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「Catch up Premier League」~Match week 31~ 2022.4.2-4.3

目次

①リバプール【2位】×ワトフォード【18位】

■すべてがお望み通り

 試合の前は代表ウィーク、そして試合後はミッドウィークにはCL、そして週末には天下分け目のシティ戦というハードな一週間。リバプールにとってモチベーションの位置づけが非常に難しい一戦である。しかしながら、シティとのマッチレースの様相を呈しているリーグ戦での現状を考えれば手を抜くわけにはいかない。だけども、なるべく楽には勝ちたい。

 その微妙な温度感に付き合ってくれたワトフォードはリバプールにとっては理想の対戦相手だった。まず高い位置からプレスに来ないため、ゲームの強度が上がりにくい。攻撃は割り切ったロングボールとカウンターからのサール一辺倒。ボールを奪ったらとりあえず縦に向かってきてくれるので、こちらからボールを追いかけまわす展開は少なくて済む。

 というわけで保持の時間を長く過ごすことが出来たリバプール。ワトフォードの前線はそもそも方向を限定するプレッシングも放棄していたので、リバプールとしては大きな展開を出せば、ワトフォードがそれを後追いしてくれるという流れに。

WG、IH、SBのおなじみのトライアングルでのボールキープからサイド攻略を狙ういつもの形でリバプールはワトフォードのゴールに迫っていく。フィルミーノ、ゴメスなど安直なパスのひっかけが多かったのは否めないがそこはご愛敬だろう。カウンターによってクツカにゴールを脅かされたシーンはあったが、なんとか許された。

 助かったリバプールはあっさりと先制。この試合で何度か見られた左から右への大きな展開で先手を奪う。ワトフォードからすれば、アレクサンダー=アーノルドじゃなければ大丈夫!という感じだったのだろうか、やたらマークを離されたゴメスからピンポイントで飛んで来たクロスをジョッタが合わせて先手を奪う。

 先制点後もリバプールペースは変わらなかったが、1点差で推移しているうちはワトフォードにも勝ち点を得るチャンスはあった。サールの抜け出しとクロスするジョアン・ペドロのフリーランなど攻撃の手段もないわけではなかった。8分手前の3枚がえは勝負に出たものだったはず。あと一味加えればあわよくば!という望みをかけた大勝負だったはずだ。

 しかし、現実をみてみると80分までワトフォードに枠内シュートはなし。そして苦しんでいたクロス対応においてクツカがレスリングのようなタックルをかましてPKを献上。紙一重というにはあまりにも厳しい内容である。

 そのPKを沈めたリバプールが2-0の完勝。上がりすぎない強度、怪我人なし、そして勝ち点3。注文通りの週末の試合を終えて、いざ試練の1週間を迎えることになる。

試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
リバプール 2-0 ワトフォード
アンフィールド
【得点者】
LIV:22′ ジョッタ, 89′(PK) ファビーニョ
主審:スチュワート・アットウィル

②ブライトン【13位】×ノリッジ【20位】

■互いに苦しい現状が浮き彫りに

 リーグ戦は6連敗中、うち5試合は無得点と不調真っ只中のブライトン。対するは、こちらも6連敗で最下位のノリッジという苦しいチーム同士の一戦である。

 試合はボールを持てるブライトンが支配的な前半に。ククレジャ、マーチという打開できる個人がいる左サイドを中心にシュートまでは持って行くことが出来ている。

    不調のチームなので、どこがおかしいのかなと思いながら見ていたのだけど、選手の配置にはあまり不自然さを感じない。だけども、オフザボールの動きは結構減ったかなと思う。

    マーチやランプティ、ククレジャはサイドの優秀なボールプレイヤーだけど、それだけで決め手になるほど強力な武器ではない。なので、彼らにちょっと任せすぎている部分があるのかもしれない。PA内で餌を待っていればチャンスが来るほど甘くはない。

 もう1つ、機能不全の点を挙げるとすればプレッシングだろうか。昨シーズンは撤退を早めることで守備が危険にさらされることを防いでいたが、今季はプレッシングを強化。しかしながら、この試合ではノリッジをそのプレッシングで苦しめることは出来なかった。

 そのノリッジも前進に苦慮。サージェントの不在でアバウトなロングボールを引き出せる選手がプッキしかいなかったのは大きい。そのため、ショートパスでのポゼッションを頑張ってはいたが、サイドチェンジの際の逆サイドの攻め上がりのフォローが遅かったりなど、スムーズとは程遠い出来だった。

