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「Catch up Premier League」~Match week 10~ 2023.10.27-10.29

目次

クリスタル・パレス【11位】×トッテナム【1位】

前節と同じ展開を強敵相手に展開

 前節、2位に勝ち点差をつけての首位に立ったトッテナム。今節はセルハーストパークに乗り込んでパレスとのフライデーナイトの一戦に挑むことになる。ボールを持つことになったのはもちろんトッテナム。パレスはCHを守備基準としてトッテナムのバックラインにはプレッシャーをかけない。

 トッテナムからすれば前節のフラム戦の続きのような試合だったと言えるだろう。前節以上にソリッドな4-4-2にどのようなアプローチしていくかが重要な展開になる。トッテナムは2-3-5と3-2-5を行き来しながらパレスの2トップの脇に起点を作っていくことを画策していた。

 フラム戦同様に片側のサイドから進撃することはできていたトッテナムだが、パレスの堅い守備に苦戦。高い位置で左右に顔をだすマディソンはなんとかしようとする気概は感じていたが、特にパレスのCHの戻りが効いており、普段マディソンが作り出す中央の重要なエリアを封鎖することに成功していたのが大きかった。

 前がかりな攻撃は当然カウンターの処理も大事になってくる。ヴィカーリオの仕事が前節よりも増えていたことを踏まえるとパレスは攻守にフラムよりも強敵だったということができるだろう。エグさを見せていたファン・デ・フェンの裏のケアがなければ、パレスには早い段階で破られてもおかしくはなかった。

 トッテナムは同サイドを奥に進む上で左サイドのテコ入れを実施。デイビス→エメルソンの交代で活性化を図っていく。押し込んでのサイド攻撃を続けるトッテナムは53分に先制。右サイドでハーフスペースアタックが成功し、マディソンの折り返しがオウンゴールを誘発。枠内シュート0で先制点を手にする。速いボールだったことは確かだが、ゴール方向に向かうボールでなかっただけにウォードには後悔が残ったことだろう。

 パレスはラク=サキを投入し攻撃にアクセントを加えていく。ここが勝負の分かれ目と言ったところ。しかし、次のゴールを決めたのはトッテナム。サールの一発でのサイドチェンジからマディソンとジョンソンが左サイドを攻略。抜け出しから最後に時間をもらったソンがゴールをゲットする。アンデルセンを外に釣り出されて、インサイドに折り返されたのはパレスとしては痛恨だった。

 その後はポゼッションで平定にかかるトッテナム。これも前節の再現である。しかし、パレスは80分過ぎから敵陣に入り込んでいく機会を確保する。セットプレーと左右のクロスからゴールに向かっていく。すると後半追加タイム。右サイドからポロが届かないところに狙ったクロスをアイェウが仕留めて1点差に。

 終盤は冷や汗をかいたトッテナムだが、なんとか逃げ切りに成功。前節と同じ展開を前節よりも手強い相手にやり切った90分となった。

ひとこと

 パレスにやれるのであれば引くところから入る相手はそれなりにやれるっていうことだろう。

試合結果

2023.10.27
プレミアリーグ 第10節
クリスタル・パレス 1-2 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:90+4′ アイェウ
TOT:53′ ウォード(OG), 66′ ソン
主審:アンディ・マドレー

チェルシー【10位】×ブレントフォード【14位】

こじ開けられずに代償を重ねる

 フラム、アーセナルとロンドンのチーム相手に着々と勝ち点を稼いでいるチェルシー。この試合ではややメンバーから外れている選手がいるが勢いにのってさらに勝ち点を積み重ねていきたい。

 立ち上がりにロングボールから縦に速く攻め込んでいたのはブレントフォード。チェルシーのプレスに追い立てられるように前線に早い段階でボールを預けていく。ブレントフォードはロングスローなどジリジリとしてはいるが、ボックス内にクロスを放りこんていく。

