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「Catch up Premier League」~Match week 12~ 2021.11.20-11.21

目次

①レスター【12位】×チェルシー【1位】

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■ピッチに反映された力関係

 近年のプレミアならばCL出場権争いの直接対決となるカード。だが、今年は明確に両チームの勢いが違う状況での対戦となった。

    チェルシーはCLのタイトルをひっさげ、リーグは首位。今や優勝争いを繰り広げる3強を牽引する存在である。かたやレスターは苦戦。開幕当初よりは勝ち星は重ねられるようにはなったが、同じく序盤戦で苦しんだアーセナルやウルブスがジャンプアップしているのを見ると、トップハーフとボトムハーフを行き来している現状は決して満足できるものじゃないだろう。

 首位争いとリーグ中位となった試合は両チームの立ち位置をそのまま反映した内容になった。レスターは3-4-2-1のミラーフォーメーションでチェルシーに対抗。シャドーにはバーンズとルックマンというドリブラーを配置することで、ロングカウンターもちらつかせる構えだった。

 だけど、このやり方はちっとも効かなかった。オフザボールでもドリブルでもゴールに迫れる機会は皆無。後半途中までレスターはシュートを打つことすらできなかったくらいである。出し手となるティーレマンスの不在がいかに痛かったかがよくわかる数字だ。ソユンクなど後方の選手が持ち上がってギャップを作ってもヴァーディ以外は足元で受けたがるため、チェルシーにとっては迎え撃つのがそこまで難しくはなかった。

 一番大きかったのはチェルシーの保持を阻害できなかったことだろう。ミラーゲーム気味ではあったが、レスターはリュディガーのところのマークはやや甘く、ルックマンは内側にポジションをとり3センター気味に中央をプロテクトすることを優先することが多かった。

 というわけでチェルシーは空きやすい自陣左サイドの深い位置にジョルジーニョが移動を開始し、リュディガーを押し上げる動きを見せる。このジョルジーニョの動きにレスターの選手がついていき、中盤にギャップが出来ればマウントやハフェルツがボールを受ける準備ができるし、ジョルジーニョが放置されるのならば裏のハドソン=オドイの動き出しに合わせることが出来る。

 マンツーを意識したであろうミラーでチェルシーに全く持って対応できなかったのはレスターにとっては痛かった。前からのプレスはハマらないし、後方ではハフェルツやハドソン=オドイにファウルを犯しながら危険な位置でセットプレーを与える。

 リュディガーのヘッド(ゴール側からペナルティスポット方向に走るという結構珍しいヘッドだった)はこれだけ押し込む機会があれば当然入るだろう!という感じ。続くカンテのゴールはスーパーだが、レスターはあっさり急所への侵入を許してしまった感が否めない。プレスも籠城もうまくいかなかったのがこの日のレスターだ。

 後半は2トップに変更し、プレスの意識をさらに強めるレスター。チェルシーとしてはティーレマンス不在のレスターならば、失ってのショートカウンターがもっとも怖いので、前半に比べると裏へのパスを増やすことで対抗をする。後半開始早々にジェームズが中盤中央の空きスペースに侵入し、ハイプレスの脱出口として涼しい顔でプレーしていたのにはこのチームの底力を感じられずにはいられない。

 後半はプリシッチのゴールでさらに突き放したチェルシー。攻守になす術のなかったレスターをコテンパンにし、快勝で冬の連戦の初戦を飾った。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
レスター 0-3 チェルシー
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
CHE:14′ リュディガー, 28′ カンテ, 71′ プリシッチ
主審:ポール・ティアニー

②アストンビラ【16位】×ブライトン【7位】

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■『ジェラード流』ではないけれど

 スミス監督を解任し、リバプールのレジェンドであるジェラードを監督して招聘したアストンビラ。初陣の相手となるのは難敵であるブライトンである。

 ジェラードが率いていたレンジャーズはボール保持の色が濃い目と誰かのツイートで見かけた気がしたが、この試合のアストンビラにも同様の変化が見られた印象。特にグリーリッシュがいなくなってから心がけていた直線的にゴールに向かう動きは少なく、ゆったりとボール保持をしながら敵陣に向かう動きを見せる。