 そんな中で先制点のチャンスを得たのはブライトン。不可抗力なのかもしれないとはいえ、バイラムのハンドは信じられないくらいあからさまなもの。これでPKを取らない主審など世界を探してもいないのではないかと思うくらい明らかにハンドだった。

 だが、そのPKをモペイが枠外に大胆に蹴り上げてしまう。今季の前半戦は呪いが解けて得点を決めていたモペイだが、やはり枠にシュートが飛ばない期が今年もやってきてしまった模様。後半も再三チャンスをどぶに捨て続けると、他のチームメイトもこれに追従。点が入らない呪いに今年も苦しむこととなってしまった。

 一方のノリッジはそもそも押し返して得点機会にすらたどり着けない。80分になり試合がオープンになったところでようやくチャンスが巡ってきた感じ。しかし、そこでもシュートまでもう一手かける余裕はなかった。そして、それを補うシュート精度を持っておらず得点に迫る場面を作ることはできず。

 試合はそのまま終了。共に苦しい現状が露わになったスコアレスドローとなった。

試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
ブライトン 0-0 ノリッジ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:シモン・フーパー

③バーンリー【19位】×マンチェスター・シティ【1位】

■トップギアは入らないまま

 バーンリー×マンチェスター・シティ。もはやプレミアファンであれば、試合を見ずともこの文字を見るだけでどのような展開が繰り広げられているかは想像が十分につくはず。そしてこの試合の内容もその想像の域を出ないものだった。

 というわけでボールを持つのはシティの方。バーンリーはどのような受けるか?の話になってくる。

 バーンリーの守り方はいつもの4-4-2ではなく4-5-1。中盤をとりあえずシティにかみ合わせる形になった。それゆえに当然ロドリは食い止めなければいけないはず。だが、そのロドリのマークが時折甘くなってしまったため、シティはそこからチャンスを作ることが出来ていた。。

 そして、予想通りそのロドリから先制点の起点が生まれたシティ。右サイドへの機械のように正確なサイドチェンジで、スターリングの抜け出しを促すと、折り返しをきめたのはデ・ブライネ。開始5分でいきなりバーンリーの出鼻をくじく。代表ウィーク明け、そしてCLを控えているというシティの付け入るスキに入り込みたかったバーンリーだったが、その狙いはかなわなかった。

 ということでここから先はバーンリーを向こうに回してのゆったりとしたポゼッションモード。バーンリーはIHを中盤にマンマークする形で高い位置からのプレッシングを行うが、シティには当然のようにCBを経由してプレスを回避されてしまう。

 そうこうしている間にシティは2点目をゲット。今度はカンセロによって右に大きく展開。デ・ブライネが抜け出すと見せかけてスターリングが抜け出し、最後はギュンドアンが仕留めて追加点。前半のうちにシティがリードを広げる。

 後半、2トップに布陣を変更し、前線にコルネを置いたバーンリーはダイレクトな展開の応酬からチャンスを迎える。パス交換から一気に裏に抜け出して、シティのバックラインと勝負する形でチャンスを創出。前半にも見られた右サイドへの対角パスから早めのクロスでとにかくシティのラインの裏で勝負する。

 この形であわやというシーンを作ることには成功したバーンリー。オフサイドにはなったが、アケの全力ゴールライン上クリアなどもう一歩でゴールとなるシーンまではこぎつける場面が何度か来るようにはなった。

 試運転モードになったシティが後半はそこまできびきびしていなかったのにも助けられた部分は大いにあるだろう。しかし、得点が入らなければシティが再度エンジンをかける必要がないのも事実。出鼻をくじかれたバーンリーはシティのトップギアを見ることがなく、完封負けで90分を終えることとなった。

試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
バーンリー 0-2 マンチェスター・シティ
ターフ・ムーア
【得点者】
Man City:5′ デ・ブライネ,25′ ギュンドアン
主審:クレイグ・ポーソン

④チェルシー【3位】×ブレントフォード【15位】

■先制点で覆い隠さなかった課題

 メンバー表を見渡すとようやくフルスカッドが揃いつつあると言う感想だろう。2トップにはトニーとムベウモ、中盤にはエリクセンというピースが加わり、最後尾からはラヤがセービングとフィードでチームを攻守に支える。ここ数ヶ月苦しんできたブレントフォードはようやく反撃の準備が整いつつある。