 チェルシーは自陣の深い位置からでもロングカウンターを発動。スターリング、ジャクソン、パルマー、マドゥエケの4枚の前線で攻撃を完結させにいく。

 10分もするとチェルシーはようやくゆったりとしたポゼッションに移行。ブレントフォードは中央を噛み合わせるように迎撃していく。そのため、チェルシーは右のマドゥエケの1on1とハーフスペースから逆サイドにクロスを放り込んでいくパルマーからチャンスを作っていく。

 特にトップ下のパルマーは好調。中央からもアタッカーに時間を供給し、チャンスを作り出していく。だが、これをアタッカー陣がなかなか枠に持っていくことができない。

 前半の終盤には再び縦に速い展開の応酬に移行。しかしながらどちらも決め手に欠き、前半はスコアレスのままでハーフタイムを迎える。

 迎えた後半、チェルシーはゆったりとしたポゼッションから攻略を狙うフェーズに移行する。前半と少し違ったのはブレントフォードもボールを持つ側に回るとゆったりとしたポゼッションで手数をかけて攻撃を行なっていたこと。これにより、前半と異なり試合は攻守の切り替えが少ない展開となった。

 押し込むフェーズで仕事をしたのはブレントフォード。イェンセンのロングスローにスムーズに移行できる右サイドを軸に攻めていくと、サイドを抜け出したのはムベウモ。前節もアシストをした右足からこの日も見事な軌道のクロスで先制点を演出。ピノックが押し込んでブレントフォードがリードを奪う。

 その後はスムーズに撤退守備に移行するブレントフォード。チェルシーはブロック守備の攻略に挑むこととなるが、サイドからブレントフォードの守備の重心を崩すことができずに苦戦。交代した前線の選手たちもなかなか試合の活性化をすることができない。

 サンチェスの上がりで文字通り全てを投げ打ったチェルシー。だが、その賭けの結末はロングカウンターからのブレントフォードの追加点。ムベウモは2試合連続の1ゴール、1アシストだ。

 ブレントフォードをこじ開けられなかったチェルシーは最後に更なる失点の代償を支払うことに。続いていた公式戦無敗の記録もひとまずここで打ち止めとなった。

ひとこと

 やはりキーポイントは前半だろう。パルマーを軸にチャンスメイクが効いていた時間帯にチェルシーは先制点が欲しかった。

試合結果

2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
チェルシー 0-2 ブレントフォード
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
BRE:58′ ピノック, 90+6′ ムベウモ
主審:サイモン・フーパー

アーセナル【3位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

あらゆる側面で完璧な90分

 レビューはこちら。

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 セビージャとのCL後のホームゲームに迎えるのは今季最下位のシェフィールド・ユナイテッド。どこまでメンバーを落とすかは難しいところだったが、アルテタは数人のメンバーを入れ替えながらスタメンを組んだ。

 ブレイズは4-4-2でブロックを形成。CBにはそれなりにボールを持たせつつ、ミドルゾーンで踏ん張る構えを見せる。アーセナルは2トップの脇から前進。WGにボールを預けて相手の中盤のラインを下げつつ、バイタルにライスを送り込む形で敵陣手前のスペースからブレイズのゴールを狙っていく。

 中盤はやや窮屈だったが、この形からアーセナルは先制。サカとハヴァーツのレーン交換からライスに時間を与えてエンケティアにラストパス。難しい弾道のパスだったが、エンケティアは見事にコントロールして冷静にフォデリンガムを交わすシュートを決める。

 アーセナルはマンツーでブレイズのCHがついてくるハヴァーツとスミス・ロウを囮に中盤中央に穴を開けていく。ジンチェンコのレーン移動、サカの左サイドに移動してのIH化など、この時間は実験的な要素が強まっていた時間帯だった。そういったトライができるのはカウンターでの脅威でアーセナルのバックラインがあまり脅かされなかったからだろう。