 相手となるブライトンも保持をゆったりするチームなので、試合は攻守の切り替えが少ない落ち着いた展開の試合となった。アストンビラの中で役割が変わったなと思ったのはマッギン。今季は絶好調で特にゴール前の仕上げのところで活躍を見せていたが、この試合ではやや落ち気味になりながら最終ラインを手助けする役割に重きを置いていた。

 サイドにおける細かいタッチの連続での打開チャレンジもスミス時代には見られなかったもの。前政権下ではグリーリッシュを追い越す動きでサイドに変化を付けていたが、この試合ではサイドに多角形を形成することで打開を狙っていた。

 しかし、サイドからの崩しやボール保持のメカニズムの成熟度だけでいえばブライトンに一日の長があった。特にククレジャ、ランプティの両WBの攻撃での貢献度の高さは特筆すべき部分がある。ターゲットとキャッシュも当然悪くはないが、よりスペースがある状態でのプレーの印象の方が強い選手であり、まったりとした保持での崩しに適応するにはある程度時間を要すると思う。ワトキンスやブエンディアなど、この日ワイドで使われた選手のカラーも崩しが詰まった一因として考えられる部分である。

 ただ、ブライトンもエリア内にボールを届ける段階でアストンビラに阻まれてしまい、チャンスらしいチャンスまでたどり着くことが出来ない。ここは本職の9番を頭から使っていない影響だろう。

 すると終盤に好機をつかんだのはアストンビラ。ジェラード流らしい保持からの崩しではなく、むしろ従来のアストンビラらしい直線的なカウンターの形から先制点をゲット。豪快にネットを揺らしたワトキンスのミドルで一歩前に出る。ニアに抜けることでシュートコースを作ったエル・ガジが隠れた殊勲者である。

 さらに追加点を奪ったのはミングス。火力不足のブライトンに対して、最終ラインと前線の要が違いを見せつけたアストンビラ。スタイルの成熟はまだ先になるだろうが、先立つものがあれば旅路もいくばくかは楽になるはず。初勝利を初陣でつかんだことにひとまずジェラードも胸をなでおろしているだろう。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
アストンビラ 2-0 ブライトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:84′ ワトキンス, 89′ ミングス
主審:アンソニー・テイラー

③バーンリー【18位】×クリスタル・パレス【10位】

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■縦に急ぐ故に露見した弱点

 クリスタル・パレスは今季一貫して採用してきた4-3-3からクヤテとミリボイェビッチを併用する4-2-3-1にシフトチェンジ。バーンリーはウッドとコルネが縦関係になって、コルネがアンカーをケアするような形を見越していたのかと思ったが、狙いが外されてしまった格好になった。

 パレスはミッチェルを片上げする3-2-5にシフトする保持。最終ラインのビルドアップで相手のSHを釣ることが出来れば大外のアイェウとミッチェルにボールを預けるスタンスである。トップ下に入ったギャラガーはシャドーの立ち位置を守るというよりは、レイヤーを上下動しながらボールを引き出し、チームを前進させようとする役割である。

 そんな中で先制したのはパレス。セットプレーの流れからアンデルセンの落としをベンテケが叩き込む。立ち上がりから保持でかき回し試合を支配したパレスが一歩前に出る。

 トップ下に入ったギャラガーは良し悪しという感じ。縦にボールを進める強引さは2点目にもつながっているし、得点シーンを見ればチームにいい影響を与えているのは明白。その一方で、ゴールに直線的に向かいすぎるきらいがあるのは微妙なところ。

 保持が出来ている一方で縦に急ぎすぎていることで相手にも攻め入る機会を与えてしまっている感が否めない。もう少し落ち着いて保持の時間を作ってもいい。

    ボールをひっかけてくれることで前に進む機会を得たバーンリー。ゴールに迫るチャンスメイクことできないものの、パレスにはセットプレーという決定的な弱点がある。CKを得るだけで得点の機会は十分に確保できる。

 案の定、バーンリーはセットプレーから2得点。パレスは今節も弱みとなっているセットプレーの守備がチームの足を引っ張ることになってしまう。

 前半のうちにこちらもセットプレーから3点目を決めてリードでハーフタイムを迎えたパレスだったが、後半頭にコルネらしい豪快なボレーが炸裂し、すぐさま同点に。

 後半はオリーゼを大外に置くことで盛り返しを見せたパレス。だが、仕上げのもう一押しとしてエドゥアールを入れてFW増やしたところでバランスが崩れ、バーンリーに押し込まれる機会が増えるという展開に。

