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「Catch up Premier League」~Match week 1~ 2021.8.13-8.15

目次

①ブレントフォード×アーセナル

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■押された波状攻撃のスイッチ

 レビューはこちら。

 初昇格となったブレントフォードが迎える初戦はアーセナルとのホームでのロンドンダービー。まずはアーセナル相手にプレーオフで通用した手法が通用するかを試すように2トップに長いボールを当てていく。序盤こそ、アーセナルのCB2人は長いボールを跳ね返せてはいたものの、10分を過ぎたころにはトニーは徐々にボールを収められるように。

 ブレントフォードはトニーが落としたボールをインサイドハーフが広い、サイドに展開。ここから仕上げのクロスを上げていく。さらに攻撃が跳ね返された後も高い位置からの即時奪回を含めて『ブレントフォード・タイム』というべき波状攻撃を仕掛けてくるのが彼らの攻撃のスタイルである。

 先制点もこのブレントフォード・タイムのスイッチが押されたところから。スペースに出たロングボールでアーセナルのDFラインが一気に下がると、そこから波状攻撃に。最後はクロスではなく左サイドのカットインからのミドルでカノスが今季のプレミアのオープニングゴールを飾る。シュートはうまかったが、アーセナルは大外からのカットインのシュートが威力十分に届いてしまうほど、圧力に屈してラインを下げてしまったのが痛恨だった。

 徐々に波に乗るブレントフォードとは対照的に、アーセナルはブレントフォードのプレスに屈するように。特に最終ラインのボール回しにおいて、ブレントフォードの誘導を外せず、時間を前に送るようなボール保持ができない。スミス・ロウやペペはボールを持てば好調であることをアピールしていたが、アーセナルの最終ラインが前に時間を送れないことで、前線にボールを渡せる中盤の重心は徐々に下がっていく。

 後半は悪い循環を脱し、相手陣に迫る場面も増えるが、崩しのもうひと工夫が見られず、PAの動きでもブレントフォードを出し抜けない場面が目につくように。数十分のいい流れで試合をひっくり返せるほど、今のアーセナルの状態は良くない。

 むしろ、セットプレーでニアに合わせる動きを潰しきれずに決定的な2失点目。その直後にも同じ形であわや3点目を喫したように全く対応できていなかった。

 攻撃のリズムから流れに乗れたブレントフォードはホームでアーセナルを完全に飲み込むことに。歴史上50チーム目の初のプレミア挑戦はホームでのアーセナル撃破という勢いのつくスタートとなった。

試合結果
2021.8.13
プレミアリーグ 第1節
ブレントフォード 2-0 アーセナル
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:22′ カノス, 76′ ノアゴール
主審:マイケル・オリバー

②マンチェスター・ユナイテッド×リーズ

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■トランジッションで大暴れのポクバとブルーノ

 先日、契約延長を発表し、無事に今季もリーズの指揮を執ることが決まった名物監督のビエルサ。開幕戦は昨年のリバプールに続き、オールド・トラフォードに乗り込むという非常に難易度の高い相手に挑むことになった。

 立ち上がりからリーズは昨季と同様にらしさが全開。高い位置からプレッシングに行き、マンチェスター・ユナイテッド相手に正面から立ち向かっていた。

 変わった部分といえば、バンフォードが敢行するプレッシングを分担するようになったこと。昨シーズンは2CB相手に1人でひたすら追いかけまわすムーブを繰り返していたが、この試合ではIHのロドリゴと分担。片方が出ていくときは片方が中盤のプレスにリトリートする。やたら広い行動範囲だったバンフォードのプレスを減らすことで、パフォーマンスを落とさないためのやり方なのかなと思った。

 一方のマンチェスター・ユナイテッドもリーズのマンマークに対策を準備。受け渡しがある分、時間を与えられやすいバックスがしっかりと持ちあがる部分が初手。それに合わせて中盤がやたらと縦方向に動くことでマンマークを振り切ろうと試みる。例えば、ブルーノ・フェルナンデスの降りる動きと運動量豊富なCHが入れ替わるように上がっていくなど。フレッジ、マクトミネイは体の仕上がりが上々で積極的にマッチアップ相手を振り切って前線まで駆け上がっていた。

