トッテナム、23-24シーズンの歩み。
第1節 ブレントフォード戦(A)
後半の優位を勝ち越し弾に繋げられず
2桁ゴールで牽引するエースの不在、GKの入れ替わり。同じロンドンに居を構える両雄は似たような境遇で開幕戦を迎えることとなった。ただし共通点はあるものの、監督人事は対照的。トーマス・フランクのものでベースを熟成させているブレントフォードに対して、アンジェ・ポステコゴルーを招聘したトッテナムはチャレンジの1年になる。
試合はブレントフォードが速いテンポのプレスでトッテナムを追い込むところからスタート。トッテナムのバックラインは速いペースでプレーすることにまだ慣れていない感じ。パスワークやポジションの取り直しなどに相当ドタバタしていた。ブレントフォードからすればプレスのかけがいがあると感じただろう。
ただし、トッテナムは自陣を脱出さえできればそれなりにやれそうではあった。中央に縦に刺すパスからブレントフォードのブロック守備を縫うようにチャンスを作っていく。主役はもちろんマディソンである。押し込む状況から手応えを得たトッテナムはセットプレーから先制。ロメロがヘディングからゴールを決めるが、直前のプレーの頭部のダメージが残っていたか、ここで負傷交代となる。
追いかけるブレントフォードは相対的に速いテンポでのプレーに慣れていた感があった。プレス回避、そして中盤から外に流れる2トップで加速。サイドで深さをとったところから逆サイドへの展開かそのままのクロスでスピーディーにトッテナムのゴールに迫っていく。
試合は全体的にハイテンポな状況に。その中でトッテナムのWGにボールが入った時はスローダウンする形で試合は進む。クルゼフスキにボールが入った時は、外→中にスムーズに侵入ができるかどうかという少し違うリズムで攻撃が動いている感じだった。
速いテンポで動く試合はブレントフォードが立て続けにゴールを決めて逆転。右サイドからソンのPKを誘発して追いつくと、左サイドからはヘンリーがエメルソンをぶち抜いてウィサがゴールをゲット。あっという間に試合をひっくり返す。
前半は11分という長い追加タイム。この間に発生したイベントはエメルソンの名誉挽回のミドルシュートだった。マディソンから溢れたボールをミドルで押し込み試合をハーフタイムまでに振り出しに戻すことに成功した。
後半の主導権争いを制したのはトッテナム。前半の焼き直しのような落ち着かない展開が続いた中で押し込むことに成功する。リシャルリソンはボールサイドのペナ角付近に顔を出して積極的にポストしたり、マディソンやクルゼフスキがボールをもてば前線が動き出したりなど、それなりにチャンスができていた。ただ、立ちはだかったのはGKのフレッケン。角度がついたところからのシュートをセーブし、ブレントフォードにとって一番苦しい時間を凌ぎ切る。
イェンセンの負傷、ブロック守備の強度がやや怪しいなど後半のブレントフォードはややらしくないところを見せたが、交代選手が入ると再びカウンターが活性化。徐々に押し返す機会が出てくるようになる。
反対にトッテナムは代えられない選手が多く、時間の経過とともにエネルギーがダウン。オフザボールの動き出しが減少し、崩しの頻度が下がる。交代で入ったペリシッチが左サイドでロストを繰り返したのも停滞の要因となった。
最後は組み合った状態で引き分けで決着。互いに勝ち点1を分け合う開幕戦となった。
ひとこと
ビスマやリシャルリソンなど、これまでなかなか輝けなかった選手に兆しが見えたのは朗報だろう。キャプテンがこの流れに乗れるかどうかは大きなポイントになりそうだ。
試合結果
2023.8.13
プレミアリーグ 第1節
ブレントフォード 2-2 トッテナム
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:26′ ムベウモ, 36′ ウィサ
TOT:11′ ロメロm 45+4′ エメルソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
第2節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)
左サイドに手応えを感じたスパーズが眠れるユナイテッドを下す
開幕戦は薄氷の勝利を手にしたユナイテッドとなかなかド派手な撃ち合いをかましたトッテナム。2節目のビッグ6同士の対戦はそんな彼らの激突となる。
ユナイテッドは高い位置からプレッシングに出ていくスタンス。トッテナムの中盤を捕まえつつ、ボールをサイドに追いやり、そこから一気に圧力をかけていく。中盤はマンツーなのでサイドに逃げがちになるトッテナム。特に左サイドは苦戦が続き、ファン・デ・フェンなどは下手な形でのロストが増えるようになる。
ボールを奪ったら素早く縦にボールをつけていくユナイテッド。右の大外に流れるラッシュフォードはなかなかのアクセントになる。この押し出したスピードにより生み出されたスペースをブルーノが中央で享受。ラストパスやミドルから攻撃を完結させていく。
一方のトッテナムは右サイドのレーンこそポロが絞るなど工夫が見られたが、クルゼフスキにボールが入った後のサポートが整わない。ボックスに切り込むドリブルに対してはリサンドロ・マルティネスがうまく対応。このサイドの遅攻のパターンは見切られていた感がある。
むしろ可能性を感じたのは中盤でボールをもったマディソンのボールキャリー。スラローム状に何人も相手を剥がすシーンもあり、彼が前さえ向けばチャンスは作れる状況だった。
ロメロのハンド疑惑やサールのクロスバー直撃など、両チームともダイナミックな流れの中でチャンスは作ったが、ゴールを奪えず。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。
後半はトッテナムの積極的な姿勢が目立った。バックラインからの縦パスを差し込む動き、そしてSBのレシーバーになる動きが多く、ユナイテッドのブロックの中にボールを入れていく。
このチャレンジは左サイドの攻撃ルートを開通させる。ライン間で受けたマディソンからソンへのルートが通るようになると、3人目としてウドジェがハーフスペースに抜ける形で絡んできてフィニッシュまで進んでいく。
そんな中で右サイドでは先制点が。ポロのキャリーからスペースを享受したクルゼフスキがハーフスペースにアタックすると、その折り返しがこぼれたところにサールが飛び込んでゴール。まさしくサボらなかったご褒美を受け取る形でトッテナムが先制。ユナイテッドはマルティネスが潰していたクルゼフスキのアタックを2人がかりで潰しきれなかったのが痛かった。
トッテナムはSBをかなり自由な位置まで上げているので、ユナイテッドは早めにボールをカットすればチャンスになる。しかしながら、前節同様振るわないWGが攻撃のブレーキに。ガルナチョとアントニーは今節でももがき苦しむパフォーマンスを見せることとなった。
ユナイテッドの中盤が時間の経過で間延びすると、トッテナムのチャレンジは徐々に成功率が高まっていく。すると、左のハーフスペースのアタックからベン・デイビスがオウンゴールを誘発。トッテナムは中央のソン-エリクセンの縦関係から左のペリシッチへのスピーディな展開が効いた形に。またしても左右に振り回されたマルティネスにとってはあまり気分のいい日ではないだろう。
攻撃のメンバーを入れ替えてもなかなか活性化しないユナイテッド。キャッチング、セービングともに高水準で安定していたヴィカーリオのパフォーマンスはクリーンシートにふさわしいものだったと言えるだろう。
ホーム開幕戦を制したトッテナム。ギアのかからないユナイテッドを下し、監督に就任初勝利をプレゼントした。
ひとこと
左の攻撃構築など第1節で積んだ課題に早くもメスが入ったのはトッテナムとしてはいいことだろう。ユナイテッドはとにかく選手個々の体の重さが目立つ。個人のコンディションが上がるのを待つしかないのだろうか。
試合結果
2023.8.19
プレミアリーグ 第2節
トッテナム 2-0 マンチェスター・ユナイテッド
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:49′ サール, 83′ リサンドロ・マルティネス(OG)
主審:マイケル・オリバー
第3節 ボーンマス戦(A)
最初の方向性提示には成功した感のあるポステコグルー
ボーンマスからすれば立ち上がりのプレス攻勢は当然の帰結だろう。リバプールと同じく、トッテナムは今季は保持にこだわったチームづくりをしているし、なんならリバプール以上に前線の逃げ道がない。保持で解決策を見つけるしか逃げ道がないのであれば、とりあえずプレスにいくというのは妥当。ロズウェル、ビリングが列を上げながらプレスに出ていく。
立ち上がりの数分は戸惑っていた感があったトッテナムだが、ボーンマスの予想通りショートパスでの保持に徹しつつ10分経たずに解決策を発見。マディソンの降りる動きとポロの絞る動きをCHがサイドに流れる動きと合わせることで、中央から前進することができた。重心が下がり過ぎてしまうと、後方の選手が上がる時間が作れるかが問題だが、この辺りはソンとクルゼフスキという止まれるWGの存在が助けになったという感じだろう。
マディソンが優秀だったのはオフザボールだけではない。裏に抜ける動きでリシャルリソンの背後からDFラインを破ると、そのままゴール。出し手がサールというところも含めて、オンザボールのスキルとオフザボールの連携面で充実感があるゴールだった。
ボーンマスからするとソランケを使ったロングボールが思ったよりも収まらなかったのは誤算だろう。思ったよりも早く押し下げられることになった展開において一発で前進できる手段がないのは辛い。トッテナムのCB陣はこの部分はよく踏ん張ったと言えるだろう。
そんなボーンマスの生命線になっていたのはクライファート。ライン間でのボールを受けるアクションからピッチを横断することでSBのオーバーラップを促進する。トッテナムは非保持におけるライン間の管理がコンパクトではないので、クライファートはボールを受ければ簡単に反転ができる。彼を軸とした攻めからボーンマスは反撃に。トッテナムはセットプレーから多くの機会を得るが、試合全体の流れとしてはややボーンマスが引き戻した流れでハーフタイムを迎える。
後半、ペースを握ったのはボーンマス。CBの果敢なラインの押し上げからトッテナムの前進を阻害すると、保持でもトッテナムのハイプレスをいなしながら前進。ライン間で猛威をふるうクライファートの出来は相変わらずで、徐々にソランケ周りにもスペースができるようになり、ボーンマスは押し込むためのポイントとして彼を使うことができた。
流れを変えたのは60分の選手交代だろう。ペリシッチが投入されたことで左サイドが活性化。彼の降りる動きを利用したウドジェの攻撃参加とマディソンのど根性でのボールキープからなんとか押し返すと、左サイドをウドジェが切り崩して折り返しから追加点。ボーンマスのサイドの守備が完全に後手に回ったウドジェの見事な攻撃参加だった。
この2点目の後、豪雨が降り注いだこともあって試合はやや沈静化。ボーンマスは反撃に打って出れず、トッテナムは押し込みながら無理をせずという流れで、時計の針は進んでいく。
ムーアという最後の抵抗を投入したボーンマスだが、反撃の機運を高めることができず。トッテナムが逃げ切りに成功し、連勝を飾った。
ひとこと
問題解決にかかる時間の速さと2点目を手にする一手。展開を見て対応できる保持におけるプランの浸透度と柔軟性は間違いなく合格点と言えるポステコグルーのトッテナム。受けに回った時の脆さなど課題はなくはなさそうだが、少なくとも最初の道筋提示には成功した感がある。ボーンマスも食らいついていく姿勢自体は良かったが、結果がついてこなかった。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
ボーンマス 0-2 トッテナム
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
TOT:17′ マディソン, 63′ クルゼフスキ
主審:ティム・ロビンソン
第4節 バーンリー戦(A)
5バック移行が後半の一方的な展開を決定づける
立ち上がりからの積極策が目につくチーム同士の一戦。この試合でも4-4-2(4-2-3-1)をベースに互いに高い位置からプレッシングをかけていくスタートだった。
プレスを回避するという部分では両チームには差があったと言えるだろう。バーンリーのバックラインは幅を使いながらトッテナムのプレスを回避。GKのトラフォードを経由しつつ、両サイドにボールを散らすことで前進のきっかけを作る。
サイドから逆サイドへの展開も見事。長い距離を一気に詰めてボールを一発で奪いにくるトッテナムの中盤の雑なプレスを交わし、ピッチを横断することができた。バーンリーの先制点も絞るクルゼフスキを交わして、逆サイドへの展開から裏を取った場面。バーンリーはサイドの裏を執拗に狙うことで敵陣に侵入を狙っていたが、先制点の場面が一番綺麗に刺さったと言えるだろう。
しかしながら、抜け出したコレオジョにはフォスターの選択肢しかなかった場面。ファン・デ・フェンにはマイナスを消して欲しい場面でもあった。
トッテナムは自陣でのビルドアップがバタバタ。特に中盤が捕まり続けているにも関わらず、強引に縦パスをつけた結果のロストの連打はあまりいただけないものだった。
そういうわけで脱出に苦労したトッテナム。しかしながら一度脱出してしまえば、オープンスペースの攻略は容易。ソロモンは少しタッチに手間取っている感があったが、ソンへのアシストを決めて面目躍如といったところだろうか。
押し込むことができる機会はバーンリー、押し込んでからのクオリティはトッテナム。30分を過ぎると徐々に押し込む機会はトッテナムが作ることができるように。左右に振りながら押し込むと、ロメロが豪快にミドルを決めて勝ち越して前半を折り返す。
後半、バーンリーは5バックでトッテナムを迎え撃つ。しかしながら、バーンリーの生命線は高い位置でのプレスと低い位置からの繋ぎ。後ろに重くなるバーンリーの変更はこの良さを消し去ってしまうものだった。
前半のリードもあり、高い位置から捕まえにくるイケイケのトッテナム。5枚で構成を変えたバーンリーのバックラインはこのトッテナム相手にプレス回避をすることができず、かなり危ない形でのロストの仕方が増えていくように。
高い位置でのプレスも含めて、前半に見せた良さが消えてしまったバーンリー。ここから立て続けにトッテナムにゴールを許していく。3点目のマディソンのゴールは見事だが、あそこであれだけ豪快にシュートを許してしまえば、マディソンからしたら決めるのは当然という流れだろう。
そのまま一気に流れを持って行かれたバーンリー。立て続けにソンへのゴールが決まり、ハットトリックを達成する。
強度で勝負できなかった後半はバーンリーが自ら流れを失った展開に。大量ゴールでスパーズは自信をつける形で代表ウィークを迎えることとなった。
ひとこと
こういう後半の出来であればバーンリーは致し方ないなという感じ。相手に強度勝負を見せたいのあれば、そろそろ目処を立てないとずるずる行ってしまうだけになる。
試合結果
2023.9.2
プレミアリーグ 第4節
バーンリー 2-5 トッテナム
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:4′ フォスター, 90+4′ ブラウンヒル
TOT:16′ 63′ 66′ ソン, 45+2′ ロメロ, 54′ マディソン
主審:ダレン・イングランド
第5節 シェフィールド・ユナイテッド戦(H)
意外性と劇的さが同居する決勝ゴール
ポステコグルー体制になってからリーグ戦では無敗。見事なスタートダッシュを決めたトッテナム。今節の相手は今季ここまでリーグ戦で勝利がないシェフィールド・ユナイテッド。次節、アーセナルとの大一番を迎えることを踏まえるとトッテナムはきっちり連勝を伸ばして弾みをつけておきたいところだ。
ボールを持つ流れになったのは当然トッテナム。ブレイズが敷くブロック守備はCBにプレスをかけずに放置。トッテナムはブロックの外からビスマやマディソンが大きく展開したり、MF-DFのライン間にパスを差し込んだりなどを積極的に行っていた。
ライン間に入るのはサール、マディソン、ビスマ、そして両方のSB。数多くの選手が入れ替わりながら中央のスペースに侵入して後方からのボールを引き出す。バックラインからはロメロが縦パスを入れるシーンもあるなど、徐々にトッテナムはビルドアップにおける出し手と受け手を流動的にしても問題なさそうな感じが出てきている。
