Fixture
プレミアリーグ 第16節
2023.12.9
アストンビラ(3位/10勝2分3敗/勝ち点32/得点34 失点20)
×
アーセナル(1位/11勝3分1敗/勝ち点36/得点33 失点14)
@ビラ・パーク
戦績
過去の対戦成績
過去10回の対戦でアストンビラの3勝、アーセナルの7勝。
ビラ・パークでの対戦成績
過去10回の対戦でアストンビラが2勝、アーセナルが7勝、引き分けが1つ。
Head-to-head from BBC sport
- ミケル・アルテタ就任後の3連敗を経て、アーセナルは直近4試合のリーグ戦でのアストンビラ戦に全て勝利。
- 直近21試合のビラのホームでのアーセナル戦勝利は2回だけ。2020年6月と2021年2月のものでどちらも1-0(D7,L12)
スカッド情報
- 数人の選手が出場可能か評価する必要がある。
- 火曜から新たな負傷者はいない。
- ミケル・アルテタは累積警告によりベンチ入り禁止処分。
Match facts from BBC sport
- 1903年と1931年に樹立したクラブレコードに並ぶホームでのリーグ戦14連勝中。最後にホームでポイントを落としたのは2月に4-2で敗れたアーセナル戦。
- 1932−33以来の開幕ホーム8連勝を狙う。
- トップリーグで15試合で32ポイントよりも多くポイントを稼いだのはタイトルをとった1980-81シーズン以来。
- 2023年のプレミアリーグ23勝はアーセナルと同じで、これよりいいのは26勝のシティだけ。クラブ記録の24勝を樹立した1931年に次ぐ成績。
- リードした状況から勝ち点を落としたことがないプレミア唯一のチーム。リードした10試合は全て勝利。
- ウナイ・エメリは就任直後の40試合で25勝を記録したプレミア5人目の指揮官。アーセナル時代は51試合で25勝を記録した(D13,L13)
- オリー・ワトキンスは2023年のプレミアで20得点。1996年にドワイト・ヨークが記録したクラブレコードまであと1得点。
- レオン・ベイリーは直近13試合のリーグ戦で5得点。これは加入直後の2シーズンの合計と同じ数字。
- 公式戦では6連勝中でこの間18得点を決めている。リーグでの唯一の敗戦は11月4日のニューカッスル戦。
- 昨季開幕以降アウェイにおいて最も多くの勝ち点(55)、最も多くの勝利(17)、最も多くのクリーンシート(14)を記録。
- プレミアにおける後半の追加タイムで5つの得点を挙げて、勝ち点4を上乗せした。
- ミケル・アルテタは監督としての149試合で86勝を挙げており、これよりいい記録を挙げているのはペップ・グアルディオラ、ジョゼ・モウリーニョ、ユルゲン・クロップ、アレックス・ファーガソンだけ。
- ガブリエル・ジェズスは58試合のプレミアで得点した試合で無敗。リーグレコード。
- ブカヨ・サカはリーグ史上5番目に若いプレミア150試合を記録した選手になる見込み。
予習
第13節 トッテナム戦
第14節 ボーンマス戦
第15節 マンチェスター・シティ戦
今季ここまでの道のり
予想スタメン
展望
やり直し→急加速が得点力の源
ここ何年もマンチェスター・シティに苦杯をなめ続けている立場からすると、基本的にはシティは勝ち点を落としてくれればくれるだけ助かるというのが正直な気持ちである。しかしながら、ミッドウィークのシティの敗戦に関しては必ずしも手放しで喜ぶことができないというのがアーセナルファンの気持ちだろう。なぜならば、シティが敗れた3日後には自分たちがビラ・パークに挑む立場になるからだ。
今季ここまでリーグ戦では全勝。すべての試合で3得点以上をたたき出してねじ伏せてきたビラはついにシティも飲み込んだ。昨シーズンから数えるとホームでの連勝記録は14でクラブ記録に並んだ。ビラ・パークは立派な要塞になっている。
もっとも、ビラの立場においてもアーセナル戦は一つの関門になる。この記録がスタートする直前の15試合前にビラ・パークで最後に敗れた相手がアーセナル。ここを越えられるかどうかは非常に重要なファクターになるだろう。
アストンビラの今季のフォーメーションは4-4-2。変化をつけるとすれば形ではなく人選。特に多くの選手を使っているのは右のSH。ざっくりいうと起用する選手は3つに大別できる。1つはベイリーのような純粋なWG、2つ目はインサイドでもプレーができるMF。ティーレマンスやマッギンがこれに当たる。そして3つ目はSB。キャッシュの列上げ起用などが該当する。
ただし、これは枝葉の話。誰を使っても大きなプランに変化はない。今季のビラの躍進を支えるのは得点力。34得点はシティに次いで2番目に多い数字である。何といっても相手を自陣に引き付けるビルドアップからの急加速による疑似カウンターが彼らの持ち味だ。
パウ・トーレス、マルティネスを軸に自陣では執拗なまでに横パスを動かし、相手のプレスが焦れて飛び込むのを待つ。そして、中盤に穴が空いたらそこから一気にパスを差し込む。縦パスの受け手になるのはワトキンス。プレミア随一の万能型CFは左右に動く機動力、ボールを収めるスキル、そして類まれなるシュートセンスを兼ね備えており、大きな穴が見当たらない。
ワトキンスへの縦パスは攻め切るための号令だ。ポゼッション型のチームは押し込んでから一休みするケースがあるが、ビラはそうではない。縦パスが入ると、そこからの落としでゴールに直線的に攻めていく。自陣ではゆっくり、敵陣では素早くというのが彼らのスタイルである。