 しかし、このマンチェスター・ユナイテッドのやり方には脆弱性も。中盤と2列目が入れ替わることで、攻撃が止まった瞬間中盤にぽっかりとスペースが空く。リーズのロングカウンターがやたらスムーズに進んだのは、攻撃においてマンチェスター・ユナイテッドが取ったリスクのせいだろう。

 だが、先制点はマンチェスター・ユナイテッド。ブルーノ・フェルナンデスとCHが入れ替わる縦関係の動きに合わせて内側に絞ってきたのはポグバ。リーズとの試合で顕在化する個の力の差を最も感じられるのはこの男のパフォーマンスであることが多い。

 先制点も絞る動きで縦パスを引き出すと、ブルーノ・フェルナンデスにラストパス。見事なコントロールでゴールを生んでみせた。その後も得点をアシストし続けたポグバは何とこの日だけで4アシスト。ブルーノ・フェルナンデスも3得点と爆発。間延びしているライン間に顔を出し、前線と中盤をつなぐ役割は全う。苦しくなってくる後半にトランジッションで差を見せたユナイテッド。中盤の強度で勝り、5得点という強烈なスタートダッシュを決めてみせた。

試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
マンチェスター・ユナイテッド 5-1 リーズ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:30′ 54′ 60′ フェルナンデス, 52′ グリーンウッド, 68′ フレッジ
LEE:48′ エイリング
主審:ポール・ティアニー

③バーンリー×ブライトン

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■らしさのやり返し
 
 昨季は苦しみながら残留を決めた両チーム。しかし、その境遇は似ていてもカラーは真逆。ガンガン、ロングボールを蹴りこむバーンリーとビルドアップ部隊から丁寧にゲームを作るブライトンの対照的な開幕戦の試合となった。
 
 立ち上がりからいきなりらしさを見せたのはバーンリー。ロングボールで圧力をかけていくと、CKからターコウスキの押し込んで先制。これ以上ないらしさ全開のゴールで、開始早々にバーンリーが先手を取る。
 
 一方でらしさがなかなか見れなかったのはブライトン。最終ラインからのボール運び出しがどうしてももたついてしまう。これはシステム的に4バックで臨んだため、CBの枚数が相手のCFとかみ合ってしまいフリーの選手が出来ないこと、そして、浮いているアンカーにボールを入れたり、ドリブルでボールを運ぶことが出来るベン・ホワイトが退団してしまったことなどが原因として挙げられるだろう。
 
 サイドを変えるスピードは遅く、相手のプレスにつかまってしまい、仮に突破してもファウル上等のタックルでバーンリーに止められてしまい、ブライトンは勢いが出てこない。ブライトンもボールをひっかけるとカウンターをファウルで止めていたので試合は非常にぶつ切りになった前半だった。
 
 徐々にテンポを取り戻したのはショートパスを繰り返しながらブライトンが焦れずに前進を狙ったから。とりわけSBがやや絞り目で何回もやり直しに関与することで攻撃の角度を細かく変えて変化を付けていた。
 
 後半になるとブライトンはシステム変更を実施。3バックにしたことで後方のかみ合わせでズレを作れるようになる。こうなると前半よりもサイドにボールを付ける難易度は低下。アンカーも前半のアルザテではなくビスマが務めることでより安定感を増した。大外に張るWBにボールが渡ったのにあわせてIHがハーフスペース裏に抜ける動きを見ると、ようやくブライトンらしさが出てきたなという感じである。
 
 勢いづく中でさらにパワーを添えたのが交代選手。IHとして入ったモデルは交代直後に右のハーフスペースに飛び出すと、モペイへのアシストを決める。逆転ゴールも全く同じハーフスペースの飛び出しから。今度ゴールを決めたのは交代で入ったアリスターである。
 
 システム変更でらしさを取り戻し、交代選手でパワーを注入したブライトンがターフ・ムーアで劇的な逆転勝利を飾った。

試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
バーンリー 1-2 ブライトン
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:2′ ターコウスキ
BRI:73′ モペイ, 78′ アリスター
主審:デビット・クーテ