ただし、アタッキングサードの精度はもう一声。中央からライン間に繋いで、そこからDFラインの裏を強襲する形を作れるシーンはよかったし、時間の経過とともに右の外からクルゼフスキを中心としたクロスを入れるなどサイドも活性化はしていた。若干ソロモンの仕掛けが宙ぶらりんになっていたのは気にはなるが、概ね崩しの方向性は見えていた印象だ。だが、フィニッシュワークの精度が甘く、ボールは全てフォデリンガムの前に転がっていた。
ブレイズは立ち上がりこそバックラインから広げながらパスを繋ぐことができていたが、徐々にトランジッションからチャンスを作れるようになっていった。特に手応えがあったのは右サイド。ハーマーが前を向けばそこから自在に展開はできそうだったし、右サイドを深く抉るボーグルからマイナスの折り返しでマカティーが決定機を迎えるなど手応えはそれなりにあった。
枠内シュートでは一方的にトッテナムペースに見える前半。だが、ブレイズにも光はそれなりにある45分だったと言えるだろう。
後半、トッテナムは大外からのマイナスに折り返す形からチャンスを作りにいく。後半は右サイドに張るクルゼフスキの存在感がます立ち上がりだったが、シュートが枠をクリティカルに捉えないのは前半と同じ状況だった。
やや停滞感が出てきたところでブレイズが反撃。ロビンソンの距離が出たロングスローがハーフウェイラインに到達すると、ファーで待ち構えていたハーマーが先制点を奪い取る。
追い込まれたトッテナムは3枚替えからリズムを変えにいく。ジョンソンがオフサイドながらもネットを揺らすなど、アタッカーを増員して攻撃の圧を高めるプランはブレイズを苦しめていたと言えるだろう。
そして、その成果が出たのは後半追加タイム。セットプレーからバシャムに競り勝ったリシャルリソンが反撃の導火線の点火に成功する。
すると、劇的な勝ち越しゴールを決めたのはクルゼフスキ。インサイドに入り込んでの逆足で股を抜くという意外性溢れるシュートで勝ち点3を決定づけるゴールを手にする。
苦しみながらもドラマティックなフィニッシュで勝ち切ったトッテナム。ブレイズは最後に抗議でマクバーニーが退場するなど踏んだり蹴ったりな最終盤となった。
ひとこと
やや引き出しの少なさは気になりはしたが、結果的に劇的となった勝ち方は苦手なエミレーツ攻略に向けて弾みがついたと解釈もできる。
試合結果
2023.9.16
プレミアリーグ 第5節
トッテナム 2-1 シェフィールド・ユナイテッド
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:90+8′ リシャルリソン, 90+10′ クルゼフスキ
SHU:74′ ハーマー
主審:ピーター・バンクス
第6節 アーセナル戦(A)
主導権を握ったアーセナルとロメロを救ったソン
レビューはこちら。
実に34年ぶりの無敗同士での衝突となったノースロンドンダービー。文句なしで今節最も注目のカードといっていいだろう。
注目の一戦でまず仕掛けたのはアーセナル。高い位置からプレスでトッテナムの守備陣のプレス耐性を図る。アーセナルはウーデゴールが左からプレスをかけていく形でトッテナムのビルドアップを右サイド側に誘導。そのままハイプレスに移行し、狭いスペースでボールを囲うように守る。
アーセナルのこのハイプレスは相当に機能したといえるだろう。降りるマディソンもライスが制圧し、ジェズスは列を超える形でプレスをかけ続けてトッテナムのパスワークにミスを誘っていく。
一方のトッテナムのハイプレスはアーセナルほど機能しなかった。ラヤはフリーでボールを持てる機会が多かったため、トッテナムのプレス隊を左右に振る形でポゼッション。さらには内に絞るジンチェンコから大外のパスコースを使うことで、サイドに1on1の形を作っていく。
この土俵でクオリティを見せたのはサカ。右からのカットインでミドルを放つとこのシュートがロメロのオウンゴールを誘発。アーセナルが右の定点攻撃から先手を奪う。
プレスと右サイドからの攻撃という2本柱で主導権を握るアーセナル。しかしながら徐々にトッテナムは反撃。アーセナルのプレスが鈍ったところを見逃さず、マディソンやビスマからクルゼフスキに大きな展開を飛ばすことで前進する。クルゼフスキを追い越す選手を作る形でアーセナルのバックラインを乱すと逆サイドで折り返しをジョンソンが淡々と狙う。
1回目のサイド攻撃はラヤのファインセーブによって阻まれたが、2回目はマディソンの左サイドの突破からソンがわずかなコースを切り拓くシュートで試合を振り出しに戻す。アーセナルとしてはホワイトかライスのカバーでマディソンの侵攻を防ぎたかったところだろう。
後半、アーセナルはハヴァーツの投入でプレス強化。再び敵陣に押し込む時間を作る。すると、セットプレーからロメロのハンドでトッテナムはPKを献上。またしても失点に絡んでしまったロメロを救ったのは、再開直後にジョルジーニョに思い切ったプレスを敢行し、ソンの独走ゴールを演出したマディソンだった。
失点後、アーセナルは悪い流れが続いたが、徐々に立て直すと最後は押し込む時間が長くなるように。しかしながら、交代選手が流れの波に乗ることができず。サイドでも中央でも軸がわからず、攻めとして責任を取るプレーができる選手がいなくなってしまっていた。
トッテナムもカウンターからサリバの壁を破れる交代選手はおらず、試合はそのまま終了。白熱したノース・ロンドン・ダービーは2対2の引き分けで終わった。
ひとこと
優勢だったのはアーセナルだが、やれたこととやれないことの整理をしつつ敵地からポイントを取って帰ったトッテナムの方がファンの満足度は高いかもしれない。
試合結果
2023.9.24
プレミアリーグ 第6節
アーセナル 2-2 トッテナム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:26′ ロメロ(OG), 54′(PK) サカ
TOT:42′ 55′ ソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
第7節 リバプール戦(H)
9人をラストプレーで撃破し、無敗の旅は続く
先週、アウェイのノースロンドンダービーで引き分けたトッテナム。2週連続で無敗のチームとの試合に。ホームにリバプールを迎えて、無敗防衛チャレンジに挑む。
立ち上がりは非常に落ち着かない展開に。リバプールがトッテナムにプレスをかけに行ってのスタートになるが、リバプールのトップはガクポ。プレスにおける機動力はあまり期待はできない。そういう点でトッテナムが受けるプレスは前節のアーセナル戦よりは圧が比較的軽いもの。トッテナムは横に揺さぶりながらのビルドアップでプレスを外しを織り交ぜていた。
マディソンにボールを入れるところまではそれなりにたどり着いたトッテナムだが、そこから先のサイドの崩しは課題がある。右サイドのクルゼフスキに対しては大外を回る形のサポートができず、左のリシャルリソンは対面が間に合ってしまうと、相手を外せずに苦戦。仕上げの部分で難がある。
一方のリバプールはトランジッションからの右のサラー勝負。彼によってトッテナムのDFラインを決めつつ、相棒のショボスライと共にバックラインの手前か奥にパスを送り、トッテナムの最終ラインを面で破壊する。手前のパスがイメージがつきにくいだろうから説明すると、サラーと同じ高さで左サイドから絞ってパスを引き取りに来るディアスなどがこれに当たる。
NLDと比べると構造の制御というよりは間に合うかどうかというデュエル勝負な感じがあったこの試合。アップテンポで進む試合でババを引いたのはリバプールだむた。ジョーンズの一発退場で局面のデュエル勝負から数的不利を生み出してしまう。
これにより、トッテナムは4-4-1で組むリバプールに対して中盤が浮きやすくなるように。マディソンによりスムーズにボールが入るようになったトッテナムはサイドチェンジからさらに敵陣に攻め込むことができるように。
サイドチェンジに加えて、ハーフスペースの裏抜けを組み合わせると、リバプールのエリア内の陣形はかなり崩れるようになった。リシャルリソンのバックドアから生み出したソンの先制点はまさしく中盤のプレスの遅れと、サイドの揺さぶりのコンボから生まれたものだ。
リードされたリバプールだが、この日の救いはアタッキングサードの崩しが枚数勝負ではなく、面破壊のため数的不利の影響を受けにくいこと。ガクポのゴールの起点となったショボスライのクロスもそうだし、その直後のディアスの決定機もそう。枚数関係なくラインの揺さぶりでトッテナムのDFを面ごと壊すアプローチだった。
後半、押し込むスタートを見せたトッテナムが立て続けにシュートチャンスを迎える。しかしながらマディソンとソンのシュートは立て続けにアリソンに防がれてしまう。
リバプールはWGの守備位置を下げてバックラインが外に釣り出されるのを防ぐ修正を施す。ラインは下がるが、カウンターでのサラーの線は生きている状態が続くのは流石である。
だが、ジョッタの退場は想定外だっただろう。トッテナムは5-3となったリバプールのブロックを崩しにかかり、3ポイントを奪いにいく。ファーへのクロスを中心に攻めたトッテナムに対して、アリソンとCB陣の奮闘でなんとか凌ぐ時間が続くリバプール。
しかし、最後の最後に守備ブロックが決壊。ポロの抜け出しでラインを下げてからの早いクロスという新しいアプローチにマティプが対応しきれずにオウンゴール。
トッテナムにとっては叩き続けた扉をようやくこじ開けた大きなゴール。リバプールにとっては守り続けた1ポイントがこぼれ落ちる失点。明暗がラストプレーで分かれた無敗対決はトッテナムが生き残りに成功した。
ひとこと
9人という前提はあるがこの出来のリバプールのバックスの撤退守備を打ち破っての勝利はトッテナムにとって自信になるだろう。
試合結果
2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
トッテナム 2-1 リバプール
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:36′ ソン, 90+6′ マティプ(OG)
LIV:45+4′ ガクポ
主審:サイモン・フーパー
第8節 ルートン・タウン戦(A)
4バックで受けるチャンスタイムを活かせず
ミッドウィークに試合があったのはルートン。トッテナムは3週連続で日程面でアドバンテージがある相手と対戦することになる。
ルートンはこれまでの試合において、前から出ていって捕まえるのはいい流れを作る最低条件。しかしながら、この試合では微妙にトッテナムのバックラインの枚数と噛み合わないせいか、前から捕まえることができない。
結果的にトッテナムはウドジェに専念していたブラウンの裏を取る形で余ったリシャルリソンから決定機を連打。しかし、このいずれも決めることができず、早々の先制点を逃す。中央を割ったポロもまたゴールを決め切ることができず、トッテナムにとっては嫌な流れである。
とはいえ、ルートンも自陣からのバックパスミスから不要なピンチを招くなど苦しい展開。良かったことをあえて挙げるとするならば、カミンスキーがやたらとセーブを繰り返すことでリズムに乗れたことくらいだろう。
20分になるとルートンはプレスの連動が噛み合い、中盤からのプレスでカウンターを打てるように。CKを得ることができれば、モリスとマディソンのミスマッチが使えそうなので、ルートンはCKさえ取れれば得点の機会があるという感じだった。事実、前半終了間際のネットを揺らしたシーンは可能性があることを具体的に立証したと言えるだろう。おそらくはアデバヨのファウルでゴールは認められなかった。
時間は前後するが、30分からトッテナムはバックラインの噛み合わせを回避しながら空いている選手から運ぶことを徹底。これにより、再びルートンのプレスは連動しなくなり、トッテナムは押し込めるように。
セットプレーさえ回避できれば怖いシーンもなく、再びワンサイド攻勢のリズムを掴んだトッテナム。再び試合を支配するかと思いきや、前半終了間際にシミュレーションでビスマが退場。まさかの誤算でハーフタイムを迎えることになった。
後半、トッテナムは4-3-2と4-4-1のハーフ&ハーフのような形で組んでいく。ルートンは右サイドからトッテナムの4バックを引き寄せつつ、ファーサイドに余る選手を生かしてチャンスを作っていく。アデバヨが逃したチャンスは前半にリシャルリソンが逃したそれと全く同じものだった。
そうした中でセットプレーから先制したトッテナム。CKからマディソンがニアで揺さぶり、ファン・デ・フェンの技ありゴールをエスコートする。
先行したトッテナムだが、特に組み方を変えるつもりはない様子。左のファーサイドでアタッカーが浮くという状況は変わらず、ダウディーがこちらのサイドからシュートやクロスを上げていくことでチャンスメイク。セットプレーも含めて彼の左足にかかる期待は大きかった。
トッテナムは75分の交代で5バックにシフト。これでサイドでできたギャップができなくなる。トッテナムがバックラインのメンバーを固めていくのにつれて、前のメンバーを増やしていくが、どうも前のメンバーの連携がうまくいかず、闇雲にロングボールを放り込んではロストする。
クルゼフスキを軸に右サイドからの前進にフォーカスしていたトッテナムの方が皮肉なところ。終盤に投入されたバークリーはこの辺りの交通整理を任せられたのだろうが、期待からは程遠い出来だった。
10人で苦しみながら守り切ったトッテナム。45分の数的不利を乗り越えて、10月の代表ウィークに無敗でたどり着くことに成功した。
ひとこと
ルートンはトッテナムが4バックでチャンスをくれた75分までの間に追いつくしか手はなかったように思う。そこから先はダイレクトプレーの精度を色濃く感じてしまう出来で、数的優位の強みを感じる場面はほぼなかった。
試合結果
2023.10.7
プレミアリーグ 第8節
ルートン・タウン 0-1 トッテナム
ケニルワース・ロード
【得点者】
TOT:52′ ファン・デ・フェン
主審:ジョン・ブルックス
第9節 フラム戦(H)
悪夢を2回見たバッシー
ともに白を基調する両チームによるロンドンダービー。ボールを持つターンになったのはホームのトッテナム。非保持に回ったフラムはトップの守備の基準をCHに置くなどある程度相手にボールを持たせる選択をした印象はある。
立ち上がりのトッテナムで目立っていた保持のユニットは右サイド。止まることができるクルゼフスキがタメを作り、その隙にオーバーラップでポロが強襲を仕掛けていく形は有効。あわやPKと思しきシーンを作るなど、序盤から効いていた形である。
逆に言えば、フラムはこの同サイドの縦関係を生かした形にトッテナムの保持のスキームを集約した感がある。2トップの脇から同サイドを縦に進んでいく形は許すが、インサイドにパスを差し込ませることは回避。この辺りはインサイドを固めたフラムの守備のプランが効いている部分だろう。
トッテナムは保持でWGが時間を作ることができればチャンスができる状況。クルゼフスキがいる右サイドの方が有効打を打つことができていたのはリシャルリソンに比べてこの展開で求められるスキルがマッチしていたことが大きいだろう。
フラムは堅い守備からセットプレーでチャンスを迎える。だが、パリーニャのヘッドはヴィカーリオがセーブ。同じノースロンドンのチームを打ち砕いた一撃をシャットアウトし流れを渡さない。
危うい場面を凌いだトッテナムはプレッシングから先制点をゲット。ハイプレスからバッシーのパスミスを誘発し、ソンが仕留めて前半のうちに試合を動かす。以降もボール保持からサイドを抉りチャンスを作り出すトッテナムが優勢な展開が続く。
後半も左サイドを深く侵入するトッテナムからスタート。ウドジェのオーバーラップが徐々に生きてきたように少しずつリシャルリソンはタメを作る役割に慣れてきた感がある。
トッテナムの2トップはリードを得たこともあり、引く時間を作りながらスイッチを入れつつメリハリをつけたプレスを展開する。この辺りの手綱の引き締め方は見事。緩急をつけたプレスの餌食になったのはまたしてもバッシー。インサイドへの差し込みが失点に繋がってしまったのはこの日2回目である。
前プレスを強めて反撃に出ていきたいフラムだが、保持に回ったトッテナムはプレス回避を落ち着いて実施。後方のパスワーク、そしてトップ下のマディソンでポゼッションをあっさりと落ち着かせてみせた。
トッテナムが前線のメンバーを3枚入れ替えて控え組が出てきた後は流石に同じようにはいかず、フラムに攻め込まれるような場面は増えた。しかし、そこは織り込み済みだろう。勝ちと彼らのプレータイム確保を両立できればその時点で万々歳だろう。
トッテナムは今節もしたたかに勝ち点3を確保。勝ち点で2位以下に差をつける単独首位に立つこととなった。
ひとこと
