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「継続は力なり」~2018.12.1 J1 第34節 川崎フロンターレ×ジュビロ磐田 レビュー

 今節の結果如何では入れ替え戦に回る可能性がある磐田。勝ち点40を超えてこんなことに巻き込まれるのは不条理極まりない。昨季は5点を取って大勝した等々力で残留を決めたいところだ。

 優勝を決めて今節は等々力に凱旋になる川崎。最多得点、最少失点達成をモチベーションに磐田を前に立ちはだかる。ホームでの有終の美を飾れるだろうか。

 スタメンはこちら。

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目次

【前半】
ハーフスペースから川崎が主導権を握る

 ボールを握る川崎に対して、積極的なアプローチを仕掛けてきた磐田。立ち上がりに高橋が家長に強く当たっていったように、比較的高いラインを保ちながら守るというのがプランだったようだ。高いライン、コンパクトな陣形ではあるが、3枚で組み立てる川崎の最終ラインに対して、磐田の1stプレス隊は2枚。後ろからのプレッシャーを阻害するためには枚数が足りていない。正直、試合前にスタメンを見たときに磐田はこのプランだとこの前線と2列目の組み合わせでいいのかな?とは思った。
 実際に試合が始まった答えとしては予想通りと感じたところもあれば、そうでないところもあるという印象だ。予想通りと感じたのは横のスライドの部分。ブロックは4-4-2だったのだが、中村俊輔と上原の間が空いてしまうシーンは散見された。川崎は長谷川や、負傷した車屋と交代で入った登里が主導でこのスペースを使ってチャンスメイクを行っていた。
 自分の予想以上だなと思ったのが、山田大記の奮闘。SHとしてこれだけ走れるとは正直思わなかった。

 磐田は4-4-2にして仕組みの上で前から取りやすくした分、いつもの5バックと比較すると、各レーンのスペースは埋めにくくなっていた。川崎のねらい目としては先述の通り、山田と田口がハードワークを続ける右よりも左から。21分の谷口からの裏への登里のパスとかは典型。このシーンでは、ハーフスペースに立った谷口はフリー。受け手の方もハーフスペースに誰がついていいかわからない選手が立つことで、磐田の対応が後手に回り、結果として川崎は間だけでなく大外や裏抜けのパスが有効活用できるようになっていた。チームとしては中村俊輔を押し下げるように左サイドからの前進を選択し続けていた。前半のアタッキングエリアをみると川崎の左サイドでのプレーはおよそ全体の50%くらいを占めていた。

 あとは裏抜けが多かった知念もハーフスペースへの抜け出しを多用。マークをずらしながらスペースメイクする意識がうかがえた。ハーフスペースの磐田の対処法としては、ボランチが下がる人海戦術で対処する形が多かったか。

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 磐田のボール保持は最終ラインから長いボールが出てくることが多かった。川又へのシンプルな長いボールを精度が高く送り込めた状況では、前進は可能だった。最終ラインの横パスでフリーな選手から長いボールをけりこんでいた印象だった。セカンドボールを拾ってからは割と手数をかけていて、川又に当てた流れで素早くカウンターから攻撃を完結させよう!という流れはあまり多く見られなかった。エリアの手前でサイドチェンジしながら、エリア内にいい形でボールを送り込むタイミングをうかがうパターンが多い感じ。よほど裏へのパスがうまく通るか、川崎のミスからのショートカウンターでは速攻やっていたけども。この試合は川崎に単純な連携ミスからのピンチが散見されたので、磐田としてはそういった部分に付け入りたかった。奈良のロストとか最終ラインに落ちたときの憲剛のパスミスとか。
 どちらかというと川崎目線ではボールを回して手数をかけられるよりも、早く攻め落とされる方が嫌だったのだけれども、あまりそういう機会は多くなかった。川崎がボールを敵陣まで運んで、磐田は陣形を押し下げられてしまっていたし、2列目のスピードはややショートな感じがするから、少し厳しいのかもしれない。

 磐田は受けに回った厳しい場面へは個人のカバーで対応。上原、大井、大南のカバーが光り、川崎を前半は封殺できた。両チームとも決定機になるシーンはほとんど見られず、試合はスコアレスで前半を折り返す。

【後半】
展開とは裏腹な先制点

 両チームとも選手交代はなし。磐田は後半に入ったタイミングでプレスを強化。川又と田口で挟み込み守田からボールを奪ったシーンは狙いが一つ見えたのではないか。ただし、プレスのメカニズムに再現性があるとはいいがたく、うまくいったシーンは数えるほど。序盤をしのがれると、徐々に川崎に押し込まれるシーンが増えてくる。
 磐田は後半に前線のプレスを強めた影響で、ボールサイドと逆サイドが空くようになる。川崎はサイドに人を集めてから脱出→サイドチェンジをすることで、空いている逆サイドをうまく使っていた。空いているスペースがない場合は、また前半と同じように人をずらして作り出す。ハーフスペースに憲剛や長谷川が顔を出し、受け手として機能していた。田中と守田がうまく空いている選手を見つけての配給役として、十分な働きを見せていた。特に田中は緩急の使い方がうまく、相手のタイミングを外すようなパス出しや方向転換をしていた。とてもいいですね。割と下がるの早かったけれども。

