MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 26~ 2022.2.19-2.20

目次

①ウェストハム【5位】×ニューカッスル【17位】

■チームの流れを反映する内容に

 トップ4を2季連続で視野に入れるウェストハムはここにきてやや失速気味。取りこぼしが目立ち、勝ちきれない試合が続いており、勝ち点を思うように積むことができていない。

 ウェストハムと状況が真逆なのがニューカッスル。毎年お馴染みの残留争いに巻き込まれつつも冬の大型補強の追い風も手伝って3連勝。降格争いのライバルの心を徐々に折りつつある。上位で停滞するチームと下位で勢いに乗るチームという好対照の一戦が26節のオープニングマッチだ。

 立ち上がりからボールを握ったのはニューカッスル。CBが開き、GKとシェルビーが菱形を形成する。ウェストハムはこのビルドアップ隊に対して、アントニオとベンラーマの2枚で対応。人数を余らせてボールを持つのを許容する形となった。

 ビルドアップでのスムーズさは段々板についてきた感のあるニューカッスル。以前はサン=マクシマンなしでは前進すら難しかったのだけども、この試合ではシェルビーを起点にボールをスムーズに前に運んでみせた。

 一方のウェストハムは早い攻撃からチャンスを見出す。いつもは困った時にサイドに流れるアントニオだが、この日は序盤からサイドバックに突っ掛ける形でチャンスメイク。その甲斐あってか、クラフト相手にもぎ取ったファウルからのFKでウェストハムは先制する。

 アントニオが最終局面で輝いたウェストハムとは対照的にニューカッスルは撤退するウェストハムのブロックに対抗する術がなかなか見つからない。この部分はサン=マクシマンが欲しいところ。可能性を感じさせるのはぬるっとしたマーフィーのドリブルくらいだった。

 その可能性からニューカッスルは同点に漕ぎ着けられる。仕掛けようとするマーフィーを追い越す形でフォローしたフレイザーがウェストハムの最終ラインを置き去りにしてクロス。PA内の競り合いは混戦になったが、最終的には根性で触ったウィロックのシュートが得点になった。

 タイスコアで迎えた後半。試合はオープンになる。どちらかと言えば、スムーズに前進ができたのはニューカッスル。シェルビーを軸に間延びするウェストハムのDF-MF間に縦パスを通し、前を向く選手から縦に速い攻撃が刺さるようになる。

 一方のウェストハムはアントニオ頼みの前進から脱却できず。彼がサイドに流れることにより、確かにチャンスは生まれているし、彼自身のアシスト能力も確かに高い。それでもチームのナンバーワンゴールゲッターがPA内から遠ざかってしまう機会がやたら多いのは気掛かりである。

 オープンになった後半はどちらも決定的な得点を決めることができず。内容的には上昇気流に乗っているニューカッスルの方がやや上という感じか。ウェストハムはまたしても足踏み。消化試合数を考えればCL出場権争いのレースは徐々に厳しい様相になってきた。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
ウェストハム 1-1 ニューカッスル
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:23′ ドーソン
NEW:45’+1 ウィロック
主審:クリス・カバナフ

②アーセナル【6位】×ブレントフォード【14位】

■悪い流れを一足先に止めたアーセナルがダブル阻止

 レビューはこちら。

 前節、ようやくリーグ戦の連敗を5で止めたブレントフォード。とはいえ、内容はスコアレスドロー。できれば勝利で苦しむシーズン後半戦の活路を見出したいところ。今節の対戦相手は一足早く公式戦で勝てない苦しみから脱することができたアーセナルである。

 開幕戦に続いた勝利でアーセナル相手にシーズンダブルを決めたかったブレントフォードだったが、この試合ではかなり厳しい立ち上がりからの展開となった。試合を支配したのはアーセナル。ボールを握るのはもちろん、ゴールに迫る機会も十分に確保。サイドの攻撃が機能しブレントフォードを守備に奔走させる。

 アーセナルの選手は軒並みパフォーマンスが良かったが、今季ここまでの出来と比較して良かった選手はセドリックだろうか。開始から高い位置を積極的に取ることで、同サイドのサカやウーデゴールをフォロー。逆サイドからのボールの引き取り役という黒子としての働きも十分。サイドを変えるキックも備えており、これまでの保持の局面での仕事と比べてもこの日は高い水準の仕事をこなせたと言っていいだろう。もう1人、パフォーマンスが良かったのはラカゼット。これまでの試合に比べるとより、ゴール側の仕事に意識を向けたアクションが多かった。