 後半、アーセナルは早々にセットプレーから追加点。前半から狙っていたGK周りへのボールからこぼれ球をエンケティアが押し込んで2点目をゲットする。

 ブレイズはプレスを強めてペースを取り戻しに行くが、逆にアーセナルにスペースを与える結果に。アーセナルのバックラインはプレスを回避しつつ、中盤に簡単に縦パスを刺すことができ、スムーズな敵陣の侵入が簡単にできるようになった。エンケティアの3点目のゴールのギャップは前半にはあまりみられなかった類のものだ。

 こうなるとアーセナルはボーナスステージに突入。トロサールのようなスペースがあればいくらでも相手を剥がせるような選手が存分にかがやく展開に。ほかのアタッカーはトロサールがガンガン供給してくれるチャンスをPA内で待っている状態だった。

 ファビオ・ヴィエイラが自ら得たPKを決めて試合後に生まれた子供に前祝いをささげる4点目を決めると、スタジアムはセレモニームード。この流れのトリを飾ったのは50試合目のプレミア出場となった冨安。後半追加タイムにうれしい加入後初ゴールを決めて、チームメイトから手洗い祝福を受けた。

 エンケティアのハットトリック、ヴィエイラのお祝い、そして冨安の初ゴール。主力のプレータイムマネジメントも含めて完璧な90分を描いたアーセナル。無敗キープで首位追走に成功した。

ひとこと

 写真に残したい完璧な夜だった。

試合結果

2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
アーセナル 5-0 シェフィールド・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:28‘ 50’ 58‘ エンケティア, 88’(PK) ヴィエイラ, 90+6‘ 冨安健洋
主審:ティム・ロビンソン

ボーンマス【19位】×バーンリー【18位】

納得の逆転初勝利

 なかなか今季初勝利を掴むことができないボーンマス。こちらもプレミア昇格初年度で苦しい戦いが続くバーンリー戦は初勝利を挙げる絶好のチャンスといえるだろう。

 立ち上がりから積極策を見せたのはバーンリー。ボーンマスの仕掛けてきたロングボールを跳ね返して前進を狙う。いつもと同じ低い位置でのポゼッションに加えて、高い位置からのプレスも行うことで敵陣でのプレータイムを増やしていく試みだ。

 ボーンマスはこのハイプレスを2列目のドリブルで破壊。構造うんぬんよりもボールを届けてしまえばビリングやタヴァニアといったアタッカーの加速力で何とかなるくらいの力関係だった。

 しかし、先制したのはボーンマス。セットプレーからの二次攻撃でテイラーが豪快な一撃。ラドゥは一歩も動くことができず大きな先制点を許してしまう。

 先制したことでボーンマスのハイプレスは鎮静化。バーンリーはゆったりとボールを持つ方向にシフトする。やや、ボーンマスがペースを取り返した感があるが攻撃は共にワイドのアタッカーのドリブルが主体。ボーンマスはサイドに中央の選手を積極的に絡めながらクロスを上げる試みをしていく。一方のバーンリーは右に入ったコレオジョの馬力から何とか解決していこうという算段である。

 命運を分けたのはハイプレス。ボールをカットしたセメンヨがそのままシュートに持ち込むことに成功し、ボーンマスは前半のうちに追いついて見せる。バーンリーはもたついたポゼッションから痛恨の失点を喫する。

 後半もペースを握ったのはボーンマス。押し込む展開が続き、バーンリーに攻める隙を与えない。序盤は勢いを持って入ったプレッシングも不発。なかなか狙いを絞り込むことができず、押し返すためのきっかけをつかむことができない。

 なかなか点が入らずじれったい展開となったボーンマスだが、またしても非保持からの手早い攻撃で試合を動かす。中盤でパスをカットしたビリングがそのままロングシュート。トラフォードの頭を越えてすっぽりとゴールイン。スキを突いた見事なロングシュートでついに逆転に成功する。

