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「Catch up Premier League」~Match week 32~ 2022.4.8-4.10

目次

①ニューカッスル【15位】×ウォルバーハンプトン【8位】

■ようやく果たしたエースの責務

 冬の移籍市場の後押しを受けて1月から続けてきた猛チャージに陰りが見え始めたニューカッスル。特に前節のトッテナム戦のリードを許してからの試合運びは地力の差を感じる内容だった。

 今節の相手のウォルバーハンプトンもここ数カ月はどこか元気がない。振り返ると終盤に逆転負けを喫したアーセナル戦がターニングポイントだっただろうか。共にノースロンドン勢に痛い目にあわされた両軍によるフライデーナイトの一戦である。

 試合はじりじりとした立ち上がりだったが、主導権を握ったのはホームのニューカッスルの方だった。ウルブスと対峙する上でまず解決しなければいけないのは5バックをどう壊すかである。この試合において効いていたのはサン=マクシマン。中盤を斜めに切り裂くドリブルで、5バックの手前のガードである中盤を無効化することに成功していた。

 プレッシングも比較的ハマったように思う。ウッドが周りにプレスを促すことで、ニューカッスルは全体のラインを上げてウルブスに対峙することが出来ていた。

 ウルブスのバックラインはニューカッスルのプレス隊が時間を奪ってくることにうまく対応できず、保持でリズムを作ることができない。3バックから縦に付けての強引な突破を目論むが、中盤ではニューカッスルが反転を許さず、ショートカウンターを食らう羽目になっていた。トップがヒメネスならばとりあえず前に蹴っ飛ばすのはアリだろうが、線が細いファビオ・シルバではそれもなかなか難しい。ウルブスは前進の手段が見当たらず、ニューカッスルに握られたペースを引き戻すことが出来なかった。

 試合はニューカッスル優勢で進んでいたが、前半は枠内シュートなし。まだ決定的な差まで行っていないこともあり、ウルブスは後半はプレッシングに打って出る。だが、これはむしろニューカッスルにWB-CBの裏からのカウンター攻勢を許す餌になってしまう。

 そして、そのニューカッスルのカウンターがようやく刺さるときがやってくる。ウルブスのミスから入れ替わったウッドが独走してPKを奪取。これをウッドが自ら決めて先制。ウルブスからすると簡単に入れ替わられてしまったボリーのところは後悔が残る部分だった。

 後半もポゼッションからペースを握れないウルブス。シュートを増やすことが出来ず、ニューカッスルの面々を脅かすことができない。80分が過ぎたところでようやく左WBのマルサウからチャンスメイクの匂いがするが、最後までゴールを奪うことはかなわなかった。

 今季は苦しいシーズンになっているウッドがようやくエースの責務を果たして勝利に貢献。再浮上のきっかけを勝利でつかんだのはニューカッスルだった。

試合結果
2022.4.8
プレミアリーグ 第32節
ニューカッスル 1-0 ウォルバーハンプトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:72‘(PK) ウッド
主審:ピーター・バンクス

②エバートン【17位】×マンチェスター・ユナイテッド【7位】

■リシャルリソンの余裕を奪えなかったユナイテッド

 ミッドウィークのバーンリー戦で劇的な敗戦を喫していよいよあとがなくなってきたエバートン。立ちはだかるのは来季のCL出場に向けてこちらも後がなくなったマンチェスター・ユナイテッドである。

 序盤からポゼッションに余裕があったのはエバートン。ユナイテッドのトップがプレスに行けないロナウドであることを利用し、CBが積極的にボールを持ち運びを行いながらボールを前に進める。トップのキャルバート=ルーウィンもターゲットになり、いざとなれば放り込めばOKなので多少の持ち運びのリスクは許容できるといったところだろう。

 一方のマンチェスター・ユナイテッドは持ち運びに苦心。正三角形の中盤がエバートンの逆三角形の中盤につかまってしまい、ボールの預けどころがない状態に。

 困ったユナイテッドはサリーでズレを作ることで解決策を見出す。マティッチが最終ラインに下がり、SBを押し出していく。これで保持が落ち着いたユナイテッドは左サイドからチャンスメイク。テレスのオーバーラップや、ブルーノ・フェルナンデスとラッシュフォードのポジション交換などからチャンスを生み出していく。

