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「Catch up UEFA Champions League」~Round 16 1st leg part 2~ 2021.2.22-2.23

part1はこちら。

目次

①ビジャレアル×ユベントス

■攻守に突き抜けが見えないドロー

 立ち上がり、あっという間に違いを見せたのはフィオレンティーナからやってきたヴラホビッチ。後方からのボールを収め、2人を自身に引きつけながらもそのまま反転しながらシュートを叩き込んで見せた。

 先制点を奪ったユベントスは3-2-5でボール保持にトライ。3バックが基本線だが、マッケニーは最終ラインに落ちて相手を引き出しながら、広範囲に動きつつ攻撃を循環させる。ユベントスとしてはサイドのアタッカーに欠場者が相次いでいるため、大外を賄えるクアドラードは貴重。クアドラードに高いサイドの位置に専念させるためにもダニーロやマッケニーは後方支援に注力していた。

 ビジャレアルは4-4-2という噛み合わないフォーメーションで気合いのプレス。噛み合わせを合わせにいっている感じはあまり強くはないけども、数を揃えてスムーズとは言えないユベントスのバックラインを攻め立てるようになった。

 一方、時間が経つごとに徐々にボールを持つ機会が増えていったのはホームのビジャレアル。GKを使いながらこちらも3-2-5チックの形でビルドアップを行うように。ユベントスはこれに対して、モラタをSHに置く5-4-1に変形する。

 基本的にはユベントスはビジャレアルのCBにはボールを持たせてOK。ただし、バックラインは極端に下げたくないので、ある程度縦方向にはコンパクトに維持しながら横には広がる形で迎え撃つ。ボールホルダーにもプレスを強めにかけず、特にユベントス側が設定したプレスラインより外側の選手に対してはボールにチェックに行くこともほとんどしなかった。

 ユベントスがあまりにもビジャレアルのバックラインのボールのドリブルに反応しないため、ビジャレアルのビルドアップにおける伝家の宝刀であるパウ・トーレスのドリブルも効果が薄い。CBのキャリーは相手が動いてくれてこそである。

 というわけでビジャレアルはサイドでちまちま崩していく形。左は大外のペドラサ、インサイドレーンのモレノのコンビネーションを活用して、右は大外のドリブラーであるチュクウェゼを軸に質的有利で勝負を仕掛けていく。

 後半、さらにカウンターに専念するユベントス。深い守備から大外からフリーマンを作ることで、ヴラホビッチへクロスを託す形で反撃を狙っていく。やや足元のパスが多く、停滞感が見られるようになった後半のビジャレアル。縦方向に動くロ・チェルソなど数人工夫する選手はいたが、得点までは辿り着かない。

 そんな中で同点に追いついたビジャレアル。結果を出したのはやはりオフザボールの動き。ボヌッチを信用していなかったのかやたら持ち場を離れていたデ・リフトが空けたスペースに中盤からパレホが入り込んで同点に追いつく。

 この場面は確かにデ・リフトの立ち位置もおかしいのだが、そもそもロカテッリがホルダーを空けすぎているのが問題。これだけフリーにすれば、裏を取られるのは当然だろう。だが、これはこの時のロカテッリの対応が悪いというよりは、深い位置のホルダーは無視してOKという原則をチームとして通していたゆえという感じ。

 立ち上がりの先制点でどのようにプランを変更したかはわからないが、とにかく動かないでブロックを固める形でロースコアでの逃げ切りを図ったように見えたユベントス。撤退で固めるブロックは60分過ぎに崩壊し、得点を取る方法論も後半は見せることができず。攻守に物足りなかったユベントスがベスト8に相応しいかは2ndレグの結果を持って判断する必要がありそうだ。

試合結果
2022.2.22
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
ビジャレアル 1-1 ユベントス
エスタディオ・デ・ラ・セラミカ
【得点者】
VIL:66′ パレホ
JUV:1′ ヴラホビッチ
主審:ダニエル・シーベルト