 終盤はむしろ、バーンリーのシュートが枠にいかないことを安堵する場面すらあったパレス。バーンリーの粘り腰の前に、パレスは悪癖の勝ちきれない部分を再び露呈した試合となった。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
バーンリー 3-3 クリスタル・パレス
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:19′ ミー, 27′ ウッド, 49′ コルネ
CRY:8′ 36′ ベンテケ, 41′ グエーイ
主審:シモン・フーパー

④ニューカッスル【19位】×ブレントフォード【14位】

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■理想は保持で制御、現実はド派手な撃ち合い

 サウジアラビアの投資ファンドとニューカッスルファンの期待を一身に背負ったエディ・ハウの初陣。肝心の本人はまさかのコロナ陽性(ただし無症状っぽい)ということで、ベンチに不在というなんとも締まらないものだったが、ボーンマスで見せてきたショートパス主体のスタイルがニューカッスルとどう融合するのか楽しみにしているファンは多かったはずだ。

 だが、そんなことを確認する以前に試合は落ち着かない立ち上がりになる。前半早々にセットプレーからラッセルズが先制点を奪い、好スタートを切ったニューカッスルだったが、直後のプレーでトニーのシュートをダーロウが痛恨のファンブル。あっさりと同点に追いつかれてしまう。

 1-1で試合が少しトーンダウンすると、徐々にニューカッスルはエディ・ハウ色が出てくるように。展開力に優れたシェルビーと推進力に長けたウィロックの組み合わせはいかにもエディ・ハウらしい保持局面を重視した人選。従来よりもスローにボールを回し、前線ですらジョエリントンのポストから前を向く選手を作る丁寧さ。サン=マクシマン頼みからの脱却を図るアプローチが見られたニューカッスルの保持である。

 だが、両チームとも最終ラインの危うさが目につく分、この試合に関しては丁寧な前進よりもダイレクトな流れに乗る方が向いていたのも確か。どちらもバックラインの対応は怪しかったが、トニーとムベウモがポストで起点になったところからのブレントフォードの攻撃が確立されている分、ニューカッスルの方がやや守備で危うさが合ったように思う。CHに守備でフィルター役になることは期待できず、ウィロックは保持でもあわやというボールロストを犯すなどイマイチ波に乗れない。

 ある程度押し上げたところからジャネルトがサイドチェンジを行いWB→WBの攻撃を完結させたブレントフォードが逆転。ヘンリーのゴールで2-1に。だが、これはすかさずやり返したのはジョエリントン。ニューカッスルは即座に同点に追いつく。

 後半にいけばいくほど、試合はエディ・ハウ流の保持で制御したいスタイルから離れていくように。アップテンポで撃ち合いになった中で先に点を奪ったのはブレントフォード。こちらはややラッキーな形でラッセルズに当たったシュートがラッキーな形でゴールに吸い込まれていった。

    ブレントフォードに先行を許すニューカッスル。だが、ニューカッスルは保持で落ち着いたスタイルにチャレンジこそしているものの、アップテンポな戦いが彼らに向いていないわけではない。

 むしろ、この速い展開はサン=マクシマンの独壇場。ゴール前のシーンが無条件に増えるこのような試合は彼のダイナミズムさは増す一方。75分に同点弾を決めて、新監督下でも変わらない存在感を示して見せた。

 ド派手な撃ち合いとなった一戦は3-3のドロー。未勝利を脱することはできなかったニューカッスル。新監督の下で早めに今季の初勝利をあげたいところだが・・・。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
ニューカッスル 3-3 ブレントフォード
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:10′ ラッセルズ, 39′ ジョエリントン, 75′ サン=マクシマン
BRE:11′ トニー,31′ ヘンリー, 61′ ラッセルズ(OG)
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑤ノリッジ【20位】×サウサンプトン【13位】

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■初陣は今季初の連勝に

 保持で主導権を握ったのはアウェイのサウサンプトン。自由自在に動き回るCHを捕まえるのに苦しむノリッジは保持の権利を彼らに譲った格好である。CHが深い位置をとる分、SBを上げるのがサウサンプトンの特徴。両ワイドでSBが攻撃に絡みながらサイドを破るのが今季のサウサンプトンの攻撃の肝である。

