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「優位を色付けられるか」~2021.9.22 J1 第32節 鹿島アントラーズ×川崎フロンターレ プレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第32節
2021.9.22
鹿島アントラーズ(7位/15勝5分9敗/勝ち点50/得点49/失点29)
×
川崎フロンターレ(1位/21勝6分1敗/勝ち点69/得点61/失点18)
@県立カシマサッカースタジアム

戦績

近年の対戦成績

図1

過去5年間の対戦で鹿島の2勝、川崎の8勝、引き分けが5つ。

鹿島ホームでの戦績

図2

直近10試合で鹿島の2勝、川崎の5勝、引き分けが3つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・直近9試合の公式戦での鹿島戦で川崎は負けなし(W5,D4)
・川崎が首位で迎えた鹿島戦は過去5試合負けたことがない(W2,D3)
・鹿島ホームの公式戦において川崎が最後に負けたのは2014年(W5,D4)
・直近5年間のホームの川崎のリーグ戦で鹿島は1得点のみ。

 近年の対戦成績では川崎の圧勝。2018年のルヴァンカップの準々決勝以来、鹿島は川崎に勝利することができていない。

 特に鹿島が勝てていないのはカシスタでの試合。2014年のリーグ戦が最後の勝利で以降の6年間は川崎にはホームで勝てていない。特に深刻なのは得点力。直近5年のホームのリーグ戦で川崎相手に点を取れたのは前回のカシスタでのエヴェラウドただ1人だけ。

 今回は川崎が首位という無敗要素も加わっている。少なくともデータ面では川崎が優位。最後にもう一つ、川崎に有利なジンクスを追加しておくと、水曜開催の当該カードは過去2回。いずれもカシスタでの試合で共に川崎が勝利を挙げている。

スカッド情報

【鹿島アントラーズ】

・犬飼智也はハムストリングの負傷で離脱中。

【川崎フロンターレ】

・大島僚太、谷口彰悟、車屋紳太郎は欠場が続いている。
・旗手怜央、マルシーニョは前節負傷交代だが、試合後に鬼木監督が軽傷を示唆している。

予想スタメン

画像3

Match facts

【鹿島アントラーズ】

<鹿島のMatch facts>
・直近4試合の公式戦で3敗。
・直近の公式戦での4試合の負けは無得点。
・直近9試合の公式戦のホームゲームのうち、勝利した試合は全て3得点以上あげたもの。
・先制された18試合のうち、9試合では勝ち点を得ることに成功している。
・上田綺世が今季得点した11試合で負けたのは1試合だけ(W8,D2)
・今季の現在の所属選手でスタメン出場時の1試合平均勝ち点が最も多いのは常本佳吾(2.00)

 G大阪戦で勝利し、連敗はストップ。しかしながらそれ以前の試合はかなり苦しんでいた。特徴的だったのは得点がピタッと止まったこと。名古屋、福岡と4-4-2ブロックを敷いた相手に対して結果を出せていないことが気がかりである。

 勝利時は大量得点が通例となっており『3得点以上』という川崎ファンにも耳慣れたフレーズを実現できなければ勝ちきれていない。試合終盤は得点も失点も共に増加傾向にあるのが特徴。先制を許してもひっくり返すことができる爆発力がある。

 横浜FMキラーとしての座を確立しつつある上田綺世は今季は得点した試合でまた1つしか負けていない。その1試合が等々力での川崎戦となる。在籍選手の中で最もスタメン時の平均勝ち点が多いのは前回三笘を封じた常本佳吾(不在の選手込みなら白崎凌兵が1位)。今回は異なる選手とのマッチアップだが、川崎の前に立ちはだかる強大な敵になるのは間違いなさそうだ。

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・直近7試合の公式戦で2勝のみ。
・5月22日以来の3得点。
・リーグのアウェイ8連戦中。敗れたのは一度だけ(W5,D2)
・関東アウェイのリーグ戦は20戦連続無敗(W14,D6)
・家長昭博が出場した鹿島戦は直近18試合負けなし(W11,D7)
・知念慶は前節川崎にて初めてのリーグ戦複数得点を記録

