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「EURO 2020 チーム別まとめ」~北マケドニア代表編~

目次

チーム情報

監督:イゴール・アンゲロフスキ
FIFAランキング:62位
EURO2016⇒予選敗退
W杯2018⇒予選敗退

招集メンバー

GK
1 ストール・ディミトリエフスキ(ラージョ・バジェカーノ/スペイン)
22 ダムヤン・シシュコフスキ(ドクサ・カトコピアス/キプロス)
12 リスト・ヤンコフ(ラボトニツキ)

DF
2 エグゾン・ベイトゥライ(シュケンディヤ)
4 キレ・リステフスキ(ウーイペシュト/ハンガリー)
8 エズジャン・アリオスキ(リーズ・ユナイテッド/イングランド)
14 ダルコ・ベルコフスキ(リエカ/クロアチア)
13 ステファン・リストフスキ(ディナモ・ザグレブ/クロアチア)
3 ジョコ・ザイコフ(シャルルロワ/ベルギー)
6 ヴィサル・ムスリウ(フェヘールヴァール/ハンガリー)

MF
16 ボバン・ニコロフ(レッチェ/イタリア)
21 エリフ・エルマス(ナポリ/イタリア)
23 マルヤン・ラジェスキ(アカデミヤ・パンデフ)
11 フェラハン・ハサニ(パルチザン・ティラナ/アルバニア)
15 ティホミル・コスタディノフ(ルゾンベロク/スロバキア)
20 ステファン・スピロフスキ(AEKラルナカ/キプロス)
5 アリエン・アデミ(ディナモ・ザグレブ/クロアチア)
24 ダニエル・アヴラモブスキ(カイセリスポル/トルコ)
25 ダルコ・チュルリノフ(シュツットガルト/ドイツ)
17 エニス・バルディ(レバンテ/スペイン)

FW
10 ゴラン・パンデフ(ジェノア/イタリア)
9 アレクサンダル・トライコフスキ(マジョルカ/スペイン)
18 ヴラトコ・ストヤノフスキ(シャンブリー/フランス)
26 ミラン・リストフスキ(スパルタク・トルナヴァ/スロバキア)
7 イバン・トリチェコフスキ(AEKラルナカ/キプロス)
19 クルステ・ベルコスキ(FKサラエボ/ボスニア・ヘルツェゴビナ)

各試合振り返り

GS第1節 オーストリア戦

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■圧力増加の積極策で歴史を切り拓く

 共に勝てばEUROの本戦での初勝利。オーストリアと北マケドニアの一戦は歴史の1ページを手繰り寄せるための大一番となる。細かい部分で違いはあれど、両チームの非保持におけるコンセプトは似ていたように思う。5バックで最終ラインの人数を揃える。そして、サイドチェンジを許さずに同サイドに封じ込める。

 というわけでこの試合は相手の守備の同サイド圧縮をどのように解決するか?がテーマになってくる。その答えを先に出したのはオーストリアだった。解決策として提示したのはスーパープレー。ザビッツァーからの逆サイドのライナーへの高速ピンポイントクロスである。素早く低弾道で通した逆サイドへの一撃はクリティカルヒット。超絶美技でオーストリアが一歩前に出る。

 対する北マケドニアが手にしたチャンスはオーストリアのミスに乗っかったものだ。味方に偶発的にぶつけた締まったボールからマケドニアがチャンスを迎える。最後にこぼれ球が目の前に来たのはパンデフ。北マケドニアが歴史の扉を開けるならば、この男しかありえないという神の啓示があったかのようだった。確かにパンデフしかありえない。英雄が北マケドニアのEURO史上初の得点を決めて、同点に追いつく。

 ここから前半終了まではやや北マケドニアが優勢だったか。オーストリアの方が高い位置で止めようという意識が強い分、北マケドニアには前に進むスペースが与えられていたように思う。

 同点で迎えた後半。徐々にボールロスト後のプレスを強化したオーストリアが主導権を取り返す。圧で勝るオーストリアが北マケドニアの陣内でのプレー時間が増えていく展開に。北マケドニアはエルマス、バルディのキープからアリオスキなど脚力のある選手のフリーランで一刺しを狙っていく。オーストリアはキープを狙う北マケドニアの中盤に圧をかけてミスを誘発していく形だ。

 勝負の分かれ目となったのは終盤の選手交代。エルマスを前にスライドさせて、ドローもOKというスタンスを見せた北マケドニア。選手層を考えれば仕方ないことだと思う。一方のオーストリアは2トップを総入れ替え。これを皮切りにエリア内への放り込みを増やしていく。加えて、この日は3バックの中央を務めていたアラバを解放。自由度を高めて相手陣に入る頻度を増やす。