ワトキンスから落としを受ける選手は様々。ディアビ、ベイリーのようなドリブラーの場合はここから仕掛けることができるし、マッギンやザニオーロのようなインサイドで働ける選手も少なくはない。
守備側として厄介なのはドウグラス・ルイスだろう。彼とマッギンはパス交換の流れから列を上げて駆け上がるアクションが非常にうまい。ルイスが怖いのはシュートのパンチ力。ワトキンスに気を取られて中央を空けてしまうと、容赦なくミドルを打ってくる。トーマスの代役として報じられることが多いため、アーセナルファンの中には彼をアンカーでイメージする人も多いかもしれないが、どちらかといえばそこに鎮座するゲームメイカーではなく、ボックストゥボックス型として解放する方がなんぼという選手だろう。
縦パス+ポストで前を向く選手を作り、そこからドリブルもしくはダイナミックなミドルというのがビラの攻撃のパターン。サイドが間に合えば一度大外に展開し、高い位置を取ったSBから早いクロスをワトキンスに合わせる形でもOKだ。
非保持においては4-4-2がベース。バックラインへのハイプレスは多くなく、4-4-2のミドルゾーンで構えることが多い。もしかするとアーセナルのWGにダブルチームはつけてこないタイプのチームかもしれない。
それでも対策は打つ。最終ラインの人数調整をかける役割はカマラが担う。シティ戦ではハーフスペースに抜けるアルバレスについて行ったり、劣勢の時はそもそもハーフスペースに常駐したりなど、彼次第でビラは5バックに変形する。その時に5-4-1になるか、5-3-2になるかは相手次第である。
アーセナル戦ではIHについていく役割をカマラは担うことになるかもしれない。不要と判断すれば4-4-2の一角としてふるまうことができる柔軟性がカマラのいいところ。保持においても右CBの右側に降りることもあるが、この辺りの裁量は彼に一任されている感がある。信頼されているのだろう。ルイスを解放するというところに関してもビラの今の中盤のキーマンは彼だ。
どういうロングボールなら通るのか?
ここまでのビラの負けパターンは大きく分けて2つ。1つ目のサンプルとなるのはフォレスト戦。撤退守備からアウォニイを軸としたカウンターで完勝した。ミドルゾーンからの加速に比べるとビラは撤退守備攻略が相対的には得意じゃないように思える。キャッシュ、ディーニュの大外のクロス精度は悪くはないが、抜け出すためのタメを周りが作ることは必要であり、正対してしまうと停滞感はある。
フォレストは先制点とロングカウンターを縦に籠城戦でアストンビラを封じて見せた。だが、おそらくカラーから行ってアーセナルはこのプランを採用はしないだろう。
どちらかというと参考になるのはリバプール戦かもしれない。この日のビラは4-4-2で硬直してしまい、ボールホルダーにプレスをかけられないまま裏を取られまくって何もできないまま敗れた。1つ目のプランがハマらなければあっさり何もできないこともあるのが今のビラである。ビラ・パークではここまではそうした淡白な顔をのぞかせていないが。
こちらのずっと攻めるパターンの方が踏襲する形としては想像しやすい。だが、プレスに来ないCBから背後を狙うとなると、バウンドしているうちに裏をカバーするマルティネスにストップされてしまうという難点がある。リバプール戦で出し手となったアーノルドはポイントに落とすようなキックがうまかった。
今のアーセナルのCBにこういうキックがうまい選手はあまりいない。シェアとかダンクはうまそう。たぶん、アーセナルで言えばジョルジーニョだろう。だが、ジョルジーニョが本来立つアンカーの位置はアストンビラがタイトに管理しているため、フリーにするのは難しい。
よって、ジョルジーニョはサリバの右に降りてみるのがいいかなと思う。この動きにルイスがついてくるのであれば、降りてくるウーデゴールからショートパスでつないで崩す。ついてこないならば、裏に落とすキックを蹴る。
リバプールの攻略パターンを踏襲するならばこれが一番丸い。ただし、右サイドの変形がいつもと違う形になるという難点もある。形をそのままという前提に立つのであれば、ボールの方向をゴールに向かわせないという手段がある。斜めにボールを蹴ればマルティネスはカバーできない。具体的にはジェズスが右の奥に走るプランは面白いと思う。こういうキックならばライスも得意である。
背後を取られるディーニュはサカとの2択を迫られるし、トーレスがサイドに引っ張られるならばそれはそれでおいしい。ダイレクトにゴールに向かう方向ではないが、インサイドに穴を開けて4-4-2をゆがませるという目的は達成できる。ここからなら崩しの解決策を今のアーセナルは見つけることができると思う。
定点攻撃はカマラのいないところから勝負に行きたい。IHについてくるのであれば、シンプルに走り抜けてどかしてしまうのもあり。空いたバイタルでライスやジョルジーニョがミドルを狙うのも面白い。
非保持においてはワトキンスを抑えられるかが重要なポイントになる。おそらくCB1人では難しい気がする。挟み込むのか、あるいは落としを受けるセカンドボールで負けないようにするかの共有は必要だろう。
ハイプレスの回避能力はかなり高い。即時奪回以外は奪いきるのは難しいだろう。ミドルゾーンでは早めにファウルをして、加速させることは何よりも避ける。警告が出るタイミング次第ではあるが、ファウルで流れを寸断することに躊躇はしないでいい相手である。
12月のリーグ戦は8試合連勝中のアーセナルが連勝記録を伸ばすのか、ビラがアーセナル戦の4連敗を止めて、ホームの要塞化を進めるのか。注目の上位対決になるのは間違いないだろう。