Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第26節
2022.7.30
浦和レッズ(8位/6勝11分5敗/勝ち点29/得点27/失点20)
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川崎フロンターレ(3位/11勝4分5敗/勝ち点37/得点31/失点22)
@埼玉スタジアム2002
戦績
近年の対戦成績
直近5年の対戦で浦和が4勝、川崎が9勝、引き分けが4つ。
浦和ホームでの戦績
直近10試合の対戦で浦和の3勝、川崎の6勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
近年の成績でいえば川崎の完勝。浦和は直近11試合の川崎戦で1勝しかしておらず、リーグ戦に限れば2019年以降勝ちはなし。その分、今年のスーパーカップや昨年のルヴァンなどカップ戦では浦和が川崎を踏み台にする格好が続いている。
埼玉スタジアムに限るとさらに川崎の有利は顕著。2018年の興梠とファブリシオの得点以降、リーグ戦の浦和は埼スタで川崎相手にゴールすら決められておらず、直近10得点は全て川崎が決めたものになる。
ちなみに直近5年は片方が片方を無得点に抑えて勝利している。いわばクリーンシートが勝ち点3の絶対条件になっている格好だ。
スカッド情報
【浦和レッズ】
・キャスパー・ユンカーはトレーニングに復帰。
・ブライアン・リンセンはPSG戦で肉離れにより負傷交代。
・犬飼智也は左膝蓋骨骨折、膝蓋腱部分断裂により離脱中。
・コロナの陽性反応でトップチーム選手1人が隔離中。
【川崎フロンターレ】
・大島僚太はふくらはぎの負傷で6週間の離脱。
・コロナの陽性反応でトップチーム関係者5名以上が隔離。
予想スタメン
Match facts
【浦和レッズ】
直近のリーグ戦は好調である。7試合負けなしというスタッツもさることながら、直近3試合の7得点も大したもの。得点力不足を感じさせないスコアを並べている。
加えて、今季はホームゲームも好調。3節のG大阪戦での退場以降は今季のリーグ戦では無敗。しかも、そのG大阪戦も岩尾の退場で10人になったところで決勝点を奪われたと考えると、11人では埼スタでは負けていないことになる。
クリーンシート数で考えると守備で大崩れしないのは持ち味だが、上位進出の足を引っ張っているのはドローの多さ。すでにクラブ史上2番目に多いシーズンになっており、あと1つ引き分けを積むと15位に終わった2011年に並びクラブタイ記録を樹立することになる。
好調の前線のアタッカー陣は川崎が苦手な「初物」が多い。代表格であるモーベルクにはあらゆる得点パターンがある。注意したいところだ。
【川崎フロンターレ】
急遽中止になった名古屋戦で集めたデータをほぼそのまま転用した。おじゃんになった悲しみに比べれば些細なことなので、これくらいは許してほしい。
川崎が勝てば今季初のシーズンダブル達成。それに加えて2カ月ぶりのリーグ戦連勝を達成ということである。
しかしながら、アウェイゲームは今の川崎にとって鬼門。直近3試合勝ちなしで現在は連敗中。直近の得点はどちらも谷口が決めており、お察しの通りセットプレーからのゴール。オープンプレーからのアウェイでのゴールはGWに行われた日本平の清水戦まで遡る必要がある。ちなみに今季のアウェイ勝利にクリーンシートは絶対条件だ。
そして唯一の使いまわしじゃない情報が小林悠の浦和戦に関するスタッツ。興梠と並んでこのカードで10ゴールという得点数になっている。点を獲れば単独首位。昨年も2得点を挙げたこの舞台でチームを勝利に導く得点を挙げたいところだ。
予習
第20節 京都戦
第21節 FC東京戦
第22節 清水戦
展望
■スタイルに裏打ちされる得意パターン
元々話題性があり、ピッチ外でも様々な事象が多い分、浦和に浮き沈みが激しいイメージを持っている人もいるだろう。しかしながら、そうしたイメージとは裏腹にピッチの中では堅実な戦績を積み上げている。
シーズン当初に掲げた優勝に関してはだいぶ旗色が厳しくなってはいるが、5敗という負け数は鹿島と横浜FMに次いで少なく川崎と並んでいる。失点の少なさを見ても負けにくいチームというのは明白であり、中位だからといって簡単な相手になるとは考えにくい。
リーグ戦に限れば7戦無敗であり、直近の成績も徐々に上向いているといっていいだろう。今季の前半戦の浦和の大きな懸念となっていたのは得点力ではあるが、7月の代表ウィーク明けから前線のメンバーが固定されたことでいくばくか目途が立った感がある。
前回の対戦においては絶対的な存在ではなかった松尾、モーベルク、大久保が今の浦和の攻撃の主軸を担っている。彼らのスピードを生かしたドリブルはゴールに向かったり、PKを奪ったりなど直接的に相手にダメージを与えることができる馬力がある。
「いくばくか」と言葉を濁したのは補強方針を見ても明らかに「9番」を欲しているにも関わらず、なかなかその目途が立たないからである。頼みのリンセンもPSG戦で離脱してしまっている。ユンカーの稼働率も依然として上がる気配はない。組み込みたいが柱がいない!というのが現状だろう。
