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「Catch up Premier League」~Match week 23~ 2022.1.21-1.23

目次

①ワトフォード【17位】×ノリッジ【18位】

■それぞれの体の張り方で降格圏脱出

 エバートンを撃破し、奇跡の逆転残留に向けて勢いに乗るノリッジ。今節の相手は残留争いの直接のライバルとなるワトフォード。いわゆるシックスポインターとなる。

 前節のノリッジの良さはポゼッションの仕組みが改良したとかではなく、ポゼッションの逃げ場としてロングボールを蹴り込んだ前線の選手がこれまでよりも収まったことで起点ができたということに起因。この試合においても、前線のキープ力は健在。特に右のサージェントをターゲットにしたロングボールを積極的に蹴ることでプレスに引っかかるのを回避する。

 困った時の逃げ場をはっきりしておくのは大事。引っ掛けてのショートカウンターからピンチを迎えるよりは遥かにマシである。右のサージェントがキープできることで、同サイドのSBであるアーロンズの攻め上がりも機能するように。ただ、前半の中頃からは保持の機会を作るのに苦労した分、主導権を握るには至らなかった。

 一方のワトフォードはノリッジの4-4-2に対して4-3-3でズレを作ることでフリーマンを中央で作る。この中央のフリーマンから両サイドにボールを振る。そして、ここから両サイドの三角形で壊すというルーティンでエリアに迫っていく。

 前半途中からはワトフォードがペースを握るが、クロスが非常に単調。ノリッジのCBが簡単に跳ね返せるシーンが頻発。中央でフリーマンを作るムーブから、左右に振ることはできてはいたけども、ストロングである左サイドを持ってしてもクロスに工夫が見られなかったのは残念。左サイドからのデニスのカットインもちょっと微妙だった。

 後半の頭、一進一退の状況を打破したのはアウェイのノリッジ。前線は相手を背負って体を張ることが第一!ということで、割を食いがちだった裏抜け職人のプッキだったが、この場面ではプレスの二度追いからチャンスメイク。プッキの粘りから最後はサージェントが押し込んで先制する。初の枠内シュートをノリッジが得点に結びつけて見せた。

 先制点の場面のようにプレスがキツくなったノリッジに対して、ワトフォードは徐々に余裕を持ってのサイド攻略ができないように。ボールを失う機会が増えてしまう。ペースを握ったノリッジはWG→WGのクロスで追加点。サイドを制したラシカから再びサージェントが決める。

 ここからデニスが退場、さらにはオウンゴールによる3失点目と悲劇が続くワトフォード。10人の上にライバルに大敗と脱力感を伴う試合でノリッジと入れ替わるように降格圏に足を踏み入れることとなった。

試合結果
2022.1.21
プレミアリーグ 第23節
ワトフォード 0-3 ノリッジ
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
NOR:51′ 74′ サージェント, 90+2′ クツカ(OG)
主審:マイク・ディーン

②エバートン【16位】×アストンビラ【13位】

■崩せるシチュエーションの幅が決め手

 降格圏の足音が迫ってきたことで、ベニテスの解任に踏み切ったエバートン。ダンカン・ファーガソンの2回目のリリーフの初陣はエバートンがベニテスの少し前に追い出したディーニュの新天地であるアストンビラとの一戦となった。

 立ち上がりからエバートンは4-4-2で積極的なプレッシングを見せる。相変わらずコンパクトで組織的ではないが、中盤の出足は好調。アストンビラのバックスから時間を奪いつつ、ショートカウンターのチャンスを伺うことができていた。

 だが、奪ってからの攻め切るところで言うとエバートンの出来には不満が残る。アタッカー陣のコンビネーションのところがうまくいかず、シュートチャンスまでは辿り着くことができない。ロングカウンターのところからドゥクレのラストパスが決まらなかったシーンはその典型と言っていいだろう。アストンビラのバックスはやや軽率なパスミスが多いため、エバートンのプレスの餌食になるケースは散見されたが、うまく生かし切ることができなかった。

