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「固める前にカタをつける」~2021.9.26 J1 第30節 川崎フロンターレ×湘南ベルマーレ プレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

明治安田生命 J1リーグ 第30節
2021.9.26
川崎フロンターレ(1位/22勝6分1敗/勝ち点72/得点63/失点19)
×
湘南ベルマーレ(16位/5勝12分12敗/勝ち点27/得点29/失点34)
@等々力陸上競技場

目次

戦績

近年の対戦成績

図1

直近10回の対戦で川崎の5勝、湘南の1勝、引き分けが4つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の6勝、湘南の2勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・直近9試合の公式戦の湘南戦で川崎は負けなし(W5,D4)
・引き分け以上ならば、湘南は2013年以来2回目のリーグの川崎戦無敗。
・等々力での公式戦の湘南戦は3連勝中。
・15試合のリーグ戦での等々力での試合で湘南が勝ったのは2回だけ(D3,L10)

 直近の対戦成績は川崎が優位。川崎の勝利と引き分けを繰り返していたのが直近だったが、近年はやや川崎の勝利が多め。

 しかし、直近の対戦では湘南がホームで勝ち点を奪取。仮にこの試合で負けなければ2013年以来2回目の川崎に負けなかったシーズンとなる。

 等々力での対戦はやはり川崎が優勢。リーグ戦で見てみると、川崎に等々力で湘南が勝ったのは2回。いずれも1-2のスコアなのが共通点である。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・大島僚太、車屋紳太郎は欠場が続いている。

【湘南ベルマーレ】

・大岩一貴は累積警告による出場停止。
・タリク・エルユヌシは福岡戦で負傷交代。出場は不透明。

予想スタメン

画像4

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・リーグ戦は3連勝中。4連勝になれば今季4回目。
・公式戦は6試合負けなし。
・直近5試合の公式戦でクリーンシートは1つだけ。
・公式戦で先制された試合の10戦のうち、負けたのは一度だけ(W3,D6)
・セットプレーからのリーグ戦の失点は2つ。リーグ最少。
・山根視来は川崎移籍後の湘南戦3試合で1ゴール、1アシスト。

 劇的な勝利を決めた鹿島戦でリーグ戦は3連勝。流石に夏前ほどの凄みはないものの、チームは堅実に勝利を積み重ねている。

 特に先制された試合での勝負強さは目立つ。カップ戦では負けないで敗退という流れが続いていて嫌な感じだったが、その負けない流れをようやく実にした鹿島戦の意義は大きいものになるはずだ。

 直近の試合で流れを変えているのはセットプレー。ジンクス的な観点で言えば浦和の鈴木、鹿島の沖と東京五輪組のGK相手に上から叩き込んでいる。同じく東京五輪組の谷相手にも同じようにセットプレーからの得点はできるだろうか。

 ただ、むしろセットプレーの数字で際立っているのは失点の少なさの方。Football LABによればセットプレーからの失点は2つでリーグ最少。目立たないが、セットプレーでの守備の部分はチームを下支えしてそうだ。

【湘南ベルマーレ】

<湘南のMatch facts>
・直近10試合のリーグ戦で1勝のみ(D3,L6)
・ただし、直近5試合のリーグ戦では1敗のみ(W1,D3)
・直近3試合のリーグ戦で1得点のみ。
・現在の上位5チームには今季ここまで未勝利(D4,L3)
・リードしてからのリーグ戦の逆転負けは5つでリーグ最多タイ。
・大橋祐紀は鹿島戦での今季リーグ戦初ゴール以降、直近7試合で3得点。

 直近のリーグ戦では10戦で1勝のみ。天皇杯も含めて山口監督就任後はまだ勝利がないのが現状だ。最大の懸念は得点力。前節、最終盤に追いついた1得点を除けば、リーグ戦ここ3試合で得点はない。

 ただ、チームとしては負けにくいという印象。負けなしの観点でいえば直近5試合で負けたのは1つだけ。苦手な上位勢相手にも、半分以上は引き分けている。上位5チームのうち、ダブルを食らう可能性があるのは鳥栖だけである。

 リードした状況から落とした勝ち点が多いのは気になるところ。粘り強く追いつくというよりは、いい流れで入るも終盤に崩れてしまうパターンが多いのかもしれない。前節はギリギリで勝ち点1を確保。チームを救った大橋が波に乗れれば課題の得点力に光がさすかもしれない。

展望

■新監督下での変化は?

