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「Catch up Premier League」~Match week 20~ 2023.12.30-1.2

目次

ルートン・タウン【18位】×チェルシー【10位】

わずかに間に合わなかった猛反撃

 今季初の連勝を決めて勢いに乗るルートン。残留圏内までの勝ち点はもう少しである。3連勝を目指してケニルワース・ロードに迎えるのは年末年始も不安定さが目立つチェルシーである。

 そんなチェルシーを飲み込むかのようにルートンはキックアンドラッシュで勢いに乗るスタート。ロングキックとハイプレスをベースとした縦に速い展開を利用してチェルシーを飲み込みに行く。

 チェルシーはブロヤ、ジャクソンをターゲットとしたロングボールからハイプレスを抜け出すことができるかが争点。逆サイドのマドゥエケまでボールを届けることができれば、脱出口としては機能する。ルートンのハイプレスからチェルシーが脱出できるかがポイントとなる序盤戦だった。

 チェルシーはロングボールを蹴ったタイミングでルートンのバックスにプレスにいく。ルートンは基本的にはこのプレスにうまく対抗していた。ロコンガはアーセナルにいた頃に比べればプレス回避において機能していたのが印象的であった。

 しかし、ハイプレスを機能させたのはチェルシー。カボレのパスミスを拾ってパルマーが叩き込んでの先制ゴールとなった。

 反撃に出たいルートンは前線にボールを運んでのファウル奪取から決定機を狙っていく。しかしながら、セットプレーからのチャンスは実らず、同点ゴールを決めることができない。そうこうしている間にハイプレスの脱出口となっていた右サイドのマドゥエケが火を吹いたチェルシーが追加点をゲット。前半を2点差としてハーフタイムを迎える。

 ルートンは後半開始のタイミングで選手交代を実施。中盤の枚数を増やしたオールコートマンツーの様相で相手を前からより捕まえやすい形に整備する。チェルシーは前半よりは明らかにプレスを剥がす形を作ることに苦戦。敵陣に攻め込む機会が増えたルートンはあとはアデバヨが触るだけというところまで持っていくことができている。

 しかし、シュートを決めれずにいるとこれを嘲笑うかのようにチェルシーが追加点。マンツー剥がしの王道パターンという形でジャクソン→パルマーのパスで一気にゴール前まで。マンツー色を強めた後半のルートンの動きを鑑みればパルマーについていけなかったロコンガの責任は重たいということになるだろう。

 3失点後にさらに追撃を強めるルートン。右のオグベネ→ベル→ダウティーという横断からのクロスからのゴールは取り消しになるが、これが反撃の契機に。左右からダウティー、カボレ、チョンといった選手の鋭いクロスに対して、チェルシーは防衛策を組むことができなかった。

 バークリーのセットプレーからのゴールで反撃の狼煙を挙げると、87分にはアデバヨがようやくゴールを仕留めて1点差に追い上げる。終盤まで猛攻を繰り広げたルートンだが惜しくも届かず。3点のリードを溶かしかけたチェルシーが最後に踏みとどまり勝ち点3を確保した。

ひとこと

 勝ち点は取れなかったけどもこの時期に90分戦えるコンディションなのはそれだけで心強い。ケニルワース・ロードはめんどくさいスタジアムである。

試合結果

2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
ルートン・タウン 2-3 チェルシー
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:80‘ バークリー, 87‘ アデバヨ
CHE:12‘ 70‘ パルマー, 37‘ マドゥエケ
主審:ポール・ティアニー

クリスタル・パレス【15位】×ブレントフォード【14位】

順当な逆転勝利を手にしたパレス

 手堅い2チームのロンドンダービー。しかしながら、試合はその看板とは異なる立ち上がりとなる。ハイラインを破ったブレントフォードは右サイドからローアスリウが抜け出して先制。ルイス-ポッターが仕留めたゴールはわずか2分に生まれたものだった。

