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「Catch up Premier League」~Match week 13~ 2021.11.27-11.28

目次

①アーセナル【5位】×ニューカッスル【20位】

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SBと若手アタッカーの活躍で籠城を打ち破る

 レビューはこちら。

 アンフィールドで大敗したアーセナル。ホームで最下位のニューカッスルを迎えて再起を図ることになる。エディ・ハウを迎えて前節はポゼッション志向の強まりも見えたニューカッスルだったが、この試合では非常に現実的なプランを選択。ローライン+ロングカウンターでエミレーツから勝ち点を持ち帰る作戦である。

 したがってアーセナルはローラインのニューカッスルを崩せるかというチャレンジに臨むことになった。いつもよりも攻撃意識を高めてエリアに侵入していく冨安と、いつも通り脱兎のごとく大外を駆け上がるタバレスがアクセントとなり、アーセナルはニューカッスルを押し込んでいく。

 冨安はいつもよりも攻撃的な役割を任されながらも守備面でも奮闘。トーマスやホワイトと連携しながらニューカッスルのカウンターのキーマンであるサン=マクシマンを抑え、ロングカウンターによる反撃の芽を摘む。攻守に冨安はこの試合では大きな貢献を果たしたといっていい。

 相手陣にニューカッスルを押し込んだアーセナルは仕上げの一手がなかなか決まらない。サカに前を向かせる形を作れればある程度打開の可能性が見られてはいるが、右の大外からのアイソレーションだけでは決定的な場面を作り上げることが出来ない。そんな中で効果を発揮したのはサカが左サイドに移動しながらのプレー。

    スミス・ロウやタバレスのような細かいパス交換を好む選手との距離を近づけることでサカ自身の持ち味である抜け出しから決定的なチャンスメイクをするように。前半のチャンスはスミス・ロウ、オーバメヤンともに決めきることが出来なかったが、後半再びサカが左サイドから抜け出すと自らファーに打ち込み先制。押し込む相手を壊し切る一撃を決める。

 こうなると前に出てこざるを得ないニューカッスル。最終ラインが高い位置をとりだしたところで決定的な仕事をしたのはサカと交代で入ったマルティネッリ。冨安の浮き球を裏に抜けながら受けるとそのままシュートを放ち、嬉しい今季初ゴール。

 先制点と仕上げで2人の若武者が活躍したアーセナル。上位への再挑戦に向けてのホームでの再始動に成功している。

試合結果
2021.11.27
プレミアリーグ 第13節
アーセナル 2-0 ニューカッスル
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:56′ サカ, 66′ マルティネッリ
主審:スチュアート・アットウェル

②クリスタル・パレス【10位】×アストンビラ【15位】

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■スムーズなサイド攻略で就任2連勝

 クリスタル・パレスは今季おなじみになった3-2-5型の変形で序盤からボールを保持。大外をミッチェルとオリーズに託す形を見慣れてきたファンも多いことだろう。

 これに対して前節からアストンビラの指揮を執るジェラードは前線に内側を切らせる守備で対抗。ミリボイェビッチとクヤテの2人へのボールの供給を断ち、ミッチェルとオリーズのところに誘導してそこで刈り取るという流れに。アストンビラの大外への対応はこちらもアシメ。オリーズにはSBのターゲットが出ていくのに対して、ミッチェルにはIHのマッギンか、SHのベイリーが下がって対応することが多かった。

 ボールを外循環に誘導されて、内側に入り込めないパレス。そんな状態を何とかしようと動き回るのがトップ下のギャラガー。ピッチのあらゆるところにプラスワンとして顔を出し、自ら前を向きボールを前に押し上げてエリア内に送り込むことを繰り返す。型から入るビルドアップはやや杓子定規になりやすい部分はあるが、ギャラガーの存在がいい意味で異分子になっていた。