④チェルシー×クリスタル・パレス

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■30分で答えを見つける

 PL最年長指揮官であったホジソンが旅路を終えることを決めた2021年。クリスタル・パレスが新しく指揮官に任命したのはアーセナルOBであるパトリック・ヴィエラ。馴染み深い土地であるロンドンに帰還し、初めての公式戦の対戦相手は昨季のCL王者のチェルシーだった。

 クリスタル・パレスは陣形こそ昨季と同じ4-4-2だが、中央を固めるナローな形に。はじめは外へのカバーリングにSHが行くかSBが行くか?という部分でもたつき、チェルシーに大外で簡単にクロスを上げられる場面もあったが、時間が進んでいくにつれその部分は整理されていくように。チェルシーが大外に出した時にSH、CH、SBで閉じ込めるように壁を作り、同サイドからチェルシーを脱出させないようになる。

 保持の核であるジョルジーニョとコヴァチッチの両CHを2トップで消す形で中央からの供給も断ったクリスタル・パレス。前半も中盤になる頃にはチェルシーの保持は落ち着き、ボールを持ちながらも攻めあぐねるようになった。

 しかし、均衡の打開は突然に。チェルシーは右サイドのペナ角付近からマルコス・アロンソの直接FKで先制点。グアイタはもちろん、クリスタル・パレスの壁もこのシュートに全く反応できず、アロンソのシュートを阻むものはなかった。

 定点攻撃においてもチェルシーは徐々に解決策を見出すように。パレスの2トップがCHを消す分、時間を与えられたチェルシーのバックスは大外の奥に立つ選手に長いフィードを送るように。一手ずつではなく、ダイレクトにSBを引き出すと、パレスのカバーリングは徐々に間に合わないようになっていく。最終ライン⇒大外⇒ハーフスペースをつなぐことで、パレスの左サイドからカバーの裏を取っていくチェルシー。30分には見つけ出したこの攻略策でチェルシーはあっさり追加点を挙げる。

 後半になっても流れが変わらないパレスは5-3-2へのシステム変更を決断。ハーフスペースを埋めつつ、同サイド圧縮を完遂させる形にシフトする。しかし、チェルシーはフォーメーション交代直後に解決策を提示。3センターを横に揺さぶるように左⇒右に大きな展開を挟むと、持ちあがったチャロバーが3点目。システムの欠陥を早々についたチェルシーが試合を完全に決めた。

 パレスの好材料は終盤にようやくザハのボールタッチが軽くなったことくらい。策を講じたが、アッサリと解決策を見出したチェルシーを前に完敗。ヴィエラにとっては手厳しい船出となった。

試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
チェルシー 3-0 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:27′ アロンソ, 40′ プリシッチ, 58′ チャロバー
主審:ジョナサン・モス

⑤エバートン×サウサンプトン

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■勝負を分けたのは後半の機能性

 共に4-4-2同士の噛み合わせとなった一戦。攻撃に軸足を置いた両チームのスタイルを踏まえた通りの非常にオープンな戦いとなった。

 サウサンプトンは昨シーズンのスタイルからマイナーチェンジ。昨季はとにかくライン間のCFに縦パスを入れて、SHが落としを受けて直線的にゴールを狙うやり方を狙っていたが、この試合では最終ラインにCHが落ち、押し上げたSBを経由しながら外に循環させつつ前に進んでいくやり方を取り入れていた。

 一方のエバートンは非常に直線的。詰められるとシンプルにキャルバート=ルーウィン目掛けたロングボールを狙っていくという形。これだけだと後方からの押し上げが間に合わない!となりそうなものだけど、縦への速い展開もCHが運動量で何とかしているのがすごいところ。間延びしたロングボール一発でも前線への顔出しが間に合うのだから、ドゥクレは唯一無二である。ちなみにキャルバート=ルーウィンはロングボールを収める精度が昨季よりちょっと落ちている気がしたので、続けて観察していきたいところである。

 どちらのチームも守備の部分では課題が浮き彫りになった試合でもあった。特にサイドにボールがあるときはボールサイドへのスライドが甘く、たとえ速い攻めでなくても保持側が間や裏を使うことはそんなに難しくなかった。FWもプレスバックをしないため、マイナスのパスでのやり直しもOK。非保持側はほぼ保持側のプレーを制限できず、持っている側のミス待ちのような状態が続いた。