 決勝点となったのはその2つの変更の掛け合わせ。クロスの受け入れ態勢強化とクロスの出し手となるアラバの解放がオーストリアの決め手になった。左サイドからアラバが放ったクロスはピンポイントでスペースに。グレゴリッチに走りこむスペースを教えてあげるようなクロスは、人数は十分揃っていた北マケドニアでも対応はできなかった。

 仕上げは決勝点を挙げたグレゴリッチの相棒。アルナウトビッチが試合を決める3点目で交代した2トップはそろい踏みだ。歴史的な初勝利を掴んだのはオーストリア。終盤の交代の積極策で圧力をかけて北マケドニアをねじ伏せた。

試合結果
オーストリア 3-1 北マケドニア
ブカレスト・ナショナル・アレナ
【得点者】
AUS:18′ ライナー, 78′ グレゴリッチ, 89′ アルナウトビッチ
MKD:28′ パンデフ
主審:アンドレアス・エクベーク

GS第2節 ウクライナ戦

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■存分に楽しませてくれるウクライナ

 共に第1節を落としてもう負けられない両チームの一戦。特に北マケドニアはこの試合で敗れて、かつこの直後の試合でオランダが勝利してしまうと24か国の中で一番初めに敗退が決定してしまう。文字通り崖っぷちの一戦だ。

 立ち上がりから勢いよく攻めに出たのはウクライナ。北マケドニアにとっては第1節で対戦したオーストリアとは桁違いの圧力でゴールに襲い掛かってくる。ウクライナで少し気になったのはやたら左利きを並べていたこと。前線はマジでレフティばかり。右から左にボールを動かすシーンがとても多かった。狙っていたのかな?とはいえターンする方向は北マケドニア目線でははっきりしていたように見えたので、その部分は守りやすそうだったけども。個人的には利き足はバラした方が守りにくそうと思うことが多いので、右利きほしい!という気持ちになった。

 とはいえ、ウクライナはそれでも十分北マケドニアを脅かすことはできていた。その理由の1つは北マケドニアのDFラインが非常に乱れやすかったこと。北マケドニアはとてもよく組織されているチームだと思うが、それはあくまでカウンターの発動やプレスを受けた時のボールのスキルの話。受けに回って良さが出るチームではない。

 とりわけ受けた時にアラが見えたのは6番のムスリウ。最終ラインに1人だけ残ってしまったり、あるいは逆に出ていったにも関わらず潰しきれなかったり(2失点目のシーンが一例)など、ラインコントロールを乱す要因になっていた。加えて、北マケドニアはエリア内の跳ね返しスキルも高くないので、何としても押し込まれたくはなかったはず。彼らの積極的なハイプレスはその裏返しといってもいいかもしれない。

 そのハイプレスの回避を問題なくやってのけたウクライナ。右の大外に起点を作り、とっとと前半で2点を奪って見せた。特に流れの中で輝いていたのはマリノフスキー。球持ちがよく周りの味方や相手の出方でプレーを自在に調整できる選手。このEUROで一躍名を挙げそうな予感である。

 ビハインド、かつおしこまれたら終わりという状況の北マケドニアはハーフタイムに2人の選手変更を敢行。4-2-3-1に変更し攻撃的な布陣に変更した。これに戸惑ったのはウクライナのCH。WGが戻らない彼らの基本方針において、前半の北マケドニアの5-3-2は中盤で枚数がばっちり。3人ともそれぞれの担当選手についていくだけで十分守れていた。

 これに対して、後半の北マケドニアの4-2-3-1は両SHが内側に絞ることでウクライナのCHの仕事を増やす。これにより、デートしていればいい状況は崩壊。ウクライナから見ると守り切れない選手が出てくるようになる。

 これにより、後半は押し込む状況を作った北マケドニア。英雄パンデフが得たPKをアリオスキが止められつつも気合で押し込む。一方のウクライナにもPKは与えられたが、これをマリノフスキは失敗。相手がオランダでも北マケドニアでも90分俺たちを楽しませてくれているウクライナは偉大である。

 最後まで追いすがる北マケドニアだったが、押し込めないまま終了。直後の試合でオランダが勝利したことで北マケドニアの敗北が決定。もっともはやくグループステージで大会を去ることが決まってしまった。

試合結果
ウクライナ 2-1 北マケドニア
ブカレスト・ナショナル・アレナ
【得点者】
UKR:29′ ヤルモレンコ, 34’ ヤレムチュク
MKD:57′ アリオスキ
主審:フェルナンド・ラパッリーニ

