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「Catch up Premier League」~Match week 7~ 2023.9.30-10.2

目次

アストンビラ【6位】×ブライトン【3位】

プランと精度の掛け合わせでブライトンを集中砲火

 ブライトンにとっては前節と同じように向き合ってくる相手だなと立ち上がりから感じたことだろう。4-4-2でのミラーフォーメーションでCBとCHをケアしつつ、GKまでプレスに行くことはしないというのがアストンビラの守りのスタンスである。

 ブライトンはGKが持ちながら出しどころとなる場所を探す。フェルブルッヘンからスティールにGKが入れ替えったにも関わらず、ブライトンのGKがボールを持ちながら出しどころを探すスタンスは差し詰め前節の再放送といった様相だった。

 ワトキンスとディアビのプレッシングの優先度のつけ方は非常に見事だった。GKを使ってマンツーを外そうとしてきて場合、無理に同サイドに追い込むのではなく、CHへのマークを挟むようにすることで縦に進むルートを封鎖する。これによりファーガソンとウェルベックへのボール供給のルートはほぼなくなった。

 ブライトンはこれに対して、サイドでズレを作ることによって対抗。開いたダンクから三笘を追い越すエストゥピニャンからキャッシュの裏を取ってエリア内に侵入していく。

 対するアストンビラもサイドからの攻勢で対抗。よりバックラインにプレスに来るブライトンのプレスを利用し、浮いたところからコンサが持ち運びで右サイドに展開。裏をとって折り返しのディアビがシュートを狙うがうち切れない。

 ブライトンの左、ビラの右をめぐる攻防は先制点で決着。エストゥピニャンを釣りだし、三笘のみになった守備をキャッシュが裏取りで外すことに成功し、インサイドでワトキンスが仕留めた。

 追いかけるブライトンだが、中盤を起点とした攻撃がなかなか成立せず。細かいパス交換からダイレクトなパスをつけての前進は彼らのトレードマークだが、今日はCHの2人がその技術的なハードルを飛び越えられなかった感がある。

 その隙を逃さないアストンビラ。デュエルでボールを奪い取る強度、奪った後のワンタッチ目の縦のパスの精度、ディアビで加速してワトキンスで仕留めるというカウンターの威力でブライトンを制圧し、前半のうちに3点のリードを奪う。

 反撃に出たいブライトンはCFを入れ替えつつ、サイドを軸とした攻撃で反撃。ファティのゴールが左サイドからの攻撃で決まった時は反撃ののろしが上がったようにも思えた。

 しかし、またしても中盤でのボール奪取からワトキンスというこの試合の黄金パターンでアストンビラは試合の流れをすぐに引き戻す。ボールを奪い取られるターゲットになったのはギルモアだった。

 終わらないボール狩り地獄。アストンビラは5点目もカウンターからあっさりとしずめると、後半追加タイムにも6点目をゲット。

 ボールを奪い、仕留めるというところに特化してブライトンに集中砲火を浴びせたアストンビラ。この勝利で上位陣の仲間入りを果たしたといえる順位となった。

ひとこと

 ミドルゾーンに狙いを定めたプランとそこからのカウンターの精度がすべて。ファーストプランがハマれば強いエメリのチームの良さが出たといえるだろう。ブライトンは中央レーンが封鎖された時の三笘とマーチの背後への裏抜けがあまり今季見られないのが気がかり。こういう時のための解決策な気もするのだが。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
アストンビラ 6-1 ブライトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:14‘ 21’ 65‘ ワトキンス, 26’ エストゥピニャン(OG), 85‘ ラムジー, 90+7’ ルイス
BHA:50‘ ファティ
主審:アンディ・マドレー

マンチェスター・ユナイテッド【9位】×クリスタル・パレス【10位】

中2日でのリベンジ達成

 どのチームも負傷者が多くなっている23-24シーズン。その中でもひときわ負傷者が目立っており、苦しいやりくりを強いられているのがマンチェスター・ユナイテッド。この試合の前にはリサンドロ・マルティネスの一定期間の離脱が発表されるなど、負傷者の連鎖が止まらない印象だ。

 クリスタル・パレスとの一戦はミッドウィークのカラバオカップの再戦になる。ボールを持つことになったのはユナイテッド。負傷者だらけの最終ラインでのリーグスタメンデビューを飾ることとなった左のSBのアムラバトがインサイドに入り込みながらボールを持つ役割をこなしていく。おそらくエリクセンのような役割をSBから彼に託した格好だろう。