 どちらの攻撃が相手の守備ブロックを貫くか?という流れの中で先制点は意外な形で入る。トリガーになったのはマイケル・キーン。珍しく、シンプルに縦に蹴らずに出しどころを探っているなと思ったら、詰められてスペースがなくなり、ボールロスト。最後はA.アームストロングが1対1の局面からゴール角に打ち込みサウサンプトンが先制する。

 しかし、後半にミスが出たのはサウサンプトンのバックス。セットプレーの流れから、跳ね返しに伴うラインアップを怠ると、裏に抜けたリシャルリソンを完全にフリーに。頭を越されたサリスは切ない。せっかくセットプレーを跳ね返したのに、遅れて押し上げた挙句簡単に相手を離してしまった。

 後半はサウサンプトンのプレスが徐々に積極性を失う。体力の低下からか、中盤を素通りさせる場面が増える。その結果、エバートンが相手陣でプレーする機会を得ることになる。効いていたのは交代で入ったイウォビ。落ち着かない全然の中でボールを収め、空いているスペースを探してパスを入れることでサウサンプトンの守備に穴をあける。

 2得点目のドゥクレのゴールはスーパーだが、3失点目のキャルバート=ルーウィンのゴールはあそこまで入られてしまえば必然といっていいだろう。終盤に相手の機能性低下を見逃さなかったエバートンが逆転での開幕戦勝利を手にした。

試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
エバートン 3-1 サウサンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:47‘ リシャルリソン, 76’ ドゥクレ, 81’ キャルバート=ルーウィン
SOU:22’ アダム・アームストロング
主審:アンディ・マドレー

⑥レスター×ウォルバーハンプトン

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■千両役者の揺さぶりと仕上げ
 
 互いにミドルゾーンで構えるチーム同士の対戦となった。多くのプレミアリーグファンにとって保持の印象があるのはレスターの方だろう。だが、この日はウルブスの5-4-1ブロックを前にややてこずる。苦戦したのは4枚の中盤をなかなか動かせなかったところに原因がある。
 
 しかし、レスターはそう簡単にあきらめることはない。後方のボール回しで中盤を突破することが難しいと見ると、まずはヴァーディの左右の裏抜けでチームを縦に引っ張りウルブスのラインを下げる。

加えてSBがやや低い位置で受ける頻度を増やし、ウルブスのSHをつり出す。この動きでSH-CHの段差を作ると、そのスペースにマディソンが入り込み間受けをする。これにより、レスターは前進の道筋を見つけることが出来るように。
 
 押し込む頻度が増えた中で先制したレスター。サイドからペレイラのクロスに合わせたのはヴァーディ。千両役者のエースがレスターの今季のオープニングゴールを飾ることになった。
 
 そしてどちらかといえば保持が不慣れなのはウルブスの方。5バックなので後方のビルドアップ隊は数がいる分、レスターのプレスに引っかかることはなかったけど、前線までにボールを届ける道筋を見つけるのはハードだった。
 
 だが、一度ボールが渡ってしまえば前線のアダマ・トラオレが好調。EUROでほぼ出番がなかった鬱憤を晴らすようにカウンターで暴れまわる。
 
 後半になると、さらに展開はオープンに。そうなるとペースはよりウルブスの方に転がることになる。速い展開からシュートを重ねていくウルブス。一方のレスターはシュート数こそ差がついたものの、やられっぱなしだったわけではない。カウンターでゴール前まで運べるけどひっかけてしまう。そんな場面の連続だった。
 
 レスターは終盤5-3-2で引いて受けることで試合を落ち着けようとするが、前線にヒメネス(おかえりなさい!)がいるウルブスは撤退守備に対する攻撃力が昨季よりも向上、クロスに対してレスターファンが冷や汗をかく場面もあった。
 
 だが、試合はレスターが逃げ切り。立ち上がりの落ち着いた展開を攻略し奪った先制点が奏功し、白星スタートを決めた。

試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
レスター 1-0 ウォルバーハンプトン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:41′ ヴァーディ 
主審:クレイグ・ポーソン

⑦ワトフォード×アストンビラ

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■悪癖が出たアストンビラ
 
 一度ハマったら抜けにくいチャンピオンシップの沼にハマることはなく、1年でプレミアの舞台に舞い戻ってきたワトフォード。どう見ても『普通にプレミアでやってましたけど何か?』顔をしている強そうなスカッドである。
 