 左サイドでは斜めのパスと走り込みができるウォーカー=ピータースが、右サイドでは広いスペースでスピード勝負に持ち込むことができるリヴラメントが躍動する。彼らがサイドから相手を押し下げると今度は中央があく。ウォード=プラウズが中央からサイドへの自由な配球ができたのは、サイドできっちり押し下げられるから。ちょっとマッチポンプ的なところもある。

 とはいえディーン・スミスが率いるノリッジもポゼッションを諦めたわけではない。前節、まだファルケが指揮していたブレントフォード戦での勝利はこれまでの直線的な攻撃からやり直しも含めたポゼッション志向の高まりを感じさせたが、スミスが選んだ方針はこの形の踏襲である。ウィリアムズやギルモアなど、このやり方に適している若手選手を抜擢し、サウサンプトンに対抗するようにボール保持に挑んだ。

 先に結果を出したのはアウェイのサウサンプトン。左サイドの多角形の崩しからアダムスが強引なシュートで打開。早々に結果を出す。だが、ノリッジもプッキがすぐに反撃。サウサンプトンが左サイドからの攻撃を成立させたのが、サウサンプトンの先制点に繋がったのだが、ノリッジの同点弾はサウサンプトンの左サイドの攻撃が詰まったところから。被カウンターには弱い構造になっているサウサンプトンは攻撃をミスると危険と紙一重である。

 カウンターで言えばラシカのドリブルも健在。縦への推進力で言えば右のSBのアーロンズも頼りになる存在。徐々にノリッジは攻撃の手段が増えてきた印象である。

 試合が進むと共に段々とノリッジの保持の時間が増えていくように。左サイドのウィリアムスとギルモアを軸にやり直しながらの前進の機会をもうけて反撃を試みる。

 試合を決着させたのはセットプレーである。CBのハンリーがファーのミスマッチを生かした競り合いからヘディングを叩き込み、終盤に決勝点をゲット。悪い立ち上がりから逆転勝ちを見事に掴んだのノリッジ。ディーン・スミスの初陣はノリッジ今季初の連勝という最高の形に。内容も含めて少しずつではあるが残留の希望の芽が出てきたノリッジであった。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
ノリッジ 2−1 サウサンプトン
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:7′ プッキ, 79′ ハンリー
SOU:4′ アダムス
主審:マーティン・アトキンソン

⑥ワトフォード【17位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】

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■旅の終わりはヴィカレッジ・ロード

 ダービーの完敗で再び解任が予断を許さない状況になってきたスールシャール。ここから先はCLに加えてリーグ戦はチェルシー、アーセナルと上位勢との対戦が続く展開になるため、確実にワトフォードを叩いておきたいところ。

 だが、そんな状況とは裏腹にユナイテッドのパフォーマンスはファンが頭を抱えたくなるものだった。立ち上がりのマティッチの持ち上がりこそ、プレス隊が手薄というワトフォードの弱点に沿ったものではあるものの、以降は各駅停車のポゼッションに終始。確かに積極的にプレスにはきたものの、人を嵌める以上に工夫があったわけではないワトフォードの圧に明らかに対応ができない。

 プレスに苦しむというよりはデリケートさに欠けると言った方が正しいだろうか。例えば、序盤に与えたPKはその典型。ブルーノ・フェルナンデスが無造作に蹴り上げたボールも、マクトミネイの後ろからのタックルも非常に散漫で軽いプレー。この場面ではデ・ヘアに救われたが、明らかに状況はよろしくなかった。

 その後も保持から危険なボールロストを続けるユナイテッド。面白いようにボールを引っ掛けられるワトフォードはカウンターからチャンスを量産する。PA内でも厳しさがないユナイテッドの守備はカウンターを受ける局面でも弱みを露呈。あっという間に2失点を喫してしまう。

 後が無いユナイテッドはHTに選手交代とシステム変更。マルシャルとファン・デ・ベークを投入し、システムを超攻撃的な3-5-2に変更する。すると、この交代が的中。大外を使う攻撃と中央で上下動を繰り返せるファン・デ・ベークの存在がマッチし、反撃の合図となる得点を早々に決める。

