Fixture
明治安田 J1リーグ 第17節
2024.6.2
川崎フロンターレ(15位/4勝5分7敗/勝ち点17/得点23/失点24)
×
名古屋グランパス(5位/8勝2分6敗/勝ち点26/得点19/失点17)
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で川崎は5勝、名古屋の4勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの戦績
過去10戦で川崎の7勝、名古屋の2勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
- 4連勝のあと、川崎は直近3試合の名古屋戦で未勝利(D1,L2)
- 川崎が負ければ史上初めての名古屋戦3連敗になる。
- 名古屋は公式戦直近12試合川崎ホームでのクリーンシートがない。
- 2023年の名古屋のシーズンダブルは2011年の前回のダブル達成時とスコアが全く同じ。
- ホームで2-0、アウェイで1-2の勝利。
- 翌年のアウェイゲームでは川崎に0-1で勝利を挙げている。
スカッド情報
- 佐々木旭は累積警告により出場停止。
- 宮城天、大島僚太、三浦颯太は離脱が続く。
- 丸山祐市、車屋紳太郎、小林悠は練習に合流との報道があるがメンバー外が続く。
- メンバー外が続いていた山本悠樹は完全合流。
- 瀬川祐輔、ファン・ウェルメスケルケン・際は全体練習から外れる。
- 小野雅史、吉田温紀は前節負傷交代。
- 河面旺成はルヴァンカップの横浜FC戦で右ハムストリングの肉離れを発症。
- 山中亮輔、酒井宣福は長期離脱中。
予想スタメン
Match facts
- 直近6試合のリーグ戦で全て先制しているが、4試合で勝ち点を落としている。
- ホームゲームでは4試合無配を継続中(W2,D2)
- リードしたところから落とした勝ち点は12で湘南(13)に次いで多い。
- 直近7試合は全て得点を決めている。
- 対戦時に1桁順位にいる相手とのリーグ戦では今季ここまで勝てていない(D3,L4)
- 脇坂泰斗が決めている公式戦直近8得点のうち、7得点はホームゲームのもの。
- 開幕3連敗以降、リーグ戦13試合で8勝を挙げている。
- 公式戦直近4試合負けがなく、アウェイでは3連勝中。
- リードを奪った8試合では全勝で一度も勝ち点を落としていない。
- J1では他に神戸のみ。
- ヘディングからの得点は2つだけで東京Vに次いで少ない。
- パトリックは昨季1220分で10得点を挙げているが、今季はここまで551分の出場で1得点のみ。
- 稲垣祥は2021年と2022年に川崎相手に得点を挙げているが、いずれも勝利に結び付いてはいない。
- アウェイゲームでは2試合連続得点中。
予習
第14節 FC東京戦
第15節 鳥栖戦
第16節 京都戦
展望
シンプルな強度をベースとしたスタイル
先制点を手にしながらもなかなか結果を出すことができない川崎。前節の柏戦でも勝ちきれない厳しい戦いを見せてしまった。今節は開幕直後は最下位になりながらもV字回復を見せた名古屋が相手となる。
名古屋の基本的なフォーメーションは3-4-2-1。選手のキャラクターを変えることでテイストを変えることはあっても、ベースとなる構造を試合の中でいじるイメージすら少ないという印象である。
名古屋はここ数年戦力の入れ替えが激しいチーム。前線でもバックラインでも2年以上前から所属している選手はだいぶ少なくなってきた印象。今季は多くの主力を補強し、長谷川政権の集大成を完成させるべき年なのだろう。
基本的なプランは体をバチっと当てるデュエルを重視するスタンス。前線はそこまで動き回りながら相手を捕まえるキャラクターではないため常にプレスをかけるわけではないが、中盤より後ろはかなりタイトについていく。特に、降りてくる前線に対してチェイシングがかなり顕著。
