猛進の指針のせいか、ウルブスはカウンターには弱かった。左右からマカティー、ブリュースターなどのブレイズの最終ラインの抜け出しからのロングカウンターで決定機を迎えることも何回かあった。

 それでもウルブスは先制。常に2枚はかけているボックス内に飛び込み先制したのはサラビア。不思議なシュートでブレイズ相手になんとか前に出る。その後はやや攻め筋がマイルドに。保持時の布陣も大きくは動かさず、ウルブスは少し相手にボールを持たせる時間を作るなどで試合を落ち着かせていた。

 迎えた後半、ウルブスは引き続きボールを動かしながら前半と同じ形で勝負。前半にソウザとアフメドジッチがチーム内で揉めるなど不穏な空気を見せたブレイズだが、後半の頭は球際に気合を入れて臨むことができていた。

 基本的には後半はウルブスがボールを動かしながら押し込みつつ、ブレイズはカウンターから反撃を狙う展開が中心となる。アイト=ヌーリ→ドイルの交代が行われるとバックラインの動きは再配分。大外をトティ・ゴメスとネトの2人で賄うスタイルで大外をシェアする。CHをCHが行う分、よりシンプルなスタイルに回帰したといえる。

 ブレイズはアフメドジッチの持ち運びで押し下げつつ、ロビンソンがロングスローで勝負をかけるなど、前進の気概を見せていた。後方の裏のケアではラローチの体の張り方も特筆すべき部分があったのも確かである。

 しかしながら、最後までゴールを奪うことができなかったブレイズ。ウルブスから勝ち点3を取り上げられないまま試合は幕を閉じた。

ひとこと

 可変へのトライは複雑だったが、狙いは少し見えにくいウルブス。次どうするのだろう。

試合結果

2024.2.25
プレミアリーグ 第26節
ウォルバーハンプトン 1-0 シェフィールド・ユナイテッド
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:30‘ サラビア
主審:ダレン・ボンド

第27節 ニューカッスル戦(A)

あらゆる局面で上回っての完勝

 前節はアーセナルにリベンジを許してしまったニューカッスル。完敗の内容からの立て直すための今節はホームにウォルバーハンプトンを迎えての一戦となる。

 ボールを持つスタートになったのはニューカッスル。しかしながら、バックラインに時間は与えつつもアンカーを消しながらスペースを潰してくるウルブス相手になかなかクリティカルな前進をすることができない。奪ったら縦に速くというウルブスの方向性もインサイドに差し込むことをためらいたくなる理由の一つになるだろう。

 前節は保持時にかなりポジションレスな動きを繰り返していたウルブス。途中交代からCHとしてきっちり振る舞うことでややポジションチェンジが少なくなったドイルは今節先発スタート。1列前でフリーダムに暴れまわったレミナも中盤でおとなしく振る舞っている。

 ということでポジションを変える動きは前節よりもかなり控えめ。アイト=ヌーリがインサイドにドライブしながら、中央にパスを差し込む動きを見せたくらいだろう。だが、この動きはウルブスにとって裏目に。中央にひっかけたパスからカウンターを食らうと、最後はイサクがゴールを仕留めてニューカッスルが先制。ウルブスの保持変形の残り香が失点の引き金になってしまう。

 このゴール以降、少しずつ試合のテンポがアップ。プレッシングの応酬が徐々にみられるようになる。存在感を発揮したのはゴードン。ニューカッスルの左サイドから縦に速い動きを牽引し、速攻の鋭さを増していた。

 優勢のニューカッスルは流れに乗るように追加点をゲット。ウルブスのプレスをいなすようなシェア→ウィロックの縦パスから生まれたチャンスのこぼれをゴードンが押し込みリードをさらに広げる。こぼしてしまったのはジョゼ・サのミスといっていいだろう。