 その後も外回りからラインを押し下げる形で攻勢を続けるユナイテッド。その勢いに冷や水をぶっかけたのがキャプテンであるマグワイアだった。前半のボールロストと同じく軽率極まりない2つの警告で退場すると、反撃ムードは一気に萎んでしまうことに。

 攻撃陣を入れ替えながらカウンターを活性化するワトフォードが再びリズムを取り戻す。決定的な3点目を決めたのはジョアン・ペドロ。スクランブルでCBに入ったマティッチとショウの脳震盪で急遽SBに入ったダロトの左サイドをぶっ壊し、試合を完全に決着させる。

 終了間際にはデニスも得点を決めて、ワトフォードはエバートン戦の再現となる後半追加タイムのオーバーキル。何度も解任の危機を免れてきたスールシャールにとどめを刺したのはワトフォード。粘り強くスールシャール政権を続けてきたユナイテッドだったが、ついにヴィカレッジ・ロードでその幕を下ろすことになった。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
ワトフォード 4-1 マンチェスター・ユナイテッド
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:28′ キング, 44′ サール, 90+2′ ジョアン・ペドロ, 90+6′ デニス
Man Utd:50′ ファン・デ・ベーク
主審:ジョナサン・モス

⑦ウォルバーハンプトン【8位】×ウェストハム【3位】

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■トランジッションの優位がものをいう好勝負

 連敗スタートから見事に立て直しトップハーフまで舞い戻ってきたウルブス。リバプールをホームで破り、CL出場権争いに本格名乗りをあげたウェストハム。上々の勢いに乗る両チームの一戦は両チームの勢いを反映したレベルの高い試合となった。

 リトリートが素早く、陣形が整った状態で攻め合うことになった両チーム。互いにアタッカーがサイドに流れながら攻め込む形を狙うが、守備側の帰陣が早く攻め込むことができない。

 より、慎重な立ち上がりになったのはアウェイのウェストハム。普段であれば左のSHがベースポジションであろうフォルナルスを左のWB気味に起用し、5枚埋める形で重心をきっちり下げる。トップ下のベンラーマとトップのアントニオは中央付近に浮遊。フォルナルスが本来いる位置は空けたままにした。

 序盤は撤退守備に苦戦したウルブスだったが、徐々に手応えを掴み始める。ウェストハムが早めに撤退を行う分、中盤で自由を得たウルブス。ネベスとモウチーニョが段々と支配権を握りウェストハムを押し込んでいく。ウェストハムも1人がブロックから飛び出して行っては、そのスペースを埋めるカバーリングの動きがスムーズであり、ウルブスには穴を見せない。

 この日のウルブスが素晴らしかったのはウェストハムのロングカウンターをかなり綺麗に、かつ高い位置で止めることができた点である。バックラインの押上からのインターセプトが見事で素早い波状攻撃に移行することができた。

 加えて、5バック相手に奮闘したのはラウール・ヒメネス。パワーヘッダーのイメージが強いFWだが、この日はラインの駆け引きでウェストハムの守備陣を翻弄。5枚という数の論理を無駄にするラインブレイクでウェストハムにラインアップを許さない。

 後半、押し下げられたウェストハムは両サイドのプレスを強化し5-2-3気味で徐々に高い位置からのプレスに挑むように。しかし、この日のトランジッションはウルブスに軍配。特にバックラインでも押し上げての守備が効いていたのはウルブスの右サイド。セメドはこうした形での貢献が継続できれば文句なし。この試合ではその後の攻め上がりも含めてパーフェクト。ラウール・ヒメネスが決勝点のシュートを決めたシーンでもスペースメイクに尽力する。

 その後は撤退守備でウェストハムからがっちりゴールを守るウルブス。撤退からのトラオレの投入は普段、ウェストハムがリードしたときに相手チームに嫌がられるような籠城+ロングカウンターの策。ウェストハムは人にされて嫌なことを人にされている状態である。

    2列目のアタッカー陣をフレッシュに入れ替えたり、ソーチェクを高い位置に押し上げるトライをしたウェストハムだったが、最後まで牙城は崩せず。レベルの高いダークホース対決はウルブスが見事に競り勝ってみせた。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
ウォルバーハンプトン 1-0 ウェストハム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:58′ ヒメネス
主審:マイク・ディーン