 勝ちきれないが、負けてもいない。それが直近の戦績。徳島戦の勝利と怪我人の復帰で、その状況を打破してもう一山作ろうとしているのが今の川崎だろう。鹿島とは対照的な久しぶりの3得点の勝利が前節の徳島戦である。

 とはいえ、ACLとルヴァンカップを挟んでのリーグのアウェイ8連戦を1敗で乗り切っているのは上々といえそう。ここからはしばらくはホームゲームと2018年8月の埼スタ以来負けていないという抜群の成績である関東アウェイが続いていく。自主隔離が解除される来週には少しはゆっくりできるようになるはずだ。

 当note愛読者ならもうお馴染み。鹿島キラーとして名高いのは家長である。2010年のC大阪時代のカップ戦以来、11年間で18試合の出場した試合で無敗。通算17勝はキャリアで最も勝利している相手でもある。

 前節の勢いをそのままに上昇気流に乗りたいのは知念。リーグ戦での連続得点になれば2019年に記録した4試合連続得点以来。今節は完全休養したダミアンがスタメンだろうが、少ない出場時間でも爪痕を残したいところ。

展望

■強みは不安と隣り合わせ

 なんといってもインテンシティを攻守全面に押し出したのが鹿島のやり方である。守備においては基本的には目の前の人を捕まえながら、高い位置で止めていくイメージ。特に4バック同士での激突となるであろう川崎戦ではバチバチの対人バトルになることが多い。

 4-4-2である鹿島にとって唯一、噛み合わない場所になりそうなのは川崎のアンカー+2CBのトライアングル。アンカーを採用していないもののCHが段差をつける保持をすることが多い名古屋戦をチラッと見る限りは、おそらくは2トップがアンカーを受け渡しながら守ることになりそう。

 レオ・シルバが出場していた試合においては2トップが受け損ねた選手に対しては、中盤から出てくる超絶アグレッシブモードもある。前回対戦時の図を参照。

画像4

 しかしながら、ピトゥカと三竿のコンビではこの前線をキャッチアップするようなプレスはあまり見られない。当然、自陣守備に穴を開けないという観点から言えば理解はできる部分。だが、鹿島は結局後方でガッツリ人を捕まえにいくためにラインを乱すことが日常的な光景なので、ここで中盤が前線についてハイプレスに行かないことがいいのかは微妙なところ。リスクをとってでも、ショートカウンターの機会を増やした方がいい気もするが。

 ただ、それは鹿島側の事情なのでなんでも良い。川崎にとって大事なことはレオ・シルバがいないならば、こういった強気のプレスは減る傾向にあることをきっちり把握しておくことだ。

 同じ4バックと激しい運動量での守備という点で鹿島をFC東京の守備と比較することが個人的には結構多い。FC東京と鹿島で最も大きく異なるのはCBの行動範囲の広さである。前者はCBの行動範囲をなるべく限定(特にサイドに出ていくことが少ない)することが多いのに対して、鹿島は積極的にCBを動かすスタイルである。

 動いてでも刈り取ってしまうというのがアグレッシブな鹿島のスタイルの体現でもある反面、PA内での強度に不安があるということでもあるように思う。特に犬飼の負傷離脱はその要素をさらに際立たせているといっていいだろう。

 福岡戦でのブエノと林のコンビは判断が怪しく、PAから出ていった場面での遅れ、サイドへのカバーリング意識の薄さ、PA内での体の寄せのルーズさなどあらゆる部分で弱みを露呈してしまった感がある。それだけに町田の復帰は朗報だろう。いずれにしても高い位置からプレスをかける以上、CBの背負うリスクは大きい。このリスクをCBが背負い切れるかが鹿島にとっては分かれ目になる。