 この試合の序盤戦は思ったよりもオープンな展開で推移。なぜかハイプレスモードに開花したクリスタル・パレス主導でテンポアップした展開にブレントフォードが釣られる形で落ち着かない流れの連続に。

 その状況における主導権の命運を分けたのは前線に収まりどころがあるかどうか。背負って受けることができるマテタの存在が心強いパレスとは対照的に、トニーもムベウモもいないブレントフォードには同様の収めどころは存在しない。

 これによって試合の主導権はパレスのもとに転がり込むことに。ボールを失った後の即時奪回も機能しており、パレスはブレントフォード陣内で時間を進めていく。

 パレスは前半のうちに同点に追いつく。左サイドからファーを狙ったクロスに合わせたのはオリーズ。クロスに飛び込むという結構珍しい形から追いつくことに成功する。

 それ以降も一方的に押し込む展開を続けるパレス。追加点を決めて前半で試合をひっくり返す。決めたのはエゼ。マテタのポストを使ってボックス内に侵入し、足を振りぬいたシュートで追加点を決める。主導権だけでなく攻撃の構築の観点でも背負えるCFの存在は決め手になった。

 ブレントフォードはサイドからの裏抜けを出口として狙うが、パレスのバックスの厳しいチェックに起点を作ることができず。前にポイントを置くことができず一方的に押し込まれたままハーフタイムを迎えることとなった。

 雨が強まった後半もパレスは強気のハイプレスの姿勢を崩さず。セットプレーを含めて多くのチャンスを作り出し、ブレントフォードを押し込み続ける展開を作り続ける。

 そして、さらなる追加点を決めたのはオリーズ。1点目のゴールとは違って今度は彼らしいスピードに乗ったドリブルからのゴールで試合を決定づける3点目を手にする。

 3-1になったところでブレントフォードはフォーメーションを4-3-3に変更。前線の枚数を増やして劣勢を覆しに行く。しかしながら、主導権はほとんど動かず。ブレントフォードの反撃は中央でごちゃごちゃっとした形で作った隙からのシュートにとどまることとなった。

 試合はそのまま終了。先制点以降、落ち着いて主導権を握りなおしたパレスがブレントフォードを順当に逆転で下した一戦となった。

ひとこと

 オリーズ、飛び込んでせりかけられるのはいいなぁ。

試合結果

2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
クリスタル・パレス 3-1 ブレントフォード
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:14’ 58‘ オリーズ, 39’ エゼ
BRE:2‘ ルイス-ポッター
主審:ロベルト・ジョーンズ

マンチェスター・シティ【4位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】

2点目のゴールで投降

 クラブW杯王者であるマンチェスター・シティは帰国初戦を勝利で飾ったあと、休む間もなく中2日でホームに最下位のブレイズを迎える一戦である。サウジから休みなく続けている連戦も次のFA杯3回戦でひと段落である。

 ブレイズは5-3-2でのスタート。ライン間を完全にクローズして中央を圧縮していく。そのため、トップからバックスまでのライン間をきっちりとコンパクトに維持。シティは中央から締め出されてしまう。

 10分の手前にはカウンターからブレイズにもチャンスが。右に流れたオスーラからチャンスメイクが光る。カウンターで一発で押し下げると、サイドからのクロスで勝負に出る。シティはクロス対応の部分とそのあとのパスワークでミスが出てしまい、怪しさが漂う。

 しかし、それを払拭するようにシティは先制。出ていったソウザが外されてしまい、ロドリの侵入に対してロビンソンが後手に回りシュートで仕留める。ブレイズはソウザが外された後のずるずるとした対応が悔やまれる。

 これ以降、シティは保持から進撃。ブレイズの3センターの脇を突き続ける形でサイドからの裏取りで奥行きを作っていく。3センターが外され続けたブレイズは5-4-1にシフトチェンジ。中盤をシティに破られないように増員する形で太刀打ちする。