 パレスの守備はSHがナローに絞るなど、かなり横幅を狭く守っているのが印象的だった。その分、左のIHのマウントは外に開くアクションからラッシュフォードの手前で起点を作っていく。

 だが、こちらのサイドはウォードが容赦ないチェイシングからボールを奪い取る形で応戦。マウントが作ったズレをウォードが埋められるかどうかのデュエルが再三行われることに。降りるラッシュフォードから裏のホイルンドにワンタッチでパスを出したシーンなど少ないタッチで裏に流せれば、こちらのサイドからユナイテッドはチャンスを作ることが可能だった。

 前線のランで押し下げて、ライン間でポイントを作るなどユナイテッドの前線の動きには工夫がみられており、総じてそこまで悪い立ち上がりではなかったといえるだろう。

 一方のパレスはカウンターからの反撃が彼らの土俵。アイェウのボール奪取のカウンターからカゼミーロに警告を受けさせるなど、保持側のユナイテッドに異なるアプローチからダメージを与えていく。この辺りの守備を粘り強くできるアイェウとシュラップの両サイドはさすがである。

 先制したのはパレス。セットプレーからエゼのキックがファーに抜ける形になると、これを仕留めたのはアンデルセン。DFとは思えない豪快なシュートで先手を奪う。

 ユナイテッドはファーに抜けることを許してしまうセットプレー対応が気になるところ。直後のエゼのCKも得点にこそつながらなかったが、低い弾道のボールがニアを抜けてしまっており、とても褒められた守備対応とは言えないだろう。位置的にはホイルンドがきっちりとファーに届く前にボールを処理したい。

 先制したため、ラインを下げてきっちりとサイドを埋めるパレス。前半の終盤から後半にかけてユナイテッドがボールを持ちながらパレスの4-5-1を抑えに行くフェーズに突入していく。

 後半の主役は右サイド。4枚程度での大外のユニットを使ったパス交換を行いながら、パレスのブロックを打開するきっかけを探す。しかしながら、抜け出してクロスを上げるなど相手を外すアクションが見られずに苦戦。パレス相手に攻められそうな場所をなかなか見つけられない。

 パレスはロングカウンターの頻度こそ減っていたが、前に出ていけた時はプレッシングやセットプレーではゴールを脅かすプレーが見られた。限られた機会をチャンスに変えようという姿勢でユナイテッドに冷や汗をかかせた。

 終盤は左サイドにガルナチョを投入し、サイドの攻め手を強化したユナイテッド。しかし、エリア内だけでなく、クロスの出し手にも絶えずプレッシャーをかけ続けるパレスのクローズを前になかなかいい形でボールを入れることができず。

 ミッドウィークのリベンジ達成に成功したパレス。ユナイテッドはブライトン戦に続きホームでのリーグ戦で連敗を喫することとなった。

ひとこと

 もちろん、交代選手が手薄なのは痛いだろうが、この試合のユナイテッドのパフォーマンスはそこまで悪くはなかったと思う。ホイルンドは少し精彩を欠いた感じはするけど。アウェイで堂々と振る舞ったパレスは称賛に値する出来だったといえるだろう。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
マンチェスター・ユナイテッド 0-1 クリスタル・パレス
オールド・トラフォード
【得点者】
CRY:25‘ アンデルセン
主審:クリス・カバナフ

ニューカッスル【8位】×バーンリー【19位】

地力の差を生かし「ほぼ」パーフェクトな完勝

 一般的にはCL出場チームにとって、カラバオカップ3回戦は日程的にようやく息を入れられるタイミング。しかしながら、ニューカッスルの3回戦の相手はまさかのマンチェスター・シティ。基本的に今季のエディ・ハウは先回りしてプレータイムの調整をしている感じはするが、それでもこの日程は堪えるだろう。

 というわけでハードな日程のさなかのバーンリー戦は何よりも勝利が優先される状況だ。そんな中でバーンリーが仕掛けてきたのはハードな肉弾戦。直線的に縦に仕掛けてくるスピード感あるアタックで試合を支配するトライをする。右サイドのコレオジョがバーンの背後を取り、クロスから決定機を作っていく。

 一方のニューカッスルもカウンターで対抗。ロバーツのパスミスをかっさらってからのショートカウンターから反撃に。共に縦に早い攻撃からチャンスを作っていく。

 ボールを奪ってから縦に早くというメカニズムで結果を出したのはニューカッスル。トリッピアーがラムジーからボールを奪うと、手早くボールを引き受けたアルミロンが豪快な一撃を披露。強引にスコアを動かす。