 一方のアストンビラはいつものお馴染みのIHが前に出ていくプレッシング。彼らが過負荷を請け負うことで、WGの前残りが可能になっている。ブエンディアとコウチーニョという中央でプレーできる2人がナローに前残りできることで、近い距離でのプレーでのコンビネーションを披露。ワトキンスがサイドに流れる動きを見せて、エバートンのオーバーラップしたSBの裏を取るようにしてサイドで起点を作る動きと組み合わせながら早い攻撃を仕上げる。

 両チームとも中盤の動きが活発なぶん、サイドチェンジを成功させることができればかなり敵陣にスムーズに侵入できていた。この部分がよりスマートだったのはアストンビラの方。前半の終盤はサイドを変えながら、SBがオーバーラップで厚みを出したサイド攻撃からクロスでボックス内に襲い掛かるという彼ららしい攻撃を披露できるように。

 押し込む機会が増えたアストンビラは前半終了間際に先制。ディーニュのクロスをブエンディアがアクロバティックなヘディングで決める。好プレーを見せていたこの日のピックフォードもこれにはお手上げだった。

 後半のエバートンは前半以上の積極的なプレスで反撃を狙う。だが、エバートンはハイプレスをアストンビラにかわされてむしろピンチが増えるようになってしまう。

 それならばとゴメスに代えてアランを入れることで中盤の運動量強化に動いたエバートン。さらにはサイドにゴードンを入れたことで右サイドの突破も強化。負傷交代したドゥクレに代わり、オニャンゴが入りクロスに合わせる高さを注入する。

 積極的な交代選手で流れを掴んだエバートンだったが、集中するアストンビラの最終ラインと中盤は大崩れせず。最後までなんとか無失点で逃げ切ったアストンビラ。監督交代したエバートンの悩みはさらに深まるばかりである。

試合結果
2022.1.22
プレミアリーグ 第23節
エバートン 0-1 アストンビラ
グディソン・パーク
【得点者】
AVL:45+3′ ブエンディア
主審:クレイグ・ポーソン

③ブレントフォード【14位】×ウォルバーハンプトン【8位】

■バリエーションで優位なウルブスが競り勝つ

 同じ5バックを基調とするフォーメーションでも、ローライン気味に相手の攻撃を待ち受けながらロングカウンターを狙うウルブスとよりハイテンポな展開を得意とするブレントフォードの一戦。

 立ち上がりはどちらかといえばゆったりとした攻守の切り替えが少ない展開となった。ブレントフォードはピノックとヤンソンがGKを挟むように立ってビルドアップを行う。2トップをこの2人に引き寄せつつ、アンカーのノアゴールともう1枚のCBであるアイエルが浮いて前進する。

    だが、ボールを運んだ先において、あまり効果的な選択肢を見出すことができず。とりわけインサイドに起点を作るのに苦戦し、ウルブスを脅かす攻撃を仕掛けることができない。

 一方のウルブスはシンプルに3バックの数的優位で2トップ相手に運ぶ形。こちらはアンカーのネベスがフリーになると、左右に広く攻撃を仕掛けることが可能に。味方もネベスがボールを持つと、ワイドから裏を狙う動きを行うため、単に幅を使うだけでなくラインを押し下げるような動きを伴ったボールの動かし方ができるように。

 左サイドにおいてはライン間で前を向けるポデンスが躍動。同サイドのモウチーニョと連携しつつ、インサイドから攻めることができる。ゆったりとした展開ではブレントフォードよりもウルブスの方が手段が豊富である。

 だが、速い展開の応酬になった際にはブレントフォードも対抗可能。ウルブスのカウンター対応でイェンセンとヘンリーが激突してしまい、負傷退場というアクシデントがあったものの、切り替えの多い展開で直線的な攻撃を行いながらゴールに向かう。

