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「コパアメリカ2021 チーム別まとめ」~エクアドル代表編~

目次

チーム情報

監督:グスタボ・アルファロ
FIFAランキング:53位
W杯2018⇒予選敗退
コパアメリカ2019⇒GS敗退

招集メンバー

GK
12 Pedro Ortíz
22 Alexander Domínguez
1 Hernán Galíndez

DF
3 Piero Hincapié
2 Félix Torres
4 Robert Arboleda
14 Xavier Arreaga
24 Fernando León
7 Pervis Estupiñán
27 Diego Palacios
16 Mario Pineida
17 Angelo Preciado
28 José Hurtado

MF
10 Carlos Gruezo 
20 Jhegson Méndez
5 Dixon Arroyo
23 Moisés Caicedo
21 Alan Franco
6 Christian Noboa
25 José Carabalí
10 Damián Díaz

FW
8 Fidel Martínez
18 Ayrton Preciado
19 Gonzalo Plata
15 Ángel Mena
11 Michael Estrada
13 Enner Valencia
9 Leonardo Campana
26 Jordy Caicedo

各試合振り返り

GS第1節 コロンビア戦

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■美しいゴールとしたたかなギアの入れ替え

 共に4-4-2で組み合った両チームだが、そのスタンスはそれぞれで微妙に異なったように見えた。まず、コロンビアは非保持においては4-4-2のコンパクトさを重視。内側を締めて、相手に間のスペースを使わせないことが優先されていた。

 逆に攻撃では中央を積極的に使うやり方。後方から中央への縦パスを起点として、ここからサイドに振るというのが思うなやり方。左サイドの10番のカルドナはインサイドに絞ることが多く、その分大外をSBのモレノが担当。内外で担当を棲み分けている印象だ。

 それに対してはエクアドルは比較的人を捕まえる意識を強くしての守備が主体。ややマンマーク成分が強めである。特にボール周辺は。ボール周り以外ではマンマーク色はやや落ちるので、相手のライン間に入ってくる動きに弱かった。コロンビアはこれをうまく活用し縦への楔を通していた。

 エクアドルの保持はサイドの攻撃が主体。SH-SBの連携でコロンビアのサイドを切り崩し、エリア内にボールを入れることが目標となる。

 しかし、そもそものエクアドルの布陣は4-4-2。サイドに人が多い陣形ではないし、そのために陣形を崩してサイドに人をかけることもしない。ただ、中央にボールを入れる手段を持っていない。したがって、攻めルートはサイドに偏っているのに、人の分布だけは中央とサイドで均衡しているという難しい状況に陥ってしまった。3人目なしでサイドを崩すのは難しい。

 支配的とは言えないまでも、どちらかといえば試合を優勢に進めていたのはコロンビア。先制点も彼らにもたらされる。にしてもすごいFKからの得点だ。是非見てみてほしい。多くのオフサイドポジションの選手たちをおとりに抜け出した2人で攻撃を完結。見事なプレーブックに基づくセットプレーだった。バスケみたい。どこまで練っていたのかはわからないが、完成度の高いゴールだったのは確かだ。

 先制点を取ったことで試合はやや展開を変える。受けるコロンビア、攻めに出るエクアドルの構図はよりはっきりと見られるようになった。しばらくは問題なく過ごしていたコロンビアだったが、エクアドルが75分くらいからエリア内への放り込みのタイミングを早めるとあわやのシーンが出てくるようになった。

 速かったのはコロンビアのリアクションだ。『エリア内に上げさせてはダメ』という方に頭を切り替え、ホルダーの自由を奪う方向にシフトチェンジ。数分での方針の切り替えの素早さは国際舞台での経験値を感じる部分だ。大人な振る舞いで前後半にエクアドルをいなしたコロンビアがまずは開幕戦白星スタートを決めた。