ヴィカーリオがパリーニャのシュートを止めた時点でフラムの勝ち筋はだいぶ無くなった感があった。それくらいしか突破口がなかった感じ。
試合結果
2023.10.23
プレミアリーグ 第9節
トッテナム 2-0 フラム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:36′ ソン, 54′ マディソン
主審:アンソニー・テイラー
第10節 クリスタル・パレス戦(A)
前節と同じ展開を強敵相手に展開
前節、2位に勝ち点差をつけての首位に立ったトッテナム。今節はセルハーストパークに乗り込んでパレスとのフライデーナイトの一戦に挑むことになる。ボールを持つことになったのはもちろんトッテナム。パレスはCHを守備基準としてトッテナムのバックラインにはプレッシャーをかけない。
トッテナムからすれば前節のフラム戦の続きのような試合だったと言えるだろう。前節以上にソリッドな4-4-2にどのようなアプローチしていくかが重要な展開になる。トッテナムは2-3-5と3-2-5を行き来しながらパレスの2トップの脇に起点を作っていくことを画策していた。
フラム戦同様に片側のサイドから進撃することはできていたトッテナムだが、パレスの堅い守備に苦戦。高い位置で左右に顔をだすマディソンはなんとかしようとする気概は感じていたが、特にパレスのCHの戻りが効いており、普段マディソンが作り出す中央の重要なエリアを封鎖することに成功していたのが大きかった。
前がかりな攻撃は当然カウンターの処理も大事になってくる。ヴィカーリオの仕事が前節よりも増えていたことを踏まえるとパレスは攻守にフラムよりも強敵だったということができるだろう。エグさを見せていたファン・デ・フェンの裏のケアがなければ、パレスには早い段階で破られてもおかしくはなかった。
トッテナムは同サイドを奥に進む上で左サイドのテコ入れを実施。デイビス→エメルソンの交代で活性化を図っていく。押し込んでのサイド攻撃を続けるトッテナムは53分に先制。右サイドでハーフスペースアタックが成功し、マディソンの折り返しがオウンゴールを誘発。枠内シュート0で先制点を手にする。速いボールだったことは確かだが、ゴール方向に向かうボールでなかっただけにウォードには後悔が残ったことだろう。
パレスはラク=サキを投入し攻撃にアクセントを加えていく。ここが勝負の分かれ目と言ったところ。しかし、次のゴールを決めたのはトッテナム。サールの一発でのサイドチェンジからマディソンとジョンソンが左サイドを攻略。抜け出しから最後に時間をもらったソンがゴールをゲットする。アンデルセンを外に釣り出されて、インサイドに折り返されたのはパレスとしては痛恨だった。
その後はポゼッションで平定にかかるトッテナム。これも前節の再現である。しかし、パレスは80分過ぎから敵陣に入り込んでいく機会を確保する。セットプレーと左右のクロスからゴールに向かっていく。すると後半追加タイム。右サイドからポロが届かないところに狙ったクロスをアイェウが仕留めて1点差に。
終盤は冷や汗をかいたトッテナムだが、なんとか逃げ切りに成功。前節と同じ展開を前節よりも手強い相手にやり切った90分となった。
ひとこと
パレスにやれるのであれば引くところから入る相手はそれなりにやれるっていうことだろう。
試合結果
2023.10.27
プレミアリーグ 第10節
クリスタル・パレス 1-2 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:90+4′ アイェウ
TOT:53′ ウォード(OG), 66′ ソン
主審:アンディ・マドレー
第11節 チェルシー戦(H)
「9人じゃ試合は勝てない」という原則が最上位
立ち上がり特有のとりあえず強くあたってから考えるシーンを抜けると、ボールを保持したのはトッテナム。チェルシーは自陣に引いて構える気は毛頭ないので、CBにボールを持たせつつ2列目がプレスを仕掛ける機会を伺う形でスタートする。
クルゼフスキのゴールはシュートシーンだけ見ればチェルシーからすると不運なもので片付けたい気がするが、プレッシングのところまで遡ってしまうと話は別。プレスのスイッチを入れたパルマーにジャクソンは連動しきれず、カイセドのサイドへのフォローが間に合っていない。スピードに乗せた状態でクルゼフスキにチャンスを与えてしまったのは、彼らのプレスがトッテナムのビルドアップに上回られてしまったからであり、そこには運の要素は少ないという点は指摘しておきたい。
トッテナムは先制点以降もこのバックラインを軸としたスウィングでチェルシーのプレスを振り回していた。マディソンの展開力は今更触れるまでもないが、逆サイドからのボールの引き取り手としてウドジェやサールの貢献度の高さはさすが。そして仕掛けるタイミングでの同じ絵の加速を作れているあたりはチームとしての完成度の高さだろう。
トッテナム優位の風向きが変わったのはウドジェの警告あたりからだろうか。徐々にチェルシーのロングカウンターがトッテナムのハイラインを侵食するようになる。さらにはエンソのミドルなど(リプレイが被ってるせいでおそらくにはなるが)ハイプレスからボールを奪い取るシーンも少しずつ出てくるように。
そして、カイセドのミドルのシーンも同じ文脈。ネットを揺らしたこのシーンは流れの中でロメロの退場を生み出しており、これ以降盤面は大きく変わることになるが、チェルシーの同点ゴールを生み出したのもまた必然性はあったことは付記しておきたい。
トッテナムは4-3-2でのハイライン継続を選択。マディソン、ファン・デ・フェンという攻守の要を負傷で失ってなお、この方向性は変わらず。チェルシーは無限に左サイドからスターリングが抜け出しを続けるが、ダイアーとエメルソンの急造CBが裏抜けに食らいついていく奮闘が光り、試合は1-1でハーフタイムを迎える。
前半はいろんなことがありすぎたのでトッテナムは単に盤面を整理する時間がなかった可能性もあったが、後半の頭からもポステコグルーは4-3-2のハイラインを選択したことで、彼らの哲学がそこにあるのだなということがわかる。もちろん、CBがベンチにいないのならば、その道を行くことになる納得感もそれなりにある感じはする。
しかし、カウンター対応で3対2の局面からウドジェが2枚目の警告を受けてトッテナムは9人に。スターリングの対応がまごついたものになったが、逆にそれが退場を誘発するのだから、サッカーは難しい。
9人でも4-3-1でハイラインを継続するトッテナム。ホルダーにプレスがかからないようになると、裏抜けを全部なんとかするのは難しいという点で4-3-2より難易度はグッと上がる。
だが、チェルシーはスターリングが何もかも1人でやろうとしたり、ククレジャのように抜け出した後の選択がイマイチだったり、ジャクソンがそもそも抜け出さなかったり、ムドリクが普通に人数をかけたサイドの突破を狙ったりなど難がかなり見えた。トッテナムは強気のプレスにヴィカーリオのリベロ仕事を掛け合わせることで流れを引き戻す。
しかしながら、9人でホルダーにプレスがかからないハイラインを続けてしまえば、破られるシーンが出るのは仕方ないこと。ジャクソンがスターリングの抜け出しを仕留めて本当にようやくリードを奪う。
だが、トッテナムはセットプレーを中心に反撃。交代で入ったウゴチュクがプレスで飲みこまれたり、ムドリクやグストが軽率なファウルを犯したりなど、チェルシーは足元を掬われてもおかしくない試合内容ではあった。
しかしながら、「9人でサッカーを勝つのは難しい」という原則は強固。更なるチャンスを迎えたジャクソンがハットトリックを決めて、最後はチェルシーが大勝。プレミアリーグから無敗のチームは消え去ることとなった。
ひとこと
魔の11節を締めくくるに相応しい内容だったと思う。語りたい角度があまりに多すぎる試合だった。9人じゃ試合は勝てないし、世の中にはいろんなハットトリックがある。試合は見ないとダメだ。
試合結果
2023.11.6
プレミアリーグ 第11節
トッテナム 1-4 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:6′ クルゼフスキ
CHE:35′(PK) パルマー, 75′ 90+4′ 90+7′ ジャクソン
主審:マイケル・オリバー
第12節 ウォルバーハンプトン戦(A)
精度に欠ける重たい試合を動かすゲームチェンジャー
ファン・デ・フェン、マディソンの年内離脱が決まり、ウドジェとロメロは出場停止。前節のロンドンダービーは4失点での今季初黒星ということよりも、4人の主力が戦列から離れることが決まったことの方が衝撃が大きかった。今季のスタメン基準で見ればDFラインは寂しさはあるが、この試合単体で見ればベン・デイビスの復帰とポロのフィットネステストの通過とよくメンバーが揃ったという方が先に来てしまいそうなスタメンである。
ここから大事!という一戦において、先制点が3分にもたらされたことは幸運だった。クルゼフスキのタメ、追い越すポロが作り出す相手のバックラインのギャップ、そこにつけ込むジョンソンのスペースへのランという要素は離脱によって解体されなかった今季のスパーズのアタッキングサード攻略のエッセンスである。
ウルブスは先制されても強気にプレスに出ていくことはせず、FW-MF間をコンパクトにすることでトッテナムの中盤をスムーズに前進を許さないことを優先。それならばと外循環で勝負するトッテナムだが、このフェーズでは流石に主力不在感が強い。スペースを配る&サイドにサポートに出るの両面でマディソンの不在は色濃く見えることとなる。左サイドのエメルソンとサールは細かくレーン交換を行っていたが、頑張っていた以上の効果が出ていたかは怪しい。
トッテナムは前からのプレスの意識は弱くはなかったが、さすがにいつもほどの強気のスタンスは見られることはなかった。 そのため、ウルブスの保持は十分に機会を与えられることに。ウルブスの保持は前節と同じく4-4-2から右のSBのセメドがWB化することで変形する。
ただ、精度はイマイチ。折り返しからセカンドボールが拾えれば波状攻撃ができるかもな・・・くらいの攻撃精度であり、この部分ではトッテナムに上回れた感がある。トランジッションからエメルソンの背後を狙うことができた前半の終盤はトッテナムの受け方がまずいシーンはあったが、ウルブスの精度の問題でチャンスの構築までには至らず。ただし、トッテナムもまた先制点以降はアタッキングサードの攻略に難があり、思ったような攻め方ができる状態ではなかった。
迎えた後半は互いにハイプレスのカラーを強める立ち上がり。サイドから裏を取る形が両チームの攻撃の中で増えていき、試合は少しずつオープンな展開になっていた。
しかしながら、アタッキングサードの精度という両チームの共通課題は後半も健在。ビハインドのウルブスは左のアイト=ヌーリからボックス内に迫る動きを増やしていくが、放送席の2人のぼやきが止まらないくらいにはパスが合わない場面が続く。
交代選手が入ってもなおなかなか上積みが見えない展開の中で、試合を変えてみたのは80分過ぎに投入されたサラビアだった。2列目からのボックス内の飛び出しで91分に同点ゴールを生み出す。トッテナムはウルブスの左サイド側に流れたクーニャにダイアーが中途半端に釣り出されたところが傷に。このスペースにサラビアの侵入を許してしまった。
そのサラビアは決勝点ではアシスト役に。レミナがもぎ取ったファウルからドイルが素早くリスタートし、サラビアのラストパスに飛び込んだのもまたしてもレミナ。後半追加タイムに奪った2得点で一気にモリニューのボルテージを上げたウルブス。試合の大半をリードで過ごしたトッテナムに勝ち点1つ持ち帰らせない結末を手繰り寄せた。
ひとこと
試合自体がどちらもチャンスができない非常に重い展開だったので、カライジッチ投入による2FW化とか、サラビアというジョーカーの投入でウルブスがうまく試合を動かしたなという感じ。トッテナム側はポステコグルーが今季どのように歩んできたかを考えれば、このベンチメンバーで試合を動かせないのは仕方ないという感想が先に来る。
試合結果
2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
ウォルバーハンプトン 2-1 トッテナム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:90+1′ サラビア, 90+7′ レミナ
TOT:3′ ジョンソン
主審:ティム・ロビンソン
第13節 アストンビラ戦(H)
5-3-2はロングカウンター専用機ではない
昨日がシティ×リバプールならば本日はトッテナム×アストンビラ。第13節はトップ5の直接対決が多く組まれる豪華な説となった。
スタメンを見た時に苦しいメンバーになっているのはトッテナムの方。しかしながら、試合の主導権を握ったのもトッテナム。ウドジェの抜け出しからの決定機を皮切りにプレスとポゼッションの両面から決定機を量産。ビラのDFをボックス内で翻弄する。
オフザボールの動きの質と量がベストメンバーと遜色がなかったのはさすがと言える一方で、ラストパスの質などのディティールの技術に関してはマディソンの不在を感じるというのがトッテナムの正直なところだろう。それにしてもどれか1つは決めてもいいだろうというくらいには多くの決定機があった。22分のロ・チェルソのゴールはセットプレーの二次攻撃であり、数多く作ったチャンスとはまた文脈が違うものである。
アストンビラはカマラがバックラインに入りながらボックス内でピンチを数多く救っていたのが印象的。リトリートフェーズに入るとあらかじめ彼がDFラインに組み込まれる5バックにシフトすることでボックス内に加勢しやすくなっていた。
アストンビラにとって痛恨だったのはビルドアップで歯が立たなかったことだろう。アストンビラのビルドアップは引き込んでからの加速は得意であるが、トッテナムの飲み込むようなハイプレスへの対応はバタバタ。トッテナムはバックラインにCB不在という懸念がある状況からか、中盤が列を上げてでのプレスで意地でも前で止めてやるという意識でこの試合に臨んでいた。
アストンビラはこの中盤の山を越えることができれば決定機になる。失点直後のオフサイドの決定機に代表されるようにマッギンでポロを引きつけつつ、外を回るディーニュという形は定番。パターン化した前進から一気にエリアに迫っていく。ワトキンス×トッテナムのCB陣ならば、とりあえず放り込みさえすれば可能性が出てくるのも大きい。
トッテナムのプレスが弱まった30分以降は展開がフラットに。アストンビラは前進の機会を均等にすることができた。左サイドを中心に攻めるビラはカマラの2枚目の警告を見逃される幸運にも恵まれた。そして、前半終了間際にこちらもセットプレーから同点。ドウグラス・ルイスの長いレンジのキックをトーレスが合わせて、タイスコアに引き戻したところで試合はハーフタイムを迎える。
後半、ビラは5-3-2にシフト。カマラを最終ラインに定常的に据えて、ドウグラス・ルイスをアンカーに置くこととした。しかしながら、ルイスは動き回りながら持ち場を空けるシーンが多く、トッテナムの保持に対してズレを作ることが非常に多かった。ローライン×ロングカウンターベースの変更であれば、悪手になりかねない交代だった。
ロングカウンターの機会も多かったビラだったが、保持に回ると4バックに戻り定点攻撃を行うこともしばしば。リトリートでスペースを消すこと一辺倒ではなかった。そのため、トッテナムも左サイドを中心にファストブレイクのチャンスが。しかし、決定機はことごとくマルティネスに潰されてしまう。ヴィカーリオも含めてこの試合のGKのパフォーマンスはえぐかった。
保持できっちりボールを動かす機会を得ていたアストンビラは後半に入ったティーレマンスのアシストを受けたワトキンスが勝ち越しゴールをゲット。わずかなシュートの隙を逃さずにゴールを決めたワトキンスはまさしく仕事人という感じだった。
その後は試合はオープン合戦。ビハインドということもあり、一度押し込むと攻撃に迫力が満点。マルティネスやポストに助けられるシーンが徐々に増えてくるアストンビラ。しかし、トッテナムも中盤を越される機会が多く、決定的なチャンスを与えることもしばしばだった。
しかしながら、マルティネスが後半はゴールに鍵をかけることに成功。決定機の多い試合に見事に抵抗して見せた。
ひとこと
前半リードで折り返ししかトッテナムの勝つ道はなかった感じがある。
試合結果
2023.11.26
プレミアリーグ 第13節
トッテナム 1-2 アストンビラ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:22‘ ロ・チェルソ
AVL:45+7‘ トーレス , 61′ ワトキンス