 ドローン騒ぎや負傷の治療などトラブルの多い前半を終え、迎えた後半に試合は動く。縦に早い展開を凌ぎ、ゆったりとした攻撃から先制したのはウルブス。セメドとのワンツーで一歩前に出たモウチーニョがミドルで打ち抜き、試合を動かす。

 だが、ブレントフォードもカウンターから反撃。トティをあわや退場(OFRで警告に格下げ)の状況に追い込むと、このファウルで得たFKで大外でドフリーだったトニーがシュートを叩き込み同点にする。

 点の取り合いとなった試合で勝負を決めたのはネベス。ラインを押し下げた中でモウチーニョと同じくミドルを沈めて決勝点をゲット。アクシデントの多い落ち着かない試合となったが、勝利したのはより攻めの手段が豊富だったウルブス。2発のミドルでブレントフォードを下し、勝ち点3を積むことに成功した。

試合結果
2022.1.22
プレミアリーグ 第23節
ブレントフォード 1-2 ウォルバーハンプトン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:71′ トニー
WOL:48′ モウチーニョ, 78′ ネベス
主審:ピーター・バンクス

④リーズ【15位】×ニューカッスル【19位】

■予定外の交代選手が決勝点のお膳立て

 ウェストハムを倒した前節のリーズは結果以上に内容が良化。オフザボールにおける豊富な運動量と、大きな展開からの攻撃は従来のリーズらしい強みを発揮できた。ファンにとってはここ数ヶ月の苦しい戦いからようやく脱することができるかもしれないという希望がとっても重要な試合だったように思う。

 この試合でもリーズはウェストハム戦に続いたいい流れを継続。最終ラインからのビルドアップで、ニューカッスルを圧倒する。特にハードな対応に追われたのはニューカッスルの中盤。WG裏で受けるエイリングやダラスに対しても出ていかなくてはいけないし、自陣深い位置のハーフスペースに裏抜けするIHにもついていかなくてはいけない。

 ジョエリントンやウィロックはIHの守備の仕事に忙殺されていた。リーズとニューカッスルはどちらも中盤の枚数は3枚なので、普通にやれば中盤は噛み合うのだが、リーズの中盤以外の選手がニューカッスルの中盤に対して余計な仕事を与えていたため、リーズの中盤は余裕を持ってボールを握ることができた。アンカーのコッホを中心にリーズがピッチを広く使うことができたのは、相手の中盤に中盤以外の仕事をさせることがうまくいったからである。

 だけども、PA内での動きでは迫力が出ないリーズ。キャラクター的にジェームズは1人ではターゲットにならないし、復帰したロドリゴもIHから決定的な仕事するには至らなかった。

 時間の経過とともにリーズの優勢は徐々に消えていくことに。個人的にはニューカッスルがジョエリントンからS・ロングスタッフに代わったことで、割り切って撤退色を濃くしたことがリーズにとって悩みの種になったように思う。

 ニューカッスルが積極的なプレスを止めることで、リーズはオフザボールの動きで相手を出し抜く場面がだんだんと減ってきてしまう。すると勝負は局面での打開力勝負に。サン=マクシマン、ラフィーニャと両軍のエースが縦に早い動きでゴール前まで迫るカウンターの応酬となった。

 このパンチの打ち合いを制したのはニューカッスル。この日のニューカッスルは交代枠を3枚とも負傷で使うなどやりくりが難しい状況にはなっていたが、交代で入ったマンキージョが大仕事。エイリングを出し抜いて、ジョレンテからファウルを奪取。この直接FKをシェルビーが決めて75分に先制する。

 リーズは新鋭のゲルハルトを投入し、ゴールに迫るが後ろ重心でゴール前を固めるニューカッスルに対して解決策を見出すことができず。逃げ切ってのシーズン2勝目を挙げたニューカッスル。冬の移籍市場での活発な動きも相まって、ここから反撃の2022年となるだろうか。