 一方、左のWGのザハは仕組みの中でのアクセントになれていたかは微妙なところ。11分のシーンとかは大外のミッチェルまで届かせてあげた方がいいかなと思ったり。ここで受けて自分でなんとかしてしまおう!そしてなんとかなる!というのはザハらしくはあるんだけど、仕組みの良さと相反する部分もあるなと感じた次第である。

 サイドでの崩しという意味ではアストンビラは前節から引き続きスムーズ。SH、SB、IH+ワトキンスの4枚をサイドで作り、パス交換から前を向く選手を生み出して、PA内に斜めに入り込んでいきながらフィニッシュという形に明確にしている。

 持つ機会はパレスのが多いが、サイドの崩しはビラの方がスムーズ。共に縦への早いボールはDF陣のラインアップからの刈り取りが優勢で焦るほど前に進めないという一進一退の攻防だった。その中で先制したのはアストンビラ。セットプレーの大外のターゲットがフリーでシュートを叩き込む。

    パレスの対応で痛恨だったのはトムキンス。マーカーを離して被ってしまい、ターゲットにシュートを許してしまうという最悪のパターンだった。ビラのセットプレーの攻撃は中央をあえて空けておいて走りこむという特徴的な形ではあったけど、これは個人のエラーのように見える。

 後半はパレスが攻め込む一方的な展開に。オリーズのいる右サイドを軸にギャラガーや途中交代のエゼ(おかえりなさい!)のトップ下が絡む形で攻勢に出る。アストンビラは紙一重の場面もあった。復帰戦となったドウグラス・ルイスの一発退場が取り消されたのは、この後の日程を踏まえても首の皮1枚という感じだった。

    試合はパレスのペースだったが、次に点をとったのはその攻撃を耐えきったアストンビラの方。両SHが左サイドに集結した形での見事な崩しから最後はマッギンがミドルを仕留めて勝負あり。終盤にグエヒが1点を返すも、最後はビラが逃げ切りに成功。

 支配的に試合を進めるという点では我慢の時間帯が多くまだ向上の余地はあるが、ジェラード就任後のビラらしい形から点をとれているのはポジティブ。監督交代以降2連勝という最高の結果でアストンビラは徐々に順位を上げている。

試合結果
2021.11.27
プレミアリーグ 第13節
クリスタル・パレス 1-2 アストンビラ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:90+5′ グエヒ
AVL:15′ ターゲット, 86′ マッギン
主審:マイケル・ソールズベリー

③リバプール【3位】×サウサンプトン【13位】

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■対策は効果が出る前に

 対リバプール用の作戦としてサウサンプトンが用意してきたのは5-2-1-2の策である。5バックでリバプールのアタックを大外まで賄い、2トップ+トップ下の採用でリバプールの保持の要である2CB+アンカーのファビーニョを監視するよう目論みである。

 もっとも、このサウサンプトンの並びと目論みを把握できた頃にはすでにリバプールに先制点が入るのだが。大外をマネとロバートソンで抉り、マイナスのクロスをジョッタに預けて先制したのはわずか2分のこと。大外をきっちりマークしてなんぼというサウサンプトンのコンセプトをリバプールはあっという間に破壊してしまった。

 定点攻撃で言うとリバプールは2トップ脇を狙っていく。前節と同じく、相手が広げているスペースに侵入するのはチアゴ。彼の横移動でウォード=プラウズがどこまでついてくるかを観察するリバプール。ウォード=プラウズは前節のトーマスに比べて、動く頻度が多かったのでマネやジョッタがライン間で受けるスペースが空くことが多かった。

 そのほかにもロバートソンがリヴラメントを釣り出せれば、外にマネが流れたりなどリバプールのオフザボールの動きは常に一手先を見据えていた。左サイドからの破壊が多かったのはこの試合の特徴。徐々にチアゴ起点が生じる歪みを活用する術を身につけていると言う事だろう。

 右サイドからも当然崩しは可能。大外に開くサラーを軸に彼を追い越す動きで外側からブロックのラインを押し下げる。2点目のシーンを見ればトランジッションの局面でもリバプールが優位だったことがわかるはず。2点目は右サイドの連携とトランジッションの優位の組み合わせ。またしてもゴールという形で恩恵を受けたのはジョッタである。この止まれるWG+それを追い越す味方のパターンはこの試合の崩しの鉄板だった。

