MENU
カテゴリー

「Catch up UEFA Champions League」~Round 16 1st leg part 1~ 2021.2.15-2.16

目次

①スポルティング×マンチェスター・シティ

■チャンス創出博覧会

 下馬評でいえば圧倒的にマンチェスター・シティが優勢。アンダードックのスポルティングが優勝候補の胸を借りるという構図の一戦だった。

 内容を見ればスポルティングはシティに対する対策を準備していたように思う。最終ラインでは数的優位を作り、シティのプレスの余ったところからファーにボールを展開する。高い位置からプレスにくるシティ3トップと3センターの手の届かない逆サイドの大外にフィードを飛ばす。これによって、シティの最終ラインとスポルティングのアタッカー陣が対峙する機会を作ることができる。

 シティのプレスの勢いのところをうまくいなし、前進の機会をつくる。そこまではスポルティングは良かった。だけども、そこから先に敵陣に入り込んで攻略するきっかけを掴めない。要は個人で爪痕を残せるアタッカーがスポルティングにいなかったというイメージである。

 前進はされたものの、食い止めることができたシティ。保持においてはやはり存在感を発揮する。5-4-1で迎え撃つスポルティングだが、ワントップのパウリーニョがシティのバックスを捕まえきれないと後手に回る。シティはパウリーニョを外し、スポルティングのシャドーにSBのマークを優先するか、それともCBのプレスに出ていくのかの判断を強いる。

 スポルティングがマクロな構造的な動きを活用しての攻略だとしたら、シティはこうしたミクロのズレを作るのが上手だった。同サイドでのズレを作ったらここから先はお手の物。外循環から裏に抜けていく形で相手の最終ラインを下げることで、マイナスにスペースを作り出すという形から先手を奪う。

 ここからはシティのチャンス創出パターンの博覧会みたいな状況だった。2点目のベルナルドのゴールはセットプレーからの流れでスーパーという片づけてしまうのもアリだが、そこからはプレミアファンにはお馴染みのシティの得点パターンの連打。

 ファーのマフレズからズレを作った3点目も相変わらずのクオリティだし、WB-CB間の裏抜けを囮にCB-CB間の裏抜けというニアの裏抜けの二段構えであっさりとマイナスのスペースを作り出したのもさすがである。最終ラインからできたミクロなズレを前に送るという意味では今のシティの右に出るものはいないはずである。

 スポルティングは健闘したものの、前線のプレスに人数をかける勇気がなかったことでボールを取り返す手段が見つからなかったのが痛かった。そのため、早い時間の先制点が彼らにとっての重石になってしまった印象である。

 攻めでは数手先をいかれ、守りでは耐えきれなかったスポルティング。マンチェスターでのリマッチではシティにどの角度から噛み付くか。1st legよりリスクもリターンも増した策を講じてくるはずのスポルティングに対して、グアルディオラがどういう対策をとるかが2nd legの見どころになるだろう。

試合結果
2022.2.15
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
スポルティング 0−5 マンチェスター・シティ
エスタディオ・ジョゼ・アルヴァラデ
【得点者】
Man City:7′ マフレズ, 17′ 44′ ベルナルド, 32′ フォーデン, 58′ スターリング
主審:スルジャン・ヨヴァノビッチ

②パリ・サンジェルマン×レアル・マドリー

■内容に結果を見合わせたムバッペ

 CLの再開を告げるのはRound 16屈指の好カード。パリの地で優勝候補と目される2チームによる激突で3カ月に及ぶサバイバルがスタートする。

 まず目についたのはパリのプレッシングのスタンスだ。基本的にはプレッシングへの意識は強いのだが、CFの位置に入ったメッシはほとんど強気にプレスにいかずにカゼミーロの周りを浮遊するのみ。その分、両WGがCBにプレッシングをかけるという亜流のプレッシング。ハイプレスただしCFは参加しません!って風情で周りがメッシを追い抜いていく様子はかなり新鮮だった。

 マドリーのボール保持といえば、クロースの左落ちから始まる気配が強いのだけど、パリの守備の基準はマンマーク。クロースがどこに行こうと対面の選手がついていく仕組みになっており、落ちてもフリーになることはできなかった。

