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「コパアメリカ2021 チーム別まとめ」~パラグアイ代表編~

目次

チーム情報

監督:エドゥアルド・ベリッソ
FIFAランキング:
W杯2018⇒予選敗退
コパアメリカ2019⇒ベスト8

招集メンバー

GK
22 Gerardo Ortiz
1 Antony Silva
12 Alfredo Aguila

DF
15 Gustavo Gómez
4 Fabián Balbuena
24 Héctor Martínez
2 Robert Rojas
3 Omar Alderete
6 Júnior Alonso
19 Santiago Arzamendia
13 Alberto Espínola

MF
5 Gastón Giménez
14 Andrés Cubas
27 Jorge Morel Jorge Morel
26 Piris da Motta
8 Richard Sánchez
23 Mathías Villasanti
16 Ángel Cardozo Lucena
25 Braian Ojeda
10 Miguel Almirón
17 Kaku Kaku
21 Óscar Romero

FW
18 Braian Samudio Braian Samudio
28 Julio Enciso
11 Ángel Romero
20 Antonio Bareiro
7 Carlos González
9 Gabriel Ávalos

各試合振り返り

GS第1節 ボリビア戦

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■10人では不可能

 この試合は90分間を通して攻める側と受ける側がはっきりしていた、立ち上がり、左サイドバックのアルサメンディアのオーバーラップから強襲をかけたパラグアイが明らかにこの試合の主導権を握っていた。

 パラグアイはボリビアの5-3-2のWBの手前のスペースからの進撃が多く見られた。ここから大外へのサイドチェンジを行い、ボリビアを左右に振りながらゴールに迫っていく。プレミアファンとしてはキャラに反して守備に奔走する機会が多かったアルミロンも代表では自由にプレーしているのが印象的だった。

 ボリビアは低い位置からのビルドアップを積極的に行うものの、高い位置からプレスに来るパラグアイに対して前進できる機会は限定的。逆にプレスに行く際は2トップが前に出ていく素振りこそ見せるものの、あっさりとサイドに振られて簡単にラインを下げてしまう現象が目立つ。

 限られた攻撃機会からハンドによるPKでボリビアが先制した後も大きな試合の展開は変わらず。パラグアイがビハインドで前半を終えたのが不思議なくらいだった。

 さらにボリビアに追い打ちをかけたのが前半終了間際のクエジャルの退場。10人へのスケールダウンに加えて、ボールが集まりやすかったクエジャルがいなくなることでボリビアは前線の預けどころもなくなってしまった。

 後半はより一層のパラグアイの攻めが目立つ試合に。10人で4-4-1を組むボリビアに対してパラグアイはより前線に人をかけていく。パラグアイのSHがハーフスペース付近に浮遊し、相手のSBを固定することで大外にスペースを創出。こからどかどかクロスを放り込むやり方でボリビアを追い込む。

 深さを作ってのクロスとゴールに向かうアーリークロスのコンボにボリビアが決壊したのは60分過ぎのこと。人は足りているけど跳ね返せない状況では凌ぎきれないのも無理はないだろう。立て続けにクロスの流れからガマラのミドルとロメロの押し込みで逆転すると、3点目は勇気を持って攻めに出たボリビアをカウンターでひっくり返した。

 11人でも厳しかった前半の戦い方を見ればボリビアが10人で無理なのは自明。むしろ、60分までGKのコルダノはよくしのいだといっていいだろう。

試合結果
パラグアイ 3-1 ボリビア
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
PAR:62′ ガマラ, 65′ 80′ ロメロ
BOL:10′(PK) サーベドラ
主審:ディエゴ・ハロ

GS第3節 アルゼンチン戦

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■アグエロ型でもスイッチ役は・・・

 前線のメンバーをガラッと変えてパラグアイ戦に臨む決断をしたアルゼンチン。アグエロ、ディ・マリア、ゴメス、パレデスをラウタロ・マルティネス、ゴンサレス、デ・パウル、ロ・チェルソから入れ替えればある程度カラーが変わるのは当然のことといえるだろう。

