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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~Group B Match week 2~ 2021.9.7

第1節のハイライトはこちらから。

目次

①ベトナム×オーストラリア

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■オフサイドトラップで見られた前触れ

 電光石火の先制点を挙げた初戦だったが、退場者を出してしまいサウジアラビアに逆転負けを喫してしまったベトナム。2戦目の相手はオーストラリアと非常にタフな試合が続いていく。

 戦い方としては大枠ではサウジアラビア戦と同じ。5バックを軸に低い位置でオーストラリアを迎え撃ち、ブロック守備で凌ぎながらの戦いである。修正点としては、CHが前に出ていきすぎることで無駄に食いつく頻度が減ったこと。

    ベトナムはその分、前方への推進力を失ってしまっていたが、穴を開けずにオーストラリアの保持に対してジリジリと食らいつく。サウジアラビア戦はここで前に出ていき過ぎたことでライン間にスペースを生み出してしまっていたので、そこは初戦の反省を生かしているといえそうだ。

 オーストラリアは4-3-3気味で前のタレントを増やす形で対抗。フルスティッチがアンカーに入り、前は5人で攻略に挑む。しかしながら、なかなかブロックの攻略はできない。ワンタッチパスが2つ続いて繋がればチャンスにはなるが、有効打となるパスが連続で繋がることはまずない。

 WGとSBにはそれぞれベトナムのWBとワイドCBがマンマークで対抗。サイドから崩そうとするもなかなか手が出ない。初戦で裏抜けで活躍したメイビルもスピードに乗った状態でなければ、なかなか持ち味を発揮できず。裏に一発で通そうとしてもスピードで明確に上回れる選手がいないため、攻めあぐねる。

 むしろ少ないながらも危険なシーンを作り出したのはベトナムの方。早い攻撃からハンド風味のプレーを誘発。OFRまでこぎつけるが、原判定が覆らないというレアケースでPKは認められず。前節と同じくベトナムはOFRで運が転がってこない。

 その後も攻め手が見つからないオーストラリア。一番のチャンスはベトナムがオフサイドトラップを掛け損なったFKのシーンだろう。この場面では何を逃れたが、このシーンは失点の前兆だった。左SBのスミスを主体としたクロス攻勢から二次攻撃を狙うオーストラリアに対して、ラインアップが遅れたベトナム。これを見逃さなかったオーストラリア。最後はグラントが詰めて前半終了間際に先制する。

 後半、ベトナムは攻勢に出るために攻撃的な配置に変更。前節得点を挙げたグエン・クアン・ハイをWGから中盤に動かし、ボールを運べる選手を増やす。前半よりもゴールに迫る機会は増えたベトナムだったが、運んだ後のプレーに精度が伴わず、ライアンを脅かすようなシーンを作ることができない。

 一方のオーストラリアも前半よりも間延びしたベトナムの陣形を崩せず。撤退した時にボールを回して時間を使うならわかるけど、明らかに攻め切れる時に煮え切らない攻撃をしているのは1点差ということを踏まえても不満。日本などが得意なショートカウンターはあまりうまくないのかもしれない。

 共にジリ貧だった終盤戦だが、前半終了間際の先制点を守り切ったオーストラリアが逃げ切り成功。予選2連勝スタートを飾ることとなった。

試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
ベトナム 0-1 オーストラリア
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
AUS:43′ グラント
主審:アブドゥラフマン・アル・ジャシーム

②中国×日本

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■苦しみの程度が違う

 共に初戦の敗戦で厳しい最終予選のスタートとなった中国と日本。中国はオーストラリア戦の4-2-3-1から5-3-2にシステム変更。脆さを見せたバックラインを固めるために形を変えてこの試合に臨んできた。一方の日本はフォーメーションは維持。離脱組や合流組の顔ぶれの変化も相まって久保、古橋、冨安、室屋の4人をスタメンに新たに起用してきた。