主審:ロベルト・ジョーンズ
第14節 マンチェスター・シティ戦(A)
いかにもこのカード
どう考えてもトッテナムは苦しいメンバー構成であるが、それでも先行するというのがいかにも相性的にこのカードという感じ。天敵のトッテナムにまたしてもシティはあっさりと先制点を許す。セットプレーからのロングカウンターでソンが仕留めるという流れも含めていかにもシティ×トッテナムというスタートとなった。ゴールに至るプロセスとしてブライアン・ヒルのキープが光ったゴールであった。
しかし、セットプレーからすぐにシティは反撃。ソンのオウンゴールでシティはすぐにスコアを振り出しに戻す。
基本的にはシティがボール保持する局面で進む流れとなった。トッテナムのこのカードの王道パターンとしては先制点のようにボックス内に構えてカウンターということになるだろうが、デイビスとエメルソンというSBが本職の両名ではなかなかそうした選択肢を取るのは難しい。
というわけでハイプレスに出ていくが、シティ相手ではこれも簡単に捕まえることができない。空いたミドルゾーンからシティはスピーディーにボールを運ぶことができるように。今のシティにとって理想と言えるスピードに乗った状態でアタッキングサードに入り込む状況をトッテナムは簡単に提供してしまっていた。
勢いに乗るシティはプレスからも大チャンス。エメルソンのミスから決定的な場面を迎えるが、ハーランドがこれを仕留めきれずに決定機を逃してしまう。
こうした場面も含めて、シティは理想的な攻撃の機会を得ている割にはクリティカルなチャンスを作れていない印象だった。単純なパスの精度の部分もそうだし、守備に回ればバックラインの重さが目立つ。苦しいやりくりのトッテナム相手に精度不足で制圧できない感じを見ると今はあまり調子がよくないフェーズなのかもしれない。
それでもドク→アルバレス→フォーデンと繋いで勝ち越しゴールをゲット。トッテナムはCBのスライドが間に合わず、エメルソンの寄せが甘くなってしまったところからゴールを決める。
リードで迎えた後半、シティはハイプレスで仕留めにいく。トッテナムは急造バックラインのバタつきが目立ち、なかなか自陣から出られない時間が続くが、ここでも最後のフェーズにおける精度不足に悩まされることになる。
すると徐々にトッテナムが反撃。60分にはオフサイドながらウドジェが前線に飛び出すシーンができるなど、らしい攻撃を見せるように。そして、トッテナムは同点ゴールをゲット。69分にアルバレスのパスをクリアしたデイビスのボールが素晴らしい縦パスに。これを仕留めたのはロ・チェルソ。ロドリを引っ張るソンのフリーランによって空いたスペースでミドルシュートを放ってタイスコアに戻す。
このゴールをきっかけに畳み掛けていくトッテナム。セットプレーやミドルなどで一気に攻勢に出る。劣勢になったシティはリコ・ルイスの投入から右サイドを軸にプレッシングを強化する。この一手がシティの3点目に繋がる。ビスマのロストから一気にショートカウンターで仕留める。決めたのはグリーリッシュである。
しかしながら、このカードらしい展開は終わらない。左サイドのジョンソンからのクロスをヘディングでクルゼフスキが叩き込み、再び試合は振り出しに。クルゼフスキのヘディングでのゴールはそもそも珍しいのに空中戦に強いアケに競り勝つというのはもはやよくわからないレベル。最初から最後までいかにもこのカードという展開で試合は流れていった印象だ。
ひとこと
攻守にシティは少しシャープさがかけていたのが気がかり。次節を越えれば少し楽な相手が続くので、なんとか踏ん張りたいところだが。
試合結果
2023.12.3
プレミアリーグ 第14節
マンチェスター・シティ 3-3 トッテナム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:9‘ ソン(OG), 31’ フォーデン, 81‘ グリーリッシュ
TOT:6’ ソン, 69‘ ロ・チェルソ, 90’ クルゼフスキ
主審:サイモン・フーパー
第15節 ウェストハム戦(H)
悪運に引きずり込まれる逆転劇
マディソンとファン・デ・フェンの離脱以降、勝ち星から遠ざかっているトッテナム。こちらもややリーグ戦での戦いが停滞気味のウェストハムとの一戦である。
立ち上がりはトッテナムがボールを持つ流れ。ウェストハムはトップのクドゥスが中盤にステイする形でボールを持たれることを許容する。
ウドジェが絞る2-3型をベースに前進を狙うトッテナム。高い位置を取るウェストハムのWGの背後にボールをつけて大外からの攻撃構築を行っていく。
ウェストハムはWGの裏を取られることを嫌がる形でラインを下げて対応。ラインを下げたことで自陣深い位置に構えることとなり、カウンターの威力が足りなくなる現象が起きていた。
というわけでトッテナムがウェストハムのブロックをひたすら崩すチャレンジが試合の主な局面となる。トッテナムが偉かったのは必ずサイドの崩しにおいてラインブレイクを絡めることでウェストハムのPA内のラインを揺さぶっていたこと。中央から正面突破しようとするとウェストハムのバックラインは堅いため、こうしたアプローチは必須といえるだろう。
苦しい対応が続くウェストハムはセットプレーから失点。一方的に押し込むトッテナムがロメロのゴールから先行する。
先行されたことでウェストハムは列を上げたプレスの対応を増やしていく。WGは元の高さに戻り、中盤も呼応するように高い位置にコンパクトな陣形を敷くようになった。
この形で少しずつチャンスを作るようになったウェストハム。右に流れるクドゥスをアクセントとして、トッテナム陣内でのプレータイムを伸ばしていく。その間もトッテナムが迎えた決定的なチャンスをズマが防ぐなど、ウェストハムは粘りを見せていた。
そのような粘りが実を結んだのは後半のこと。カウンターから同点ゴールを決めたのはウェストハム。運良く転がったボールをボーウェンが仕留めて同点に追いつく。もちろん、運のせいにすることもできるが、カウンターで止めきれずに陣形が整わないままズルズル下がってしまい、クドゥスにCHがまともにアプローチできなかったのはトッテナムとしては反省すべき案件だろう。
さらにはウドジェのパスミスからウォード=プラウズに逆転ゴールを許してしまったトッテナム。得点を取るほうでは後半早々のリシャルリソンが決定機を沈められずに沈黙が続く。
トッテナムが押し込んだ終了間際にはウェストハムにハンドの疑惑があったが、これにVARは介入せず。悪くない入りから地道に盛り返されたトッテナム。連続未勝利に歯止めをかけることができなかった。
ひとこと
1失点目はイケイケの攻撃における構造的な弱さが、2失点目は悪い流れ特有の悪運がついてしまったのような逆転劇だった。
試合結果
2023.12.7
プレミアリーグ 第15節
トッテナム 1-2 ウェストハム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:11‘ ロメロ
WHU:52‘ ボーウェン, 74’ ウォード=プラウズ
主審:マイケル・サリスベリー
第16節 ニューカッスル戦(H)
クロスのチューニングを合わせたトッテナムが6試合ぶりの勝利
マディソンとファン・デ・フェンの負傷以降、成績が振るわないトッテナム。5試合連続勝ちがないリーグ戦で対峙するのはこちらも前節グディソン・パークで終盤に崩れてしまったニューカッスルである。
立ち上がりからボールを持つのはホームのトッテナム。インサイド、特にアンカー脇を狙いながら縦パスを引き出していく。特に捕まえづらいのはトップ下に入ったクルゼフスキ。相手の手が届かないところに入り込むだけでなくWGのソンに合わせた前線への抜け出しも含めてトッテナムの攻撃に流動性を持たせる。
トッテナムはサイドから裏を取るアクションでラインを押し下げることに成功するが、なかなかクロスが合わない。抜け出すのにトップスピードに乗りすぎてしまい、クロスを合わせることの難易度が上がってしまっている印象を持った。
一方のニューカッスルは立ち上がりにゴードンが抜け出す形からチャンスを作ったが、これをデイビスがカットしてトッテナムは事なきを得る。ロングボール主体のカウンターでの勝負を仕掛ける形となったニューカッスルだが、トッテナムに比べるとどうしても攻める機会が足りていない。
敵陣でのプレーが多いトッテナムは左サイドのソンの仕掛けから先制。やや静的にクロスを入れるタイミングを図ることができれば、きっちりと合わせることを証明したトッテナム。ソンのクロスに合わせたウドジェが先制点をしとめる。
さらに、ソンは左サイドでの仕掛けからもう1点を上乗せ。前半を2-0で折り返す。
後半もイケイケで攻めるトッテナムだったが、ニューカッスルは後半幅を使いながらじっくりとポゼッションで押し込んでいく。サイドでの関係性を使いながらフリーマンを作りクロスを上げるという一連はあまり前半のニューカッスルには見られなかった部分である。
サイドからのクロスはオープンになることもあり、得点のチャンスもあったニューカッスル。右サイドだったがボックス内の競り合いを制することができず。なかなかシュートチャンスを手にすることができない。さらには速い展開になると勤続疲労からか精度が足りなくなるというおまけつき。なんとか制御しながらの展開になりつつあったが、次のゴールを決めたのはトッテナム。ポロのキックに目測を誤ったドゥブラーフカの飛び出しにリシャルリソンがゴールを決める。
このゴールで試合は一気にワンサイドに。高い位置から阻害するプレスから浴びせかけるようにチャンスを作り続ける。あとは枠内に飛ばすだけ!というシュートをトッテナムは重ね続ける。
4点目はPK。飛び出しが間に合わなかったドゥブラーフカがソンを倒してPKを献上。ダイレクトに2失点に絡んでしまったのはハウとしては頭が痛いところだろう。このPKを仕留めてトッテナムは大量得点を奪い取る。
ニューカッスルは最後の最後でジョエリントンが意地の一発を仕留めるが反撃はここまで。速いテンポでニューカッスルを置き去りしたトッテナムがリーグ戦6試合ぶりの勝利を手にした。
ひとこと
クルゼフスキのトップ下の目処が立ちつつあるのはポステコグルーにとっては大きい。
試合結果
2023.12.10
プレミアリーグ 第16節
トッテナム 4-1 ニューカッスル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:26′ ウドジェ, 38′ 60′ リシャルリソン, 85′(PK) ソン
NEW:90+1′ ジョエリントン
主審:クリス・カバナフ
第17節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)
連勝も次節に不安はある
前節のニューカッスル戦でようやく未勝利を止めたトッテナム。上位勢に対する反撃を回避するためにもここは勢いよく連勝を飾りたいところである。
ボールを持つ側となったトッテナムはサイドを変えながらのポゼッションでフォレストの3-2ブロックの同サイドへの封殺という守備プランを壊して前進を狙っていく。左に人を集めて、解放された右にボールをつなぐというのがこの日のトッテナムのポゼッションの動線。右サイドではポロが引き取り手となり、左サイドから右サイドへの先導役を務めていた。
フォレストからすれば3-2の誘導を外されて押し下げられる状況が続く前半。しかしながらトッテナムは右サイドから攻撃の出口がなくて苦戦。外での崩しのリソースはこの日のトッテナムには足りていない印象を受けた。
フォレストは押し下げられてからはギブス=ホワイトとエランガのロングカウンターから対抗。敵陣でのプレーを少しでも増やして抵抗を見せる。トランジッションでのゴールのルートが見えない盤面ではゆっくりとボールを持つケースもちらほら。30分を境にポゼッションの機会が増えていく。
トッテナムの課題である右サイドの閉塞感は意外な形で解決。ジョンソンの負傷により、右サイドにクルゼフスキが移ったことでトッテナムは右サイドでの攻撃はそれなりに解決策が見えるように。先制点となるクルゼフスキ→リシャルリソンのホットラインはいかにもクルゼフスキが右サイドに回った意義が集約された場面だった。
後半は保持でもゆったりとした試合の進行。前半よりはマイルドでどちらが優勢という流れは見えにくかったように思う。どちらかといえば行ける感があったのはフォレストの方だろう。押し込む流れから左右のクロスまで運ぶフェーズは安定しており、前半よりはPA内に人数をかけた攻撃もできていた。
しかしながら行けると思った矢先にトッテナムが追加点をゲット。プレスからターナーのミスを誘い、ショートカウンターを発動させるとその流れのままゴールを奪いきる。ターナーからしたら悔やんでも悔やみきれないミスだろう。
一方のトッテナムも完勝ムードに水を差すビスマの退場は大事。おそらくは今季2回目の一発退場に4試合の出場停止が下される見込み。この試合では特に問題にはならなかったが、累積警告での出場停止となったウドジェに加えて次節は苦しい人繰りに逆戻りする一戦になるだろう。フライデーナイトを制したトッテナムだが、頭の痛い結末となった。
ひとこと
フォレストは早くアウォニイが戻ってくれないとどうにもならない感がある。
試合結果
2023.12.15
プレミアリーグ 第17節
ノッティンガム・フォレスト 0-2 トッテナム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
TOT:45+2′ リシャルリソン, 65′ クルゼフスキ
主審:ジャレット・ジレット
第18節 エバートン戦(H)
最後の砦は膝
未勝利のトンネルを抜け出したトッテナムは連勝で巻き返しの気流に乗っている最中。対するはこちらも10ポイント減でお尻に火がついてからはかなり勢いがついているエバートンである。
立ち上がりはロングボールをベースにハイプレスを仕掛けてくるエバートンに対して、バックラインと中盤にサスペンションが出た影響で入れ替わりが発生したトッテナムがバタバタするスタートだった。しかしながら、徐々にポゼッションからのプレス回避でエバートンの押し下げに成功すると9分には先制点をゲット。右サイドを押し下げるサール→ジョンソンのパスから折り返しをリシャルリソンが仕留める。
この、ラインブレイクからフィニッシュまでの一連のつながりは非常にトッテナムらしい攻撃の形。直後のジョンソンのチャンスも加速からフィニッシュまでの間合いが先制点を似たものだった。
勢いに乗るトッテナムはセットプレーから追加点。右サイドのショートコーナーからワンツーで抜け出したジョンソンが今度はソンに折り返し。これをソンが仕留めて早い段階で2点のリードを奪う。
その後もしばらくはモノトーンな試合の流れ。エバートンは一度カウンターからスピードアップできそうな機会があったが、これを活かすことができず展開は変わらないままだ。
潮目が変わったのはその直後。35分くらいからだろうか。トッテナムのバックラインから中盤に対してエバートンのプレスがハマるようになる。それでも愚直に繋ぐトッテナムに対して、エバートンのハイプレスは面白いようにハマりシュート機会を量産。特に負傷でゲイェに代わって入ったアンドレ・ゴメスの柔らかさはいいアクセントになっていた。ヴィカーリオの落ち着きによりトッテナムは無失点で前半を凌いだが、少し前半の終盤はバタバタした内容となった。
後半もサイドの裏から攻撃を仕掛けていく両チーム。エバートンは後半の立ち上がりに遂にプレスで仕留めたかと思われたがこれは直前のボール奪取のところでアンドレ・ゴメスのファウルを取られて取り消し。トッテナムは不用意なビルドアップでのプレーのツケを払わずに済んだ。
試合はオープンで両チームの撃ち合いがだらっと続く展開。先のゴール取り消し以降はトッテナムの方が得点に近いながらが続いていると言える流れだった。
しかしながら前半と同じくトッテナムの左サイドからエバートンにハイプレスのきっかけを掴まれると、再びエバートンは押し返す。キャルバート=ルーウィンとベトの2人を並べた前線に躊躇なく放り込むと、82分にアンドレ・ゴメスがスーパーシュートを決めて1点差に迫る。
最後は左サイドからダンジュマが攻めの起点となり、ヴィカーリオを脅かし続けるが、膝でボールをかき出し劇的な同点ゴールはギリギリで回避。終盤は攻めの圧に苦しんだトッテナムだが序盤の2点のリードを活かしてなんとか逃げ切りに成功した。
ひとこと
立ち上がりに2点とっておいてよかったねだし、2点とっても全然試合をコントロールする気がないのはいかにもポステコグルー。
試合結果
2023.12.23
プレミアリーグ 第18節