 自信を持って送り出したスターターがチェルシーの4-3-3に対して仕掛けたのはマンマークによる前線からの強気なプレッシングである。チェルシーのバックラインには2トップがプレスをかけに行き、中盤ではアンカーのノアゴールがアンカーのロフタス=チークを捕まえにいく。サイドではWBがSBを捕まえにいくなど、とにかくプレッシャーをかけることを優先した戦い方だった。

 チェルシーはこれに対して苦しんだ。前線のハフェルツは動きながらボールを受けて持ち味が出るタイプ。相手を背負いながらパワーで勝負するのは得意分野ではない。メンディのパスミスからの決定的なピンチも含めて、この日のチェルシーのバックラインはブレントフォードのプレッシングを安定して回避する術を持ち合わせていなかった。

 ブレントフォードはハイラインにおける背後のケアは得意ではないが、この試合ではとてもよくやっていた。特にヴェルナーと対峙するアイエルは機動力で劣る部分をうまくカバーしながら背後をプロテクトしていた。

 高い位置から相手を捕まえるブレントフォードはカウンターからチャンスを作る。サイドを活用したカウンターは非常に鋭く、チェルシーを苦しめる。特に中盤におけるエリクセンの存在は抜群。プレスに出てくるチェルシーの背中を取るようなパスでカウンターを加速させる。マルコス・アロンソの裏をカバーするリュディガーの奮闘がなければ、もっと早い時間に失点していてもおかしくはなかった。

 前半の終盤はチェルシーが押し込む場面が出てきてはいたが、押し込んだ後の一手を見つけられずに苦しむ。ロフタス=チークのところに一差しで試合を決められるジョルジーニョがいれば少しは違っただろうか。だが、チェルシーは後半早々に押し込んだ相手への回答を示す。リュディガーのミドルでラヤの守るゴールマウスを打ち破って見せた。

 このゴールにより、流れはチェルシーに転がるかと思ったファンは多いだろう。しかし、前半からの課題はチェルシーを苦しめ続ける。高い位置からのプレッシング、そしてカウンターへの対応。この試合におけるブレントフォードの攻撃を食い止めるのに、先制点は十分なものではなかった。

 プレスから早々に同点弾を奪ったブレントフォード。チェルシーはノアゴールのところで食い止めたかったところだが、シュートまで行かれてしまった。

 さらにはカウンターからブレントフォードは勝ち越し。ツィエクが防ぎきれなかった速攻から、アロンソとカンテの連携が破られて得点を許してしまう。

 ブレントフォードの勢いは止まらない。サイドに流れたトニーによってチアゴ・シウバが釣り出されると、空いているスペースに走り込んだジャネルトがこの日2点目をゲット。そして、仕上げはセットプレーから。大活躍だったムベウモに代わって入ったウィサが4点目を決める。

 先制点で課題を覆い隠せなかったチェルシー。フルスカッドで開幕直後の旋風を取り戻したかのようなブレントフォードに屈してしまい、スタンフォードブリッジで手痛い黒星を喫した。

試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
チェルシー 1-4 ブレントフォード
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:48′ リュディガー
BRE:50′ 60′ ジャネルト, 54′ エリクセン, 87′ ウィサ
主審:アンディ・マドレー

⑤リーズ【16位】×サウサンプトン【11位】

■フィリップスの帰還で主導権を取り返したが

 早々にペースを握ったのはホームのリーズ。早い攻撃からゴールに向かい、セットプレーからさらに攻勢を強めるという流れでサウサンプトン陣内に侵入する。

 リーズが狙い目にしたのはサイドの裏。サウサンプトンの4-3-1-2において守りにくいサイドにおいて、WGとSBを重ねることで決壊を誘発する。時には右のラフィーニャが左に流れることも。前政権ではもっぱら右に張るばかりだったラフィーニャだが、マーシュが就任してからはだいぶ柔軟性が出てきた感じはする。右サイドでの1on1ももちろん健在で、エイリングがIHをピン留めしてから右の1on1で勝負する形も効いていた。

 逆にサウサンプトンのサイドの守備はきつそうだった。ウォーカー=ピータースが留守にすることが多いせいでやたら引っ張り出されるサリスがしんどそう。サウサンプトンのSBが留守にするせいでリーズは早い攻撃を効果的に行うことができていた。