②チェルシー×リール

■動かせたチェルシーと動かせなかったリール

 抽選時にボールがきちんとそろっていなかったことを発端に、2回のくじ引きを行うという異例の抽選だった今季のCLのノックアウトラウンド。だが、やり直す前も、後も同じ組み合わせだったのがこのチェルシー×リールの組み合わせである。リールとしては頑張って首位突破した結果、前年王者をぶつけられるのだからたまったものではないだろう。

 試合は立ち上がりからチェルシーペース。リールの守備は4-2-3-1でSHのサンチェスとバンバは内側を絞る形。したがって、チェルシーの大外のWBに対して、リールはSHではなくSBが出ていく形が多かった。

   チェルシーの保持はこのリールの守備の決まりをうまく活用したといっていいだろう。WBのアスピリクエタで対面のSBであるジャロをつり出し、それに合わせてCFのハフェルツが同サイドの裏に抜ける形を見せて、ボッドマンを裏におびき寄せる。相手を横と縦に広げれば当然内側のスペースは空く。ここに入ってくるのがシャドーの2人。ドリブルで運べるプリシッチが受けるスペースを十分に確保するとここからドリブルを開始。この流れからチェルシーは押し込み、CKからあっさりと先制点をゲットする。

 降りるシャドーの役割はライン間で前を向いた時のプレーの引き出しが豊富なツィエクでもOK。いずれにしてもライン間で前を向くシャドーがチェルシーの攻撃の加速装置になっていた。ハフェルツ、これだけスペースメイクが出来るならば、なかなかルカクの使い方が難しくなるのも仕方ないなという感じの万能性である。

    ちなみに、アスピリクエタにはリールのSBが早めにチェックにいくことでサイドのズレが出来ていたが、逆サイドのマルコス・アロンソはボールをもっても無視してOKという判断。無視されたアロンソは相手をつり出す役目を諦め、ひたすら駆け上がってフィニッシャーに専念していたのは実に潔かった。

 明確なブロックの攻略法を持っていたチェルシーに対して、リールの保持はやや苦戦。バックラインに対して中盤がかわるがわる下りてきて、ホルダーに近寄りながらパス交換を繰り返し、相手がついてきたら思いっきり刺す!というのがおそらく彼らの流儀なのだろう。特にレナト・サンチェスはほぼバスケでいうポイントガードくらいボールを引き取りに行っていた。

 だけども、列落ちはそれに対して相手がリアクションしてナンボである。この日のチェルシーは早い時間帯に先制したこともあってか徹底的にリールの列落ちに付き合うことをしなかった。リールのカウンターにおいてもボールを止めて戻る時間を稼ぐ!というやり方を徹底。ボールを奪い取ることよりも、リールの保持の流儀に付き合わずにチャンスを与えないことを優先していた。

 リールはライン間の侵入まではいけるものの、5バックを動かすことが出来ずに苦戦。そのため、シュートはメンディはおろか5バックのブロックの壁を乗り越えることも難しい状況だった。

 後半も大きな流れは変わらずに推移。相手の食いつきを利用し、守備ブロックを動かしながらスペースを見つけていくチェルシーと、5バックを動かせずに苦戦するリーズ。どっしりと構えたチェルシーにリールが工夫をするもダメージを与えることができない。

 後半にプリシッチのゴールで追加点を得たチェルシーにとっては盤石の1stレグ。リールは試合のアプローチを含めて、局面を打開する方策を見つけなければ、ホームでの逆転勝利に明るい見通しを立てるのは難しい内容になってしまった。

試合結果
2022.2.22
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
チェルシー 2-0 リール
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:8′ ハフェルツ, 63′ プリシッチ
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ

③アトレティコ・マドリー×マンチェスター・ユナイテッド

■エランガがもたらしたオフザボールと同点ゴール

 CL1回戦の1stレグの最終日の一戦は国内で悩める強豪チーム同士の対戦。来年のCL出場権の争いの真っ最中の両チームがベスト16で対戦である。

 試合開始早々に先手を取ったのはホームのアトレティコ。セットプレーから合わせたのはジョアン・フェリックスがクロスを頭で合わせて先制点。ユナイテッドとしてはエリア内のターゲットが限られた場面での失点。特に冬以降、調子が上がらないマグワイアがマークを相当あっさり離してしまったのが直接原因である。

