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「Catch up Premier League」~Match week 28~ 2022.3.5-3.7

目次

①レスター【12位】×リーズ【16位】

■見どころはあったが勝ち点には届かず

 チームを1部に導いてきた功労者であるマルセロ・ビエルサと袂を分かつ決断をしたリーズ。新しくエランド・ロードに迎えた指揮官はジェシー・マーシュ。レッドブル系の指揮官!というくらいしか情報はもっていないので、どんな感じなのかリーズで追いかけながら観察していきたいところである。

 たった、1試合ではあるがリーズには明確な変化があった。最も大きなところでいうとプレッシングである。これまでのリーズではボールホルダーに連続的に、代わる代わるのプレッシングを仕掛けていたスタイルがお馴染みではあった。したがって、この試合でロドリゴが見せていたプレスに行かないように味方を制するようなボディアクションはこれまではなかったものである。

 攻撃面ではやり直しとなるようなパス回しが増えたよう。これもこれまで見せてきたスタンスとは異なるもの。レスターのSBの管理が甘くなる大外の裏側のスペースから狙いを定めて、縦に速いパスを出すタイミングを伺う。

 ただ、最もリーズで得点の可能性を感じさせたのはカウンターでの速攻。ロドリゴ、ハリソン、ラフィーニャ、ジェームズの4人が一気にスイッチを入れて走り出すロングカウンターは迫力十分。特にハマっていた前半のうちに先制点が欲しかったところだろう。

 苦しい展開となったレスター。プレッシングではIHのデューズバリー=ホールがトップのヴァーディに加わり、プレスを敢行するが、リーズの攻撃を止めきることは出来ず。シュマイケルのセービングで難をしのいでなんとかしのぐという厳しい前半に。

    救いだったのは縦に速い展開にはめっぽう強いヴァーディがこの日の先発に名を連ねていたことだろう。リーズほど厚みのあるカウンターではなかったが、抜け出しの鋭さはやはり天下一品。やり返せる武器を有していることで攻撃の機会が完全に潰えることはなかった。

    レスターにとっては前半をなんとかスコアレスで凌いだ形に。後半、サイドをワンツーで抜け出したバーンズが貴重な先制点をゲット。レスターとしては押し込まれる展開の中でリードを得ることに。

 ここからはレスターは我慢の展開。押し込んだリーズはサイドからの攻勢を強め、レスターのPA内に繰り返し迫っていくが、ソユンクとアマーティの奮闘が光り、最後のところをやらせない。

 リーズは内容的には上々、レスターを上回ったとも言えそうだったが、一番欲しい勝ち点3は得ることが出来ず。残り10試合というリミットがあるマーシュの初陣は厳しい結果を突きつけられるものとなった。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
レスター 1-0 リーズ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:62′ バーンズ
主審:デビッド・クーテ

②アストンビラ【13位】×サウサンプトン【9位】

■あらゆる局面で完勝

 序盤から両チームとも保持は安定していた。アウェイのサウサンプトンは前節と同じように2CBに合わせて2CHが可変して3-1に変形することでビラの2トップのプレスを外しにいく。

 一方のビラの保持においては、サウサンプトンが2CBにプレスにいく意識が希薄。ビラはボール保持を許された格好となっている。ビラは前節に引き続きこの日も基本のフォーメーションが4-4-2ダイヤモンド。前節のブライトン戦では中盤を噛み合わせるためなのかな?と思ったけども、前線のスタメンをブエンディアからイングスに切り替えたことで前線の形も変えたと解釈するのが妥当だろうか。

 噛み合わないフォーメーションを採用している両チームには空くところが出てくる。サウサンプトンの保持の際はSB。外循環ながらズレはできてはいるので、そこからの崩しを狙う。だけども、こうしたサイドのズレを活用するのが一番うまいウォーカー=ピータースはこの日はベンチ。代役のペローにはその役割はやや重荷だったように思う。右サイドのリヴラメントも押し込んでいくが、その先の形を作ることができずに苦戦する。

 一方のアストンビラは中央である。アンカーのルイスとフリーに動くコウチーニョがズレのきっかけだった。サウサンプトンに比べるとビラは明らかにズレをうまく使えていた。特に自由に動き回るコウチーニョを捕まえることができずに苦戦する。