 だが、こうなると当然攻撃には打って出ることができないブレイズ。後ろに重い陣形ではなかなか解決策を見出すことができず、押し込まれていく一方である。前半終了間際にオスーラが決定機を迎えるが前半はシティのリードのままハーフタイムを迎える。

 後半もシティは一方的にボールを持つ展開が続いていく。ブレイズは押し返せるきっかけを見つけることができず、出口のない5-4-1への対応に延々と忙殺される状況を変えることができない。

 シティは試合を決める追加点をゲット。グリーリッシュと交代で入ったボブを起点に、ハーフスペースに入り込んだフォーデン→アルバレスで仕留めて2点目を決める。やや緊急登板気味ではあったが、ボブのプレーはかなりのびのびとしたもの。この得点シーンに限らず、アタッキングサードで自由に仕掛けることで相手の脅威になり続けていた。

 これで試合はほぼほぼ終戦。以降も一方的にシティがボールを持ち続けてブレイズに反撃の隙を与えない。アーチャーの投入はせめて1点差の段階でのものにしたかった。

 2点を奪われたことでブレイズは無駄なエネルギーを使わないのんびりとしたムードに突入。クラブW杯帰りのシティにとっては強度の低い終盤30分はありがたいことこの上なかったはずである。試合はそのまま何事もなく終了。シティが逃げ切りで勝利を収めた。

ひとこと

 後半追加タイムの全員早く終われ予感がよかった。

試合結果

2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
マンチェスター・シティ 2-0 シェフィールド・ユナイテッド
ブラモール・レーン
【得点者】
Man City:14’ ロドリ, 61′ アルバレス
主審:デビッド・クート

アストンビラ【3位】×バーンリー【19位】

割り切ったバーンリーをPKで振り切る

 アウェイだけでなくホームでも苦戦が見られるようになってきたアストンビラ。CL出場権を争うためにはこの年末年始は正念場といったところだろう。

 3-2-5のボール保持から主導権を握りにいくアストンビラ。3バックに変形するアストンビラに対して、バーンリーはプレスに行けない状況に。よって、ボールを持つことができたビラだが、縦パスを差し込んでの加速がいつもよりもうまくいかずに苦戦。敵陣に攻め込むフェーズでなかなか持ち味を活かすことができない。

 バーンリーは時折高い位置からのプレスにいくこともあるが、リトリートへの意識もきっちりと。特に左のSHのオドベールはベイリーを気にして列を下げての対応をすることもしばしばであった。ボールを奪った後はロングカウンターから素早くアストンビラをひっくり返しにかかる。

 しかし、先制点を決めたのはホームのビラ。左サイドの裏に流れる形からギャップを作ったワトキンスがカットインから横断。逆サイドのベイリー解放に成功し、シュートを打つ間合いを作っての先制ゴールに辿り着く。

 だが、バーンリーは即座に同点。セットプレーからファーへの折り返しをアムドゥニが仕留めて追いつく。その後もカウンターを軸としたバーンリーはさらに得点を重ねるチャンスを作るが、オフサイドによってビラはなんとか踏みとどまる。

 むしろ、実際にゴールを決めたのはビラの方。またしてもワトキンスの動き出しからの折り返しでディアビが勝ち越しゴールを決める。

 ビハインドになったバーンリーはファストブレイクに重きを置いた攻撃を維持しつつ、高い位置からのプレッシングからチャンスを作りにいく。しかしながら、この強引なチャレンジはベルゲの退場という結末で失敗に。以降はアストンビラが一方的に押し込む展開になっていく。

 しかしながらワンチャンスを活かしたバーンリー。グズムンドソンへのロングボールから抜け出したフォスターがゴールを生み出し、再三狙っていた裏抜けからチャンスを活かして同点にする。

 押し込みながらもなかなか決定打が出ないビラ。このまま前節同様のドローかと思われたビラだったが、終了間際にPKを獲得。ファウルを犯してしまったのは兄弟対決となったバーンリーのラムジーであった。