試合結果
2022.1.22
プレミアリーグ 第23節
リーズ 0-1 ニューカッスル
エランド・ロード
【得点者】
NEW:75′ シェルビー
主審:クリス・カバナフ

⑤マンチェスター・ユナイテッド【7位】×ウェストハム【4位】

■交代の3兄弟が主役となった夢の劇場

 4-2-2-2というラングニックのイメージに近いフォーメーションを棚上げにしてから調子が上がりつつあるマンチェスター・ユナイテッド。オフザボールを主体とした爆発力重視の4-1-4-1ではなく、この試合ではバランス重視の4-2-3-1で欧州カップ戦出場権争いのライバルとの一戦に臨むこととなった。

 形の上では4-2-3-1であるがフレッジ、ブルーノ、ロナウドは全員フリーダムなポジションニングを取りがち。彼らは左サイドに落ちる動きを見せる機会が多かった。おそらく、これは4-4-2で守るウェストハムの間のスペースにアタックをかけるためだろう。ライン間に人を配置し、少しでも間に入り込める位置でパスを受けるのがマンチェスター・ユナイテッドの狙いだった。

 だが、相手はインサイドの守備の強度が高いウェストハム。特に序盤に目立っていたのは2列目の守備。中盤の横パスをカットしてカウンターに移行したボーウェンや、内側に絞ることでSBの手助けをしたランシーニなど、ライスやソーチェクの手助けをする選手たちのおかげでマンチェスター・ユナイテッドの侵攻を防ぐ。

 ならば、ということでマクトミネイをアンカーに据えてサイド攻撃に切り替えていくマンチェスター・ユナイテッド。だが、ウェストハムはサイド攻撃を危ないエリアに入れず、外に追いやるのが非常にうまくこれもうまく防ぐ。

 ユナイテッドはゆったりした保持で、ウェストハムは早めのロングカウンターで。それぞれの手段でPA付近までは迫る両チームだったが、そこからゴールに辿り着けるまでにはもう一工夫が必要。両チームとも非常に守備が固かった。たとえばズマを出し抜いて、PA内でフリーでヘディングしたロナウドのようにゴールに向かう決定的な技術が必要な印象だった。

 後半も構図は同じ。1人の動きに合わせて、他の選手が動くことで効果的な攻め手が出せているマンチェスター・ユナイテッドは後半も優勢。彼らの動き回れる前線の電池切れが先か、あるいは徐々に間延びしていくウェストハムの守備陣の崩壊が先か?試合はマッチレースの様相を徐々に呈していくようになる。

 後半のウェストハムは前進の手段が苦しく、前半以上にボーウェンのロングカウンターに依存する形になった。比較的、チャンスを作れていたマンチェスター・ユナイテッド。だが、決め手を欠いた終盤にラングニックは大勝負に。計算がしにくいマルシャル、ラッシュフォードを入れるという割と無謀目に見えたパワープレーに舵を切った。

 多くのプレミアファンが「流石に無理では?」とか「エランガ→ラッシュフォードでPA内の侵入が減った!」と嘆いていた交代だったが、この采配は最後の最後で実を結ぶ。

 後半追加タイムのラストワンプレーでマルシャルのタメから抜け出したカバーニがファーのラッシュフォードで決勝点をゲット。交代で入った3人がボールをつなぎ、ここまでで一番仕事をできていなかったラッシュフォードが沈める。予想もしない形で実を結んだ前線総動員計画はアウェイと同様にウェストハム戦に劇的な結末をもたらした。交代した3人によって作り上げられた夢の劇場。上位争いで一歩前に出る勝ち点3を手にしたのはマンチェスター・ユナイテッドだった。

試合結果
2022.1.22
プレミアリーグ 第23節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 ウェストハム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:90+3′ ラッシュフォード
主審:ジョナサン・モス