 加えて、サウサンプトンはMF-DFライン間をコンパクトに管理するのにも苦労しており、FWへの楔が入ったときに挟む形で相手のスペースを狭めることができなかった。さらにはFWとCBのマッチアップでサウサンプトンが劣勢に立たされたのも苦戦の一因。ワトキンスの先制点はその象徴だろう。

 もう一つ、サウサンプトンが苦しかったのはサイドでの2on2であっさり抜け出される場面を作られてしまうこと。ここでも苦しんだペロー。ビラは大外から抜け出すシーンを作り、サウサンプトンのラインを下げながらエリア内に迫っていくガンガン得点を重ねていく。

 前線、中盤の守備もこの流れを阻害できなかったサウサンプトン。ビラは後方からも自由にボールを出すことに成功。ミングスは前節に続き鋭いフィードを飛ばしていたし、2点目のコウチーニョの抜けだしを誘発したのはチェンバースのアウトサイドのパスだった。

 バックスのフィード、中盤のコウチーニョの移動、そしてワトキンスとイングスの2トップ。サウサンプトンはどのユニットにおいてもビラのクオリティに苦しむ。その結果が4失点という形で目に見える差となった現れたような試合だった。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
アストンビラ 4-0 サウサンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:9′ ワトキンス, 44′ ルイス, 52′ コウチーニョ, 54′ イングス
主審:ピーター・バンクス

③バーンリー【18位】×チェルシー【3位】

■シビアなバランスで成り立っていた前半の奮闘

 試合の展開としてはチェルシーがボールを持ちながら、ブロックを組むバーンリーに対してどのように攻略を進めていくか?という局面である。普通に組めばチェルシーの3-4-3はバーンリーの4-4-2に対してズレが発生する。だけども、バーンリーはそのズレを最小限に埋める形でチェルシーにプレッシャーをかけていく。

 具体的にはCBにどこまでプレスにいくか?という話。つまり、チェルシーの3枚のバックラインに対して、2トップ以外のもう1枚が出ていくかどうか。これを判断する役割を担っていたのはレノンだった。彼がリュディガーにプレッシャーをかけにいくか否か。そこでバーンリーがどれだけプレスに前のめりなのかを図ることができた。同サイドのCHであるウェストウッドもレノンに合わせて高い位置をとり、リュディガーのパスの選択肢を消す動きを連動させていたのもチェルシーにとっては非常に厄介だった。

 チェルシーからすると、相手のSHがCBに出てくるということはSHとSBの距離が空くということでもある。そうなれば、チェルシーとしては左のWBのサウールは前進の狙い目ではあったはず。だけども、正直ここにボールをつけることができても、チェルシーは前進の方策を見つけることができなかった。サウールもよくないし、周りもそれに連携できない。それならば、同サイドの裏にリュディガーが一気に狙う形の方がまだ可能性があった感じである。

 構造的な部分でよりチェルシーの狙い目になったのは、バーンリーのSHとSBのズレではなく、レノンとウェストウッドの意識にズレが出た時。どちらかが出て行こうとしたのに、どちらかが出ていかなかったパターンである。このパターンでできた切れ目に縦パスをつけて前進するパターンが一番クリーンにチェルシーの前進がうまくいく形となった。

 時折、マウントがこの形から好機を生み出すのだけど、チェルシーからすると頻度はものたりない。むしろ、引っ掛けてからの被カウンターでバーンリーのピンチに晒される方が多かった前半だった。

 90分間これを同じようにやれればいいはずだったバーンリー。だが、30分以降自陣撤退で5-4-1のようにスペースを埋める時間が増えるように。初めはそれでも守ることができていたが、やはりDFラインにミスが許されない形はプレッシャーがかかる。

 後半はその部分をよりうまくチェルシーがついてきた。捕まえるのがややこしかったのは中央で背負ってよし、サイドに流れて良しだったハフェルツ。彼のせいでバーンリーは5バックが狭く守る必要があった。

 ハフェルツを軸にした中央からの崩しと、外に広げる動きを繰り返すことで撤退守備を壊したチェルシーは後半開始から立て続けに4点。前半は互角以上の戦いを見せたバーンリーだったが、90分これを繰り返すのは見た目以上に至難の技なのだろう。ノーミスを90分続けることはできず、大外の対応でミスが出て立て続けに失点。前半の奮闘を勝ち点につなげることはできなかった。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
バーンリー 0-4 チェルシー
ターフ・ムーア
【得点者】
CHE:47′ ジェームズ, 53′ 55′ ハフェルツ, 69′ プリシッチ
主審:アンドレ・マリナー