 チアゴの得点でさらに突き放されたサウサンプトン。後半は4-4-2にシフトし、反撃を狙う。だが、これは悪循環の始まり。前節のシティ戦のエバートンもそうなのだが、保持ができるチーム相手に4-4-2にシフトして前線の人数を増やすと、どうしようもなくボールを取り返せないという無限ポゼッションの沼に入り込んでしまう。

 サウサンプトンも見事にこの沼にハマってしまった。幸いリバプールの沼はシティよりは浅く、ポゼッションの過程では時折ミスが出てしまっている。少ない攻撃機会においては前線がリバプールの最終ラインからの抜け出しを常に狙っており、多くの人数をかけた攻撃を行うが、なかなかゴールまで辿り着く事ができない。

 ファン・ダイクのセットプレーからの得点を加えたリバプールはスコアでも内容でも完勝。アーセナル戦に続き、内容の伴う勝利で上位陣の追走に成功した。

試合結果
2021.11.27
プレミアリーグ 第13節
リバプール 4-0 サウサンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:2′ 32′ ジョッタ, 37′ チアゴ, 52′ ファン・ダイク
主審:アンドレ・マリナー

④ノリッジ【19位】×ウォルバーハンプトン【6位】

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■両エースが持ち味を見せる

 監督交代を挟みながらの今季初の連勝という非常にレアな上昇気流に乗っているノリッジ。対するはこちらもウェストハムとの上位対決を制し、上り調子であるウォルバーハンプトンである。

 立ち上がりは両チームとも慎重な立ち上がりだった。保持の時間が長いのはどちらかといえばアウェイのウルブスの方。プレス隊に人数を割かないノリッジに対して、3バックは数的優位を活かしながらの前進となる。中盤を引き出しながらのヒメネスへの縦パスというのが主な攻め手となっており、前節に引き続きボックスストライカー以外の持ち味を見せる展開になっていた。

 ヒメネスに対抗するわけではないだろうが、ノリッジのエースであるプッキも存在感を見せる。ノリッジの立ち上がりの攻撃はウルブスのDFラインを背走させるような裏狙いの攻撃がほとんど。ラインの駆け引きができるプッキの持ち味を生かすようなものだった。プッキは裏狙いだけでなく、表側でのポストプレーも上々。ロングボールのターゲットもこなすプッキに対して、ウルブスは前節ほどスマートにラインを上げながらの守備を行うことができなかった。

 30分を過ぎると徐々にノリッジが保持の時間が増えていく。ウルブスのカウンターにも早めに対応しながら左右のIHとSBを高い位置に上げながら、敵陣での攻撃を続ける。決め手には欠ける部分は否めなかったが、トップハーフ相手に試合を掌握する時間帯を作れていること自体はチームがいい方向に転がっている証拠のように思う。

 後半はウルブスがネベスとモウチーニョを軸に大外を使う流れで主導権を握り返す。そこから先のサイドの連携で攻め落としきれないウルブス。ノリッジとしてはハーフスペースの封鎖は苦手分野のはずだが、ウルブスがはっきりと壊せたシーンはそこまで多くなかった。

 終盤を迎えると試合はよりオープンに。互いにゴール前でのシーンが増える状況になった。カウンターの応酬からノリッジも反撃モードを見せるようになる。狙いを定めたのはウルブスの右サイド。セメドが空けた裏のスペースからウィリアムスやラシカを中心にエリア内にボールを供給するようになる。

 ウルブスも秘密兵器のトラオレの投入で反撃に出るが、その後の選手交代の影響でWBに位置を下げたのはどうだったか?よりゴールに近い位置で使ってあげた方がベターだったと思うけども。セメドに代えての手当てというニュアンスも薄いだろうし。