⑥サウサンプトン【12位】×マンチェスター・シティ【1位】

■11人がコミットしたセインツが大仕事

 12連勝という成績を挙げ、一気にプレミアリーグの優勝争いを抜け出した感のあるマンチェスター・シティ。年末年始のパフォーマンスの低下からも脱したことをチェルシー戦でも示し、相手からするとどう立ち向かうか非常に難しい相手である。

 サウサンプトンは立ち上がりから積極的なプレッシングを見せることにした。裏を取られる怖さと戦いつつも、高い位置から止めることに積極性を見せカウンターからのチャンスを狙う。危うさもある賭けだったが、ここからサウサンプトンは先制点をゲットする。

 中盤から奪取したボールでカウンターを発動。右サイドからカットインしたウォーカー=ピータースがエデルソンを見事に打ち破って見せた。シティはデ・ブライネの戻りが遅れてしまった上に、フォーデンがウォーカー=ピータースのチェイシングをやめてしまったことで大きな代償を支払うことになってしまった。

 サウサンプトンはこうしたカウンターからの攻撃の成功率がかなり高かった。特にこの日は2トップへの収まりが抜群。ブロヤとアダムスがロングボールを受けてタメを作ったり、自ら反転してゴールに向かうなど攻撃を牽引する。

    今季のシティのバックスの悪い時はハイラインを敷いている時に相手のFWに強気で捕まえることができないという印象。この日のラポルテとディアスも同様のパフォーマンスだったように思う。サウサンプトンは左サイドのプローもロングボールの逃げ場になっており、カウンターからのプレス脱出はかなりうまくいったと言っていいだろう。

 それでもシティの攻撃陣は好調。真ん中のロドリを軸として左右のサイドを自在に変えながら、愚直にハーフスペースの裏抜けから好機を狙っていく。シティの攻撃のスタイルの基本だが、4-4-2に戻したサウサンプトンに対しては効果は十分。徐々に自陣でぎりぎりの跳ね返しに追われることになるサウサンプトンだった。中でも前半は右に張るだけでなく、自らも抜け出せるスターリングの存在にサウサンプトンは手を焼いていた。

 保持でエリア内に迫るシティだが、この日のサウサンプトンは『11人がやるべきことにコミットする』というシティ相手に守り切るための前提条件はクリア。カウンターで脅威を突きつけていたこともあり、次にどちらに点が入るかは見ているこちらとしてもわからない試合だった。

 後半も同じ展開が続くことに。変化はさらに重心を上げたシティに対して、サウサンプトンのカウンターはより刺さりやすい状況になったくらいだろうか。それでも同点ゴールをこじ開けたシティ。サウサンプトンのゾーンを完全に破壊した設計図付きのセットプレーからラポルトが叩き込み追いつく。

 勢いに乗りたいシティだが、最後の最後までサウサンプトンは粘りを見せる。特に際立っていたのがサリス。悪い時は軽率さが裏目に出ることもある選手だが、この試合においてはサウサンプトンの積極的なスタイルを完全に背負って立っていた印象。この日のパフォーマンスを見せ続けられれば完全にワンランク上の選手になるだろう!という感じで、ここからの試合が非常に楽しみになった。

 エティハドでも引き分けで凌いだサウサンプトンはホームゲームでも連勝ストップという大仕事。首位を食い止めて充実感のある形で1月を終えることになった。

試合結果
2022.1.22
プレミアリーグ 第23節
サウサンプトン 1−1 マンチェスター・シティ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:7′ ウォーカー=ピータース
Man City:65′ ラポルテ
主審:シモン・フーパー

⑦アーセナル【6位】×バーンリー【20位】

■深さは違えど悩みは同じ

 レビューはこちら。

 直近5試合のリーグ戦で2点。移籍したウッドとAFCONに派遣されたコルネの離脱により、ただでさえ少ないチームの得点源の大半が奪われてしまったバーンリー。今節の相手はこちらも2022年4試合で1得点と貧打に苦しむアーセナルである。