 ルイスがウイニングショットとなるPKを仕留めて悪循環に終止符を打ったビラ。10人のバーンリーをなんとか退けてホームでの2試合連続ドローを回避した。

ひとこと

 割り切っても戦えるバーンリーは地味に幅が広がっている感じがする。

試合結果

2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
アストンビラ 3-2 バーンリー
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:28‘ ベイリー, 42‘ ディアビ, 89‘(PK) ルイス
BUR:31’ アムドゥニ, 71’ フォスター
主審:スチュアート・アットウェル

ウォルバーハンプトン【11位】×エバートン【17位】

狙いを定めたプレスとブロックの併用が光るウルブス

 前節は奮闘しながらもグディソン・パークでシティに屈してしまったエバートン。勝ち点こそ持ち帰ることができなかったが、ある程度手ごたえはあったのだろう。ダイチはこの試合でも5バックの継続を選択した。

 前節同様にエバートンの5バックは積極的なプレスが持ち味。高い位置から相手を捕まえに行くプレスで主導権を奪いに行く。ウルブスはラインが高くなるエバートンのDFの背後を狙うイメージ。特にヒチャンの裏抜けを積極的に使う形でエバートンの前向きの矢印をへし折っていく。

 ボールを奪いきれないエバートンは自陣からの攻撃のスタートが増えることに。無理に出ていかず、ボックスを固めることを優先するウルブスの守備に対して、エバートンはなかなか攻め手を見出すことができない。ウルブズは完全に退却するのではなく、キャルバート=ルーウィンやオナナといった重要な選手に対しては前を向くことを許さない積極的なプレスを行うというさじ加減が非常に絶妙であった。

 地味ながらも主導権を握ったウルブスは25分に先制。セットプレーの流れからキルマンが仕留めて先制ゴールを手にすることに。

 以降もウルブスはブロック守備を軸にキーマンをきっちりとつぶすメリハリのある非保持でエバートンに主導権を渡さない。ようやくエバートンが作ったチャンスがオナナ→キャルバート=ルーウィンのチャンスだったことを踏まえると、ウルブスのターゲットの絞り込みはあらかた正しかったのだろう。このチャンスにおいても珍しくジョゼ・サが安定した背後のケアで潰し、事なきを得た。

後半もペースはウルブス。セメドのアクロバティックな角度からのシュートを皮切りに一方的に攻めていく。

 攻撃パターンはざっくりと2つ。横断するパスコースから逆サイドのWBのオーバーラップを促す形か、同サイドのシャドーがハーフスペースを抜ける形か。いずれも5バックであれば埋められるプレーな気もするのだが、エバートンは外切る守り方からあっさりとサイドに展開を許し、そのうえ簡単にマークを外してしまう。これでは5バックの意味はほとんどない。

 右サイドを突破するヒチャン→クーニャで追加点を奪うと、以降はウルブスの独壇場に。左右のハーフスペースを裏抜けからチャンスを量産し、エバートンに反撃のきっかけさえ与えない。

 3点目の攻め残ったドーソンに許したシーンはラインの統率が全くできておらず、多く揃ったエバートンのDF陣が無意味になってしまった場面だった。オフサイドで無効になったシーンも含めて、好き放題にネットを揺らしてエバートンを寄せ付けなかったウルブス。完勝で2023年最後のゲームを飾ることに成功した。

ひとこと

 エバートンはらしくない浮足立ったハイプレスだった。

試合結果

2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
ウォルバーハンプトン 3-0 エバートン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:25‘ キルマン, 53‘ クーニャ, 61‘ ドーソン
主審:トーマス・ブラモール

ノッティンガム・フォレスト【16位】×マンチェスター・ユナイテッド【7位】

先に光をみつけたフォレスト

 この試合はフォレストのいきなりのチャンスからスタート。早速オナナが構えるゴールマウスを早速脅かすことでアクセントをつけていく。

 ユナイテッドは高い位置からのプレッシングでボールを奪いにいくことで反撃に打って出る。しかしながらフォレストはこれを丁寧にいなしながらの前進に成功。即時奪回が効いており、ボールを奪うと左右のサイドの裏からユナイテッドを押し下げてブロック崩しに挑む時間が増えていく。