④ニューカッスル【14位】×ブライトン【10位】

■攻めあぐねている間のロングカウンター

 立ち上がりから相手を押し込むトライをしていたのはホームのブライトン。保持型に生まれ変わったはずのニューカッスルを押し込み、敵陣深い位置で攻略を狙う。狙いとしたのは左サイド。大外のククレジャを頂点に多角形を形成し、エリアに入り込もうと狙っている。

 ブライトンの攻撃が左に偏重したのは、この日のトップに普段は右サイドに張る役割を行っているランプティを起用したからというのもあるだろう。ランプティは右に流れる役割を担うこともあったが、いつもよりはトップの相手ゴールに近い位置でプレーする機会が多くなっていた。ランプティが流れるときはトップ下のトロサールがエリアに侵入。全体のバランスを保たせる形でブライトンは攻撃を行っていた。

 ただし、ブライトンはニューカッスルを崩すところまではいかず。コーナーキック等のセットプレーからはネットを揺らすチャンスは見いだせそうではあったが、定点攻撃からはニューカッスルの人が多いPA内を攻略するのは難しかった。

 ニューカッスルは6バック気味になりながらまずは落ち着いて受ける形で対処する。そして、狙うはロングカウンターである。サン=マクシマンがおらずともロングカウンターを涼しい顔で発動できるようになったのは頼もしい限りである。

    ニューカッスルはそのロングカウンターから先制。抜け出したマーフィーのループ気味のシュートがポストに当たると目の前に跳ね返ってきたフレイザーが落ち着いて流し込む。

 保持をひっくり返す形で先手を打ったニューカッスルは2分後に追加点。こちらはセットプレーからシェアが叩き込み、あっという間に2点リードまでこぎつける。

 なかなかきっかけをつかめないブライトン。ウェルベック、ランプティの2トップならばむしろコンビネーションでの打開よりも一発裏抜けスピード勝負に持ち込む方が得点のチャンスはあったように思う。押し込んでからのニューカッスルは結構堅かった。

 一方のニューカッスルは列落ちでのポストを繰り返しながら前進。撤退守備だけでなく、ボールをつなぎながらの前進もちらつかせることで、きっちり守備の時間を減らすアプローチも欠かさない。

 後半、重心を下げたニューカッスルに対して、ブライトンはさらに攻める時間が長くなる。セットプレーからなんとか1点は返したが、反撃はここまで。終盤はむしろ、サン=マクシマンを装備したニューカッスルのロングカウンター上等!の姿勢に手を焼いてしまい、ゴールに迫るよりも迫られる方が多くなってしまった。

 リーグ戦はこれで8戦負けなし。年明けから一気にブーストをかけたエディ・ハウのニューカッスル。あっという間に降格圏からは7ポイントも遠ざかるところまでやってきてしまった。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
ニューカッスル 2-1 ブライトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:12′ フレイザー, 14′ シェア
BRI:55′ ダンク
主審:マーティン・アトキンソン

⑤ノリッジ【20位】×ブレントフォード【15位】

■寝ても覚めてもセットプレー

 上がり続ける残留のボーダーのせいでもう負けられない試合だらけのノリッジ。今節の対戦相手は目下絶不調、ノリッジにとって意地でも残留争いに引きずり込みたいブレントフォードである。

 ギルモアの立ち上がりのボール奪取からのカウンターはこの日のノリッジのイレブンの気合の乗り方を体現しているかのよう。いつもと違う4-1-4-1を採用したブレントフォードに対して、保持で比較的我慢することもできており、ウィリアムズ×ムベウモというマッチアップという突破口もすでに確認することが出来ていた。

 序盤は新システムに戸惑い気味だったブレントフォード。完全な4バックというわけではなく、アンカーのノアゴールが相手の攻撃がPAに入り込むことで5バックにシフト。これにより、ノリッジの深いところまでやってくる攻撃をPA内で跳ね返すことができるように。

 ブレントフォードのビルドアップは2枚のCBが開いて間にアンカーが入る。IHのエリクセンは枚数調整役として活躍。ビルドアップはつなぐ意識をこれまでより持ち味にしながら、じっくりとボールを前に進めていく。