トッテナム 2-1 エバートン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:9′ リシャルリソン, 18′ ソン
EVE:82’ ゴメス
主審:スチュアート・アットウェル
第19節 ブライトン戦(A)
理詰めの圧倒でトッテナムを寄せ付けず
高い位置からボールを捕まえにいくブライトンに対して、トッテナムがプレスを回避するスタートとなった。ブライトンは序盤からグロスが列を上げてのプレスを行うなどの積極策が目立つ非保持のスタンス。押し込まれてしまった時のリトリートとの使い分けもスマートだった。
トッテナムは横への揺さぶりが少なく、保持で効果的にブライトンを外すことができていなかった。逆に受けに回るとトッテナムは怪しさ満点。CB不在のスカッドなので前に出ていくしかないのだが、ブライトンは横断からあっさりとヒンシェルウッドが先制ゴールを仕留める。パスワークを各駅停車で行うことで大外で余ったヒンシェルウッドを活用する形はトッテナムの即席DFラインをうまく上回った。
さらにブライトンは続けてPKを獲得。引っ張ってしまったクルゼフスキがPKを献上しさらなる追加点を許すことに。ブライトンは2点を奪ってもなおハイプレスを続行。ボールを奪ったら左右にボールを動かしながら相手を外すことを続けて敵陣に侵入していく。トッテナムに反撃の糸口を与えないまま、一方的に責め続けたブライトンが前半を圧倒して終えた。
後半早々にトッテナムはリシャルリソンがネットを揺らすがこれはオフサイド。ハイプレスから生み出したチャンスはトッテナムを勢いづかせるが、オフサイドでブライトンのラインコントロールに屈してしまったり、あるいはシュート精度が伴わなかったりなど、思うように攻めきれない時間が続くことに。
そんなトッテナムを尻目にブライトンは追加点をゲット。復帰戦となったエストゥピニャンには嬉しいゴールとなった。ブライトンは終盤に左右が非対称気味の3バックにシフト。テンポのいいパスワークからサイドを打ち破りにいく。そしてPKからジョアン・ペドロが4点目を仕留める。
トッテナムは終盤に2つの追撃弾を得て、なお攻め立てることでブライトンのゴールを脅かす。しかしながら、80分以降のリカバリーで4失点をチャラにするのはいくらなんでも難しい。試合の大半を圧倒したブライトンが順当な勝利を挙げたと言っていいだろう。
ひとこと
ブライトンの前半の理詰めでの圧倒は圧巻だった。
試合結果
2023.12.28
プレミアリーグ 第19節
ブライトン 4-2 トッテナム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:11′ ヒンシェルウッド, 23′(PK) 75′(PK) ジョアン・ペドロ, 63′ エストゥピニャン
TOT:81′ ベリス, 85′ デイビス
主審:ジャレット・ジレット
第20節 ボーンマス戦(H)
アップテンポの中で光るポゼッションでの前進
残留争いの順位を彷徨っていたシーズン序盤とは打って変わって、波に乗っているボーンマス。毎試合大量得点を重ねており、相手からすれば勢いに乗っている嫌なチームといったところだろう。
トッテナムのスタイルとボーンマスの勢いが相まって立ち上がりは縦に速い展開の応酬。そうした中でより手応えを感じていそうだったのはホームのトッテナム。ハイプレスを回避するという点では流石のクオリティ。特に右サイドで横のレーンを交換するポロとサールによってボーンマスのプレスを揺さぶる。相手の2トップに対して、この点では完全に前をいったといっていいだろう。
一方のボーンマスは左サイドからのオーバーラップでの勝負。クライファートとシニステラのコンビから奥行きをとり、クロスを上げていく。スタイルとしてはトッテナムよりもダイレクト寄り。クライファートはボールサイドにおける+1としての役割を果たしており、この試合のサイド攻撃ではかなり効果的だった。
先手を奪ったのはトッテナム。マンツーでのハイプレスが成功。ベンタンクールがボールを奪い、サールで仕留める形で先行する。流れに乗ってハイプレスを行うトッテナムは引き続き主導権を確保。しかしながら、サールの負傷によりトーンダウンすると、残りの前半の時間はボーンマスがサイド攻撃を軸に押し下げる展開でハーフタイムを迎える。
後半もアップテンポな仕組みで継続して襲いかかっていくボーンマス。トッテナムはカウンターに専念する形で反撃を狙う。ソンのチャンスメイクは非常に上質。彼のカットインに合わせて縦に抜ける選手にパスを出す形でボーンマスに対して優位をとっていたが、最後のところでリシャルリソンが仕留められない展開が続く。
しかしながら、得点を決めたパターンはチャンスメイクとフィニッシャーが逆の形。リシャルリソンのポストから抜け出したソンが2点目を決めてさらに突き放す。リシャルリソンは直後のチャンスにおいても決めきれず、ゴールを奪いきれない日かと思われたが、2点目から9分後に追加点を仕留めてなんとかチームのムードに追いつく。
終盤は交代で入ったスコットが躍動したボーンマス。左サイドからの突破に合わせての追撃弾に加えて、終了間際のオフサイドで取り消しになったシーンにおいてもネットを揺らすなど好調を維持。勝てる見込みがあるスコアの時間が少なかった試合において数少ない好材料だった。
ひとこと
序盤のアップテンポな中のトッテナムのポゼッションは流石だった。
試合結果
2023.12.31
プレミアリーグ 第20節
トッテナム 3-1 ボーンマス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:9′ サール, 71′ ソン, 80′ リシャルリソン
BOU:84′ スコット
主審:サイモン・フーパー
第21節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)
オープンな展開を押し切る決め手が不在
離脱者の帰還とAFCON、アジアカップへの送り出しに伴う新しい離脱者の両方が目立つメンバーとなった両チーム。ともに苦しいやりくりではあるが、なんとかメンバーを揃えてきた。
序盤はアップテンポなスタート。ハイプレスを基軸にこのプランを扇動しているのはユナイテッドの方だったと言えるだろう。その甲斐あって3分には先制ゴールをゲット。オナナの素早いリスタートをベースに右サイドから左サイドに横断するようにボールを動かし、最後はこぼれたところをホイルンドが押し込んで先制。ヴィカーリオを撃ち抜く豪快なニアへのショットでユナイテッドが先行する。
この先制点以降も、ユナイテッドはファストブレイクからの素早い攻め上がりと逆サイドへの横断を組み合わせた形で前進。ガルナチョやラッシュフォードがトッテナムのSBに対して優位をとれたことで横断の効果はさらに増すこととなった。
トッテナムは少しサイドの崩しの甘さや低い位置でのビルドアップにおける盤面の整理ができていなかった印象。悪くはないが、ユナイテッドに比べれば少しボックス攻略の設計図はぼやけていたかもしれない。
しかし、トッテナムはセットプレーから同点。ごちゃっとしたところからリシャルリソンが仕留めて早い段階で追いつくことに成功する。
それ以降は後方の盤面を整えることで少しずつ安定した前進を見せるトッテナム。ユナイテッドの2トップの誘導を外す形でCBが持ち上がりを見せているあたり、後方からの押し上げが非常にクリーンになっていた。
少しずつトッテナムがペースを引き戻していたが、ユナイテッドはプレス&横断の流れで展開を強引に取り戻す。この形でやり切ったユナイテッドは40分にラッシュフォードのゴールで勝ち越し。前半をリードで折り返す。
リードを奪っているユナイテッドは後半も強気のプレッシングを継続。トッテナムはこのプレスを真っ向からひっくり返す形で一気に前進。中盤に差し込まれたスキップへのパスから大きく縦に運ぶ。左サイドにタメを作ると、ここに飛び込んだベンタンクールがシュートを決めて試合を振り出しに戻す。
以降もプレスを続けるユナイテッドだったが、トッテナムのプレス回避が上回る。ラッシュフォードが逃がしたポロが自由に右サイドを動き回り、サイド攻略の起点になっていた。
だらっとトッテナムの優位が続く後半だったが、70分以降に前半と同じく展開はフラットに変化。前線の交代カードが少ない両チームのスカッド事情に起因する停滞感でどちらのものでもない時間帯が流れる。ヴェルナー→ヒルがトッテナム唯一の前線の交代カードだったが、後半頭の押し込める時間帯はヒルのように止まれる選手が欲しかったし、70分以降の差し込みあいとなる展開ならば、直線的に走り込めるヴェルナーの方がベターのように思えた。少し展開と選手のキャラクターがミスマッチだったように思う。
ユナイテッドは後半追加タイムにマクトミネイが前線の飛び込む形で決定機を迎えるが、このチャンスを生かすのに失敗。クラッチシューターとして活躍してきたマクトミネイはこの日のヒーローになることはできなかった。
試合はそのまま終了。オープンな展開に決め手を欠いた両チームの一戦は痛み分けで幕を閉じた。
ひとこと
少しずつ怪我人が戻ってきているのは好材料だが、クルゼフスキの病欠はトッテナムにとっては痛かったように思える。前線、勝利にはもう1枚分足りない感があったトッテナムであった。
試合結果
2024.1.14
プレミアリーグ 第21節
マンチェスター・ユナイテッド 2-2 トッテナム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:3′ ホイルンド, 40′ ラッシュフォード
TOT:19′ リシャルリソン, 46′ ベンタンクール
主審:ジョン・ブルックス
第22節 ブレントフォード戦(H)
ファストブレイクからの得点ラッシュで勝ち逃げ成功
週末のFA杯ではお得意様のシティに敗戦。これで狙うことができるタイトルはリーグ一本。ソン・フンミンの不在が続くトッテナムはなんとか踏ん張りながら勝ち点を積んでいきたい状況である。
ブレントフォード相手に一方的にボールを持つ立ち上がりとなったトッテナム。ブレントフォードの2トップの脇に立ちながらサイドでの破壊を画策。大外レーンにボールを運び、そこからブロックの背後を狙う形を作りながらゴール前に折り返しを入れていく。アクセントになっているのはSBの攻撃参加。ウドジェとポロはオーバーラップから積極的にボックス付近に顔を出していく。
一方のブレントフォードはカウンターからファストブレイクを狙っていくスタンス。人数はかけずにカウンターは2トップと左WBのルイス-ポッター、そしてIHのイェンセンで完結させるイメージである。
先行したのはブレントフォード。ウドジェを捕まえてのカウンターを発動し、トニーとモペイの2トップで攻撃を完結。トッテナムは2トップの脇という狙いどころを襲撃されてあっさりとカウンターから失点をすることとなってしまった。
以降もブレントフォードはトッテナムの保持のリズムを破壊。セットプレーと右サイドからの裏抜けを軸に散発的に敵陣でのプレーを増やしていく。トッテナムがボールを持つことになれば、素早くブレントフォードはリトリートとメリハリのある守備を見せる。トニーとモペイを軸に時折小競り合いを仕掛けていくのはいかにもという感じだろう。
しかしながら、トッテナムは後半早々に同点。左サイドの2人で押し下げてあっさりとウドジェが仕留める。すると、間もなく全く同じ形で逆転。今度はファーサイドで待ち構えていたジョンソンが起点となり、あっさりと逆転に成功してしまった。
後半のブレントフォードは反撃の攻め筋が全く見えなくなってしまった。トッテナムの勢いのあるファストブレイクにかなり苦戦。2点目はプレゼントパスを渡してしまうなど、保持からいいリズムを生み出すことができず苦境に追い込まれる。トッテナムはさらにファストブレイクから3点目をゲット。ヴェルナーを囮にマディソンとウドジェを絡めて最後はフリーになったリシャルリソンがゲット。
70分前にはようやく押し込みながら左右のクロスを入れていくが、逆にこれはトッテナムのファストブレイクを促進してしまうという側面もあるのが難しいところ。それでもトニーのゴールで1点差に迫り、終盤にはトッテナムを追い詰める。
バプティストの決定機が決まっていれば勝ち点を落としていたトッテナム。最後は冷や汗をかくこととなったが、なんとか逃げ切りに成功し勝ち点3の積み上げに成功した。
ひとこと
終盤のバタバタ感はいかにもトッテナム。ドラグシンを入れての後方のテコ入れしてもなおクローズの不安は残る印象だった。
試合結果
2024.1.31
プレミアリーグ 第22節
トッテナム 3-2 ブレントフォード
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:48‘ ウドジェ, 49’ ジョンソン, 56‘ リシャルリソン
BRE:15’ モペイ, 67‘ トニー
主審:デビッド・クート
第23節 エバートン戦(A)
前節と同じ逃げ切り策は通用せず
前線の決定力不足が深刻でなかなか結果を出すことができないエバートン。ホームでのトッテナム相手の一戦は厄介であるとはいえ、降格圏に足を踏み入れてしまった現状を踏まえると是が非でも勝ち点を取り切りたいところだろう。
そんなチームの状況を表してか、高い位置から追い回すプレスからスタートするエバートン。特に可変が大きいウドジェにヤングをついていかせるように守っていたのが印象的だった。
だが、ウドジェはヤングをあっさりと振り切ると、左サイドからアシストを決めて先制。リシャルリソンのゴールで早速リードを奪う。
それ以降もトッテナムはエバートンのハイプレスを外しながら前進。ビハインドとなったエバートンは追い回すしかない状況なので、トッテナムにとってはボールをつなぐ状況ができるという好循環を回せるはずだった。
しかしながら、エバートンが引き起こすハイテンポな展開になかなか精度がついていなかったトッテナム。少しずつエバートンに押し込まれるような時間が出てくるように。
一度押し込むことができるようになると、一気にペースはエバートンに流れる。キャルバート=ルーウィンは左右に動きながら裏のスペースにボールを引き出すことができるし、そこから生まれたCKではマクニールがファーのゴールポスト付近にひたすら同じ軌道のキックを連打。この連打が実り、30分にはハリソン(ぱっと見では悲願のキャルバート=ルーウィンのゴールに見えたのだけども)がゴールを仕留める。
この間のエバートンのバックスのパフォーマンスは見事。すかさず、バックラインの裏を一発で狙うトッテナムのアタッカーに対して、一か八かのタックルを成功させ続けてカウンターを阻止した。
だが、またしてもウドジェの暗躍からトッテナムは勝ち越し。ボールを運びながら左サイドを押し下げると、最後はマディソンから再びリシャルリソン。古巣相手の2ゴールでグディソン・パークに痛烈な恩返しを見舞う。
勝ち越された後も左右からのクロス爆撃を続けるエバートン。後半も引き続きクロス中心のアプローチでゴールに迫っていく。
トッテナムはこれに対してカウンターを中心とした跳ね返しで加勢。左サイドではヴェルナーの裏抜けがチームに徐々になじんでおり、マディソンのスルーパスと噛み合わせると陣地回復の有効な手段に。エバートンのバックラインには後半も引き続き負荷がかかる状況となっていた。
70分になるとトッテナムは保持で少しずつ落ち着かせるアプローチを見せ始める。エバートンもキャルバート=ルーウィンに見切りをつけて、シェルミティとベトをターゲットに切り替えて最後の最後まで抵抗を見せる。
前節と同じくドラグシンを使っての逃げ切りを図るトッテナムだったが、エバートンはブライスウェイトのゴールで土壇場に追いつく。押し込まれる展開を凌ぎ切れなかったトッテナムは勝ち点を落とす結末となってしまった。
ひとこと
終盤の追いつかれてしまうところもそうだけども、トッテナムとしてはゲーム中盤を握り切れなかったのが痛かったと思う。
試合結果
2024.2.3
プレミアリーグ 第23節
エバートン 2-2 トッテナム
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:30‘ ハリソン, 90+4’ ブランスウェイト
TOT:4‘ 41’ リシャルリソン
主審:マイケル・オリバー
第24節 ブライトン戦(H)
前節と真逆の歓喜の後半追加タイム
前節はエバートンにギリギリのところで勝ち点を落としてしまったトッテナム。今節はホームで負傷者が絶えないブライトンとの一戦である。
序盤は積極策のブライトンペースと言えるだろう。降りてくるトッテナムの前線に対して、マディソンについていくファン・ヘッケなどが代表例として襲いかかっていく。
