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「保持で振り回されないために」~2021.9.29 J1 第28節 川崎フロンターレ×ヴィッセル神戸 プレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

明治安田生命 J1リーグ 第28節
2021.9.29
川崎フロンターレ(1位/23勝6分1敗/勝ち点75/得点65/失点20)
×
ヴィッセル神戸(4位/15勝9分5敗/勝ち点54/得点44/失点26)
@等々力陸上競技場

目次

戦績

近年の対戦成績

図1

過去5年の対戦で川崎の6勝、神戸の2勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の5勝、神戸の3勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・直近4試合の公式戦での対戦で川崎は神戸に無敗(W2,D2)
・川崎は公式戦の神戸戦で直近9試合連続得点中。7試合が複数得点。
・直近7試合のホームでの神戸戦で1敗のみ(W4,D2)
・水曜のリーグでの対戦は過去に4回。川崎はいずれも負けなし(W2,D2)

   直近は川崎が終了間際の得点で点を獲るリーグ戦が続いているが、このカードでも比較的終盤決着は多い印象がある。 シーズン前半での対戦は菊池の劇的なゴールで土壇場で神戸が勝ち点を拾って見せた。逆にその菊池のミスから勢いを得た川崎が宮代の得点で逆転勝ちすることもあった。

 直近の成績でいえば川崎の方がやや良好。特に得点力の部分では安定して神戸に牙をむいている。ホームでの成績はさらに好調で直近7試合で1敗のみ。中2日はハードだが水曜でのリーグ戦もジンクス的には川崎には追い風となる。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・大島僚太は離脱が続いている。

【ヴィッセル神戸】

・山口螢は広島戦で負傷交代以降、2試合ベンチ外。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・勝てば4月以来のリーグ戦5連勝。
・上位8チームとのホームでのリーグ戦は今季5戦全勝。
・等々力での公式戦は直近19戦負けなし(W15,D4)
・リーグでの後半追加タイムでの得点は5点。福岡に次いで多い。
・小林悠は2017年以降のリーグでの神戸戦で得点を取った試合は5戦全勝。同期間で小林が点をとれていない試合は1回も勝っていない(D3,L1)。
・鬼木監督が対戦したことのあるJ1在任中の日本人監督の中で唯一勝ったことがないのは三浦監督。

 2試合連続劇的な勝利を掴んだ川崎。薄氷ながらも勝ち点3を積み重ねて連覇に向かって前進している。後半追加タイムのでの得点の多さは福岡に次いで2番目に多い。

 川崎にとって心強いのはここからホームゲームが続くことだろう。昨年の札幌戦以降負けていない等々力の舞台で観客の拍手に包まれながらプレーできるのは選手にとって後押しになるはず。特に上位勢には勝負強さを見せている。

 ジンクス面でキーマンになりそうなのは小林悠。川崎×神戸では11得点と同カードの最多得点者でもある小林だが、2017年以降のリーグ戦9試合のうち、川崎が勝った5試合ではいずれも得点を挙げている。逆に点を獲っていない4試合では未勝利。エースは自らのゴールで鬼木監督に対三浦監督初勝利をプレゼントすることができるだろうか。

【ヴィッセル神戸】

<神戸のMatch facts>
・現在、5位以上のチームに今季未勝利(D1,L3)
・直近6試合のリーグ戦のアウェイゲームで無敗(W4,D2)
・直近5試合の公式戦のアウェイゲームでいずれも失点している。
・先制された20試合のうち、12試合は勝ち点を得ている。
・古橋を除けば、チーム内のリーグ戦得点王はドウグラスと菊池流帆(5点)
・アンドレス・イニエスタは過去4試合の川崎戦で得点もアシストも決めていない。

 三浦監督への賛否の声はそれでもやむことはないだろうが、前評判とは裏腹に神戸はリーグで安定した勝ち点を積んでいる。戦術の柱というか、そのものであった古橋を失ってなお急激な失速に見舞われないのは正直意外だった。

 ただ、今季は上位勢には苦戦。ACL出場権の直接のライバルであるチーム相手には勝ち点を積み重ねることが出来ていない。

 アウェイゲームは得意で直近の6試合は無敗。失点は多いが、逆転で勝ち点を拾うことも多い厄介な相手といえるだろう。確固たる得点源がないのは気になるところではあるが、復調傾向のチームにイニエスタの魔法が加われば、ACL争いで一歩前に出る可能性も大いにあるだろう。

展望

■清水戦で見えた上昇の兆し

 前回対戦時からの神戸の最も大きな変化といえば、もちろん古橋の退団だろう。チーム内得点王であり、リーグでも上位のスコアラーが退団したのだから影響がないわけがない。

 もっとも、古橋がチームにもたらしていたのは得点だけではない。攻守においてのスプリントでチームに質だけでなく、量を担保していた古橋はまさに神戸のメソッドの核といって差し支えがないだろう。

 具体的に影響の懸念としては攻守の切り替えの頻度と強度の低下だ。直近の試合は大迫がスタメンの試合を見た方がいいだろうということでFC東京戦と札幌戦をチェックしたが、この2試合はとにかくスローリーでローテンポな試合だった。