 ユナイテッドは保持に回ることができればフォレストと同様にサイドからラインを下げることができる。というわけで試合は保持側のチームがいかに押し込んだブロックを崩し切るかにフォーカスしたものとなっていた。

 しかしながら、この点で両チームに解決策みたいなものがなかなか見当たらない。ブロックに対して攻めあぐねる時間が長々と続く。立ち上がりのフォレストの攻勢が懐かしく思えるほどにこれ以降の両チームにはチャンスを引き出すことができず。前半はチャンスらしいチャンスが両チームともにほぼないままハーフタイムを迎える。

 後半は相手のリトリートに対して少しずつ前向き出ていくスタンスが目立つようになり、両チームとも前半よりもオープンな展開となった。フォレストのサイドからの攻撃に対してユナイテッドの受け方が非常に淡白。あっさりとした対応で後手に回る。ユナイテッドはボールを奪った後のカウンターであれば光がある状態ではあった。仕留めるチャンスはあったもののこれを活かすことでできず試合はスコアレスのまま推移する。

 先行したのはフォレスト。エランガ、モンティエルの右サイドのレーン交換からあっさりとフリーの選手を作り出すと、ドミンゲスが先制ゴールを仕留める。

 しかしながらユナイテッドもなんとか同点ゴールまで漕ぎ着ける。ガルナチョのアシストからゴールを決めたのはラッシュフォード。フォレストはずーっと怪しい対応が続いていたターナーという時限爆弾がついに爆発してしまった。

 ミスが出た守護神を救ったのはギブス=ホワイト。目の前にいるDFとGKを両方撃ち抜くミドルシュートで見事な勝ち越しゴールをゲット。これで再び前に出る。

 最後は5バックで逃げ切ったフォレスト。ユナイテッド相手に勝ち切ることに成功し、大きな勝ち点3を手にした。

ひとこと

 ギブス=ホワイト、確かなクオリティ。

試合結果

2023.12.30
プレミアリーグ 第20節
ノッティンガム・フォレスト 2-1 マンチェスター・ユナイテッド
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:64′ ドミンゲス, 82′ ギブス=ホワイト
Man Utd:78′ ラッシュフォード
主審:ティム・ロビンソン

フラム【13位】×アーセナル【2位】

シャープさとしたたかさで上をいくフラム

 レビューはこちら。

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 得意のロンドン・ダービーでウェストハムに敗れたアーセナル。ダービー連戦となるフラムとの一戦はなんとしてもモノにしたいところだろう。

 立ち上がりは勢いのいいプレスで強度十分の入りを見せたアーセナル。フラムはきっちりと勢いを受け止めるスタート。バックラインは列落ちで枚数を確保しながらポゼッションの機会を作りつつ、キヴィオルが入る左サイドの裏を狙うアクションを行っていた。

 しかしながらアーセナルはそのサイド攻撃をひっくり返す形で先制点をゲット。マルティネッリがオーバーラップしたカスターニュのサイドを強襲するとそこからのこぼれ球をサカが押し込んで先行する。

 その後は後ろに枚数をかけながら慎重に後方から進めていきたいアーセナル。ここのあたりは両チームの日程の差を考えれば強引にいけないのは仕方がない部分。それでもフラムは縦パスをパリーニャとバッシーを軸に仕留めることで反撃に出る。ボールの預けどころとしてイウォビとヒメネスがライスやサリバを抑えて起点となっていたことも大きかった。

 限られた機会を反撃に使うことができていたフラムは29分に同点。一か八かのワンツーを失敗したホワイトがいなくなったサイドからのカウンターを成立させて、最後は逆サイドのヒメネスが仕留めた。