9番はいないが、ドリブラーたちはイキイキしては来ている。得意な得点パターンは何と言っても擬似カウンター。プレスに相手を引き込んでおきながらいなし、1枚剥がしたところから一気にスピードアップを図りゴールに迫っていく。
前回見た時よりもプレス回避はさらにうまくなっている印象。京都戦の2失点目などひっかけるプレーがなくなったわけではないが、一枚剥がしたところからのスピードアップの設計図の緻密さは個人的にはなかなかと思った。
関根、モーベルクなど大外からじっくり切り崩す武器がないわけではないが、今の前線のメンツの持ち味を考えればスピードアップから直線的にゴールに向かう方が向いているように思う。この形を支えているのはバックライン。特に岩波はもともと得意だったロングキックだけでなく、ショートパスの精度や速度が格段に向上。浦和におけるプレス回避の底上げに一役買っている。
システムでいえば4-2-3-1がベースではあるが、保持では中盤が変形。CHの片方である岩尾がアンカー気味の位置に入り、その相棒(主に伊藤)はトップ下(江坂or小泉)とフラットに並ぶ。
WGの2枚もライン間でボールを受ける意識が強い。だが、前線にポストプレイヤーが不在なため彼らは独力でターンまで持って行く必要がある。だからこそ、前線に時間を送るような擬似カウンターという手法と相性が良いのだろう。プレスを回避してから縦パスを付けられるようなパスワークでWGに前を向く余裕を与えられれば、攻撃は幾分か加速する。
プレッシングに関しては大枠に変化はない。高い位置からつぶすために中盤が2トップのヘルプに出ることもあるが、そこは状況に応じてといった感じ。
ただ、清水戦の後半のように相手に対抗してプレスからアップテンポに持ち込んだり、京都戦では明本のような体を張れる選手をターゲットにしたりなど、縦に速い相手との対戦には乗っかりたがる傾向が強い。
おそらくこれは彼らの前線のアタッカーの毛色ゆえだろう。彼らの機動力を生かすには多少ボールが落ち着かないとしても、堅い展開よりは撃ち合いの方がアタッカーがターンする半径もドリブルを仕掛けるスペースも確保しやすい。
いずれにしてもアタッカーの良さから逆算された形で浦和のサッカーが構築されている可能性は高いだろうし、そのアプローチこそが得点力改善の一端といえるだろう。
■持ち味発揮を期待したいのは・・・
逆に浦和の攻撃の停滞が起こるのはどのようなシーンだろうか。それは松尾や大久保の持ち味が悪い方向に出るときである。彼らはスピードに乗った時は厄介ではあるが、加速を阻害され、味方から切り離されて単品になった時にやたらとカットインドリブルに頼る傾向がある。
川崎ファンならわかると思うが、保持側が中央の密集に突っ込んでいく行為は被カウンターの温床になる。シュートブロックに阻まれ続けたFC東京との試合の序盤は浦和はこの悪循環に陥っていた感じがある。川崎からすると浦和のアタッカーが単騎でこの袋小路に迷い込んでくれるのが一番楽である。
だが、人と組み合わせると彼らは危険になる。松尾と大久保はフリーランでスルーパスを引き出して大外からラインを下げるようなドリブルを受ける動きができるし、モーベルクは止まった状態から自分を追い越す味方を使える上に、自身も強烈なカットインからレンジの長いシュートを装備している。特にゲームがオープンになりやすい後半は彼を軸にした浦和の攻撃を止めるのには手を焼く。
ボールプレイにおける精度はやや昨年よりも見落とりするものの、大外を回れることや内→外のフリーランが出来てモーベルクの相棒を務めることが出来ている点で江坂は貴重な存在であるのもまた確かである。
よって、川崎にとっての理想は浦和をそもそも相手をゴールに付近に近寄らせないこと。機会を奪うことで主導権を引き寄せたいところである。そして2列目の選手たちは単品ごとに切り離すことが重要である。理想状況になるまで、相手を保持で押し込んでいく。長い陣地回復を必要とする
それが難しい時はひとまずボールホルダーを止めること。ホルダーを捕まえて前をむせない。スピードアップを刺せるならサイドで。攻撃の出口がハイクロスに仕向ける。それができれば浦和の得点の可能性はかなり下げることが出来る。
ローラインに引くときはしっかりと。高さでは川崎が上なのでエリア内でクロス勝負に持ち込まれれば負けたくないところ。ラインを上げ下げする主導権を渡さなければそれでいい。いわば抑揚のある策を準備しておきたい。中途半端に裏に浦和のアタッカーが駆け引きできるスペースをこちらから提供する流れは避けたいところである。
川崎の保持でポイントになりそうなのはやはりサイドか。前回対戦ではLSBに入った塚川との間合いに関根が悩んだところから川崎が高い。川崎としてはここにつっかけてくるのもおもしろい。
中央が前がかりな浦和のプレスに対して、サイドに保持の起点を作るのは面白いだろう。中央に絞るのか、サイドに開くのかを悩ませることができれば上々である。
登里が仮に先発起用されればこの部分は得意分野になるだろう。彼がジェジエウと共に本格復帰が見込めれば川崎の攻守はグレードアップする。棒に振った前半戦を巻き返す活躍を期待したい。
コロナで陣容の読みにくい試合であるが、プレスの緩急で手綱を握れるかと保持での2列目の揺さぶりができるかがこの試合のポイントになるだろう。