 以降もハイプレスを継続したニューカッスル。前半の時間が経過するごとにペースもスコアもニューカッスルに傾いた内容となった。

 迎えた後半もニューカッスルはバックラインのゆったりとした保持からスタート。ビルドアップでウルブスを引き付けるとゴードンを出口として勝負を仕掛けていく。

 ウルブスは反撃を狙っていきたいところだが、ポゼッション、そしてプレッシング、ブロック守備などあらゆる局面の精度が少しずつニューカッスルの方が上。追いかけるうえで肝心な攻撃の精度もインサイドとアウトサイドを使い分けるバランスを欠いていたように見えた。

 ボールの奪いどころも見当たらず、カウンターからもいい形を作れないウルブス。押し込むフェーズを単発で作ることができても何もできずに苦戦。最後はリヴラメントになんとも脱力する独走ゴールを仕留められてしまい、試合は完全に決着する。

 前後半ともに試合を支配する完勝を決めたニューカッスル。前節の大敗を払拭する勝利を飾った。

ひとこと

 ネトのようなとがっている選手がいない後半に反撃の糸口を見つけるのがハードモードになるのは致し方ない。

試合結果

2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
ニューカッスル 3-0 ウォルバーハンプトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:14‘ イサク, 33’ ゴードン, 90+2‘ リヴラメント
主審:ティム・ロビンソン

第28節 フラム戦(H)

腹をくくったハイプレスで好循環に突入

 ちょこちょこみられる負傷者の影響もあってか、試行錯誤の状態が続くウルブス。この日は4-2-3-1の形を採用し、フラムと似た構成のメンバーで臨むこととなった。

 フラムとウルブスで異なったのはプレッシングへの積極性である。フラムがCBにプレッシャーをかけずに2トップが中盤をケアすることを優先していたのと対照的に、ウルブスは2トップがCBにプレッシャーをかけて、中盤がアンカーにスライドする形でプレスにいく。

 アップテンポな展開を保持のリズムを奪ったウルブスは3-2-5に変形。保持時はズレを作りながら、勝負を仕掛けていく。ボールを固めるのは右サイド。ネトの周りに枚数をかけての攻略に挑む。

 一方のフラムはトランジッション勝負。プレスにプッシュしてくるウルブスの中盤を越えることができれば大きなチャンスを迎えることができる。逆サイドにスウィングすることができるかがキーである。

 この役割を担ったのはイウォビ。左のSHのスタートポジションからスペースができた中央に侵入し縦パスのレシーブ役となり攻撃を加速。さらにサイド攻撃においては味方に追い越してもらうためのタメを作るなど活躍。このオーバーラップからフラムはウルブス以上の決定機を生みだした前半となった。

 苦しいウルブスに追い打ちをかけたのは負傷者。10分にベルガルドがピッチを退くと、前半終了間際にはエースのネトが交代。2回の交代機会と前線の要人を失ってしまう。

 腹をくくったウルブスは後半にもう一度ネジを巻きなおしたハイプレスで勝負。リズムを強引につかみに行く。この勢いをフラムはうまく活かすことができなかった印象。押し込まれる状況を回避できない局面が続くと、アイト=ヌーリにセットプレーからゴールが生まれた。

 勢いに乗ったことで成果を得られたウルブスは好循環に突入。さらに押し込むフェーズを続行するべく高い位置からチェイシングを継続する。すると、左サイドからフレイザーとのパス交換を利用してインサイドに入ってきたジョアン・マリオが見事なアシストを決めてさらにリードを広げることに成功する。

 一方のフラムはウィリアン、パリーニャといった主力級を投入するが、腹をくくったウルブスを前になかなか前に進むことができない状況が続く。ハイラインで踏ん張るウルブスを何とか押し込み、最後はブロヤとムニスの2トップにひたすら放り込む流れには持っていけたが、終了間際にイウォビのゴールで一点を返すことが精いっぱい。逃げ切りに成功したウルブスが3ポイントを手にした。

ひとこと

 腹をくくった後半のウルブスの生き様は見事だった。

試合結果

2024.3.9
プレミアリーグ 第28節
ウォルバーハンプトン 2-1 フラム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:52‘ アイト=ヌーリ, 67’ ケアニー(OG)
FUL:90+8‘ イウォビ
主審:トニー・ハリントン