 前半、その後の流れとしてはアーセナルが保持で機会を伺いながらもフラムがカウンターから鋭さを見せるという展開。両チームともチャンスらしいチャンスを作ることができないままハーフタイムを迎える。

 後半も大まかな展開としては同じ流れ。冨安が入った分、アーセナルは左サイドの後方支援が改善されてはいたが、サイド攻撃で決め手がない分、大きな流れは変わらない。フラムのカウンターの鋭さも相変わらずである。

 そうした中でフラムはセットプレーから追加点をゲット。やや幸運な形での跳ね返りをボビー・リードが仕留めてゴール。貴重な機会をゴールに結びつける。直後のサカの幸運な決定機をアーセナルが仕留められなかったのとは対照的だ。

 アーセナルは前節と同じく3バックにして前の枚数を増やす形で攻撃の強化を行う。ただし、悪天候が足を引っ張る上にサイドの崩しにはあまりこの形は改善が見られないため、アーセナルは苦戦。左サイドのクロスのターゲットとなるマルティネッリやハヴァーツがいないこともまたなかなかしんどい部分の一因だろう。

 最後は希望を持ちにくい敗戦となったアーセナル。年末年始の3連戦を未勝利で終える苦しい過密日程となった。

ひとこと

 フラムのシャープさを考えるとトランジッションで彼らが優位なのは明白。あまり今季はトランジッションで上回られる機会がなかったので、アーセナルはちょっと困っちゃったかなという感じだった。

試合結果

2023.12.31
プレミアリーグ 第20節
フラム 2-1 アーセナル
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:29′ ヒメネス, 59′ ボビー・リード
ARS:5′ サカ
主審:ジョシュ・スミス

トッテナム【5位】×ボーンマス【12位】

アップテンポの中で光るポゼッションでの前進

 残留争いの順位を彷徨っていたシーズン序盤とは打って変わって、波に乗っているボーンマス。毎試合大量得点を重ねており、相手からすれば勢いに乗っている嫌なチームといったところだろう。

 トッテナムのスタイルとボーンマスの勢いが相まって立ち上がりは縦に速い展開の応酬。そうした中でより手応えを感じていそうだったのはホームのトッテナム。ハイプレスを回避するという点では流石のクオリティ。特に右サイドで横のレーンを交換するポロとサールによってボーンマスのプレスを揺さぶる。相手の2トップに対して、この点では完全に前をいったといっていいだろう。

 一方のボーンマスは左サイドからのオーバーラップでの勝負。クライファートとシニステラのコンビから奥行きをとり、クロスを上げていく。スタイルとしてはトッテナムよりもダイレクト寄り。クライファートはボールサイドにおける+1としての役割を果たしており、この試合のサイド攻撃ではかなり効果的だった。

 先手を奪ったのはトッテナム。マンツーでのハイプレスが成功。ベンタンクールがボールを奪い、サールで仕留める形で先行する。流れに乗ってハイプレスを行うトッテナムは引き続き主導権を確保。しかしながら、サールの負傷によりトーンダウンすると、残りの前半の時間はボーンマスがサイド攻撃を軸に押し下げる展開でハーフタイムを迎える。

 後半もアップテンポな仕組みで継続して襲いかかっていくボーンマス。トッテナムはカウンターに専念する形で反撃を狙う。ソンのチャンスメイクは非常に上質。彼のカットインに合わせて縦に抜ける選手にパスを出す形でボーンマスに対して優位をとっていたが、最後のところでリシャルリソンが仕留められない展開が続く。

 しかしながら、得点を決めたパターンはチャンスメイクとフィニッシャーが逆の形。リシャルリソンのポストから抜け出したソンが2点目を決めてさらに突き放す。リシャルリソンは直後のチャンスにおいても決めきれず、ゴールを奪いきれない日かと思われたが、2点目から9分後に追加点を仕留めてなんとかチームのムードに追いつく。