 山口新監督になってからまだ勝ち星がない湘南。スタイルで見ると前回対戦からはある程度の変化が感じられる。浮嶋監督がまだ指揮をとっていた浦和戦の段階でも前回対戦とは異なる部分を感じたので、監督交代による変化というよりは、時間をかけながらスタイルが変容していったのかもしれない。

 どこが変わったのか?というとまずは保持のコンセプトの部分だろう。前回の対戦時、保持では縦に急ぐ場面は少なく、低い位置からサイドの菱形形成を強く意識しながら、ゆったりとボールを回す場面が目立った。

画像5

 前回の対戦と比べれば、今の湘南は縦にパスをつけるタイミングを早くする頻度が上がったように思う。以前もウェリントンが出ていれば、割と早めに縦に蹴ることもあったのだけど、今や町野、タリク、大橋などが出ていても長いボールを早めに使う頻度は上がっているように思う。

 このゆったりとした保持はアンカーを務めていた中村の存在が大きく関与していた感も受けたので、彼の福岡移籍がスタイルが変容した一つの要因なのかもしれない。

 以前は低い位置での菱形を意識していたといったが、今意識しているのは高い位置でのユニット。とりわけ2FWと2IHの関係性をうまく使えればという感じ。ここで前を向く選手を作り、サイドに展開しエリア内にクロスを上げるパターンを作りたいところ。

 ただし、湘南にはサイドで目の前の相手を剥がせるほどの強力なアタッカーはいないため、いかにいい広いスペースで薄いサイドにボールを届けることができるかどうかが肝になっている。中央からの展開でそのタスクができるかがまずはポイントになってくるだろう。

 中央からのダイレクトな攻め手で効きそうなのはタリクの裏抜けか。裏に抜けてゴールに向かう意識が強い彼の存在は湘南のアクセントになる。相棒は高さはあるが、手助けの意識が低いウェリントンよりは、積極的なポストプレーで相方に前を向かせられる町野が一番やりやすそう。ただ、外からのクロスに合わせる役割としては当然ウェリントンが最適なので、FWの人選は悩ましいところではある。

 守備においては5-3-2のベースは大きく変わらない。ただ、以前よりは中盤が前に進む意識が強まった印象を受ける。以前は無理目ならばあっさり撤退する割り切りはあったが、割と中盤が躊躇なく前に出てボールを刈り取りに行くプレーが以前よりも多くなっている。

 いわば、パブリックイメージの湘南スタイルに近づいたのが今の形。5-3-2の形は同じでも少しテイストは変わっていると捉えるのが妥当なように思える。

■縦に引っ張るためのキーマンは

 川崎目線で考えると守備の局面で最も怖いのはクロス対応だろう。もちろん、シンプルなウェリントンも怖いのだけど、形として怖いのはWB→WBの大外を狙ったクロス。この形はばっちり徳島相手にやられている。オフサイドでことなきを得たけど、西谷がネットを揺らした場面である。

 目一杯エリアを横断して、逆サイドのWBに届けるクロスはいつの時代においても湘南の運動量のトレードマークとなる攻撃。この攻撃に近いイメージでのピンチでネットを揺らされたというのは川崎にとっては嫌な部分ではある。

 特に気になるのは登里。鹿島戦ではアラーノに体を寄せ切っても、ヘッドを叩き込まれてしまったように、クロス対応における身体能力的な不安は拭えない部分がある。

 それ以上に心配なのは負傷だ。負傷耐性が高くないことを踏まえると、彼がローテーションできていない現状は怖い。鹿島戦でも途中で足の張りを訴える場面があったりなど、紙一重のところで戦っている感じはする。保持の部分のクオリティを考えても、離脱は意地でも避けたい。鬼木監督の言葉通り「1試合ずつ負傷者が戻ってくる』ならば、ここで車屋を起用したいところなのだけど。

 この試合の守備に話を戻すならば、クロスまで行かせる頻度をまずは下げたいところ。そのためには中央のところで前を向かせる選手をいかにつくらないかがポイントになるだろう。個人的には中盤はある程度ターンオーバーする予感がしている。大きな展開を志向する相手に対して、コンパクトさを保ちながら対応できるかどうかが湘南のチャンス創出に絡んできそうだ。

 攻撃においては5-3-2が壊せないことが一時期話題になってきたことが最も気になるところである!とする向きもあるだろう。ただ、この湘南に関しては少し違うベクトルになるかなという思いもある。

 というのは湘南の中盤が比較的高い位置からプレスが来るということ。従来の湘南のように高い位置で引っ掛けることを比較的強く意識していると思う。湘南スタイルの弱みは近くの選手には厳しくいっても、遠くの選手へのケアが甘くなりやすいこと。全体が連動した陣形のコントロールはどちらかというと苦手なチームだと思う。

 なので、無謀な中盤のプレスはむしろ相手の攻撃を助長させうる。川崎にとっては相手の中盤が前に出てくる部分を逆手にとりたいところである。中盤が前に出てくるのならば、最終ラインは深い位置で守らせることによって、湘南の陣形を縦に引き伸ばしたい。

 個人的に期待したいのは調子を上げている知念。左右に流れながら深さを作ったここ数試合の働きは湘南相手にもバッチリハマるだろう。中盤が前に出てきたところに、前線でピン留めする役割を担い、中盤のスペースを広げて、IHが活躍できる場所を作っていきたい。

画像3

 いわば5-3-2でブロックを固める前にカタをつけてしまおうということ。仮に失点したり、0-0で推移して固められる展開にシフトしたらレアンドロ・ダミアンの出番。大岩が不在で高さが割引の最終ラインを高さで叩き割る手段も持っておきながら撤退した際の湘南にも備えておきたいところだ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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