 一方のブレントフォードは自陣に押し下げられたことでなかなか前に進むことができない。ムベウモは高い位置でボールを収めることができず、カノスやヘンリーなどWBがクロスを上げる機会を確保することができない。

 というわけで後半、ブレントフォードはハイプレスを解禁。積極的にボールを奪いに動き出していく。ところが、アーセナルはこのハイプレスに見事に対応。前半は高い位置で背負う役割をこなしていたラカゼットはプレス回避に動くことで起点となり、スミス・ロウの先制点をお膳立てすることに成功。ブレントフォードの反撃の仕掛けを跳ね返して見せた。

 先制した後もブレントフォードのだらっとしたペースに付き合ったアーセナル。殴り合いになっても勝算があると踏んだのだろう。そして、そのアーセナルの賭けは結果的に正解。79分のサカの追加点を無理矢理にでも奪い取ったことで、最終盤のノアゴールの得点が致命傷にはならなかった。

 メンバーが揃い、2月にようやく上昇気流に乗っかってきたアーセナル。2022年初勝利を連勝でつなげ、CL出場権のポールポジションを奪いにいく。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
アーセナル 2-1 ブレントフォード
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:48′ スミス・ロウ, 79′ サカ
BRE:90’+3 ノアゴール
主審:ジョナサン・モス

③アストンビラ【12位】×ワトフォード【19位】

■手放された圧倒的展開をモノにした2人のエース

 立ち上がりからボールを保持したのはホームのアストンビラ。安定した保持で試合の主導権を握る。AFCONから帰還した主力がようやくフィットしてきたワトフォードは両翼にデニスとサールを起用。ホジソン政権になってからはSHにはクツカやクレバリーなどのMF色の強い選手を起用してきたが、さすがにデニスとサールが揃うならば、彼らが第一人者ということだろう。

 だが、非保持においては彼らの存在は足枷になる。サイドを変えるアストンビラの大きな展開に対して、逆サイドのSHの戻りが遅れる。そのため、どうしても深い位置まで攻め込まれる機会が多いワトフォード。最終ラインが戻りながらスライディングで体を張って攻撃をブロック!など、非常にギリギリなシーンが目立つように。アストンビラは右のキャッシュのオーバーラップが攻撃の厚みをもたらす後押しになっていた。

 ただ、守備のデメリットが攻撃で十分メリットとして返ってくるのがデニスとサールのWGである。正直、ワトフォードの攻撃は連携もへったくれもないのだが、少し前まではデニス一択だった単騎で勝負できるアタッカーにサールが加わったことでだいぶ選択肢が増えた印象。1+1=2以上の何かを生み出しているわけではないが、2+2=4でも絶対値的には問題はないだろう。アストンビラに反撃することはできていた。

 後半、アストンビラはポゼッションで引き続き殴り続ける展開に。加えて、サイドの守備を強化。IHとSBでデニスとサールを完全にサンドするような守備でカウンターに移行する形も整備し、ワトフォードのゴールに迫っていく。しかし、とにかくこの日のアストンビラはシュートが枠に飛ばない。展開的には圧倒的だったアストンビラだったが、シュートの精度だけがついてこない。

 そうこうしているうちに反撃の頻度が上がってくるワトフォード。56分に完全に抜け出すチャンスを生み出すと、アストンビラが攻撃的なタレントを増やしたことでロングカウンターからのチャンスを得られるようになった。ビラのパンチが大振りになってきたところで、ついにワトフォードにその時がやってくる。

 決めたのはやはりこの2人から。右サイドからサールのクロスにデニスが合わせる形でついに先制点をゲット。ホジソン政権初めてのゴールは、ワトフォードに監督交代後初めての勝ち点3をもたらす殊勲弾。攻め切れないアストンビラを尻目に、2人のアタッカーを軸に反撃成功したワトフォードが劇的な完封勝利を決めて見せた。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
アストンビラ 0-1 ワトフォード
ビラ・パーク
【得点者】
WAT:78′ デニス
主審:ロベルト・ジョーンズ