 だが、先制点をゲットしたのはどちらかというと苦しい立ち上がりになっていたブレントフォード。先制点はセットプレー。エリクセンのクロスにニアのフリックでアイエルが合わせて、ファーのトニーが詰めるという仕組みでノリッジのゴールをこじ開ける。

 得点で勢いに乗るブレントフォードは序盤よりもプレスでノリッジを追い詰められるように。ここの時間を境にノリッジは徐々に保持での支配力を失っていくことになる。

 後半、再びセットプレーからチャンスを得たのはブレントフォード。セットプレーからの競り合いの中でハイキックを不用意に行ってしまったギブソンがPKを取られてしまい、これをトニーが決めて追加点に。

 さらにはギブソンは6分後にもPKを献上。抜け出したトニーに対してのチャレンジはボールに届かず、これもPK判定でトニーに決められるという悪夢のような展開に。

 この日はとにかくセットプレーから点が入る日だった。ブレントフォードの幻となった4点目も、ラシツァのミドルが決まったがプッキがオフサイドで取り消されたシーンもどちらもセットプレーから。ゴールはおろか、幻のゴールまでセットプレー尽くしというのはさすがに珍しい。

 そのセットプレーでボコボコにされたノリッジは終盤に1点を返すのが精いっぱい。残留争いに引き込みたい相手に、3ポイントを献上する形でまた降格が一歩近づく形になってしまった。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
ノリッジ 1-3 ブレントフォード
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:90’+2 プッキ
BRE:32′ 52′(PK) 58′(PK) トニー
主審:アンソニー・テイラー

⑥ウォルバーハンプトン【8位】×クリスタル・パレス【11位】

■泣き所をついて完勝、いざトップハーフ争いに

 アーセナル、ウェストハムというヨーロッパ出場権争いの直接のライバルに連敗し、やや欧州への道が遠ざかってきたウルブス。今節の相手は中位を維持するクリスタル・パレスである。

 立ち上がりから積極的なプレスを見せたのはウルブスの方。トップに入ったポデンスはアンカーをケアする位置に入り、シャドーのヒチャンとネトはやや前のめりにCBにプレッシャーをかけるように動き、カウンターを狙っていく。

 これに対してクリスタル・パレスは外循環で対応。SBで対面のWBを釘付けにすると、大外にWGやIHが飛び出すことでウルブスのハイラインの裏を突く。

 このパレスのプレス回避はウルブスに対しては効果がバツグン。シャドーがCBにプレスをかける分、大外の警備は手薄になるし、最終ライン裏にスピード勝負を挑まれるのはウルブスにとっては非常に不利な土俵。スピードに持ち味のあるパレスのアタッカー陣は積極的にサイドから裏を狙い相手を揺さぶっていく。パレスは裏に抜ける機会さえ得ることができれば、手段は不問!ロングボールだろうがなんだろうが、前を向く選手を確保できればOKである。

 先制点の場面はマテタがロングボールの競り合いを制し、マイボールを確保したギャラガーがPA内の裏のザハにラストパスを送る。ウルブスのハイライン最後の砦であるジョゼ・サを越えて、粘ってPA内にボールを残すと、最後はマテタがゲット。ウルブスの泣きどころを突いたパレスが先手を取る。

 スピード豊かなアタッカーへの対応は終始苦にしていたウルブス。前半のうちに、キルマンがシュラップの抜け出しに対応できずにPKを献上してしまう。

 PKを決められ2点のビハインドを背負ったウルブス。反撃と行きたいところだが、前進はうまくいかない。降りてくるポデンスを軸にサイドを変える大きな展開は健在ではあるが、トップに入った彼が動きすぎてしまうと、ゴール前に人がいない問題にぶち当たってしまう。

 ネトが入ったこともあり、コンビネーションでの崩しよりも単騎での局地戦に持ち込む機会が増えたウルブス。その様子を見たパレスは後半に4-2-3-1に変更。ネベスを監視する役をギャラガーに任せ、左右の突破口へのデリバリーを食い止めることにした。

 この影響は効果が大きく、ウルブスは広い局面で相手を攻めたてるのが出来なくなってしまう。ネトも負傷前の絶対的な存在感が出てくるにはまだ時間がかかりそう。

     攻め手が見えないウルブスを尻目にパレスは選手交代でハイプレスを復活。ハイラインのDFに対して、ザハでちょっかいをかけることにより、後半もチャンスとなる場面は多かった。