 サウサンプトンの保持も本来はSBのオーバーラップを活かしたいところだが、リーズほどボールをうまく繋げることができなかった印象である。ロングボールに頼りがちになってしまい、ボールをすぐ相手に渡してしまう。

 サウサンプトンは深さを作ってライン間を開けるパターンも時計が進むにつれて出てこないこともなかったが、頻度と精度の部分でリーズに後手を踏んでいる感じはした。優位に立ったリーズは29分に先制。右サイドから深さを作ったところでクロスを上げて、混戦になったところをハリソンが決めて先手を奪う。

 サウサンプトンは後半早々にプレス強度を上げて反撃。SBのオーバーラップを前半よりも効果的に使うことでリーズの陣内に迫っていく。そして、伝家の宝刀であるウォード=プラウズの直接FKが炸裂。49分に同点に追いつく。

 リーズは交代選手でペースを引き戻す。ゲルハルトの投入からショートパスを基軸としたポゼッションで試合を落ち着けて、再び主導権を握る。さらにアクセントになったのは復帰戦となったフィリップス。ショートパス主体の組み立てのアクセントとして中距離のロブパスが入ることでサウサンプトンの守備の狙いを絞りづらくする。フィリップスにとってはそれなりに手応えのある復帰戦になったのではないだろうか。

 試合終盤は互いにゴール前の局面が増えて、再びオープンな展開に。それでも互いに決勝点を奪うことはできず。試合は1-1のドローのままで終了のホイッスルを迎えることとなった。

試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
リーズ 1-1 サウサンプトン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:29′ ハリソン
SOU:49′ ウォード=プラウズ
主審:アンソニー・テイラー

⑥ウォルバーハンプトン【8位】×アストンビラ【9位】

■バックラインの不安定さを利用する

 ある程度戦前の予想通り、アストンビラの保持で始まった一戦。5-3-2で受けるウルブスに対して、ビラはゆったりとボールを持つことができていた。

 しかしながら、ボールを持てるのと攻略できるのは別の話。中央を固めるウルブスに対して、ボールを引っ掛ける場面が続く。ウルブスはその機会を生かしてのカウンターで反撃。そしてこの反撃が先制点に繋がるまでにはわずか7分だった。

 ビラにとっては不運が連鎖した失点シーンだった。ロストしたマッギン、そしてカウンター対応に入ったコンサがいずれも足を滑らせてしまうことでウルブスのカウンターを成立させてしまっていた。監督がジェラードということを踏まえると対戦相手がエバートンやチェルシーだったら、思いっきり煽られていそうな失点の仕方だった。

 先制点を得たこともあり、ワイドのCBから落ち着いてボールを持ってポゼッションを進めるウルブス。対照的にアストンビラは負の連鎖が止まらない。失点シーンで見せた不安定さに引きずられるように、ミングスが怪しい裏への対応を見せると、2節前のウェストハム戦と同様にディーニュが負傷交代と悪い流れが続いてしまう。

 すると、ディーニュに代わって最終ラインに入ったヤングのクロスへの対応が甘くなってしまいオウンゴール。ウルブスに追加点を許す。すると、この追加点が引き金になったようにビラはさらに不安定に。攻撃時にボールを引っ掛けては緩いカウンター対応でピンチを招くなどいつ3点目が入ってもおかしくはなかった。

 なんとか2点差を維持してハーフタイムを迎えたビラ。後半はウルブスが前半よりもさらに引いて受けたこともあり、ビラが押し込む機会が続いてくる。まったりとした時間が続くことでリードしているウルブスペースと言える展開のように思えた。

    だが、この日はウルブスのバックラインにも違和感が。それはGKのジョゼ・サの飛び出し。いつも見ている方がヒヤヒヤするくらいのギリギリの飛び出してチームを幾度となく救ってきたが、この試合ではそのタイミングが合わせられていない感じ。出ていくのを躊躇って遅れてしまう場面が目立ち、裏への対応の危うさを見せてしまう。

 それが決定的なエラーに繋がってしまったのがPK献上シーン。飛び出しが遅れたジョゼ・サに倒されたワトキンスがこれを決めて86分に1点差に詰め寄る。

 そして後半追加タイム、またしても飛び出しのタイミングを見誤ったジョゼ・サがゴールマウスを空けてしまい、決定的なチャンスがビラに。しかし、これをキャッシュが仕留められずそのまま試合が終了。相手のバックラインの不安定さをよりうまく活用したウルブスが3ポイントを手にすることに成功した。

