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「2つ目の軸は成立するか?」~2023.10.8 プレミアリーグ 第8節 アーセナル×マンチェスター・シティ プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第8節
2023.10.8
アーセナル(3位/5勝2分0敗/勝ち点17/得点15 失点6)
×
マンチェスター・シティ(1位/6勝0分1敗/勝ち点18/得点17 失点5)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年間の対戦でアーセナルの1勝、シティの14勝、引き分けが1つ。

アーセナルホームでの成績

過去10回の対戦でアーセナルの2勝、シティの8勝。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • アーセナルは直近16試合のシティ戦で15敗しており、プレミアリーグは12連敗中。
  • アーセナルの最後のシティ戦の2つの勝利はいずれもFA杯。2020年のFA杯準決勝と、2017年の2-1の勝利。
  • アーセナルは直近16試合のシティ戦でクリーンシートを達成していない。
  • マンチェスター・シティはミケル・アルテタの在任期間においてプレミアリーグで勝利が出来ていない唯一の相手。ここまでは7戦全敗している。

スカッド情報

Arsenal
  • ブカヨ・サカはCLで負った負傷により出場が不透明。
  • ガブリエル・マルティネッリはハムストリングの負傷で欠場見込み。
Manchester City
  • ロドリは3試合の出場停止により欠場。
  • ベルナルド・シウバはミッドウィークの復帰により起用可能だが、ジョン・ストーンズとケビン・デ・ブライネは欠場。

Match facts from BBC sport

Arsenal
  • ここまでのリーグ戦7試合無敗(W5,D2)
  • しかし、ミッドウィークのCLのRCランス戦で今季初めての敗戦を喫する。
  • 直近26試合のプレミアでのホームゲームで19勝を挙げており、引き分けは5つ。負けた2つのチームはマンチェスター・シティとブライトン。
  • 直近28試合のプレミアのホームゲームで4つしかクリーンシートを記録しておらず、昨季開幕から失点の63%をホームで喫している。
  • ブカヨ・サカが不在の直近8試合のリーグ戦のホームゲームで5回ポイントを落としている(D3,L2)
  • サカは直近8試合のプレミア出場で5ゴール、2アシスト。
Manchester City
  • 敗れればレスターとパレスに敗れた2018年12月以来のプレミアリーグ連敗。
  • 2019年の加入以降、ロドリが欠場した15試合のリーグ戦のうち1/3で敗れている。出場した144戦の敗戦率は13%。
  • エーリング・ハーランドは昨季の2回のアーセナル戦でいずれも80分以降に得点を挙げている。
  • ハーランドは直近4試合のロンドンでのプレミアリーグでいずれも得点を挙げており、この1試合目が2月のアーセナル戦。
  • エデルソンは出場すればプレミア300試合出場を達成。

予習

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予想スタメン

展望

システム側に欠員が生じる

 アーセナルがシティ相手に最後のリーグ戦で勝利したのは2015年。得点者がジルーとウォルコットというのは時代を感じさせる部分である。もしかすると、今の多くのファンは彼らがアーセナルのユニフォームをまとった時代を知らないのかもしれない。

 昔話もそこそこに現代に目を向けると、リーグ戦においてアーセナルはシティ相手に実に12連敗中。アーセナルは6年もの間、勝利はおろかシティ相手に勝ち点すら取れていない。「アーセナルはいいチームだ」とグアルディオラは試合前後にお決まりのように言いながら3ポイントを奪っていく。そんな光景を繰り返し見てきた6年間だった。

 昨季、優勝をかっさらわれてしまい、アーセナルのシティへの苦手意識はチーム自体が強くなっても消えないまま今に至っている。開幕前のコミュニティ・シールドの勝利はもちろんうれしかったが、それだけでは呪いが解けないことはアーセナルファン自身もよくわかっているはずだ。

 今年のシティはどんなチームか?もちろん、例年のごとく序盤戦からエンジンがかかっている感はない。怪我人は例年よりも多い。ベンチにGKが2人座ってなお9人の枠を埋めることはできない。