 90分間、ネットを揺らすことができなかった両チーム。特にウルブスは前節と比べるとやや大人しい内容に終始してしまった感が否めないが、無敗記録を伸ばし勝ち点を積むことができたのは一安心といったところだろうか。

試合結果
2021.11.27
プレミアリーグ 第13節
ノリッジ 0-0 ウォルバーハンプトン
キャロウ・ロード
主審:シモン・フーパー

⑤ブライトン【9位】×リーズ【17位】

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■悪夢の再来に襲われたブライトン

 この全試合ハイライトを作るに至ってまず最初に行う作業はスタメン表の作成である。そういう意味ではこの2チームの対戦はスタメン表の作り手泣かせ。可変に拠る動きの幅が大きく、結局どの形を基本フォーメーションとした方がいいのかわかりにくいのである。

 リーズのフォーメーションがわかりにくい理由としては守備時に強いマンマークへの意識で敵陣に合わせるように変化するからである。マンマークの意識が強いリーズに対しては、個人で優位に立てるマッチアップを見つけるのが攻略の最短ルートである。

 ブライトンはこの優位に立てるマッチアップは早々に見つけることが出来た。右サイドハーフに起用されたランプティとフィルポのマッチアップである。スピード面で大きく前者に軍配が上がるこの対戦。圧倒的にランプティがフィルポを置いていくパターンが多く、こちらのサイドはクーパーがカバーリングに入るのが常態化する。

 ブライトンはこのリーズの最終ラインを横移動させることによってズレを生み出してチャンスメイクする。PA内で決定機を生みだしていたブライトンだったが、ここでまさかの悪癖がカムバック。チャンスをいくら作ってもとにかくシュートが入らないという20-21シーズンの地獄が今季このタイミングでまさかの再来である。

 というわけでプレミアファンには懐かしいブライトンの帰還。押し込むだけのボールを浮かして天を仰ぐモペイ、わずかに枠に飛ばないトロサール。ランプティが作ったズレをひたすら無駄にするという展開が延々と続くことになる。最終ラインからのウェブスターの持ち上がりも光ったが、結局フィニッシュが決まらなければ0点なのは同じである。

 対するリーズはそもそも局地戦で優位を取ることができなかった。このメンツなら当然ラフィーニャのところで勝負をしたいのだろうが、ここは対面のククレジャを軸にブライトンが粘り強い対応。シュートは入らないけども、守備はちゃんとするトロサールは非保持では計算できる存在である。

 後半は戻りが遅れやすいランプティの裏を狙うようにロバーツが左サイドからのフリーランでブライトンを押し返すが、そこからエリアに迫る局面が物足りない。

 フィニッシュが全てを無駄にしたブライトンに対して、優位を見いだせずにジリ貧のまま終わってしまったリーズ。試合展開を考えれば結果に笑顔になれるのは明らかに後者。昨季に戻ったようなブライトンの決定力の低さが重くのしかかるスコアレスドローとなった。

試合結果
2021.11.27
プレミアリーグ 第13節
ブライトン 0-0 リーズ
アメリカンエキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:クレイグ・ポーソン

⑥ブレントフォード【14位】×エバートン【11位】

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■攻撃陣の活かし方は手探り

 苦境が続くアウェイのエバートン。負けが込み始めたタイミングと離脱の起点が一致するドゥクレを復帰後即スタメン起用するのもうなづけるくらいチームの戦績は落ち込み気味である。

 この日の相手であるブレントフォードはエバートンのスタイルでいえば戦いやすいチームだと思う。局地戦でのデュエルの優位があらゆる前提に必要なブレントフォードの攻守は、対人能力に長けた選手が多いエバートン相手に効き目は薄い。相変わらず正確なフィードが持ち味のラヤも欠場しているため、後方のフィードの質でも勝負できない。とりあえず放り込みながらの前進という方策がとれずにブレントフォードは苦しんでいた。