試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
ウォルバーハンプトン 2-1 アストンビラ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:7′ ジョニー, 36′ ヤング(OG)
AVL:86′(PK) ワトキンス
主審:ダレン・イングランド

⑦マンチェスター・ユナイテッド【6位】×レスター【10位】

■局面勝負の行方は

 どちらも4バック。どちらも中盤は3枚。がっぷり四つの様相を呈している両者の対戦は配置どうこうではなく、個人個人のデュエルにおいてどこで解決策を見出すかの戦いになっていた。

 より明確に策を打ち出すことができたのはレスターの方。バーンズのカットイン+イヘアナチョのレイオフで生み出したゴールへ向かう動きのように、序盤からバーンズが斜めに入り込む動きを見せる。イヘアナチョを活用できるかはレスターにとっては重要な要素。彼が絡まない攻撃は外循環になってしまい、どうしても打開が難しくなってしまう。

 一方のマンチェスター・ユナイテッドは勝負したいところであるサンチョまでボールを届けるところに苦労する。サンチョにボールが渡り、同サイドのショウがオーバーラップすればチャンスが産まれそうなものではあった。だが、ここにボールが渡りにくい上に、サンチョをサポートできるショウが負傷してしまったことで攻撃は停滞する。

 両チームによる無駄に強度が高いタックルで締まりがなくなってしまった展開になったのは率直に残念。ティーレマンス、マクトミネイ(警告を受けたのは後半だが)など不要な局面だったり、あるいは相手に危険が及ぶようなタックルを行ってしまい警告を受けることで、スムーズにカウンターに打って出れない場面が目立った。

 ブルーノの1トップという策を捻り出す羽目になったユナイテッドは仕方ないかもしれないが、保持において解決策が見出せなかった上に、トランジッションでもなかなか好機に繋げることができずに難しい形に。スローダウンする上に詰まってしまい、試合は停滞する。

 後半にレスターは徐々に保持で解決策を見出せるように。右サイドのパス交換から敵陣に迫るチャンスの見出しで段々とユナイテッド陣内に攻め入る。

 すると63分にレスターは先制。ユナイテッドはラッシュフォードを投入し、カウンターに主眼を置いたシステム変更を行ったところだったが、レスターがこれをひっくり返す形。ボールハントしたデューズバリー=ホールが見事。そこからの縦パスを含めてパーフェクトなプレーだった。縦パスを引き取ったマディソンから最後はイヘアナチョが先制点を奪う。

 対するユナイテッドもレスターの後方のビルドアップミスに付け入るような形でフレッジが同点弾をすぐに決める。レスターはこの場面はやたら淡白な対応で、あっさりと失点を招いてしまった印象だった。

 その後はレスターが保持、ユナイテッドがロングカウンターという形でそれぞれの色を使いながらも時間を進める。エランガ、ブルーノなどワールドカップ出場権をかけて代表戦を戦った選手に疲れの色が濃かったユナイテッドの方がより苦しかっただろうか。

 ペースを握ったレスターも得点がファウルで取り消されるなど、3ポイントまでは僅かに届かず。苦しい戦いとなった両チームは勝ち点1を分け合う形となった。

試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
マンチェスター・ユナイテッド 1-1 レスター
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:66′ フレッジ
LEI:63′ イヘアナチョ
主審:アンドレ・マリナー

⑧ウェストハム【7位】×エバートン【17位】

■台無しにした反撃の機運

 明らかにケツに火がついた状況で終盤戦を迎えてしまったエバートン。実は終盤戦に強豪との対決を多く控えており、結構やばい!今節は欧州カップ戦争いの真っ最中のウェストハムに挑む形となった。

 お互いに最終ラインに無理にプレッシャーをかけることはしない両チームだが、よってボール保持側のチームは余裕を持って試合を進めることができた。ショートパスから組み立てを行いたいのはエバートン。バックラインから縦にパスを入れることで前進を狙う。

    アンカーにホイビュアが入ったのはファン・デ・ベークの直前のアクシデントによるもの。よって中盤の攻撃がどこまで準備されていたものかはわからないが、イウォビとドゥクレのIHの2人がライン間で受ける形が多かった。