 それにしても大幅にカラーは変わったように思う。特に前線。今までは前でラウタロとゴンサレスが大きく動きながら早い展開を誘発する。今回のゴメスとディ・マリアの2人はむしろ低い位置までボールを引き出して、自らと共にボールを運ぶ。トップに残るアグエロも基準点になるタイプ。つまり、前で走る選手がいない分、後ろが重くなりやすく前線は孤立しやすいという難点を抱えやすい。ゆっくりと確実に後ろからボールを運ぶ必要はある。

 パラグアイも当然それをわかっていたのだろう。4-4-2気味に受ける守備を選択したが、なるべく中盤の手前で食い止めるようなプレーが多かった。中盤が戻る時間を稼ぐなら、DFラインから出ていくリスクも取る。とにかくバイタルで前を向かせる状況だけは避けたいところ。

 それでもメッシにはライン間で前を向く状況を作られてしまう。大きな展開を頻発するラウタロ型でも、少しずつ前進するアグエロ型でも、スイッチを入れるのはメッシである。この試合でも彼のドリブルで徐々に前に進む。押し込んだ後の崩しはこの日のアルゼンチンのクオリティは高かった。メッシだけでなく、ディ・マリアもタメを作れるため、崩しのバリエーションはラウタロ型より増えた印象だ。

 得点シーンにおいてもディ・マリアの緩急に合わせたゴメスの動き出しがきっかけに。2人を引き付けてディ・マリアのカットインのスペースを作ったメッシもさすがである。相手を引き付ける重力がある選手だ。

 後半は一転保持の時間が増えたパラグアイ。前節同様跳ね返しまくりのアルゼンチンの守備陣に大分手を焼いていた。唯一可能性があったのはスペースに上げるクロス、そしてホルダーを追い越した選手を使う相手のラインを下げながらのクロス。左SBのアルサメンディアのオーバーラップを使った形は少しはアルゼンチンの重心を脅かせることができていた。

 ただし、それでも十分な決定機とは言えず。アルゼンチンが4-3-3にシフトしてからは、中盤で跳ね返しまくりクロスの前に撃退する前半のパラグアイとダブるやり方でパラグアイにプレッシャーをかけるように。

 結局最後までパラグアイにおいしい思いをさせなかったアルゼンチン。水際守備の強度は今日も健在。クリーンシートでの勝利を決めた。

試合結果
アルゼンチン 1-0 パラグアイ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
ARG:10′ ゴメス
主審:ヘスス・ヴァレンズエラ

GS第4節 チリ戦

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■競った展開を変えたのはセットプレー

 立ち上がりからなかなか展開が安定しない時間が続いた試合だった。ボールがピッチを縦方向に行ったり来たり、どちらのチームが主導権を握った展開といえない状況で試合は進む。

 その状況を誘発したのは互いのDFラインの選手たちの積極的な前に出ての守備である。前から出ていって、縦の楔を潰し続ける積極的な守備に攻め手が苦しむという構図であった。

 どちらかと言えば保持が安定していたのはチリの方だろう。パラグアイの4-4-2のセットに対して、チリの4-3-3の並びはアンカーがあまりやすい。プレス隊が2枚のパラグアイに対して、3枚で後ろを組むチリは安全地帯を作りながらのビルドアップが可能な状態に。

 ただ、チリはもう一歩奥に進むことができない。どうしてもやり直しに逃げてしまいがちなポゼッションで、裏を取れたとしても全体の重心を上げられずに厚みをもたらすことができる攻撃にはならず。パラグアイの後方の選手に捕まっている状況からなかなか逃れられない。

 一方のパラグアイは2-2型のボックスビルドアップ。結構、最近は見ない形のような気もする。斜めの形を作るのが難しく、ショートパスでのビルドアップはチリに比べると控えめ。それよりはダイレクトな展開で右の大外から押し下げる形を狙うことが多かった。それでも相手を振り切れずに好機には至らない。

 展開自体が傾かない膠着した試合を動かすのはセットプレーと相場が決まっている。先制したのはパラグアイ。CKからファーサイドにズドンで先制に成功。そのあとのCKでも同様にファーサイドにズドンをパラグアイは狙っていたので、チリのセットプレーの狙い目としていたかもしれない。チリ、最終ラインに高さはないからね。