 手早い攻撃はバーンリーも意識するところではあったが、こちらは抜け出す状況を作るのに精いっぱい。むしろ、強引な縦への仕掛けはニューカッスルのボールの取りどころになっており、ニューカッスルはだんだんとカウンターからチャンスを作っていく。速攻における精度の違いは両チームのクオリティとしか言いようがない。トラヴァースが奮闘しなければ、バーンリーは前半のうちにさらなる失点を重ねていてもおかしくはなかっただろう。

 後半も両チームには地力の差を感じる展開。ゴードンを軸に左サイドの深い位置まで抉ることができていたニューカッスルに比べると、バーンリーはそもそもボールを奪い返すのに苦戦。ファウルで相手の攻撃を止めるケースが多く、なかなか自分たちのターンを迎えることができない。

 ニューカッスルについてこなかったのはボックス内におけるフィニッシュのクオリティ。なかなかシュートが枠に行かずに追加点を奪えずにいる。そうこうしているうちに徐々にバーンリーは単発ではあるもののボールを奪い取れるように。

 ほんのり嫌な流れが漂ってきたところにニューカッスルは決定的な2点目をゲット。左サイドのゴードンの突破からPKを獲得。イサクがこれを仕留めてセーフティリードを得る。

 バーンリーはそこから反撃に出ることができないまま試合は終了。ジョエリントンが不穏な負傷交代したことを除けば、ニューカッスルにとっては順調な勝利となった試合だった。

ひとこと

 ボール保持でペースを持ってこれず精度勝負になってしまうとバーンリーにとってはやはり厳しいものがある。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
ニューカッスル 2-0 バーンリー
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:14′ アルミロン, 76′(PK) イサク
主審:トーマス・ブラモール

ウォルバーハンプトン【16位】×マンチェスター・シティ【1位】

徹底されたブロック守備とロングカウンターで王者をストップ

 開幕から止まることない6連勝を記録。シティの連勝劇ストップに今節挑むのはウルブスである。

 ウルブスのスタンスは非常に明確だった。クーニャの守備の基準となっていたのはコバチッチ。左のWGであるドクにはセメドに加えて、ネトがダブルチームで対応する。ネトとヒチャンという2人のシャドーはWGとワイドのCBの両睨みを託されており、バックラインへのプレスとサイドのカバーの両立という非常に守備の負荷の高いタスクを託されていた。

 シティはヌネスを高い位置に上げる3-1-6的な形で組んでいく。前線ではアルバレスの左サイドの寄りの飛び出しが目立つなど、ドクのダブルチームを揺さぶる形で前線に仕掛けを施していたのが印象的だった。実際に彼ら2人が抜き出し切れればエリア内は押し下げられ、シティのチャンスになっていた。ドーソン、ジョゼ・サの対応が光ってウルブズはなんとか凌ぎ切る。

 しかしながら、やはりロドリの不在の影響は否めない。高い位置を取るウォーカーは迷子になっており、ボールを引き出せていないし、中盤ではコバチッチやフォーデンが相手につかまってしまいカウンターの餌食に合っていた。

 ポジトラになれば、守備では低い位置に下がりながらも攻撃では脱兎のごとく前線に出ていったネトが印象的な働き。対面するアケを振り切る実質的なワンマン速攻からディアスのオウンゴールを誘発することに成功した。

 それ以降は割とファウルがかさんだり、なぜかアイト=ヌーリが自陣から怪しい運び出しをしたりなど、いくつか気になる点はあったもののジョゼ・サとドーソンを軸とした守備でウルブスは踏ん張り続ける。まずはハーフタイムにリードを得たまま前半を終えることに成功した。

 後半も試合のペースは変わらず。よりライン間をウロチョロできるボブの投入で、シティは乱数を増やしながらのライン間攻略に挑んでいく。同点ゴールのきっかけになったのはそんなボブのファウル奪取から。アルバレスのFKでこれを直接仕留め、シティは後半に同点に追いつく。

 しかしながら、ボブを入れた分か、即時奪回の威力は弱まっている感があった後半のシティ。いつもは後半ガス欠気味のウルブスのアタッカー陣だが、この日の気合は段違い。右サイドの裏を取ったセメドからカウンターを発動すると、ヒチャンとクーニャでカウンターを完結。これで再びリードを手にする。