④ブライトン【9位】×バーンリー【20位】

■最終ラインの欠員を埋めるスキルが展開を分ける

 ブライトンはバーンリーに合わせた4-4-2を選択。噛み合わせるような形での布陣でこの試合に臨むこととした。おそらくであるが、これは非保持でのマッチアップをはっきりさせたかったからだろう。保持ではブライトンは積極的にズレを作る方向性で試合を進めようとしていた。

 CBは比較的開き、その間にCHの一角であるビスマが受けに落ちてくる。アリスター、モデルは比較的中央に絞るような形で、大外はSBが担当することが多かった。システムを可変させながらズレを作って前進させていく。これがブライトンの狙いだったように思う。

 一方のバーンリーは守備で相手に噛み合わされている上に、保持で相手をずらしながら動かしていくタイプではない。というわけで目の前の相手を剥がすしか打開策が見当たらない。

 だが、バーンリーはその限られた打開策である対人デュエルで活路を見出すように。特に存在感があったのが新加入のベグホルスト。9番として相手を背負いながらロングボールを収めることで、バーンリーの攻撃を押し上げる強力な武器になっていた。

 他にも中盤ではマクニールなど目の前の相手をドリブルで剥がせる機会を活かせるメンバーが。間延びしたブライトンの中盤においては対人はバーンリーに軍配。ドリブルで前に運ぶ機会を作ることができていた。すると、先制点を決めたのはバーンリー。レノンとロバーツという右サイドの縦関係からクロスに合わせたのはベグホルスト。新エースの加入後初ゴールで一歩前に出る。

 ここからはバーンリーにとってはレアなゴールショー。ベグホルストのキープから相手の陣地に穴を開けると、最後はブラウンヒルが得点。前半の内に追加点を取って試合を決める。

 後半は6バック化して試合を閉じにかかるバーンリー。ブライトンはサイドから壊しにかかるべくマーチとトロサールを投入して、突破を狙うがバーンリーの内側を動かすことはできない。この日はタルコウスキが欠場することでコリンズが代役に入っていたのだが、とてもうまく違和感なくこなしていた。中盤のプレスバックも早く、ブライトンのシュートをことごとくスライディングでひっかけていた。

 一方のブライトンは間延びした中盤に加えて、最終ラインが苦戦。ベグホルストだけでなく、途中から出てきたジェイ・ロドリゲスにも背負われてしまっており、ダンクやウェブスターの不在の影響の大きさを感じさせることに。

 最終ラインで欠員がでた両チームだったが、結果は両極端。徐々に堅守が板についてきたバーンリーが守りの要の欠場をモノともせず、久しぶりの快勝を果たした。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
ブライトン 0-3 バーンリー
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BUR:21′ ベグホルスト, 40′ ブラウンヒル, 69′ レノン
主審:ケビン・フレンド

⑤クリスタル・パレス【13位】×チェルシー【3位】

■ルカクの重力を活かした決勝点

 今節2つ目のロンドンダービーは両チームとも普段とは異なる装いでの戦いとなった。もっとも、ホームのクリスタル・パレスにとっては仕方のない事情もある。なぜならば、今季のチームの核と言えるギャラガーはレンタルの契約条項の関係で出場が不可。残念ではあるが、チェルシーに彼を借り受けていなかったらパレスはもっと下の順位なので文句は言えないという感じである。

 一方のチェルシーは4-3-3にトライ。IHにプリシッチを組み込み、最終ラインのメンバーも目新しい並び。CL前に少し苦しいやりくりを強いられている感じのメンバー構成となった。パレスはチェルシーのビルドアップに対しては、ある程度持たせながら。WGがCBとSBの中間ポジションを取り珍しくトップ下に入ったオリーズはアンカーのジョルジーニョを監視する。

 というわけでチェルシーはサイドから前進を狙う。WG、IH、SBのトライアングルでの崩しを徹底しており、ルカクは中央から動かないことも決まりになっている感じ。パレスの守備陣もチェルシーがそこまで人数を欠けていないし、同数でも守れる空気感だったので、最終ラインをスライドさせないまま守っていた。その分、ルカクのいる位置にパレスのDF陣が寄せられているのは面白かった。重力が働いているみたい。