 日本のオマーン戦の課題は中央に固まる相手を攻略できなかったこと。中国が5-3-2を採用しているのは、オマーンに形だけでも近づけて日本を初戦と同じような手詰まりに追い込もうとしたのかもしれない。

 同じ形で臨んだ日本だったが紐解いてみるとやや変化があった。1つは左サイドに起用された古橋がPA付近の前線に張るケースが増えたこと。動き出してもらいやすいインサイド寄りの立ち位置の方が、前回のような大外に貼る使われ方よりもやりやすそう。

    オマーン戦に比べれば大迫が中央でボールを収められたのも大きい。前線はエリア内のスペースにおける動き出しで勝負できており、前回よりは持ち味を発揮できていたように思う。欲を言えば、外を使う長友と古橋の関係性を構築できなかったのは痛かった。内から外への斜めのランを使えれば久保や柴崎が飛び込めるスペースはもう少しできたように思う。

 右サイドにおいては久保が崩しに加わったことが大きかった。オマーン戦では酒井と伊東という2枚の関係でヨーイドンの裏抜け一発勝負だったが、このサイドに久保が加わることでボールも人も動きが出るように。伊東や室屋がボールを引き出すためのフリーランで中国のDFラインを下げることができていたし、久保自身も中国の中盤の隙間に入り込むカットインを織り交ぜながら内外を使い分けることができていた。中の守備がスカスカだった相手の力量の問題もあるが、レパートリーとしてはオマーン戦よりも増えたように見える。

 しかし、当然まだ問題もある。1番気になったのは攻撃時に左サイドで長友が孤立しまうこと。オーバーラップするのは大事だとは思うが、彼が1人で持ち上がったところでできることは限られている。インスイングでクロスを上げるのが一杯で、高さの面では分がある中国の最終ラインに対しては効果的ではなかった。

 もっともこれは長友のせいだけではない。彼がそういうプレイヤーだというのは今に始まった事ではないし、サポートがいない中でも輝けるSBはそもそもなかなか日本にはいない。

 むしろ気になるのは中盤のポジションバランスの方。特に柴崎はどうバランスを取ったらいいのか悩んでいるように見えた。行動範囲広くフリーダムにボールを持ち運ぶ嫌いがある選手なのだが、右サイドでは久保が下がってボールを運ぶところからトライアングルの崩しまでは担当できる。そういう中で柴崎は持ち味の棲み分けには困っていた印象。

    むしろ彼には孤立する左サイドの手助けをして欲しかったところ。右サイドですでに人数がいるところで浮遊していてはネガトラの際の対応にも効かないし。オマーン戦では中央を固める相手とのミスマッチさを指摘したけど、中国戦では味方との相性の部分が気になった。コンディション以上にミスマッチ感がどうしても気になってしまうのが今の柴崎である。

 30分を過ぎたあたりから日本は徐々にボールは足元から足元につながる形が増える。こうなると停滞感が出てくる。それでもある程度崩せてしまうほど、中国の中央密集の守備は脆かったけど。それでも受けてから考える感の強い崩しは気になる。

    このメンバーでの崩しならば、伊東と古橋をまずどう抜けさせてスピードに乗った状態で敵陣に迫るか?から逆算してもいいのではないか。ラインが低くても初速で逆を取れるランができる彼らならば、動き出しで違いは作れるはず。

 なので、日本はこの2人にボールを届けるレパートリーを見せて欲しかった。徐々に足元に収束していくのは少し残念だったし、得点シーンのように独力で伊東がスピードに乗りながら加速できることを許す相手が本大会に多く存在するとは思えない。大迫のキープ力が弱まる中で、彼らの動き出しをどう活用するかは最終予選を通しての日本の課題になりそうだ。

 一方の中国はより厳しい状況だった。エウケソンは吉田、冨安はもちろん、室屋を相手にしてもロングボールのターゲットとしては機能せず。陣地回復の方法を見つけることができず、ローラインからの脱出方法がなかった。