⑧リバプール【4位】×アーセナル【5位】

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■3強は遠い

 レビューはこちら。

 アーセナルにとってはトップ4へのチャレンジの一戦。前節、ウェストハムがリバプールを破り、CL出場権争いに挑む資格があることを示したように、彼らもまたアンフィールドで自身に同じ価値があることを証明したいはずだ。

 高い位置からプレスにいった序盤はアーセナルの気概が見えたといっていいだろう。アーセナルが対強豪相手に見られる1枚余らせる形でのプレスはこの試合でも健在。

    今まではCHのジャカが前線の守備が水漏れを起こしそうになった時に出ていくスタンスだったが、この試合ではリバプールのLSBであるツィミカスのところを後方からの援軍対応でカバーすることにしていた。したがって後方から支援役になるのはCHではなく冨安である。

 個人の資質を考えるならば、より前に適性があるタバレスを押し出す方がベターな気もするが、リバプールのストロングである右サイド側でこうしたズレを進んで作るのは難しいのはわかる。ツィミカスはずれた分、時間を享受できていたが、アーセナルは少なくとも前半に致命的なダメージをここから食らうことはなかったのでアルテタの判断はあっていたように思う。

 リバプールはチアゴの列落ちでボールの落ちつけどころを見つける。アーセナルはこれをスルーして撤退を決めるが、これが悪手だったか。ライン間を狙うジョッタ、マネに加えてサイドに流れるオックスレイド=チェンバレンなどリバプールのあらゆる動きに対して、アーセナルはCHが守備における優先度を定めきれずに動けない状態になってしまう。

 こうなると押し込み放題になるリバプール。さらにこの日はアレクサンダー=アーノルドが大当たり。大外からバシバシクロスをピンポイントで合わせてくる。

 さらにアーセナルはトランジッションでも後手。ファビーニョ、ファン・ダイクはもちろん古巣対決で気合入りまくりのオックスレイド=チェンバレンもアーセナルのカウンター潰しに大きく貢献。陣地回復を許さない。

 40分手前にセットプレーからマネが先手を奪ったリバプールは後半にハイプレスで畳みかける。後方にスペースを空けたハイプレスはかいくぐることさえできればアーセナルにとって大きなチャンスになりうる局面だが、ここでも勝者はリバプール。タバレスのミスを誘い早々に2点目をゲット。セーフティリードを確保する。

 なりふり構わないプレスに出る必要がでてきたアーセナル。すなわち、もうプレスは同数で前から行くしかなかったのだが、このギアを切り替えられなかったのが冨安。彼が対面のツィミカスへのアプローチが遅れてしまったことが3,4点目の遠因である。

 あらゆる局面でアーセナルとの格の違いを魅せたリバプール。序盤はラムズデールの攻守を軸に粘りを見せたアーセナルだったが、打開策を見つける前に決壊を迎えてしまい、アンフィールドでのチャレンジの結果は残念なものになってしまった。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
リバプール 4-0 アーセナル
アンフィールド
【得点者】
LIV:39′ マネ, 52′ ジョッタ, 73′ サラー, 77′ 南野拓実
主審:マイケル・オリバー

⑨マンチェスター・シティ【2位】×エバートン【11位】

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■攻勢に出た故の無限ポゼッション

 マンチェスター・ダービーを制し、首位のチェルシーを追撃するシティ。今節は徐々に危険水域に入りつつあるエバートンとの一戦である。

 予想通り、立ち上がりからシティの保持を軸に試合は進んでいく。しかしながら、エバートンはなんとか策を講じてこれに対抗した。キーマンとなったのはトップ下のタウンゼント。4-4-2のような布陣が基本だが、ラインを下げる際には彼がIHに入る形で中盤の枚数を5枚にする。

 これにより中盤で幅広く守れるエバートン。CHがボールサイドにスライドしても陣形に穴が開きにくい形になっている。シティは大外のトライアングルとロドリの素早いサイドチェンジから打開を図るが、エバートンは押し込まれながらも最後の一差しを許さない。

 とは言え、流石に陣地回復は行わないといけないエバートン。シティが狙ったのはまさにここのフェーズ。1人でボールを運べるグレイが負傷でいなくなってからはひとまず中盤に預けなければ前に進めなくなってしまったエバートン。ロングカウンターの起点となる中央へのパスをシティに狙い撃ちされ、シティのショートカウンターを食らうことになる。

