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「Catch up Premier League」~Match week 27~ 2022.2.25-2.27 etc

目次

①サウサンプトン【10位】×ノリッジ【20位】

■守備的な交代がプレス強化の合図

 ボールを握ることになったのはサウサンプトン。CBとCHの4枚で安定したビルドアップを行い、ノリッジに対して主導権を掌握する。

 サウサンプトンのボール保持は広がるCBに合わせてCHが自由に変形。縦関係の3-1になったり、サイドにフォローしやすいような2-2のボックス型になったりなどバリエーションがある。

    どの形であろうとノリッジのSHをこの4枚のビルドアップ隊で引き付けられればだいぶ展開は楽になる。そうなれば、サウサンプトンの攻撃の推進力となるSBが自由になるからである。バックラインの保持はノリッジのプレスを真っ向から食らうことがなく落ち着いた状態。サウサンプトンはゆったりとした保持からフリーの外循環を使いながら攻撃を進めていく。

 大外に開くSBと内側に絞るSHの2択でノリッジのSBの守備を迷わせることに成功したサウサンプトン。大外から押し下げることで敵陣深くでのプレータイムを増やすように。両サイドから攻め立てて、セットプレーからも得点のチャンスは十分に創出できていた。ロメウがやたら外への展開を増やしていたので、この試合の狙い目は外からということだったのかもしれない。

   このいい流れの時間帯の中で先制点までたどり着くことができたサウサンプトン。右サイドを突破したリヴラメントがサイドの奥をえぐるようにもぐりこむと最後はアダムス。内容に見合ったリードを手にする。

 ボールの奪いどころが見いだせないノリッジ。自分たちの保持ではせめてボールを大事にしようとするが、サウサンプトンのプレスの前に機能的な前進がなかなかできず。結局はプッキの裏抜けやサージェントへのロングボールに少ない手数で頼る方がサウサンプトンの最終ラインを脅かすことが出来ていた。

 後半、ノリッジは保持で反撃の糸口を見つけようとするが前半同様に崩し切ることができる。攻撃的な交代カードを切ってなお状況はかわらないまま、時計が進む。

    すると、変化を付けたのはサウサンプトン。ブロヤに代えてステーフェンスを投入することで5-4-1に変形する。『ノリッジの保持がイマイチだから迎撃すれば試合を終わらせられるってこと?』と思ったのだが、このタイミングでサウサンプトンはプレスのラインを上げてショートカウンター強化。そして、セットプレーからロメウが追加点を奪い試合を決める。

 なぜ、5-4-1への変形がプレスのスイッチになるのかはよくわからなかったが、試合を決める見事なギアチェンジ。序盤で優位を奪ったサウサンプトンは試合をきっちり仕上げて確実に3ポイントを奪い取った試合だった。

試合結果
2022.2.25
プレミアリーグ 第27節
サウサンプトン 2-0 ノリッジ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:36′ アダムス, 88′ ロメウ
主審:シモン・フーパー

②リーズ【15位】×トッテナム【8位】

■悩みの深さが段違い

 ここ5試合のリーグ戦で4敗と黒星が溜まり、CL出場権が少し霞んできたトッテナム。対するは大量失点を繰り返し、ついに失点がリーグ最多になってしまったリーズ。こちらはバーンリーの快進撃によって迫り来る降格ラインの影が怖苦なってきたところである。

 互いに苦しむ同士の一戦だったが、両チームの格の違いというか悩みの深さは歴然だった。リーズのこの試合の難点は特徴であるマンマークであった。ベースポジションである4-1-4-1からトッテナムの3-4-3に噛み合わせるように動くのに時間がかかってしまう。特に、捕まえるのが遅れるのがWB。右のドハーティにはWGのハリソン、左のセセニョンにはIHのダラスがそれぞれマークにいくのだが、保持時のポジションから大きく動かないと相手を捕まえられない。

 このマークの遅れがトッテナムの先制点に繋がることに。セセニョンを捕まえきれなかったリーズはドハーティへのラストパスを許して失点。WB to WBで得点を決めたトッテナムが先手を奪う。

 以降もペースはトッテナム。守備時は思いっきり自陣に引いて、攻撃時はカウンターで一気に攻撃に打って出るという形でメリハリをつける。前線が縦パスを受けるのがうまかったのもトッテナムにとっては非常に大きい。縦パスが一本通ればトッテナムは前進ができる。ケインやクルゼフスキは相手に捕まっていたとしてもあっさりと背負って、最低限ファウルを勝ち取ってくることができていた。ホルダーへのチェックが弱かったこともあり、自陣に押し込まれても陣地回復をすることができていた。