 パレスはカウンターが主体。トップのザハがサイドに流れることで上がったSBの裏から最終ラインを押し上げる。そこに2列目の3人が入り込んでくる形でチャンスメイクを行う。チェルシーも細かいパスワークよりも、ハフェルツへのロングボールで大外から一気に押し下げる形の方が聞いていた感じ。そこから大外へのクロスやマイナスへのグラウンダーからチャンスメイクを行っていた。

 どちらのチームも前からのプレスもそこまで激しくなく、攻守の切り替えが多い展開ではなかったし、撤退守備を崩せる感じもしなかったので、全体的にもっさりした試合の流れに。前線のプレスの威力がさらに下がった後半は前半以上に重い展開に。チェルシーはWGのプレスが効かなくなり、パレスのSBから剥がされていたし、パレスはビルドアップでチェルシーのIHを下ろす形に対して有効な手立てを見出すことができなかった。

 そんな中で試合を決めたのはルカクの存在を活かす形。オフサイドではあったが抜け出しからツィエクがネットを揺らすと、88分には正真正銘の先制点。ツィエクがフリーになったのはルカクに2人のDFが引き寄せられていたからこそ。CL前でテンション的にも難しい試合だったが、終盤にクロスから先制点を奪ったチェルシーが強かに勝ち点3を持ち帰ることに成功した。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
クリスタル・パレス 0-1 チェルシー
セルハースト・パーク
【得点者】
CHE:88′ ツィエク
主審:デビッド・クーテ

⑥リバプール【2位】×ノリッジ【18位】

■60分の奮闘はあっさりとなかったことに

 今シーズンの両チームの出来を考えれば、当然リバプールのワンサイドゲームになると考える人が多いはず。だが、立ち上がりは試合がやたら落ち着かず。オープンな展開から両チームが共にゴールに迫る形を作ることができていた。

 先に得点のチャンスを見い出したのはノリッジ。中盤からセカンドボールを拾いそこから縦に一気に進む。この試合はリバプールのバックラインのラインコントロールが怪しい場面があり、背後をつかれると意外とあっさり危険なシーンを作られることもあった。特にSBに入ったゴメスはラインの高さを決めるのに苦しんでいた印象だった。

 一方のリバプールは相手を横に揺さぶりながらチャンスを作る。プレッシャーのかからない相手のMFラインの手前から横のドリブルを行い、ライン間に縦パスを通す。そこから大外に流してクロスを入れて勝負!と言う形。プレスをかけてこない相手のMFラインの消極的なところをついてのチャンスメイクとなった。

 大外からはサラーがゴリゴリ迫ってくる恐怖と戦うノリッジ。途中からノリッジはノルマンを最終ラインに吸収させる形で5バック化。なるべく早い段階で大外の選手を止めて、なんとかカバーに走る。だが、試合は時間が経つにつれてリバプールがボールを持つようになり、同時に主導権も握るように。

 しかし、後半早々に先手を取ったのはノリッジ。ロングキックからの陣地回復で一気にリバプールゴールを陥れる。アリソンにとっては不運な跳ね返りでシュートをゴールにすっぽり入れられてしまった感じである。

 だが、リバプールはすぐさま反撃に打って出る。プレス強度とカウンターからのスピード感をアップし、ノリッジを追い込んでいく。システムも4-4-2変更し、攻撃的な色を濃くする。

 そんな交代の結果が出たのは64分のこと。ヘンダーソンからサイドに展開し、攻撃のスイッチを入れると最後はマネがバイシクルでゲット。同点に追いつくと、今度はアリソンのロングフィードからサラーが追加点。ノリッジの60分強の奮闘をあっという間に台無しにして見せた。

 あっという間に試合を握られたノリッジはさすがに意気消沈。ここからは完全なリバプールのゲームだった。仕上げは新加入のディアスのダメ押し弾で終わってみれば3-1の完勝。一瞬のキレ味でノリッジを置いていったリバプールが首位を追撃する3ポイントを重ねることに成功した。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
リバプール 3-1 ノリッジ
アンフィールド
【得点者】
LIV:64′ マネ, 67′ サラー, 81′ ディアス
NOR:48′ ラシツァ
主審:マイク・ディーン