開幕戦の相手はエースの穴を埋める再建のシーズンになるであろうアストンビラ。多くの新戦力を揃えた前線がどう機能するかが見どころになる。
 
 保持の部分は互いに最終ラインが横幅を確保し続ける。深い位置からGKを使ってCBが開くというスタイルはプレミアでは上位、下位関わらずすでに今やおなじみの形となっている。
 
 やや異なったのは両チームの守備のスタンスだ。アストンビラは比較的前から捕まえに行くのに対して、ワトフォードはライン間をコンパクトに維持することを選択する。この選択が両チームのこの試合の命運を分けた感じがあった。
 
 悪手だったのは前から行ったアストンビラの方。アストンビラというかどこもそうなのだけど、戻らされているときのDFラインは大体脆い。いい時のアストンビラはこの背走させられる場面が少ないことが特徴である。ただ、この試合では前からいく分、全体の陣形が間延び。相手に縦に早く進まれてしまい、DFラインが背走する場面が非常に多かった。
 
 アストンビラも同じように間受けでマークを剥がそうとするが、ワトフォードがスペースをコンパクトに維持しているため、ひっかけてしまう場面がたびたび。
 
 こうして、スピーディーに攻撃に移行できていたワトフォードが先制点にたどり着く。2点目はやや幸運だったとは言え、速い攻撃をあっさり許してしまったことが根本原因であることは同じである。
 
 後半のアストンビラはフォーメーションを4-3-3に変更。左サイドに移動したエル・ガジとインサイドに入ったラムジーでチャンスメイク。逆サイドにマッギンとブエンディアが入る形で、左サイドからクロスを入れて好機を演出する。
 
 この形で後半はチャンスを作ったアストンビラ。マッギンの豪快なボレーで1点を返す。左サイドに交代で入ったベイリーはスピードこそやや劣るが、相手が飛び込みにくい小刻みなステップからの抜ききらないクロスでエル・ガジに続き左からチャンスを創出した。
 
 惜しむらくはワトフォードが十分にカウンターからチャンスを作り続けていたこと、そして後半早々に勝負を決める3点目を手にしていたことである。こうなると終了間際に得たアストンビラが得たPKも焼け石に水。開幕から目の当たりにした悪い日のアストンビラの隙をついて得点を重ねたワトフォードがうれしい1部復帰後初勝利を挙げることになった。

試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
ワトフォード 3-2 アストンビラ
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:10′ デニス, 42′ サール, 67′ エルナンデス
AVL:70′ マッギン, 90+7′(PK) イングス
主審:マイク・ディーン

⑧ノリッジ×リバプール

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■調整も内容もバッチリの開幕戦

 2部からの帰還を見事1年で達成。ファルケのノリッジは2年ぶりのプレミアリーグを戦うことになる。開幕戦はリバプールを迎えてのホームゲームとなった。

 1年での期間ということで以前の挑戦と比べて大きくスタイルは変わっていないように見えた。非常にアグレッシブで、ショートパスをつなぎながら攻め進んでいく形。立ち上がりはリバプールとガッツリ組みながら序盤からチャンスを生んでいく。

 ノリッジが狙っていたのはリバプールのサイドバックの裏。特にアレキサンダー=アーノルドのサイドを執拗に狙い、ラインを一気に下げて相手のゴールに向かう。ただ、勢いはあったもののどこか一本調子の感は否めず。タメを作ることなく、ゴールに直線的に向かうのでチームの重心も上がらずに攻撃機会は単発になる。

 ノリッジは守備においてはコンパクトな4-3-3でリバプールを迎え撃つ。ライン間が狭いと判断したリバプールはまずはマネが裏に走りながらライン間を広げる作業から取りかかる。チェルシーもそうなんだけど、こういう泥臭いけど攻略に必要な下準備に取り組めることはすっきりした頭で開幕戦に取り組んでいる証拠なんじゃないかなと思った。