 今季のシティは特定のシステムどうこうというよりは個性の掛け合わせ感が強い。例えば、ロドリの隣には誰が立つのか。アカンジがバックラインにいれば彼が立つ。グバルディオルはSBから徐々に絞る機会が増えてきたが、まだまだ。アケはそもそも求められていない感じと人によってだいぶさじ加減が変わる。

 アカンジがいなかったりCB起用で列上げをしにくかったりする場合は4-2型のビルドアップで構えることも。この場合はロドリの横に立つのはコバチッチやヌネスといったCHである。ここも選手によって味付けが異なる。コバチッチであれば低い位置からボールを運ぶことを好むが、ヌネスはより高い位置でのプレーが多め。エリアだけ見ればギュンドアンのイメージに近い。

 よって、ヌネスがCHとして起用されているときはロドリが一人のこともある。無論、相手のプレスの圧力が少ないのであれば十分に成立する。近頃はシティ相手にプレスに行く腕試しすらしないチームもある。名前でプレスを撤退させているのだから、大したものである。

 今季のシティの攻撃のデザインに特徴があるとすれば、ハーランドの下に並ぶ2人のシャドーを使った攻撃だ。フォーデンとアルバレスである。おそらくこれは負傷しているデ・ブライネに代わる縦に速い攻め手だろう。

 フォーデンはライン間で反転すると、素早くシュートやラストパスに向かうドリブルをスタート。アルバレスは前線に飛び出すプレーが多いが、基本的には何でもやるし何でもできる。デ・ブライネがいないのにFKの恐ろしさが減らないというか、むしろ直接FKなら増している感があるのはもうよくわからない。

 とにかく、ハーランドがいて相手のCBの位置がなんとなく決まると、その前後を泳ぐ選手が最低2人はいるという印象だ。ヌネスとかボブのようにIHのキャラクター次第ではもう1枚がここに加わることもある。

 フォーデンは右のWGが机の上のフォーメーション。つまり幅取り役のグリーリッシュやドクなどの左のWGと左右非対称な構造になる。守るチームのSBがインサイドに絞るフォーデンに気を取られると、その外側を強襲するウォーカーのランが炸裂する。このウォーカーのランから押し下げる形が決め手となったシティの試合はすでにいくつか存在する。

 このように今季のシティは個性を掛け合わせたシステムが組まれている。攻撃において掛け合わせる側の選手は多様であるが、システムの根幹をなす側の選手もいる。ハーランドとロドリである。多くの選手の個性はこの2人の存在によって解放されている感がある。

 ウォーカーが大外を走るのはロドリがタイミングを見逃さずにパスを出すからだし、彼の横にCBが立つことができるのは中盤のプレッシャーを彼が引き受けてくれる側面もあるだろう。ライン間のフォーデンやアルバレスにパスが入るのはハーランドが相手のCBの位置を決めてスペースを作り、後方からその瞬間を見逃さないロドリが楔を入れるからである。この2人はシステム側の人間だ。

 しかしながら、今回のシティはシステム側の人間が1名不在ということになる。ロドリがいないとなれば、真っ先に割を食うのはWG化したウォーカーだろう。彼のフリーランは適切なタイミングで適切な軌道でパスを届けなければいけない。相手と正対して何かができるわけではないので、馬力を生かせるパスを彼に送ることは必須。その供給元がロドリだったわけである。

 よって、シティはラインを下げる手段を一つ失ったことになる。できないことは増えるだろうが、シティにとってはベルナルドがCLでベンチ入りしたのは朗報だろう。相手と正対して勝負ができる右WGの仕事ができるベルナルドはロドリの不在による不具合をぼかすことができるかもしれない。仮にストーンズがグアルディオラの発言に反して復帰するならばそれも心強いだろう。

 プレッシングに関しては正直未知数。大体の試合はそこに手を付けずとも勝っているし、先週のウルブス戦は常に攻めていたので、ハイプレスのスイッチどうこうみたいな試合ではなかった。だけども、まぁビッグマッチなので必要とあれば起動できるのだろう。この点でも旗振り役になれるベルナルドの復帰は大きい。