トッテナムも非保持側になれば前からプレスに潰しにいくが、縦パスで相手を狭く集約しつつ、広げるパスから三笘とウェルベックを預けどころにするプレス回避が炸裂。ブライトンが落ち着いてトッテナムをパスワークでいなしていく。
先制したのはブライトン。中盤中央でドリブルを始めたベンタンクールをグロスが潰し、ウェルベックが細かいタッチからファン・デ・フェンがPKを献上。グロスが決めて先行する。
ハイプレスがハマらず、自陣からのビルドアップは捕まっているトッテナム。特に、中央に簡単につけるパスは失点以降もブライトンのショートカウンターの温床になっていた。
そのため、トッテナムは裏抜けスピード勝負を中心に挑む。だが、重心が上がりきらない分、ブライトンが選択肢を読み切れる場面が多かった。
30分を過ぎるとトッテナムが徐々にプレスを決め切るようになり、ブライトン主導の流れが少しずつ変化が起きるように。敵陣に襲いかかるプレーが増えているが、最後の最後に体を投げ出すブライトンのCBとスティールのファインセーブが立ちはだかる。
ブライトンは前半を無失点で凌いでハーフタイムに。トッテナムはビハインドを許したまま前半を終える。
後半、ビハインドのトッテナムは圧力をかけていくスタート。保持では少し低い位置でのポジションチェンジを増やしながら、前半に狩りどころにされていた中央でのボール奪取を回避していく。インサイドにSBが入り込む分、サールがきっちりと右にフローするなど内と外のバランスを維持する工夫はなされていた。
ブライトンも後半にプレス回避は安定し、再びボールを持てるように。互いにアタッキングサードに侵入できるようになった中でゴールに至ったのはトッテナム。前半に足りなかった前線以外の最終局面の関与という課題をハーフスペースに裏抜けしたサールが見事に解決。試合を振り出しに戻す。
ここからの3枚替えで勢いに乗りたかったトッテナムだが、オープンな展開でむしろ勢いがついたのはブライトンの方。ハイプレスからのカウンターの連打で押し込み返し、主導権を再び握る。
終盤はDF陣がリスク覚悟の斬り合いに。1つのミスが命取りになりうるハードなプレー選択の連続で互いにリスクをかけたクライマックスに。緊張感のある最終盤に笑ったのはトッテナム。リシャルリソンの丁寧なプレーでCBを外しつつ、ソンがクリーンに抜け出す状況を作ると、最後に決めたのはジョンソン。
劇的な追加タイムのゴールでトッテナムは勝利。アジアカップ帰りのソンのアシストによる決勝ゴールで、前節と真逆の歓喜の幕切れを果たした。
ひとこと
どちらが勝ってもおかしくないスリリングな後半戦はなかなかの見応えだった。
試合結果
2024.2.10
プレミアリーグ 第24節
トッテナム 2-1 ブライトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:61′ サール, 90+6′ ジョンソン
BHA:17′(PK) グロス
主審:サム・バロット
第25節 ウォルバーハンプトン戦(H)
SB不在のトッテナムがまたしても連勝の機会を逃す
明確に調子を落としているわけではないものの、連勝がない分ブーストをかけている上位3チームからは置いていかれる形になっているトッテナム。ウルブスをホームに迎えて久しぶりの連勝を狙う一戦である。
左右にボールを動かしながらスタートしたトッテナム。アタッキングサードへの侵入は特に問題はなく、序盤からウルブスのゴール前に迫っていく。しかしながら、仕上げの部分はもう一声。主力が欠場している両SBの押し下げ→フィニッシュというパターンがないため、シューターが捕まっている状態はいつもより多かった印象である。
ビルドアップにおいてもエメルソンは頑張って絞ってはいるものの、効果的とはいえず。顔を出した後にどう動けばいいのかを非常に困惑しているのだろうなという振る舞いでポロの不在を感じさせていた。
序盤はウルブスもオープンな展開を享受。中盤は甘くなる序盤の流れを利用し、アタッカーがスピードに乗ってフィニッシュまで向かうことができていた。
試合が進むとトッテナムが一方的なボール保持に展開が移行。ウルブスは非保持で5-3-2で構える形で守備を組んで受け止める。我慢気味の展開になったが、セットプレーから先制したのはウルブス。ジョアン・ゴメスのゴールから先行する。
定点攻撃になるとやや物足りなさを感じるトッテナム。ウルブスは跳ね返しつつ、スポットでカウンターからの反撃で存在感を示していた。トッテナムの保持の時間の増加は必ずしも優位性の増加にはつながっていなかった。
それでも後半早々にトッテナムは同点ゴールをゲット。サイドから抉る形になったクルゼフスキが角度のないところからジョゼ・サを破って試合を振り出しに戻す。
後半のトッテナムは一方的な押し込む展開に。ウルブスとしては前半のように跳ね返せる機会すらない立ち上がりになる。それでも56分のようにようやくカウンターからチャンスを作ると、その7分後にはネトの独走から一気に陣地回復を図ってマイナスの折り返しをジョアン・ゴメス。注文通りのロングカウンターからのゴールを確保し、一歩前に出る。
なんとか打開したいトッテナムだが、ウルブスの5-3-2ブロックの前に打開策を見つけることができず。クロスの枚数は確保されているのだが、空中戦にフォーカスしたウルブスのDFに跳ね返される展開が続いてしまう。
クルゼフスキ、マディソンの2トップ下作戦や、3バック化することで前線の枚数を増やすアプローチを施したトッテナム。しかしながら、最後までネットを揺らすことはできず。終了間際のデイビスの決定機も枠を捉えることができなかった。
またしても連勝を逃したトッテナム。上位勢との勝ち点はまたしても開くこととなった。
ひとこと
割と主力が戻ってきたトッテナムだが、唯一いなかったSBがめっちゃ浮き彫りになった。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
トッテナム 1-2 ウォルバーハンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:46′ クルゼフスキ
WOL:42′ 63′ ジョアン・ゴメス
主審:アンソニー・テイラー
第27節 クリスタル・パレス戦(H)
ミスから転がる後半に
立ち上がりからボールを持ったのはトッテナム。5-4-1で構えるパレスに対して、サイドにボールをつけながら攻勢を仕掛けていく。
グラスナーの真価が問われるパレスはひとまずはローブロックを採用。我慢からスタートする。ただし、ウォードとリチャーズという両サイドのCBは潰しに出ていくことを許可されている様子。彼らが前に出ていくことでトッテナムのサイドのパスワークはだいぶ阻害されていた感がある。
ボールを奪うとカウンターを発動。マテタを軸としたロングカウンターも悪くはないが、機動力があるわけではないので、手数をかけたパターンも。WBからWBを横断するような形でフリーの選手を作るなど少しテイストを変えた形も織り交ぜていた。
トッテナムはサイドの定点攻撃においてはパスはつながるが、展開が前に進んでいない状況。時間が進むにつれて手前でカットされることも少しずつ増えるように。こうなると攻撃は停滞。ワイドのCBの背後を取る形、もしくは抜け切るロングカウンターからであればチャンスは作れそうだが、前者の攻略パターンは時間と共に減少、後者はヴェルナーがジョンストンにあっさりと止められてしまい、得点にはならなかった。
試合はトッテナムの保持、パレスの非保持のモノトーンな展開。スコアレスでハーフタイムを迎える。
後半もモノトーンな展開は同じ。パレスの非保持の集中力の高さはなかなかで、リトリートの中にも迎撃を潜ませる守備で後半をトッテナムに対抗する。ポケットの封鎖は見事でワイドのCBが延々とつぶし続ける。トッテナムもファーへのクロスや勇気のあるグラウンダーの差し込みなど、少し前半とテイストを変えて勝負する。
後半に勝負を分けたのはミスだった。まずはトッテナム。エゼのドリブルは確かに脅威だが、十分な対応可能枚数がいる中でベンタンクールのファウルは軽率なものだった。そして、壁の作り方もよくわからず、エゼにぽっかり空いたところからあっさりと弾丸FKを決められる。
これで一層撤退守備に磨きがかかるパレス。PA内を封鎖し着実に時間を進めていく。だが、こちらにもミス。アンデルセンがキープしたボールを足を滑らせてロスト。ジョンソンに対して、レルマも簡単にすれ違ってしまうと、最後はファーのヴェルナーが合わせて同点に。
このミスが響いたのか、これ以降はパレスの左サイドは動揺が見られることに。これに乗じてトッテナムは右サイドからクロスをあげきり決勝点をゲット。ロメロがヘディングで競り勝ちリードを奪う。仕上げはソン。カウンターから抜け出して1on1を制し、快勝に花を添える。
ミスで転がった後半を制したトッテナム。ホームでパレスを下し、次節再び連勝チャレンジに挑む。
ひとこと
パレス、途中までほぼ撤退守備完ぺきだったのに1つのミスで流れが変わってしまった。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
トッテナム 3-1 クリスタル・パレス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:77′ ヴェルナー, 80′ ロメロ, 88′ ソン
CRY:59′ エゼ
主審:ジョン・ブルックス
第28節 アストンビラ戦(A)
後半頭の入りで差をつけたトッテナムが4位争いを制する
トッテナムはアストンビラに対して1試合少ない状態で勝ち点差は5。4位争いのシックスポインターとして非常に重要な一戦を迎えることになる。
アストンビラのフォーメーションは5-3-2。いつもよりはきっちりと5バックでレーンを埋める意識を持っている布陣でトッテナムを迎え打つ。
トッテナムの布陣はいつも通り。WGにSBを追い越す形からクリーンに抜け出し、そのまま折り返しでクロスを出してチャンスメイクする。復帰したポロは素晴らしい働き。ビルドアップでサールと共にティーレマンスの周りをちょろちょろしており、バッチリのタイミングで前線に飛び出すことも余裕でこなしてみせた。復帰戦としては上々のパフォーマンスと言っていいだろう。
トッテナムは王道パターンであるSBのラインブレイク→速いクロスで折り返しというチャンスメイクの他に、速い段階でソンや逆サイドのアタッカーがラインの裏に抜ける動きからより直線的にゴールを狙うシーンもしばしば。王道の崩しに対してこうした少しアクセントになるパターンも持っているのがこの試合のトッテナムの面白い部分だった。
アストンビラはロングカウンターからワトキンスを狙う形がメイン。結局収まるし、後方からの縦に早い攻撃へのキャッチアップも十分なので、特にこの形は悪くはなかった。いざとなればバックラインで繋ぐことができる保持の耐久性もあるし、押し込んだ後の定点攻撃ではベイリーが右に流れてサイドでトライアングルを形成することも。ワトキンスが左に流れて収めた後に、逆サイドでキャッシュが走り込みながら攻撃の幅を広げることができていた。
どちらのチームもらしさを見せた前半。途中から中盤のボールの奪い合いが激しさを増し、なかなかバックラインの攻略まで辿り着くことはできず。均衡した見応えのある前半となった。
後半の頭はどちらのチームもバタバタした保持の引っ掛けた形からのチャンスを作るという立ち上がり。守備陣の踏ん張りでなんとかすることで互いにピンチを凌ぐ。すると、トッテナムはファン・デ・フェンが負傷してしまう。またしても右の腿裏を押さえるという悲しい状況に。
だが、トッテナムはこの状況に臆することがなく先制点をゲット。右サイドのサールのらしい抜け方からクロスでゲット。マディソンにラストパスを出すことはバレていても微妙に間に合わないというところがトッテナムらしいサイドの崩しである。
さらにトッテナムはショートパスから追加点。前半からちょっと自信過剰気味だったコンサのパスミスからジョンソンが仕留めてリードを広げる。
少し、アストンビラにペースが流れてきたと思われた矢先にマッギンが退場。個人的には少し厳しい判定だと思うが、これが試合の展開を大きく変えることに。これで一気に主導権を握ったトッテナムはさらに2点を追加。4点目を決めたヴェルナーには嬉しいゴールとなっただろう。
緩慢な後半の入りから一気に差をつけられたアストンビラ。これで両チームの勝ち点差は暫定で2となった。
ひとこと
退場の判定はともかく、はじめの2つの失点は決められてしまうとしんどいなという感じだった。
試合結果
2024.3.10
プレミアリーグ 第28節
アストンビラ 0-4 トッテナム
ビラ・パーク
【得点者】
TOT:50′ マディソン, 53′ ジョンソン, 90+1′ ソン, 90+4′ ヴェルナー
主審:クリス・カバナフ
第29節 フラム戦(A)
出足で先をいったフラムがトッテナムに完勝
アストンビラとの4位争いを制したトッテナム。ようやく成し遂げた連勝をさらに伸ばし、ここからなんとか上位を追走していきたいところである。
ポゼッションを行っていたのはトッテナム。フラムの2トップの脇からボールを運ぶトライをしていく。高い位置からのプレッシングにも積極的。フラムのCBやGKへも前線は捕まえにいくアクションを欠かさず、支配的なチームの振る舞いを狙う立ち上がりとなった。
だが、この振る舞いはあまりハマっていなかったように思えた。フラムのコンパクトな4-4-2はトッテナムの縦パスを寸断し続けた。バッシー、パリーニャあたりが大暴れするのは平常運転だとしても、ルキッチあたりも潰し屋として機能していたのは大きい。
ならばトッテナムは裏を狙えば?と思うのだが、こちらもフラムの守備陣を前に苦戦。SBのロビンソンは背後のケアとクルゼフスキに反転をさせないように高い位置からのプレッシャーを両立。表でも裏でもトッテナムに自由を与えなかった。
トッテナムのプレッシングに対してもフラムは難なく対応。左右に動かしながらトッテナムのプレスをいなす。前線ではパスの預けどころにボールを収めて、後方からの攻め上がりで厚みを出す。最も印象的な働きをしていたのはイウォビ。ためを効かせてSBの攻め上がりを生かす場面と、縦に急いで攻撃を加速させる場面の使い分けが見事。ウィリアン、ムニスなど前線にはあらゆるターゲットがボールを収めて、トッテナムのプレスを無効化する。
割と一方的にやられていたトッテナムだが、30分手前に少しずつ押し返すことに成功。左サイドの奥を取ることでソンとマディソンは決定的なシュート機会を作る。しかしながら、フラムもその間はカウンターで応酬。試合は撃ち合いとなる。
どちらにも決定機が生まれた中で先行したのはフラム。左サイドからのクロスをムニスが仕留めてようやくスコアを動かしたところでハーフタイムを迎える。
後半も左右からのクロスの乱れ打ちで主導権を握るフラム。開始早々にピンチを迎えたトッテナムはハイプレスで高い位置から捕まえにいくが、イウォビへの展開からプレスを脱出したフラムはニアに飛び込んだルキッチのゴールで追加点。リードを広げる。
トッテナムは保持から巻き返しを図りたいところだが、ミドルゾーンでボールを詰まらせてしまい苦戦。この辺りはフラムが明らかに出足で上回っていた部分。中盤でのボールダッシュから前線への飛び込みまであらゆる局面でトッテナムの先をいく。
その優劣は追加点にも反映。フラムのセットプレーからのチャンスはこぼれ球となったが、これをムニスが仕留めてリードは3点となる。
3点のビハインドとなったものの、トッテナムは以降にハーフスペース突撃からの速いクロスでチャンスを手にする場面も。時間帯的にもこのタイミングで追撃弾を手にしていればトッテナムにはまだ勝ち点を奪うチャンスがあったように思える。
だが、この時間帯を凌がれたトッテナムは以降もチャンスを決めることができず結局無得点のままでクローズ。連勝を3に伸ばすことは叶わなかった。
ひとこと
ムニスとかパリーニャは当然としてルキッチとかロビンソンの出来がとてもいい日だった。
試合結果
2024.3.16
プレミアリーグ 第29節
フラム 3-0 トッテナム
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:42′ 61′ ムニス, 49′ ルキッチ
主審:ロベルト・ジョーンズ
第30節 ルートン・タウン戦(H)
ジョンソンが活性化した右サイドからガタガタのルートンをようやく仕留める
いつもの通り、強気のマンツーで当たりに行くルートン。高い位置に出ていく際のマンツーとリトリートを使い分けていく。トッテナムとしては当然想定通りだろう。大きく動きながらマークを外すポゼッションから勝負を仕掛けていく。