 だが、この状況をなかなか生かせないエバートン。ブレーキがかかったのはトップ下のイウォビと1トップのロンドンのところである。彼ら個人のパフォーマンスが悪いというよりはこの2人の食べ合わせが悪いという感じ。イウォビはよく言えばタメが効く、悪く言えば球離れが悪いという選手。サイドよりもズレを作りにくいトップ下だと、迷っているうちに自陣のスペースをブレントフォードに埋められてしまい、チャンスをふいにしてしまう場面がしばしば。

 トップのロンドンも細かい動き直しでイウォビのパスコースを導出する選手ではない。どちらかといえば四の五の言わずに放り込んで来い!という選手である。というわけで待てど暮らせどイウォビには縦に進むパスコースが見えてこない。

 したがって中央の縦関係は不発。アクセントになるのはゴードンの持ち上がりと、PAに飛び込むことが出来るドゥクレの存在。動きの少ない前線に対して動きを促せるアクションでチームを牽引する。

 しかし、先制点を得たのはブレントフォード。攻めることが出来ていたわけではないが、やや不用意な形でタウンゼントのPKを誘い、これをトニーが沈めて見せる。

 ビハインドで困ったエバートンはゴードンが前半から躍動していた左サイドから徹底的に攻めるように。サイドからのシンプルなクロスでロンドンの良さを生かす方向にシフトする。今季好調のグレイも左サイドに投入しながらPA内に迫っていく。

 だが、現状ではこの形での攻撃の圧力増加しか見せることができないエバートン。リシャルリソンもキャルバート=ルーウィンもいない布陣ではロンドンの放り込みをどう生かすかが精いっぱい。最後まで戸惑い気味だったイウォビもフィニッシュにうまく絡むことができないまま試合は終了。跳ね返して耐えきったブレントフォードにまんまと逃げ切りを許してしまった。

試合結果
2021.11.27
プレミアリーグ 第13節
ブレントフォード 1-0 エバートン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:24′(PK) トニー
主審:ダレン・イングランド

⑦レスター【12位】×ワトフォード【16位】

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■不安定な撃ち合いを制したのは

 今シーズンなかなか戦績が安定せず、トップハーフに浮上できないレスター。今節の対戦相手は不安定さなら負けないワトフォード。今季は12試合のうち、4試合が3得点以上、7試合が無得点という幅のブレ方は異常。前節はマンチェスター・ユナイテッドをボコボコにしたが、今季ここまでの戦績を見ればこの大勝は信用しきれない。

 試合はその両チームの出来に沿った不安定な立ち上がりとなった。特に顕著だったのが最終ラインの連携。両チームとも前線の火力には自信があるだけに、強いプレッシャーにさらされたバックラインには負荷が高かった部分もあるだろう。

    真っ先にその不安要素が先に顕在化したのはレスター。ロングボールの処理に対してエバンスとシュマイケルがお見合いし、あわやかっさらわれるところだった。シュマイケルが叱り飛ばしていたようにエバンスがクリアで切ってしまえばいい場面だったといえるだろう。

    そのレスターの守備陣の連携を見て学べなかったのがワトフォード。全く同じ連携のミスでトロースト=エコングが無責任なプレーでマディソンに先制点を献上してしまう。

    最終ラインの裏のケアが怪しいのもワトフォードの守備の難点。アーセナル戦で不甲斐ないふるまいに終始したローズがいなくとも、ハーフスペースの守備は不安定。レスターはヴァーディとスマレがこちらのサイドに流れながら飛び出すことで一気にラインを押し下げる。ハーフスペースから抜け出したヴァーディがやや角度のあるところから仕留めてあっさりと追加点。

 ワトフォードは反撃として左サイドからの崩しを狙う。トップのデニスが左のSHの位置に降りてきて、ポストを行い味方に前を向かせてここから前進するというパターンを多用。キングが斜めに入り込む動きをアシストするなど、ワトフォードの攻撃はここから。クチョ・エルナンデスへのロングボールもパターンにはあったが、一番多いのはハーフスペースのデニスを活用するパターンだった。