 中央からの打開はほとんどこのパターン。PKが取り消されたスターリングが倒れ込む流れのシーンも、このショートカウンター気味の展開からである。

 ダイブでPKを取り消されたスターリングだが、抜け出しからのワンタッチゴールで面目を保った格好。この日はRWG起用。途中までは大外に張る機会が多かったが、徐々に中央に絞ってのプレーが増えた矢先のことだった。

 シティの追加点は先に挙げたエバートンのロングカウンターの発動を防がれる流れから。今度は空いたバイタルからロドリがスーパーなミドルを叩き込んで見せた。

 2点に差が広がり、なんとか前に出なければいけないエバートン。4-4-2にシフトし攻撃に転じる構えに出る。しかし、これは絵に描いた餅に。プレスにおいては鈍重な2トップを併用する形ではそもそもシティから全くボールを奪い返せない。

 無限にシティがポゼッションを続けるフェーズをただただエティハドのお客さんはのんびり見守るばかり。仕上げのベルナルドのシュートが決まる前にシティの勝利を確信していた人も多かったことだろう。

試合結果
2021.11.21
プレミアリーグ 第12節
マンチェスター・シティ 3-0 エバートン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:44′ スターリング, 55′ ロドリ, 86′ ベルナルド
主審:スチュアート・アットウィル

⑩トッテナム【9位】×リーズ【15位】

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■息切れをしとめた逆転勝ち

  前半の主導権を握ったのはアウェイのリーズ。最終ラインは基本はクーパー、フィリップス、ジョレンテの3枚だったが、この試合では1列前の左サイドに入ったストライクの存在が上下動しながらビルドアップを手助け。トッテナムのプレス隊を回避するためのキーマンとなる。

 攻撃もその左サイドを中心に大外を回すような闘い方がメインだった。ストライク、ハリソンを中心に内側のゲルハルトなどの中央の選手との壁パスでエリア内に侵入しながらクロスをラストパスとして上げる形がお決まりのパターン。ブロックの外から抉るような形でトッテナムを攻め立てる。

 一方のトッテナムはやはりこの試合でも早い展開でないと得点の匂いはしなかった。WBの大外での抜け出しを基準にする形はコンテになってから押し出している部分。それだけに最終ラインからのフィードはもう少し磨きたいところ。マンマーク志向の強いリーズにこれだけCBが持たされてしまうというのは少し考えものである。

 遅い攻撃になると一気にこじ開けられなくなるトッテナム。ルーカスがボールの引き出しに奮闘してはいたが、早い展開からWBの抜け出しを使う形以外はいまひとつだった。

 前半終了間際のリーズの先制点は狙い通り左サイドを大外から崩したもの。ハーフタイムを迎える直前にノルマとなる先制点を手にする。

 後半はホームのトッテナムが徐々に盛り返していく。リーズは前線だけでなく中盤より後ろのところのマンマークが効かなくなってしまい、トッテナムに押し込まれる時間が増えていく。加えて、トッテナムはケインとソンに背負わせれば個人で勝てることを思い出したようで、中央で長いボールを起点として前進していく。前半よりも重心は高く保つことができている。

 中央での高い起点で押し込むと、レギロンのクロスでPA内の陣形を乱したところでホイビュアのシュートで同点。PA内であまりにも守備陣がパスを簡単に通しすぎてしまったリーズであった。

 攻守に運動量が落ちたリーズはこの後も厳しい状況に。ルーカスのドリブルに思わずファウルを犯すと、FKからこぼれ球をレギロンが押し込んで勝ち越し。レギロンは嬉しい初ゴールとなった。

 リーズにとって救いだったのはトッテナムに試合をコントロールする術がなかったこと。スキルの面でもそうだけど、セセニョンのようなWBの攻撃的な控え選手を積極的に使っているところとかを見ると、コンテはそもそも落ち着かせる気がなかったように思う。リーズにもチャンスはある終盤戦だった。

 カウンターでの優位性は動かさせなかったトッテナムがなんとか逃げ切りを決めてコンテ体制初勝利。終盤にバテたリーズをきっちり仕留め、再始動となる白星を掴んだ。

試合結果
2021.11.21
プレミアリーグ 第12節
トッテナム 2-1 リーズ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:58′ ホイビュア, 69′ レギロン
LEE:44′ ジェームズ
主審:アンドレ・マリナー

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