 バーンリーも後半に投入されたジェイ・ロドリゲスが裏への抜け出しからネットを揺らすが、これはオフサイド。長い長いOFRを伴うきわどい判定ではあったが、判断が覆ることはなかった。

 ボーンマスが終盤に5-4-1にシフトしたこともあり、バーンリーは80分以降に攻め込むチャンスを得る。だが、結局最後まで守備ブロックを崩し切ることはできず。ボーンマスは10節目にしてようやく今季初勝利を手にすることとなった。

ひとこと

 初勝利だけどここは順当勝ち。

試合結果

2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
ボーンマス 2-1 バーンリー
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:22′ セメンヨ, 76′ ビリング
BUR:11′ テイラー
主審:サム・バロット

ウォルバーハンプトン【12位】×ニューカッスル【6位】

主導権が入れ替わる激戦は痛み分け

 上り調子のウルブス。前線のコンディションが整っており、終盤まで粘り強く戦うことができるように。CL帰りのニューカッスル戦は彼らの出来が本物かどうかという試金石になる一戦と言えるだろう。

 立ち上がりから良かったのはウルブスの方。好調のWGを軸に押し込んでいく。ファウルを得てのセットプレーもちらほらと。わずかではあるがニューカッスルに比べるといい入りだった。

 ニューカッスルはファストブレイク寄りの崩しに終始。ロングスタッフがミドルに辿り着いた場面などはその代表格と言えるだろう。もっとも、この形はウルブスも得点が期待できる。ニューカッスルのハイラインをひっくり返して左サイドを切り裂いていたアイト=ヌーリのプレーは、非常にアナーキーだが得点に迫る有効な手段として成立していた。

 試合はしばらくするとミドルゾーンで落ち着いて展開が繰り広げられるように。この辺りはゆったりとボールを持ちたいし、持たせたいしということだろう。体力的に厳しいニューカッスルは特にこの部分のマネジメントがシビアであった。

 ゆったりとした流れの中で先制ゴールを決めたのはニューカッスル。左サイドのゴードンからのクロスをジョゼ・サが処理しきれずに、最後はウィルソンが押し込みに成功。先に試合を動かすことになる。

 失点以降は少しずつ保持の時間を増やすウルブス。攻撃の機会がだんだんと出てくると同点に追いついたのはセットプレーから。ネトのキックをファーで合わせたのはレミナ。上からヘディングで叩き振り出しに戻す。

 しかし、そのゴール以降にペースを握ったのはニューカッスル。ファストブレイクからチャンスを作っていき押し込んでいく機会を作っていく。すると、ニューカッスルは前半追加タイムにPKをゲット。ファン・ヒチャンが試みたボールへのチャレンジははアクシデンタルな形でのファウルに結果的になってしまった。これをウィルソンが仕留めて同点に追いつく。

 後半、再びペースを握ったのはウルブス。ネトを軸として右サイドの攻撃からニューカッスルを攻め立てる。ただでさえストロングなこちらのサイドに対応するニューカッスルの選手はスピードに不安があるバーン。このミスマッチから攻め手を見つけていた。

 同点へのきっかけとなったのもその右サイド。セメドのカットインに合わせた裏抜けを見せたのはファン・ヒチャン。抜け出しからの切り返し、そして冷静なコースを狙ったフィニッシュはいかにも彼が今見せている好調さを感じさせるものだった。

 一気に畳み掛けたいウルブスだがここでネトが負傷交代。ヒチャンと同じく好調を続けていたエースを失ってしまい、推進力は損なわれてしまうことに。

 CLを戦ったニューカッスル、エースを失ったウルブス。終盤はやや共に苦しい展開に。降り頻る雨も両チームから体力を奪った印象で試合は徐々にアバウトな展開に収束。ドローからの次の一手を決められる選手はいなかった。

ひとこと

 好調だった選手の負傷は見たくない。

試合結果

2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-2 ニューカッスル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:36′ レミナ, 71′ ヒチャン
NEW:22′ 45+4′(PK) ウィルソン
主審:アンソニー・テイラー