 だが、ワトフォードの同点弾は右サイドから。同サイドのCBであるソユンクをつり出したところで攻撃を一気に加速させるとPA内でデニスをンディディが倒してPK献上。同点に追いつく。最終ラインの裏のケアが不安定なのはレスターも同じである。

 守備陣はどちらも不安定ではあるが程度がよりひどいのはワトフォード。レスターの3点目はセットプレーから再びヴァーディが仕留めて追加点をもぎ取る。

 後半は豪雪も相まってさらに動きが不安定になる両チーム。一発で抜け出したデニスがやり返しの得点を挙げるが、雪でもハーフスペースの裏抜けからさらに殴り返すのがレスターである。抜け出した左サイドからプレゼントパスを押し込んだのは逆サイドのルックマン。

 雪にまみれても互いに決定機を量産できるのは両チームらしいといえばらしい。雪がなくとも不安定だった両チームの試合はホームのレスターが殴り勝つ形で押し切った。

試合結果
2021.11.28
プレミアリーグ 第13節
レスター 4-2 ワトフォード
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:16′ マディソン, 34′ 42′ ヴァーディ, 68′ ルックマン
WAT:30′ キング, 61′ デニス
主審:グラハム・スコット

⑧マンチェスター・シティ【2位】×ウェストハム【4位】

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■ウェストハムの対応力をねじ伏せる

 リバプール、ウルブスと難敵が続くウェストハム。続く一戦はマンチェスター・シティ。引き続き実力を試され続ける相手となっている。

 試合は保持するシティ、受けるウェストハムの構図で推移する。ウェストハムは4-5ブロックでシティの保持を受け止める。ウェストハムの守り方のキーになっているのはソーチェク。右のCHに入っているソーチェクは押し込まれた際には最終ラインに入ることで5人目のDFとして機能。

   ソーチェクが落ちる動きに合わせてSHのフォルナルスがCHの位置に絞りながら戻る形で自陣を埋める。まずはポケットを取りたいマンチェスター・シティ相手にしっかりスペースを埋めることでまずは攻撃を止める。

 ソーチェクがすごいのはただの最終ラインの穴埋め役に終始しないことである。シティ相手にただただ引くだけではもう守り切るのは難しい。もちろん、ラインを下げる時間は受け入れなければいけないが、高い位置に出ていく意欲を失ったらそれはそれでゲームオーバー。ソーチェクはシティが自陣側にボールがあるときはラインを上げて前にプレスのベクトルを向けることが出来る。だからウェストハムのCHは強靭なのである。

 シティはこれに対してソーチェクの移動とそれに伴うカバーリングのギャップをつくためにラインを下りてポストができるジェズスを中央に移動。真ん中を牽制しながらウェストハムの注意をポケット以外にも分散させる試みをする。

 ウェストハムはサイドに流れるアントニオで反撃。ラポルテにカードを出させるなどシティのCBとのマッチアップではある程度の主導権を握ることが出来た。

 試合は30分付近から雪が強まり段々とサッカーをするのが難しくなってくる。シティはカウンターの危険性を考えてかロングボールを増やし、カットされるとピンチになりうるサイドチェンジを減らしながら対応する。

   そんな中で平気な顔でプレーしていたいのはカンセロとロドリ。シティが前半に得た貴重な先制点はカンセロがまるで晴れたピッチでプレーしているかのようなサイドチェンジを正確に行うことが出来たから。蹴った勇気と届けられた技術に感服である。

 後半、雪かきの甲斐もあり、何とかまともにサッカーをできる状況は戻ってくる。シティは無理なつなぎを行わずに長いボールを織り交ぜながら引き続きハーフスペースアタックを狙っていく。ウェストハムは凌ぎ続けるものの徐々に前に出ていくパワーがそがれていくように。

 堅実さが第一だったこの試合のシティは仕上げとしてフェルナンジーニョを投入。そのフェルナンジーニョが試合を決定づける2点目をゲット。サイドに流れるソーチェクのカバーが間に合わなかったバイタルエリアからミドルを放ってネットを揺らすことに。