■4-4-2で苦戦の理由は

 鹿島の攻撃においては速い展開が非常に得意。キャラクターは個々で異なるが、基本的にはどの選手を起用しても、速い展開への対応は問題ないことが多い。

 特に強みとなるのは前線の選手の抜け出しの部分。速攻でも遅攻でもこの抜け出しが崩しの切り札となる。抜け出しでフリーの選手を作り、相手を背走させることができれば、鹿島は非常に優位に試合を進めることができる。相手がブロックを組んでいる時でも、ワンツーからの抜け出しでチャンスメイクをすることが多い。抜け出しのタイミングと方向の良さで狭いスペースでも勝負している印象だ。

 ただし、3人目が絡んで相手に選択肢を突きつけるようなポジショニングやパスワークはあまり得意ではない。速攻の方が得意なのは、そもそもスピードに乗っている状態で相手が下がり、スペースがある状態でホルダーがオープンという環境そのものが選択肢を多く与えてくれるからである。

 4-4-2でニアサイドのパスを厳しく制限できる名古屋、福岡相手に無得点ということは、整備された4-4-2で封じられやすい一番近い選手以外との関係性で相手を揺さぶることができなかったということだろう。

 フリーランを生かすための時間とスペースを作るためのポジション作りはあまり得意ではない。だが、時間とスペースがある状況においてカタをつけるのは非常に得意である。

■ACLの課題へのリベンジ

 川崎にとってはまずは攻撃の糸口を掴みたい。右サイドの先発が想定される常本のいるサイドはややハードか。G大阪戦で広瀬も前線へのフィードの面で存在感を示したが、対人の部分で常本は捨てがたい。

    常本が先発した場合、未知数のマルシーニョはともかく、サシでやりあうならば宮城と長谷川にとっては少し難しい相手のように思う。

 狙いたいところは川崎にとっての右サイドである。安西が特に顕著なのだが、自陣のスペースを開けながら前に出ていくことが多い。出てきやすいサイドに川崎が配置するのは家長。空いたスペースを使うためのキープができる選手である。まずは川崎は鹿島の左サイドバックをずらすところから始めたい。

画像5

 こうすることで鹿島の左のCBの行動範囲を広げたい。林は福岡戦でなかなかPAから出てこれなかったが、町田はむしろ動きすぎてしまう嫌いがある。その上、犬飼が不在となれば、DFラインの横のスライドにおける連携面も不安はあるだろう。

 川崎としては町田が管理するスペースを広げることで鹿島のミスの可能性を広げていきたい。その広いスペースにおいてはダミアンや小林に攻略をおまかせ。家長も含めて徳島戦でプレータイムを抑えることができた3人の強みをまずは存分に発揮したいところ。

 中盤で期待したいのは脇坂。徳島戦ではフィニッシュで結果を出したのだが、もう一つ彼に大きな期待をかけたいのはトランジッション局面における攻守の1on1。広いスペースでトランジッションで頻発する鹿島戦は中盤のデュエルでの勝率が試合の優劣につながりやすい。田中碧がいなくなっても、この部分で鹿島に優位が取れるかは脇坂にかかっている。

 トランジッションが多くなると、守備の部分での負荷は気がかり。徳島戦で左右に揺さぶられた山村はこの試合においてはやや行動範囲の狭さがネックになる可能性はある。ジェジエウは連戦でややパフォーマンスが据え置き。正直、特に谷口にはなんとしても間に合って欲しい試合である。

 前線が即時奪回で助けられればいいのだが、過密日程の最中で90分間のハイプレスはリスクが大きすぎる。中盤までにボールを閉じ込めることに失敗すれば、上田や荒木に対しては難しい戦いを強いられる公算は強いと見る。

 互いに優位を取れるポジションはある。今季、川崎がACLでなぜ敗退してしまったのか?を自分なりに考えてみたのだが、強みとなりそうな部分でことごとく決め手を欠いたからだと思っている。

 殴り合いのフィールドへの適応力はおそらく三笘と田中がいた時の方が上だろう。その展開に持ち込まれれば5月よりも旗色が悪くなる可能性は十分にある。しかし、川崎にとって強みとなる部分も明確にある試合だと思う。優位となる部分をしっかり色付けし、得点に繋げられるか。舞台は異なるが、ACLで突き詰められなかった部分を打ち破ることがカシスタ攻略のポイントとなると思う。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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