 後半のチリは5-2-3気味に布陣変更。最終ラインから中盤までアランギスの行動範囲を広げながら、ポゼッションに変化をもたらせようとする。しかし、どちらかと言えばボールを渡して、カウンターで主導権を握ったのはパラグアイ。スピード勝負ができるだけでなく、ポストで前線の起点ともなったアルミロンは幅広い活躍。追加点のPKも沈めてみせた。

 競った展開をセットプレーで制し、主導権を握ったパラグアイ。ハードな展開から主導権を完全に引き寄せ、決勝トーナメント進出を決める勝利を飾った。

試合結果
チリ 0-2 パラグアイ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
PAR:33′ サムディオ, 58′ アルミロン(PK)
主審:ウィルマー・ロルダン

GS第5節 ウルグアイ戦

画像4

■流動性で得た優位

 次ラウンドへの進出が決まっている両チームの一戦。比較的リラックスした形でこの試合を迎えることができたはずである。ウルグアイはスアレスを温存。カバーニと共に前線に入ったのはデ・ラ・クルスとデ・アラスカエタの2人。彼ら2人をシャドーとして4-3-3のフォーメーションでパラグアイの4-4-2に挑む。

 アンカーのベシーノが降りる役割を果たす分、後方は数的優位を組みだすことができるウルグアイ。その分、パラグアイは中盤4枚でウルグアイのSBとIHの4枚をホールド。中盤を硬直させて、保持の展開を停滞させることを狙う。

 これを打開したのがウルグアイの流動性の高い前線。ボールを引き出すスキルは天下一品のカバーニはもちろん、デ・ラ・クルスとデ・アラスカエタの2人もスペースに入り込んでくるランはとてもよくできていた。ウルグアイは最終ラインからの前線のスペースに向けたフィードで相手を押し下げると先制点につながるPKを得る。

 その後も前線の3枚を中心にパラグアイの最終ラインに対して優位を取るウルグアイ。パラグアイは彼らの機動力を止めることができず、最終ラインを押し下げながら、ウルグアイが入り込めるスペースを作ってしまう。そのスペースにシャドーや後方の選手が入り込むことで好機を作り続ける。

 一方のパラグアイは攻撃機会は少ないものの、カウンターを中心に反撃に出ようと試みる。特に頼みの綱になったのはアルミロン。中央で受けるとここから左右に散らす役割を担当。クラブよりもひょっとすると重要な役割をまかされている感のあるアルミロンであった。

 しかし、そのアルミロンが腿裏の負傷で交代。決勝トーナメントを見据えても、パラグアイには非常に痛手となりそうだ。これにより、敵陣でのボールの収めどころを失ったパラグアイであった。

 後半も引き続き試合のペースはウルグアイ。パラグアイとしても引き続き負傷者が出る可能性を踏まえると勇猛果敢に出ていくのはリスクに直結する。2点目は取れなかったが、手堅く勝利を決めたウルグアイ。ベスト8の舞台で今日の両シャドーにはもっと大暴れしてほしいところである。

試合結果
ウルグアイ 1-0 パラグアイ
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
URU:21′(PK) カバーニ
主審:ラパエル・クラウス

Quarter-final ペルー戦

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■因果と運の第1試合

 決勝トーナメントの第一ラウンドは伏兵同士の一戦。保持の巧さを見せたペルーと、手堅さで挑んだパラグアイの対決である。

 序盤は試合は全く落ち着かなかった。立ち上がりから6分でファウルは8回。この数字だけでピッチ上のバタバタ感が伝わってくるようである。試合はどちらのものともいえなかった。どちらかと言えば、これに困ったのはペルーだろう。グループステージの4-2-3-1から変更した4-1-4-1の形は彼らの得意な保持にやや傾倒したフォーメーションだろう。彼らは保持の時間を長くして、試合の展開を落ち着かせたかったはずだ。

 それが叶わなくておいしかったパラグアイが先制。セットプレーから高さのミスマッチを利用して叩きこむ。落ち着かない展開の中で試合の主導権もなんとか握っていたといっていいだろう。特に刺さったのはカルドソ・ルセーナとビジャサンティのCHコンビの防波堤。ここがボール回収の起点となり、ショートカウンターの発動元となる。保持の部分でもサンチェスが中盤に下がり、安定化を図るパラグアイだった。