⑦サウサンプトン【10位】×エバートン【16位】

■終始優勢だった4-4-2の激突

 ブライトン×リーズと同じく、4-4-2同士の激突。同じフォーメーション。それもプレミアらしい攻撃色が強いスタンスを好む両チーム。というわけで立ち上がりからきつめの殴り合いでの開幕となった。

 先に襲い掛かったのはアウェイのエバートン。セカンドボールを拾ったところから、左サイドのゴードンにボールを渡し、そこからエリア内に進んでいく形。後方からの前進のパターンを作るというよりはとりあえず前にボールを放り込むスタンスである。

 一方のサウサンプトンも縦に早い展開からチャンスを見出す。カウンターの旗手になったのはウォーカー=ピータース。対面の相手を1枚剥がすことがしながらスルスル進むことができていた。

 互いにチャンスを掴んだ序盤の両チームではあったが、徐々にクオリティの差が見えるように。苦しんだのはアウェイのエバートン。後方からボールを持ちながらの前進には苦労。右のSHのイウォビが左に流れてきたりなど、数を揃えてのアプローチを行ってはいたが、なかなか出口を見つけることができていなかった。

 後方からどこからボールを出そうか?と考えている様子のファン・デ・ベークは持ち味がなかなか出てこない。ボールサイドへの絶え間ないオーバーロードが印象的だったアヤックス時代とは全く違う使われ方をしており、本人も適応には苦労している様子。被カウンター時のフィルター役という柄でもないので、できれば保持で存在感を見出したいところだが。

 保持に関しては連携がサウサンプトンの方が成熟。オフザボールの動きが多く、裏抜けで攻撃の出口を作れていたし、ブロヤは背負ってよし裏に抜けと相変わらず万能な起点作りができていた。

 相手に対する戻りもエバートンは遅くなってしまっていたので、素早いカウンターは刺さる。40分のロメウの魂こもったプレスバックを見ると、この分野でもサウサンプトンの方が一段上だったと言えるだろう。

 後半、ギアを一段上げてもう一度トランジッションの仕掛け合いに挑んだエバートン。だが、優劣の形勢はひっくり返らず。52分にゴメスのところをプレスで引っ掛けると、アームストロングが先制点を決める。このゴールで、後半頭にエバートンから売られたケンカに勝ったサウサンプトン。後半も優勢に試合を運び、エバートンに反撃の隙を与えない。仕上げとなったのはいぶし銀のシェーン・ロング。右のリヴラメントのオーバーラップから試合を完全に決める追加点を押し込んだ。

 90分を通して主導権をエバートンに渡さなかったサウサンプトン。順位表通りの完勝で4-4-2同士の正面衝突対決を制した。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
サウサンプトン 2-0 エバートン
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:52′ S.アームストロング, 84′ ロング
主審:アンディ・マドレー

⑧マンチェスター・シティ【1位】×トッテナム【8位】

■少ない機会を見事な仕上げに昇華しダブル達成

 チームとしての陣容の整い方も前年の順位もシティの方が上、だが勝利を挙げたのはエース不在のトッテナム。というのが開幕戦のこのカードの成り行きだった。チーム史上初めてのCLファイナルの切符を鼻先で掠め取られたあの日から、シティにとってはトッテナムはうざったい邪魔者になっている。今節の対戦においても状況は同じ。無敗ロードを突き進むシティはリーグ戦3連敗という下げ潮のトッテナムと相対することになる。

 ヌーノは前の六角形を使いながら彼らの使いたいピッチ中央を封鎖してのショートカウンターの設計に取り組んだ。

 だが、コンテはヌーノとはやや異なるやり方でシティに対することになる。ケインに次いで高い位置を取るのはCHのベンタンクールとホイビュアの2人。SHのソンとクルゼフスキは低い位置まで下がって自陣を埋める役割を託される。

 そうなった時の懸念点は当然敵陣に侵攻できるの?という点である。それが可能であることを証明したのが開始早々のカウンターである。よく見るドラマの再放送くらい既視感のある、ケインのタメからのソンの抜け出しというシティ戦の鉄板パターンで決定機を作ると、最後の仕上げはクルゼフスキ。抜擢された新戦力の初ゴールでいきなりトッテナムが前に出る。