 とはいえ、悩みの深さはさすがに両チームでは段違い。スカッドに複数得点者がベン・ミーただ一人というバーンリーに比べれば、アーセナルはチャンスを作ることはできる。

 この試合でとてもよく目立ったのはベン・ホワイト。冨安の欠場でSB起用となった今節は対面のマクニールを引き出しながらバーンリーの中盤の陣形を歪めることに成功する。

 ここから同サイド大外に張るサカ、サカの空けたスペースを狙うウーデゴールやラカゼット、逆サイドに張るマルティネッリなど様々な選択肢を選びながら前進する。

 アーセナルにとっての誤算は3つ。まず、バーンリーの割り切りが非常にしっかりしていたこと。特にリトリートの判断が早く、ジャカとトーマスの居ないアーセナルの中盤では縦へのスピードが間に合わず、先に帰陣されてしまうことが多かった。

 その点をカバーするサイドチェンジ役のロコンガの顔出しが少なかったのも誤算。2トップの裏に隠れる形でボールを受ける機会を狙っていたロコンガだったが、もう少しサイドや前線など横や前方からボールを受ける際の立ち位置修正はこまめに行いたいところ。

 ホワイトからマルティネッリの一発のサイドチェンジは精度は十分だけど、速度としてはやはり落ちてしまう。バーンリーはサイドをボールを動かした先のサイドをカバーする陣容を整える余裕はある。ロコンガがこの部分でチームの手助けする機会をもう少し作れれば、アーセナルはより多くゴールに迫る機会を創出できたはずである。

 最後はベンチメンバー。わかっていたことではあるが、この日のベンチメンバーの多くはトップチームでの経験が乏しく、スタメンに比べるとまだ力が十分でない選手たちが多かった。そういう中で序盤に手を焼き、終盤まで勝負がもつれてしまったことは誤算だったはずだ。

 無論、バーンリーの苦悩はこれ以上。試合終盤に前がかりになるアーセナルをひっくり返したカウンターで、パスの出し先を見つけられなかったマクニールが仕方なくシュートを打っているシーンを見れば、闇の深さは感じてしまう。

 両軍、苦しむ貧打問題は解決せずに継続。ジリ貧の一戦はスコアレスドローとなった。

試合結果
2022.1.23
プレミアリーグ 第23節
アーセナル 0-0 バーンリー
エミレーツ・スタジアム
主審:デビッド・クーテ

⑧レスター【10位】×ブライトン【9位】

■くっきり主導権

 特に保持の局面に印象のある両チーム(特にブライトンは)ではあるのだけど、この試合では比較的早い展開での攻撃の撃ち合いが目立つ展開となった。

 この試合がスタメン復帰戦となったジャスティンは立ち上がりからカットインで存在感を見せ、復帰をアピール。最終ラインの負傷者が続くレスターにとっては非常に心強い存在となる。

 レスターはダイヤモンド型のブライトンの4-4-2に対して内側と外側を使い分けながら攻めていく。ジャスティンやバーンズ、ルックマンがカットインするのならば、デューズバリー=ホールは外に逃げるように動く。ブライトンとの噛み合わなさを利用して、スルスルすり抜けるように縦に進んでいったレスター。ブライトンは中央をプロテクトできる陣形だったが、結構縦に貫かれる機会は多かった。

 一方のブライトンは左のユニットを中心に前進。ククレジャ、マック=アリスター、トロサールを中心にコンビネーションで間と裏を使いながら前進する。右はハーフスペースの裏抜けをメインにより手早く縦に進む形でどちらのサイドからも攻められるようになっていた。

 序盤の打ちあいの空気をしのぐと、中盤以降は時間帯ごとに主導権が分かれるように。レスターがボールを持つ時間帯がある程度まとまって続いた後に、ブライトンがボールを持つ時間が生まれるといった形だった。