 これで直近の公式戦は3戦無敗となったパレス。強敵であるウルブスを倒し、トップハーフ争いに名乗りをあげることに成功した。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
ウォルバーハンプトン 0-2 クリスタル・パレス
モリニュー・スタジアム
【得点者】
CRY:19′ マテタ, 34′(PK) ザハ
主審:アンディ・マドレー

⑦リバプール【2位】×ウェストハム【5位】

■新たな武器をもたらすルイス・ディアス

 優勝を視野に入れてCLとの二足の草鞋という難しい期間を迎えているリバプール。今節は直後にCLのインテル戦という難しい日程の中で、難敵のウェストハムと対峙する。

 そのウェストハムも欧州カップ出場権争いに向けて一つも落とせない状況で迎えるこの大一番にライス不在で臨まなければいけないという苦境を迎える。それぞれのチームにそれぞれの厳しさがある状況での上位対決となった。

 立ち上がりから両チームはハイテンポ。互いにハイラインの強襲からチャンスメイクにトライするなど、非常に忙しい展開になった。早くチャンスを迎えたのはリバプール。立ち上がり直後のアレクサンダー=アーノルドの抜け出しからのチャンスは早々に先制点の香りがするものだったといえるだろう。

 その後はリバプールのボール保持の時間が徐々に長くなっていく展開に。バックラインからゆっくりとボールを回しを行い、なかなか出てこないウェストハムのバックスを揺さぶるようなボールを回しを行う。ここで勝負できる!というポイントを見つけられることが出来た縦パス1本でスイッチを入れて手早くフィニッシュまで向かう。

 アタッキングサードでは相手を飲み込むような猛攻がリバプールのトレードマークであるが、そうした中で異質なのが冬に新加入したルイス・ディアス。球離れ的にはワンテンポここで落ちるのだけど、別にそれで攻撃が詰まっている感じがしないのが不思議。むしろ、こうした持ち味はこれまでのリバプールにないものであり、プラスアルファをもたらしているという見方が正しいだろう。

 ポルトやコロンビア代表でも見せた横ドリブルは最大の武器。相手の足を止めつつ、空いているところを探り、抜け出しや合わせたラストパスやシュートを狙う。この試合で決定的な役割を果たしたのはサイドチェンジ。カットインで相手をひきつけつつ、浮いた逆サイドに展開し、アレクサンダー=アーノルドのアシストをおぜん立てして見せた。

 先制点を得たリバプールは後半もボールを持ちながら時計の針を進めていく。なかなかボールを奪い取れないウェストハムはカウンターからワンチャンスを生み出したいところだが、負傷交代をしたボーウェンの穴はやや感じられてしまう感はあった。

     リバプールは左のハーフスペースから縦にパスを入れることで前進のスイッチは後半も確保。終盤まできっちり相手を押し込むことで主導権を手放さない。

 終盤はウェストハムにも同点のチャンスがあるなど勝ち点を取りこぼす可能性はありはしたが、終始支配的にふるまったボール保持で安定した試合運びを行い、新しい武器を上乗せして先制点を奪ったリバプールが接戦を順当に制したといっていいだろう。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
リバプール 1-0 ウェストハム
アンフィールド
【得点者】
LIV:27′ マネ
主審:ジョナサン・モス

⑧ワトフォード【19位】×アーセナル【6位】

■イケイケの3得点はさすがに重い

   レビューはこちら。

 ホジソン就任以降、守備の立て直しを図ることには成功しているワトフォードだが、攻撃面ではどこかピリッとしない試合が続いている。そんな中、今節のアーセナル戦ではサールとキングという攻撃の主力2枚が欠場。ロースコアに持ち込んで何とか勝ち点をもぎ取りたかったというのがホジソンの本音だろう。

 しかし、試合は早々にアーセナルが先制。今は2枚つけるのが常識といえるほど絶好調のサカに対して、1枚で受けてしまったワトフォード。サカはウーデゴールとのコンビであっさりと右サイドを攻略する。ラストパスを受けたウーデゴールは斜めのランから糸を引くようなコントロールショットでフォースターの守るゴールマウスを打ち抜いて見せた。