ウェストハム【9位】×エバートン【16位】

守り切った虎の子の一点

 エバートンが直線的な攻撃を繰り出すことで試合はダイレクトな展開でスタート。素直にキャルバート=ルーウィンにぶち当てるエバートンのスタイルはまさしく真っ向勝負のスタンスを見せた。

 対するウェストハムはポゼッションから試合を整えていく。アルバレスがサリーする3バック化で相手の2トップの外側から前進を狙っていく。特に狙い目にしていたのは左サイドの裏。SHを自陣側に誘き寄せ、パケタ、アントニオの2人が左サイドの裏を取りに行く。

 インサイドではクドゥスのライン間へのパスの引き出し方が見事。エバートンのプレスを一手先をいく縦パスの収まりそこからの配球もしくはファウル奪取から起点として機能していた。

 ウェストハムに比べるとエバートンの前進の狙いはぼやけていた。特にボックス内の選択肢に複数のものを用意することができず、キャルバート=ルーウィンは2人のCBを常に背負いながらのクロス対応となった。それでも上からたたけるのであれば問題はないのだろうが、ウェストハムの守備陣は屈強。マークが絞れている状況ではなかなか明確な解決策を見つけることができなかった。

 前半の終盤にはターコウスキの犯したタックルでやや殺気立つシーンも。これで試合自体はヒートアップするかと思いきや、シンプルにチャンスが少ない展開のままで推移。ウェストハムのサイド攻撃に対してエバートンの対応が後手を踏まなかった分、序盤よりも膠着した展開になったといえるのかもしれない。

 迎えた後半、ウェストハムはややライン間のスペース管理が甘くなり、エバートンはキャルバート=ルーウィンへの長いボールが収まるようになった。貴重なエバートンの先制点は相手のDFを背負いながらもなんとかつなぎ切るパスワークの賜物。逆にいえば、ウェストハムは挟み込んで対応することができなかったということでもあるだろう。

 キャルバート=ルーウィンの先制ゴール以降、エバートンは徹底的に自陣にこもるような戦い方を選択。SHを自陣に下げる形で必死にプロテクトをかける。当然低いラインでの対応は増えるのだけども、傍から見たら危うい状況でも涼しい顔で何とかするのがいかにもエバートンという感じである。そんな状況は慣れているのだろう。

 イングスの投入で3バック+2トップに移行したウェストハムだが最後までエバートンのブロック守備を崩し切ることはできず。虎の子の一点を守り切る勝ちパターンでエバートンが敵地で貴重な勝利を挙げた。

ひとこと

 こうなるとエバートン相手にはやりにくいという流れを体現してしまったウェストハムだった。

試合結果

2023.10.29
プレミアリーグ 第10節
ウェストハム 0-1 エバートン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
EVE:51′ キャルバート=ルーウィン
主審:スチュアート・アットウェル

ブライトン【7位】×フラム【13位】

パリーニャのワンパンチをリカバリーできず 

 メンバー表からフォーメーションを読み取り切れなかったブライトンだが、この日は3バックを選択。フラムの4-4-2に対して構造を外してくる形で対応してくる。

 ナチュラルな立ち位置で構造をずらしてくるブライトンがボールを持つ形で試合は進む。フラムの2トップの脇に人を立たせる形で前進を狙っていく。

 いつものブライトンと比べると違いがあるのは少しワイド志向が強いこと。フラムのSHがブライトンの3バックのプレス隊に加わることが多かったため、サイドにボールをつけることができればブライトンはワイドで1on1を作ることができていた。

 違いになっていたのはララーナ。シンプルにバックラインからの縦パスを受ける際も、サイドのフォローに行く際もとにかく切れ目で受けるのがうまい。エストゥピニャン不在でサポートが足りていなかった三笘にとってはララーナの存在は大きかったはずだ。