 リーズにチャンスがなかったわけではない。トッテナムの撤退守備には怪しさがあったのは確かで、人数をかけているほどの堅さは感じなかった。だが、リーズはこの好機を生かせずに無得点のまま。

 得点の好機を活かしたのはトッテナムの方。右サイドからのカットインでクルゼフスキが追加点を奪うと、ケインがさらに得点を挙げて30分までに3点目。前半で試合の大勢を決めてしまう。

 迎えた後半、マンチェスター・ユナイテッド戦の成功体験を受けたリーズは2枚替えで勢いを出していく。このやり方は効果てきめん。トッテナムは自陣からのビルドアップをミスって簡単にピンチを招くなど、前半に引き続きリーズの得点が決まってもおかしくない決定的な場面も少なくはなかった。決定機の数だけで言えば、全て決めていればリーズが追いつくのも不可能ではなかった。そういう意味ではトッテナムの苦悩がなかったわけではないだろう。

 しかし、リーズが攻めてくる分、トッテナムにも当然カウンターのチャンスはある。ボールホルダーを捕まえるのが遅いリーズは後半もファウルの山を量産。あっという間に警告を受けまくってしまう。WBへのチェックが遅いのは前半の流れと同じ。早い展開から幅を使った攻撃でリーズを追い詰める。

 すると仕上げは85分。ケインからソンというおなじみのホットラインでの4点目がこの試合のトリを飾る。この試合もなす術なく敗れてしまったリーズ。マン・ユナイテッド、リバプール、トッテナムとタフな1週間であったことは確かだが、内容的にもビエルサの進退が不安になる現状であることは間違いない。

試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
リーズ 0-4 トッテナム
エランド・ロード
【得点者】
TOT:10′ ドハーティ, 15′ クルゼフスキ, 27′ ケイン, 85′ ソン
主審:クレイグ・ポーソン

③ブレントフォード【14位】×ニューカッスル【17位】

■ついに帰ってきたエリクセン

 ボール保持でいえばアウェイのニューカッスルが主体的に試合を進めるかな?と思っていたが、序盤は両チームともロングボールを使いながら様子見な立ち上がり。そして、試合が落ち着く前にブレントフォードはダ・シルバが一発退場を食らい10人になってしまうというのが大まかな頭の流れである。

 というわけで10人になってしまったブレントフォード。こうなるとさすがにニューカッスルは落ち着いてボールをもてるように。ブレントフォードは4-3-2で迎え撃つという比較的アグレッシブな形での数的不利への立ち向かい方ではあったこともあり、手薄になりがちなサイドを攻めるニューカッスル。中央を経由して横を使うボール回しをしつつ、ブレントフォードの3センターをコンパクトに維持させない方向性でせめ立てる。

 ニューカッスルはこの形からサイド攻略を達成。大外とハーフスペースのパス交換からフリーの選手を作る。この形から33分に左サイドからクロスを上げ、これに対してファーサイドに待ち受ける形で構えていたジョエリントンが合わせて先制。脆くなっている守備ブロックを壊して見せる。

 ブレンドフォードは2トップが深さを使いながら反撃を狙う。これに合わせるようにIHやSBも高い位置を取るなど数的不利ながらも巻き返そうという姿勢は見えた。2トップのうち、ウィサはトップとSHのハーフ&ハーフという感じ。自陣からのボールの持ち運びも担当しており、攻撃陣は守備のタスクも抱えながら前進の機会を伺うという難しい仕事をなんとか成り立たせていた。

 だが、ニューカッスルは前がかりになるブレントフォードに対しては大外のWGからカウンターで反撃が可能。押し込んで良し、カウンターでもよしということで攻撃が刺さる日だった。前半終了間際にCKのカウンターからFW顔負けのボールキープを見せたシェアがウィロックにラストパス。これを沈めて前半のうちにリードを広げる。シェアの仕事、本当はウッドに日ごろ期待している部分なのだろうなと思う。なかなかうまくいってないけど。