 終盤は交代で入ったスコットが躍動したボーンマス。左サイドからの突破に合わせての追撃弾に加えて、終了間際のオフサイドで取り消しになったシーンにおいてもネットを揺らすなど好調を維持。勝てる見込みがあるスコアの時間が少なかった試合において数少ない好材料だった。

ひとこと

 序盤のアップテンポな中のトッテナムのポゼッションは流石だった。

試合結果

2023.12.31
プレミアリーグ 第20節
トッテナム 3-1 ボーンマス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:9′ サール, 71′ ソン, 80′ リシャルリソン
BOU:84′ スコット
主審:サイモン・フーパー

リバプール【1位】×ニューカッスル【9位】

脱力感を身につけた後半

 いきなり猛攻を見せたのはホームのリバプール。ずっと俺のターンという形で敵陣で一方的に押し込んでいくスタート。中盤で即時奪回して左右から押し下げて勝負をかけていく。中盤のミドルと右の大外のサラーを起点とした攻撃でニューカッスルを圧倒。序盤からシェアやドゥブラーフカが大忙しという形だった。

 リバプールは非保持でもサイドの詰めが早くニューカッスルはなかなか攻め手を見つけることができない。それでも中盤を剥がすことができればスピードアップは見込める形。4-3-3の真っ向勝負をリバプールが優勢で進めている形である。

 インサイドから縦に鋭くという形で目立っていたのはディアスの抜け出しの形。リバプールはここを出口として決定的な形を迎えるが、1回目はヌニェスのオフサイド、2回目はサラーがPKを失敗するなどディアスとは関係ないところでゴールに結びつけることができなかった。このPK失敗以降のリバプールはかなり直線的であり、ミドル傾倒。サラーのPK含めてシュートコースもシュートまでの詰めも甘さが見られた。

 ニューカッスルも30分すぎから反撃。中盤でフリーマンを作れればスピードアップは見込めるが、ゴメスの読みが非常に冴えていることと、ギマランイスやシェアの配球が少し甘かった分、決め手には欠けた。ネットを揺らしたシーンはこちらもオフサイドで取り消しである。

 後半早々のリバプールの先制点は前半の反省を踏まえた素晴らしいカウンターからだった。ヌニェスのポストを起点とした攻撃はディアスの横断→ヌニェスの折り返しできっちりと相手を外し切ることができている。シュート前に一度息を入れるようなパスワークは前半のリバプールに足りなかったものである。

 しかし、ニューカッスルはカウンターからあっという間に同点ゴールをゲット。イサクは抜け出したものの寄せるファン・ダイクと飛び出したアリソンによってコースはだいぶ消されていた。シュートのコースとタイミングを制限していたにもかかわらず決め切るのは本人の資質である。

 リバプールはジョタの投入で4-3-1-2のような形にシフト。攻撃時のポジションの自由度が高まったが、インサイドの非保持における規律はあまり取れておらず、守備では全体的に間延びする展開に。だが、こうしたオープン合戦であれば勝算があるのはリバプール。ジョーンズの勝ち越しゴールもまたきっちりとシュート前に脱力して息が入っている。この試合というかここ最近のリバプールの攻撃の肝は本当にここに詰まっていると思う。

 ガクポの3点目で試合は決まったかと思われたが、ボットマンのセットプレーでの攻撃から1点差に迫る。終盤までもつれた試合は4点目で決着。ジョタの抜け出しから得たPKでサラーがリベンジに成功。再びリードを2点に広げる。

 チャンスの量は一方的だったが終盤まで予断を許さなかった展開となったリバプール。しかしながらニューカッスルを押し切り、年末年始を無敗で乗り切ることに成功した。

ひとこと

 いくらチャンスを積んでもシュートのタイミングもコースもそこだろうな!というシーンが続いた前半のリバプールではドゥブラーフカを勢いづかせるだけである。後半くらいシュート前の脱力は必要。そういう意味では前半のようにどうしても直線的になっている時間をいかに減らすことができるかがリバプールの課題になってくるのではないか。

