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「強みで先に当たりを引く」~2021.7.22-7.28 東京五輪 日本代表 グループステージ ハイライト

 東京五輪でサッカー全部見るマンなんているのだろうか。俺は絶対できない。けど、日本代表の試合は見た。見たら大体まとめる。それが俺のやり方である。というわけで早速行ってみよう。

目次

招集メンバー

GK
1 大迫敬介(サンフレッチェ広島)
12 谷晃生(湘南ベルマーレ)
22 鈴木彩艶(浦和レッズ)

DF
2 酒井宏樹(浦和レッズ)
3 中山雄太(ズウォレ/オランダ)
4 板倉滉(フローニンヘン/オランダ)
5 吉田麻也(サンプドリア/イタリア)
13 旗手怜央(川崎フロンターレ)
14 冨安健洋(ボローニャ/イタリア)
15 橋岡大樹(シント=トロイデン/ベルギー)
20 町田浩樹(鹿島アントラーズ)
21 瀬古歩夢(セレッソ大阪)

MF
6 遠藤航(シュツットガルト/ドイツ)
7 久保建英(レアル・マドリード/スペイン)
8 三好康児(アントワープ/ベルギー)
10 堂安律(PSV/オランダ)
11 三笘薫(川崎フロンターレ)
16 相馬勇紀(名古屋グランパス)
17 田中碧(川崎フロンターレ)

FW
9 前田大然(横浜F・マリノス)
18 上田綺世(鹿島アントラーズ)
19 林大地(サガン鳥栖)

監督
森保一

第1節 南アフリカ戦

画像1

■相馬の投入で壁を撃破

 どんな大会においても初戦は難しいものになるというのはよくある話だ。今回の日本自国開催のアドバンテージはあるだろうが、スタンドを埋めるサポーターも大きな声援もないスタジアムにおいては、むしろ開催国という肩書はプレッシャーとなってもおかしくはない。

 南アフリカ戦はまさしくそんな展開にハマった試合だった。立ち上がりから南アフリカは5-4-1のブロックを組み、前線から不用意にプレッシャーにいかないことを徹底する。その結果、日本はボールを持たされる展開が延々と続くことになった。特にゴール前は壁。5バックがペナ幅に並ぶことで中央から正面突破するのは非常に難しいものになっていた。

 したがって日本がまず狙ったのはサイド攻撃。まずは久保と堂安が揃う右サイドから細かいパス交換で前向きの選手を作る。その選手が内にカットインするようにドリブルしつつ、逆サイドに展開する。左サイドで受けた選手は南アフリカの壁のかバー範囲外となる大外からクロスを上げる。この役割はSHながら内に絞る三好よりも、オーバーラップした中山が果たすことが多かった。右に人を集めて横断し、薄くなった左からクロス。これが日本の前半のパターンだった。しかし、このクロスがなかなか刺さらない日本だった。

もう1つ問題になったのは南アフリカ相手にプレスが定まらなかったこと。南アフリカとは異なり、前線はプレスに動くものの、後方の連動がまばら。特に日本のCHが広い範囲をカバーするようになると南アフリカは前進に活路。上下動が流動的なシンを中心に南アフリカは縦方向への揺さぶりをかけ、ビルドアップで左サイドから前に向かう。ただ、南アフリカはCB陣の足元の拙さが足かせに。チャンスの頻度を上げることが出来なかった

 後半も日本の攻勢が続く。右の堂安のハーフスペースからの内へのカットインに遠藤、久保、酒井が合わせる形が中心に。前半からパフォーマンスを上げたのは林大地。裏への駆け引きを多用することで壁になっていた南アフリカのDFラインと上下に駆け引き。このおかげて奥行きが出るようになってきた。

 日本が押し込む展開において手を加えたのは左サイド。三好に代えて、幅の取れる相馬を起用する。これにより南アフリカは横幅をさらに警戒しなくてはいけない展開に。これが功を奏した日本。幅を取った相馬から田中が逆サイドに振ると、ようやく人が集まりがちだったの右サイドで久保のアイソレーションの状況が完成。この1on1を制して日本が苦しみながらも先制する。

