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「EURO 2020 チーム別まとめ」~スコットランド代表編~

目次

チーム情報

監督:スティーブ・クラーク
FIFAランキング:44位
EURO2016⇒予選敗退
W杯2018⇒予選敗退

招集メンバー

GK
12 クレイグ・ゴードン(ハーツ)
1 デイヴィッド・マーシャル(ダービー)
21 ジョン・マクラフリン(レンジャーズ)

DF
16 リアム・クーパー(リーズ)
15 デクラン・ギャラガー(マザーウェル)
3 アンドリュー・ロバートソン(リヴァプール)
5 グラント・ハンリー(ノリッジ・シティ)
24 ジャック・ヘンドリー(オーステンデ)
26 スコット・マッケンナ(アバディーン)
2 スティーブン・オドネル(マザーウェル)
22 ネイサン・パターソン(レンジャーズ)
6 キーラン・ティアニー(アーセナル)
13 グレッグ・テイラー(セルティック)

MF
4 スコット・マクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)
17 スチュアート・アームストロング(サウサンプトン)
23 ビリー・ギルモア(チェルシー)
14 ジョン・フレック(シェフィールド・ユナイテッド)
8 カラム・マグレガー(セルティック)
7 ジョン・マッギン(アストン・ヴィラ)
18 デイヴィッド・ターンブル(セルティック)

FW
10 チェ・アダムス(サウサンプトン)
20 ライアン・フレイザー(ニューカッスル・ユナイテッド)
11 ライアン・クリスティー(セルティック)
9 リンドン・ダイクス(QPR)
25 ジェームズ・フォレスト(セルティック)
19 ケヴィン・ニスベット(ハイバーニアンFC)

各試合振り返り

GS第1節 チェコ戦

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■一本槍を後押しする声援を打ち消したシック

 テクニシャンとハイタワーの融合というのがチェコの伝統的なイメージだったのだが、この試合のチェコは少し様子は違った。何はともあれフィジカルをゴリ押し。スコットランドを向こうに回してゴリゴリに削りあう展開に。『マッチョ』という言葉がやたらTLに飛び交う試合になった。

 チェコが丁寧にやる時はCHのソーチェクとクラールで縦関係を築き、CBの手助け役としてクラールが低い位置を取る。だが、そういった場面は限定的。縦に早いボールでシックやソーチェクに当てて大きく前進しながら、押し上げていくようなパワーに頼った場面が目立つ。

 確かにチェコのCFのシックはパワーもスピードもあるのでそういうやり方もいいとは思う。実際に先制点は彼の競り合いでの力強さを前面に押し出した場面ではあった。ただ、彼のキレイなポストプレーの落としみたいなのはもう少し活かしてもいいのではないかなと。押し上げる局面を制御しつつもっとゆっくりと丁寧に進めながら試合を支配してもよかったのかなと。特に、スコットランドが相手ならばなおさら。

 footballistaの名鑑では散々な下馬評だったスコットランド。特に押し下げられた後の前進の手段と決定力についてメタメタに書かれていた。ただ、前進の方はチェコがプレスを緩めた時は全くダメというわけではなかった。2トップはサイドに流れながらボールを引き出していたし、トップがサイドに流れていた時はIHがエリア内に突撃するというパターンは一応あった。チームの得点源はマッギンということからも何となくこういう形で得点しているのだなという部分は透けて見える。

 トップが左サイドに流れたところに後方からフィードを打ち込み、フォローに入ったロバートソンがクロスを上げるというのがスコットランドの攻めの主体。この日は見ることができなかったティアニーとロバートソンの併用は、恐らく後方からティアニーが縦に蹴りまくる形で成立しているのだろう。マクトミネイも代表では後半のようなバックライン起用が多いとのこと。スコットランドは後方に砲台が必要なイメージなのだろうか。

 ロバートソンという一本鎗、そして決定力に欠けるストライカーという苦しい展開ではあった。だが、ホームのハンプデン・パークの観衆がスコットランドの背中を押す。後半の立ち上がりは声援を背に、この日最もゴールに近づいた時間帯といっても良かった。

 だが、それを打ち砕いたのは再びシック。会場の雰囲気を一刀両断するかのような冷静なロングシュートでハーフラインからゴールマウスを強襲。EURO史に残るであろう長い距離の得点でスコットランドを黙らせてしまう。その後も奮闘を続けていたスコットランドだが、最後までゴールをこじ開けることはできず。もう1つの決定力不足が大きくのしかかる無得点での敗戦となった。