 一方のペルーもパラグアイの中盤の防波堤さえ越えればチャンスは引き寄せられていた。頻度こそ少ないものの、サイドから突破したカリージョからラパドゥーラの得点で追いつく。ペルーの真骨頂だったのは2点目。縦に間を揺さぶりながら、間受けで楔を引き出しパスをつないだビューティフルゴール。彼らの良さが詰まった逆転弾となった。

 いいスタートを切ったものの、逆転まで許してしまったパラグアイ。前半終了間際にはきわどい判定でゴメスがレッドカードを受けるなど、やや恵まれない形で前半を終える。

 後半は割り切ったパラグアイがショートパスとロングパスを織り交ぜながらガンガン前進。振り切った形でぺルーに圧力をかけていく。すると、前半と同じくセットプレーから同点。パラグアイ、これくらいできるなら11人の時からやればよかったのにな。

 数的優位を得たペルーは2トップに切り替えて前線の枚数を増やす。しかし、これが逆効果。間受けのパスのつなぎの連続が見られなくなり、持ち味であるショートパスでの崩しが見られなくなってしまう。サッカーって難しいね。

 パラグアイの猛攻も落ち着き、互角の展開になった後半で得点を得たのはペルー。リフレクションというやや幸運な形で勝ち越し点をゲットする。これで10人相手に逃げ切れると思いきや、85分にカリージョが退場してペルーも10人に。割り切って2トップにして放り込みを始めるパラグアイに主導権が移る。

 同点ゴールとなるロングボールを落として粘ったサムディオの投入は効いた。サムディオの落としを受けたサイドは直前にカリージョが退場しているサイド。こういう因果はあるあるである。

 10人同士の3-3という死闘で迎えたPK戦。互いに決まらないヒリヒリする展開が続く中で勝利したのはペルー。展開が二転三転する難しい試合を制し、ベスト8に進出した。

試合結果
ペルー 3-3(PK:4-3) パラグアイ
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
PER:20′ 39′ ラパドゥーラ
PAR:10′ ゴメス
主審:エステバン・オストジッチ

大会総括

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堅実さの裏で足りないパンチ力

 5チーム中、4チームが勝ち抜けというレギュレーションにおいて、初戦にボリビアと当たれたのは幸運だった。多くの好機を作りながらもなぜかビハインドで前半を折り返しはしたものの、後半は10人になったボリビアを粉砕。まずは3ポイントを手にしたことは大きかっただろう。

 そのおかげかどうかはわからないが、この後のグループステージの試合においては非常にアグレッシブな姿勢が目立つ。特にそれが強く表れたのは守備の部分。アルゼンチン相手には引いて迎え撃つことはせず、ハーフライン付近から相手を追い回す。アルゼンチンはメッシやアグエロというワールドクラスが揃う前線が脅威。というわけで中盤より前でなんとか跳ね返すという意識で勇敢に立ち向かった。終盤にはメッシに徐々に受ける機会を増やされてしまい、敗れはしたもののアグレッシブに立ち向かうことができたと思う。

 続く、チリ戦でもその前向きなプレッシングは引き続き。加えて、セットプレーから手堅く得点を手にして、しぶとく勝利までこぎつけた。最終節となるウルグアイ戦で痛かったのは、前線の動き出しで完敗したことではなく、ここまでチームを牽引したアルミロンをケガで失ってしまったことだろう。

 それでも、決勝トーナメントではペルー相手に互角にやりあった。互いに退場者を出す乱戦の中で、強引に2トップにして点を取りいった結果、PK戦まで持ち込むことができたところは底力を感じた部分ではあった。負けてしまったけども。

 基本的には粘り強いチームで、アッサリと敗れることが非常に少ない。どこか淡白なGSを過ごすチームもある中で、堅実で手を抜かない好チームという印象だ。しかし、攻撃のこれといった形がないのが難しいところだろうか。大外のアルサメンディアは1つの武器にはなっていたが、アルミロンが負傷で欠場してしまうと、どうしても得点パターンといえる部分がなくなってしまう。

 手堅さと裏腹にかけているパンチ力を補えるかどうかが今後の課題になりそうだ。

頑張った選手⇒ミゲル・アルミロン
 守備に走りまくるニューカッスルの姿も個人的には好きなんだけど、横断するドリブルやポストから得点を演出する代表の姿の方が本来のキャラに近い気もする。

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