 右サイドもサンチョにワン=ビサカのオーバーラップの活用でエバートンを押し込む。マイコレンコがイウォビのお守りつきで左サイドを守っている様子はもはやエバートンの日常になっている。

 一方のエバートンの保持で活路になったのはイウォビ。同サイドのCHであるマティッチは動き回るイウォビとの相性が悪く捕まえきれない。これにより持ち運びが安定するエバートン。すると、27分。左サイドからリシャルリソンがイウォビに横パスを出し、ポストで落としを受けたゴードンがミドルでデ・ヘアを打ち抜いて先制点をゲット。前半のうちにリードを奪う。

 ビハインドになったユナイテッド。攻勢に出たいところだが、前線のオフザボールの少なさが懸念。裏を取る動きがないので奥行きを作ることができない。加えて、チームの中でオフザボールの動き周りが期待できるフレッジが負傷交代。代わりにポグバが入ったことでややアバウトな放り込みに舵を切ることとなり、攻撃の機能性は低下した。

 後半もこの力関係は変わらず。押し込むことができるユナイテッドであるが、サイドでフリーの選手を作ったとてそこからできるのはせいぜい単調なハイクロスくらいなもの。

 そのユナイテッドの攻撃を見てか、リシャルリソンがプレーに遊び心を入れる余裕を出し始めたのはユナイテッドファンにとっては屈辱といえるだろう。しかしながら、最後までユナイテッドはリシャルリソンからその余裕を取り上げることが出来ず。

 最後は守護神のピックフォードの活躍もあり、逃げ切ったエバートン。前節のシックスポインター敗戦を和らげる勝利を手にすることに成功した。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
エバートン 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:27’ ゴードン
主審:ジョナサン・モス

③アーセナル【5位】×ブライトン【13位】

■暗雲が立ち込める連敗

 レビューはこちら。

 クリスタル・パレスに敗れて再開初戦を白星で飾れなかったアーセナル。今節の対戦相手は直近7戦でわずか1得点のブライトン。苦しい局面を脱出するための両チームの一戦である。

 序盤からペースを握ったのはアウェイのブライトンの方だった。極端に左サイドに人を集めてのポゼッションでアーセナルの注意を片側サイドに集める。アーセナルはそのまま窒息させるようなプレッシングをできればよかったのだけど、そうした圧力のかけ方はこの試合ではできず。

 ブライトンは左サイドからの斜めのパスからエリア内に迫る形を作る。だが、オフザボールの動きの悪さは少し不調を引きずっている感じ。このサイドからは決定機を作れなかった。

 しかし、決定的な機会は逆サイドから。大外に張るグロスでSBのジャカを引き寄せると、大きく空いたアーセナルのSB-CB間をダンクのフィードが強襲。抜け出したムウェプから最後はマイナスの折り返しを受けたトロサールが決めて先手を奪う。

 アーセナルとしては人をかけていたサイドではなく、逆側から崩されるという意味で虚を突かれた形といっていいだろう。こちらのサイドの連携は攻撃でも不調。ジャカのような供給力のある選手をプレッシャーのかかりにくいSBに置く形を活かしきれず、好調のマルティネッリにいい状態でボールを持たせることが出来なかった。

 それでも前半追加タイムにセットプレーから同点。かと思いきや、これはオフサイドで取り消し。おそらくオフサイドなんだろうけど、サンチェスの陰に隠れてカメラから見えないはずのククレジャから引かれたオフサイドラインに納得できないアーセナルファンも多かったはずだ。

 後半はアーセナルがジャカを中央に戻す3-4-3に布陣変更。マルティネッリとサカという突破力のある両WBを配置することで相手を横に広げたアーセナルは中盤に縦パスを通せるように。

 しかし、後手に回ったブライトン相手に得たセットプレーの山を活かすことが出来ず。そうこうしているうちにムウェプのスーパーミドルでさらに突き放されるという苦しい展開に。