 最終ラインには時間を与えてもらえないマドリーはとりあえず前方にボールを蹴るだけ。負傷明けの前線のベンゼマはボールを収めることができず、頼りの綱のヴィニシウスはハキミとそれをフォローするダニーロに監視され続け、ボールをPAまで運ぶことが出来なかった。

 というわけで主導権を握ったのはホームのパリ。2人のCBに加えて3人のCHが5人で後方を形成することが多かった。最終ラインに入れるダニーロは出来る仕事の範囲が広い。前や後ろを構成する人員は流動的。WGが幅を取るケースの時は、SBが下がって、その分CHがPA内に上がってくるケースもあったし、メッシが降りてくればWGがそこに入ってくる役割を担う。

   要は全体のバランスが良ければなんでもOKである。大外レーンはムバッペ、ディ・マリア、ハキミ、メンデスのうちだれが使っても問題はない。そして、誰が使っても突破は見込めるという相手からするとはた迷惑な話。パリが大外で1対1を構えれば、中盤の前よりで守備していたモドリッチが飛んできてハーフスペースを埋めるという非常に慌ただしい流れとなった。

 というわけで剥がされ続けるマドリー。前半の序盤は特にサンドバックのような状態が続いてしまう。1つ違えば危うく大量失点の目もあったはずである。

 猛攻に晒されたマドリーはこのままじゃいけん!と一念発起。モドリッチ、クロース、ベンゼマと稀代の役者たちが根性のキープでボール保持を行うことで回避する。

 だが、プレスを回避したからといって相手の守備網を打開できるかは別問題。撤退してブロックを敷くのが完了したパリに対して今度は攻める手立てがなく、苦戦を強いられてしまう。なお、パリはロングカウンターがあるので、ボールを持たれても問題ない。

 苦しむマドリーは後半早々にハイプレスを敢行し、奇襲をかける。だが、これはむしろパリの前進の手助けに。縦パスを刺すスペースを見つけることが出来たパリは直線的な侵攻で後半早々にクルトワを脅かす。

 マドリーのプレスを鎮圧したパリは前半と同じくワンサイドに持って行くと、サイドのムバッペの突破からPKを獲得。これで試合がようやく動くかと思いきや、メッシのPKはクルトワがストップ。マドリーも譲らない。

 このプレーで流れを変えたいマドリー。ロドリゴとヴィニシウスの両翼にして、スピード勝負を仕掛けたり、アザールを投入してゆっくり攻撃できるポイントを作ったり、ベイルを入れて何とかしてくれと願ったりなどあらゆる策を講じたのだが、いずれもパリを破る解にはならなかった。

 そんなマドリーを尻目にパリはネイマールを投入する。ひどい奴らである。さらに武器を増やして総攻撃を仕掛けるパリに対して、マドリーも攻撃の糸口を探りつつ意地で跳ね返すという構図。

    圧倒的なスタッツを誇りながらドロー決着が現実的な状況になった94分に試合は動く。最後に決めたのはまたしてもムバッペ。裏抜けだけでなく、止まってからの突破も一段凄みを増した感のある怪物は、ミリトンとバスケスの間をこじ開けて右足を振りぬいて見せた。

 圧倒して見せた内容に見合った結果をパリにもたらしたムバッペには賛辞を贈るしかない。対するマドリーはカゼミーロとメンディという2人が出場停止で2ndレグを迎えることに。スカッド的にもスコア的にも内容的にも苦しいマドリーに2ndレグで逆転の目は残されているだろうか。

試合結果
2022.2.15
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
パリ・サンジェルマン 1-0 レアル・マドリー
パルク・デ・フランス
【得点者】
PSG:90’+4 ムバッペ
主審:ダニエレ・オルサト

③ザルツブルク×バイエルン

■終盤に取り戻した貫禄

 CL×ザルツブルクという掛け合わせといえば、かのグループステージでのリバプールとの試合を思い出す。

 日本人としては南野とクロップと邂逅という点でも非常に意味合いが大きかったこの試合では、どんな大きなものがかかった試合でもどんな強大な相手でも怯むことなく自分達のスタイルを貫いたことが非常に印象的だった。

 あれから2年強、舞台はノックアウトラウンド、相手にバイエルンを回してザルツブルクは再び堂々たるパフォーマンスを見せた。ザルツブルクの2トップのプレス隊はバイエルンの3バックに対して、数的不利の状況ではあったが、2トップのボールサイド側ではない選手が中央を横断させない立ち位置をとることで、バイエルンを同サイド側に圧縮する。