 ビハインドを背負ったユナイテッドはボール保持でアトレティコを攻めにかかる。アトレティコは5-3-2のブロックからミドルプレスを敢行。ユナイテッドのSHにはWBが出ていく。特にロディは高い位置に出てくる頻度が高かった。アトレティコは5-3-2から4-4-2への移行が非常にスムーズ。近年はブロック守備の弱体化が叫ばれているチームではあるが、この辺りの守備の規律はさすが。特に前に出ていくロディと横にスライドするコンドクビアあたりは守備面で目立っていた。

 ユナイテッドは列落ちからチャンスを探っていくが、いかんせんアドリブ感が強い。真っ先に動いていたのはポグバだが、彼が列を下がったことでどこかを動かせてそこから前進できたかと言われると微妙なところである。ポグバが列を下げた結果、中央で鎮座するフレッジに多少時間を与えられるようになっても・・・?という感じ。工夫はしているけど、即興で個人個人のアイデアの域を出ない。特に右のSBであるリンデロフは完全にビルドアップでは消えてしまっていた。

 かつ、ユナイテッドはアトレティコの攻撃にも苦戦。大外のWBからのクロスに対してはケアのやり方が見出せず、フリーで上げさせるケースが散見。アトレティコのボールの捨て方が上手かったので、ユナイテッドがここ数試合見せることができているカウンターも披露できず。ボールを奪っても、アトレティコの帰陣のスピードも早いため、ユナイテッドは直線的な攻撃までスムーズに移行することができていなかった。

 前半終了間際に追加点のピンチを凌いだユナイテッド。後半、プレスの強度を上げたアトレティコに対して、さらなる苦戦を強いられることになる。前半から存在感を見せていたロディは攻め上がりのスピードも含めて、前半以上に前の方での存在感を高めることに。

 ただ、アトレティコが積極性を増したことで、前半よりも前進はすることができるようになったユナイテッド。前半のユナイテッドがゴールまでもう4,5歩という感じならば、後半はもう1,2歩のところまで迫ることができていた。

 ゴールを破れないユナイテッドにとって救世主になったのは途中交代のエランガ。この試合の前線がほとんど見せることができなかった裏抜けから決定機。飛び出したオブラクを崩れ落ちさせるようなシュートを放ち、80分に追いつく。

 試合を優勢に進めていたアトレティコだったが、終盤の失点でドロー止まり。途中交代のグリーズマンにはバーを叩くチャンスがあったものの、チャンスの量に自信があるチームではないだけにエランガのゴールは大きな痛手に。両チームの決着はタイスコアのまま、オールド・トラフォードに持ち越されることになった。

試合結果
2022.2.23
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
アトレティコ・マドリー 1-1 マンチェスター・ユナイテッド
エスタディオ・ワンダ・メトロポリターノ
【得点者】
ATL:7′ フェリックス
Man Utd:80′ エランガ
主審:オビデウ・ハツェガン

④ベンフィカ×アヤックス

■自由度の高い保持とマンマークのかけ合わせ

 セミファイナルまで躍進した18-19シーズンと同じく、今季もグループステージから評判がよかったアヤックス。恥ずかしながらまだ今季は未見のアヤックスであったが、面白いチームで話題になる理由はよくわかった。

 まず、守備は非常にマンマーク色が強い。自分のレビューの読者にはプレミアファンが多いので、マンマーク!というとビエルサのリーズが思い浮かぶかもしれない。リーズは1トップに2CBの監視をさせつつ、後方では2CBが1トップに対して数的優位を確保するというクッションを用意しているのに対して、アヤックスのプレッシングは前方から同数で受けることが多かった。