 森保監督は得点前に予定していた選手交代を得点後にもそのまま実施する。選手交代を取り下げるコミュニケーションがうまくいかなかったのかもしれないけど。受ける展開が多い中で旗手のSBが裏目に出たのは本人の川崎でのSB時の振る舞いを考えれば仕方ない部分もある。一方で厳しい展開にも関わらず、選手交代もピッチの選手もそもそもゲームを閉じる意識が希薄だったのは気がかり。果たして日本が本当にリードしているのかどうか、区別がつかないようなプレーが多かった。

 とはいえ、課題を残しつつもまずは開幕戦をシャットアウト勝利で決めた日本。厳しい組み分けとなったグループの初戦を見事に飾って見せた。

試合結果
日本 1-0 南アフリカ
東京スタジアム
【得点者】
JPN:71‘ 久保建英
主審:ヘスス・ヴァレンズエラ

第2節 メキシコ戦

画像2

■WG勝負を制して2連勝

 日本にとっては初戦の課題をそのまま実践したかのような試合だった。膠着気味となった南アフリカ戦とは異なり、メキシコ戦は非常にハイテンポ。日本が整理したのはプレッシングの局面。久保が南アフリカ戦後のインタビューで『プレスにどう行くか決まり切らない部分があった』みたいなことを言っていたが、この試合では特にそれをはっきりさせた印象だ。

 特に厳しかったのは中盤のマンマーク。久保、田中、遠藤でメキシコ中盤の3人をそれぞれをタイトにマークしていく。特に両CHのボールサイドへのスライドは非常に顕著。同サイドに圧縮することでメキシコの大外でのスペースに制限をかける。これにより、南アフリカ戦で発生したような後追いのプレスは減少する。

 メキシコ視点からすれば迷惑だっただろう。ベガとライネスの両WGの個の打開力で決定機を創出したいはずだったが、そこにボールを届けることがまずままならない。届いたとしても中山と酒井の日本の両SBが対面相手を封殺。放り込めれば板倉とは勝負できそうだったマルティンに合わせるクロスをそもそも出せないのである。

 日本は前線の守備が攻撃側が1人多いようにプレスの人数調整をかけていた。そのため、メキシコはCB同士で横移動をすれば割と前進のきっかけは掴めるはずだった。だが、メキシコはそういったCBを使った保持の工夫には乏しく、横パスを使って日本の1列目を越える動きは少なかった。ズレを作る動きとしてはIHのロドリゲスがアンカーに落ちる分、守備ではアンカー位置に入るロモがより攻撃的な位置に入る縦の入れ替わりくらい。この入れ替わりにも日本は問題なく対応していた。

 前進に苦しむメキシコに対して、ショートカウンターからチャンスを創出した日本。先手を取ったのは堂安が右サイドの駆け引きを制したところから。WG勝負に持ち込みたいメキシコに対して、先にWG勝負で結果を出したのは日本だった。林が裏へのランで広げたエリア内のスペースに飛び込んだ久保が先制点を決める。

 日本の2得点目もWG勝負のところから。相馬の突破に対してメキシコのDFが思わず足をひっかけたことがOFRで確認され、PK判定を得る。これを堂安が決めて追加点。後半にも堂安は抜け出しから相手の退場を誘発。大きく試合を動かした。

 ただし、クローズの部分で課題が出たのは第1節と同じ。ただし、こちらは上田、前田、三笘とここまでプレータイムを十分につかめていない上に、早い展開が得意な選手を多く投入した部分がそもそも気になる。前線の中でボールを落ち着かせられるのは絶対的な地位をすでに築いている久保くらいだと思うが、その彼も終盤までは積極的に裏抜けを狙っていたことを見ると、チームとしてどのような指示があったのかは気になるところ。

 特に三笘は終盤のロストなど、コンディションも含めて試合にまだ入りきれていない印象だった。こうしたクローズに向かわない動きをする理由として前線の交代選手の調子を上げるところは前向きな要素として抜き出せる部分。この出場時間に追ったリスクが次につながればいいのだが。

試合結果
日本 2-1 メキシコ
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JPN:6‘ 久保建英, 11’(PK) 堂安律
MEX:85′ ロベルト・アルバラド
主審:アルトゥール・ディアス