 押し込む時間が続くシティだが、ウルブスのSHとCHの左右のスライドの対応を上回れる攻撃を作り出すことができずに苦戦する。フィリップスがロドリだったら・・と思ってしまうシーンもちらほら。特に94分のミドルはロドリがいつもチームを救う一振りを見せたシチュエーションと酷似していた。

 執念の5-4-1守備とロングカウンターで殊勲の勝ち点3を手にしたウルブス。シティのストップに成功した今季初めてのチームという栄誉を手に入れた。

ひとこと

 ウルブスの2列目とドーソン、ジョゼ・サあたりはとても素晴らしい出来だった。これくらいやらないとシティはロドリ抜きでも倒せない。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
ウォルバーハンプトン 2-1 マンチェスター・シティ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:13‘ ディアス(OG), 66’ ヒチャン
Man City:58‘ アルバレス
主審:クレイグ・ポーソン

ボーンマス【17位】×アーセナル【5位】

プレスをいなしてからはワンサイドゲームに

 レビューはこちら。

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 エバートン戦で負傷したマルティネッリを皮切りに、徐々に怪我人が増えてきたアーセナル。今週はトロサール、サリバ、ヴィエイラ、サカ、ライスといった面々に新たな怪我の話がささやかれるようになったが、マルティネッリ以外はメンバー入りに成功。ボーンマスにはそれなりのメンバーを揃えて乗り込むことができた。

 トッテナム、リバプールにそうしてきたようにアーセナルのバックラインに対しても激しいプレスを行うボーンマス。ソランケの誘導で狭いスペースに追い込む形に立ち上がりのアーセナルは苦戦していた。

 しかしながら、5分もすればアーセナルはプレスを鎮圧。ラヤがCBの一角のように振る舞うことでソランケのプレスの切っ先を鈍らせると、ライスやウーデゴールなどがボーンマスの中盤を引き付けることで中盤を空洞化。右サイドで浮いているホワイトからボールを運ぶことでプレスを脱出するように。左サイドのジンチェンコが中盤中央で縦パスを引き取る場面もあり、左右のSBからアーセナルは自在に前進ができるようになる。

 敵陣に入り込めるようになるとアーセナルは17分に先制。ウーデゴールの右サイドからのクロスをジェズスがクロスバーに当てると、跳ね返りをサカが押し込んで先手を奪う。

 反撃に出たいボーンマスは動きの大きい中盤でマークを外し、前線のタヴァニアにボールを預ける。だが、球離れが悪くなかなかボールが思うように回らない。もちろん1人で壊せるのならばそれでもいいが、アーセナルのDF陣に個人で穴を開けるのはなかなか難しい。

 そうこうしているうちにアーセナルはトランジッションから追加点。左サイドでボールを奪ったジンチェンコがエンケティアをエスコート。PKを誘発して前半のうちにリードを2点差に広げる。

 2点のビハインドを背負ったボーンマスは後半もプレスを強める。だが、これもすぐさまアーセナルに鎮圧。押し込まれるワンサイドゲームに持ち込まれる。

 サカのドリブルをきっかけに左右にスウィングするとウーデゴールがクリスティに倒されてPKを獲得。このPKをハヴァーツが決めて加入後初の得点を記録する。

 少しラインを下げたアーセナルは相変わらずのドリブル特攻を繰り返すボーンマスに対して、カウンターで応戦。スミス・ロウを中心とした交代選手のハリのあるパフォーマンスで試合はダレないまま終盤戦まで進んでいく。アーセナルとしては理想的な展開だろう。

 ゴールショーのトリを飾ったのはホワイト。セットプレーから4点目をしずめて完勝に花を添える。

 苦戦が予想される戦前のスカッド事情を覆して快勝を果たしたアーセナル。優勝候補にふさわしいパフォーマンスで勢いをつけて、いよいよ次節王者に挑むこととなる。

ひとこと

 プレス回避による相手の狙いのへし折り方、そして試合の握り方。どちらの観点でも完璧な強いチームの90分だったといえるだろう。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
ボーンマス 0-4 アーセナル
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
ARS:17′ サカ, 44′(PK) ウーデゴール, 53′(PK) ハヴァーツ, 90+3′ ホワイト
主審:マイケル・サリスベリー

ウェストハム【7位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

優勢も崩壊も前節と同じ

 前節はホームで8失点という衝撃的な敗戦を喫してしまったシェフィールド・ユナイテッド。巻き返しを図る一戦は今季好調のウェストハムのホームに乗り込んでのゲームとなる。