 少なくとも限られた時間帯ではハイインテンシティでボール奪取から速攻を仕掛けることが出来るのが三浦監督の神戸というイメージだったのだが、そのスイッチの入れどころが見つからず、強度を上げることが出来ないでいるように見えた。

 もちろん、それでもイニエスタはうまい。うまいけども、彼だってパスの受け手となる選手が受けるための動きがパスを出しようがない。神戸は攻撃においてのポジションとりもスローリーになってしまっていた。イニエスタがボールを受けに降りてきた分、そのまま重心が後ろになってしまい、大迫との距離はどんどん離れていってしまうといった現象が見られており、うまくチームが機能していなかった。

 加えて、山口の離脱も痛手になっている。特に守備面で量を担保できるハードワーカーがいないとなれば、これだけスローに試合を進めなくてはいけないのも仕方ないのかもしれない。

 だが、直近の清水戦ではかなり神戸は一変した印象を受けた。札幌戦から採用した大崎とサンペールの2センターの4-2-3-1は札幌戦からだいぶ完成度を上げたように見える。

 後方のビルドアップは3-2型が基本。この3-2に誰が入るかで流動性をもたらしている。片方のSBを上げる一番シンプルな形はもちろん、大崎が左のCBの落ちる位置もかなり見られた。これにより、イニエスタがサンペールと並ぶように立つ。この2人が近い距離でプレーすればボールを奪うのは容易いことではない。

画像4

画像5

 大崎の降りる動きに対しては、相手がついていくかは迷いどころ。清水戦の神戸は落ちた選手に呼応するように高い位置を取る選手が出てきていたので、FC東京戦や札幌戦と異なり後ろが重くなりすぎることもなかった。

 加えて、幅を取る選手も必ず用意しており、対角のパスで相手のプレスの矢印と逆を取るようなフィードもちらほら。ローテーションのスムーズさや有効な対角パスの活用など、フィンク監督時代のパスワークに近い要素が垣間見えたというのが清水戦の感想だ。

 それに加えて、新加入選手が多い前線の連携にも光が見えた。孤立気味だった大迫は徐々に行動範囲を上下左右に広げている。それに合わせるように中坂や武藤がエリア内に入ることで前線の枚数を担保。清水戦ではサイドに流れる大迫がチャンスメイクし、内に入り込んだ武藤が決めるという見事な連携を見せた。

 守備において山口の不在を補っていたのは両CB。行動範囲を広げており、サイドまで出ていくのはデフォルトといっていいだろう。鹿島のCBみたいに出ていってつぶすのが正義。ここまで出ていくことでリスクをとってでも自陣後方のスペースを埋めないで済ませようというのが神戸の守備の狙いとなる。

■カバーしきれないスペースを使う

 川崎的にはまずは神戸の保持の時間を減らしたいはず。フィンク時代のように保持で振り回されて右往左往という展開だけは避けたいはずだ。

    清水戦ではやや前がかりになるときもあったが、基本的には神戸は前線からハイプレスを行うチームではない。中盤から助けに行ける山口がいないのならば、なおのこと慎重になるだろう。

 少なくともサイドに出てくるCBの裏のスペースまでは使い、敵陣を深い位置まで後退させたい。神戸の守備の陣形は間延びすることも多く、中盤が最終ラインのカバーに入るのは稀。

画像6

   コンパクトにブロックを維持することができている時間帯ならば大崎が最終ラインのカバーに入れるだろうが、プレスモードにおける大崎とフェルマーレンの間のスペースは広大で、人が1人いてもカバーするのは難しいように思う。

    したがって、サイドに出てきたCBが空けたスペースは放置されることが多く、ここは狙い目になるだろう。もちろん、侵入だけでなく攻略しきってしまうのがベストなのは言うまでもない。川崎としてはCBを引っ張り出すことはできたが、そのスペースを使いきれなかった鹿島戦のリベンジはここで果たしたいところだ。

 守備における提案として挙げられるのはマンマーク。可変式、ポジション入れ替えが頻発する相手へのオーソドックスな対処法である。ただ、その場合川崎のバックスは武藤や大迫といった神戸の前線を同数で迎え撃たなければならない。それはややリスクが大きいように思う。

 なので、部分的なマンマークにとどめ、ボールを持たせていい選手を決めるのも一つの手だろう。サンペール、イニエスタ、大崎のような要人から重要度を定めて前を向かせず、後方はある程度数に余裕を持って戦うのもありだろう。大きな展開を使うのが苦手な選手を見極めれば、多少は神戸の保持はノッキングするはずだ。

 もう1つのポイントは90分をうまく使うこと。中4日の神戸は川崎に対して日程面では有利ではあるものの、90分同じテンションで戦うのは難しい部類のチームといっていいだろう。18人で戦うのならば川崎に有利に働いてもおかしくない。

 リードを奪われてしまうと、神戸は5-4-1でCBの空いたスペースを埋めてきて自陣を固めてくる。こうなると厄介で崩す難易度がグッと上がる。前に出る必要性がある状況を維持し、神戸がコンパクトに守る状況が難しくなる形で試合を進めたいところである。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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