 縦方向には前線のフリーラン、横方向にはミルナーやファン・ダイクの右サイドに振る大きな対角パスで徐々にノリッジのゴールに迫っていくリバプール。そんなリバプールに先制点はやや幸運な形で呼び込まれる。ミルナーのパスで対角に振ったパスを受けたアレクサンダー=アーノルドのクロスはサラーに。おそらく、やや流れたトラップなのだろう。サラーのトラップはジョッタの前に転がり、先制点となるシュートにつながる。転がってきたのは幸運だが、そこにいたのはたまたまではない。ジョッタの鋭いポジション感覚が呼び込んだ得点といえるだろう。

 後半、ノリッジはIHのプレスの意識を高めてリバプールを高い位置から止めにかかる。だが、これは逆効果。むしろIHが空けたスペースにリバプールがパスを刺しこむことに寄って前進を許す結果になっていた。前がかりになる分のしっぺ返しはカウンターでも。スピードに乗った状態での対人はやはり分が悪く、簡単に1,2枚剥がされる場面が目立つ様に。リバプールの追加点もカウンターからいつの間に出来た数的優位からだった。

 ファン・ダイクの復帰戦はつつがなく行われ、ファビーニョ、フィルミーノ、ジョッタなどの主力のプレータイムもおそらく計算通り。ノリッジをねじ伏せたリバプールが快勝で開幕戦を飾った。

試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
ノリッジ 0-3 リバプール
キャロウ・ロード
【得点者】
LIV:26′ ジョッタ, 65′ フィルミーノ, 74′ サラー
主審:アンドレ・マリナー

⑨ニューカッスル×ウェストハム

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■ドリブル博覧会へようこそ
 
 あぁ、プレミアリーグが帰ってきたなと思う試合だった。両チームとも立ち上がりから細かいことよりも自分たちの持ち味を前面に押し出す展開だった。ウェストハムは昨年に続く強固なセットプレーでゴールに迫る。先にチャンスを作ったのは彼らの方だった。
 
 対するニューカッスルの方はなによりサン=マクシマン。一度ボールを持ったら離さない彼のドリブルは今季も健在。そのドリブルで先手を取ったニューカッスル。右サイドでボールを持つと、ライスを無限の切り返しで振り切りクロスから先制点をおぜん立て。いかにもサン=マクシマンらしいアシストでニューカッスルが一歩前に出る。
 
 その後は両チームとも落ち着かない展開に。ボーウェンが意味不明な突破をすれば、得点で勢いづくサン=マクシマンはさらにドリブルを仕掛ける。まるでドリブル博覧会かのようにボールがピッチを往復する展開になった。
 
 やや時間がかかった攻撃の時は両チームとも非常に前がかりに。ウェストハムはSBを両方上げて対応。右サイドから多角形を作り、逆サイドに展開するとクレスウェルのクロスから同点弾を叩きこむ。
 
 両SBを同時にあげるくらいのウェストハムの攻撃がかわいいくらい、バランスが無茶苦茶だったのはニューカッスルの攻撃だ。シェルビーが最終ラインに落ち、前線には常に3,4人が張り付く。ぽっかり空いた中盤にサン=マクシマンが君臨し、前線にドリブルの行く末を見守りながらドリブルをするというのが彼らの攻撃である。時には最終ラインの後ろから数えて2人目がサン=マクシマンになるほど、ドリブルのために自陣深くまで下がってボールを受けていた。
 
 そのサン=マクシマンのドリブルからサイドに展開し、リッチーのクロスで仕留めてニューカッスルは再びリードを奪うことに。
 
 しかし、ドリブルはうまくいけばいかない時もある。自陣深い位置でサン=マクシマンのドリブルをかっさらったライスが1失点目のリベンジを達成。今度はドリブルが得点ではなく、失点の起点になってしまったニューカッスルだった。
 
 ニューカッスルの守備で気になったのは5バックなのにやたら大外からクロスを上げられまくること。5バックの外から上がったクロスでひたすらピンチを迎え続けていたのは解せない。クラフトがファーへのクロスをギリギリでカットしていなかったらあと2点はウェストハムに入っていたはずだ。
 
 後半は守備の悪い部分が目立ったニューカッスルはPKの流れでひとたび逆転を許すと再び振り絞る力が残っておらず。プレミア開幕を知らせるド派手な撃ち合いはウェストハムの勝利で幕を閉じた。