 一方のフラムはきっちりと受けてのカウンターにフォーカス。ヒメネスとイウォビの2トップラインはカウンターではきっちり生きており、ここにひとまず当てる形で前進を狙っていく。

 ただ、この前進のルートはブライトンの3バックがなれない距離感の状態で対応していたという側面が強かった。時間経過と共にブライトンの3バックは整っていき、2トップだけでは前進できないフェーズに突入する。そうなればウィリアンが根性で運んでいく機会が増えていく。

 先制点を取ったのは保持の時間が長かったブライトン。イゴールのパスカットからグロスにボールをつなぐと、フラムはDFの前が空いた状態で受けることになる。自由になったグロスからファーガソンにラストパスが送られてブライトンは先制。前半のうちにリードを奪う。

 後半もペースはブライトン。つなぎ目に顔を出し続けるララーナを軸に中央のユニットのパス回しが光る流れに。フラムはプレスのきっかけをつかむことができず、なかなか反撃のフェーズに進むことができない。

 しかし、ワンチャンスをフラムはものにする。グロスが珍しいロストを犯し、フラムがカウンターを発動すると、仕留めたのはパリーニャ。ワンチャンスをモノにしてスコアをフラットに戻す。

 ここからブライトンは三笘にフォーカスした攻めを展開。しかしながらララーナも交代でエストゥピニャンもいない三笘は孤軍奮闘の流れが続く。かろうじてグロスは寄るがほかとの関係性を形成できずになかなかゴールに迫れない。

 ファティが投入された分、奥行きがある抜け出しがあるのはブライトンにとっては救い。だが、きっちり構えてのロングカウンターフォーカスというフラムのプランはブライトンの押し込んでからの攻め筋を見ても収支は悪くないものだった。

 自陣をがっちり固めたフラムがブライトンから勝ち点をゲット。ブライトンにとっては一つのミスから試合を難しくしてしまった悔やまれるドローとなった。

ひとこと

 三笘のサポート役がいなくてしんどそう。

試合結果

2023.10.29
プレミアリーグ 第10節
ブライトン 1-1 フラム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:26‘ ファーガソン
FUL:65’ パリーニャ
主審:マイケル・サリスベリー

アストンビラ【5位】×ルートン・タウン【17位】

無抵抗のルートンを要塞で粉砕

 連勝を積み重ねて上位に迫る位置につけるアストンビラ。今季の2つの敗戦はアンフィールドとセント・ジェームズ・パーク。ホームゲームはここまで全勝だ。要塞と化しているビラ・パークに今節乗り込むのはルートン・タウンだ。 

 ボールを保持するのはホームのアストンビラ。3-2-5に変形しながらルートンの4-4-2相手にズレを作っていく。ルートンはSBからWGの高い位置に移動するキャッシュにダウティーがついていく形を形成。それに伴い、オグベネはSHの位置に移動。後方に重きを置く守り方をする。

 その割にはずるずると後退してしまうルートン。自由にボールを持てるビラのバックラインから大外への展開で一気にルートンを押し下げると、ここからの折り返しでボックス内にスペースを作り、チャンスを作っていく。この形で特に効いていたのは左のザニオーロとディニュ。この左サイドデュオの攻めは効いていた。

 アストンビラは左サイドから得たFKの流れから先制。マッギンが沈めて早い時間にリードを奪う。

 これ以降もサイドから攻めるアストンビラ。一方的に攻め立てる時間が続き、試合は非常にモノトーンな展開に。ルートンは5レーンを埋めているはずなのだが、結果的に押し下げられてしまい、延々と攻め立てられるシーンが続いてしまうことに。頼みのカウンターも通用せず、ルートンはシュートチャンスはおろか自陣から脱出する手段にすら辿りつけない展開になる。

 迎えた後半も試合は動かずアストンビラのペース。ルートンはラインを上げての守備ができずに苦戦する。できれば配球元のパウ・トーレスにはプレッシャーをかけたいところだが、それができないのが苦しい展開になる要因だろう。