ただ、想定外だったのは先制点をルートンに献上してしまったことだろう。右サイドを深い位置まであっさりと抉られると、折り返しからバークリーが真横に鋭いラストパスを送りこれをチョンが決める。サイドに出ていったビスマの対応から全体的にゆるさを感じるもので、それをゴールシーンまで引きずってしまった印象だ。
それでも保持においてはまだまだ手応えがある。マディソンの降りるアクションから相手を外して大きく展開、SBのオーバーラップからボックスのサイドを深く抉っていく。ルートンはこのサイドの奥をなんとか止めてやろうという意識を持っていた。ラドック、メンジはひたすら裏抜けについていきながら潰していく。
トッテナムは優勢の状況ではあるのだが、徐々にだらっとしたオープンな雰囲気に巻き取られていく。ネガトラのゆるさは試合開始からの話ではあったのだけども、保持がぶつ切りで1人ずつが勝手に突撃していくシーンが増えた印象。トッテナムの良さは味方の動きを連鎖的に利用すること。単発感のあるこの時間帯はトッテナムの良さは出てこない。ソンが両側のポストに当てた場面以降、この傾向には拍車がかかった。
前半の終盤はむしろ、ルートンがファウル奪取からセットプレーでチャンスを作るなど僅かに優勢に。トッテナムは右肩下がりのパフォーマンスでハーフタイムを迎えることとなった。
後半、トッテナムはジョンソンを投入して右サイドをテコ入れ。前半にクルゼフスキが苦しんでいたのはなんだったのか?というくらいあっさりと右サイドを壊していく。
大外のジョンソンのワンツー、そしてハーフスペースの相棒の抜け出しからラインを下げると、素早い折り返しからチャンスを創出。カボレのオウンゴールを誘い、後半早々に追いつく。
ルートンはハーフタイムに交代でCBに入った橋岡がしっちゃかめっちゃか。マンツーの原則を守ろうとマディソンやソンについていってはルートンの中央に穴を開けてしまっていた。いくら不慣れなポジションでもちょっとやり過ぎ感はある。
以降もこの形から無限にチャンスを作り続けるトッテナム。狙い撃ちされたカボレはあわや2つ目のオウンゴールを献上してしまうことしてしまうかもしれない場面すらあった。
トッテナムは徐々に左サイドでの崩しに移行。同じように抜け出しからの押し下げで早いクロスを入れて攻撃をガンガン仕掛けていく。
実ったのは86分。故障者だらけで11人並べるのがやっとのルートンを壊すのにはだいぶ時間がかかったが、ジョンソンの冷静な落としからソンがようやく仕留める。
まさかの苦戦を強いられたトッテナムだが、最後はなんとか勝ち切ることに成功。勝ち点3を積み上げた。
ひとこと
アーセナル戦、ルートンは誰が出れるのだろう。
試合結果
2024.3.30
プレミアリーグ 第30節
トッテナム 2-1 ルートン・タウン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:51′ カボレ(OG), 86′ ソン
LUT:3′ チョン
主審:ジャレット・ジレット
第31節 ウェストハム戦(A)
交代に動いたジレンマ、動けないジレンマ
ウェストハムの中盤は3センターの形。アンカーをソーチェクとしてIHにウォード=プラウズとパケタがトッテナムのCHについていく。
トッテナムの先制点はまさしくそれを利用した形だった。CHに釣られるパケタの背後に侵入したウドジェを起点に大外のヴェルナーが加速。縦突破からマイナスの折り返しをジョンソンが仕留める。トッテナムとしては初手の攻撃の形から先制点を導いた格好になる。
以降もトッテナムのこの攻略の形はテンプレ化。左右のMF-DFのライン間のハーフスペースに起点を作り、大外にボールを預けて縦突破からマイナスの折り返しでチャンスを作っていく。
ウェストハムは少しずつパケタが位置を調整することでライン間のクローズに成功。少しずつカウンターを打てるようになる。すると、セットプレーから同点ゴールをゲット。GK付近にまとわりつき隊の一員であったズマがヘディングを沈めて追いつく。やや劣勢気味な展開の中で試合を振り出しに戻す。
以降も試合の論点は同じ。ライン間に縦パスを通したいトッテナムとそれを防いでカウンターに移行したいウェストハム。試合が進むにつれてウェストハムはライン間のクローズとカウンターの起点として中盤からの加速に成功。ペースを引き戻す。チャンス構築はセットプレーがメイン。先制点に近い高い弾道を中心にトッテナムのDF陣を苦しめるボールを入れていく。
局面での体のぶつけ合いも増えて、非常にタフな流れに。時間の経過とともに試合は見ごたえのあるデュエルが目立つ展開となった。
後半の入りは前半の入りと同じくウェストハムはプレスに色気を見せたスタート。前半と異なったのはこの強気の姿勢が刺さったことである。ハイプレスからカウンターを発動し、一気にゴールを陥れに行く。ベンタンクールのパスミスは致命的なものであったが、ヴィカーリオがチームを救ってみせた。同点ゴールと似たセットプレーからの決定機を作るなど、ウェストハムが攻め立てる立ち上がりに。
一方のトッテナムもすぐに反撃。ゴールにかなり近い決定機を作るなど、試合は両軍のゴール前で油断ができない展開となった。より悪い失い方でピンチを招いていたのはトッテナムの方。だが、ファン・デ・フェンとヴィカーリオの冷静な対応で事なきを得ていた。
60分台はジリジリとトッテナムがペースを引き寄せる時間帯。ソンとジョンソンはもう一歩相手を剥がせればというところまで行けるように。サイド攻撃では右を軸にクロスをあげていく。交代選手が流れを変えそうな展開の中で、サールの投入でポロ以外にも飛び出す選手を作るなど、ポステコグルーは采配で変化をつける。テコ入れの方向性は右サイドからの崩しにフォーカス。ウェストハムのカウンターの運び屋であるクドゥスの位置を下げるという牽制の意味合いもトッテナムにはあったかもしれない。
ウェストハムはカウンターでの前線の個人のキープへの依存度が高まっていく。アントニオ、クドゥス、ボーウェンは代えにくくなっていたし、中盤はアルバレスが出場停止でパフォーマンスがよくないフィリップスしかいない。モイーズは試合の流れを変える一手を見つけられずにいた。
押し切りたいトッテナムだが、2列目と前線の交代選手がピリッとせず。足元で受けたがるクルゼフスキ、リシャルリソンが流れに乗ることができず、いなくなったスターターを恋しく思ってしまう出来だった。
終盤には互いに決定機を生むなどいかにも局面での対人勝負の色が濃かったこの試合らしい終盤戦に。だが、どちらもゴールを生むことができないまま試合は終了。前半の1ゴールずつの引き分けで幕を閉じた。
ひとこと
交代選手で動けないジレンマを抱えたウェストハムと動いたジレンマを抱えたトッテナムという感じの後半となった。
試合結果
2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
ウェストハム 1-1 トッテナム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:19′ ズマ
TOT:5′ ジョンソン
主審:ジョン・ブルックス
第32節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)
後半頭の畳み掛けで差をつける
ボールを持つ立ち上がりになったのはトッテナム。4-2-3-1と2トップが明確な縦関係に守るフォレストに対して、時間を与えられたバックラインがポゼッションを握る。
ポゼッションのルートはいつも通り左右を使うところから。同じサイドにフォーカスするだけでなく、中央を経由することで左右に揺さぶることでフォレストの守備ブロック攻略に挑んでいく。
一方のフォレストはまずは受ける立ち上がり。スピードを生かしてのカウンターに移行したいところだったが、トッテナムによってボールの出しどころを咎められてしまい、攻撃をスローダウンさせられてしまう。
押し込む流れになったトッテナムは先制ゴールをゲット。右サイドから左サイドの横断から抜け出したヴェルナーが折り返しからオウンゴールを演出。左の抜け出しを右で仕上げるという昨今のトッテナムのお決まりパターンが刺さり先行する。
攻撃は以降もヴェルナーが軸。ゴールをなかなかこじ開けられない状態ではあったが、チャンスの面では問題なく機能しているのがヴェルナー周りである。
しかしながら、フォレストも負けじと同点ゴールをゲット。バックラインからの外循環のボールの動かし方から二人称のサイド攻撃でトッテナムのバックラインを後手に追いやり、折り返しをウッドが決める。
この得点以降からフォレストはボールを持つ時間が増加。トッテナム一辺倒のペースは少しずつ緩和されていく。
後半、トッテナムはCHを入れ替えながらもボール保持をベースとして試合を進めていく。しかしながら、選手を入れ替えた分、パスワークが不安定な部分も。この点でフォレストはカウンターという線が残っている状態だった。
だが、試合を動かすゴールを決めたのはトッテナム。セットプレーからボックス内のファン・デ・フェンのミドルという意外性のある攻撃から勝ち越しゴールを奪う。
勢いに乗るトッテナムはさらに追加点。左サイドの打開からインサイドに入り込んだポロがさらにゴールを決めてリードを広げる。これ以降もトッテナムはペースを掌握。ポゼッションをベースにフォレストを低い位置に押し込む時間が続く。
80分にようやく押し返す機会を迎えることができたフォレスト。だが、肝心のゴールをこじ開けることができずに苦戦する。ハイプレスに出ていくなど最後まで希望の光を捨てなかったフォレストだったが、トッテナムの追撃には及ばず。後半頭に畳み掛けたトッテナムが見事に勝利を飾った。
ひとこと
左サイドからの攻撃はかなり長い時間刺さっていた。
試合結果
2024.4.8
プレミアリーグ 第32節
トッテナム 3-1 ノッティンガム・フォレスト
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:15′ ムリージョ(OG), 52′ ファン・デ・フェン, 58′ ポロ
NFO:27′ ウッド
主審:サイモン・フーパー
第33節 ニューカッスル戦(A)
カウンターの鋭さが大量得点の決め手
立ち上がりは強度十分のバチバチのしばき合い。互いにバックラインにプレスをかけながら、保持側は相手のラインの背後を狙うというプレーの連続であった。
特にこの傾向が強かったのはニューカッスル。人を捕まえにいく高い位置からのプレッシングに加えて、奪ったらとりあえずゴードン目掛けて縦に縦に進んでいく形。リトリートではアンダーソンをWBに置く5バックを準備してきたニューカッスルだが、撤退して受けるシーンの少なさからか序盤はあまり目立たなかった。
トッテナムもサイドの裏からスピードアップを狙うが、より保持志向が目立つ。サイド攻撃から追い越すアクションをスイッチにテンポを上げる形を大事にしているのは従来のトッテナムのフレームの中でこのハイテンポについていこう!ということだろう。
どちらも攻撃に鋭さがある中で守備側が危ういファウルを犯すという紙一重の展開。この状況で先に決壊したのはトッテナムだった。ファストブレイクをようやく成功させたゴードンとイサクによりロメロとファン・デ・フェンの2枚が完全に剥がされてしまい失点。さらには直後のプレーで自陣でのポロのパスミスからゴードンに追加点を与えてしまう。
2ランホームランを打たれてしまったトッテナム。以降はパスワークも安定せず、引っ掛けてはニューカッスルに危険なカウンターを食らうという展開に。鋭さの違いを見せたニューカッスルが2点のリードでハーフタイムを迎える。
後半もハイプレスに意欲的だったニューカッスル。前から捕まえることをやめず、前半同様にトッテナムを苦しめるようなプレッシャーをガンガンにかけていく。トッテナムはなんとか保持から打開したいところだが、ポロの負傷など保持からの解決策を図るのが難しい状況になる。前に起点を作ることが難しい苦戦に、ゆったりとした保持での苦境が重なる状況となったトッテナムはソンのロストからカウンターをくらい、決定的な3失点目を喫してしまう。
流石に3点目を取ったところでニューカッスルのプレスはトーンダウン。押し込まれることを許容する形でトッテナムにボールを渡して受けに回る判断を行う。それでも得点は止まらず。セットプレーからの4点目を手にしてニューカッスルはゴールショーの幕締めを図る。
大量4得点でトッテナムを完全に破壊したニューカッスル。アストンビラとの4位争いにおいてトッテナムは手痛い一敗を喫することとなった。
ひとこと
トッテナムの次戦は日数が空いてのノースロンドンダービー。完敗の後に日程が空くことがどう出るか。
試合結果
2024.4.13
プレミアリーグ 第33節
ニューカッスル 4-0 トッテナム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:30′ 51′ イサク, 32′ ゴードン, 87′ シェア
主審:ティム・ロビンソン
第35節 アーセナル戦(H)
追いかけられても淡々と冷静に
レビューはこちら。
暫定ながらも首位でリーグを走るアーセナル。ミッドウィークの試合が終わり、連戦のトリとなるのは2週間と休養十分でライバルを待ち受けていたトッテナム。アーセナルがタイトルに向かうにはアウェイでのノース・ロンドン・ダービーを制する必要がある。
立ち上がりはハードなデュエルがベースとなる。しかしながら、コンディション面で不利になるであろうアーセナルは少しずつリトリートでブロックを組んでいくように。トッテナムはハイプレスへの解決策があったこともあり、ハイテンションで戦っていくのは体力的にリスクと判断したのだろう。マディソンとクルゼフスキで時間を作るトッテナムに対して、引いてボールを受けていく。
アーセナルもまた保持に回ればプレスを安定して回避。ラヤ、ライス、トーマスが中盤でフリーになったところからサカにボールを集めることで攻撃を仕掛けていく。
だが、基本的にはトッテナムが押し込むスタート。ある程度は結界を引いて、これ以上は侵入されない領域を守ることでトッテナム相手に割り切った守備を見せるアーセナルだが、ペナ角からのクルゼフスキのクロスは少しゴールに手をかけた感じがあった。
しかしながら、先制したのはアーセナル。セットプレーという持ち味をきっちり発揮し、CKからホイビュアのオウンゴールを誘発する。
さらにはカウンターから追加点をゲットするアーセナル。左に流れたハヴァーツからカウンターに移行すると、ファーに長いボールを受けたサカの仕掛けからアーセナルはリードを広げる。
セットプレーでの追加点を決めたアーセナルは前半の3点のリードをゲット。しかしながら、トッテナムもゴールを取り消されたファン・デ・フェンのシーンをはじめとして点差よりは紙一重の展開に持っていくことができている。
後半、アーセナルはもう1つのゴールで相手の心を折りにいく。冨安のヘッドやサカの決定機など、トッテナムから早々に4点目を取りに行く。
それでもゴールが決まらないアーセナル。体力的には分があるトッテナムはプレスをやめずに出ていく。それによってアーセナルのミスを誘発。ラヤのパスミスからロメロが1点を返す。さらにはライスがややアクシデンタルなPKを献上。これでトッテナムは1点差まで詰める。
アーセナルの後半の良かったところは内容は悪くなかった分、リードをきっちりと守ることに淡々と成功したところ。迫られるスコアとは裏腹にトッテナムのゴールの可能性を冷静に制限し続けた。
立ちはだかるローカルライバルを振り切ったアーセナル。タイトルレースはまだまだ続く。
ひとこと
前半の3得点も痺れるけど、後半の追いかけられても淡々としていたアーセナルも好きだよ。
試合結果
2024.4.28
プレミアリーグ 第35節
トッテナム 2-3 アーセナル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:64′ ロメロ, 87′(PK) ソン
ARS:15′ ホイビュア(OG), 27′ サカ, 38′ ハヴァーツ
主審:マイケル・オリバー
第26節 チェルシー戦(A)
セットプレーからの二発で因縁のダービーを制する
互いの目標達成のために負けることは許されないロンドン・ダービー。調子の上がらないトッテナムは高い位置からのプレッシングに出ていく形でスタート。チェルシーのバックラインに縦に速いボールを蹴らせてハイラインからボールを回収する。危うい場面もなくはなかったが、ストッパーになったのはファン・デ・フェン。ギリギリのところでの体を張ってのクリアでピンチを回避する。
チェルシーの保持はプレスに対して無理につなぐよりもこのようにトランジッションを意識する方がうまくいく。ロングボールもそうだが、ポジトラで瞬間的にフリーになるカイセドからの前進などは有効な手段だった。