GS第3節 オランダ戦

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■英雄のラストダンス

 北マケドニアのレジェンドの門出となる試合である。英雄・パンデフのラストゲーム。オランダ代表は彼のラストゲームにメモリアルなユニフォームを用意する粋な計らいで花道を彩った。

 首位通過が決まっているオランダだが『ターンオーバーしすぎると体がなまる』という考えがOBにあるみたいなことを実況が言っていた。それに従ったかはわからないが、ターンオーバーは最小限。数人を入れ替えた程度のメンバー構成である。

 コンペティション的には意味合いが薄い一戦だが、互いの持ち味はどう考えても攻撃。それを活かすために互いにアグレッシブなスタンスの組み合いとなる。北マケドニアも前進の機会さえあれば十分にオランダを苦しめることができる。立ち上がりから逆サイドにボールを振り、そこから縦に裏抜けするなどオランダのハイライン攻略に奮闘。わずかなタイミングでオフサイドになったパンデフの得点は『なんか認めてやれよ!』と思ったけど、そういうものではないので仕方がない。

 オランダに効く攻撃を仕掛ける北マケドニアだが、攻めに打って出ることができればオランダは大会でも屈指の存在である。縦に推進する際の持ち味は完全に北マケドニアの上位互換。ブリントを中心としてワイドや裏への展開、そして後方からサポートする中盤の馬力などはさすが。フィニッシュワーク付近でやや息切れ感がある北マケドニアに格の違いを見せた格好だ。

 オフサイドでパンデフに得点されることを回避したオランダに比べると北マケドニアはラインコントロールも怪しい部分がある。抜け出しで相手を捕まえられないことでカウンターをもろに受けることになる。というわけでオランダに先制点が出るのは当然だった。デパイの得点を皮切りにがっちり3得点。いずれもオランダらしい持ち味が出た得点だった。

 68分にパンデフが交代するとスタジアムは彼の労力をねぎらう空気一色に。20年もの間、北マケドニアを引っ張ってきた大黒柱のラストゲームは完敗。しかし、この大きな舞台を代表引退の一戦に選ぶことができるまで北マケドニアが大きくなったのはまがいもなく彼の功績だ。英雄はヨハン・クライフ・アレナで確かな歴史を刻み、北マケドニア代表のキャリアを終えた。

試合結果
北マケドニア 0-3 オランダ
ヨハン・クライフ・アレナ
【得点者】
NED:24′ デパイ, 51′ 58′ ワイナルドゥム
主審:イシュトバーン・コヴァチ

大会総括

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■英雄最後の晴れ舞台

 こちらもフィンランドと同じくEURO初出場。4月にドイツをW杯予選でやっつけた実績を引っ提げてメジャートーナメントのデビュー戦である。そして国際大会の第一歩であると共に国民の英雄であるゴラン・パンデフが北マケドニア代表としてたどり着いた最後の地がEURO2020である。

 開幕戦となったオーストリア戦での初勝利ダービーは、共に同サイド圧縮に苦しむ対戦に。矢のようなサイドチェンジを飛ばしたザビッツァーのクオリティを持っている選手は北マケドニアにはいなかった。それでもパンデフが北マケドニアのEURO初得点となる同点ゴールを決めるとスタジアムは大盛り上がり。その後は圧に屈してオーストリアに敗れたが、小国として皆に愛されるための気概は十分にみせることが出来たといっていい。

 続くウクライナ戦でも2点差を付けられて敗戦濃厚なところまで追いつめられるも、ハーフタイムの攻撃的な交代により息を吹き返しアリオスキのゴールであわやというところまでは巻き返すことが出来た。

 さすがにオランダには通用しなかったが、カウンターだけでなくスペースをつなぐショートパスもこなすスタイルはアンダードッグ効果を差し引いても十分見ごたえがあった。

 だが、そのアグレッシブなスタイルは最終ラインの欠点を覆い隠すためともいえる。押し込まれた状況においては最終ラインのラインコントロールが崩壊気味。特に左サイドの選手たちのラインの乱し方は致命的。押し込まれた状況を指をくわえてみているようではおしまいだということでの、保持を大事にするスタイルのようにも見えた。

 奇跡のGS突破はならなかったが、オランダとの最終戦は観客も選手も含めて、パンデフのこれまでのキャリアをねぎらっているように見えて非常にほっこりした。英雄との最後の旅路がこの舞台になったことは、代表にとっても非常に大きな出来事に違いないだろう。

頑張った選手→エズジャン・アリオスキ
 リーズで培ったオラつきは代表でも顕在。アルナウトビッチとのやり合いはおもしろかったし、オランダ戦でのダンフリースとのわんぱくWB対決は結構見ごたえがあった。

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