 1週間前の0-8の試合と同様に、この試合もシェフィールド・ユナイテッドの入りは悪くはなかった。3センターが左右に動きながら珍しくボールを動かしながら試合をスタートしたウェストハムのボール保持を封殺。高い位置でボールを止めると、そこから攻撃に打って出る。

 左右のWBを軸とした幅をとった展開からクロスを上げて攻撃を完結。エリア内のクロスの受け手も比較的にオープンでシュートを打てる状態にはなっていた。幅を使った攻撃で主導権を握るのはニューカッスル戦の前半と瓜二つである。

 ウェストハムがジリジリと反撃に出たのはセットプレーから。コスタが無理なボールキャリーから自陣の深い位置でファウルを犯すなど、ウォード=プラウズがいるチームに対してかなり軽率なプレーもあったが、直接FKで咎められることだけはなんとか回避。それでも押し込む機会を確実にCKに繋げるなど、少しずつシュートのチャンスを増やしていく。

 ブレイズの雲行きが怪しくなったのは守備のメカニズム。3センターがサイドに蓋をするという前提が少しずつ崩れるようになってくる。決壊したのは左サイド。ボーウェンが裏をとった先制点はマカティーの対応が完全に後手。前節同様に怠慢な守備がきっかけで優勢な展開を手放してしまう。

 失点以降、ルーズさに歯止めがかからないブレイズ。ウェストハムはアントニオへの縦パスからライン間に侵入していったソーチェクが追加点をゲット。前半のうちにリードを広げる。

 後半、ロングボールから押し返していきたいシェフィールド・ユナイテッド。しかしながら、CK以外のオープンな形からは説得力のある攻撃をなかなか見せることができずに苦戦が続く。カウンターを主体に攻めるウェストハムの方が得点に近づく機会は多かった。

 選手を交代しながら攻撃の活性化を狙うブレイズだったが、失点以降に失ったリズムは後半に取り戻すことができず。エリア内のデュエルで対抗したウェストハムのゴールをこじ開けることができず、今節も勝ち点を掴めないまま試合の幕を下すこととなった。

ひとこと

 いい流れを土台となるブロック守備の甘さでぶち壊す流れは前節と同じ。トッテナム戦あたりから続く、悪くない時間帯を作れている状況に早く実績をつけたいところだが。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
ウェストハム 2-0 シェフィールド・ユナイテッド
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:24′ ボーウェン, 37′ ソーチェク
主審:グラハム・スコット

エバートン【15位】×ルートン・タウン【18位】

今季屈指の空中戦を制したのは?

 前節、ブレントフォードに今季初勝利を挙げたエバートン。しかしながら、まだ今季はホームスタジアムでは勝ち点どころか得点すら挙げることができていない。0-1での敗戦が3連続で続いているグディソン・パークで今季いまだに勝ちがないルートンにはきっちり勝っておきたいところだろう。

 ウルブス戦では強気な姿勢を見せたルートン。この日もブラウンを狙った積極的なロングボール攻勢で縦に早い展開を作っていく。守備におけるプレスも積極的。流れの中でGKまでプレスに行くこともしばしばで、エバートンはバックラインまでプレッシャーにさらされることとなった。

 もっとも、エバートンにとってはこうした展開は歓迎だろう。キックアンドラッシュのスタイルで言えば年季が入っているのはこちらのチームだし、ピックフォードは別に寄せられなくても前線に思いっきり蹴ることはままあるので、そんなに問題にはならない。ロングボールがクリティカルだったのは物量で勝つエバートンの方で、中盤でのセカンドボールを拾い、敵陣深くまで侵入しつつセットプレーを中心にチャンスを作っていく。

 しかし、ルートンもバックラインの勇気ある押し上げからキャルバート=ルーウィンへのロングボールを封殺すると、徐々に押し込む機会を得るように。そうして得たセットプレーのチャンスからルートンは見事に先制。競り勝ったモリスのボールを最後はロッキャーが押し込んで先手を奪う。

 失点シーンはモリスのマーカーがマイコレンコというミスマッチが起きており、このままでいいのか?という感じだった。案の定、ルートンはさらなるセットプレーから追加点。ネットを揺らしたのはまたしてもマイコレンコを振り切ったモリスだった。

 追いかけるエバートンはマクニールのスラローム式のドリブルから徐々に押し返すと、ファーのガーナーを狙ったくろすから決定機を演出。こちらも空中戦からチャンスを作っていく。