一方のチェルシーはローブロックで構えてのスタート。先に述べた通り、カウンターには十分手応えがあった状態なので、ローブロックは望むところ。片側サイドに押し込むようにプレスをかけているが、トッテナムはこれをひっくり返す形で横断を成功させたりもしており、展開としては五分五分である。
ただ、チェルシーはプレスから色気を見せすぎてしまうと、逃げられてしまうことがしばしば。そういう意味では我慢をする方が好転するというチェルシーからすると難しい展開になっていた。
そうした中で先制したのはチェルシー。セットプレーからのチャロバーのゴールで先行する。
反撃に出たいトッテナムだが、アタッキングサードでの加速のフェーズは稀。ポロの抜け出しからサールの決定機などのトッテナムらしい揺さぶりからのチャンスはかなり限られていた。押し込んだフェーズにおいての仕掛けはチェルシーは安定。左右のWGからハーフスペースを狙うことでチャンスを作っていく。
後半もチェルシーは安全第一のカウンターベース。押し込まれたフェーズを受け入れていく。サイドの裏に流れての折り返しにフォーカスするトッテナムだが、時折見せるチェルシーのCB陣の不思議な対応を除けば特に問題なく時間を過ごしていた。
チェルシーはジャクソン、マドゥエケ、パルマーの右サイドを定点として攻撃のパターンを構築。敵陣での攻撃を安定させたチェルシーはセットプレーから追加点をゲット。パルマーの枠を捉えたFKからこぼれ球をジャクソンが押し込んでさらにリードを広げる。
最後はトッテナムにボールを渡して自陣でサンドバックを受け入れたチェルシー。人垣、人垣、人垣を作ったチェルシーは最後までトッテナムにゴールを割ることを許さず。因縁のロンドンダービーはホームのチェルシーは勝利を挙げて幕を閉じた。
ひとこと
CBコンビはたまに不安な時があるが、局面を見るとチェルシーは高クオリティだなと感じさせる内容だった。
試合結果
2024.5.2
プレミアリーグ 第26節
チェルシー 2-0 トッテナム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:24′ チャロバー, 72′ ジャクソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
第36節 リバプール戦(A)
遅すぎたリシャルリソン起点の反攻
上位対決となったアンフィールドでの一戦。アストンビラが敗れたことにより、特にトッテナムにとっては重要な意味を持つ試合となる。
立ち上がりはポロがリバプールの3センターの間に入り込むポロが縦パスを引き出すスタート。さらにはハイプレスに出ていくなどトッテナムの積極策が目立つ展開に。リバプールはこれに対して、前線に蹴るアクションを見せることでプレッシングを回避する。
時間が経過するとリバプールはトッテナムのプレスを鎮静化することに成功。トッテナムの中盤の切れ目を繋ぎながら縦に縦に進むルートを探していく。バックスではアレクサンダー=アーノルドが内外で自在にポジションを取ることでトッテナムのプレスの狙い目を絞らせない動きを見せる。
攻撃の出口になっていたのは右の大外のサラー。珍しくワイドからの仕掛けを行っていくサラーを軸にゴールに迫るプレーを続けていく。
しかしながら、先制点は逆サイドから。左に流れたガクポからのクロスを仕留めたのはサラー。直前のセットプレーでも見られたファークロスへの抜け出しを見せて試合を動かしていく。
以降もリバプールは一方的に押し込んでいく流れが止まらない。左右に振ってボックスに迫るアクションが続いていく。トッテナムが押し込むフェーズもなくはなかったが、皆要求は足元になってしまい、いい時の流動性を見せることができない。むしろ、押し込むフェーズをひっくり返してのリバプールのWGを生かしたカウンターを食らうことでピンチを生む元になってしまっていた。
ペースを握ったリバプールは自在に揺さぶると左右のクロスから追加点。最後はボックス内に入り込んだロバートソンが押し込みリードを広げて前半を終える。
後半もリバプールはサラーにボールを集めるスタート。リバプールは順当に押し込むと、ロングボールから追加点。好調のガクポがゴールを仕留めて早々にリードを広げて見せる。
展開がオープンになることで後半もWG経由のチャンスメイクが増えたリバプール。オープンな展開でもトッテナムを上回り、チャンスを作っていく。すると59分にエリオットが距離のあるところから難しいミドルを仕留めて4点目。勢いを存分に生かしてさらに得点を積み重ねる。
この一方的なリバプールペースに一石を投じたのがトッテナムの交代選手。特にリシャルリソンは素晴らしかった。足元ばかりの前線の中で左右に流れながらチャンスを作っていくと、トッテナムの攻撃は一気に活性化。文字通り、攻撃を牽引したリシャルリソンが1ゴール、1アシストを決めて一気に点差を詰める。
アリソンのファインセーブがなければ、もっと点差は詰まっていたはず。終盤に勢いに乗ったトッテナムだったが、4点の借金は重く、アストンビラとの勝ち点差を詰めることはできなかった。
ひとこと
反撃、15分遅かった感があったトッテナムであった。
試合結果
2024.5.5
プレミアリーグ 第36節
リバプール 4-2 トッテナム
アンフィールド
【得点者】
LIV:16′ サラー, 45′ ロバートソン, 50′ ガクポ, 59′ エリオット
TOT:72′ リシャルリソン, 77′ ソン
主審:ポール・ティアニー
第37節 バーンリー戦(H)
厳しいやりくりの中で望みを繋いだトッテナム
トップ4入りと残留争い。互いに目標は違っていたとしても負けられない一戦である。死なば諸共という色がより濃いバーンリーはマンツーハイプレスに後方からのガンガンオーバーラップで攻撃を仕掛けていく。前に飛び込む意識も強いバーンリーは早々にヴィチーニョが飛び込んで決定機を迎える。
トッテナムもきっちりとファストブレイクから反撃。こちらもジョンソンが決定機を迎える。試合のカラーとしては正面からのマンツーの斬り合いという流れになっていく。互いに保持での解決にこだわり、GKを使ってのプレス回避を実施。力の差を考えればトッテナムが有利なのは間違いないのだけども、ミスが多くバーンリーにもチャンスを与えてしまっている状況であった。
先制したのはバーンリー。スキップを出し抜いたラーセンが先制ゴールを仕留めて絶対に勝利が必要なバーンリーが前に出る。
しかしトッテナムも7分後に同点。右サイドに突撃したポロが試合を振り出しに戻す。このゴールでトッテナムは少し落ち着きを取り戻すことに成功。即時奪回から圧をかけている流れを作り出すことで試合を握ることができた。それでもバーンリーは抜け出してチャンスを作り出すなどの抵抗を見せた状態で試合はハーフタイムを迎える。
勝たないといけないバーンリーは後半ハイプレスに移行。しかしながら、保持に回るトッテナムは前半の終盤同様に保持で落ち着かせることができており、バーンリーのハイプレスはゲームのペースを変えるきっかけにはならなかった。
後半のトッテナムの決め手になったのは後方から攻め上がるアクションを見せていたDF陣。ボール奪取からそのまま前に上がって行ったロメロなど、機を見た後方からの思い切りのいいオーバーラップにバーンリーが後手を踏むシーンがちらほら見られるようになった。
そして、決勝点を決めたのはファン・デ・フェン。スキップに代わって終盤に左サイドに入ったファン・デ・フェンがインサイドに入り込むという意外性のある形からゴールをこじ開けることに成功する。
これまでバーンリーと戦ったチームに比べれば、この試合の終盤戦のトッテナムはだいぶ隙があったように思えたが、勝ちが必要なバーンリーにとってはこの1点は大きな重石に。結局試合はそのまま終了。ややバタバタしながらも目的の3ポイントを手にしたトッテナムとは対照的に、バーンリーは1年での2部降格が決まる結果となった。
ひとこと
トッテナムの終盤戦のやりくりはかなり厳しそう。
試合結果
2024.5.11
プレミアリーグ 第37節
トッテナム 2-1 バーンリー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:32′ ポロ, 82′ ファン・デ・フェン
BUR:25′ ラーセン
主審:ジャレット・ジレット
第34節 マンチェスター・シティ戦(H)
可能性を感じさせる奇策を跳ね返しタイトルレースに王手
いよいよプレミアリーグもクライマックス。優勝争いとCL出場圏争いをかけた大一番はシティファンとノースロンドンの2チームのファンにとっては高い注目度の一戦となる。
基本的には大枠が決まっている両チームだが、どちらのチームも仕掛けてきたなという印象。よりわかりやすかったのはトッテナムの方だろう。最前線は敢えて置くとすればサールなのだろうが、基本的には0トップでシティの基準を乱しにかかる。
トッテナムのプランはとにかく左サイドの低い位置でフリーマンを作ること。ホイビュア、マディソンが低い位置に降りて、大外のソンを使って、フリーマンを作り左サイドの大外で抜け出す選手にボールを届けることである。抜け出す選手は誰でもOKというのがミソ。左サイドはロメロやベンタンクールなどむしろ後方の選手がラインブレイクを行うシーンが目立っていた。この点でも基準点乱しは今日のトッテナムのキーワード。やや強引ではあるが、普段の崩しの結末を普段と違うプロセスで持ってこようというイメージだろう。
それでもホイビュアやマディソンが落ちる位置は守備における機動力に最も欠けるデ・ブライネ周りだったので理には適っている。カバーにロドリを釣り出すところまで粘ることができれば、カウンターの成功率は明らかに高まるのでトッテナムはポゼッションのチキンレースで裏抜けの成功率を高める賭けに出たと言っていいだろう。元々正面からぶつかっても劣勢なのは明らかなので、賭けとしては個人的には分が悪くはないかなとは思う。
ちなみにサールは落ちるアクションという0トップでのプレーをしつつも、時折シンプルに推進力を生かした独力の陣地回復も見せたりした。こちらも前進のオプションとして持って置けたらな!ということだろう。
しかしながら、やはり抜け出すところまでに力を使っている感があるトッテナム。速いパスじゃないとシティの守備陣相手には引っ掛けるという意識もあるのだろう。セカンドを狙った押し上げまではセットだった感があったが、拾う部隊のポロの足元が物足りず効果的な二次攻撃につなげられなかったのも手痛かった。
一方のシティは初手でベルナルドが列落ちを披露。DFの列上げ以外は基本相手を見ることが多い今季のシティにおいてはこれも亜流の対応である。デ・ブライネは右の大外のレーンを空けて、そのレーンに攻め上がるのはウォーカー。トッテナムはインサイドに注力していたため、大外のウォーカーはガラ空き。しかしながら、クロスは刺さらなかった。
ライン間のフォーデンがドリブルで運びながらより内側に視線を集めることで大外のウォーカーを解放していたので、トッテナムとしてはその手前の段階で大外を空けるように仕向けられていた。ただ、大外のウォーカーにトッテナムが対応しないまま、シティがさっさとこのプランを辞めてしまったので、シティの本命は大外に慌てて出て行ったウォーカーを捕まえにいくことで空いたハーフレーンからのデ・ブライネの強襲だったのかもしれない。
ウォーカーの大外をやめて以降はベルナルドが外に張るオーソドックスな形に移行。シティは繋ぎの局面での不安定さを露呈しており、徐々に敵陣で運ぶフェーズがぐらつくように。ディアスやコバチッチあたりがこの辺りでミスをしたせいでやや基盤が緩くなっていた。前半は大きなチャンスも少ないスコアレスで折り返す。
後半は前半に比べればオーソドックスな展開だったと言えるだろう。トッテナムはそこまで左偏重ではなかったし、シティは時間の経過とともにワイドでボールを落ち着かせることと、ハイプレスに出ていくことをやめることで普段着に回帰しつつあった。
そうした中で出てしまったのはトッテナムのミス。パスは引っ掛けるよりも速くつけましょう!というこの日のトッテナムのスローガンはマディソンが受け手の時はより顕著だった気がする。そりゃ無理だろう!という強引なパスをマディソンが収められず、ここからシティはカウンターを発動。ロメロとカードを持っているベンタンクールを振り切ったフォーデンが敵陣まで運ぶとベルナルドとデ・ブライネの大外→ハーフスペースアタックからハーランドがゴール。何度も見てきた王道パターンを作ることに成功したシティが前に出る。
反撃の機運を高めなければいけないトッテナムはクルゼフスキを投入。サールとは異なる収まり方で存在感を見せる。エデルソンの怪我のあとはややふわふわした時間帯でミスも多かったシティ。そういう意味ではこの時間帯を凌ぐ立役者になったオルテガは素晴らしかった。クルゼフスキ、ソンという2つの決定機を凌いでシティが輪郭を取り戻すまでの時間稼ぎをする。
右はベルナルド、左はグバルディオルと徐々に幅を使ったポゼッションを落ち着かせるために使うようになったシティ。そこに最後に残された攻めのイケイケ要素であるドクがフォーデンの展開からPKを獲得。これをハーランドが仕留めて試合は決着する。
2日前のアーセナルと同じく、シティもまた鬼門を突破。正真正銘の首位に立ち、タイトル争いに王手をかけた。
ひとこと
今日この日をこの地力の差で迎えたという状況の中ではポステコグルーはできることはやったなという感覚。緩む時間もある中で試合を締めたオルテガが明らかなMOMであった。
試合結果
2024..
プレミアリーグ 第34節
トッテナム 0-2 マンチェスター・シティ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
Man City:51′ 90+1′(PK) ハーランド
主審:クリス・カバナフ
第38節 シェフィールド・ユナイテッド戦(A)
「いつもの」ブレイズを蹂躙したトッテナムが5位を確保
終盤はだいぶ負けが込んでしまい、CL出場権を手にすることができなかったトッテナム。負ければ6位転落の可能性もあるため、ここはきっちりと降格が決まっているブレイズを叩きたいところである。
いつも通り、元気な入りを見せたのはブレイズ。高い位置からプレスをかけて、トッテナムのミスを誘発しようとする。お望み通りのミスをドラグシンがしたおかげで決定機が転がってきたが、これはブレアトンが外してしまい、ゴールを掴むことができない。
もっとも、正面からぶつかってもらうことは特にトッテナムにとっては悪いことではない。こちらもマンツー気味に前から相手を捕まえにいく意識は上々。オープンな展開は望むところであった。
そうした状況の中で先制点を決めたのはトッテナム。左サイドのファン・デ・フェンのボール奪取から一気に縦に進むと、ここからクルゼフスキが決めて先制点をゲット。うまく行っても、あっさりとへし折られてしまうのは今にも今季のブレイズといった感じである。
一度劣勢に追い込まれると一気に苦しくなってしまうのがブレイズ。ピンポイントで通ったフォデリンガムのフィードを除けば、なかなか前線にボールを届けることができない。基本的にはアバウトなボールを裏のブレアトンまで向かわせて、トッテナムの守備陣のミスが出るのを待つ展開が続く。
先制点以降は一方的にボールを持つことになったトッテナム。時折見せる保持での不安定さは気がかりではあるが、それ以外はペースを握ったままハーフタイムを迎えることとなった。
後半も保持ベースで試合を運ぶトッテナム。GKのヴィカーリオをビルドアップに組み込み、左右にボールを動かしながら広く広く相手の攻め手を作っていく。
サイド攻略を順調に進めていくトッテナム。フォデリンガムのファインセーブなどブレイズも抵抗を見せたが、最後はシュートラッシュをポロが仕留めて勝ち越しゴールを生み出すことに成功する。
さらには左サイドの侵入からチャンスを作るトッテナムはクルゼフスキがこの日2つ目のゴールを決める。これで試合は完全に決着することとなる。
最後まで初手以上の攻め手が見つからないという課題は抜けなかったブレイズ。トッテナムも最後の1-2ヶ月は非常に苦しい戦いになったが、まずはこういうサッカーをやりたいんだよという提示はできた1年間になったのではないだろうか。方向性の提示は重要である。
ひとこと
トッテナムはこれで5位が確定。来季の欧州カップ戦に向けてスカッドの厚みを強化できるかは重要なポイントになるだろう。。
試合結果
2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
シェフィールド・ユナイテッド 0-3 トッテナム
ブラモール・レーン
【得点者】
TOT:14‘ 65′ クルゼフスキ, 59′ ポロ
主審:アンディ・マドレー