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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 European qualifiers」~プレーオフ 決勝ハイライト~ 2022.3.29

目次

①ポルトガル×北マケドニア

■いざ、5回目の本大会

 およそ30本ものシュートの雨あられを浴びながらもなんとか耐え抜き、カウンターからの一撃でイタリアを仕留めた北マケドニア。悲願のW杯の初出場まではあと1つ。そして、最後に立ちはだかるのはポルトガルである。EURO優勝国を倒しても、前回のEURO優勝国が出てくるという謎仕様は欧州予選の厳しさをよく表している。

 構図としては大国×小国という形だったが、試合としてはそうした両チームの力の差を感じる場面は薄かったように思う。それはひとえに北マケドニアのボール保持がうまくデザインされたものだったからである。

 受け止めてから素早くカウンターに移行!という小国のパブリックイメージのようなスタイルではなく、ショートパスでのつなぎが多く、保持のターンが来た時には簡単にボールを離さない北マケドニア。ポルトガルがトルコ戦で見せたアンカーのジョアン・モウチーニョ脇をケアできずに、中央でバシバシつながれてしまうという問題点を解決できていなかったのも、北マケドニアにとっては助かる材料だった。

 北マケドニア側の事情としてはイタリア戦で出場停止で不在だったエルマズの復帰が大きい。CFのミラン・リストフスキへの縦パスに合わせて動きながら落としを受けるパターンは北マケドニアの攻撃パターンとして確立。イタリア戦に比べるとポゼッション色が強い流れになったのはエルマズ復帰の影響が濃い。

 一方のポルトガルもボール保持の前進のルートは見つかっていた。左サイドはSBのメンデスが大きく開き、CBのダニーロ・ペレイラとの間の距離を取る。この2人の間にベルナルドやロナウドなど、前線から落ちてくるタレントがボールを引き取る。CBとSBの中間ポジションである北マケドニアのSHのコスタディノフに基準点を多く作らせて迷わせるやり方である。

 逆サイドはカンセロが低い位置をとりつつ、幅を取るのはIHのオタビオ。前線のブルーノ・フェルナンデスは前残りしてエリアに近い位置に陣取る役割。状況に応じて立ち位置を変えられるオタビオの存在は心強かった。

 そうした試合の中で先手を取ったのはポルトガル。北マケドニアのSBであるステファン・リストフスキのパスミスをかっさらったブルーノがロナウドとのパス交換で抜け出して先制点をゲットする。

 ここまではがっぷり四つで立ち向かえていた北マケドニアだったが、先制点でややトーンダウンした印象は否めない。より前進ルートが豊富なポルトガルに対して、ボールを取り返せない状況が続いていく。

 後半は北マケドニアがボールを持つ時間こそ増えたが、これはWGの守備位置を下げて、中盤の重心を下げたポルトガルにボールを持たされているといっても差し支えないだろう。『いざとなれば我々は守備を固める』と試合前にいっていたフェルナンド・サントスの現実的なプランのシフトだろう。スピードアップができない北マケドニアはポゼッションからゴールになかなか迫ることができない。

 北マケドニアがポゼッションで攻め込むのを、ひっくり返したポルトガルには当然チャンスが来る。カウンターからの追加点は後半もずっと狙っていたもの。結実したのが65分。カウンターから左サイドに流れたジョタのクロスをブルーノ・フェルナンデスが再び合わせて試合を決定づける。

 北マケドニアは健闘したが、うまくポルトガルに眠らされてしまった印象。枠内シュート0ではこの一戦に勝つのは難しかった。というわけで最難関と目された山を制したのはポルトガル。クリスティアーノ・ロナウドにとって5回目の本大会はどのような物語が待っているのだろうか。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯欧州予選 プレーオフ 決勝
ポルトガル 2-0 北マケドニア
エスタディオ・ド・ドラゴン
【得点者】
POR:32′ 65′ フェルナンデス
主審:アンソニー・テイラー

②ポーランド×スウェーデン

■奥の手は予選に続いて不発

 ロシアが大会から締め出されてしまった影響で決勝の舞台に繰り上がることになったポーランド。彼らの対戦相手はチェコとの一戦を延長で制したスウェーデンである。

 スウェーデン×チェコの試合はそれはもうジリジリした試合だった。互いにチャンスらしいチャンスを作る場面は非常に少なく、撤退が早くてプレスで穴をあけるリスクを最小限に低減。手堅い代表戦の典型だった。

 そして、このポーランド×スウェーデンもそうした準決勝の堅さの名残が残るようなジリジリとした一戦となった。互いにバックラインにプレッシングにはいかずに中盤に網を張って、ボールを奪い次第速い攻撃に転じる。そうした手堅い流れだった。

 違いがあったのは前進のルートだろうか。ポーランドはサイドの縦関係を使った連携が印象的だった。SHで相手のSBをピン止めし、その大外をSBが抜けていく形でスウェーデンのバックラインの高さを揺さぶる。この形でエリア内にマイナス方向のスペースを創出し、スウェーデンを苦しめていた。

   チェコとは異なり、ポーランドにはポストができるレヴァンドフスキがいたのもスウェーデンにとっては誤算。彼の存在により、ポーランドはポストからのスムーズなサイドチェンジを行うことができていた。

 一方のスウェーデンは中央でのパスから縦に速い攻撃を仕掛けることが多かった。今予選のスウェーデンはイメージに反して、3-2-5変形を伴うオーソドックスなポゼッションで敵陣に迫ることも多かったのだけど、この日の形は縦にいいパスが2本つながればチャンスになるだろう!という形。どちらかといえば、こちらの方がパブリックイメージのスウェーデンに近いのかもしれない。

 縦パスで素早く!というのはもしかするとポーランドの重たいバックラインにスピード勝負を挑みたかった側面ともとれる。準決勝のチェコ戦で前線への縦パスで決勝点の起点となったカールストロムの先発起用も含めて、縦に速い攻撃壊そうという意識はスウェーデンの中では共通認識としてあった部分かもしれない。ただ、難易度が高い中央を通そうとする分、成功率は下がってしまうけど。

 ざっくりといえば前進の方針はポーランドは外、スウェーデンは縦という感じで戦っていた両チーム。試合が動いたのは後半。この日のポーランドらしいスムーズなサイドチェンジから好機を作ると、クロスの対応に一歩遅れたカールストロムがPKを献上してしまう。これをレヴァンドフスキが決めて、試合はポーランドが前に出る。

 ビハインドになったスウェーデン。後半頭からサイドに流れたイサクでスピードアップを図るやり方は比較的効いていたように思う。サイドに深さを作りつつ、エランガやクルゼフスキなどがエリアに入り込むことでチャンスを作る。

 だが、そんなスウェーデンを尻目にポーランドに追加点。後方のパスの処理ミスを見逃さなかったポーランドはショートカウンターからジエリンスキがゴールを奪い取る。これでスウェーデンの息の根は完全に止まった感じ。

 スウェーデンは最後の切り札として満を持してイブラヒモビッチを投入するが、効いていたサイドの裏のスペースへの抜け出しの頻度が減り、どちらかといえば逆効果といっていいだろう。予選に続いて、奥の手のイブラヒモビッチが不発だったスウェーデン。予選ではスペインを苦しめる健闘を見せたが、前回に続くW杯出場の夢はここで断たれることとなった。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯欧州予選 プレーオフ 決勝
ポーランド 2-0 スウェーデン
スタディオン・シロンスク
【得点者】
POL:49′(PK) レヴァンドフスキ, 72′ ジエリンスキ
主審:ダニエレ・オルサト

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