試合結果
ニューカッスル 2-4 ウェストハム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:5′ ウィルソン, 40′ マーフィー
WHU:18′ クレスウェル, 53′ ベンラーマ, 63′ ソーチェク66′ アントニオ 
主審:マーティン・アトキンソン

⑩トッテナム×マンチェスター・シティ

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■試運転の機能不全を見逃さない

 開幕節随一のビックマッチが第1節の最後を飾ることになった。ケインがまだスカッドに戻ってこない中でヌーノを新監督として迎えたトッテナムは前年のチャンピオンと相まみえることになった。

 基本的にはシティの保持を受け止めるトッテナムという構図で90分間、この試合は進むことになる。シティのビルドアップはコミュニティ・シールドのレスター戦で見せたものと同じ。4バックがPA幅にとどまり狭い間隔を維持しながらビルドアップをする。あらゆるチームがGKを使い、CBが左右に大きく開きながらビルドアップをする時代においてトレンドに逆行する動きである。

 スパーズはこれに対して4-3-3で構える。3センターは3トップと連携し、六角形の中にアンカーのフェルナンジーニョを閉じ込め、中央からの前進を阻害する。昨年の対戦では4-4-2だったので形は違ったけど、トッテナム的には六角形の中に中盤中央のプレイヤーを閉じ込めながら、中央でボールを受けさせないというコンセプトは同じ。3トップはボールがサイドに出た時も、内側にボールを入れさせないような角度で相手のパスコースを切っていた。

 シティの攻め手は左サイドから。大外に張るWGのスターリングを噛ませて、インサイドハーフのグリーリッシュがエリア内に突撃していくスタイルである。突撃したIHがもともといたスペースには後方からメンディが登場。スターリング、メンディ、グリーリッシュのトライアングルでエリア内に進むスタイルだ。

 シティがさすがなのはこの3人の関係を立ち位置を変えながら機能させる部分まで昇華させていたこと。原則に沿った仕込みをするからこそなのだろう。

 しかし、シティはトッテナムを崩し切ることはできなかった。理由はいくつかある。1つはシティが大外で優位を取れなかったから。特にスターリングと対面するタンガンガがマッチアップをかなり優勢に進めたことが大きかった。そのため、グリーリッシュが深い位置に入っていくことからしかチャンスを作れない。

 さらに、ネガトラにおける脆弱性も大きな課題だ。インサイドハーフのグリーリッシュが高い位置をとるため、アンカー周辺のスペースは空いてしまう。逆サイドのIHのギュンドアンも特にバランスをとってアンカー脇まで下がるなどもしなかったので、フェルナンジーニョは広い範囲を一人でカバーしなければいけなかった。

 そのためにSBがナローに構えたのでは?とも思うけど、説明したように結局メンディは高い位置に出ていくため、アンカー脇のプロテクトはできない。どうしてナローに構えてビルドアップするのかはまだあまりピンとこない。したがって、いちいちスパーズのカウンターは致死性のもの。ルーカスやベルフワインは中央のスペースからドリブルで容易にボールを運ぶことが出来ていた。

 スパーズはそのカウンターから先制点。たびたび脆さを見せていたシティの左サイドをソンが破壊。シティはアケとメンディの連携がうまくいかず、ソンにシュートコースを与えてしまった。

 シティは後半、スパーズの中央のプロテクトが甘くなる分フェルナンジーニョを使える場面は増えたが、IHがサイドへのチェックを強化したため、シティはサイドからの打開がなかなか難しくなる。特にこういう泥臭い仕事はあまりやりたがらなさそうなアリが黙々とプレスバックとチェックを繰り返していたのが印象的だった。

 徐々にスパーズを混乱させていた旋回も鳴りを潜め、シティは単調な攻撃を繰り返すように。最後はデ・ブライネの力に頼りやや息を吹き返した感があったが、ゴールをこじ開けることはできなかった。

 新システムの試運転感が否めないシティに対して、不具合をカウンターから90分間つき続けたスパーズ。ケインの去就や保持時の崩しのバリエーションなどの課題はあるが、まずは上々の滑り出しといっていいだろう。

試合結果
トッテナム 1-0 マンチェスター・シティ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:55‘ ソン
主審:アンソニー・テイラー

  おしまいじゃ!

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