 シティはここからトッテナムの5-4-1のブロック崩しに挑む。立ち上がりはベルナルドを中央、右にスターリング、左にフォーデンという最近では珍しい並びにトライしたが、前半の早い段階で左からスターリング、フォーデン、ベルナルドとしっくりくる並びに戻した。大外からWBのポジションを動かしながら壊していくのがシティの強さだが、この日のトッテナムはWBにSHを重ねる2段構えで大外をプロテクトしていく。それゆえ、大外を1枚ずらしてのニアのスペースを開けるやり方は通用しにくい。やるならば全てを剥がし切るか、大外からピンポイントで放り込むかのイメージである。

 前者の部分で効いていたのはカンセロ。大外からトッテナムの警戒が手薄なエンドライン側からのドリブルで敵陣に迫っていく。そして、同点ゴールを生んだのは後者のパターン。スターリングのクロスにぎりぎり対応したロリスのこぼれ球をギュンドアンが押し込んだ。

 後半、より支配的になったシティ。トッテナムは攻めに出る機会を得ることができない。だが、前半に比べると単調なクロスが増えた感があり、トッテナムは跳ね返しが容易になってしまっている印象だった。

 そして、トッテナムは少ない保持の機会も目一杯生かそうというスタンス。ボールを持てた時はプレスも回避しながら押し上げる場面もあったし、カウンターにも枚数をかけられるように。少ないチャンスから生まれたケインのゴールはいずれも流れながらSBに競りかけるような形でクロスに合わせる状況。自陣深くの守備のタスクをこなしながら敵陣に出ていくことができたホイビュアやクルゼフスキの勤勉さは素晴らしかった。

 後半追加タイムの劇的な同点弾すらひっくり返されて勝ち点に結びつけられなかったシティ。これでトッテナムに対してはシーズンダブル。前半戦は自軍への加入騒動で不在だったケインに2得点を決められるというおまけつきでシティの無敗記録は止まることになった。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
マンチェスター・シティ 2-3 トッテナム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:33′ ギュンドアン, 90’+2(PK) マフレズ
TOT:4′ クルゼフスキ, 59′ 90’+5 ケイン
主審:アンソニー・テイラー

⑨リーズ【15位】×マンチェスター・ユナイテッド【4位】

■ポグバの優位は絶対!

 マンチェスター・ユナイテッドにとってはCLを控える難しい日曜のゲームとなったが、ターンオーバーは最小限。右のWGにリンガードを入れたこととSBにワン=ビサカを久しぶりに戻したこと以外はスタメンの入れ替えはなし。

 立ち上がりからリーズの土俵にガッツリ乗っかった感のあるマンチェスター・ユナイテッド。マンマークの守備に対して、オフザボールの動きを増やしながら相手を振り切ろうと動き回る。別格だったのはポグバ。彼だけは特に動き回ることをしなくても、ボールを受けて相手を背負って剥がしてを繰り返すことができる。去年もそうだったが、1人ずつしかかかってこないリーズの守備ではポグバを止めることはできない。

 躊躇なく長いボールを蹴るマンチェスター・ユナイテッドはボールの捨て方も安定しており、リーズは簡単に前進を許してしまう。ボールを保持する側に回っても、後方から繋ごうと試みることはするものの、ラフィーニャの不在で前線の脱出口が見当たらず。ジェームズの孤軍奮闘の抜け出しにかけるしかなかった。

 そんなリーズに対して、前半から点を重ねるマンチェスター・ユナイテッド。セットプレーからマグワイアが先手を奪うと、前半終了間際にはリンデロフの持ち上がりからチャンスメイク。最終ラインの持ち上がりを止めるのが後手になったリーズを尻目にブルーノ・フェルナンデスが追加点を決めて見せた。

 ハーフタイムに交代枠を使い切り、前線の補充に舵を切ったビエルサ。攻撃的な布陣で残りの45分に臨むことを決める。これに答えたリーズの面々。早い攻撃と高い位置のプレスから勢いを取り戻す。ハーフタイムに雨が続いたこともあり、長いボールの転がりが悪くなったマンチェスター・ユナイテッドは後半に推進力を見いだせなかったこともリーズにとっては幸運だった。