 仮にプレスを乗り越えることができても、後方にはディアスを軸とした強固なバックスがいる。ロドリがいなかろうが今年もシティを打ち破るのには相当な努力の積み重ねがいるのは間違いない。

ライスの解放でハイプレスを軸にする

 昨季のプレビューでも述べたが、シティと対戦する時は「ここなら相手に勝てる」というポイントを持っておくことが大事である。例えば前節勝利したウルブスは撤退守備を土台として、WGのスピードを生かしたロングカウンターでシティのハイラインを打ち破った。ネトがシティに通用しなければ、ウルブスが勝つのは難しかったはずだ。

 多くのチームと対戦する場合、アーセナルが明確に勝てるポイントは両WGである。だが、毎回の対戦でアケにサカが苦しめられているように、この点はシティ相手に確実に機能するポイントとして計算しづらい。そもそも、マルティネッリもサカもこの試合に出ることができるかどうかすら不透明なのである。

 では、この試合のアーセナルはどこを勝負のポイントにするのか?自分が選ぶのであればハイプレスである。シティは世界で最も保持が安定しているチームだが、相手にロドリがいないのであればここは狙う余地があると見る。

 前回対戦でハイプレスを破られたのはやはりホールディングとハーランドのマッチアップで明らかに劣勢だった点が大きい。サリバとガブリエウが揃っているのであれば、ハイプレスで真っ先にぶち当たるハーランド問題にも対抗できる可能性はあるだろう。

 もう1つスカッドの面で後押しになりそうなのはトーマスの復帰である。ライスのアンカーシステムにおいて個人的に最も大きな問題としてとらえているのは、彼の広い守備範囲を生かしにくいところ。だが、トーマスと組ませればその点でライスの解放は可能である。彼が前からのプレスに加わることができるのであれば、アーセナルの守備の強度は増すだろう。

 無論、強引にプレスに行っても相手はシティなのだからボールは簡単に取れないだろう。前から制限をかけて数手先で奪い取るプレスを設計したい。狙い目になりそうなのはドリブルを好む中盤CHだろう。リリースが遅いフィリップス、ドリブルの優先度が高いコバチッチ、ヌネスなどは特に狙い目に出来る可能性はある。反転を好むフォーデンから前を向かせる前に刈り取るのももしかすると可能かもしれない。

 となると、前線の並びはプレッシングを優先で決めたい。CFにハヴァーツ、WGにはジェズスとトロサールが妥当か。ウォーカーの上下動についていくかの判断や、彼を捨ててCBにプレスに行くタイミングをどこで作るかなど、プレスにおいてはやや左のWGの方が求められる判断がシビアなように思う。よって、左のWGにジェズスを置く形を推奨したい。

 非保持ベースの考え方なのにジンチェンコが予想スタメンにいる理由は、保持においては疑似カウンター的な前進が有望になると考えているから。ここ数試合のジンチェンコは中央に立ちっぱなしなだけではなく、中央に入り込みながらパスを受ける動きが効いている。シティのプレスを自陣側に吸引し、その動きと逆行するジンチェンコから前進するイメージでアタッキングサードに侵入したい。

 シティの失点の仕方を見れば定点攻撃で崩されるよりも、やはりバックラインが乱される形になることが多い。人が揃っていれば押し込まれたくらいでは失点しない。アーセナルはボール保持のターンになったら、自陣側に相手のプレスを引き寄せて、中盤のフリーな選手でボールを届けて最終ラインと対峙するのが理想。この形であれば、サカとマルティネッリの不在も多少は薄まるだろう。

 ハイプレスから描いたプランはNLDで実行されたが、あの試合ではやりきれなかった。WGという軸がいないアーセナルがハイプレスという軸を作り、ロドリ不在のシティに突き付ける形がハマれば、6年ぶりの歓喜の可能性はぐっと高まるだろう。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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