 後半はニューカッスルが落ちついて試合を支配。ブレントフォードも攻撃的なメンツを投入しつつ、前半同様に踏ん張りを見せるがゴールまでは届かない。

   前半と変わらない展開の中でスタジアムの雰囲気が一気に変わった場面となったのは、交代でエリクセンがデビューを飾ったシーンである。デンマーク代表として臨んだEURO2020で倒れてからおよそ9カ月。ようやく実戦復帰したエリクセンの登場にはホームのブレントフォードファンだけでなく、ニューカッスルファンも大きな拍手でお出迎えする。

 勝ちがつかずに苦しい終盤戦となっているブレントフォード。この試合でも10人で苦しい展開となったが、エリクセンの実戦復帰という明るい材料をベースになんとしても残留を死守したいところである。

試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
ブレントフォード 0-2 ニューカッスル
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
NEW:33′ ジョエリントン,44′ ウィロック
主審:マイク・ディーン

④ブライトン【9位】×アストンビラ【13位】

■武器をより上手く使う

 変幻自在のブライトンのフォーメーション。本日は4-4-2の中盤ダイヤモンドという形となった。対するアストンビラはいつもお決まりの4-3-3かと思いきや、やや噛み合わせを良くするためか、こちらもコウチーニョをトップ下に置いた4-4-2のダイヤモンドに落ち着く。

 中盤ダイヤモンド同士の対戦は噛み合っているように見えて噛み合っていない。SBからのボールの持ち運びはチェックしにくい。なぜなら素直に噛み合わせれば相手のSBを見るのは、シンプルに噛み合わせれば自軍のSBであるからだ。

 これのギャップをより頻繁に活用していたのはブライトン。低い位置にククレジャが降りていくことで、相手のSBからフリーになる。ここから持ち運ぶことで、相手のSBに出てくるか否かを揺さぶる。そして、相手が出てきたところをマーチ、トロサールあたりが裏抜けで狙うという流れでスムーズに前進した。ブライトンは3-2-5気味にあえて形をズラすことでアストンビラとの噛み合わせを外しながら前進する。

 一方のアストンビラはアンカーのサリーで最終ラインの数的優位を確保。フリーマンであるコウチーニョを左に流して、サイドに人を偏在化してズレを作ろうとする。左サイドで余る選手からクロスを上げる形でのチャンスメイク。これに合わせるのはファーに余る2トップの片方と、右サイドのマッギン、そして先制点をゲットしたキャッシュ。左サイドのクロスに合わせて攻め上がったキャッシュは右サイドでこぼれ球をミドルで捉えて先制点をゲットする。どちらかといえば前進にうまくいっていたのはブライトンの方に見えたが、先制したのはビラだった。

 ここから目立つようになったのは両チームにおける荒いプレイの横行である。警告相当になる無駄にハードなタックルが多く、プレイがたびたび止まるようになった。ファウルの応酬は試合終了まで続き、せっかくの好チーム同士の一戦に水をさした感は否めなかった。

 迎えた後半、ブライトンはマーチとモデルのサイドを入れ替え、右サイドからの攻めを増やす形に。同サイドのランプティを押し上げるように幅を取る姿が印象的だった。だが、これが特効薬になったかは微妙なところ。この日はミドルゾーンからアタッキングサードへの攻め込みが冴えず、ブライトンは苦しい戦いを強いられる。

 そんな中でもウェルベックの投入は効果的だった。まず幅!となりがちだったこの日のブライトンにとって、裏への抜け出しをもたらすことができるウェルベックの存在は貴重。ブライトンの攻撃に奥行きが出るようになった。

 だが、奥行きをよりうまく使ったのはアストンビラ。左サイドに開いたミングスから一発の裏抜けで抜け出したワトキンスが決定的な追加点をゲットする。

 余ったSB、そしてFWの抜け出し。ブライトンが使いきれなかった武器を使いこなしたビラがしたたかに要所を締めて勝ち点3を手中に収めた。

試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
ブライトン 0-2 アストンビラ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
AVL:17′ キャッシュ, 68′ ワトキンス
主審:ポール・ティアニー

⑤クリスタル・パレス【11位】×バーンリー【18位】

■沼に引き込まれたことで見つめ直すべきスタイル

 両チームとも普段着の装いでこの試合に臨んだといっていいだろう。パレスはいつものようにベースが4-3-3、そして保持時は3-2-5に代わるシステム。それをバーンリーが4-4-2で迎え撃つという構図である。試合を見て居なくても、今季の両チームを眺めていれば内容は十分に想像できるだろう。