 後半も引き続き押し下げることができていたアストンビラは順調に追加点をゲット。左サイドのマッギンからベイリーが折り返し、仕留めたのはディアビ。好調のブンデス産アタッカーは今節もゴールをゲット。後半開始早々にリードを広げる。

 ルートンは選手交代から反撃を狙う。ナカンバ、バークリーに次いでタヒス・チョンの投入でほんのりとボールを前に運べるにおいは出てくるように。しかしながら、前にプレスを行くきっかけがつかめないという非保持側の課題はまだ改善が見られない状態だ。

 結局サイドのプレイヤーの根性が前進の主体になっていたルートン。オグベネが根性を見せるが、ゴールを決めたのはビラ。オウンゴールを誘発し、リードを3点に広げて見せる。

 終盤に追撃弾で1点を返すルートンだが、反撃もここまで。余裕を持った逃げ切りでビラはホーム全勝をキープ。首位との勝ち点は4のままで上位に食らいついていく。

ひとこと

 ハイプレスいけない苦しみはなかなかに切ないものがある。

試合結果

2023.10.29
プレミアリーグ 第10節
アストンビラ 3-1 ルートン・タウン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:17‘ マッギン, 49’ ディアビ, 62‘ ロッキャー(OG)
LUT:83’ マルティネス(OG)
主審:ジョン・ブルックス

リバプール【4位】×ノッティンガム・フォレスト【15位】

攻守に隙なしの完勝

 順調に上位陣をキープしているリバプール。ルイス・ディアスに想定外の離脱があってもジョタが普通に出てくるあたりはさすがの強さである。

 フォレストは5-4-1をベースにリバプールにボールを持たせる展開。ナローは5-4-1をキープして、シャドーは前に出ていき、ワイドはWBに任せるというフォレストらしい形でリバプールを迎え撃つ。手数を少なくカウンターを狙うスタンスもエランガをトップに置いたプランとしてはしっくりくるところがある。

 リバプールはそうしたフォレストのプランは織り込み済みという感じで早々に移動を開始。CBと出し入れ自在のアレクサンダー=アーノルドでシャドーのドミンゲスをピン止めすると、その外を回るようにショボスライが右サイドに顔を出す。これにより、リバプールはサイドから安定してボールを運んでいくスキームを作る。

 インサイドではマック=アリスターとショボスライが相手を剥がすドリブルで中央に入り込みながら崩す場面も。グラフェンベルフも含めて狭いスペースでも問題なくプレーできる中盤のおかげで外一辺倒にならなくて済んでいるのは今のリバプールのいいところである。

 先制したのは優勢だったリバプール。3トップのファストブレイクが炸裂。サラー、ヌニェスと繋ぎ、最後はジョタ。ディアスのユニフォームを掲げてのセレブレーションはリバプールファンではない自分にもぐっとくるものがあった。

 失点という観点で見るとフォレストはここ数試合効いていたムリージョの持ち上がりを潰される形から壊されたのは痛恨だろう。そんな思惑を知ってか知らずかリバプールの2点目もムリージョの周辺を壊したもの。右サイドからサラーとショボスライのホットラインを経由し差後はヌニェス。リバプールが前半のうちにリードを広げる。

 このゴール以降もショボスライのミドルにヌニェスのアクロバティックなシュートなど完全にイケイケとなったリバプール。前半を支配したままハーフタイムを迎える。

 後半も展開は同じ。リバプールが押し込みながらフォレストがガンガン攻撃していく形が延々と続く。押し返したいフォレストだが、ボールを奪う方も運ぶ方も全くきっかけをつかめずにただただ時間だけが過ぎていく。

 あまり話すことはない後半だったが、50分にヌニェスがショボスライのように右の空白スペースに顔を出していたのは面白かった。ヌニェスレベルの馬力があれば、ここでボールを触ってもゴール前まで顔を出せるのだなという場面。こういう組み立てに絡むところを覚えてしまうと、より厄介な存在になるだろう。