 後半も主導権ははっきりとかわるがわるという感じ。序盤はボールを取り返せないブライトンを尻目にレスターがペースを握る。トランジッションから一気に取り返すと、デューズバリー=ホール→マディソン→ルックマン→ダカと詰まりながらもつないで先制。前半の流れをくむ手早い展開で先手を取る。

 守備でも同サイドへの閉じ込めが機能していたレスターだったが、旗色が変わったのは62分のブライトンの選手交代から。ランプティ―とウェルベックを投入し、ワイドにプレイヤーを配置する4-2-3-1にシステム変更をしたことで幅を使えるようになる。

 右サイドではランプティが躍動。同サイドを切り裂き、エリア内にチャンスを供給する。そしてウェルベックは裏抜けからの陣地回復で攻勢に出る。防戦一方になるレスターを最後に打ち破ったのはそのウェルベック。主導権を引き寄せるとともに結果も残すことに成功する。

 最後まで主導権は変わらず、ブライトンがレスターを攻めダルマにする展開が続いたが、そこからさらなる追加点はゲットならず。目まぐるしく主導権が変わった一戦はドロー決着となった。

試合結果
2022.1.23
プレミアリーグ 第23節
レスター 1-1 ブライトン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:46′ ダカ
BRI:82′ ウェルベック
主審:マーティン・アトキンソン

⑨クリスタル・パレス【11位】×リバプール【2位】

■魔の期間を凌ぎ切る

 前半はほぼリバプールのワンサイドゲームと言っていい展開だった。ポゼッションの流麗さは見ていて心地が良く、サラーという大外の起点がいない中での試合としては、ゆっくりとした攻撃が一番機能したのではないだろうか。

 大外、ハーフスペース、後方のサポート、抜け出しのバランスは良好。特に左サイドにおけるカーティス・ジョーンズが自由に動き回り、旋回しながらジョッタ、ロバートソンと共にポジションチェンジ。クリスタル・パレスの2列目を上下動させながら、ライン間にギャップを作りつつフリーマンが小気味よくチャンスメイクという流れを作り出していた。

 先制点は保持が続く展開におけるセットプレーから。フリーにニアに走り込んだファン・ダイクに自由にヘディングをさせれば、そりゃ点は入るだろうという感じ。まるで練習のような強度でクリスタル・パレスはあっさり失点してしまった。

 パレスは大外のオリーズ、裏抜けの前線と攻撃のきっかけになりそうな箇所はあるものの、そこまで落ち着いてボールを届けることができず。保持でも非保持でも自分達のペースで試合を進められず、

    前半はシュート0。苦しむクリスタル・パレスを尻目にリバプールは追加点。サイドに閉じ込めたいパレスの目論みを外すように右サイドからヘンダーソンが脱出。逆サイドで受けたロバートソンから最後はオックスレイド=チェンバレンが角度のないところから決めてみせる。

 盤石かと思ったリバプールだったが、この2点目を境に試合のペースはじんわりとクリスタル・パレス側に。後半になるとその傾向はさらに強まり、早々に前半打てなかったシュートを立て続けに打つなど一気に盛り返して見せた。

 展開は変わった理由は難しいが、パレスが対策を打ったというよりは、リバプールの機能性がガクッと落ちたという色が強いように見えた。保持では空いているスペースに動き続けるムーブが見られなくなり、非保持では1人のプレスに連動せず、常にパレスにはパスコースが用意されている状況だった。

 そうなると、今度はホルダーへのプレスがかからなくなってしまう。となると、パレスは右の大外のオリーズや前線の裏抜けという前半から続いていた動きをシュートに結びつけることができる。

 フリーで前を向いたシュラップから、ニアのエドゥアールに釣られたリバプールの最終ラインを尻目にファーに抜け出したマテタがラインブレイク。ラストパスをエドゥアールが仕留めてパレスが1点を追撃する。

 その後も、チャンスを迎えたクリスタル・パレスだったが、リバプールはアリソンを中心に危ういシーンを凌ぐと、試合終盤にジョッタの抜け出しからPKを獲得。これをファビーニョが決めてなんとか試合を決定づける。