 最後の最後でランシーニが一矢報いたウェストハムだが、90分を見れば均衡した試合の中で少しずつシティが上回っていたのも確か。優位をきっちり勝利に結びつけたシティが難敵を退け、首位追走に成功した。

試合結果
2021.11.28
プレミアリーグ 第13節
マンチェスター・シティ 2-1 ウェストハム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:33′ ギュンドアン, 90′ フェルナンジーニョ
WHU:90+4′ ランシーニ
主審:マイケル・オリバー

⑨チェルシー【1位】×マンチェスター・ユナイテッド【8位】

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■よもやのドローとジョルジーニョの凄み

 ワトフォードに敗れてついに監督交代に踏み切ったマンチェスター・ユナイテッド。後任には暫定監督としてラングニックの就任が発表されたが、この試合の時点では正式発表されておらず『みんな知っているけどまだ』という状態だった。

 そんなわちゃわちゃしている形で迎えるチェルシー戦。立ち上がりから攻められる場面ばかり。開始早々にデヘアがいなければジエンドだった!というチャンスを作られてしまう。

 ただ、ユナイテッドは全く無策でこの試合に臨んだわけではない。この試合で指揮を執ったキャリックのアイデアなのか、あるいはすでにラングニックの手が入っているのかはわからないが非常にプレッシングが特徴的だった。

    フォーメーション表的には4-3-1-2という形になるだろうが、左右の守備の陣形は非対称。2トップの一角のサンチョは右サイドに大きく張り出しWBをケア。逆サイドのトップのラッシュフォードは中央に留まり、サイドに出ていくのはIHのフレッジという分担だった。したがって、基本フォーメーションはひし形なのに時折4-4-2フラットに見えるという不思議な感覚。特に噛み合わせているわけではないし。

    チェルシーは左サイドから時間を得たリュディガーから前進。裏のハドソン=オドイへのパスでリンデロフに揺さぶりをかけていく。ユナイテッドとしては苦しい戦いだったが好材料は2つ。

    1つはチェルシーのこの日のメンバーが普段と比べて周りを気にかけながらボールの前進が出来るタイプが少なく、自分のできることに注力するタイプが多かったこと。例えばヴェルナーの裏抜けもそれに合わせる動きがなくやや単発だったし、マルコス・アロンソも前がプレーの幅が広いマウントの方が尖っているハドソン=オドイよりもやりやすかったように思う。

 もう1つはエリア内の守備に体を投げ出す根性はユナイテッドの守備陣に戻ってきたこと。その気力すら見られず、軽率なミスを繰り返していたワトフォード戦に比べれば状態は上向いているといえそう。

 なかなか点が取れそうで取れないチェルシーに対して、先制したのはまさかのユナイテッド。やたら前がかりになるセットプレーを裏返してジョルジーニョのコントロールミスを誘い、カウンターから独走。サンチョがメンディとの1対1を制し、貴重な得点を挙げることに。

 まだ時間は残されているが、チェルシーはやたらあわててテンポが速くなるように。こうなるとミスからロングカウンターの機会が得られる分、少しは展開がユナイテッドに向くようになる。それでも前進の術をもっていないのが今のユナイテッド。ミスがない限りはチェルシーからボールを奪うチャンスを得ることが出来ない。

 慌てて覚束なくても押し込むことができる以上は事故が起きる可能性はある。ワン=ビサカが与えたPKは押し込まれた故にユナイテッドが払うことになった税金である。ワン=ビサカは気の毒だが、コンタクトがあってひとたび笛が吹かれてしまっては、OFRからのPK取り消しは難しいだろう。

 にしてもPK後に即ボールを握りしめたジョルジーニョには覚悟を感じた。この試合のミスもそうだけど、イタリア代表でも決定的なPK失敗を犯している彼がこの局面で進んでPKスポットに立つのはなんというかすごいなという感想に尽きる。そんで決めちゃうんだもんね。