試合結果
スコットランド 0-2 チェコ
ハンプデン・パーク
【得点者】
CZE:42′ 52′ シック
主審:ダニエル・シーベルト

GS第2節 イングランド戦

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■達成されたただ一つの目標

 フランス×ドイツとは別視点でのグループステージの目玉カード。英国ダービーがEUROで実現。しかもウェンブリーという舞台装置まで完璧な状況。特にボリスタの名鑑に『イングランドから勝ち点を取ることが唯一の目標』と書いてあったスコットランドにとってはここにすべてを置いていく!という一戦になったはずだ。

 ほぼ全員の期待通り、戦術的な応酬が見られるような試合ではなかった。スコットランドは保持において最終ラインにプレスをかけられるとドギマギ。立ち上がりから前線にプレスをかけられる元気が持ち味であるイングランドにあっさり捕まり冷や汗をかく場面もあった。

 一方のイングランドも保持では苦戦。クロアチアが第1節で見せた『とりあえずライスについていく』というやり方をマッギンとダイクスで挟みながら忠実に実行したスコットランド。特にこれに対してイングランドは対策を講じることはなし。第1節に引き続きシンプルにこれが効いてしまったのが切ない。

 もっとも、共に上積みがあったのは確か。ただしそれは選手変更によってもたらされたものである。スコットランドはティアニーの復帰が朗報。ロバートソンからの左サイドクロスが唯一にして強力なスコットランドのエリアへの攻撃手段。この武器は後方にティアニーが入ることでより強化される。持ち運び、裏へのパスもできるティアニーの登場でロバートソンの威力が増加。自らもクロスを上げることができるティアニーが入ったことで左サイドから入るクロスのバリエーションは増えた。

 イングランドで効いていたのはルーク・ショウ。前節にも攻撃の主体になっていた左サイドのトライアングルに左利きであるショウが入ったことによる上積みはあった。さらに利き足だけでなくオフザボールのポジションに長けているショウの存在で左サイドの崩しには磨きがかかった。

 スコットランドは左サイドのクロスのパターンが増えた。イングランドは左サイドの崩しに磨きがかかった。だが、目を閉じてよく考えてみてほしい。両チームはそこさえクリアできればいい攻撃ができるチームだったでしょうか。はい。いいでしょう。目を開けてください。

 1つしかない武器に+αが増えたスコットランドと結局左で崩すよりもスターリングとフォーデンにガンガン走らせた方が早いイングランド。共に構造的に第1節より大きな進歩があったかというと難しいところ。

 それでもワーワー感を楽しむことはできた。後半は右に移されたスターリングがずーっと1人でなんとかしようとしているところとか、あるいは試合終了間際のイングランドのゴール前でのスクラムの組み合いとか、全体的にラグビー要素が強いのは面白かった。

 結局スコアレスで終わった英国ダービー。試合終了後の表情は対照的。選手の多くがクラブから3割引程度の出来になってしまうイングランドに対して、ゴール前でDF陣で体を張ることで魂を示したスコットランドが充実感を示すのは当然だろう。

開幕前に掲げた『イングランドから勝ち点を取る』という目標を達成したスコットランド。攻守のダイナモとして中盤を支えたギルモアがMOMを獲得したことも相まって、選手もファンたちもさぞ意気揚々とウェンブリーを後にしたことだろう。

試合結果
イングランド 0-0 スコットランド
ウェンブリー・スタジアム
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

GS第3節 クロアチア戦

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■低調な決戦をバロンドーラーが片付ける

 他のグループの結果を受けてこのカードは両チームにとって勝てば突破、引き分け以下なら共倒れという非常にわかりやすいデスマッチになった。だが、残念なことにそのヒリヒリ感が伝わってくるほど緊迫感がある試合とは言えなかったのが正直なところである。

 ボールを握ったのはクロアチア。しかし、ビルドアップの重心は全体的に下がりすぎており、前進がままならない。元々このチームはモドリッチにおんぶにだっこに肩車であった。しかしながら、今大会ではモドリッチに組み立てや縦パスでの前進、守備での献身を要求するのは序の口。攻撃を完結させるためには、オフザボールの動きがほぼ皆無な前線にはスルーパスによってモドリッチが次のプレーを導くパスを出すことが求められていた。