試合結果
コロンビア 1-0 エクアドル
パンタナル・アリーナ
【得点者】
COL:42′ カルドナ
主審:ネストル・ピターナ

GS第3節 ベネズエラ戦

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■負ったリスクにかみ合う攻守

 コロナウイルスにより大量の離脱者が出る苦しい戦いながらも、前節は5-4-1でコロンビア相手になんとか引き分けたベネズエラ。エクアドルというコロンビアよりはやや与しやすい格の相手でもベネズエラの基本線は撤退型の5-4-1でスペースを消すこと。そして時折、機を見て右サイドからゴンサレスとホセ・マルティネスの攻め上がりを見せることでわずかな反撃の糸口を手繰り寄せるやり方である。

 当然、エクアドルもコロンビアと同様にこの5-4-1の攻略をしていくことになる。CHのメンデスが落ちることで最終ラインは十分に人数を確保。そして、前線は2トップ+SHに左サイドバックのストゥピニャンが加わり5トップ化する。逆サイドのSBであるアンヘロ・プレシアードはストゥピニャンに比べればバランスをとる役割である。

 ただ、相手の5バックにダメージを与えるという点ではコロンビアの方がスキルが上。同サイド攻略もライン間攻略もサイドチェンジもあらゆる局面でスキルがなかなか追いついてこない。それだけにセットプレーで得た先制点は非常に大きかったことだろう。

 ビハインドを背負ったベネズエラは後半頭から一転、高い位置からのプレスに打って出る。当然、失点のリスクは高まる。だが、それでも自陣深い位置からの右サイドからのロングカウンターだけではあまりに得点のチャンスが薄いという判断だろう。よりオープンにし、失点のリスクと引き換えに得点のチャンスを得るという判断だ。

 同点のシーンはそれが実った形。CHのカスティーロが出ていけるような状況はローラインブロックからのロングカウンターからは決して生まれなかったゴールといえるだろう。

 だが、エクアドルもベネズエラのリスクにうまくつけこむ。交代で入ったプラタの独走で再度勝ち越し、ベネズエラを突き放す。

 しかし、最後の最後まで死んでいなかったベネズエラ。エルナンデスの同点ゴールはまさしく魂の一撃。最終盤に訪れたエクアドルの決定機も、前節に引き続き絶好調の守護神ファリニェスがセーブ。取ったリスクに対して攻守がかみ合ったベネズエラ。コロンビアに続き、エクアドルからも勝ち点を奪い取って見せた。

試合結果
ベネズエラ 2-2 エクアドル
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
VEN:50′ カスティージョ, 90+1′ エルナンデス
ECU:39′ プレシアード, 70′ プラタ
主審:ロベルト・トバル

GS第4節 ペルー戦

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■懸念が表出し決めきれなかったエクアドル

 互いにまだ突破が危うい状況での負けられない一戦。特に、最終節でブラジルとの試合を控えているエクアドルにとっては何とかして突破を決めておきたいはずである。

 立ち上がりから押し込む機会が多かったのはエクアドル。右サイドを軸とした突破を狙い、ペルーを敵陣に追いやる。ペルーの守備の原則はマンマーク。特に中盤はこの志向が強かった。

 エクアドルが生んだ先制点はこのペルーの原則を見事に外した形。プレシアードが降りることがきっかけで、浮いたカイセドがマーカーから離れるようにしてボールを受けると、その動きに呼応して大外からエストゥピニャンがオーバーラップ。マンマークの隙をついた大外突撃から、最後は絞り気味だったフランコが入り込む。最後はOGだったが見事な崩しだった。

 ペルーは前節はCHを軸とした保持から支配するきれいな試合運びを見せたが、この日はCHに時間を与えることができず。全体を押し上げながらポゼッションする機会は稀。ラパドゥーラがカウンターの担い手となるが、機会はどうしても限られていた。セットプレーで前半終了間際にエクアドルが追加点を奪った際はかなり厳しい状況になったかと思えた。

 しかし、後半はペルーが反撃。クエバの中央でのタメからラパドゥーラが1点を返すと、試合は一気にオープンに。その中で見られたのはエクアドルの守備陣の怪しい対応である。その懸念はオープンな状況で顕在化する。インカピエとアルボレダのCBコンビをラパドゥーラが置き去りにして独走。最後は2対1の状況からカリージョにアシストを決めて同点になる。