 すると、前半終了間際にエバートンは追撃弾をゲット。まるでラグビーのようなゴール前の激しいフィジカルバトルから最後はキャルバート=ルーウィンが押し込んでHT前に点差を1点に縮める。

 後半、エバートンはゲイェに代えてハリソンをサイドに投入。これにより、左がマクニール、右がハリソンという両サイドからのアタックが可能になったエバートンは縦への推進力が増したが、その一方で中央に穴を開けてしまうケースを頻発。ルートンもまたモリスへの縦へのコースが空いたことでアタッキングサードに入りやすくなっていた。

 しかしながら、エバートンにとってはたとえ攻め込まれたとしても殴り合いは歓迎。前線の質で勝るエバートンはこの土俵では十分勝負できると考えても不思議ではない。キャルバート=ルーウィンとベトという2トップへの切り替えもまた乱打戦に備えるのにふさわしい筋肉上等の組み合わせといえるだろう。

 だが、計算外だったのはベトのヘディングの精度。相手にことごとく競り勝てるのだが、とにかくヘディングが枠に飛ばない。チャンスの形自体は作れているにも関わらず、なかなかエバートンは結果を出すことができない。

 後半は後方の人員を怪我で入れ替えなければいけない不測の事態が続いたルートン。エバートンの圧力に屈しつつも運に助けられて何とか逃げ切りに成功。歴史に残るプレミア初勝利をグディソン・パークでつかんだ。

ひとこと

 やりましたね!昇格組の初勝利がようやく!

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
エバートン 1-2 ルートン・タウン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:41′ キャルバート=ルーウィン
LUT:24′ ロッキャー, 31′ モリス
主審:アンソニー・テイラー

トッテナム【4位】×リバプール【2位】

9人をラストプレーで撃破し、無敗の旅は続く

 先週、アウェイのノースロンドンダービーで引き分けたトッテナム。2週連続で無敗のチームとの試合に。ホームにリバプールを迎えて、無敗防衛チャレンジに挑む。

 立ち上がりは非常に落ち着かない展開に。リバプールがトッテナムにプレスをかけに行ってのスタートになるが、リバプールのトップはガクポ。プレスにおける機動力はあまり期待はできない。そういう点でトッテナムが受けるプレスは前節のアーセナル戦よりは圧が比較的軽いもの。トッテナムは横に揺さぶりながらのビルドアップでプレスを外しを織り交ぜていた。

 マディソンにボールを入れるところまではそれなりにたどり着いたトッテナムだが、そこから先のサイドの崩しは課題がある。右サイドのクルゼフスキに対しては大外を回る形のサポートができず、左のリシャルリソンは対面が間に合ってしまうと、相手を外せずに苦戦。仕上げの部分で難がある。

 一方のリバプールはトランジッションからの右のサラー勝負。彼によってトッテナムのDFラインを決めつつ、相棒のショボスライと共にバックラインの手前か奥にパスを送り、トッテナムの最終ラインを面で破壊する。手前のパスがイメージがつきにくいだろうから説明すると、サラーと同じ高さで左サイドから絞ってパスを引き取りに来るディアスなどがこれに当たる。

 NLDと比べると構造の制御というよりは間に合うかどうかというデュエル勝負な感じがあったこの試合。アップテンポで進む試合でババを引いたのはリバプールだむた。ジョーンズの一発退場で局面のデュエル勝負から数的不利を生み出してしまう。

 これにより、トッテナムは4-4-1で組むリバプールに対して中盤が浮きやすくなるように。マディソンによりスムーズにボールが入るようになったトッテナムはサイドチェンジからさらに敵陣に攻め込むことができるように。

サイドチェンジに加えて、ハーフスペースの裏抜けを組み合わせると、リバプールのエリア内の陣形はかなり崩れるようになった。リシャルリソンのバックドアから生み出したソンの先制点はまさしく中盤のプレスの遅れと、サイドの揺さぶりのコンボから生まれたものだ。

 リードされたリバプールだが、この日の救いはアタッキングサードの崩しが枚数勝負ではなく、面破壊のため数的不利の影響を受けにくいこと。ガクポのゴールの起点となったショボスライのクロスもそうだし、その直後のディアスの決定機もそう。枚数関係なくラインの揺さぶりでトッテナムのDFを面ごと壊すアプローチだった。