第29節 ボーンマス戦(H)

第30節 アストンビラ戦(A)

先制点以降、抵抗できなかったウルブス

 立ち上がりにボールを持ったのはウルブス。3-4-3でビラの4-4-2とは異なる噛み合わせを生かしながら、サイドからボールを前に運んでいく。

 特に安定してこの役割を果たしていたのは右サイド。セメドはもちろんのこと、ワイトのCBであるサンチャゴ・ブエノの持ち上がりからアストンビラを押し込んでいく。

 一方のビラはカウンターを重視するスタート。サイドに引き付けてのインサイドへのパスでネットを揺らしたり(オフサイド)、ティーレマンスらしい楔から縦に早く進んで行ったりなど少ない機会ながらも有効な前進を繰り返していく。

 20分が過ぎたところからビラは少しずつボールを持つように。3-2-5に変形しての定点攻撃を増やしながらウルブスのゴールに迫っていく。

 前線にカウンターの名手がいないウルブスはこうなると苦しい。ポゼッションと主導権は一致しないとよく言ったりはするが、ビラの保持はきっちりと主導権をセットで引き寄せたものとなった。

 ウルブスにとって救いだったのはブロック守備がきっちりしていたこと。堅い展開でなんとかスコアレスに持ち込み、試合は得点がないままハーフタイムを迎えるのが青写真だっただろうが、それを打ち砕いたのはディアビ。36分のゴールでリードを奪い、前半のうちに試合を動かしてみせた。

 後半、互いにプレッシングから主導権を握りにいく展開でスタートする両チーム。ウルブスからすれば敵陣にボールを持ちながら近づくための手段構築が必要で、それが高い位置からのプレッシングだったということだろう。

 しかしながら、マルティネスやパウ・トーレスのいるビラのバックラインに対して高い位置からのプレスを安定して引っ掛けるのは至難の業。せいぜいボールを奪えるのは中盤であり、そこから先のゴールに近づく手段をなかなか持ち合わせていない。

 ジョアン・ゴメスなどは独力のドリブルでファウルをもぎ取るなど強引な形から自分たちの時間を作れてはいたが、それができる選手は稀。ウルブスは徐々に苦しい時間をが増えていく展開に。

 そんなウルブスにとどめを刺したのが追加点。右サイドからのコンサのクロスがアクシデンタルにそのままゴールにすっぽり。多少ズレていてもデュランが押し込んでいただろうが、いずれにしてもこのゴールでビラは試合の行方を決定づける。

 最後までゴールを奪うことができなかったウルブス。先制点を奪われて以降はチャンスらしいチャンスを作ることができずに完封負けを喫した。

ひとこと

 やはり前線のパンチ力のなさは苦しいものがあるウルブス。ビラもハーフタイムに下がったワトキンスの状態が気がかりである。

試合結果

2024.3.30
プレミアリーグ 第30節
アストンビラ 2-0 ウォルバーハンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:36′ ディアビ, 65′ コンサ
主審:ポール・ティアニー

第31節 バーンリー戦(A)

厚みを増す前線はジョーカーになりきれず

 立ち上がりから積極的に仕掛けていったのは勝ち点がどうしても欲しいバーンリー。高い位置からのプレスでウルブスにプレッシャーをかけていく。アイト=ヌーリがこれをプレスでスルスル回避していく形から試合はスタートする。

 ウルブスはプレッシャーをかけられてもこの場面のように自陣から落ち着いてキャリーしていくことを選択。人数をかけたショートパスの繋ぎからバーンリーの守備ブロックの攻略を狙っていく。CHの列を落とすアクションにサラビアが呼応する形でビルドアップの人数を確保していく。

 しかしながら、いつものノリで前に蹴ってしまうと手薄な前線はどうしても苦しい。アバウトなボールがチウォメに収まらずに流れていくあたりはウルブスがいつものノリからなかなか脱することができないことを表していた。

