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「毎熊と上田のスーパープレーが流れを変える」~2024.1.31アジアカップ2023 Round 16 バーレーン×日本 レビュー

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スーパープレーで生み出したゴールで流れを引き寄せる

 日韓戦が実現するかと思われたベスト16。だが、韓国が最終節で勝ち点を落としてしまったことにより、日本のベスト16の相手はバーレーンとなった。

 日本のフォーメーションはインドネシア戦をベースにしたものだろう。久保と比較的均質な役割を託せそうな旗手を中盤に置き、実質的には4-3-3のような形を組む。バーレーンはバックラインには無理にプレスに行かないが、流れの中からは高い位置まで追いかけ回していくスタンス。サイドに追い込む手応えができた時は迷いなく追いかけることができていたし、ショートパスでの脱出にこだわる日本に対してのプランとしては悪くはなかった。

 しかしながら、基本的にはバーレーンが人数をかけて圧力をかけることができたケースは稀。時間の経過とともに日本の保持が試合の中心となっていった。

 バーレーンの4-1-4-1の中ではアンカーのアル=ハーダンが久保にマンツー気味にマークをつけていた。久保はどこまでついてくるかを探ってか、はたまた単純に嫌がったのかはわからないが左サイドに流れるケースが多くなっていく。中村、旗手、中山に時には堂安や久保まで流れてくるとなるとやや人員的には過多。大外、ハーフスペース、ハーフスペース裏抜け、後方支援の4枠もあれば十分かなという感じはする。

 左サイドのオフザボールの連携。特に中村と中山の関係性は悪くなかったと思うが、人が多くなることによってごちゃついてしまった感がある。ただし、逆サイドに逃す対角パスの精度は足かせになっているという点は指摘しておきたい。冨安でさえフリーで大きく割ってしまうボールを蹴るくらいにはこの大会の日本のロングキックの精度は絶望的。同サイドへのオーバーロードはそうした幅を使った展開が生きない故の妥協点なのかもしれない。

 そんなチームを救ったのは毎熊。オーバーロード気味の左サイドに人が流れる中で、右サイドの整理役を買って出た感があった。先制点に繋がったミドルはその精度もさることながら、遠藤のサポート役として中央に顔を出すという立ち位置が秀逸。必要なタイミングで中央に顔を出し、先制点の起点になって見せた。

 遠藤の相棒として盤面整理能力に長けている守田を外すことができているのは毎熊のおかげかもしれないと思うくらい、ビルドアップでもチームを助けている毎熊。バックラインがボールを持っている時は自陣にステイし、前線にボールが入ったらきっちり追い越すなどビルドアップのサポート役と大外のサポートランの両刀が見えるのは大きい。非保持でどこまで対人守備を修正できるかは課題になるだろうが、現時点では保持においてはほぼ完璧な立ち回りと言っていいだろう。

 リードを許して後半を迎えたバーレーン。前半は9番のユスフへのロングボールが冨安に完封されるなど、こと前進に関してはいいところがなかった。日本がオーバーロードにこだわるならば、我慢を続けるのは悪くはないかもしれないが、ビハインドとなれば話は違ってくるだろう。

 というわけで後半のバーレーンは前半よりもショートパスを増やしたアプローチをスタート。ただ、日本は4-4-2から同サイドに追い込みつつ、サイドにボールが入ったら一気に圧縮という守り方は前半からお手のもの。バーレーンの保持のプランは日本のミドルプレスと相性が悪く、久保起点のカウンターからあっさりと日本は2点目を記録する。

 失点をしたことで4-2-3-1への変更でなりふり構わないロングボールとハイプレスに出ていったバーレーン。バーレーンのスタンスにやや動揺を見せてしまったのがGKの鈴木。パンチングにおける技術的ミスと判断ミスでバーレーンに付け入る隙を与えると、この大会の流れの悪さを象徴するようなオウンゴールを誘発してしまい、バーレーンに勢いを渡してしまう。

 その流れを変えたのがオウンゴールの張本人となった上田。バーレーンが試合展開の流れる方向にプランをとったことで、組み立てにも少しずつ関与できるようになってきた日本のエースは毎熊からのパスを受けると、右サイドを切り裂いて一気にゴールを陥れた。シュートもさることながら、相手を交わして抜くまでのプロセスが素晴らしい。CBが食いつきたくなるように晒して、相手を動かしてから逆をとって交わす。SBから離れる動きもコンボでやってるのがよりエグい。前半の毎熊同様、スーパープレーで流れを強引に捻じ曲げて見せた。

 日本は5-4-1へのシフトで自陣の守備固め+前線に少ない人数でのカウンター完結を命じる。浅野と三笘を中心としたカウンターがいつまでも決まらなかったのはご愛嬌だが、5-4-1でやりたいことはこういうことという大枠はきっちりと提示できたのではないかと思う。

 前半途中に負傷した旗手、そして終了間際に足を引きずることになった板倉、相変わらずバタバタ感から脱却できない鈴木と不安要素もなくはない日本だが、展開としては危なげなく勝ち切ることができたと言っていいだろう。

ひとこと

 上田、毎熊、そして復帰した三笘など個人レベルでも課題だけでなく収穫はある試合。インドネシアやバーレーンのようにボールを持たせてくれる相手であれば、4-3-3ベースのこのメンバーを使いたいのだろうなと思うが、イランが予想される準々決勝以降はこの試合ほどモノトーンな展開にならないことが想定される。そうした時の次の一手がどのようなものになるか。3日後に明らかになるのだろうか。

試合結果

2024.1.31
アジアカップ2023
Round 16
バーレーン 1-3 日本
アルトゥマーマ・スタジアム
【得点者】
BHR:64′ 上田綺世(OG)
JPN:31′ 堂安律, 49′ 久保建英, 72′ 上田綺世
主審:アハマド・アルアリ

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