 プレッシングにおいてはとにかく捕まえるタイミングに遅れてはならないという原則を守りながら相手に前を向かせない。難しい舵取りを迫られるのはトップ下のアーロンソン。バイエルンのビルドアップに対しては数的不利だが、前に出ていくかサイドにヘルプに出ていくかの選択が非常に難しい。

 バイエルンはビルドアップの中でアーロンソンを自陣側に取り残した状態で前進をするケースは時たま発生していた。バイエルンはザルツブルクの4-3ブロックを晒す状況を作ることはできていたが、そこから先が決まらない。ポストで前を向く選手を作り、そこから裏に一発という形はテンプレ化していたが、この裏へのパスがなかなか刺さらない。

 バイエルンは優位な状況においてもやたら縦に急いでしまうことで、ザルツブルクの慌ただしいテンポに自ら飛び込んで行ってしまっているように見えた。後方に残ることが多かったキミッヒが絡まなければ、どこか急ぎがちになるのはこの日のバイエルンの選手のキャラクター的にわからないではないけども。

 急ぐプレーの精度が伴わなかったバイエルンはチャンスメイクに苦戦する。前半の終盤にはキミッヒ、トリッソを軸に対角パスでグナブリーやコマンが大外で勝負できる状況を整える形を増やしたが、これもザルツブルクのサイドを攻略しきれず。チャンスが作れないまま時計が進む。薄いサイドを作れば崩せそうなものだけど、この日はやたらとクオリティが伴わなかったのは気になる。

 バイエルンの誤算は守備面でも。WBに超攻撃的な選手を起用している影響もあり、3枚のCBでザルツブルクのカウンターを受ける機会が多かった。この3枚のCBは被カウンター耐性が怪しかった。リュカやパヴァールは体を当てられると脆く、ズーレはスピード面で怪しさがある。

 対人スキルで差をつけたザルツブルクは21分にカウンターに成功。パヴァールに先んじて前に入ることができたアーロンソンがアダムにラストパスを決めて先手をとる。攻守にピリッとしないバイエルンはビハインドで後半を迎える。

 後半、バイエルンのボール保持は改善が見られた。最終ラインにおいて、非常に意識的に相手を横に振るようになった。これにより、ザルツブルクの前線の2トップでの横への制限を無効化する。ザルツブルクが横を切る意識が強ければズーレが前に運ぶ。キミッヒが落ちれば代わりにリュカがサイドから運ぶ。と言った具合にザルツブルクのプレス隊に対して動きをつけながら主導権を握るようになった。

 こうして前線を振り回すことで60分にはザルツブルクの運動量は低下。前半は中盤中央で動くスペースがなかったサネは徐々に前を向いてボールを運ぶ隙ができていたし、大外ではコマンのところからザルツブルクの守備にヒビが割れそうになってきた。

 しかし、いい形を作れるようになってもラストパスが決まらないのがこの日のバイエルン。ゴールに迫る形までは進むことができない。ザルツブルクはカウンターから引き続きチャンスを得ることができた後半だったが、リュカやパヴァールは前半よりもカウンター対応に慣れた様子。チャンスの量としては前半には及ばなかった。

 ジリジリした展開の中でバイエルンはギリギリに追いつく。パヴァールのクロスにファーのコマンが合わせて同点に。このシーンではエリアに飛び込んだミュラーがミソ。彼がエリアに飛び込むことによって、ファーのコマンのマークが手薄になった。この試合では3人目の動きを生かした連携があまり多く見られなかったので、バイエルンとしては僅かな連携がガチッとハマった攻撃機会を同点ゴールに結びつけた感じだった。

 最後の最後は貫禄を見せたバイエルン。ただし、例年に比べるとタジタジな時間帯は長く、相手の見せ場がやたら多かった印象。怖気付くことを知らないザルツブルクならばミュンヘンでのリターンマッチで世界を驚かせることができる可能性は大いにあるといえそうだ。

試合結果
2022.2.16
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
ザルツブルク 1-1 バイエルン
スタディオン・ザルツブルク
【得点者】
SAL:21′ アダム
BAY:90′ コマン
主審:マイケル・オリバー