 一方のバーンリーもボールを持つ側に回れば落ち着いた保持でスタートする。カレンのサリーに合わせて、こちらも中盤に降りてくるフォファナやオドベールが起点になっていた。ただし、ウルブスの4-4-2はライン間の管理が非常にアバウト。受けた選手がよりフリーになりやすいという特徴を持っていた。よって深いところまで入り込むことができていたのはバーンリー。ボール保持側が攻める機会を与えられる試合で主導権を握る。

 そういう意味では先制点も順当な流れの中での出来事としていいだろう。右サイドからのクロスに合わせる形で入り込んだのは逆サイドのラーセン。ウルブスはSHを下げて守っていたにも関わらず、肝心なところでラーセンを逃してしまうという非常に不可解な対応を見せた。

 そんな苦しい状況でもウルブスはハーフタイム直前に同点ゴールをゲット。セットプレーからのアイト=ヌーリのゴールで試合を振り出しに戻す。

 だが、そのゴールを流れを変えることはなし。後半もまたバーンリーの保持でスタート。一方的なポゼッションに加えて、高い位置からのプレッシングから主導権を完全に引き寄せる。組み立ては2CB+2CHで行いつつ、大外はSBに任せる形でビルドアップを組み、敵陣に近づいていく。

 前線に起点がなかったウルブスはようやくクーニャの投入で前のターゲットを作ることができるように。これで前線の預けどころを作ってタメができるようになったというのは今後に向けても朗報である。

 一方のバーンズーもジェイ・ロドリゲスを前線に投入。クーニャほどの柔らかさはないのだが、決め手にかけるボックス内の厚みを増すことを期待されての投入となった。

 だが、前線の交代選手は均衡した展開を破るジョーカーにはなりきれず。ジリジリとした試合はそのまま幕を閉じ、1-1のドローで決着した。

ひとこと

 ウルブスに仕留められた前半終盤のセットプレーはバーンリーにとっては悔やまれる一撃となってしまった。

試合結果

2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
バーンリー 1-1 ウォルバーハンプトン
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:37′ ラーセン
WOL:45+3′ アイト=ヌーリ
主審:トーマス・ブラモール

第32節 ウェストハム戦(H)

コーナーから放たれた名手の一撃と実らないキルマンのリベンジ

 ボール持つことになったのはホームのウルブス。バックラインを広く使いながらウェストハムの2トップを通過して前にボールを運んでいく。

 ウルブスはこのようにサイドからの進撃を軸にしていた。ウェストハムはこれに対して、CHを最終ラインに落としながらSBが高い位置を取り、WBを迎撃する形でラインを上げる。CHの守備のポジションが表しているように、全体の重心が後ろ向きだった。

 少しテイストが変わったのはウェストハムのプレスの姿勢の変化による。最終ラインを埋めていたCHはウルブスのCHを迎撃する形で高い位置に出ていくように。これにより、ウェストハムはよりハイプレスでウルブスのビルドアップに対してバックラインから制限をかけていく。

 ウルブスはこれにショートパスをベースに対抗。前に蹴ることをしなかったのは今日もスピードやポストで前線の起点になってくれるタイプがいないから。右サイドでのパスコース創出からキャリーで陣地回復に一役買っていたアイト=ヌーリの奮闘が光る展開だった。

 ウェストハムは保持ではサイドを中心に攻略を挑む。シンプルにクドゥスの単騎突破や裏に抜け出す動きなどサイドアタッカーの能力値を生かす形が多かった。だが、プレスに出ていくタイミングでクドゥスは最前線に移動。この時点でウェストハムは定点攻撃よりもトランジッションからのファストブレイクをより強く意識していたということなのだろう。

