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「地獄にチェルシー」~2022.4.20 プレミアリーグ 第25節 チェルシー×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第25節
2022.4.20
チェルシー(3位/18勝8分4敗/勝ち点62/得点64 失点23)
×
アーセナル(6位/17勝3分11敗/勝ち点54/得点45 失点37)
@スタンフォード・ブリッジ

戦績

過去の対戦成績

 過去5年の対戦でチェルシーの5勝、アーセナルの6勝、引き分けが5つ。

スタンフォード・ブリッジでの対戦成績

 過去10戦でチェルシーの6勝、アーセナルの1勝、引き分けが3つ。

Head-to-head from BBC sport

・8月のアーセナル戦で2-0で勝利したチェルシーは公式戦3連敗というアーセナル戦の連敗記録を止めた。
・アーセナルは昨季スタンフォード・ブリッジでのリーグ戦で勝利。直近9シーズンのアウェイでのチェルシー戦で唯一の勝利。

スカッド情報

【Chelsea】

・マテオ・コバチッチは足首の負傷で2週間の離脱。
・カラム・ハドソン=オドイはアキレス腱の負傷で引き続き離脱。ベン・チルウェルも膝の怪我で長期離脱中。

【Arsenal】

・Covid-19でサウサンプトン戦を欠場したアレクサンドル・ラカゼットは状況を経過観察中。
・ふくらはぎを負傷していた冨安健洋は当日判断。
・トーマス・パーティ、キーラン・ティアニーは離脱中。

Match facts from BBC sport

【Chelsea】

・1993年以来のホーム3連敗の可能性。1993年はホームでのアーセナル戦において2-0で敗れて3連敗となった。
・直近7試合のリーグ戦で6勝しており、うちクリーンシートが5つ。
・メイソン・マウントは出場すればプレミア100試合目。初めの100試合で23ゴール、18アシストはチェルシーの英国人史上最も良い数字。
・チアゴ・シウバはチェルシーのフィールドプレイヤーとして最年長の出場記録がかかる(37歳210日)

【Arsenal】

・直近5試合のリーグ戦で4敗。それ以前の11試合では1敗のみ。
・直近10試合の4月のリーグ戦で8敗。
・勝てばユナイテッド、チェルシーに続きアウェイでのプレミア250勝を達成する3つ目のクラブになる。
・今季先制された9試合のうち、8試合に敗れている。
・ブカヨ・サカは21-22においてシュート数50、チャンスクリエイト数50を唯一超えているプレミアの英国人。

予想スタメン

展望

モビリティ重視の前線を黒子のバックラインが支える

 チェルシーにとってはハードな1か月も最終盤といったところだろうか。CLではレアル・マドリーと延長までもつれ込む大激戦の末に敗退。モドリッチとベンゼマというマドリー大名の脅威を身をもって知ることとなってしまった。

 先週末は今季残された唯一のタイトルであるFA杯での決勝進出を決めた。リーグ戦では残りの対戦相手とすっとこどっこい揃いの4位争いチームの覚束ない足取りを見ればここから5位以下に沈むことは想像しにくい。FA杯の獲得とリーグ3位のキープがチェルシーにとって現実的な最終目標になるだろう。ピッチの外は騒がしいが、ピッチの中はトゥヘル就任2年目も充実させながら終わることができそうな予感がある。

 トゥヘルのチェルシーの特徴は特定のフォーメーションに頼るというよりもコンセプト主義。フォーメーションは押し出したい持ち味を実現するためだったり、相手を封じるための手段として使われる嫌いが強く、形にこだわるタイプではない。トップ6の中では最も試合中のフォーメーションチェンジが多いチームといってもいいだろう。それゆえ、予想フォーメーションの形とメンバーは非常に予想しづらい。

 1ついえるのは前回アーセナルが戦った第2節のようにルカクのパワーとスピードを生かすようなやり方はプライオリティが下がっているということである。

 ルカクで深さをとりつつ、裏への駆け引きを行う。身体能力で相手のDFに大きく差をつけるやり方である。ルカクは怪我をしているわけではないので起用可能ではあるが、第2節のルカクのマッチアップ相手だったパブロ・マリと比べると、ガブリエウは身体能力的なアドバンテージは少ないはず。

 ただし、ワンポイントでの起用は警戒したい。PA内でのクロスではルカクに多くの選手が引っ張られるせいで、他の選手が入り込むスキができるという囮のような使われ方でスペースメイクをすることもある。

 あるいはサイドに流れることを徹底して仕込めば、SBの脆い今のアーセナルには脅威でしかない。チェルシーのチーム内では優先順位は低い選手だが、アーセナルからすれば使い方次第で脅威になりうる。

 だが、こちらはあくまで伏兵。本命になるのはヴェルナー、ハフェルツ、マウントのモビリティ抜群の三銃士である。奥行きだけでなく、左右のレーンを入れ替えながら位置移動しつつ、チャンスメーカーとフィニッシャーを分担できる彼らによって守る側はあらゆる可能性に悩まされながら守備をしなければならない。

 もう1つ、攻撃のアクセントになっているのはロフタス=チーク。右サイド近辺での起用が増えている彼はハーフスペースからの飛び出し役でフリーになることが多い。先のクリスタル・パレス戦では先制ゴールも決めており、流れも悪くない選手である。ここ数試合で重要度は上がってきている印象だ。

 右サイドはハフェルツ、マウント、ロフタス=チークで人をかけながら誰が抜け出すのかを惑わせつつ、左サイドはヴェルナーがシンプルにスピード勝負で抜け出す場面が多い。フィニッシュの部分で物足りないのは確かだが、ヴェルナーはフリーランでのチャンスメイク力は脅威であることは間違いない。