 その後はエクアドルが高さを軸にペルーに圧力をかけていく形が続く。だが、時折見せるバックスの広いスペース管理の危うさからエクアドルの失点の匂いもしなかったわけではない。

 激しいゴール前の肉弾戦から欲しかった追加点が手に入らなかったエクアドル。突破を賭けたブラジル戦という厳しい最終節を迎えることになってしまった。

試合結果
エクアドル 2-2 ペルー
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
ECU:23′ タピア(OG), 45+3′ プレシアード
PER:48′ ラパドゥーラ, 53′ カリージョ
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ

GS第5節 ブラジル戦

画像4

■ペルーに苦しみ、ペルーに助けられる

 ペルーに追いつかれたことで一転窮地に陥ったエクアドル。最終節でブラジル相手に勝ち点を奪わなければ、敗退の可能性もある緊張感のある試合となった。

 エクアドルは立ち上がりはブラジルをきっちりリスペクト。SHが自陣深くまで下がる6バック的な振る舞いも見られる。トップのラインも低い状態で自陣で構えるスタンスだ。

それに対してブラジルはエリアの外からのアプローチが多め。CHのファビーニョとドウグラス・ルイスはブロックの中で受けるよりも、外からポンポン放り込むことで組み立てに挑む。CBに運べるマルキーニョスがいることもこのやり方の後押しになる。エクアドルが自陣寄りにシフトする分、ブラジルは後方の選手に前後に移動の自由を許していた。

 左右の深い位置まで運べる状態は作れるので、押し込んでカウンターの危険性は少ない。しかしながら、なかなかブロックを崩すのも難しいブラジルであった。

時間が経つと戦況に徐々に変化が出てくるようになった。エクアドルのプレスの位置が高くなるようになってきたのである。理由として考えられるのはブラジルの長いボールの攻撃の精度がイマイチだからだろう。ネイマールと同じようにガブリエル・バルボサにも縦横無尽に移動する自由は与えられていた。しかしながらネイマールがいない分、長いボールでのカウンターでの威力は割引だった。

 長いボールでの脅威が薄いということで、エクアドルは躊躇なく前からプレスにいくことができたということだろう。ということで、押し込むという優位も失ってしまったブラジル。試合は互角な展開に徐々に流れていく。

 困ったときに頼りになるものはセットプレー、そしてレアル・マドリー。というわけでブラジルの先制点をCKからこじ開けたのはミリトンである。今夏も各所の国際大会で猛威を振るっているレアル・マドリーのDNAだが、コパアメリカでも相変わらず脅威である。

 勝ち点は必須なエクアドルは後半の立ち上がりから一気に攻めに出る。立ち上がりの押し込む時間帯においてどうしても点が欲しかったはず。特に体を張るのが目立っていたのがエネル・バレンシア。寄せにも屈さないフィジカルで狭い位置を打開するためのキープを見せる。同点ゴールも彼のアシストから。交代出場のメナがポストプレーからの裏抜けを叩きこんだ。

 その後は互角の戦いが続いた両チーム。勝たなければ自力突破はないエクアドルだが、どうしてもその1点を手に入れることができなかった。しかし、他会場でペルーがベネズエラを下したおかげでエクアドルは無事にノックアウトラウンド進出。ペルーに苦しめられて、ペルーに救われたグループステージとなったエクアドルだった。

試合結果
ブラジル 1-1 エクアドル
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
BRA:37′ ミリトン
ECU:52′ メナ
主審:ロベルト・トバル

Quarter-final アルゼンチン戦

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■大駒2枚が決め手

 受けに回ったエクアドルの序盤戦を見れば失点は時間の問題のように思えた。深めの位置に構えるアルゼンチンは平常営業。ラウタロ・マルティネスを中心に裏を取る前線の動きと、メッシを中心とするライン間の動きのコンボでエクアドルを押し下げる。