 終盤にリバプールは3点目を取って試合は完全に決着。攻守においてスキを見せない完勝でフォレストを一蹴した。

ひとこと

 フォレストにほぼ何もさせない完勝だった。

試合結果

2023.10.29
プレミアリーグ 第10節
リバプール 3-0 ノッティンガム・フォレスト
アンフィールド
【得点者】
LIV:31′ ジョッタ, 35′ ヌニェス, 77′ サラー
主審:クリス・カバナフ

マンチェスター・ユナイテッド【8位】×マンチェスター・シティ【2位】

左サイドの強力デュオを止められず

 シティにとっては先に今節勝利を挙げているノースロンドン勢についていくための3ポイントが欲しいところ。ユナイテッドはCL出場権のボーダーを目標の視野に入れるための重要な一戦である。

 立ち上がりはユナイテッドがショートカウンターからチャンス。ハイプレスを潰したマクトミネイがチャンスを迎えるが、これはロドリの冷静な対応でホイルンドへのラストパスを許さなかった。

 しかしながら、このグバルディオルからのパスミスはシティが攻めたそうにしていた左サイドからのビルドアップの出鼻を挫くものだった。ベルナルドとグリーリッシュのレーン交換から勝負をかけていきたいシティ。いつもであればグリーリッシュの側にはサポートはあまりつけないのだけど、この試合はユナイテッドの右が脆いと判断したのかあるいはグリーリッシュのコンディションがまだ1人で・・・ということでないのかは不明だが、取り合えずこちらのサイドを狙い目にしたのだろうなという感じを受けた。

 一方のユナイテッドはカウンターでの攻勢で反撃に出たいところ。ホイルンドのボールの収まり方は十分で起点になりそうな気配はした。シティのパスワークのミスが絡み、ユナイテッドはカウンターから数度チャンスをもらうが、最後のところでエデルソンが立ちはだかり、なかなかゴールを許さない。

 機会で勝るシティは左右のクロスをきっかけに深さを作って壊していきたいところ。そのシーンが続くとどうしても失点のリスクは高くなる。ユナイテッドはセットプレーからロドリを掴んだホイルンドがPKを献上。大きな1点がシティに入る。

 その後もユナイテッドはミスを待ちつつ、シティの攻撃を跳ね返すことに注力。特に左サイドに抜けるベルナルドを止めることができず、オナナの仕事はどんどんと増えていく。特に前半終了間際のオナナのセーブは膝を打つような見事なプレーだった。

 ユナイテッドの意気込みは後半も悪くはなかったが、シティの組んだユナイテッドの守備ブロックの攻略プランはこの試合では常に上回っていた印象だ。左サイドのグリーリッシュとベルナルドの2段アタックは後半も炸裂する。

 ユナイテッドのバックラインの動きに目を向けるとリンデロフが対面の選手の絞る動きにつられたとは言え、ファーに逃げたハーランドががら空きだったというのはかなり構造的にやられてしまっている証拠だろう。マグワイア、エバンスの両CBがボールサイドに寄っている割にはベルナルドとグリーリッシュのデュオを止められていないというのが根本原因といえる。

 この2点目で試合の大勢はあらかた決着してしまった感がある。試合の展開としてダービー的な雰囲気で盛り上がることはなく、落ち着いた強度の中で試合は収まってしまった印象である。試合の流れも特に変化はなく、80分にフォーデンが追加点を仕留めて完全決着。マンチェスター・ダービーはアウェイチームの完勝で幕を閉じた。

ひとこと

 inamoさんのストーンズが左CBの理由考察が面白かった。

試合結果

2023.10.29
プレミアリーグ 第10節
マンチェスター・ユナイテッド 0-3 マンチェスター・シティ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man City:26‘(PK) 49’ ハーランド, 80‘ フォーデン
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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