 形を問わずに頻繁にフォーメーションを入れ替えるゆえに後方には負荷がかかる部分もあるが、ジェームズのようにマルチなポジションをこなしながら、チームとして薄いところをケアできる選手や、経験値豊富なバックラインのプラン遂行力の高さは強みである。

 前線はのびのびとプレーし、中盤にジョルジーニョのような弱点がはっきりしているスペシャリストを抱えながらも、大きな破綻がないのは後方の選手たちの黒子としての働きが優れているからに他ならない。

■最後のターニングポイント

 アーセナルにとっては後に引けない試合である。代表ウィーク直後の星勘定ではここは引き分け、もしくは負けてもやむなしということだったが、完全に事情は変わってしまった。勝利を狙わなくてはいけない一戦である。

 勝利を念頭に考えると、やはり先手を取られた時点でゲームオーバーと考えるべきである。試合終盤の対応力や選手の層の厚みではチェルシーに分があることは明らか。先にリードを奪われるとよりその差が顕著になる戦況が待っているだろう。

 積極的に勝ちを狙いに行くのであれば、狙いはプレッシングになる。バックラインから時間を取りあげて、プレスから相手を機能不全に追い込んだブレントフォードの再現ができれば理想である。

 チェルシーは時間がない時のバックラインの足元が特筆して優れているームではないので、時間を奪うアプローチは有効である。時折、チェルシーのバックラインはこの試合のように後方のボール保持で発作を起こすことがある。そこは当然狙い目になる。

 ただし、ブレントフォード戦ではチェルシーにはジョルジーニョがいなかったことは頭に入れておかねばならない。一瞬の時間の隙から縦パスを生み出してしまう彼の存在はアーセナルがハイプレスに出た場合アキレス腱になる。撤退守備においても怖いので、どちらにしても対策は必要だが。

 ボールをドリブルで運べるコバチッチがいないのはアーセナルにとっては少しは助けになるかもしれないが、カンテもコンディションさえ整えば機動力は十分。近年の彼はボールも運べる。バックラインの選択肢をなくすためにもCHの2人をいかに潰して時間を奪っていくかから考えないといけない。

 ハイプレスにおいて重要な体力面では直近の日程的にも中期的な負荷的にもアドバンテージはアーセナル側にあるだろう。タバレス、ロコンガという対人守備に不安のある選手はネックだが、積極的に勝利を掴みに行くやり方としてはハイプレスはアリである。

 撤退守備をベースにボールを持たせるやり方もなしではないが、スカッド的にはあまりローラインで受けるようなメンバー構成ではない。今のアーセナルの守備はサイドのプロテクトが不安定で、それゆえCHが持ち場を離れてカバーに行くことが多く、中盤中央は空く。ミドルシュートやジョルジーニョのラストパスが供給できる場所をプロテクトできないのならば、以前のように5-4-1で撤退して守り切るやり方は少し無理筋のように思う。実施に移すならば冨安の復帰が最低条件だ。

 仮にボールを奪い取って、アーセナルの前線とチェルシーのバックラインのかけっこになれば、アーセナルには分があるように思う。自陣に引き込んでからのロングカウンターならば、確かに機動力の差を活かして手早いフィニッシュまでは持って行けるだろう。

 現実的にはハイプレスを90分は無理なので、機を見たプレッシングで少しでもローラインで受ける機会を減らしつつ、先手を取る機会を伺うやり方しかないように思う。

 いずれにしても早めの攻撃の完結は意識したいところ。がっちりと自陣を固めたチェルシーからはあまり点を獲るイメージはわかない。なので、ボールを奪ったところからゴールまでの道筋をどこまで手早く縮められるかがポイントになる。

 例えば、前節試した順足WGの活用はその一つといっていいだろう。マルティネッリとサカがかけっこを挑めばこちらが有利である。仮に逆足WGだと、サカの右サイドはアロンソのカバーに素早くリュディガーがやってきて前を向く前につぶされる流れにもなってしまう。イメージとしてはリバプール戦のファン・ダイクのような。

 ということでアーセナルのアタッカーはチェルシーのバックラインと奥側で勝負したいところ。手前で背負う形での勝負は厳しい。スペースでの勝負から一気にフィニッシュに!という方針は足元で受けたがる直近のアーセナルのアタッカーの課題でもあるし、プレミアのトレンドでもある。

 シティ×リバプールでもシティが順足WGからスムーズにフィニッシュを目指したのは印象的である。強固な最終ラインを有するチームを向こうに回すならば、シティすら押し込んでのサイドからの旋回や多角形形成を棚上げするのである。今のアーセナルがここにこだわってチェルシーに敵うとは思えない。

 そもそも、アーセナルがよかった時もスペース、スペースで空いたところを突きながら素早くサイドを変えて攻略する流れだった。トーマスがいない分、空いたスペースに素早くボールを届けるのは難しい。直線的なスピード勝負に挑むことになるかもしれないが、勝算があるとすればそこではないだろうか。

 ここ数年のチェルシー戦はアーセナルの戦績が悪い時にぶつかることが多い。中でも今回は3連敗。まさに地獄にチェルシーといった様相である。

 個人的には今季の流れを変えるラストチャンスのように思える。大きな主力の復帰は冨安以外は期待できないのならば、今出ているメンバーが自信をつけるしかない。それならば、残りのカードの中でも最高難易度のこの試合で結果を出すことはトンネルを最も気持ちよく抜け出すための手段である。21-22の最後のターニングポイントをアーセナルは活かすことができるだろうか。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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