 終了間際にウーデゴールのロングシュートで追いつくもアーセナルとしてはここが一杯。CL出場権獲得に暗雲が立ち込める重たい連敗を喫することになってしまった。

試合結果
2022.3.16
プレミアリーグ 第27節
アーセナル 1-2 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:89‘ ウーデゴール
LIV:28‘ トロサール, 66’ ムウェプ
主審:デビッド・クーテ

④サウサンプトン【12位】×チェルシー【3位】

■理詰めで破壊した4-4-2

 ブレントフォードに大敗した流れを引きずってか、CLでもレアル・マドリーに先手を取られてしまったチェルシー。2ndレグでのリターンマッチを火曜に控える難しいタイミングでセント・メリーズ・スタジアムに乗り込むこととなった。

 しかしながらそうした心身の不調は杞憂であった。それどころか、チェルシーは3-4-1-2を駆使してサウサンプトンの4-4-2をほとんどパーフェクトに壊してみせた。

 まずはバックラインから3枚のCBがサウサンプトンの2トっプを外すと、3枚目としてサウサンプトンのSHが飛んでくる。これで4-4-2は歪む。サイドの人が手薄になったら今度はWBがボールを受けてサウサンプトンのSBを手前に引き出す。と同時にそのSBの背後を2トップの片方が取る。それをトリガーにしてエリア内にストライカーが入る。

 ほとんどこの形をテンプレとしてチェルシーはチャンスを作り続ける。裏に抜け出す役はWBでもOK。とにかくサウサンプトンのSBを手前に引き出すことさえできれば、あとはその裏にセットで走り込む形を組み合わせる。これは相当に効果があった。

 SBをピン止めするのが1人、飛び出すのが1人、クロスに入り込むのが2-3人というバランスをハフェルツ、ヴェルナー、マウント、アロンソ、ロフタス=チークで無限に回している感じ。マウント、ヴェルナー、ハフェルツの3トップということで当然横の入れ替わりの流動性もあるので、その点もサウサンプトンとしてはめんどくさかったはずだ。

 チェルシーはサイドをえぐる形からあっという間に先制点を奪うと、2点目はサイドが押し下げたスペースで空いた真ん中からマウントのミドル。瞬く間にセーフティリードを得るように。得点シーン以外にもチェルシーは大量にチャンスを構築しており、リードは妥当だった。

 サウサンプトンが解決策を見つけるまでにチェルシーはどんどん得点を重ねていく。チームの中心であるウォード=プラウズのエラーで入った3点目の時点ですでに勝負は決していたといっていいだろう。

 4点目を取られたあたりでようやくサウサンプトンは5バックにシフトチェンジし、チェルシーの攻撃の起点となっていた横のズレの制限にかかる。しかしながら、結局WBのリヴラメントとウォーカー=ピータースの戻りが遅れれば大外のカバーリングが必要なのは変わらない。

 結局後半も戻りが遅れたWBのせいでサウサンプトンは3バックが横を網羅することにねってしまい、チェルシーがさらに追加点を得る。取りも取ったり6得点。公式戦連敗の鬱憤を晴らすかのように、理詰めでサウサンプトンを圧倒したチェルシーがミッドウィークに弾みをつける大勝を飾った。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
サウサンプトン 0-6 チェルシー
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
CHE:8′ アロンソ, 16′ 54′ マウント, 22′ 49′ ヴェルナー, 31′ ハフェルツ
主審:ケビン・フレンド

⑤ワトフォード【19位】×リーズ【16位】

■中盤不在の差し合いを制したのは

 残留争いで厳しい戦いが続いているワトフォード。とりあえず、一つでも多くのチームを降格圏の沼に近づけておきたいところ。負けたら一歩沼に近づいてしまうという意味でリーズにとっても負けられない一戦である。

 立ち上がりこそプレッシングに色気を見せていたワトフォードだが、徐々にリーズにボールを持たせて撤退を優先するように。リーズはボールをもてはするものの、中盤が相手につかまっており、なかなか中央を使った展開は難しい状態になっていた。

 ということでリーズはバックラインからサイドに大きな展開でワトフォードを幅で苦しめる選択肢を取ることにした。一方のワトフォードはボールを奪ったら即縦に付ける動き。割り切りながら前線にロングボールを託して、サールに預けて即ファウルゲット。地味だけど効くやり方で敵陣に迫っていく。