 エバートンの保持がうまくいききらなかったのは、受け手をサポートする関係があまりいなかったから。エバートンは縦パスの受け手が自ら反転を試みて前を向こうとすることが多い。もちろん、スペースがあればそのトライは問題ないのだが、ウェストハムのようなコンパクトなチームが相手だとなかなかうまくいかないのは当然。ショートパスを志向する割にはホルダーのサポートをして、味方に前を向かせるためのパスワークが十分ではなかった。エバートンが良かった保持はイウォビが安定してターンできる位置まで降りて運びつつ、リシャルリソンにシュートにつながるシチュエーションを提供できるような場面を作れる時だった。

 エバートンの保持に対してウェストハムは、WGからスイッチを入れる形でラインを上げながらプレッシング。深い位置からのロングカウンターを組み合わせる形で、奪った後は縦に早く攻め込む形で攻勢に出る。

 ウェストハムはホルダーのサポートがしっかりしており、前を向く選手を作るのがうまい。効率的にカウンターを進めるウェストハムが先制したのは32分。自陣深い位置でたまらずファウルを犯したエバートンに対して、クレスウェルがFKで牙を剥き先制点を奪い取る。

 後半、エバートンは反撃。押し込みつつ、イウォビの縦パスからエリア内に迫り、シュートシーンを作っていく。増えてきたセットプレーから早い時間に同点に追いついたエバートン。緊急出場のホルゲイトが豪快なゴールを叩き込む。

 ここからいい流れで攻めていきたかったエバートン。だが、自らそのいい流れを断ち切ってしまう。まずはイウォビ。ボールのコントロールをミスって流れたボールがそのままウェストハムのカウンターの起点に。アントニオの抜け出しから最後はボーウェンが押し込み、折角の同点弾をフイにしてしまう。

 そしてキーン。文句なしの2枚目の警告を受けてしまい、エバートンは残り30分弱を10人で過ごすことに。リードと数的優位を得たウェストハムはエバートンにボールを持たせつつカウンターで落ち着いて時計の針を進めるように。

 抵抗は見せたエバートンだが、最後までゴールを脅かすことはできず。反撃のムードに自ら蓋をしてしまい、勝ち点を奪うチャンスを手放してしまったエバートンだった。

試合結果
2022.4.3
プレミアリーグ 第31節
ウェストハム 2-1 エバートン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:32′ クレスウェル, 58′ ボーウェン
EVE:53′ ホルゲート
主審:マイケル・オリバー

⑨トッテナム【5位】×ニューカッスル【14位】

■後半立ち上がりの入りが分かれ目に

 残留争いもそうだが、次の移籍市場のリクルーティングにおいても強豪相手に一旗あげるというのはニューカッスルにとって非常に重要な要素。チェルシー相手には結果を出すことはできなかったが、トッテナムに対しては結果を出してやろうという意気込みは十分である。

 ニューカッスルの守備は4-5-1で構えてやろうという意気込み。ミドルゾーンで我慢しながらトッテナムのビルドアップを退けてやろうという狙いだった。WGの両名は外を切りながら守るようにしてトッテナムの攻め手を狭くさせようとする。

 だが、これがはっきりいってうまくいかなかった。トッテナムにWGの頭の上を通されることが多く、狭く守るという本来の狙いが刺さらなかった。トッテナムの前進の起点になったのは主に右サイド。左から大きな展開をサン=マクシマンの裏でエメルソンが引き取ることで、トッテナムが一気にニューカッスルを押し込むように。

 ニューカッスルはミドルゾーンから押し込まれたものの、撤退が早いためサイドから深さを作られてもなんとか対応が可能。トッテナムのWBのクロスが単調だったため、人数さえ揃っていれば跳ね返すことは難しくなかった。クルゼフスキがカットインする形で上げるクロスは悪くはなかったが、前半はあまり回数を増やすことができなかった。

 トッテナムが良かった点は右のワイドからの前進に固執しなかったこと。裏のソン、ライン間のケインなど縦方向のパスルートも作りながら前進を狙う。特にライン間のケインを活用する形はニューカッスルにとって脅威。ソンの裏抜けによってコンパクトに維持できない陣形のなかでライン間に縦パスを入れられる形はピンチ。ポストから前向かせる形を作られると危うい状況になる。

 しかし、先制点はニューカッスル。攻撃の起点になっていたのは左サイドのサン=マクシマン。明らかに1人では対応できないエメルソンのヘルプにやたらトッテナムはわらわら人が出てくる。これにより、中央のスペースがあく。そこでファウルを犯してしまったソン。ここからのFKをシェアが叩き込み先手を取る。だが、トッテナムも前半のうちに同点に。セットプレーの流れからデイビスが同点弾を決める。