 前残りしたメッシに対して、エクアドルのプレゼントパスもあった。これはメッシが珍しくポストというお目こぼし。首の皮1枚でエクアドルは助かる。

 すると20分くらいを境に徐々に流れが変わり始める。エクアドルは高い位置からのチェイスを開始。前線は押し上げながら組み合う形をとる。すると展開は徐々にイーブンに。エクアドルがマンマーク主体の動きからボールを途中で引っかけると、大外のプレシアード、エストゥピニャンの両SBが駆け上がりクロスを上げる。同時開催しているEUROでは香車型のSBやWBがブイブイ言わせているけど、彼らもその系譜に連なるSB。特にエストゥピニャンのクロスはエクアドルの攻撃の大きな柱となるパターンである。

 これに合わせるエネル・バレンシアも優秀。エリア内に1人しかいないのに動き出しは完璧でクロスが合う場面が多かった。しかし、動きながらな分、精度が高いものが求められる。合わせるところでいっぱいのボールに厚くヘディングが当たらず、決定機が決まらない状況が数回あった。

 すると、前半に試合を動かしたのはアルゼンチン。強気のハイラインを敷いたエクアドルに対して、ラウタロ・マルティネスが体を張り、メッシに落とす。スルーパスでGKの飛び出しを誘発すると、最後はデ・パウルが押し込み先制。苦しい展開の中でアルゼンチンが前に出る。

 後半も人と人がバチバチぶつかり合う展開が続く。この試合は非常にファウルが多く、特に後半は試合が止まりがち。どちらも攻撃の機会はあったが、どちらの攻撃もぶつ切りな状態がダラっと続く展開になった。

 この試合を決めたのはアルゼンチンの大駒2人。途中交代のディ・マリアは2点目のショートカウンターとなるボール奪取の起点と、3点目のキッカケとなるFKを誘発。大エースのメッシがこれを1ゴール、1アシストと得点に変えて試合は終了。ファウルで進まない試合を2人のスターが打開。一気に決着をつけたアルゼンチンが順当にベスト4に進んだ。

試合結果
アルゼンチン 3-0 エクアドル
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
ARG:40′ デ・パウル, 84′ ラウタロ・マルティネス, 90+3′ メッシ
主審:ウィルトン・サンパイオ

大会総括

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分かり易さは諸刃の剣

 4-4-2のフォーメーションを基本とし、攻撃はサイドが軸というオールドファッションな構成のチーム。全体的に南米の方が欧州よりもまだオールドファッションな香りがまだ残っていると思う。

 攻撃においてはSHが内側に絞り、大外はSBに任せるのが基本線。両SBのプレシアードとエストゥピニャンの攻撃力が高いのが特徴。特に左のエストゥピニャンの攻撃性能の高さは特筆すべきポイントだ。

    中にはエースのエネル・バレンシアがクロスを待ち受けている。クロスの入り方が非常にうまいFWで、あまりPA内に人数をかけることのないエクアドルの攻撃において、ボックス内の責任を一手に引き受けている。

 武器はハッキリしているのだが、その使い方がやや単調なのが難点だろうか。正直サイドからクロスでバレンシアに合わせるパターンはわかり切っている。しかも、サイドに中央の選手を流してクロスを上げるための仕組みを作っているわけではないので、サイドでの対人で劣勢になってしまうと手詰まりになってしまうという難点もある。

 武器はとがっているが使うのがばれている状態ではなかなか勝つのは難しい。何とか最終節で消化試合のブラジル戦相手に引き分けたことで滑り込みでノックアウトラウンドに進出したが、ベスト8に進出したチームの中で唯一勝利がない。

 アルゼンチン相手にもエストゥピニャンとプレシアードが駆け上がってのクロスは通用したが、フィニッシュがバレンシア1枚ではやや厳しかった感が否めず。もう少し攻撃面でのバランスを崩しながら相手の守備を壊す意識がないと、薄い糸をたどるような戦いになってしまうのは必至なのが苦しいところである。

頑張った選手⇒エネル・バレンシア
 娘に対する養育費を支払わないことで警察に追い回されるも、何とか捕まらずに試合に出場するというすご技をやってのけたキャラというイメージしかなかったけど、普通にエースをやっていた。娘さんは元気かな。

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