 肝を冷やした場面もあったリバプールだったが、なんとか凌いでの勝利。2つの国内カップ戦も先のラウンドに進み、両翼不在の魔のAFCON期間をなんとか無事に乗り切ることができた。

試合結果
2022.1.23
プレミアリーグ 第23節
クリスタル・パレス 1-3 リバプール
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:55′ エドゥアール
LIV:8′ ファン・ダイク, 32′ オックスレイド=チェンバレン, 89′(PK) ファビーニョ
主審:ケビン・フレンド

⑩チェルシー【3位】×トッテナム【5位】

■3強の影は踏めず

 シティの首位叩きのチャンスも逃し、直近4試合のリーグ戦で得た勝ち点は3。首位の背中よりも、後方から迫りくるロンドン勢とユナイテッドの足音が気になってきたチェルシー。今節の対戦相手はその追ってくる足音を形成する1チーム。ヌーノ時代の借金をコンテになり着々と返し、CL返り咲きを狙うトッテナムである。

   チェルシーにとっては影を断ち切りたいし、トッテナムにとっては争いに引きずり込みたい。互いの思惑が交錯するロンドンダービーは腹の探り合いの立ち上がりになった。

   両チームともフォーメーションは模索中。前節から4バックも試し始めたチェルシーは今節は4-1-4-1でのスタートに。一方のトッテナムはソンの不在での試行錯誤。今節はセセニョンとドハーティをSHに置く形での4-4-2での対戦となった。

 互いの守備の陣形から読み取れたのは『そっちの攻撃はボールを好きに持てばいいよ!固めれば崩されないでしょ!』という思惑。ボールを持っているときはCBには過度にプレッシャーにいかずに見守りながら撤退を優先する。

 その分、攻撃の際の狙いどころははっきりしていた。チェルシーの場合、トッテナムのサイドの守備は中央に比べてずれやすいことを利用していた。特に狙い目としたのは左のSBのデイビスのところ。WGのツィエクがファジーな動きでデイビスを引き寄せると、その空いたスペースにマウントが流れて裏を取る。ここからサンチェスを引っ張り出しエリア内のルカクを狙うという動き。かなり再現性が高く見られた動きだったが、トッテナムは対応できずに非常に苦しんだ。

 トッテナムの反撃はカウンターから。チェルシーはコバチッチとマウントという両IHが高い位置を取ることが多く、ボールをロストした瞬間はアンカーのジョルジーニョとの距離が遠い。トッテナムはとりあえずこのアンカー脇に突撃をすること。1枚剥がすでもよし、縦パスを入れるでも良し。アンカーの脇で前を向いて直線的に攻め立てることができれば、自陣からでもチェルシーに反撃をすることができる。

 どちらのチームも限られた手段、限られた機会でのクリティカルな攻撃。先にパンチを入れるのがどちらか?という戦いに決着をつけたのはツィエク。芸術的な放物線を描いた。ミドルはロリスを越えてゴールネットに吸い込まれる。前節はほぼ喜ばなかったツィエクも控えめながら笑顔を見せたのが印象的だった。

 後半にはセットプレーからチアゴ・シウバが追加点。トッテナムを一気に突き放し勝負を決める。トッテナムは後半にプレスを強化したものの、エンジンがかかるのが少し遅かった印象。メンバー的にはドハーティ、ベルフワインなど前節のご褒美の意味合いもありそうだったトッテナムだったが、この日は完敗に。

 行けると思ったCL争い兼クラスのチームが、勢いに乗れていない3強に負けるのは今季のプレミアのあるあるでもある。近づいても影は踏ませない。ひとまずはチェルシーはCL出場権争いに巻き込まれることを回避したようだ。

試合結果
2022.1.23
プレミアリーグ 第23節
チェルシー 2-0 トッテナム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:47′ ツィエク, 55′ シウバ
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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