三國とハ・チャンレといったバックスは特に潰し切る意識は強く、マルセロ・ヒアンやディエゴ・オリベイラといった屈強なCFに対しても試合から締め出すことに成功している。バックスが3枚と相手に対して優位になりやすい枚数を確保している分、高い位置から潰しに行くことができるのだろう。
中央は重たい分、サイドは少し軽さがあるところがなくはない。名古屋のバックスは上下にはかなりスムーズに動くか、横にはそうでもない。WB1枚で突破された時のサイドはあっさりと押し下げられるケースもある。この辺りは攻めやすいところ、押し下げにくいところの差がはっきりしている。もっとも、サイドから押し下げられてもボックス内で跳ね返してしまえばOKという感じなのかもしれないけども。
吉田に河面とここに来て少しバックラインに負傷者が出ているのは気がかりだが、メンバーは変わってもボックス内の強度は上がってきている。開幕当初は不安定だった三國はこの点ではかなり改善が見られている。
攻撃面のルートはとてもシンプル。まずはサイドにギャップを作ることが第一。バックスからの対角クロスから主に右サイドに向けたフィードを発射し、内田や和泉、中山といった大外レーンの選手にボールを渡す。椎橋が左サイドに落ちるアクションも見られるが、ここからギャップを使った前進を狙うのは稀。極端にCFのマーカーが緩い時以外はサイドからが優先になる。
抜け出しきればそのまま、抜けきれなかった場合は後方からフォローに走った選手にマイナスに折り返しながら軌道が高めのクロスを入れる。クロスは比較的ファー狙いが多めであり、WBが入ってくるアクションも見られる。
同サイドでの攻撃が難しいと思ったら、サイドを変える役割を担うのは森島。中盤で受けた時はかなり意識をして逆サイドを見る傾向が強く、サイドチェンジがプレーの優先順位としては相当高いことが見受けられる。幅を広く攻撃するのであれば、彼が軸になる。
CFのカラーは速い攻撃で違いが出る。左右に動くパトリックは自ら裏を突きながらサイドにギャップを作る動きを行うが、ユンカーは中央で縦パスを引き出しつつ、サイドのスピード豊かなアタッカーと連携し自らがフィニッシャーになる。直近ではややパトリックが上の序列のようにも思うが、個人的には展開とか攻めるルートによって優先度は変わる感じなのかなと思う。
ボックス内での逞しさもカラーは違うがそれぞれに頼もしさがある。ともにスペースメイクに長けている点が特筆すべき部分であり、フィニッシャーになるだけでなくダイナミズムがある中盤に時間を与えることもできる選手である。
勝ちは必要だが勝つだけでは先に行けない
まずは川崎の攻撃の局面からこの試合の望み方を考える。勝ちが遠ざかっている川崎は目先の勝ち点が大事ではある一方で、チームビルドとしては今後の勝ち点を積み上げられる戦い方を身につけることも重要という状況。
そういう意味ではまずは前半はゴミスのポストによる前進とボックス内のクロスからの攻略法を成熟させることが優先になる。鳥栖戦、G大阪戦、柏戦と直近3試合ではニアサイドの連携を使った形とファーサイドのレーンチェンジを使った形の両方でゴールを生み出している。この2つの形はおそらくはJリーグのどこが相手でも効くはず。周囲のアタッカーの動きを習熟させることでさらに精度を上げていきたいところである。
名古屋に対峙するという要素をここに加えると、当然強度の高いCBに対してゴミスが起点になれるのかどうかという問題が出てくる。ゴミスは動き出しにそこまでバリエーションがあるというよりは純粋に強度で勝負する傾向があるので、名古屋の守備陣との相性は個人的にはあまり良くないように思う。名古屋の得意な降りる選手に対するシンプルな強度でのデュエルにどこまで対抗できるかはポイントになるだろう。
柏戦ではポストのためにゴミスがボールを持ってから、周囲の選手がパスコースを作るのが少し遅れてしまった感がある。誰に落とすかを模索しているうちに囲まれてしまってロストするケースがちらほら見られた。