 53分に飛び出したロドリゴのクロス性の追撃弾から、直後の54分には左サイドから上がったクロスにラフィーニャの同点弾までは流れるような展開。後半頭に勝負に出たビエルサに選手が応えてみせた。棒立ちのユナイテッドの守備陣はグラウンダーのボールに誰も触れることなく、ファーのラフィーニャまで横断を許してしまった。

 この勢いのまま押し切りたいリーズ。だが、マンチェスター・ユナイテッドも前線にフレッシュなメンバーを入れて、局面で発生している主導権を握りにいく。選手交代で局面勝負に再び活路を見出したマンチェスター・ユナイテッド。まさしくこれを求めていたんだ!というフリーランからゴールを決めたフレッジの活躍で3点目を得ると、同じく交代で入ったエランガが追加点。

 交代枠を使い切ったリーズにはこれ以上の打つ手はなし。ポグバを初めとして局所での主導権を優位に進めたマンチェスター・ユナイテッドが乱戦を制した。

試合結果
2022.2.20
プレミアリーグ 第26節
リーズ 2-4 マンチェスター・ユナイテッド
エランド・ロード
【得点者】
LEE:53′ ロドリゴ, 54′ ラフィーニャ
Man Utd:34′ マグワイア, 45’+5 フェルナンデス, 70′ フレッジ, 88′ エランガ
主審:ポール・ティアニー

⑩ウォルバーハンプトン【7位】×レスター【11位】

■手堅い前半の勢いを維持し、勝ち点3確保

 立ち上がりからボールを持ちたそうだったのはアウェイのレスター。ウルブスの5-3-2で時間を与えられるSBからボールを運ぼうと試みる。左のトーマスはデンドンケルによって早い段階で捕まえられることが多かったが、右のリカルド・ペレイラは比較的時間をもらいながら進むことができていた。

 だが、この日のレスターにはマディソンもヴァーディも不在。ここから先の定点攻撃のパターンが見つからず。どちらかといえば、早い攻撃の方が可能性を感じさせる部分があった。

 しかし、早い攻撃に活路を見出していたのはウルブスも同じ。特に右サイドのデンドンケルとセメドの出足は十分で、レスターの左サイドの裏をつくようにカウンターから反撃することができていた。サイドの裏をついて、相手の中央の選手を引っ張り出すことができたら、今度は中央を経由してサイドチェンジ。ラインを押し下げてフィニッシュに向かう。

 先制点もこの形。レスターを左右に振り回してラインを押し下げた後にネベスがミドルを叩き込んで見せた。ウルブスは速攻での結果を試合開始早々に出す。遅攻においてもポデンスが絶好調。ライン間のキープでサイドでの切り返しを増やしてのドリブル突破等のアクセントをつけることでウルブスの攻撃に味を加えていた。

 レスターの攻撃に対してもポデンスを下げる5-4-1気味に変更することで守備の手当てをしたウルブス。リードを奪ったことでだいぶ手堅い試合運びを見せる。だが、レスターはウルブスの撤退守備に対して見事な攻略法を披露。40分にオルブライトンの裏抜けを見逃さなかったティーレマンスからスルーパスが通り、ウルブスのラインを一気に下げると最後はルックマンが仕上げ。同点に追いつく。

 迎えた後半。タイスコアの両チームは得点を取りに行く。前半よりも保持に力を入れるようになったウルブスはヒチャンの投入で3-4-3にフォーメーションチェンジ。攻撃的になった両チームのなかで結果を出したのは前半から好調だったポデンス。左サイドからのアイト=ヌーリの侵入でラインを押し下げたところで、空いたバイタルからポデンスがミドルを決めて一歩前に出る。

 勝ち越しゴールを挙げたウルブスに対して、レスターもマディソンを投入して応戦。3-4-3にチェンジしたウルブスに中央にボールを差しやすくなったことを利用し、マディソンで差し返す所存だった。

 だが、レスターの終盤の攻撃は実らず、ウルブスは逃げ切りに成功。より手堅い前半を過ごしたウルブスが後半にリードを奪い、勝ち点3を確保した。

試合結果
2022.2.20
プレミアリーグ 第26節
ウォルバーハンプトン 2-1 レスター
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:9′ ネベス, 66′ ポデンス
LEI:41′ ルックマン
主審:クレイグ・ポーソン

今節のベストイレブン

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次