 いきなり出鼻をくじかれたワトフォードだったが、攻撃面ではきちんと準備。トップの3枚が頻繁に横のレーンを入れ替えることでアーセナルのバックラインを混乱に陥れる。特にアーセナルの左サイドの裏は狙い目。ティアニーをフリーランで内側に引っ張ると、大外には守備に難のあるマルティネッリが残る。

   ここからワトフォードは同点弾。マルティネッリの足を止めて2対1の構図をサイドで作ると、フリーで挙げたクロスを最後はクチョ・エルナンデス。アクロバティックな同点弾で早い時間に追いつくことに成功する。

 だが、この日はアーセナルのアタッカー陣の勢いが止まらない。先制点に絡んだサカ、ウーデゴールはもちろんのこと、中央の前線と中盤で攻撃をつかさどるラカゼットやトーマスも絶好調。自在にワトフォードの守備陣を振り回し、難しいパスを少ないタッチでバシバシと決めていく。

 ラカゼットとサカの阿吽の呼吸で決めた2点目も美しいが、やはりこの日の真骨頂は3点目。サカのスローインを受けたセドリックがそのまま攻めあがると、ウーデゴール、ラカゼットとつなぎ、落としを受けたマルティネッリが豪快にミドル。まさしくアーセナルらしいゴールでさらにワトフォードを突き放す。

 攻撃陣がイケイケだった分、アーセナルには試合をコントロールする気がなかった。ちょっとハイになっていた感じ。その分、ワトフォードにもチャンスが回ってきたのは幸運。守備の軽さが目立つアーセナルの最終ラインをシソコがこじ開けて1点差に追い上げたおかげで終盤まで勝ち点の可能性を残すことができた。

 ただし、反撃もそこまで。堅守をベースに立て直しを図っているワトフォードにとって、この日絶好調だったアーセナルのアタッカー陣に背負わされた3点はあまりにも重たいものだった。

試合結果
2022.3.6
プレミアリーグ 第28節
ワトフォード 2-3 アーセナル
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:11′ エルナンデス, 87′ シソコ
ARS:5′ ウーデゴール, 30′ サカ, 52′ マルティネッリ
主審:クレイグ・ポーソン

⑨マンチェスター・シティ【1位】×マンチェスター・ユナイテッド【4位】

■熱量なきマンチェスター・ダービー

 伝統のマンチェスター・ダービー。シティは猛追するリバプールを振り切って優勝争いをリードするため、ユナイテッドはCL出場圏内を維持するためというそれぞれの理由で負けられない試合だった。

 だが、そうした大事なものがかかっているダービーらしい立ち上がりではなかったのは正直なところ残念だった。立ち上がりの両チームのスタンスは慎重なものであり、相手を飲み込んでやろう!という感じではなかった。

 バックラインからボールを動かすシティに対して、ユナイテッドはプレッシャーをかけることはほとんどしなかった。試合の立ち上がりこそ、トップ下に入ったポグバがアンカーのロドリにプレスをかけるなど、多少の狙いは見えたが、しばらくするとそれも消滅。

 ユナイテッドの前線はボールの動く方向を誘導できず、中盤の守備は後追いになる。マクトミネイやフレッジのプレスが遅れがちだったのは、前線からの追い方があまりうまくいっていなかったことも一因である。

 シティはそんなユナイテッドに対して、左サイドから侵攻をする。ユナイテッドがまずかったのは最終ラインの対応も同じ。右のCBに入ったリンデロフはサイドへの圧縮が甘く、同サイドへのスライドが足りていない。その上、遅れて出ていってスペースを空けることというおまけ付きである。デ・ブライネの先制点はまさしくその状況からだった。

 一方のシティも押し込まれた時は危うさがあった。フレッジがPA内で相手を背負いながら受けた後、相手と入れ替わるように反転してシュートチャンスを迎えたシーンはいくらなんでもウォーカーのPA内での守備が甘すぎるだろう。同点ゴールを生んだサンチョのカットインに対しても、あれだけあっさり交わされてしまってはロドリが出てくる意味はあまりない。

 互いに守備には強度が足りていなかったが、相手陣に向かうことができる正確性に関しては両チームには流石に雲泥の差があった。ポグバ、サンチョになんとかしてほしいユナイテッドに比べれば、前線にスムーズにボールを運ぶ手段をいくつも持っているシティがチャンスを量産するのは当然だろう。