 立ち上がりからボールを保持したのはクリスタル・パレス。この日はいつも以上に大外からの裏を取る動きで相手を押し下げることが多かった。おそらく4バック相手ならば大外からまわしてしまった方がいいんじゃね?という発想だろう。

    バーンリーはこれに対してSHを下げることで対応をしようとする。だが、パレスにとってはこれもお構いなし。なぜならば、ザハを中央においてもなおパレスには大外に質的優位を担保できる人材がいるからである。すっかりスタメンに定着した右サイドのオリーズは開始早々にバーンリーのSHのプレスバックをモノともせず、2枚相手に抜ききらずにクロス。シュラップの先制弾を早速演出して見せた。

 安定してボールを持てる!そして、大外から敵陣のブロックも壊せる!そして先制点!完璧や!勝ち確パターンや!となってもおかしくない展開ではあるのだが、相手はバーンリーである。ボールを持てないことも、大外から壊されることも、先制点を取られることもたくさん経験してきたチームである。だが、ここからの粘り腰があるからこそ、長いことプレミアに籍を置いてきたチームでもある。

 序盤はボールの奪いどころがわからなかったバーンリー。だが、ボール保持のターンを得た時にベグホルストへのロングボールやパレスのWGの戻りが遅れやすいサイドへの対角のパスを駆使して前進の手段を掴む。相手を押し込んだら、ボールロスト後にそのまま近い選手にプレス。パレスはボールを持ちたいチームであるが、バックラインにプレス耐性があるチームというわけではないので、これにはだいぶ苦しむことに。

 ボールロストを嫌がり、ロングボールを蹴ってしまえばバーンリーの思うツボ。ここからは長いボールが飛び交うバーンリーペースである。30分過ぎにはこのテンポにだいぶ引き込まれたクリスタル・パレス。先制点があっても沼にあっさり引き込まれてしまうのがバーンリーの恐ろしいところである。

 後半頭、バーンリーはジェイ・ロドリゲスへのロングボールから抜け出したレノンがオウンゴールを誘発。スコアの上でもついに対等になる。

 保持を突き詰められず、バーンリーに対抗できないクリスタル・パレス。反撃をするどころか、同点ゴールと同じ形でネットを許されてあわや逆転というところまで。これはオフサイド判定で救われたけど。

 バーンリーの沼がしんどいのは確かだが、パレスはこのスタイルを始めてからもうだいぶたつ。さすがに試合の半分も掌握できないようでは結果が出ないことは不思議ではない。降格の心配の少ない現状では勝ち点1という結果以上に内容と向き合わなければまずいだろう。

試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
クリスタル・パレス 1-1 バーンリー
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:9’ シュラップ
BUR:46‘ ミリボイェビッチ(OG)
主審:ジョナサン・モス

⑥マンチェスター・ユナイテッド【4位】×ワトフォード【19位】

■一昔前では考えられなかったオールド・トラフォードでの偉業

 両チーム、ボールが行き来する落ち着かない立ち上がりを見せた序盤戦。どちらかといえば惜しいシーンを作ることができたのはホームのユナイテッドの方。ロナウド絡みの縦に早い攻撃をサポートするようにエランガがキャッチアップ。敵陣を一気に落としにかかる。リーグ戦やCLなどで好調が続くエランガはピッチを横断するドリブルからのチャンスメイクでも存在感。プレーの幅の広さを見せる。

 一方のワトフォードにもチャンスはあり。アバウトに跳ねたセカンドボールを拾い、デニスとサールに繋ぐ。ユナイテッドは陣形をコンパクトに維持しながらセカンドボールの回収に走ることができなかったので、ワトフォードとしては拾ってからカウンターに移行するチャンスは十分にあった。

 前半30分くらいになるとユナイテッドの保持の時間が増えて、ワトフォード陣内でのプレー一色に。サイドからアーリー気味にクロスを上げて、ファーサイドの裏に蹴り込むような形でワトフォードのバックラインを後退させる形でゴールに迫っていく。エリア内のロナウドの強さを生かすようなアプローチである。

 互いに無得点で折り返して迎えた後半。展開としては前半の焼き直しに近い形だった。敵陣に迫る機会は相変わらず多かったユナイテッドだったが、仕上げの粗さはどうも目立つ。逆にワトフォードは敵陣に入る回数はユナイテッドよりも少ないが、入ってからの相手のずらし方には工夫が見えた。特にサールの右サイドからのカットインは効果が抜群。内側に抉るように入り込んでくるドリブルに対してはユナイテッドは苦戦した。