④インテル×リバプール

■これがプレミアの雄

 立ち上がりで内容面で目を見張るものを見せたのはホームのインテルの方だろうか。リバプールは大きな展開と3トップの機動力でインテルをかき乱しながら前進をしたいと目論んでいたはず。

 だが、この目論みはインテルのプレッシングによって阻まれる。2トップは2CB、3センターには3センターと前方からがっちりとマンマークでリバプールのスムーズな前進を阻害する。

 最終ラインは降りていくリバプールの前線に対して強気にチェック。裏を取られる恐怖を感じさせない強気のプレスで、ボールをカットする。動き回るWGに対してはWBとワイドのCBがそれぞれ分担しながらマーク。インテルはとりあえずライン間に出たパスに対しては相手を反転させず、前を向かせるスピードアップを許さない。そうしている間に中盤が戻ってきて挟んで刈り取るというメカニズムだった。

 こうしたマンマークの守備において怖いのは、遅れてプレスに出ていった選手のスペースを使われること。だが、インテルはそうしたことがほぼなかった。WGに気を取られたダンフリーズやペリシッチがリバプールのSBにチェックをかけることを遅れること自体はあった。だけども、周りのカバーリングの体制が整ったところで再度プレスに向かう。1人で飛び出していく隙をリバプールに与えないのはさすがイタリアのチームといったところだろうか。リバプールは自陣からのビルドアップで前を向けず、相手のプレスを引き込んでもその裏のスペースに入り込むことができない。

 インテルはビルドアップの仕組みも面白かった。最終ラインの枚数と構成は流動的。バストーニとデ・フライの2人は確定。GKを挟む形の3枚の場合もあれば、シュクリニアルやブロゾビッチが3枚目を構成することも。一番多かったのはブロゾビッチが入るパターンだっただろうか。いずれにしてもビルドアップに関わるのは3枚のCBと3センターまで。WBはほぼ関わることなく、大外に位置することが多かった。

 リバプールもこれに対してはマンマークのプレッシング。ただ、ブロゾビッチに押し上げられる形で出ていくシュクリニアルによって、生み出されるリバプールのIH裏のスペースを2トップの一角が使うことで前進を狙っていた。攻略法!というまでではないけども、ひとまずは低い位置で捕まらない!という結果を出すことはできた。

 プレッシングでもビルドアップでも思い通りの試合運びとは言えなかったリバプール。だが、インテルが決定的なチャンスを作れていたかは別の話。2トップの抜け出しへの対応はリバプールがほぼパーフェクト。フィフティーの状態で完全にインテルのFW陣を潰すことができていたので、思う通りには行かなくても、ピンチにはならなかった。

 後半、リバプールは強気でプレスに打って出る。けども、インテルはこれに対して明確に策を用意してきた。脱出に使ったのはインテルの左サイド側。前半は流動的だったデ・フライのポジションをここに固定。ビルドアップはハンダノビッチとシュクリニアルの3枚で、高い位置に出ていくのをバストーニに変更。左サイドにCBを重ねることでサラーの前後を挟み撃ち。ここから安定して前進が可能に。

 インテルはリバプールを自陣に誘き寄せても、プレスには引っかからず。CHとCBの枚数調整で解決策を見出していたのを見て、対応力の高さも感じることができた。2トップのスピード不足は変わらないので、チャンスメイクはWBが抜け出した時。インテルがゴールに迫ることができたのはペリシッチかダンフリーズが抜け出した時だった。

 しかし、先制したのはリバプール。右サイドのサラー、アレクサンダー=アーノルド、ケイタというお馴染みのトライアングルのコンビネーションを使って同サイドの裏に抜け出すと、セットプレーからフィルミーノがゲット。さらには8分後、同じくセットプレーの流れからサラーが押し込んで追加点をもたらす。

 試合を通してアイデアや適応力を見せたインテルは素晴らしかったが、それだけにインテルにチャンスを許さずにセットプレーでしたたかに得点を重ねたリバプールの強さが際立った試合と言っていいだろう。プレミアの雄の強さに屈したインテルは2点という重いビハインドを背負って、アンフィールドに乗り込むことになる。

試合結果
2022.2.16
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
インテル 0-2 リバプール
スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ
【得点者】
LIV:75′ フィルミーノ, 83′ サラー
主審:シモン・マルチニャク

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次