 そんな展開で先制点を奪ったのはウルブス。速攻で左サイドに流れたアイト=ヌーリがPKを獲得。これをサラビアが仕留めて前半をリードで終えることを成功する。

 後半、アントニオを前線に投入することでアタッカーを増員したウェストハム。サイドからの押し下げを効かせながら一方的に押し込むフェーズからウルブスの守備ブロックを殴っていく。ボーウェンの負傷交代という誤算はあったが、ウェストハムの攻勢は衰えずウルブス陣内でのプレーは継続していく。

 エメルソンが叩き込んだゴールはファウルで取り消しになったが、そのシーンでも見られたように再三繰り返していた右サイドの攻撃はその後に成就。クロスがキルマンのハンドを誘発しPKを獲得。何よりもプレー直後のキルマンの苦い表情が雄弁なシーン。VARのサポートを待たずとも、見ている側にはこの後OFRが行われることを悟ることができた。

 同点に追いついて以降もウェストハムは攻勢を続ける。こちらも負傷交代で退いたアイト=ヌーリに代わって、前線に入ったクーニャは負傷明けの影響もあり、なかなか存在感を発揮できずにいた。

 決め手になったのはピッチに虹をかけた美しい右足からの一振り。プレースキッカーの名手のウォード=プラウズがCKから直接ゴールを叩き込み、ついにウェストハムは逆転する。

 ビハインドになったことで押し込む機会が増えたウルブス。なかなか決定的なチャンスを掴めない中でセットプレーからキルマンがネットを揺らす。リベンジを達成したかに思えたが、これはチレワの位置がオフサイド。劇的な同点ゴールは幻となり、後半にブーストをかけたウェストハムが逆転勝ちを達成した。

ひとこと

 キルマン、リベンジ達成して欲しかったけどなぁ。

試合結果

2024.4.6
プレミアリーグ 第32節
ウォルバーハンプトン 1-2 ウェストハム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:33′(PK) サラビア
WHU:73′(PK) パケタ, 84′ ウォード=プラウズ
主審:トニー・ハリントン

第33節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

古巣にギリギリで阻まれた3ポイント

 5-4-1で受けるウルブスに対してフォレストはボールを持つスタート。1トップのクーニャの周辺からつっつく形でボールを動かしていく。ダニーロやアイナが手前でボールを受けながらウルブスの中盤を引き出して裏のスペースを狙っていく。5-4-1ブロックを引き出して、そこから一気に加速する形でゴールを狙っていく。

 一方のウルブスは押し込まれつつもショートパスでボールを動かしていく。この辺りは前線にドリブルジャンキーな不在ゆえのスカッドの反省点である。3バックと4-4-2のギャップを使いながら間を繋いでいく。ドイルのボールの動かし方は徐々に司令塔然として来ている。

 初めはフォレスト、次にウルブスがペースを握る保持ベースのスタート。しかしながら、互いのチャンスはそうした保持からの慎重な組み立てではなく、相手のミスに漬け込むトランジッションベース。互いのミスから発生するチャンスは一度ずつ巡ってきたが、どちらも仕留めることはできなかった。

 なかなか得点を奪えない状況を解決したのはクーニャ。カウンターで左サイドを走ると一度は足止めを食らったものの、そこから2人をかわしてスーパーなシュートを仕留める。

 しかしながら、フォレストも前半終了間際にゴールをゲット。セットプレーからのギブス=ホワイトのゴールで同点に。タイスコアで試合はハーフタイムを迎える。

 後半、ボール保持からベースを作っていったのはウルブス。それこそ前半のフォレストのようにボールを動かしながら打開策を探していく。

 だが、フォレストは中盤でダニーロがこれを挫く形でカウンターを発動。前節から印象的なパフォーマンスを見せていたダニーロは今節も躍動。ボール奪取から前線に駆け上がり見事なゴールを決めて見せた。

 追いかける形となったウルブスだが、今度はこちらがセットプレーで反撃。セットプレー追いつくという前半のフォレストを見習う形でクーニャがこの日2つ目のゴールを手にする。