 ワトフォードのカウンターが致命傷にならなかったのは、ユナイテッドの中盤がワトフォードの早い攻撃をワンテンポスピードダウンさせるフィルター役としての効果を果たしていたから。点が入らなかったことにより、次々と前線の選手を投入したユナイテッドはその分自分達のフィルターを削って攻勢に出る。

 両チーム、チャンスが増えた終盤だったが共にバックラインを上回ることはできず。特にワトフォードのバックラインの気合いの入り方は異常だった。体を投げ出してのシュートブロックでユナイテッドから体を張ってゴールを守り切ったワトフォードのバックラインはお見事。オールド・トラフォードでのクリーンシートという一昔前のワトフォードならば考えられない偉業を達成してみせた。

試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
マンチェスター・ユナイテッド 0−0 ワトフォード
オールド・トラフォード
主審:ジョン・ブルックス

⑦エバートン【16位】×マンチェスター・シティ【1位】

■ハンドを嘆ける会心の出来

 降格圏が後ろに迫った状態で悪戦苦闘するエバートン。ランパートが就任以降は内容に兆しを感じないことはないが、成績が明確に改善することはなく苦戦は続いていると言っていいだろう。

 そういう意味ではこの試合の彼らの出来は会心だった。相手と噛み合うように3センターでスタートしたこの日のエバートン。噛み合わせている状態を外すために動き出すのはシティでいえばベルナルド。この日はトップに入った彼が降りる動きからズレを作ろうとする。

 これに対してエバートンはとてもスマートに対応。WGのゴードンがストーンズにある程度ボールを誘導する形で中を絞ることで、ベルナルドが受けるスペースを消すことを優先したのが非常に効いていたように思う。

 この日のエバートンが良かったのは人基準の守備の割には深追いしすぎずにマークの受け渡しをしたこと。そして、相手との距離を詰めた後に無理に飛び込んで交わされるシーンがほとんどなかったこと。自分で奪うのではなく、チームでボールを奪えればOK。今季なかなか具現化できなかったコンパクトさと相手へのタイトさを併せ持つやり方をようやく実現できていた。

 これによりシティは苦戦。特に高い位置で起点を作ることができず、サイドでのトライアングルでの旋回から相手を押し込むようなシーンが見られなかった。一方のエバートンは単一ではあるが、ボールを奪った後にルートがあった。ゴードン、リシャルリソンなど多少強引でもゴールに向かってボールを運ぶ意志があった選手が多く、彼らの推進力に助けられた格好だ。シティはサイドで1つしかパスコースがない!という感じだったけど、エバートンは1つあれば大丈夫!みたいな心強さを感じたというか。

 エバートンが前線にそうしたボールを繋ぐことができたのは、ビルドアップにおけるプレス回避がうまくいっていたから。バックラインからの対角のパスや、シティのプレスの連動の悪さ(実は攻撃以上に気になった部分である)の切れ目を狙っての縦パスから前進。より機能的に前進したのはエバートンの方と言っていいだろう。

 後半はだいぶシティが改善。流石に中盤より前のプレスの機能性が落ちたエバートン。アタッカーの推進力が奪われてしまったことにより、カウンターの頻度も低下する。ゴードン→グレイの投入は推進力の回復を狙ってのものだろう。

 後半は押し込んで支配的に時間を進めたシティ。サイドへの旋回と素早いサイドチェンジを駆使した幅を使った攻撃で徐々にエバートンを苦しめると、80分すぎにPA内でこぼれたボールをフォーデンが押し込んで先制する。

 奮闘していただけにこの失点は残念。この試合では今季のうさを晴らすような出来だっただけにエバートンファンにとっては手ぶらで持ち帰るのはさぞ悔しかったことだろう。終盤のロドリのハンドが取られていれば!と嘆くことができるくらいに、この日のエバートンはシティ相手に勇敢に立ち向かって見せた。

試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
エバートン 0-1 マンチェスター・シティ
グディソン・パーク
【得点者】
Man City:82′ フォーデン
主審:ケビン・フレンド

⑧ウェストハム【5位】×ウォルバーハンプトン【7位】

■主力投入で覆せなかった劣勢

 欧州カップ戦出場権争いのライバル同士の直接対決となった一戦。特にウルブスにとってはここで負けるとだいぶ旗色が悪くなるだけに何としても踏みとどまりたい大事な試合である。