 それくらいクロアチアの前線には展開を前に進めようという気概がなかった。ひとたびその気になれば、先制点のような得点を挙げることが出来るのに、モドリッチに促されなければ動かないのだからもったいないとしか言いようがない。

 スコットランドもスコットランドである。先の先制点のシーンでは5バックにも関わらずエリア内の守備が非常にルーズ。ボールホルダーにトラップする余裕がある間合いまでしか詰められないのならば、失点につながるのは当然としか言いようがない。

 攻撃も相変わらずの左偏重。アダムスがサイドに流れて引き出し、ロバートソンがクロスを上げるところまではいいのだが、その先がない。予選では得点源となったマッギンはエリアに入るタイミングを掴めていないよう。得点シーンはこのお決まりのクロスが流れた形からだったが、チャンスメイクという部分でのじり貧さは相変わらずである。

 むしろ、チャンスがあったのはクロアチアのビルドアップ。重たいのはモドリッチより前だけでなく、後ろも同じ。マイナスパスにプレスをかければチャンスになる機会は十分。クロアチアもスコットランドに手を差し伸べていたかのような試合だった。

 そんな低調な内容の試合に決着をつけたのは、この試合においてただ一人別格だったモドリッチ。コバチッチの落としを受けてミドルシュートを叩き込むと、続くCKではペリシッチの得点をアシスト。クラブでも代表でも負荷の高いプレーを35歳になっても続けるモドリッチが重たいクロアチアを細い両腕で引き上げ、決勝トーナメントになんとか間に合わせた。

試合結果
クロアチア 3-1 スコットランド
ハンプデン・パーク
【得点者】
CRO:17′ ヴラシッチ, 62′ モドリッチ, 77′ ペリシッチ
SCO:42′ マクレガー
主審:アンドレス・ラパッリーニ

大会総括

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■『唯一の目標』は達成したが・・・

 グループDでは最も苦しい立ち位置のチームということで戦前から苦戦が予想されていた。ボリスタの名鑑に書いてある『イングランドから勝ち点を取ることが唯一の目標』というのが真実なのだとしたらちょっと寂しい気もするけど。

 ただ、いざサッカーを見てみると、スコットランドの苦しい部分は如実に出てきている。攻撃のパターンは非常に少なく、最終局面の仕上げはロバートソンのクロスほぼ一辺倒。後方の3バックからティアニーやマクトミネイ(3バックの中央で使われることが多いらしい)が前線にボールを当て、落としたボールをロバートソンにつなぎ、そしてキックでエリア内に向かうという流れ。お分かりの通り、ほぼラグビーである。

 それでもエリア内に構えるストライカーがクロスに合わせる名手なら困ることはない。だが、スコットランドはここもアキレス腱。ダイクス、アダムス、クリスティーなどのストライカー陣はクロスを決めきる決定力もどんな相手にも競り勝てるパワーも備えておらず、一辺倒のクロスで確率の低い戦いに挑む続けるという非常に苦しい戦いだった。

 ふがいないFW陣に代わって得点源とされるのはMFのマッギン。ただ、この試合においてはエリア内に入り込むタイミングがつかめず、そもそもシュートチャンスすら巡ってこなかった印象。

 猪突猛進一本鎗の攻撃はなかなか通用せず。チェコにはハイテンポもキック&ラッシュに完璧にお付き合いされた挙句、シックによって普通に沈められてしまった。

 意地を見せたのが目標と語っていたイングランド戦。ド根性感は否めなかったが、特に守備面では体を投げ出して最後の最後までゴールを死守。終盤はスコットランドのゴール前に人が殺到し、本当にラグビーみたいな見た目になっていたのはご愛敬。スコアレスドローに持ち込み『唯一の目標』は一応達成して見せた。

 しかし、その体を張った守備もクロアチア戦では崩壊。エリア内の体の寄せの甘さで大量失点を許す展開になった。得点もクロアチア戦で決めたマクレガーのゴールが唯一。懸念通り、得点力不足に苦しむことになった。

 さすがに中央からもう少し起点を作らないと難しいだろう。火が付けば押し切れる守備はともかく、攻撃の再構築が目下の課題になりそうだ。

頑張った人⇒ビリー・ギルモア
 スコットランドの今大会の最大のポジティブポイントはギルモアの代表デビューとイングランド戦でのMOM獲得。来季はチェルシーからレンタル修行の噂もあるが、中央の攻撃構築のためには覚醒が必須。スコットランドの中盤をしょって立つ存在になるか。

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