 ジョルジーニョのPK成功でさらに強気にゴールを目指すチェルシー。最後の仕上げは右のWBのプリシッチ。内を固めるユナイテッドを大外から壊すための一手だろう。だが、これでも最後はPA内のユナイテッドの守備陣にシュートは阻まれる。ユナイテッドもメンディのミスから終盤に勝ち越しのチャンスは得たが、これはふわっとフレッジがGKに返すようなシュートでフイにしてしまう。

 試合は1-1のまま終了。ホームチーム圧倒的優位と思われた一戦はスリリングでドラマチックな引き分けで終わることとなった。

試合結果
2021.11.28
プレミアリーグ 第13節
チェルシー 1-1 マンチェスター・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:69′(PK) ジョルジーニョ
Man Utd:50′ サンチョ
主審:アンソニー・テイラー

⑩バーンリー【19位】×トッテナム【8位】

■誤算が重なり難所で膝をつかされたスパーズ

 シティを撃破し、勢いに乗るトッテナムが乗り込んだのはターフ・ムーア。冬の市場を越えて、一気に難所となったバーンリーのホームスタジアムである。

 バーンリー相手ということで当然トッテナムはボールを握っての前進を狙っていく。バーンリーの4-4-2に対して、初期配置のズレを活かすように3-4-2-1のベースポジションを守りながらボール保持を行う。  

    ソンを裏抜けに使ってまずはライン間を広げたり、ライン間が広がったら縦パスを入れて逆サイドに多くな展開をしたりなど、固い守備のチームに対してのアプローチとしてはオーソドックスではある。

 だけども、トッテナムには誤算があった。まずはバックラインがプレスに弱かったこと。バーンリーのプレッシングは4-4-2でトッテナムの物に対しては噛みあうものではないのだけど、多少時間を奪ってしまえば、トッテナムのバックラインは落ち着いてボールを動かす余裕は全くなさそうだった。

 トッテナムの誤算はもう1つ。彼らが思ったよりもボールを取り返せないことである。マンチェスター・シティならば撤退型の5-4-1で待ち受けてもいいだろうが、バーンリー相手にそれをやってしまうというのはいささか弱腰すぎる気がする。

    プレスをかければ蹴ってくれるバーンリーに対して、その背中を押すようなプレスもできない!となれば待っているのはまったりとした攻守の切り替えが遅い展開。その先にあるのはトッテナムの攻撃回数の機会損失である。

 さらにバーンリーはここから非保持において5-3-2に変形。トッテナムが遅攻において使いたい幅を埋めにかかる。バーンリーとしてはあとは中央をどれだけコンパクトに保てるか。序盤に引き続き、MF-DFライン間の管理が甘くなっていたことはあるので、トッテナムとしては付け入るスキがないわけではなかった。

 スコアレスで折り返した後半。早々の決定機をモノにできなかったトッテナムだったが、交代選手として入ったウィンクスを中心にライン間に縦パスを刺す形でのチャンス創出を狙っていく。

 トッテナムが保持で攻め立てる機会は前半よりは増えたものの、大勢は前半と同じようにざっくりとしたもの。そんな中で試合を動かしたのはセットプレー。セセニョンの軽微なファウルを活かしたバーンリーが先手を取る。決めたのはファーのベン・ミー。トッテナムはこの場面ではロメロが競り負けてしまった。この後のセットプレーにおいてもバーンリーはファーのベン・ミーを活用していたので、割と狙い目にしていた部分かもしれない。

 先制されて大変なことになったトッテナム。大外にクルゼフスキ、ベルフワインを置く超攻撃的な布陣にシフトし、大外から抉りにかかる。だが、猛攻は最後まで実ることはなかった。

    大仕事をやってのけて勢いに乗りたかった矢先に足元をすくわれたトッテナム。ターフ・ムーアで膝をつかされ、CL出場権争いからは一歩後退してしまった。

試合結果
2022.2.23
プレミアリーグ 第13節
バーンリー 1-0 トッテナム
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:71′ ミー
主審:ピーター・バンクス

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