 リーズは大きな展開で、ワトフォードは縦に蹴りだす形でということで互いに蹴りあいになった展開。そうした中で違いを見せたのはリーズの方だった。トップのジェームズが何とか粘りながらボールをキープし、ラフィーニャに預けるとこれを沈めて先制点をゲット。リードを奪う。

 ワトフォードにも43分、前半のうちに試合を振り出しに戻すことができる決定機があったものの、これをサールが決めきれず。同点のチャンスを逃したままでハーフタイムを迎えることとなった。

 後半は前半にも増して激しい蹴り合いだった。リーズが早いタイミングで縦に仕掛ければ、ワトフォードもそれを止めるとすぐさま縦に蹴り返す。互いに中盤はほとんど存在せず、ほとんど局面は互いのゴール前ばかり。それも互いの強みであるWGとSBの差し合いばかりという一昔前のプレミアリーグらしい展開に。

 ラフィーニャ、デニス、サール、ハリソンなど互いのアタッカーが躍動する中で次に当たりを引くのは誰?という感じの展開になっていた。激しい撃ち合いが繰り広げられる中であたりを引いたのはリーズ。負荷のかかる展開だったワトフォードのDFラインに出た連携ミスを見逃さずにゴールに叩き込んだ。

 事実上、2点目で試合は終戦といっていいだろう。ここから巻き返すエネルギーはワトフォードには残っていなかった。そして、仕上げはハリソン。左サイドから突き上げるような見事な軌道のシュートをネットで突き刺し、ダメ押し弾を決める。

 リーズを沼に引きずり込むことに失敗したワトフォード。一時期は苦しい状態だったリーズだが、監督交代と主力復帰を上昇気流に乗った感。降格からは徐々に遠ざかりつつある。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
ワトフォード 0-3 リーズ
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
LEE:21′ ラフィーニャ, 73′ ロドリゴ, 85′ ハリソン
主審:アンドレ・マリナー

⑥アストンビラ【11位】×トッテナム【4位】

■許してもらった大量得点

 おそらく、アーセナルファンが自分のフォロワーに多いこともあるんだと思うけども、この試合に関しては『0-4ほどの内容じゃないんじゃないか?』という意見が質問箱にいくつか飛んできた。

    質問者の想定としてはきっとトッテナムはチャンスの山を作っていたわけではないのに!ということなのだろう。確かにその通り。チャンスの量としては両チームに大きな差はないか、もしかするとアストンビラの方が多かったイメージはある。実際枠内シュートはアストンビラの方が多い。

 だけども、この試合のアストンビラはトッテナムと戦う上での足切りに引っかかってしまった感がある。開始直後の先制点に関してもそうである。ロングボールの処理をあやまり、あっさり相手にわたしたところからソンが先制点を挙げた場面である。

 華麗なパスワークを見せたわけでない分、両軍の力の差を明確に感じるゴールではないかもしれない。だが、トッテナムのような縦に速い攻撃を得意とするチームを相手にするときは、ロングボールへの対応は最低限うまくやらなければ対抗できないだろう。単純なロングボールで少ない人数で点が取れるならば、トッテナムにとってこんな楽なことはない。ビラはその形を許してしまったともとれる。

 もっとも、アストンビラにはリカバリーの機会は十分にあった。先制点以降、ペースを握ったのはアストンビラ。エメルソンの対応が怪しかったトッテナムの右サイドを軸に深さを作りながら、敵陣に迫る。

    トッテナムが安易にラインを下げたため、空いたバイタルエリアを使う余裕はビラにあったし、トッテナムのエリア内の対応もタイトとは言えなかったため、クロスにも十分なチャンスを見出すことが出来ていた。シュートがさっぱりだったイングスが本調子ならば、ビラは前半のうちに同点、もしくは逆転までたどり着けた可能性もあった。

    しかし、トッテナムに前半をしのがれると、後半のビラは再びロングボール対応に難を見せる。特に苦しんでいたのはコンサだろう。ケインに出ていった挙句、簡単に背後を使われた3点目や、サイドに流れたソンを潰し切れずに陣地回復を許すと、最後はそのソンをエリア内で離してしまいハットトリックを許してしまった4点目はいずれも直接的に失点に関わってしまった。