 後半、押し込むスタートを見せたトッテナムが立て続けにシュートチャンスを迎える。しかしながらマディソンとソンのシュートは立て続けにアリソンに防がれてしまう。

 リバプールはWGの守備位置を下げてバックラインが外に釣り出されるのを防ぐ修正を施す。ラインは下がるが、カウンターでのサラーの線は生きている状態が続くのは流石である。

 だが、ジョッタの退場は想定外だっただろう。トッテナムは5-3となったリバプールのブロックを崩しにかかり、3ポイントを奪いにいく。ファーへのクロスを中心に攻めたトッテナムに対して、アリソンとCB陣の奮闘でなんとか凌ぐ時間が続くリバプール。

 しかし、最後の最後に守備ブロックが決壊。ポロの抜け出しでラインを下げてからの早いクロスという新しいアプローチにマティプが対応しきれずにオウンゴール。

 トッテナムにとっては叩き続けた扉をようやくこじ開けた大きなゴール。リバプールにとっては守り続けた1ポイントがこぼれ落ちる失点。明暗がラストプレーで分かれた無敗対決はトッテナムが生き残りに成功した。

ひとこと

 9人という前提はあるがこの出来のリバプールのバックスの撤退守備を打ち破っての勝利はトッテナムにとって自信になるだろう。

試合結果

2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
トッテナム 2-1 リバプール
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:36′ ソン, 90+6′ マティプ(OG)
LIV:45+4′ ガクポ
主審:サイモン・フーパー

ノッティンガム・フォレスト【12位】×ブレントフォード【13位】

10人の危機にギブス=ホワイトが立ち上がる

 CL組とEL組が土曜に先行開催した結果、日曜のゲームはこのカードただ一つだけ。ホームのフォレストがミッドウィークにカップ戦を戦ったブレントフォードを迎え撃つ試合だ。

 試合は非常に手堅い展開となった。中盤を抑えつつ、相手のバックラインは枚数を余らせるようにボールを持つプレスが両チームの基本線。どちらかといえば僅かにフィーリングが良かったのはブレントフォードだろうか。ムベウモとアイエルで相手のサイドをピン留めしつつ、右の大外に顔を出すイェンセンからズレを作り出す。

 フォレストはカウンターからトランジッション主体の迎撃で対抗。エランガのスピード、右の大外から裏抜けするオーリエ、そして左に流れるアウォニイなど前線にポイントを作り続けることで、ボールを奪ってから素早く攻勢に出る。

 その分、ポゼッションはやや苦戦したフォレスト。ウィサを先導役とするブレントフォードの誘導に対して、片側サイドに閉じ込められてしまい、バックラインからのキャリーができなくなってしまう。しかし、これもドミンゲスの列落ちからの叩きで圧縮のプレッシャーを逃すことに成功していた。

 よってプレスの位置を下げるブレントフォード。その結果、試合は堅い展開に流れるように。どちらのチームもそこまで大きなズレを見せることはなく、保持側が限られたチャンスから機会を伺う展開に。ブレントフォードは左のヒッキーとルイス-ポッターでエランガとオーリエを振り回したが、逆サイドのムリーリョの危機察知能力の高さに潰されてしまう。

 フォレストは右サイドにおいて単体ではいい動きをするのだが連携面で苦戦。エランガのサポートの仕方をオーリエもサンガレも悩んでいるようで、一発で抜け出すくらいクリーンな形でなければチャンスにはならなかった。

 セットプレーからフォレストはネットを揺らすが、これはアウォニイがオフサイド。前日のオフサイドの誤審のこともあり、いつもよりもチェックが慎重に時間をかけて行われていたのが印象的。ちなみに4thレフェリーはダレン・イングランドからクレイグ・ポーソンに割り当てが変更されている。

 迎えた後半、両チームともにプレスを強める立ち上がり。積極的に試合を動かそうという姿勢はボールを奪いにいくスタンスから読み取ることができた。

 しかしながら、その姿勢が裏目に出てしまったフォレスト。ニアカテはすでに警告を受けていたにも関わらず、複数回ファウルまがいのアプローチを連続で行ってしまい、お目こぼしを受けることができなかった。

 ブレントフォードはこのセットプレーの機会を生かして先制。イェンセンのプレースキックをノアゴールが仕留めて先行する。もちろん、オフサイドチェックは入念に。

 だが、メンバーを交代したフォレストはすぐに追いつく。左サイドから味方を追い越す形で抜け出した交代直後のトフォロのクロスをインサイドでドミンゲスが合わせて同点。中にはDFの枚数はそろっていたが、おそらくファーのアウォニイにボールが来ると予測していたコリンズは全くドミンゲスにアプローチができなかった。