 立ち上がりから両チームは非常に慎重な展開だった。まずはウルブスが保持でゆったりと押し込んでいく。ウェストハムは無理にプレスをかけずに撤退。左のSHのフォルナルスは守備においては対面のフーフェル基準で撤退。まずは自陣での守備を固める。

    ウェストハムがボールをもてば、ウルブスも立ち上がりこそプレスに行ったものの、徐々に撤退にシフト。攻守の切り替えが少ない立ち上がりとなる。

 やや気になったのはローブロックにおけるウルブスの守備。5バックで人をかけてはいるが、ウェストハムの大外のクレスウェルに対してのチェックが甘く、DFラインの裏にかなり危険なクロスを放り込まれていた。ウェストハムはゆっくりとした攻めの中でクロスを放り込むところまでは持っていけていたし、クロスに飛び込む人間も人数をかけることが出来ていた。左サイドではボーウェンの抜け出しなど、ウルブスのラインを揺さぶるアプローチも出来てはいた。

 速い攻撃においてもアントニオの裏抜けなど左サイドを中心にウルブスの機動力が怪しい弱点を突く攻撃を披露。ジョゼ・サのリスクを負った飛び出しにウルブスのバックスが何度か救われたこともあった。

 ウルブスは攻撃においてもポデンス、ヒメネスのベンチスタートの影響は大きく、ボールがいつものように収まらない。ファビオ・シルバが抜け出しかける場面も何回かあったが、いずれもものにはできず。ウルブズは起点作りに苦労する。終盤にはネベス、トリンコンがそれぞれ1列落ちながら反転してからボールを運ぶ試みをするなど工夫がなかったことはないが、ウェストハムがペースを握っていたといっていいだろう。

 ターンオーバー気味のスタメンだったウルブズは交代選手に期待したいところ。前半のスコアレスがどこまで期待通りだったかはわからないが、交代で前線の主力が投入されてなお、5バック気味にシフトしたウェストハムの守備ブロックを攻略する糸口を見つけることができない。

 一方のウェストハムは再三狙っていた左サイドからの攻略でついに後半に先制。アントニオがサイドに流れる頻度を見る限り、もはや彼はストライカーというよりもチャンスメーカーだと捉えられているのだろうか。2列目のアタッカー陣の躍動をこの日も助けるアシスト役としての高いスキルを見せつける。

 終盤はプレスが弱まったウェストハム。ウルブスも抵抗を見せるが、結局最後までゴールを割ることは出来ず。欧州カップ戦争いの直接対決は上位のウェストハムがCL出場権に望みをつなぐ大きな勝利を手にした。

試合結果
2022.2.27
プレミアリーグ 第27節
ウェストハム 1-0 ウォルバーハンプトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:59′ ソーチェク
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

⑨アーセナル【4位】×リバプール【2位】

■健闘も完成度の違いは明白

 レビューはこちら。

 5連勝と8連勝。CL出場権獲得と逆転優勝という目標は違えど、この連勝街道で互いの目標を現実的なターゲットとして捉えつつある両チームによるミッドウィークのビックマッチだ。

 試合早々に降り掛かったリバプールのセットプレーの波状攻撃を凌いだアーセナル。保持で時間を作れるのか?というのがこの試合の課題だったが、早々に中央でのパス交換で前進を決めるなど、立ち上がりから好調をアピール。特にトーマスとウーデゴールへのチェックが後手になりやすいチアゴのところを突きながら中央でフリーマンを作ることに成功していた。

 だが、ここから先でアーセナルの攻撃は難航。崩しの切り札と言っていいサカのマークにファン・ダイクがサイドにスライド。危険は早めに潰す!と言わんばかりの出張でそこから先の展開を許さない。逆サイドのマルティネッリはアレクサンダー=アーノルドを1on1で抜く場面があったが、守備で低い位置に押し下げられることが多いうえに、時間の経過とともにヘンダーソンやファビーニョのカバーに遭い、徐々に苦しくなってくる。

 一方のリバプールもアーセナルのプレスに苦戦。サカ、ラカゼット、ウーデゴールの3人のプレスにCBとアンカーは消されてしまうし、降りてきたチアゴを使いながら攻撃を始めようとする頃にはアーセナルのブロックは組み上がってしまう。二段構えの守備を使い分けるアーセナルになかなか攻め手を掴みきれない。