 迎えた後半、ニューカッスルの入りは最悪だった。サン=マクシマンの独善的なボールロスト、シェアの対角フィードで敵にプレゼントパス。攻撃がうまくいかないだけならまだしも、守備に悪影響を及ぼすボールの失い方だった。

 この形からのカウンターでトッテナムはチャンスメイク。前半と異なり、下手な失い方を繰り返すニューカッスルは自陣を固める時間を取れないので、クロス対応の質がグッと低下。これが後半のトッテナムの大量得点につながるように。

 後半早々にドハーティのゴールであっさりとリードを奪うと、そこから前がかりになってくるニューカッスルに裏を取る形でソンが3点目をゲット。シェルビーをバックラインに組み込み、ワイドに攻撃的な選手を入れるシステム変更をしたニューカッスル。それに対して、トッテナムはサイドからぶっ壊す形で4点目が入る。

 そして仕上げはベルフワイン。カウンター祭りで後半だけに大量4得点を決めたトッテナム。ニューカッスルは劣勢の中でなんとか食らいついていたが、ビハインドを背負った段階で許容できるリスクを明らかにオーバー。カウンター対応が崩壊してしまった。

試合結果
2022.4.3
プレミアリーグ 第31節
トッテナム 5-1 ニューカッスル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:43′ デイビス, 48′ ドハーティ, 54′ ソン, 63′ エメルソン, 83′ ベルフワイン
NEW:39’ シェア
主審:マーティン・アトキンソン

⑩クリスタル・パレス【12位】×アーセナル【4位】

■嫌な予感が的中した『月曜のセルハーストパーク』

 レビューはこちら。

 チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドが共にこけたことでCL出場権で優位に立つチャンスを得たアーセナル。アーセナルファンにとっては嫌な予感がしたことだろう。こうした好機を逃し続けるのが近年のCL争いの定番。この心情はアーセナルファンだけでなくチェルシーファンも、ユナイテッドファンも、スパーズファンも決して人ごととは言えないはずである。

 そしてその予感は的中したといっていいだろう。アーセナルははっきり言ってひどい内容だった。バックラインから時間を作ることが出来ず、時間を作ったとてトーマスがパスミスで相手にチャンスを献上。別格の存在感を見せていたウーデゴールは嘘のように試合から消えてしまい、ビルドアップの中核といえる2人が完全に機能不全に陥る。

 これによりパレスのプレスを脱することができず前進の機会を奪われたアーセナル。すると、セットプレーからパレスが先制点をゲット。ガブリエウが被り、タバレスが競れなかったボールはアーセナルの誰も触ることが出来ず、アンデルセンの折り返しをマテタが押し込むのをただ見ていることしかできなかった。

 パレスの追加点もこの2人のギャップをつかれたところから。最後はガブリエウのエラーとなったが、この場面はリスタートのスローインからゴールに至るまでに問題点がたくさん。抽出したのでこのツイートのツリーを見てほしい。

 パレスの中で存在感を放ったのはマテタ。正直、ザハやギャラガーに好き放題やられるのはある程度覚悟していた部分があったのだけど、マテタにこれほどガブリエウを抑え込む力があるとは思わなかった。彼の奮闘により、アーセナルが高い位置からのボール奪取が出来なかったことも試合が終始クリスタル・パレスのペースになった要因の一つである。

 後半はマルティネッリの投入で左サイドの攻撃が整理された分、ゴールに迫る動きを見せたアーセナル。だが、自陣を固めてカウンター狙いにシフトするパレスに攻めあぐねると、終盤にはザハが独走でPKを奪取。人数をかけたのに止められないのはこの日のアーセナルの守備の脆さをよく示しているようだった。

 結局、試合は3-0でパレスの勝利。2017年、直近でのこのカードのパレスの勝利と全く同じ『月曜の夜』『セルハーストパークで』『3-0でパレスが勝つ』という奇妙な一致が見られることに。アーセナルとしては月曜日のセルハーストパークはもう勘弁という心境だろう。

試合結果
2022.4.4
プレミアリーグ 第31節
クリスタル・パレス 3-0 アーセナル
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:16′ マテタ, 24′ アイェウ, 74′(PK) ザハ
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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