 追いつかれてしまったブレントフォードは前線の枚数を増やす3-5-2を採用。プレスの圧力を高めるところからゴールを奪いに行く。

 なかなか退場者が出たとは思えないフラットな展開が続く中で、85分が過ぎたあたりからようやくブレントフォードが数的有利らしい攻め込み方を見せるようになってくる。

 劣勢のフォレストの中で光ったのはギブス=ホワイトの奮闘。チャンスメイクでの貢献はまぁ想定内ではあったがムベウモの独走裏抜けを食い止めた守備はしびれるものがあった。

 ブレントフォードはボックス内に人を用意しつつ最後まで攻め続けるアクションを見せるが、フォレストの守備陣が何とか切り抜けに成功。数的不利に陥りながらも意地を見せて勝ち点1を守りぬいた。

ひとこと

 痺れるぜ、ギブス=ホワイト。

試合結果

2023.10.1
プレミアリーグ 第7節
ノッティンガム・フォレスト 1-1 ブレントフォード
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:65′ ドミンゲス
BRE:58′ ノアゴール
主審:ポール・ティアニー

フラム【11位】×チェルシー【14位】

初ゴールが起爆剤になるか

 近年は格差が目立っていたウェストロンドンダービーだが、昨年はまさかのフラムが上位でのフィニッシュ。そして、今季のこの対戦も再びフラムの方が上位で迎えた一戦となる。

 立ちあがりにチャンスを迎えたのはチェルシー。出場停止のジャクソンに代わって先発だったブロヤにいきなり決定機が訪れるが、シュートが枠をとらえられず、早々のチャンスを逃す。

 チェルシーの保持に対してフラムはプレスを強めていく。チェルシーは手数をかけるポゼッションよりも縦に速い選択に注力。フラムはチェルシーと異なり、右サイドに展開しつつクロスを上げるポゼッション重視のスタイルをとっていたので、チェルシーはトランジッションからも速攻を重視。ムドリクを軸に左サイドから裏を取る形で反撃に出る。

 そうした中で先制点を奪ったのはチェルシーだった。左サイドで高い位置を取ったのはムドリクではなくコルウィル。カイセドの促すようなパスからオーバーラップをすると、エリア内のムドリクにラストパス。これを仕留めたムドリクはうれしい加入後初ゴールを記録する。

 前節のチェルシーの試合の戦評で抜け出すところに力を使いすぎている感がある!と述べたが、カイセドのパスに促されたコルウィルを挟むことで、ムドリクはフィニッシュより手前に使う力をセーブできていた。やはりカイセドがいれば、手前の部分の余裕は持たせられるようになるのかなという感じである。

 先制したチェルシーはそのまま追加点をゲット。怠慢なフラムの保持をパルマーが咎めて、ブロヤが2点目を決める。フラムがシュートすらたどり着けないうちにチェルシーは2点のリードを手にする。

 フラムはその後もポゼッションから反撃を狙う。片側に寄せつつ、パリーニャで逆サイドへの展開という形は悪くなかったように思う。だが、この日は左サイドからのカウンターのキレが抜群だったチェルシー。フラム以上の得点のにおいがするカウンターで、常にのど元にナイフを突きつけていた。

 後半、フラムはハイプレスからテンポを取り戻していく。チェルシーもプレスの手は緩めず、試合は同サイドにポゼッションをいかに閉じ込めるかバトルを軸に進んでいく。トップの誘導からカイセドの回収までスムーズに描けていたチェルシーの方がこの点ではやや優勢だったといえるだろう。

 フラムはイウォビを投入し、ウィリアンと共に低い位置から運ばせる選手を作ってポゼッションの安定化を図る。安定という意味ではそれなりに効果があった交代かもしれないが、決め手としてチェルシーのブロックを崩す方策をフラムは最後まで見つけられなかった印象だ。

 昨年、上回られたローカルライバルを制圧したチェルシー。ムドリクとブロヤの初ゴールを起爆剤としてここから上がっていきたいところだが。

ひとこと

 ムドリク、よかったねという気持ちと本来の活躍が期待されるスピード感はこんな感じだったんじゃないのかなという気持ちが半分ずつ。

試合結果

2023.10.2
プレミアリーグ 第7節
フラム 0-2 チェルシー
クレイヴン・コテージ
【得点者】
CHE:18’ ムドリク, 19‘ ブロヤ
主審:ティム・ロビンソン

今節のベストイレブン

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