   ビラは中盤が前への意識が強い分、バックラインにとっては負荷の高い戦い方であるのは確かだが、さすがにここ数試合の失点への寄与を考えるとコンサには厳しい評価が下ってもおかしくはないように思う。冬の移籍以降、安定したパフォーマンスを見せているチェンバースとの序列が変わったとしても不思議はない。

    いずれにしても大量失点には原因があったということ。試合を完璧に支配したわけではないが、大量得点と勝利を手にしたトッテナムは一番楽な勝ち方を許してもらったのだ。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
アストンビラ 0-4 トッテナム
ビラ・パーク
【得点者】
TOT:3′ 66′ 71′ ソン, 50′ クルゼフスキ
主審:グラハム・スコット

⑦ブレントフォード【14位】×ウェストハム【6位】

■あべこべな振る舞いで大チャンスを逸する

 前日にマンチェスター・ユナイテッドとアーセナルが盛大にやらかしてしまったおかげで、欧州カップ出場権争いのチャンスが回ってきたウェストハム。曲者のブレントフォードの本拠地を制圧するミッションを達成できれば、まだまだ来季の欧州カップ出場の目はある。

 立ち上がりからの両チームの振る舞いは普段と比べるとあべこべな感じだった。中盤にマンマークを高い位置から仕掛けてボールを奪いに行くのはウェストハム。ハーフウェーラインまでトップのプレス位置を下げながらPA前の付近で我慢するブロック守備を敷いているのがブレントフォード。

 普段はどちらかといえばプレッシングの志向が強いのがブレントフォードで、ブロックで固めてのロングカウンターを見据えることが多いのがウェストハムなのだが、この試合では逆の振る舞いをしていた。

   そんな展開の中で前進に成功していたのがブレントフォード。中盤は確かに捕まっており、エリクセンはこれまでのような働きを見せることが出来なかったが、サイド攻撃は躍動。

    気になったのは、ブレントフォードのSBが高い位置まで持ち上がる動きに対してのウェストハムの防衛策がイマイチなこと。中央はプレスで相手を捕まえることは出来たが、サイドにおいては簡単にボールを逃がすことが多かった。

 撤退以降のウェストハムは中央の守備が危うく、ライン間でのパス交換もブレントフォードに許す場面も目につく。サイドから押し下げられる形に対して、中央のプロテクトが間に合わずに後手後手になるシーンが目立つように。その上、CBはズマが負傷し強度も低下。不調にトラブルが重なってしまい、ウェストハムらしくないルーズな守備の隊形になっていた。

 保持でもらしさが出ないウェストハム。ブレントフォードが撤退を優先していたことを差し引いたとしてもカウンターが鈍重すぎる。アントニオやボーウェンをはじめ、ボールを奪ってからスイッチを入れることが出来ずになかなか敵陣に出ていけない。大外からのクロスでひたすら叩くしかブレントフォード相手に有効打を打つことは出来なかった。

 そうしている中で先手をとったのはやはりブレントフォード。ズマに代わって入ったディオプ揺らいで出来たズレを見逃さなかった。細かい崩しでウェストハムを上回り先制点を奪う。

 続く追加点も左右に大きく振る展開から。ウェストハムのバックラインの脆弱さは目についたが、中盤より前の選手たちが彼らを助けられなかったのも気がかりである。

    攻守にエネルギーを感じなかったウェストハムはブレントフォードに完敗。アーセナルとユナイテッドに続き、勝ち点の積み上げに失敗し、唯一3ポイントを積み上げたトッテナムの1人勝ちの週末となった。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
ブレントフォード 2-0 ウェストハム
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:48′ ムベウモ, 64′ トニー
主審:マーティン・アトキンソン

⑧レスター【10位】×クリスタル・パレス【9位】

■前進の機会で得た前半のアドバンテージで逃げ切り

 立ち上がりから落ち着きのないボールの行き来する展開だったこの試合。互いに左サイドの裏抜けからチャンスメイクを行う。先にチャンスを作ったのはレスター。ソユンク→ルックマンのスルーパスで決定機を迎える。この決定機を凌いだクリスタル・パレスはザハの抜け出しからこちらもチャンスを迎える。