第3節 フランス戦

画像3

■入れ替わりの理由を示した3人

 2連勝、だがわずかにグループステージ敗退の可能性を残しているという非常に難しい状況でこの試合を迎えた日本。メダルを見据えるなら選手は入れ替えたいはずだが、しくじれば即ゲームオーバーということで選手の入れ替えは最小限。負傷明けの冨安とコンディションを上げたい上田、そして2列目での起用を短い時間しか試していない旗手とそれぞれに意味のありそうな選手の入れ替えとなった。

 保持における基本的なコンセプトは南アフリカ戦と同じ。余っている日本のバックラインにはフランスがボールを持たせることを許容する。その分、内側を締めてライン間に縦パスを入れさせることを防ぐ。日本はそれに対して、ストロングの右を軸にサイド攻撃を繰り出していくという、日本の保持の時間が長くなりそうな試合展開を序盤から両チームは繰り返していた。

ただし、この日の日本のスタメンは選手が入れ替わった分の変化が見られた。まずは最終ライン。板倉が悪いわけではないけど、ビルドアップにおけるスキルは冨安に一日の長がある。4-3-3気味に構えるフランスのIHを引き出すための駆け引きを行いながらボールを動かすことが出来るのが冨安である。最終ラインでの非保持の強度もさることながら、保持の局面でも違いの作れる選手である。

 2列目には旗手。これまでは右サイドでしか見られなかった外から斜めに入り込む動きが旗手が入ったことにより左サイドでも増加。左右の偏重はやや解消された印象だ。速い攻撃において、最終ラインにアプローチする動きは国際大会でも健在。高い強度で攻撃の最終局面に絡んでいった。

 トップの上田は林同様に抜け出しの部分で勝負できる選手。だが、ボールを引き出してから味方を使う意識が強かった林とは対照的に、上田は自らが打ち切る姿勢がより強かった。

 こうした個々のタスクの変化で徐々にフランス相手に違いを作っていく日本。まずは相手のIHを保持で引き出すところから冨安を中心に相手を誘い込む、MFがラインを上げた時にDFラインが連動しないのがフランスの弱み。だからこそライン間を締めるアプローチをとったともいえる。

 誘いだしたライン間にパスが入ると、徐々にフランスは背走させられるように。縦パスの出し手として先制点で効いたのは田中碧。そして引き出したのは上田綺世。強引に打ち切る姿勢は久保がこぼれ球を押し込んで先制点を得るのにつながる。

続く2得点目もトリガーは上田。裏に抜けたところで打ち切ると今度は詰めていたのは酒井宏樹。縁深いフランス相手に突破を引き寄せる大きな1点を手繰り寄せる。

 一方のフランスは攻撃の活路を見いだせない。IHが降りる動きは不規則な分、日本にとってはメキシコ戦よりも対応しにくかったかもしれないが、問題はその先。どちらかといえばフランスは左サイドから攻め込んでくるパターンが多かった。左サイドのムアニはスピードこそ十分だが、相手のDFに止められるまで止まることが出来ない感じ。ちょっと弾丸小僧感が過ぎる。エリア内のジニャクまで届けることが出来ればチャンスになるのだが、逆サイドのトーヴァンも中山の健闘で持ち味を出し切れず。

 後半の日本はフランスが強引に前に出てこようとすることでむしろフランスのバックラインを突くチャンスが増えるように。HTに交代した久保を皮切りに選手を休ませつつ、交代選手を中心に速い展開で攻め切る。

 三好、前田、そして相馬と交代選手が得点に関与する活躍を見せた日本は後半も2得点。後半のフランスは前半のちぐはぐさを立て直す術を持っておらず、退場者を出しながらズルズルと急造チームらしい脆さを見せてしまい大敗。3試合で11失点の大盤振る舞いでグループステージ敗退が決まった。

試合結果
日本 4-0 フランス
横浜国際総合競技場
【得点者】
JPN:27‘ 久保建英, 34’ 酒井宏樹, 70′ 三好康児, 90+1′ 前田大然
主審:イヴァン・バートン

グループステージまとめと今後の展望

■強みで先に当たりを引く

 3試合を通して今の日本の強みと弱みが見えたグループステージといえそうだ。フランス戦や南アフリカ戦で見ることが出来た保持局面では久保と堂安を軸に右サイドで前を向く選手を作り、同サイド攻略もしくはサイドチェンジで薄い左サイドを使う。