 前半終了間際に追加点を奪うと、後半はほとんどワンサイド。ただただボールを回し続け、PA付近までボールを運び、危ういシュートを放つという流れがずーっと続いていた。

 中盤に降りてくるCFのフォーデンへの対応など、最近のシティのズレを作るための王道中の王道パターンにもだいぶ混乱していた様子を見ると、ユナイテッドがこの試合に十分な対策を練って臨めたかは怪しいところ。『次に生かす』はこうした大敗の試合後の常套句ではあるが、何もしていないのだから『次に生かす』ことなどあるようには思えない。

 シティに対して受けて入り、受けきれなかったという結論が返ってきたユナイテッド。淡々と崩しにトライし続けるシティを眺めているだけの後半は、プレミアファンが待ち望んでいた互いの誇りをかけて熱く燃え上がるマンチェスター・ダービーとは程遠いものだったと言わざるを得ない。

試合結果
2022.3.6
プレミアリーグ 第28節
マンチェスター・シティ 4-1 マンチェスター・ユナイテッド
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:5′ 28′ デ・ブライネ, 68′ 90′ マフレズ
Man Utd:22′ サンチョ
主審:マイケル・オリバー

⑩トッテナム【7位】×エバートン【17位】

■シティ戦からの明確な退化

 両チームとも相手のバックラインにプレッシャーをかけずにボールを持たせる立ち上がり。したがって、試合のテンポは過度に上がらなかった。トッテナムはこれまでの試合の通りに、シャドーを下げた位置に置くコンパクトな5-4-1でエバートンを迎え撃つ。

 対するエバートンはコールマンをバックラインに加えた3バックへの可変で後方からの前進を狙う。しかしながら、アランを抑えられたこともあり、エバートンはバックラインから効果的なパスを供給することができない。エバートンのプレスの脱出口はキャルバート=ルーウィンへのロングボールに集中。そのほかの前進の手段として言えば、偶発的に1人でボールを運ぶことができるゴードンの前にボールが転がったときくらいのものだろう。

 守備においてのエバートンは後方から繋ごうとするトッテナムに対しては無理にプレスはかけなかったが、ボールロスト後は即時奪回の気配を見せる。だが、トッテナムは横に揺さぶることであっさりこれを回避する。

 ゲーゲンプレス!といえばエバートンの守り方は聞こえがいいかもしれないが、ボールに近づくだけでホルダーを捕まえるのが遅くなってしまっている。これではトッテナムに大きな展開で脱出されるのは当然。そもそもコンテ就任以降のトッテナムはWBを共に攻撃に参加させることで横幅を駆使するスタイルがベースである。

 加えて、エバートンはプレスに対して遅れて飛び込むという悪い癖がある。1失点目のゴードンのプレスもそうだし、2失点目のバックラインは軒並みそう。SBの遅れたプレスを起点にCBも出ていってさらに傷口を広げるという悪の循環がずーっと繰り返されていた。

 シティ戦では相手の選択肢を消しながら、無理に飛び込まないようなプレスで勝ち点まであと一歩のところまで迫ることはできてはいたが、この試合では勝ち点の可能性をわずかにも感じることができなかったのは残念である。

 ホルダーを捕まえるのが遅れれば、トッテナムに一気に押し下げられるのは当然だし、間に合わないのに後から無理にプレスに出ていけば、そのスペースに走られるのは当たり前。トッテナムの前線の面々にとってはそんなことは朝飯前である。

 ワイドに裏にとうまく使えたトッテナムは見事ではある。でも、この試合ではそれ以上にエバートンの拙さが目立った。シティ戦からは規律の面で明確に後退。監督が代わっても、だらっと人を捕まえにいってしまうという悪癖が邪魔をするというのはエバートンのいつものパターン。アンチェロッティにベニテスという経験豊富な指揮官でも克服できなかったこの悪癖をなんとかできなければ、シーズン終了間際には想像し得なかったまさかの結末が起きることは否定できないだろう。

試合結果
2022.3.7
プレミアリーグ 第28節
トッテナム 5-0 エバートン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:14′ キーン(OG),17′ ソン,37′ 55′ ケイン, 46′ レギロン
主審:スチュアート・アットウェル

今節のベストイレブン

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