 リバプールがようやく解決策を見つけたのが後半。マネとジョッタを中心に左のハーフスペースを重点的に攻略。46分のオフサイドのシーンのように、奥行きと細かいレーンの使い分けを駆使しながらチャンスメイクを行うように。

 アーセナルもよく対応していたが、54分に決壊。外のロバートソンと内に入り込んだマネによってわずかに空いた縦のコースにチアゴからジョッタに絶妙なパスが通る。これを角度のないところから沈めるのがジョッタ。直近はあまり結果を出せていなかったが、得意なアーセナル戦でまたしてもゴールを決める。

 ここが勝負所と踏んだリバプール。即時奪回でボールを取り返そうとゲーゲンプレスを開始。これにより、同じくリバプールキラーのフィルミーノのダメ押しゴールまでの流れを作る。

 アーセナルは最後まで健闘はしたが、終盤の攻撃の引き出しの乏しさを見ると、マルティネッリが1on1で優勢に立てた時間帯でリードを奪っていないと厳しかったように思う。

 素晴らしいチームであることを内容で証明したアーセナルだが、流れを引き寄せるメソッドの豊富さと勝負所を見極めるエンジンの掛け方は明らかにリバプールの方が数段上。正面からぶつかり合い、完成度の違いを見せた試合と言っていいだろう。

試合結果
2022.3.16
プレミアリーグ 第27節
アーセナル 0-2 リバプール
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
LIV:54‘ ジョッタ, 62’ フィルミーノ
主審:アンドレ・マリナー

⑩チェルシー【3位】×レスター【9位】

■プラマイゼロにしたアロンソ

 ニューカッスルにアーセナルが敗れたことにより、来季のCL出場権が確実になったチェルシー。今節の対戦相手は消化試合がやたら過密なレスターである。

 この試合のレスターのフォーメーションはやや珍しいものだった。5-3-2という形のフォーメーションは後ろを重くして立ち向かう。序盤は中盤が人を捕まえる意識が高かったため、スペースを埋めることを優先している感覚は薄かったように思う。

 ボールを奪ってしまえばレスターはすぐさま反撃。2トップのスピードを生かしたカウンターから、一気にチェルシーのゴールに迫る形である。

 チェルシーはかみ合わされる中盤からではなく、ワイドからボールを押し下げることを選択。特に自由にボールを持つことができるチャロバーとリュディガーから押し下げる形でレスターの陣内に迫っていく。大外担当は右のツィエク。大外から1対1でトーマスをつり出しながらデュエルする。

 粘っているレスターはカウンターからあっさりと反撃。カスターニュが抜け出し、開始早々の6分に一発で壊す。決めたのはマディソンだった。

 確かにレスターにはスピード豊かなアタッカーが数多く揃っている。しかしながら、この場面ではチェルシーのバックラインの怠慢が目立つ形だった。ワイドにFWが抜けていく形をこの日のレスターは多用してきたのだが、チェルシーのバックラインはこれにあまりにも無頓着。終盤戦の無気力な感じがこのカウンター対応に出ていた。

 先制点を取ったことでレスターの守備陣はやや重心を低めに構える形にシフトチェンジ。チェルシーはこれを崩す形に徐々にシフトする。

 サイドから押し下げられたレスターは何とか粘っていたが、デューズバリー=ホールがジェームズを逃がしてしまったことで逆サイドまでの展開を許す。これをアロンソが叩き込んで同点に。失点シーンではカスターニュの抜け出しを許して原因を作っていたが、この場面ではそれを帳消しにして見せた。

 迎えた後半、より強い3ポイントへの意識を見せたのはチェルシーの方だった。狙い目にしたのはレスターの中盤の背後のスペース。時間の経過とともにレスターはアンカーのメンディがだんだんとジョルジーニョを気にして重心を前にする。

 この背後のスペースをルカクで突くのがチェルシーのやり方である。レスターも殴り合いに持ち込むことで何とか展開をフラットにしていこうとするのだが、徐々にレスターは保持の時間を増やしていく。

 レスターのラインブレイクの頻度を抑制し、ルカクをよりスペース感覚に優れたハフェルツに入れ替えることで2点目を取りに行ったチェルシー。しかしながら、活性化には限度があった様子。試合は前半の1得点のみで打ち止めのドローゲームとなった。

試合結果
2022.5.19
プレミアリーグ 第27節
チェルシー 1-1 レスター
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:35‘ アロンソ
LEI:6’ マディソン
主審:スチュアート・アットウェル

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