逆に言えば落とすルートをとっとと作ってしまえば、純粋なデュエルに勝ち切らなくても引き分けでOK感がある。川崎としては周囲の選手のオフザボールでゴミスのマッチアップを川崎優勢に持っていきたいところ。さらにはマルシーニョという背後をつく武器もあるので、落としを受けた選手から名古屋があまり得意ではないであろう前後に揺さぶりながらプレッシャーを分散させていきたい。
名古屋の中盤より後ろに負荷をかけるためには後方からズレを作りながらボールを運んでいきたいところ。3-4-2-1とのマッチアップであれば、名古屋のシャドーに対してCBとSBで連携しながらフリーの選手からボールを前に進めていきたい。
だが、ギャップを作り運んでいくという局面において今の川崎において最重要人物である佐々木は出場停止。コンディション次第ではあるが、残りの選手が万全であると仮定するのであれば、左にファン・ウェルメスケルケンを置いて、ターンからインサイドへのカットインを行うことで名古屋の守備網を動かすことを大事にしたい。右は瀬川で逆になるべくビルドアップの関与は避けて前線に飛び出す役割を担ってほしいところである。
アタッキングサードにおけるゴミスを使ったニアとファーの設計は名古屋の苦手な狙いを分散させるやり方に基づいている。川崎の方の攻撃の完成度がまだマチマチなので、特にファーサイドの選手がクロスオーバーするような動きは意識したいところである。
当然ゴミスは90分は持たないので、これ以降はエリソンと山田。リトリートした状況でのこのコンビを迎えてしまうと現状の連携では解決策を見つけられる可能性は低いと言わざるを得ないので、終盤は最低でもタイスコアに持ち込めないと勝ち点奪取は厳しくなってしまう。
守備においてはまずはバックラインにどこまでプレッシャーをかけるかどうか。枚数が多いし、プランとしては蹴ることが優先される相手なので、プレスに行くコストは低くはない。その一方で決してプレスに対する耐性が高いチームではなく、特に三國はプレッシャーをかけられるとコースが空いていてもアワアワする場面がある。川崎の前線の機動力からするとハイプレスを能動的に仕掛けるかは微妙なところであるが、名古屋はズレを使いながら前に進んでいくテイストは少なめのチームなので、出ていく策は意識してもいいように思う。逆に言えば押し込んだ時の即時奪回のようにコストの少ない状況では必ずプレスに行くべきということである。
アタッキングサードにおいてはまずはスピードアップして一気に運ばれることは避けたい。ユンカーをフリーにしてしまい、ここから左右自在に展開される形は最悪。スペースがある状況でのスピードに乗った攻撃に行かれてしまうと、かなり川崎は不利。潰しどころを発揮させるという点でファストブレイクではCF(特に中央に陣取るユンカー)、サイドチェンジでは森島を要注意人物として監視したい。
川崎のクロスの対応は相手のチーム特性上、直近の試合に比べると増えるのは確実。特に川崎の失点が多いファーサイドを狙ったクロスは警戒を高めたい。GKの対応はもちろんのこと、CBのバックステップからのヘディングでのクリアの精度やSBの絞りも求められる。そう考えるとCBコンビはジェジエウと大南がベターになるのだけども、佐々木がいないバックスに置いて高井がいなければズレを使っての前進は絶望的なようにも思える。ここは悩みどころになるだろう。
正直、今のチームは現状強くもないし、このままでは優勝を狙うことすらはるかに高い目標である。冒頭で触れたようにチームとしては可及的速やかに勝ちがほしいくらい勝利が遠ざかっているのだけども、単なる勝ちがチーム状態を上向かせないことも今季の川崎を見ればまた明らかでもある。サッカーは嘘をつかない。浦和戦や札幌戦のようなツッコミどころが多い勝利は次の3ポイントを保証してくれない。重要なのは次に勝てる内容であるかどうか。攻撃に関しては雛型ができていることは間違いないので、ここから自分たちの時間を増やしつつ90分を戦っていきたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)