 だが、この抜け出し以降はなかなかクリーンなチャンスを作れなかった両チーム。互いにプレッシングに苦しみながらなかなかスムーズな前進ができない。レスターは4-3-3だったが、IHを1枚前に出してプレスを行っていたので、どちらのチームも4-4-2型のプレッシングと言って良かった。

 そんな中できっかけを掴んだのはホームのレスター。アンカーのメンディが徐々に相手の2トップの裏に回り込み前を向く機会を作り始めるように。ボールを運べるメンディによって、両チームの前進の機会に差が出るようになると、試合のペースはレスターに傾いていく。

 そのペース通り先制点を手にしたレスター。デューズバリー=ホールのタメが効いたアシストを抜け出したルックマンが押し込んで先制点を奪う。完璧なお膳立てを見せたデューズバリー=ホールはその後も勢いを止めずに豪快なシュートで追加点をゲット。レスターが前半のうちにリードを広げる。

 パレスとしてはミッチェルの負傷交代が痛かったか。後半のパレスは左サイドの裏を取られる機会が多く、かなり狙い撃ちにされている感が否めなかった。

 流れが変わってきたのはヴィエラが早々に切った2枚の交代カードから。特にボールを運べるエゼの存在は大きかった。これによって息を吹き返したパレスはアイェウがティーレマンスのPKを誘発し、追撃のチャンスを迎える。

 一度はPKを阻止されたザハだが、ソユンクのエリア内の侵入が早かったとして蹴り直し。二度目のPKも迷いなくトライしたザハは一度目よりはるかに甘いコースに蹴って再度シュマイケルに止められたものの、これを押し込んで強引に得点を引き寄せてみせた。

 ここから一気に押し切りたいパレスだが、ポゼッションでレスターに再度ペースを握り返されると流石にもう一度押し返せるだけの余力はなし。この辺りは交代カードを早めに切ったヴィエラの采配の影響と言ってもいいだろう。

 慌てた時間帯には焦りも見られたが、最後は持ち直して逃げ切ったレスター。前半戦の対戦のように2点差をリードしておきながら、追いつかれる失態を繰り返すことはなかった。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
レスター 2−1 クリスタル・パレス
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:39′ ルックマン, 45′ デューズバリー=ホール
CRY:65′ ザハ
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑨ノリッジ【20位】×バーンリー【18位】

■仕留め方は鮮やかに

 いよいよ厳しくなってきた残留争い。日曜日に対戦するのはこのままだと降格してしまう2チームである。

 より残留の可能性を残しているのは18位のバーンリー。前節のエバートン戦での立ち上がりと同じく、まったりとボールを持ちながら攻めの機会を伺う。

 特によく使っていたのは横に振る大きなボール。サイドにボールをつけることでノリッジが開けやすい外のスペースを侵食し、敵陣深くでのプレーを狙っていく。

 一方のノリッジはより直線的な攻撃。一気に縦に進み、バーンリーのバックラインの裏を取るような動きを見せる。

 より効果的にボールを前進できていたのはノリッジの方だろう。バーンリーはサイドにボールを出すところまでは辿り着けてはいるのもの、そこからのずらしながらのもう一手にかけている。エバートン戦ではサイドから1枚剥がして敵陣に迫ることでマイナスのスペースを創出していたが、この試合ではそうした動きはなし。サイドからのハイクロスに終始しており、明確なアドバンテージを得ることができなかった。

 一方のノリッジはバーンリーの戻りが遅くなったところを強襲するような攻撃で優位に。カウンターからシュートの機会を作ることができていた。その機会を生かして先制点まで辿り着いたノリッジ。セットプレーからの跳ね返りをレース・メルがバイタルからミドルで打ち抜き、早い時間にノリッジが前に出るようになった。

 個人での局地戦でも有利なのはノリッジ。ボールを持っているときに相手を剥がすのがうまいのはこの日はノリッジの方だった。バーンリーは30分以降は敵陣でのプレータイムを増やすことに成功はしてはいたが、相手の守備ブロックに穴を開けるようなアプローチは少なかった。

