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「問われる王者の資質」~2022.9.14 J1 第22節 名古屋グランパス×川崎フロンターレ プレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第22節
2022.9.14
名古屋グランパス(10位/9勝10分9敗/勝ち点37/得点25/失点28)
×
川崎フロンターレ(2位/16勝4分7敗/勝ち点52/得点49/失点30)
@豊田スタジアム

戦績

近年の対戦成績

 直近5年間で川崎が7勝、名古屋が2勝、引き分けが3つ。

名古屋ホームでの戦績

 名古屋ホームの試合では直近10試合で名古屋の2勝、川崎の6勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・川崎は名古屋戦4連勝中でうち直近3試合はクリーンシート。
・川崎が勝利すれば2015-16年以来の2年連続ダブルを達成する。
・しかし、ホームの公式戦においては名古屋は川崎に直近5試合で1敗のみ(W2,D2)
・直近6年の名古屋ホームの公式戦はいずれも勝利チームがクリーンシートを達成している。

 相性でいえば川崎が優勢。4連勝は歴代で見ても2番目に長いランであり、川崎が勝利すれば2回目の名古屋戦での2年連続でのクリーンシート達成となる。

 しかし、名古屋ホームにおいては川崎は苦戦中。直近5試合の名古屋での試合は1勝しかできていない。

 名古屋ホームにおける戦績の特徴になるのは勝敗が完全決着しやすく、いずれもクリーンシートであること。少なくとも直近6年のリーグ戦は片方がもう片方をクリーンシートで下しており、シャットアウト勝ちを収めている。内訳は川崎が4勝、名古屋が2勝だ。

スカッド情報

【名古屋グランパス】

・左膝内側側副靭帯損傷で欠場していた酒井宣福は離脱後初の全体練習に参加。
・長澤和輝は右膝外側半月板損傷で離脱中。
・ヤクブ・シュヴィルツォクは活動停止中。

【川崎フロンターレ】

・レアンドロ・ダミアンは右足関節外側じん帯損傷および右腓骨筋肉離れで10週間の離脱。
・永長鷹虎、高井幸大は代表招集のため出場不可。
・登里享平、車屋紳太郎は前節メンバー入りが出来ず。

予想スタメン

Match facts

【名古屋グランパス】

<名古屋のMatch facts>
・得点数は下から4番目であるが、失点は浦和に次いで少ない。
・リーグ戦直近5試合中3試合はクリーンシート。
・敗れれば今季初のホームでのリーグ戦での連敗になる。
・ホームで挙げた今季6勝のうち、5勝はクリーンシート。
・セットプレーでの失点は9で5番目に多い。
・長谷川健太監督は川崎とのリーグ戦で6連敗中。ホームゲームで勝利したのは2014年のG大阪時代が最後。

 とにかく失点が少ないのが彼らの特徴だ。今季ここまで失点は28であり、浦和に次いで少ない。ただし、得点も少なく下から4番目。リーグ直近5試合はクリーンシートが3つだが、無得点も3つという形だ。プレミアでいえばウォルバーハンプトンのような少得点少失点を地で行くチームである。日本のウルブス。

 ホームでの成績が秀でているわけではないが、連敗はしておらず安定した成績。6勝中5勝はクリーンシートとここでもゴールに鍵をかけることが求められる。

 ただ、セットプレーでの失点は9と彼らより多いのは横浜FM、神戸、柏、鹿島。失点数の割には多い。川崎はリーグで最もセットプレーからの得点が多いチーム。相性はあまり良くない。

 それ以上に気になるのは指揮官の相性。長谷川監督は川崎とのホームゲームは6連敗中であり、勝利は8年前までさかのぼる。この相性の悪さの克服も必要だろう。

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・直近6試合のリーグ戦で5勝を挙げており、この間の勝ち点は広島と並びリーグトップ。
・直近8試合のリーグ戦で22得点。それ以前の21試合で27得点だった。
・アウェイでのリーグ戦は直近6試合で1勝のみ(D2,L3)。得点は7。
・直近6試合の中3日以下の試合で1勝のみ(D2,L3)
・家長昭博は直近11試合のリーグ戦において11得点に関与(8G,3A)
・知念慶がスタメン出場した今季の公式戦はここまで12試合で1敗だけ。

 湘南戦ではブレーキがかかってしまったが、優勝争いのライバルである広島を下して勢いは再点火。原動力となっているのは直近8試合で22得点を挙げているゴール増加である。それ以前での21試合では27得点なので、いかに勢いがあるかがわかるだろう。

 しかし、アウェイではなかなか光明を見いだせない。直近6試合ではわずかに1勝。ここからアウェイ3連戦を迎える川崎にとってはここが正念場になる。中3日以下の試合では鳥栖戦を除けば直近で勝利はなく、戦力の運用には課題を残す。

 前線のスタメンは活躍が頼もしい。家長、知念は共に好調。知念は得点を挙げれば自身最多タイの4試合連続ゴールになる。アウェイでのゴールが多いことを生かし、この試合でも結果を出したい。

予習

第27節 G大阪戦

第28節 福岡戦

第29節 神戸戦

展望

■新戦力の上積みはどこまで?