 1トップのアレのサポートとしてCBにプレスに行ったのは右WGのアントニー。同サイドのベンフィカのSBのグリマルドはSBのマズラウィで迎え撃つ。後方は3バック気味になるがお構いなし。アヤックスの先制点はグリマルドへのフィードをカットする積極的な守備を見せたマズラウィ起点のカウンターからだった。

 ただ、同点となったベンフィカの1点目もマズラウィのところから。セットプレーの流れからのクロス対応に足を滑らせておいていかれたところで早いクロスを打たれ、PAにいたアレがオウンゴールに。ベンフィカはあまりいい位置に人を置けていなかったので、ラッキーな同点弾となった。だが、アレはその直後に勝ち越し弾をゲット。オウンゴールの面目躍如となる活躍を見せる。

 局面別にみていくと、アヤックスの守備に対してベンフィカはSHを内側に絞らせながら、大外はSBに使わせる形。両SHは絞りながらインサイドに入り込むことが多く、グリマルドとエヴェルトンがコンビを組む左サイドは特にこの傾向が強かった。プレスで捕まりそうなときは無理せずにヌニェスへのロングボールに移行することで、アヤックスのマンマークとお付き合いしていた。

 アヤックスの攻撃は結構難解だった。バックラインの2人のCBにアンカーのアルバレスが降りる形で近づき、最終ラインの中央の組み立ては主に3人。CBのリサンドロ・マルティネスは中盤に匹敵する足元を持っているので、アンカーの代わりに彼が持ち上がる形もアリである。

 左サイドはSBのブリントは比較的低い位置ではビルドアップに関わらずやや前方にスライド、内側に絞ることもある。同サイドのグラフェンベルフは後方からサポートを行うために下がったり、大外に流れることも。SHのタディッチも含めインサイドでもアウトサイドでもプレーできる選手の集まりなので、左サイドは自由度が高い。

 右サイドは左に比べると、大外からのカットインという得意な形を持っているアントニーがいる分、役割が分業されているが、それでも自由。アヤックスはサイドを変えながら勝負していくというよりは、人数をかけたサイドを重点的に前後に動かしながら壊していくというスタンスが強い。ラストパスは同サイドでの横方向のパスやドリブルから縦のラストパスに抜け出す形が多く、逆にサイドでの抜け出しをマイナスに折り返す形はあまり見なかったように思う。このあたりはもう少し多くの試合を見ながら判断したいところではある。

 アヤックスはベンフィカの4-4-2を動かしながら前進することにこだわっており、2列目をプレスに引き寄せてから、サイドから進んで攻略するという形がメインのやり方。サイドに人をかけるためにはポジションにこだわらず、逆サイドのIHやアンカーがパス交換に加わったりフィニッシュに向かうことも多かった。

 保持の時間を長くするアヤックスに対して、ベンフィカは後半開始早々にだいぶフラストレーションを溜めていた格好だった。ハードなタックルが多く、ちょっとやけっぱり気味だったように思う。

 だが、終盤まで試合がもつれると徐々にアヤックスのプレスのホールド力が落ちてベンフィカに押し込まれるように。アヤックスの守備の課題はこのマンマークの遂行が難しくなると、一気に強度が落ちること。特に最終ラインには常時CLクラスのFWを同数で跳ね返すほどの安定感はそこまでないので、さらされる機会が増えると厳しくなる。

 試合の主導権を握る握力が落ちたアヤックスに対して、ベンフィカは72分にヤレムチュクがゴールをゲット。CKのカウンターからまさしくバックラインの強度が問われる状況でベンフィカに穴をあけられてしまった。

 後半の同点劇で試合は2-2のタイスコアで折り返し。保持で多くの時間を支配したアヤックスに対して、耐えて殴り返すことが出来たベンフィカの粘りは舞台をオランダに移しても発揮されるだろうか。

試合結果
2022.2.23
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
ベンフィカ 2-2 アヤックス
エスタジオ・ド・SLベンフィカ
【得点者】
BEN:26′ アレ(OG), 72′ ヤレムチュク
AJA:18′ タディッチ, 29′ アレ
主審:スラブコ・ビンチッチ

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