試合結果

2024.1.1
プレミアリーグ 第20節
リバプール 4-2 ニューカッスル
アンフィールド
【得点者】
LIV:49‘ 86′(PK) サラー, 74′ ジョーンズ, 78′ ガクポ
NEW:54′ イサク, 81′ ボットマン
主審:アンソニー・テイラー

ウェストハム【6位】×ブライトン【8位】

方向性に根差した奇策

 上位を狙うために生き残りを賭けたい両チームの一戦。年末年始のプレミアの大トリを飾る試合はロンドン・スタジアムのウェストハム×ブライトンである。

 まず特徴的なフォーメーションだったのはアウェイのブライトンの方。4-3-1-2が上のベースポジションになっているのだが、保持時の陣形は3-1-4-2のような形だろうか。大外のレーンは左がミルナー、右がヒンシェルウッドという形で左右非対称で担保する。

 IHのミルナーが外に開く意義というのはおそらくブライトン側の縦パスを差し込みたいという思惑ゆえだろう。一見奇策に見えても結局本当にやりたいことを遂行することから逆算されているプランは個人的には好きである。方策を変えなければいけなかったのはWG不在のスカッドの影響だろう。

 実際のところ、ウェストハムは狭い位置にブライトンの保持を追い込むことができても捕まえきれていなかった。ブライトンはやり直しでもう一度広げるか、もしくはわずかなギャップから縦パスを通すかの2つを使い分けでながら前進していため、ウェストハムは狭く守ることができず。

 アタッキングサードでの飛び出しも冴えており、アレオラのファインセーブが目立つ場面も多かった。きっちり縦パスからも逃げなかったブライトンは上々の前半だろう。

 一方のウェストハムは前線への中盤の飛び出しをアクセントに攻撃を仕掛けていく。ブライトンの4-3-1-2のような形の非保持はさすがに即興感があり、開けてはいけないところを間延びして開けてしまったりなどのエラーが度々見られるように。

 それでもセットプレーの高さ以外でウェストハムはなかなか怖さを見せられなかった。ブライトンの守備のチェーンは時間経過とともに切りにくくなり、とりあえずボックス内に常駐するソーチェクへの放り込みが目立つ展開になった。終盤はブロックの崩し合いという少しカラーが違う展開があったが、この流れはどちらのものでもなく、スコアレスで試合はハーフタイムを迎える。

 後半、試合はブライトンがボールを持ちながらのスタート。ソーチェク、ウォード=プラウズと列を上げながら攻めに出たいウェストハム。しかしながら、ブライトンはグロスなどからプレスを回避しての前進ができる。惜しむらくは敵陣でスピーディな崩しをやるほどの馬力がないこと。この辺りは三笘やアディングラの不在が痛い。

 ウェストハムはこれに応じる形でカウンターに打って出るので、試合のテンポは全体的に速くなる方向性だった。グロス、ヒンシェルウッド、エメルソン、ファン・ヘッケなど戻りながらの対応で輝きを見せる人が多い時間帯だった。

 ブライトンの後半の攻め手は右サイド寄りのものが多かったが、ファーガソンの投入でインサイドへの差し込みを再び強化する。終盤はウェストハムをかなり自陣に釘付けに。後方はウェブスターの負傷によりCBの枚数が足りなくなっているが、押し込むフェーズの多さに助けられていた。ウェストハムもまた5-4-1気味のローラインでその状況を受け入れていた。

 終盤に攻め込んだブライトンだが、最後に立ちはだかったのはアレオラ。安定感抜群のセービングで決定機を防ぎ続けて無失点をキープ。ブライトンに勝利のための決勝点を与えずにクリーンシートでゲームを終えた。

ひとこと

 スコアレスだが駆け引きのところでかなり見応えがあった一戦だった。

試合結果

2024.1.2
プレミアリーグ 第20節
ウェストハム 0-0 ブライトン
ロンドン・スタジアム
主審:サム・バロット

今節のベストイレブン

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