 後半は両チームとも撃ち合いにシフト。中盤が間延びした影響で、両軍のゴール前を行き来するような展開が続く頃になった。殴り合いから両チームともチャンスを作ることができていた。ノリッジはハンリーのヘッドやラシツァの仕掛け、バーンリーは64分のコルネの決定機が90分を通して最もゴールに迫った瞬間であった。ノリッジとしては早い展開の中で、既に警告を受けていたレース・メルが2枚目のカードをもらわなくて一安心という場面もあった。

 撃ち合いの中で先に当たりくじを引いたのはノリッジ。外に相手の意識を向けながら、中央のプッキを使ったスルーパスで相手の裏を書いたプレーを見せたノルマンは素晴らしかった。おそらく、この試合で最も鮮やかに決まったアイデアでノリッジが追加点を奪う。

 撃ち合いを生かせず無得点に終わってしまったバーンリー。エバートンとのシックスポインターを台無しにする敗戦で、残留への道はより厳しいものになってしまった。

試合結果
2022.4.10
プレミアリーグ 第32節
ノリッジ 2-0 バーンリー
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:9′ レース・メル, 86′ プッキ
主審:マイケル・オリバー

⑩マンチェスター・シティ【1位】×リバプール【2位】

■まがうことなき最高峰

 レビューはこちら。

 まがうことなき最高峰の決戦といってよかっただろう。一歩遅れればパスは通らないし、対応一つミスれば即ピンチ。21-22のプレミアリーグの天王山という看板に偽りのない名勝負だった。

 より相手を対策したのはホームのシティの方。ベルナルドを中盤の底に落とすスクエア型のビルドアップでまずは後方での数的優位を確保。ポゼッションでリバプールのプレスをいなす。

 そして、プレスによって高まったリバプールの重心を大外からの強襲で壊す。俊足の順足WGとウォーカー、スターリングの裏抜けを活用し、カバーリング能力に優れるリバプールのバックラインにカバーの隙を与えずにフィニッシュまで持って行く。それがこの日のシティの流儀だった。

 攻撃は手早く。従来のシティのイメージのようなサイドでの旋回を軸にした定点攻撃はこの日は皆無といっていい。後方ではゆっくりボールを回しても、前方では一気に畳みかける。もしかするとシティにおいてベルナルドの重心が最も低かった試合かもしれない。

 シティのリバプール対策の効果はてきめん。クイックリスタート起点でデ・ブライネが決めた1点目と、セットプレーの流れからジェズスがアレクサンダー=アーノルドを出し抜いた裏抜けを活用した2点目で前半のうちに複数得点を挙げる

 一方のリバプールは普段着に強度をプラスした形。左に落ちるチアゴから強力な右サイドへと展開。左右のSBを絡めた厚みのあるゴールでこちらも得点を決める。

 それでもプレスがかからず、外から裏を取られる形にリバプールは苦戦。シティが保持からのスピードアップを活かし、リードでハーフタイムを迎える。

 だが、後半早々リバプールは同点に。右の大外に開いたサラーから斜めにPA内に入り込んできたマネがラストパスを決めて、後半開始1分も経たないうちに追いついて見せる。

 後半のリバプールは前半のシティの狙いをひっくり返すように大外のSBの攻め上がりを活用する。リバプールの強みはシティとは違い、抜け出し切らなくてもカットインやクロスで十分にゴールの脅威を作り出せること。シティのバックラインにはファン・ダイクはいない。

 そういう意味では選手の入れ替えでやや苦しくなったのはシティ。交代選手は直線的な攻撃というよりもタメが持ち味のマフレズとグリーリッシュであり、微妙にこの日のシティのモデルとは乖離している感があるだ。それでもデ・ブライネの持ち運びからリバプールの保持を切り返して好機を作り出す。終盤にもう一度決定機の数を増やしたのはむしろシティの方だった。

 だが、決定的なシュートの機会を得たマフレズはヒーローになることは出来ず。最高峰の一戦は第1ラウンドと同じくドローで終わることとなった。

試合結果
2022.4.10
プレミアリーグ 第32節
マンチェスター・シティ 2-2 リバプール
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:5‘ デ・ブライネ, 37’ ジェズス
LIV:13‘ ジョッタ, 46’ マネ
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

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