 試合が再び同点になってからは試合は一方的にフォレストが押し込む展開に。ブロックの外から一気に裏を取る形からなど多くの決定機を迎える展開だったが、この日はジョゼ・サのカバーとセービングが大当たりの日。DFラインの背後に君臨する守護神がなんとか同点でスコアを繋ぎ止める。

 多くのチャンスを迎えたフォレストだが、ウルブスのゴールを最後まで破ることができず。ヌーノはかつて指揮したチームを前に残留争いに必要な3ポイントを持ち帰ることができなかった。

ひとこと

 クーニャ、復帰後初スタメンだけども仕上がっていた。あとダニーロもいいね。

試合結果

2024.4.13
プレミアリーグ 第33節
ノッティンガム・フォレスト 2-2 ウォルバーハンプトン
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:45+1′ ギブス=ホワイト, 57′ ダニーロ
WOL:40′ 62′ クーニャ
主審:クレイグ・ポーソン

第34節 アーセナル戦(H)

強度が出ないなりの強さ

 レビューはこちら。

 CL敗退にPL首位陥落と苦しい1週間となったアーセナル。それでもまだ続く中2日の連戦。次なる相手はウルブス。ただ、ウルブスも前線とワイドの選手のやりくりに厳しいものがある。それぞれ苦しいスカッド事情で迎える一戦となった。

 そのため、試合は互いの保持の時間が長いスタートに。それでもロングカウンターができる選手がいないウルブスは前からプレスに行かなくては行けないし、アーセナルもスタイル的に前から追うスタートとなった。

 手応えをより掴んだのはアーセナルだろう。浮きやすいSBのポジションから相手の中盤やWBを自陣側に引き付けて、中盤にスペースを作る。このスペースにライスが入り込むことでドリブルから前線にボールを運んでいく形を確立する。

 アーセナルは右サイドからウルブスのゴールに迫っていく。ホワイトが手前で相手を引きつける分、ダブルチームに苦しむことがないサカはオンザボールでもオフザボールでも一定のパフォーマンスを披露することができていた。だが、ボックス内の守備はウルブスに踏ん張られてなかなかこじ開けることができない。

 保持に回ったウルブスはサイドに散らしながらアーセナルのプレスを逃すスタート。だが、こちらはアーセナル以上に中盤での剥がしには苦労。出ていけないならいけないなりにコンパクトにというアーセナルの差配に対して対策を打つことができなかった。

 それでもロングボールからキヴィオルを狙い撃ちすることで打開を狙うウルブス。ジョアン・ゴメスが競り勝ったところから迎えた決定機は前半の最もクリティカルなチャンスの1つだ。

 だが、前半にゴールを手にしたのはアーセナル。ジェズスの高い位置からのキープの恩恵を受けたトロサールが見事なトウキックからの先制ゴールを決めた。

 後半、アーセナルはギアアップ。プレスを強めつつ、前半よりも間延びしたウルブスのライン間に縦パスを入れることで敵陣に侵入していく。

 だが、ウルブスのボックス内の堅さは健在。セットプレーの攻撃を含めてアーセナルの攻め筋を受け切る。

 70分以降はアーセナルのプレスも緩み、展開はオープンに。マルティネッリ、アイト=ヌーリといった両チームのキーマンによる陣地回復が目立つようになる。そうした中でも保持の安定感に勝るアーセナルがやや主導権を握る。

 決着は追加タイム。右サイドの角度のないところから試合を決めたのはウーデゴール。頼れるキャプテンの一撃で苦しい1週間の最後を暫定首位浮上で締め括ったアーセナルだった。

ひとこと

 強度が足りないながらもそれなりにまとめることで強さを見せたアーセナルだった。

試合結果

2024.4.20
プレミアリーグ 第34節
ウォルバーハンプトン 0-2 アーセナル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
ARS:45′ トロサール, 90+5′ ウーデゴール
主審:ポール・ティアニー

第35節 ルートン・タウン戦(H)

第36節 マンチェスター・シティ戦(A)

第37節 クリスタル・パレス戦(H)

第38節 リバプール戦(A)

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