 後半の4-4-2の変形でのマンマークチャレンジはやけっぱち感が否めない。確かにアタッカー陣は攻撃の機会を得れば強力かもしれないが、ボールを取り返すのに特化した面々ではないし、日本代表は局面での対人勝負に限ればアジアではそもそも非常に優位な立ち位置にいる。日本の得意なフィールドで、かつボール奪回の機会を増やせない設計となれば、びっくり箱以上の効果はないのは当然だと思う。

    案の定、彼らのプレスが脅威になったのはせいぜい10分程度。なんか、 ONE PIECEのルフィに負ける前のモリアみたいだなと思った。監督は解任危機も叫ばれていたし、仕方ないのかもしれないが。

 試合はそのまま終了。互いに苦しみが見える一戦だったが、下馬評通り日本が勝利。局面での質の差が勝敗を分けたと言っていい試合だろう。

試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
中国 0-1 日本
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
JAP:40′ 大迫勇也
主審:ナワフ・シュクララ

③オマーン×サウジアラビア

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■日本とサウジの違いとは?

 初戦、アウェイである日本の地で貴重な勝ち点3を獲得したオマーン。日本と同じくW杯出場権争いの有力候補であるサウジアラビア相手に勝ち点を取れば、本大会出場という偉業が見えてくる。

 対するサウジアラビアはベトナム相手に格の違いを見せつける逆転劇を演じた。続くオマーンも現状ではアウトサイダー。2戦目も貫禄を見せることができるだろうか。

 オマーンのアプローチは日本相手のものと大きく違いはなかった。中央を固めてサウジアラビアに要所を使わせない。サウジアラビアは中盤の3枚のカンノ、アル・マルキ、アル=ファラジュなどマンマークでオマーンに捕まってしまっている。

 サウジアラビアはこれに対して左サイドから対抗。アッ=ドッサリーやアッ=シャハラーニーの縦関係がレーンを入れ替えながら攻撃を繰り出す。サイドの選手の位置関係が膠着しがちだった日本に比べれば、サウジアラビアの攻撃は動きがあるものではあった。

 だが、それでもオマーンの守備ブロックは強固。サイドを多少動かされたとしても、中央はそもそも数的優位。日本と同じくサウジアラビアも非常にこのブロックを崩すのには手を焼くことになった。

 しかし、サウジアラビアは脈絡なく、このブロックを破壊。フィードから19番のアル=ムワッラドが抜け出すと、ヒールで落としたスペースに走り込んだのはストライカーのアル・シェフリ。ワンタッチでの芸術的なパスでオマーンにズレたスペースを埋める時間を与えなかった。

 日本も阿吽の呼吸が合えばこういったプレーは可能だろう。だが、この日のサウジアラビアは明らかに日本よりも優れていた部分があった。それは守備。日本が苦しんだオマーンのサイドに流れるFWへのパスは厳しくCB2人がチェイスしていたし、ライン間の楔はSBのアル=ガナムがチェックした。

 オマーンが日本に善戦したのはSB裏のFWへのランとライン間のズレを利用した縦パスで前進を通すことができたから。サウジアラビアはこのオマーンの攻撃のスイッチとなる武器をバックラインが高い位置から咎めたことで、オマーンに反撃の隙を与えなかった。

 後半、サウジアラビアの守備の圧力も弱まっており、オマーンにもチャンスが巡ってくる。20番のサラーを軸に右サイドから打開を狙うオマーンだったが、ゴール前の精度が足りず。終盤の猛攻もサウジアラビアに交わされてしまったオマーン。格上に対する連勝スタートは叶わなかった。

試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
オマーン 0-1 サウジアラビア
スルタン・カーフード・スタジアム
【得点者】
SAU:42′ アル=シェフリ
主審:ハッタブ・ハンナ

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