 そんなこんなで川崎のワンサイドゲームに徐々にシフト。前半の左サイドだけではなく、家長とエウシーニョの存在感が増した右サイドからの崩しが増えていく。磐田としては難しい展開だろう。プレスはハマらないので重心はあげられない。引き分けでもOKという流れ。中村俊輔は50分を過ぎたあたりからほとんどWBのような位置で守備をしていた。

 しかし、流れとは異なる形で試合は動く。スローインから谷口をかわしてエリア内にクロスを上げたのは、中村俊輔に代わって入った松本。そして、決めたのは大久保嘉人。ボールと遠ざかるファーへの走り込みはさすがのセンス。シュートも難しいヘッドでたたきこんだ。大久保らしいストライカーのセンスが感じられるゴールだった。

 残留に大きく前進した磐田だったが、恐ろしいことは起こるものだ。奈良の同点ゴールは得点を決めた大久保を下げた直後のプレーから。あと1分交代を待っていたら、残りの時間の磐田の過ごし方は変わっていたかもしれない。しかし、選手交代でFWを削ってしまった磐田にはもう引きこもるしか選択肢がなくなってしまった。

 川崎は再び左からの崩しを狙う。最後の交代カードとして投入された齋藤学と阿部の投入でトップ下にポジションを移した家長を軸に左サイドを狙い撃ち。94分のラストプレーで大井のオウンゴールを誘発したのは家長が大南を剥がしたプレーからだ。

試合はゴールとともに終了。磐田は入れ替え戦に回ることになった。

まとめ

無情な結末を迎えてしまった磐田。4-4-2で前から!という意気込みはフォーメーションからは感じ取れたが、展開的に運動量が必要で守備に回る時間が多くなるであろうにSHに中村俊輔を起用したり、プレスや間のスペース管理が個人の判断任せになっていたように見えたのは気になった。ラストプレーもそれまで川崎に再三破られていたハーフスペースの突破から。スライディングをしなければ失点不可避のシーンであり、それまでギリギリのところでカバーリングを続けていた大井は責められない。入れ替え戦次第で来季戦うカテゴリーが決まるが、結果に関わらずチームとして形を示せなかった首脳陣の一新される可能性もあるだろう。

もがきつつも最後は有終の美を飾った川崎。勢いをもたらす同点ゴールをつかんだ奈良はインタビューで「1年間あそこに走り続けた」と述べた。この試合でもCKを奈良に合わせる形は何回も試しており、それが終盤に実った形だ。
このレビューを書いている途中にエウシーニョの契約満了のアナウンスが飛び込んできた。運動量と意外性を川崎にもたらしてくれた彼の退団は川崎に大きな穴をあけるだろう。それでも、川崎は歩みを続けなければいけない。今後はサイド頼みではなく、中央後方のビルドアップを強化しなければ、質を維持するのは難しいかもしれない。FC東京戦から見られる、積極的なGKとCBのビルドアップ関与はまだ始まったばかりの新しいチャレンジである。この試合でもアシストを決めた家長にパスを供給したのは谷口。徐々に中央後方からの配球は形になりつつある。
チャレンジにおいて大切なのは継続だ。中央の高い位置でCBがプレーするのはリスクがある。メカニズム的にマイナス収支なら取りやめる必要があるかもしれない。しかしながら、新しいチャレンジには痛みはつきもの。ましてやそれが4年間いて当たり前だった選手の影響であれば、痛みを伴うのは不可避だろう。
この日ゴールという結果を得るために1年間CKに飛び込み続けた奈良のように、新しいチームが来年もチャレンジを継続して結果をもたらせるように祈るばかりだ。そして今までありがとう、エウソン。

8月の清水戦から気まぐれで始めて4ヶ月弱。リーグ戦だけだったけど、なんとか川崎の2018年レビュー完結させられましたー!おつかれさまー!来季も継続するかは未定ですが、ここまで続けられたのは読んでくれたみなさんのおかげです!ありがとうございましたー!「継続は力なり」ということで、試合を見直して書き続けた自分自身にも力がついてますように!笑

試合結果
2018/12/1
J1 第34節
川崎フロンターレ 2-1 ジュビロ磐田
【得点者】
川崎:84′ 奈良、94′ 大井(OG)
磐田:78′ 大久保
等々力陸上競技場
主審: 木村博之

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