 川崎にとっての延期シリーズ第2弾は名古屋。現在の順位は10位。数字の上では残留を脅かされる可能性もなくはないが、自動降格圏まで12ポイント差であり、入れ替え戦までも9ポイントあることを踏まえると、基本的にはACL争いにも残留争いにも絡んでいない「無風地帯」にいるチームと位置付けるのが妥当だろう。余談だが、川崎の残り試合は神戸を除けば現在の中位に当たるチームばかりだったりする。

 さて、名古屋についての考察は実は前回の試合が始まる前にすでにやっている。

 名古屋の基本的な仕組みはこの試合からそこまで大きくは変わっていないように思う。ボール保持においてはショートパスを志向しており、バックラインからボールをつないでいく。

 出口となるのは両WB。突破力もあり、逆にクロスに飛び込む役割もできる相馬と森下の2人の出来は攻撃を大きく左右するといっていいだろう。名古屋としてはここに正確にボールを届けられるかはポイントになる。

 その点でバックラインの働きには不満が残る。GK+3CBと人数をかけている割にはボールを運んで相手の2列目を動かすような動きがほとんど見られず、多くの枚数をビルドアップに活用するメリットが見いだせない。よって、WBが高い位置をとれるかどうかはCHのレオ・シルバがフリーになれるかが大きなポイントになる。

 変わったところは夏に入った時の新戦力の上乗せ要素である。新加入選手の中で最も存在感を発揮しているのが永井謙佑。FC東京から恩師の元に馳せ参じたアタッカーだ。

 目下の頭が痛い問題といえば、当然マテウス・カストロの離脱。仕上げとボール運びの両面で効果的だったカストロの不在は大きなダメージになる。そんな中で永井は裏抜けという異なる形でチームの攻撃を仕上げようとしている。自陣深い位置まで下がりながらボールを引き出すことはできないが、仕上げの部分ではカストロが負っていた責任を請け負う形だ。

 純粋なスピードを生かした裏抜けはとってもシンプル。チームのどこからでも狙えるのが大きなメリットになる。バックラインからも蹴ることが出来て、形を作ることに苦労している名古屋にとってはお手軽に活用できる武器であることは間違いない。逆に彼がいなかったらと思うとぞっとするくらいだ。

 WBからのクロスに合わせるイメージはそこまでないが、永井に限らず酒井と新加入のレオナルド以外の名古屋のアタッカーはあまりクロスに合わせるのがそもそも得意ではないので、あまり気にしなくてもいいかもしれない。

 福岡からやってきた重廣も出番をもらうことは出来てはいるが、持ち味を発揮できているかは怪しい。前を向いてナンボなんだろうけども、チームとしてそういう機会を作る感じにはなっていない。レオナルドとの関係を構築できれば違うのかもしれないが、また現状ではそちらの路線に大きく舵を切る構えはない。永井の裏抜け以外にカストロ離脱を埋める武器は現状では探している最中という位置づけになるだろう。

 守備に関しては後ろを余らせる人主体のプレスを行っている。G大阪戦や福岡戦はプランそのものの妥当性以前に、選手たちのプランの実行力に難があったように見えた。特にG大阪戦では丸山や藤井の寄せがことごとく甘く、G大阪の前線を好き放題やらせてしまっていた。

 神戸戦では寄せなどのフィジカルコンタクトに積極的になってきたのは好材料。前線でのプレスもだいぶ足が動いており、プランにコミットするための状態は整いつつある。

■チャナティップ活用のメリットと懸念

 川崎にとって名古屋と向き合う上で留意したいのは直近の湘南戦だ。ラインをなるべく高く上げたい、人基準で守る、だがどこへボールを追い込むかはやや不明瞭という名古屋の守り方は湘南の姿勢と一致するところがある。

 湘南戦の川崎で一番まずかったのは橘田が指摘していた「知念を孤立させてしまったこと」。つまり、縦パスを当てるチャレンジは出来ていたが、そこから先の道筋を用意できなかったということになる。

 逆に広島戦でうまくいったのは知念とリンクする選手を準備できていたところが大きい。脇坂や橘田が列を移動しながら(初めから立っているだけではダメ)、一列前にフォローする動きが出来ていた。

 このあたりはチャナティップの起用も面白いかもしれない。CHの背後はちょろちょろできるし、前を向ければボールを運ぶこともできるので、CFの知念→小林への入れ替えも比較的しやすいかもしれない。

 チャナティップは低い位置に流れて稲垣を引っ張り出す動きを見せても面白い。稲垣はタフな相手ではあるが、名古屋の前線の守備は周りをフォローして挟みに行くような動きはとても少ないので、普段よりは起用のリスクは低い。MFの背後でちょろちょろとIHを引き出す動きの両面を保持で使い分けられれば大きな役割を果たすことは十分可能だ。

 とにかく、川崎はCFへの縦パスの先に選択肢を用意できるかは重要。それがなければ楔に対して、名古屋のCBが思い切りぶつかることが出来てしまう。迷いを与えたい。

 守備に関してはWBのところ。これまではジェジエウが帰ってきたこともあり、右サイドは強気で前に出ていた。その際に怖いのは湘南戦のPK献上の場面。前に出て来たジェジエウの背後は怖さがある。ジェジエウの背後を取る存在として永井はうってつけの人材。右サイドがプレスで前に出ていくならばバックライン全体で明確にスライドする約束事は徹底したい。

 中盤はレオ・シルバのケアを優先したい。CBからは即時奪回を狙いつつ、持たせるときは持たせる形でメリハリを付けたい。インサイドを封鎖してプレス色を弱めるやり方も有効な相手だ。

 ただし、押し込まれてしまった際のラインアップはサボらないこと。バイタルを空けてのレオ・シルバや稲垣のミドルや素早いサイドチェンジで攻撃を受けるのは避けたい。押し込まれてもきっちりラインを上げ直すこと。チャナティップが起用される際は特にこの点がおろそかになりやすいので気を付けたい。

 名古屋との対戦においては湘南戦の反省は大いに生かせそうである。王者の資質として自分が思いつくのは「同じミスをしないこと」と「過密日程に強いこと」。名古屋戦はこの2つが大いに問われる一戦になりそうだ。

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

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