特に堂安が前を向いたときは周りの合わせる動きが活性化。酒井や遠藤など後ろの選手も積極的にPAの高さまで上がってくる。日本のストロングサイドは間違いなくこちら。ちなみに田中碧と酒井はどちらかしかPA内まで入ってくることはなく、同時に突撃するシーンはあまり見られない。

 ただ、基本的にはゆったりとしたポゼッションよりも速い攻撃の方が得意。プレッシングからのショートカウンターや、田中碧の縦パスを起点として少ない人数で最善手を見つけ、一気にシュートまで持ち込むのが得意パターン。

これをサポートしているのがCFのオフザボールの動き出しの良さ。パスを引き出しつつ収めることができ、かつシュートまで持ち込むことが出来る上田と林の存在感が際立っている。前田大然も含めてFWがボールに絡みながらリズムを作るタイプよりも、よりゴールに迎えるボールを引き出せる人選になっていることもこの傾向に拍車をかけている。

 守備の局面でいえば最も得意なのは高い位置から勢いのあるプレッシングだろう。人に合わせてハメる形はつないでくる相手には効果的。特に五輪のように即席チームが多い大会では今回の日本の精度でも威力は十分。

 プレスがうまくいくかどうかはCHの守備範囲次第。田中や遠藤のようなボールハント力がある選手がパスの受け手を捕まえることが出来ているかどうかが1つの目安になる。つまりメキシコ戦の前半がいい例で、南アフリカ戦の後半が悪い例といえる。

悪い時は前線のプレスのやめどきが定まっておらず、中盤より後ろが広いスペースにおいて無理筋のボールチェイスを強いられてしまう。一応最終ラインにも強力な防波堤が構えているとはいえ、相手に走られる状況を進んで作ってしまうのはよろしくない。やや厳しめの基準が多いのは確かだが、警告の枚数が嵩んでいるのは後方が広いスペースを守ることを強いられる時間が長いことと無関係ではない。

 撤退守備においてはSBの貢献度の高さが光る。酒井はもちろん、中山も相当貢献度は高い。逆に言えばSB個人がさらされることが多く、彼らが軽い対応を見せれば即チャンスになる仕組みになっている。特に低い位置でのサイドへのヘルプは比較的少ない。南アフリカ戦で旗手の守備面でのマイナスがあれだけ短時間で目立ったのは、裏を返せばSB個人で守る要素が色濃いということでもある。

 したがって、酒井が出場停止になるニュージーランド戦での右サイドバックは非常に重要。おそらく橋岡が務めるのだろうが、ニュージーランドのサイド攻撃との優劣は試合の展開に大きな影響を与えるはずだ。

 そういうわけで純粋な守備者ではない旗手のSBとしての出番はこの大会では難しいかもしれない。あるとしたら、ビハインドもしくは試合は決めに行くタイミングでの三笘とのセット起用かなと思っている。リスクを抱えつつも、ナローな崩しに関して右サイドと同じレベルを求めるなら、田中碧も含めた川崎セット起用は1つのオプションにはなりうる。

 逆に旗手はSHとしては内外を問わないし、ポゼッションだけではなくトランジッションが増えても強度を維持できる存在であることをフランス戦で証明した。左サイドは幅が取れる相馬と現状ではジョーカー枠の三笘の二択に限った話ではなさそう。初戦で先発した三好も含めて、左サイドでどういう味をつけるかは展開や相手によって変えてくるはずだ。

 まとめると、日本は強みがはっきりしているチームといえる。もちろん、試合を閉じられなかったり、コントロールできないといった問題はあるが、これくらいの欠点は今日の代表チームには出てきてしまうものだと思う。少なくともEUROでみた代表チームは大体がそんな感じだった。もちろん、全局面できることに越したことはないのは言うまでもないけど、もう今更何か新しいことはできない。あとは弱みをどう隠すか、もしくはどう強みを押し出すかだ。

日本がここまで得意としているのはどう見ても後者の強みを押し出すムーブなので、プレスからのショートカウンターを軸に先に当たりを引くのが最も重要だろう。そこから先は総力戦。控え選手を活躍させる余裕があったフランス戦やリスク承知で三笘を起用したメキシコ戦などで蒔いた種が決勝でも花開けば、メダルへの道筋が見えてくるはずだ。

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